(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】抗菌性及び抗がん性陽イオン性フタロシアニン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 487/22 20060101AFI20240213BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20240213BHJP
A41D 19/04 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20240213BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240213BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240213BHJP
C08L 9/04 20060101ALI20240213BHJP
C08K 5/3417 20060101ALI20240213BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C07D487/22
A41D19/00 P
A41D19/04 B
A61K31/555
A61P17/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P17/00 101
C08L9/04
C08K5/3417
C11D7/32
(21)【出願番号】P 2020555201
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2019058986
(87)【国際公開番号】W WO2019197419
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-24
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522339994
【氏名又は名称】ビーエムジー(ブリティッシュ・メディカル・グループ)リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BMG (BRITISH MEDICAL GROUP) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイト,パウル
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00906758(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/148957(WO,A1)
【文献】特開平07-101955(JP,A)
【文献】国際公開第2007/000473(WO,A1)
【文献】特表2009-500462(JP,A)
【文献】特開昭54-135806(JP,A)
【文献】LI, Xu-Fei et al.,Photo-generating singlet oxygen by metallophthalocyanines substituted with aryloxy group containing nitrogen,Yingyong Huaxue,2007年,24(9),pp. 1041-1044
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D487/22
A61K
A01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の
式4で表される化合物の混合物。
【化1】
式4
(式4中、
RはR’(a)又はR''(b)であり、
R’はピリジン環の3位に酸素原子が結合した下記構造の基であり、
【化2】
R''はN-アルキル化ピリジニウム環の3位に酸素原子が結合した下記構造の基であり、
【化3】
Mがアルミニウム又は亜鉛から選択され、
a + b =4、
b = 1
-3.9、
X
-
= Cl
-、Br
-、I
-、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ホルメート、アセテート、又はその他の無機もしくは有機の対イオンかこれらの混合物であって、
R''’は分岐していてもよい炭素数1から8のアルキル基である
)
【請求項2】
以下の
式5:
【化4】
で表される化合物を含み、前記混合物に含まれる前記式4の化合物が有するアルキル化ピリジンの総数の平均が2~3である、請求項1記載の混合物。
【請求項3】
前記混合物に含まれる前記式4の化合物が有するアルキル化ピリジンの総数の平均が2.5~3である、請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
前記化合物が、600~800 nmの波長において電磁放射線を吸収する化合物である、請求項1から3のいずれか1項に記載の
混合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の
混合物を含む抗菌性表面。
【請求項6】
前記混合物が表面を構成するポリマー、金属、又は繊維に含まれる、請求項5に記載の抗菌性表面。
【請求項7】
表面がエラストマー又はニトリルラテックスの表面である、請求項6に記載の表面。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載の
混合物を含むニトリル手袋。
【請求項9】
前記混合物を水性凝固剤中に溶解させ、次にニトリル分散剤に浸す工程を含む、、請求項8に記載のニトリル手袋の製造方法。
【請求項10】
ヒト又は動物の身体を処置する治療方法において使用するための請求項1から4のいずれか1項に記載の
混合物。
【請求項11】
前記方法が、皮膚又は皮下癌の処置のための方法である、請求項
10に記載の
混合物。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか1項に記載の
混合物の水性組成物を用いて汚れた表面に接触し、接触段階中又は接触段階後に、表面を光に曝露する工程を含む、表面上の汚れを取り除く方法。
【請求項13】
前記表面を太陽光に暴露する工程を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
表面が、繊維、セメント、石材、レンガ、又はガラスのうちいずれかから構成される、請求項
12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性化合物、当該化合物を含む抗菌性表面、当該化合物を含む医療用手袋、及び、当該化合物の医療用途や非医療用途、に関する。
【背景技術】
【0002】
一重項酸素発生源は微生物を破壊することが知られている。一重項酸素は基底状態である三重項酸素よりも高いエネルギーを有している。一重項及び三重項の状態にある酸素は、逆平行スピンに2個の電子を有する一重項状態、及び、平行スピンに不対電子を有する三重項状態、によって区別される。一重項酸素は、数マイクロ秒から数百マイクロ秒の寿命を有する高反応性の分子種であるため、三重項酸素とも区別される。一重項酸素は、その寿命期間中に不活性化される前には反応性を有しており、その結果として医療用手袋等における抗菌性応用を含む幅広い応用がなされている。
【0003】
医療用手袋は、医療における検査や処置の間に用いられる使い捨て手袋であり、感染症拡大の防止に役立っている。医療用手袋は検査開始時に医療従事者に着用され、処置後に破棄されたり破られたりする。医療用手袋は、医療従事者と患者の間に感染性微生物の二群間の移行を防ぐ物理的障壁を作ることで、機能する。医療用手袋自体は無菌性ではないため、手袋が裂けてしまうことで、微生物が患者と医療従事者の間で伝染する危険性が、常に存在する。
【0004】
アメリカ合衆国特許US2011/0145975では、抗菌性化合物による手袋の被覆方法が記載されている。当該手袋の外側を被覆するためには、手袋の準備を整え、手袋鋳型から手袋を取り除き、手袋を抗菌性化合物で被覆する噴霧器を備えた回転式乾燥機内に手袋を設置することで、「オフライン処理」で被覆を実施しなければならず、その次にポリマー塗膜を実施する。抗菌性化合物は粘着性があり、手袋を使用可能にする何らかのポリマーで当該手袋を覆う必要があるため、ポリマー塗膜が必要とされる。抗菌性化合物には、発癌性がある、並びに、使用時に手袋から浸出するため手袋上に留まらない、といったデメリットが存在する。また、製造にあたっては独立した工程を加える必要が生じる。
【0005】
製造方法に関わらず、一般的に使用されている一重項酸素発生源には、溶解性、凝集性、一重項酸素の製造効率、全体として不十分な抗菌活性と安定性、に関して、今もなお問題点が存在する可能性がある。
【0006】
そのため、このような問題点を克服し、製造の簡易性、製品の保管期間、使用者の安全性と同様に効果的で効率的な抗菌活性、を最適化するという、必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、
Mがアルミニウム又は亜鉛から選択され、
R''がピリジン基のうち少なくとも1個は陽イオン電荷を帯びたピリジン基に酸素原子を介して結合し、残存する周辺の炭素原子が非置換有機ラジカルであり、
a + b = 4、
b = 1~4、好ましくは1~3.9、
X = Cl-、Br-、I-、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ホルメート、アセテート、又は無機もしくは有機の対イオンかこれらの混合物であって、
並びに、窒化ピリジンのアルキル化が任意に分岐した炭素数1から8のアルキル基である、
式1に記載の化合物を提供する。
【0008】
【0009】
本発明に記載の好ましい化合物は、化学式4であり、
【0010】
【0011】
【0012】
本発明は当該化合物を含む抗菌性表面又はニトリル手袋も提供する。
【0013】
本発明は皮膚や皮下癌等を処置する治療方法において使用する化合物も提供する。
【0014】
本発明は、当該化合物の水性組成物を用いて汚れた表面に接触することを含む方法であって、汚れを取り除くための工程をさらに提供する。
【0015】
本発明の当該化合物は、医療検査用の手袋として効果的な抗菌活性を有しているだけではなく、表面消毒、清掃、ヒトの健康といった、その他の多数の応用性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は一重項酸素を製造するために用いることができる新たな多置換フタロシアニン化合物を提供する。当該フタロシアニン核はアルミニウム又は亜鉛でありうる。アルミニウムが使用される場合、当該アルミニウムはアルキル基、アリル基、アルコキシ基、ハイドロキシ基、又はハロゲン基によってさらに置換されうる。
【0017】
アルミニウムと亜鉛は、銅やニッケル等の他の金属よりも一重項酸素を製造する上でより効率的であり、並びに、合理的に小分子であるため、塩化ケイ素等を用いる他の金属とは対照的に、空気下において生じる反応により、フタロシアニンに高収率で容易に挿入されうるし、簡単に大量入手が可能であるため、選択される。中心部の金属原子もフタロシアニンの吸収極大の位置に影響を及ぼし、亜鉛とアルミニウムが、その吸収が特に600~700 nmの可視スペクトル領域内にあるため、当該化合物において好ましい。本願明細書に記載の亜鉛化合物が特に好ましい。
【0018】
本発明のフタロシアニンに対して、酸素を介して当該フタロシアニン核に結合したペンダント型の各有機ラジカルが、N-アルキル化ピリジニウムから独立して選択される結果、いずれのフタロシアニン核も2個以上の異なる有機ラジカルを有しうる。N-アルキル化ピリジンの実施例として、3-ヒドロキシ-1-メチルピリジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-エチルピリジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-プロピルピリジン-1-イウムがある。
【0019】
さらに、本発明で使用するフタロシアニンは、フタロシアニン核に隣接するアルファ位に、フタロシアニン核に対する置換基を有している。アルファ位にあるこの置換基はフタロシアニンの凝集を低下させる。凝集は一重項酸素の製造効率を低下させることが知られているため、本構造は凝集を防ぐことで一重項酸素の製造効率を上昇させ、その結果として抗菌活性やその他の活性を上昇させている。さらに、本発明の発明者達は、その他の望ましい性質を有する本願明細書に記載の分子を、大規模な研究によって実現化させた。当該分子は、Tinolux BBSやTinolux BMC等の市場で入手可能な類似物よりも、熱安定性やラジカル分解に対する安定性が高い。
【0020】
好ましい化合物の群において、陽イオン置換基(b)の総価数は2~3.9、より好ましくは2.5~3.5である。本願明細書に記載の化合物は、少なくとも+1~+3.9まで、好ましくは+2~+3.9、最も好ましくは+2.5~+3.5、の電荷を有する。N-アルキル化ピリジンに対する適切な対イオンには、ヨウ化物、塩化物、臭化物、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、及び、ヘキサフルオロリン酸を含むが、これらに限定されない。
【0021】
化学式1のフタロシアニンは、
(1)Zが、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、又はニトロ基から選択され、シアン基のうちの1つに対して第3位(アルファ位)にある、化学式2の置換1,2-ジシアノベンゼンと、
【0022】
【0023】
(2)化学式3の化合物を形成するために、Z群がピリジン基の酸素によって置換される、化合物のピリジン基の水酸基を、
【0024】
【0025】
反応させることで準備することができる。
【0026】
次に、1個以上の化学式3の1,2-ジシアノベンゼン化合物と、又は1個以上の化学式3と1,2-ジシアノベンゼンの化合物の組み合わせと、化学式1のフタロシアニンを形成するために温度を上昇させた不活性薬品に任意に含まれる、適切な金属又は金属塩との反応が続きうる。
【0027】
このような反応はGB 1489394、GB 2200650、DE 2455675において完全に記載されている。
【0028】
製造工程において、ピリジン基のアルキル化が最後に実施される。当該工程が完全には実施されない場合、いくつかのピリジル置換基が非アルキル化で非荷電な状態であり続けうる。当該工程は、最終的なアルキル化における温度をより高く又はより低くするために、温度や化学量論によって変更されうる。
【0029】
本発明は、フタロシアニン核の1位又は4位、5位又は8位、9位又は12位、13位又は16位(アルファ位)にある、化学式1で示されるような周辺の炭素原子の少なくとも1個が陽イオンである、本発明の置換フタロシアニン化合物の酸素存在下における、放射線による一重項酸素の製造工程も、提供する。適切な電磁放射線源には、太陽光、タングステン光、蛍光灯、LED光、及び、600~800 nmの領域で放射するレーザー光線、が含まれる。
【0030】
好ましい本発明のフタロシアニンとは、電磁波スペクトル領域が600~800 nm、特に630~770 nmの放射線に曝露した場合、一重項酸素の製造を促進するものである。
【0031】
当該一重項酸素の反応性は、光退色、光脱臭、光線力学的療法(PDT)、細菌、ウィルス、酵母、その他の微生物の光線力学的不活化、布、セメント、石材、レンガ、ガラス等を含む様々な物質表面上の目に見える汚れの処置、プラスチック、紙、パルプ漂白の殺菌分解、環境浄化、繊維上における抗菌作用、脱臭剤として例えば様々な繊維製品への組み込み、微生物や汚染物質を破壊するための塗料やフィルム処理への組み込み、自浄作用の付与のための、水泳プールを滅菌するための、及び、紙の黄ばみ/変色を防ぐための表面加工としての、セメント製品、ガラス製品、及び、塗料への組み込み、を含む、幅広い応用範囲において利用されうる。光退色や光脱臭への応用に対して、本発明のフタロシアニン化合物は、幅広い洗浄への応用において使用される、洗剤の処方に組み込まれうる。
【0032】
本発明の化合物は、抗菌性ポリマー、特にエラストマーを製造するために、特に天然又は合成ラテックスを鋳型上で凝固させることで、使用されうる。抗菌性手袋の製造工程には、水性凝固剤中で当該化合物を溶解させ、次にニトリル分散剤中に浸す工程を、含みうる。
【0033】
手袋は、手のような形状をした手袋の鋳型を液体ラテックスや混合化合物の槽に浸すことで、製造される。当該ラテックスはゴムを加硫するため用いられる加硫剤を含むことがあり、その結果として乾燥ゴム膜が形成される。当該鋳型は、当該ラテックスをゲル化し、当該鋳型から当該手袋を取り外しやすくするために、先ず凝固剤で覆われる。次に、被覆された鋳型は手袋を製造するために化合物の槽へ浸される。当該ラテックス手袋は、蛋白質や残存する化合物を洗い落とすために、当該鋳型上にある間に、洗い流し液に1回以上通過させうる。含水ゲルを加熱させたオーブン内で乾燥・加硫させることで、当該ラテックス手袋を鋳型から外すために裏返し、梱包し、及び/又は殺菌する前に、鋳型上で当該ラテックス手袋が加硫化する。
【0034】
本発明の製造工程において、当該一重項酸素の製造化合物は、水性凝固剤を用いる上記工程段階で溶解するよう設計されている。当該凝固剤は当該ラテックスを凝固させるために10~20%の硝酸化カルシウムを含みうる。典型的な染料には、例えばCa2+イオンを多く含む溶液では溶解性をしばしば欠くといった、本工程におけるいくつかのデメリットがある。化学式1、4、5に挙げたような本発明の上記染料化合物は、本環境において処理することができる、多くの特性を含んでいる。当該染料化合物は、多価陽イオン電荷のおかげで、カルシウム塩中において溶解することができる。さらに、多くのラテックス、特にニトリルラテックスは、陰イオン性カルボキシル基によって、安定化している。本発明の染料化合物は陰イオン性ニトリルポリマーと架橋することで、強固に結合することができ、当該染料化合物が浸出しない状態にしている。さらに、当該ラテックスは高温でのラジカル加硫により加硫化され、Tinolux BBSやTinolux BMC等の多くの既知フタロシアニン染料はこれらの状況下におけるラジカル反応によって劣化する。本発明の染料化合物は、Tinolux分子と比べて、温度安定性やラジカルな状況に対する安定性がより高いため、手袋製造工程において劣化しない。
【0035】
化学式1の染料は、手袋製造工程に用いる水性凝固剤溶液中に容易に溶解することもでき、浸漬中にエラストマーに対する鋳型表面に移行し、鋳型と不可逆的に結合し、加硫・乾燥後に光活性化抗菌性表面を形成する。
【0036】
本発明の医療用手袋は、天然ゴムラテックス、好ましくはニトリルゴムラテックスから製造されうる。
【0037】
本発明の化合物は、ヒト又は動物の身体の治療処置、特に皮膚、皮下癌、微生物感染症、又は光線力学的療法によるその他の疾患の治療、においても使用されうる。このような処置において、本発明の化合物は、病気に冒された組織に導入することができ、病気に冒された細胞を破壊する一重項酸素を製造するために、600~800 nm、好ましくは650~770 nmの領域にある電磁放射線で照射されうる。上記したように、本発明のフタロシアニン化合物は、特に600~770 nmの領域の電磁放射線の領域の影響下において、一重項酸素の形成を促進することができ、局所において一重項酸素の形成を促進することができる。
【0038】
レーザー励起後の三重項酸素量や一重項酸素の放出量の測定により、一重項酸素の製造効率(SΔ)を計算することができる。これらの測定の実験の詳細は、Gorman et al, Journal of the American Chemical Society [1987], 109, 3091、Gorman et al, Journal of the American Chemical Society [1989], 111, 1876、及びGorman et al, Photochemistry and Photobiology [1987] 45(2), 215において、より詳細に記載されている。
【0039】
これら物質の合成においては、単一のフタロニトリルからでさえ、異性体構造物の混合物が取得される。点群対称性はC4h、D2h、C2v、及びCsである(J. Mater. Chem. C, 2015,3, 10705-10714)。以下に示すこれらは1:1:2:4の割合で典型的には製造される。これら構造の全ては本願明細書に組み込まれている。
【0040】
【0041】
本発明は以下の実施例を参照することで開示されるが、開示された内容に限定されるわけではない。
【実施例】
【0042】
実施例1 テトラピリジニウム亜鉛フタロシアニンの準備
【0043】
(i) 3-(ピリジン-3-イルオキシ)フタロニトリルの準備
3-ニトロフタロニトリル(1.82 parts)を3-ヒドロキシピリジンと炭酸カリウム(2.9 parts)と共に10 partsのDMF中で撹拌し、90℃になるまで1時間加熱した。当該混合物を水に注ぎ、緑色を帯びた固形物をろ過した。
【0044】
(ii) テトラピリジン亜鉛フタロシアニンの準備
3-(ピリジン-3-イルオキシ)フタロニトリル(22 parts)を、塩化亜鉛(3.4 parts)、 尿素(1.5 parts)、モリブデン酸アンモニウム(0.04 parts)、及び、DBD(3 parts)と共に、完全に混合した。当該混合物は180℃になるまで撹拌しながら30分間加熱し、水に注ぎ、緑色を帯びた固形物をろ過し、水洗した。
【0045】
(iii) テトラピリジニウム亜鉛フタロシアニンヨウ化物塩の準備
上記で製造したテトラピリジン亜鉛フタロシアニン(12.5 parts)を、過剰量のメチルトシラート(10 parts)と共に、DMSO中において70℃で3時間加熱した。当該反応物を水に加えて、粘着物を製造した。緑色を帯びた固形物としてろ過されたヨウ化物塩を与えるため、当該反応物をヨウ化リチウム(8 parts)と共に撹拌した。NMRにおいて、四級化ピリジン:非四級化ピリジン比はおよそ3:1を示した。
【0046】
当該化合物24 mgを水1000 mlに溶解させ、1 cm路長のセルを用いてHach-Lange DR3900において測定することで、以下に示すような紫外部可視スペクトラムを取得した。
【0047】
【0048】
実施例2 テトラピリジニウムアルミニウムフタロシアニンの準備
【0049】
(i) 3-(ピリジン-3-イルオキシ)フタロニトリルの準備
3-(ピリジン-3-イルオキシ)フタロニトリルを上記のように準備した。
【0050】
(ii) テトラピリジンアルミニウムフタロシアニンの準備
3-(ピリジン-3-イルオキシ)フタロニトリル(3 parts)を、過剰量の塩化アルミニウム(1 parts)及びDBU(0.5 parts)と共に、n-ペンタノール(10 parts)中で完全に混合した。当該混合物を還流させるために撹拌しながら140℃で12時間加熱し、水:メタノール比が1:1の溶液(10 parts)に注ぎ、緑色を帯びた固形物をろ過させた。
【0051】
(iii) テトラピリジニウムアルミニウムフタロシアニンヨウ化物塩の準備
上記で製造したテトラピリジンアルミニウムフタロシアニン(12.5 parts)を、過剰量のメチルトシラート(10 parts)と共に、DMSO中において70℃で3時間加熱した。当該反応物を水に加え、粘着物を製造した。緑色を帯びた固形物としてろ過されたヨウ化物塩を与えるため、当該反応物をヨウ化リチウム(8 parts)と共に撹拌した。NMRにおいて、四級化ピリジン:非四級化ピリジン比はおよそ3:1を示した。
【0052】
実施例3 抗菌性エラストマーの準備
【0053】
実施例1で得た0.25 partsの化合物を、1500 partsの硝酸カルシウムを含む5100 partsの水に溶解した。0.8 partのステアリン酸カルシウム離型剤を当該混合物に加えた。150℃になるまで加熱した磁器製鋳型を凝固剤に浸し、オーブンにおいて150℃で15分間乾燥させた。乾燥させた鋳型をニトリルラテックス懸濁液(Nantex 672)に浸し、加硫して乾燥させた。当該手袋を鋳型から外し、手袋表面をASTM D7907規格に従い検査した。黄色ブドウ球菌を培養時間5分あたり死菌数がlog 5を超えるまで減少させた。手袋製造工程は、アメリカ合衆国特許8936843 B2やそこで開示されている参照文献において、より完全に記載されている。
【0054】
実施例4 テトラピリジニウム亜鉛フタロシアニンの代替的準備
【0055】
(i) 3-(ピリジン-3-イルオキシ)フタロニトリルの準備
3-(ピリジン-3-イルオキシ)フタロニトリルをJ Organomet Chem. 2009 May 1; 694(11): 1607-1611において記載されているように準備した。
【0056】
(ii) テトラピリジン亜鉛フタロシアニンの準備
3-(ピリジン-3-イルオキシ)フタロシアニン(145 parts)を2-エチルヘキサノール(242 part)に加え、続いて塩化亜鉛(21 parts)とDBU(parts Kg)を加えた。環化を生じさせるために、当該反応を150℃になるまで加熱して起こし、次に冷却して、イソプロパノール(1600 parts)を用いて結晶化させた。ピリジルオキシ亜鉛フタロシアニンを与えるため、当該製品をろ過し、追加のイソプロパノールを用いて洗浄し、乾燥させた。
【0057】
(iii) テトラピリジニウム亜鉛フタロシアニンヨウ化物塩の準備
当該ピリジルオキシ亜鉛フタロシアニン(140 parts)とメチルトシラート(120 parts)を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に加えた。四級化を生じさせるために当該混合物を加熱し、次に冷却して、ヨウ化リチウム(160 parts)を含むイソプロパノール(3100 parts)を用いて混合した。四級化亜鉛フタロシアニンを主要なヨウ化物塩として与えるため、当該製品をろ過し、追加のイソプロパノールを用いて洗浄し、乾燥させた。
【0058】
以下で提示される追加の実施例も準備した:
【0059】
【0060】