(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】円筒状多孔質膜用モジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 63/06 20060101AFI20240213BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20240213BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20240213BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20240213BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20240213BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20240213BHJP
【FI】
B01D63/06
B01D63/00 500
B01D29/10 501Z
B01D29/10 510C
B01D29/10 530A
B01F23/23
B01F23/41
B01F25/40
(21)【出願番号】P 2019201824
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】597011566
【氏名又は名称】エス・ピー・ジーテクノ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 光輝
(72)【発明者】
【氏名】糸平 俊一
(72)【発明者】
【氏名】前田 大悟
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭55-037284(JP,B2)
【文献】特開2011-080578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00-71/82
C02F 1/44
B01D 24/00-35/05
35/10-37/04
B01F 21/00-25/90
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次室が形成され、他方に二次室が形成されている円筒状多孔質膜により仕切られた円筒状多孔質膜モジュールは、当該円筒状多孔質膜モジュールを構成する円筒部材の中心軸上に、均一な平均細孔径0.05~100μmを有する当該円筒状多孔質膜が挿入されており、当該円筒部材内側面と当該円筒状多孔質膜の外側面の間にリング外径が大と小の二Oリング一組が当該円筒状多孔質膜の両辺縁部、つまり当該円筒部材の両開口部に配置されるものであって、当該二Oリング一組を当該円筒部材の両開口部からそれぞれ挿入したときに、当該円筒状多孔質膜の辺縁部の最大20mmより内部に侵入できないように当該円筒部材の内部には内向き段のOリング支え部が設けられており、当該二Oリングのうちリング外径が小の小Oリングの内面部が当該円筒状多孔質膜外側面に当接し、かつ当該円筒状多孔質膜には当接せず当該小Oリングの外周面に当接しながら緩衝する小Oリング外径とリング内径が等しいか、または大きい大Oリングの外周面が当該円筒部材の内側面に当接し、かつ当該二Oリングは、当該小Oリングの線径と当該大Oリングの線径の比、つまり大Oリングの線径/小Oリングの線径が、0.5乃至3倍であって、当該小Oリングと当該大Oリングの二Oリングの配置は、当該円筒状多孔質膜モジュール内の円筒状多孔質膜の軸方向x軸に対し90度交差するy軸を含む同平面状に放射状に当該二Oリングの線形中心が位置するように配置され、当該二Oリングは互いに当接、あるいは当該二Oリングを圧迫するための押さえアダプターにより圧迫されたとき、当該大Oリングが当該小Oリングに当接圧着するように配置される当該円筒部材に設けたOリング支え部の構造であり、当該二Oリングを圧迫するための当該押さえアダプターは、螺合手段あるいはクランプ手段により当該両開口部をそれぞれ締め付けて当該二Oリングが緩衝し合い同時に圧迫することができ、当該円筒状多孔質膜を介して当該一次室と二次室を液密あるいは気密を保持し、当該円筒状多孔質膜が脱着できることを特徴とする円筒状多孔質膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状多孔質膜を用いた円筒状多孔質膜モジュールに係るものであり、多孔質膜を用いた用途には、膜乳化、膜バブリング、膜ろ過など様々である。これらの用途において膜を搭載するモジュールは、膜を介して一次側と二次側を液密、あるいは気密に隔てることが最も重要である。そこで本発明は、膜を介して1次側と2次側の室を液密、あるいは気密に隔てるためのシール構造に特徴を有する円筒状多孔質膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質のような微細孔を有さないムク棒や鉄パイプなどをOリングでシールすることは一般的な事項だが、外観形状は同じにしてもそれが本発明に係る当該多孔質膜では、そのOリングの使い方には注意が必要で限りがある。多孔質膜を用いた産業において、多孔質膜を搭載するモジュールでは、膜乳化や膜ろ過・膜分離、膜バブリングなど様々な分野で活用されており、所謂膜モジュールは、多孔質膜を隔てて、その細孔から液体または気体となる相を反対側の別の相へ分散、または混合相から特定の相を抽出するものであるために、当該多孔質膜を介して相を隔てるシール構造は非常に重要である。つまり多孔質膜の細孔以外、例えばシール不足による隙間からの相の流通は、その細孔由来の生成物が得られないことになり、目的品質とならない。
【0003】
例えば、膜乳化で生成されるエマルションは、細孔由来の分散粒子径を得るところ、シール機構に不足がありその隙間から粗大な分散粒子が生成されると不均一なエマルションとなり問題となる。
【0004】
また、膜ろ過で細孔径に従う抽出物を得たいところ、シール機構が不十分で隙間があると、その隙間からの漏れにより、本来の微粒子以外の粗大粒子が混在し、抽出不良の問題となる。
【0005】
そこで、多孔質膜のシール漏れを完全に防止し、均一な分散粒子のエマルションや、ろ過に好適に使用される円筒状多孔質膜のシール構造を提供する特許文献1、また、膜乳化で周知の技術である特許文献2、特許文献3が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-103524
【文献】特開平06-315617
【文献】特開2007-125535
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明を含めこれら特許文献の方法によると、円筒状多孔質膜モジュール本体である円筒部材と当該円筒状多孔質膜の両辺縁部をOリングで圧着支持する場合、片側をOリング押さえナットでねじ込み圧着させ、さらに反対側のOリングを押さえナットでねじ込み圧着させるということで、円筒状多孔質膜にはねじれ方向に応力が加わることになり、そのOリングにも捻じれの応力が加わることになる。特に円筒状多孔質膜の外径にバラつきがあると、その内径と外径と線径の合ったサイズのOリングを選択しなければ、例えばOリング捻じれにより隙間ができたり、シール空間がOリングで十分満たされず隙間が残ったままである可能性があり、その隙間からのエマルション分散粒子の生成やろ過時の漏れが発生し、多孔質膜細孔由来の正しい膜乳化やろ過、バブリングが行えないことになる。
【0008】
膜乳化において、分散相液を間違いなく多孔質膜細孔だけから押出すためには、前記円筒部材と円筒状多孔質膜をOリングにより液密に保持しなければならないが、円筒状多孔質膜に前記ねじれ方向に応力が加わっていると長時間乳化最中に、互いにねじれ戻り方向に復元力が働き、前記円筒部材と円筒状多孔質膜のOリングによる液密が保たれず、多孔質膜細孔以外から分散相液が漏れてしまい、粗大な分散相粒子が発生することで多分散エマルションという不良品になってしまう。特に円筒状多孔質膜の外径にバラつきがあると、Oリングの選択において、汎用のOリングは、その線径の太さやリング外径が様々存在し、当該円筒状多孔質膜モジュールに採用する一種類の一Oリングの選択を間違えると大いにその上述の隙間という不具合を発生させてしまう可能性が高い。また頻繁な脱着を行い使用する場合、操作そのものが面倒な上、円筒状多孔質膜の外径に合わせたその最適なOリングの選択が非常に煩わしい。あるいは、当該円筒状多孔質膜の外径がバラつき内で細いからと言って、円筒部材当該円筒部材の当該Oリングを設置する空間を狭くして、選択した一Oリングにより当該隙間が残らないような設計をしても、逆に当該円筒状多孔質膜の外径がバラつき内で大きい場合には、その空間に入るような妥当な一Oリングが無いなど対応できないことになる。
【0009】
そこで
図9に示すような特許文献1の従来の単なる同径Oリングを二重、三重などと重ねて円筒状多孔質膜に当接する手段で円筒状多孔質膜との隙間を封じ当該液密・気密を図る手段にしても、結局円筒状多孔質膜の外径のバラつきに合わせて最適なOリングを選択しなければならない。つまり、同Oリングを二重、三重などと重ねて使用しても、円筒状多孔質膜のバラつきのある外径に対して、最適な線径とリング径の一意の一Oリングを選択しなければならないということは同じく煩わしく、前述同様、同じOリングを多重にしても液密・気密を満足できるという安心は得られない。
【0010】
何れにしても、当該多孔質膜を用いる産業分野では、その多孔質膜細孔由来の生成物を必要とするもので、所謂液密が保持されず当該多孔質膜細孔以外の各隙間から各相の流通が発生すると、例えば膜乳化の場合、粗大粒子が発生することになり、またろ過の場合、正しい抽出や分級が行えないことになる。更に装置外部への漏洩となると、場合によっては衛生面や環境汚染などの危険を招く事態も考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、当該Oリングのシール機構で隙間が起こりにくく、円筒状多孔質膜外径のバラつきに対して面倒なOリングサイズの厳密な選択が不要で、大小二種のOリングで、また少ない組み合わせで当該円筒状多孔質膜のバラつきをカバーし、十分液密・気密を確保できる画期的なシール構造の円筒状多孔質膜モジュールを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の円筒状多孔質膜モジュールに関するものである。
項1.一次室が形成され、他方に二次室が形成されている円筒状多孔質膜により仕切られた円筒状多孔質膜モジュールは、当該円筒状多孔質膜モジュールを構成する円筒部材の中心軸上に、均一な平均細孔径0.05~100μmを有する当該円筒状多孔質膜が挿入されており、当該円筒部材内側面と当該円筒状多孔質膜の外側面の間にリング外径が大と小の二Oリング一組が放射状にそれぞれ整列して当該円筒状多孔質膜の両辺縁部、つまり当該円筒部材の両開口部に配置されることを特徴とする円筒状多孔質膜モジュール。
項2.前記二Oリング一組を前記円筒部材の両開口部からそれぞれ挿入したときに、前記円筒状多孔質膜の辺縁部の最大20mmより内部に侵入できないように当該円筒部材の内部には内向き段のOリング支え部が設けられており、当該二Oリングのうちリング外径が小の小Oリングの内面部が当該円筒状多孔質膜外側面に当接し、かつ円筒状多孔質膜には当接せず当該小Oリングの外周面に当接しながら緩衝する小Oリング内径よりリング内径が大きく、当該小Oリング外径よりリング外径が大きい大Oリングの外周面が当該円筒部材の内側面に当接し、当該二Oリングを圧迫するための押さえアダプターを螺合手段あるいはクランプ手段により当該両開口部をそれぞれ締め付けて当該二Oリングが緩衝し合い同時に圧迫され、当該円筒状多孔質膜を介して当該一次室と二次室を液密あるいは気密を保持し、当該円筒状多孔質膜が脱着できることを特徴とする項1に記載の円筒状多孔質膜モジュール。
項3.前記二Oリングにおいて、リング外径が小の前記小Oリングの線径とリング外径が大の大Oリングの線径の比、大Oリングの線径/小Oリングの線径が、0.5乃至3倍であることを特徴とする項1または2に記載の円筒状多孔質膜モジュール。
項4.前記小Oリングと前記大Oリングの二Oリングの配置について、前記円筒状多孔質膜モジュール内の円筒状多孔質膜の軸方向x軸を含む平面で見たとき、当該小Oリングは、当該x軸と90度公差する平面のy軸上に配置され、当該大Oリングは、当該小Oリングの線径中心を基点として、当該y軸に対し0度乃至45度の傾きz軸、または0度乃至-45度の傾き-z軸の範囲内に当該大Oリングの線径中心が収まるよう、当該小Oリングと平衡あるいは同一平面上に配置され、かつ当該二Oリングは互いに当接、あるいは当該二Oリングを圧迫するための前記押さえアダプターにより圧迫されたとき、当該大Oリングが当該小Oリングに当接圧着するように配置される前記円筒部材に設けた前記Oリング支え部の構造であることを特徴とする項1乃至3に記載の円筒状多孔質膜モジュール。
【0013】
ここで本発明において利用する、当該円筒状多孔質膜は、無機質多孔質体、有機質多孔質体があるが、無機質多孔質体には炭素質多孔質体、炭化ケイ素多孔質体、シリカアルミナ系多孔質体、ゼオライト系多孔質体、粘土系多孔質体、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、金属及び金属酸化物系多孔質がある。有機質多孔質体においては、高分子多孔質焼結体などがある。本発明においては、これらの多孔質体を有効に利用することが可能である。本発明において適している分相法多孔質ガラス体として周知のNa2O-B2O3-SiO2を基礎ガラス組成とし骨格SiO2組成となる多孔質ガラス、Na2O-B2O3-CeO2・3Nb2O5を基礎ガラス組成とし骨格CeO2・3Nb2O5組成となる多孔質ガラス、Na2O-P2O5-SiO2を基礎ガラス組成とし骨格P2O5-SiO2組成となる多孔質ガラス、Na2O-B2O3-SiO2-GeO2を基礎ガラス組成とし骨格SiO2-GeO2組成となる多孔質ガラス、CaO-B2O3-TiO2-SiO2を基礎ガラス組成とし骨格TiO2-SiO2組成となる多孔質ガラス、Na2O-B2O3-ZrO2-SiO2を基礎ガラス組成とし骨格ZrO2-SiO2組成となる多孔質ガラス、CaO-B2O3-Al2O3-SiO2を基礎ガラス組成とし骨格Al2O3-SiO2組成となる多孔質ガラスがあるが、最も適しているCaO-B2O3-SiO2-Al2O3系の多孔質ガラス、CaO-B2O3-SiO2-Al2O3-Na2O系の多孔質ガラス及びCaO-B2O3-SiO2-Al2O3-Na2O-MgO系の多孔質ガラスなどを円筒状に成形した多孔質膜として使用するのが好ましい。本発明に最も適している後述の本実施例で用いたCaO-B2O3-SiO2-Al2O3系多孔質体のシラス多孔質ガラス膜(以下、SPGという)は、膜を貫通する無数の超微細孔を有し、気孔率が非常に高く、細孔の均一性について非常に優れている公知の多孔質ガラス膜である。成形するSPGの形状自体は特に限定されないが、平板形、円柱形など使用目的に応じた形状に成形できる。SPGはガラスフィルターであり、円筒状のものでは外圧に対して約20MPa耐えることもできる。またSPGの多孔質を構成する気孔率は微細孔径に因ることなく約50%乃至60%を有する。液体をこのSPGに透過させるのに高圧は全く必要なく、非常に低エネルギーで透過させることができる透過性に優れた多孔質体である。
【発明の効果】
【0014】
当該円筒状多孔質膜モジュールでは、本発明に係る円筒状多孔質膜モジュールのように円筒状多孔質膜の外側面と円筒状多孔質膜モジュールの本体となる円筒部材内側面の両面への密着が最も重要である。つまり、円筒状多孔質膜の軸方向x軸に対して、90度公差する平面のy軸方向への当接圧着が液密性・気密性を確保するため最も重要である。
【0015】
従来の特許文献1のように円筒状多孔質膜外側面と当接する面積が増えるように所謂同径Oリングを二重、三重と設けることや、円筒状多孔質膜外側面に薄層のシールテープや熱収縮テープを巻く手段であっても円筒状多孔質膜の外径バラつきに対してOリングサイズの選択を誤ると液密あるいは気密は保持できない。むしろ本発明のように段階的にリング径の異なる小Oリングと大Oリングを放射状に2段設ける方が功を奏するものである。
【0016】
円筒状多孔質膜モジュールにて円筒状多孔質膜の両側をOリングの押さえ螺合部材などでそれぞれ圧着液密支持することにおいて、従来の円筒状多孔質膜の外側面と膜モジュール本体となる円筒部材の内側面に一Oリングで密着させる、あるいは同径のOリングを円筒状多孔質膜の外側面に二重、三重などと重ねて密着させるという構造では、円筒状多孔質膜の外側面と当該円筒部材の内側面が形成する空間を封止するためのそのOリングサイズの選択が結局正しくなければ、サイズ不足や両側の押さえ螺合部材の捻じれ圧迫などにより、漏れの原因となる隙間が容易に形成されてしまう。
【0017】
これに対して、本発明は、円筒状多孔質膜の外側面に当接する一Oリングのさらに外周を覆うようにリングサイズの大きい一Oリングを放射状に設けて当該円筒部材の内側面に当接し、円筒状多孔質膜の外側面と円筒部材の内側面を密着させる機構であるので、円筒状多孔質膜外径のバラつきがあったとしても、リングサイズの異なる二種類の大小Oリングが前述の空間に収まり当該螺合部材で圧迫される際、互いに緩衝し合い不具合の基になる捻じれ圧着が緩和されて、両側の押さえ螺合部材の捻じれ圧着の応力を、互いに緩衝しあい捻じれが復元され正しい姿勢でシール機構を満足するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明によれば、従来のような多孔質膜を隔てて形成される一次室と二次室の液密・気密を損なうような一Oリングのシール不足による漏れの心配がなく、当該円筒状多孔質膜外径のバラつきがあったとしても、煩わしい適時詳細なOリングサイズの選択をする必要もなく、リング外径の異なる二種類の大小Oリングの少ない選定で容易にその液密・気密を確保することができる。
【0019】
本発明で使用される最も適している多孔質膜であるSPGは、膜を貫通する無数の微細孔を有し、気孔率が非常に高く、細孔の均一性について非常に優れている。また使用目的に応じた形状に成形できる。SPGの多孔質を構成する気孔率は、細孔径に因ることなく約50%乃至60%を有しており多孔質膜のなかでも非常に透過性に優れているので、液体や気体を該SPGに透過させるのに低エネルギーで押し出すことができる。
【0020】
本発明によれば、例えば膜乳化の実施中に液密支持の一Oリングからの分散相液漏れの心配がなく、円筒状多孔質膜細孔から押し出される分散相液滴のエマルションを生成することが可能で、乳化開始時の厳密なOリング選択の手間が必要なく非常に簡潔で、多数種類の頻繁な使用操作に適するものである。
【0021】
本発明で使用される最も適している多孔質膜であるSPGは、膜を貫通する無数の微細孔を有し、気孔率が非常に高く、細孔の均一性について非常に優れており、使用目的に応じた形状に成形できる。またSPGの多孔質を構成する気孔率は、細孔径に因ることなく約50%乃至60%を有しており、多孔質膜のなかでも非常に透過性に優れているので、液体や気体をSPGに透過させるのに低エネルギーで押し出すことができる。
【0022】
ここで本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。また以下の実施例は一例として示されるものであり、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図1(a)に示すように、本発明の円筒状多孔質膜モジュール1aの本体となる円筒部材6の中心x軸上に、円筒状多孔質膜1のSPGが挿入されており、当該x軸を含む平面図において、当該円筒状多孔質膜1の両辺縁部、つまり当該円筒部材の両開口部には、当該円筒状多孔質膜1の外側面2aと当該円筒部材6の内側面3aとの間に、当該円筒状多孔質膜1の外側面2aにOリングの内周面が当接圧着、あるいはねじキャップ7の螺合による押さえアダプター5の押圧でOリングの内周面が当接圧着する小OリングのOリング2が配置されており、更に当該円筒部材6の内側面3aにOリングの外周面が当接圧着、あるいはねじキャップ7の螺合による押さえアダプター5の押圧でOリングの外周面が当接圧着する大OリングのOリング3が、
図1(b)に示すように放射状にそれぞれ整列して配置されており、大小の当該二Oリングは、押さえアダプター5の押圧によりそれぞれが当接するものであり、それぞれ大小二種類のOリングは、それ以上x軸方向円筒部材6内部に侵入しないように、当該円筒部材6の内部に内向き段のOリング支え部6aが設けられている。
【0024】
またこのOリング支え部6aは、必要以上に円筒部材6のx軸上内部にある必要はなく、当該円筒状多孔質体1の両辺縁部を当該二Oリングで圧迫するのに十分な位置であって、両Oリング支え部6aはなるべく離れているほうが当該円筒状多孔質膜1の有効な細孔面積が確保できるので好ましい。よって、当該Oリング支え部6aは、当該円筒状多孔質膜1の両端から最長20mm以内となるように設けることが好ましい。
【0025】
詳しくは、例えば、当該円筒状多孔質膜1の全長が500mmの場合、当該二Oリングが当該円筒状多孔質膜1の外周面に当接圧着する位置は10mm乃至20mmとなるように当該Oリング支え部6aを設けることが好ましく、このときの多孔質膜細孔面積の有効長は大よそ460mm乃至480mmとなる。また当該円筒状多孔質膜1の全長が10mmの場合、当該二Oリングが当該円筒状多孔質膜1の外周面に当接圧着する位置は3mm程度となるように当該Oリング支え部6aを設けることが好ましく、このときの多孔質膜細孔面積の有効長は大よそ4mmとなる。
【0026】
さらに当該Oリング支え部6aは、当該円筒状多孔質膜1の外側面2aに当接する小OリングであるOリング2の線径軸中心2sが円筒部材6の中心x軸に90度公差する平面のy軸上に配置され、当該Oリング2の内径よりリング内径が大きく、当該Oリング2の外径よりリング外径が大きい、当該円筒部材6の内側面3aにリング外周面が当接する大OリングであるOリング3の線径軸中心3sが、当該中心2sを基点に円筒部材6の外部方向に45度傾いたz軸との間に収まり、当該Oリング2と平衡にy’軸上に配置されるように構成されるものであり、これに合わせて押さえアダプター5の形状を構成したものである。
【0027】
また、本一実施例に示される大小二Oリングの当該Oリング支え部6a形状については、
図1に示すような階段状ではなく押さえアダプター5のようにスロープ状に構成してもよい。
【実施例2】
【0028】
図1に示すOリング支え部6aが、
図2(a)に示すように、当該円筒状多孔質膜1の外側面2aに当接する小OリングであるOリング2は、その線径軸中心2sが円筒部材6の中心x軸に90度交差する平面のy軸上に配置され、当該Oリング2の外径よりリング内径が同等もしくは大きく、当該円筒部材6の内側面3aに当該リング外径が当接する大OリングであるOリング3は、その線径軸中心3sも同様当該平面の当該y軸上に配置されるように構成されるものであり、これに合わせて押さえアダプター5の形状を構成したものである。
【実施例3】
【0029】
図1に示すOリング支え部6aが、
図2(b)に示すように、当該円筒状多孔質膜1の外側面2aに当接する小OリングであるOリング2は、その線径軸中心2sが円筒部材6の中心x軸に90度交差する平面のy軸上に配置され、当該Oリング2の内径よりリング内径が大きく、当該Oリング2の外径よりリング外径が大きい、当該円筒部材6の内側面3aにリング外周面が当接する大OリングであるOリング3は、その線径軸中心3sが、当該中心2sを基点に円筒部材6の内部方向に-45度傾いた-z軸との間に収まり、当該Oリング2と平衡にy’軸上に配置されるように構成されるものであり、これに合わせて押さえアダプター5の形状を構成したものである。
【0030】
また、本一実施例に示される大小二Oリングの当該Oリング支え部6a形状については、
図2(b)に示すような階段状ではなく押さえアダプター5のようにスロープ状に構成してもよい。
【実施例3】
【0031】
図3(a)に示す本発明の円筒状多孔質膜モジュール1aにおいて、例えば膜乳化で使用する場合、一方の押さえアダプター5に連結した連絡継手9aと、もう片方の押さえアダプター5に連結した連絡継手9bに、
図4(a)に示す乳化の連続相14aとなる液相を送液手段14bを介して循環するための回路を接続することで、当該円筒状多孔質膜モジュール1aの連絡継手9a、9bには、それぞれ連絡通路12aと12bとして当該連続相14aが流通することとなり、当該円筒状多孔質膜1の内管、つまり二次室12には連続相14aが送液されることになる。一方、当該円筒状多孔質膜モジュール1aの2箇所の側口6bに連結したそれぞれ連絡継手9c、9dは、それぞれ連絡通路11a、11bとして、例えば
図4(a)に示す乳化の分散相13aとなる液相を送液手段13bにより連絡通路11aへ圧送することで、一次室11に分散相13aが供給され、当該円筒状多孔質膜1の細孔を介して二次室12を流れる連続相14a中に分散相13a液滴として所謂膜乳化することができる。ここでもう一方の連絡通路11bには、乳化開始時に一次室11に介在する空気を抜いたり、乳化終了時に一次室11に貯留する分散相を抜いたりするためのドレン機構としてバルブ19が設けられている。
【0032】
図3(b)に示す本発明の円筒状多孔質膜モジュール1aにおいて、例えば、2箇所の側口6bに連結するそれぞれ連絡継手9c、9dは、それぞれ連絡通路11a、11bとして、例えば
図4(b)に示す処理前相15aを送液手段13bにより連絡通路11aへ圧送することで、一次室11に処理前相15aが供給され、当該円筒状多孔質膜1の細孔を介して、二次室12にわたり、連絡通路12aから、例えば乳化液やろ液など処理後相16aとして採取できる。
【実施例4】
【0033】
図5(a)に示すように、本発明の円筒状多孔質膜モジュール1aの本体となる円筒部材6は当該円筒状多孔質膜1の両端に独立して設置されており、各端において当該円筒状多孔質膜1の外側面にOリングの内周面が当接圧着、あるいはねじプラグ8の螺合による押さえアダプター5の押圧でOリングの内周面が当接圧着する小OリングであるOリング2と、当該円筒部材6の内側面にOリングの外周面が当接圧着、あるいはねじプラグ8の螺合による押さえアダプター5の押圧でOリングの外周面が当接圧着する大OリングであるOリング3が配置されており、
図1乃至
図3同様、それぞれ大小二種類のOリングを押さえアダプター5で押圧する際支持するために当該円筒部材6にOリング支え部6aが設けられている。
【0034】
またこのOリング支え部6aは、当該円筒状多孔質膜1の辺縁部に設けることが好ましく、当該円筒状多孔質体1の両辺縁部を当該二Oリングで圧迫するのに十分な位置であって、両Oリング支え部6aはなるべく離れているほうが当該円筒状多孔質膜1の有効な細孔面積が確保できるので好ましい。よって、当該Oリング支え部6aは、当該円筒状多孔質膜1の両端から最長20mm以内となるように設けることが好ましい。
【0035】
本実施例の円筒状多孔質膜モジュール1aは、例えば連絡通路10aから流入し当該円筒状多孔質膜1内部の一次室10を通過し連絡通路10bへ流出する装置システムにおいて、処理相内部(図示しない)の固形物を避けて当該処理相の液相だけを当該円筒状多孔質膜1の細孔を介して二次室12へ抽出するろ過や分級などに使用することができる。
【実施例5】
【0036】
図5(b)に示すように、本発明の膜モジュール1aは、
図5(a)の両端の円筒部材6を円筒部材支持体6cでそれぞれを固定し一体化し、連絡通路10bを封止ねじプラグ8’で封止したものである。
【0037】
これは、例えば連絡通路10aから当該円筒状多孔質膜1内部の一次室10内に、ある送圧手段によりガスを流入させ、当該円筒状多孔質膜1の細孔を介して二次室12の液相中へのバブリングなどに使用することができる。
【実施例6】
【0038】
図6に示すように、本発明の円筒状多孔質膜モジュール1aは、当該円筒部材6に複数本の当該円筒状多孔質膜1が束状に並設されており、各円筒状多孔質膜1は、本発明の2種類の大小Oリングによる液密・気密構造により配置されるもので、つまりそれぞれの円筒状多孔質膜1は、当該円筒状多孔質膜1の外側面2aにOリングの内周面が当接する小のOリング2と、当該円筒部材6と一体となる円筒部材盤6dに設けた円筒状多孔質膜1の並設穴6’の内側面3aにOリングの外周面が当接する大のOリング3が配置されており、各併設穴6’に設置される各二種類のOリング2、3は、
図5(a)、(b)の実施例同様、ねじプラグ8の螺合による押さえアダプター5の押圧で圧迫され、
図3(a)と同様の一次室11と二次室12が当該円筒状多孔質膜1を介して液密・気密に確保できるものである。
【0039】
この円筒状多孔質膜複数並設式の円筒状多孔質膜モジュール1aは、
図4に示す実施例のとおり、円筒状多孔質膜モジュール1aと同様の使用方法ができるものである。
【実施例7】
【0040】
図7に示す本発明の円筒状多孔質膜モジュール1aは、
図5(b)の円筒状多孔質膜モジュール1aが平面状に並設されており、各円筒状多孔質膜1内部の一次室10と二次室12が当該円筒状多孔質膜1を介して液密・気密に確保できるものである。
【実施例8】
【0041】
図8に示すように、
図7に示す本発明の円筒状多孔質膜モジュール1aの各連絡通路10a、10b、10cを共有連絡し、二次室12となる連続相14a内の底部に設置し、分散相13aを各円筒状多孔質膜1内部に各連絡通路10a、10b、10cからある圧送手段により流入させ当該円筒状多孔質膜1の細孔を介して連続相14a中に細孔由来の微粒子として分散させることができる。
【0042】
これは、例えば分散相13aとして有効成分を有する油溶液を、連続相14aとする水溶性界面活性剤を含む水溶液中に、当該円筒状多孔質膜1を介してその細孔由来の油溶液滴を分散する所謂O/W型エマルションを生成することができる。
【0043】
また、例えば分散相13aのガスを連続相14aの液相に当該円筒状多孔質膜1を介してその細孔由来の気泡としてバブリングすることができる。
【0044】
(実験例1)
本実験例で使用する円筒状多孔質膜SPGは、外径φ9.5mm乃至φ10.5mmのバラつきがあり、本実験例では外径φ9.5mmの細目のもの、長さ125mmを使用した。ここで本発明の円筒状多孔質膜モジュールには、
図3(a)に示すように、小Oリング2として規格P10A(外径14.6×内径9.8mm、線径2.4mm)のフッ素ゴム製を、また大Oリング3として規格P16(外径20.6×内径15.8mm、線径2.4mm)のフッ素ゴム製を用いた。そしてその液密性を確認するために、
図4(a)に示すSPG細孔由来の単分散エマルションの生成が可能な所謂膜乳化法により、そのシール不足によるOリング隙間からの漏れを窺わせるような粗大粒子が発生しないか乳化実験を行った。SPG細孔径は1μmを用いて、連続相に0.5wt%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)水溶液、分散相に灯油を使用した。その結果、粒度分布を測定したところ、分散粒子のメディアン径(50%D)は約3.8μmで、単分散性の指標となる積算分布の90%D/10%D=αはα=2.5以下であれば単分散と見ると、本実験例ではα=1.8となり、均一なエマルション粒子が生成されていることが確認できた。ちなみに、当Oリング2とOリング3の配置関係は、Oリング2に対して、所謂
図1に示すOリング支え部6aの段は1mm、円筒部材の外部方向に設けた階段状とし、つまりこの配置は実施例1のとおり、Oリング2の線径中心2sから放射状のz軸45度以内にOリング3の線径中心3sを配置したもので、押さえアダプターによる圧迫で当該Oリング2とOリング3が互いに緩衝し合い、所謂円筒状多孔質膜SPGの外側面と当該円筒部材の内側面に圧着されて液密・気密が確保できていることが確認できた。
【0045】
(実験例2)
本実験例では、使用したSPGの外径φ10.5mmの太目のもの以外実験例1と同条件である。その結果、粒度分布では、実験例1の結果と同様、分散粒子のメディアン径(50%D)は約3.7μmで、単分散性の指標となる積算分布の90%D/10%D=αはα=1.8となり、やはり均一なエマルション粒子が生成されていることが確認できた。よって、本実験例においても、押さえアダプターによる圧迫で当該Oリング2とOリング3により液密・気密が確保できていることがわかる。
【0046】
また、使用したSPGの外径がφ9.5mmからφ10.5mmと大きく異なっても、使用した二Oリングの小Oリングである規格P10Aとで大Oリングである規格P16はそのままで何ら問題なく液密性を確保することができることが確認できた。
【0047】
(実験例3)
本実験例では、小Oリング2に規格SS10(外径11.5×内径9.5、線径1.0)と大Oリング3に規格P12(外径16.6×内径11.8、線径2.4)を使用した以外実験例1と同じ条件である。その結果、エマルション粒度分布では、メディアン径(50%D)は約3.8μmで、単分散性の指標となる積算分布の90%/10%D=αは、α=1.8となり、均一なエマルションが得られることが確認できた。
【0048】
(実験例4)
本実験例では、小Oリング2に規格S10(外径12.5×内径9.5、線径1.5)と大Oリング3に規格P14(外径18.6×内径13.8、線径2.4)を使用した以外実験例1と同じ条件である。その結果、エマルション粒度分布では、メディアン径(50%D)は約3.7μmで、単分散性の指標となる積算分布の90%/10%D=αは、α=1.8となり、均一なエマルションが得られることが確認できた。
【0049】
(実験例5)
本実験例では、大Oリング3に規格S15(外径17.5×内径14.5、線径1.5)を使用した以外実験例1と同じ条件である。その結果、エマルション粒度分布では、メディアン径(50%D)は約3.8μmで、単分散性の指標となる積算分布の90%/10%D=αは、=2.0となり、均一なエマルションが得られることが確認できた。
【0050】
以上の実験例のとおり、小Oリング2と大Oリング3の組み合わせを表1に示すが、小のOリング2と大のOリング3の特に線径は、本発明に係る円筒状多孔質膜モジュールの液密性あるいは気密性に重要であり、線径が細すぎると高圧時のシール性が乏しくなり、また太すぎると当該モジュールの設計上無駄に大きくなりコスト高で現実的ではなくなる。従って、このとおり当該Oリング2とOリング3の線径比は、Oリング3/Oリング2=0.5乃至3倍程度であれば十分液密性あるいは気密性が保持できる。
【0051】
【0052】
(比較例1)
本比較例においてSPGは、実験例1と同様に外径φ9.5mmの細目のものを使用した。ここで
図9に示すとおり、従来の円筒状多孔質膜モジュールに液密・気密にセッティングするために規格P10A(外径14.6×内径9.8mm、線径2.4mm)のフッ素ゴム製の一Oリングを用いて押さえアダプターとねじキャップにより締め付けて、実験例1と同様、正しく多孔質膜SPG細孔由来の単分散エマルションが生成されるか、
図4(a)に示す所謂膜乳化法により検証を行った。分散相と連続相、SPG細孔径は実験例1と同様で、生成されたそのエマルション粒度分布を測定したところ、分散粒子のメディアン径(50%D)は約20.4μmで、単分散性の指標となる積算分布の90%D/10%D=αもα=34.6と明らかに粗大粒子が生成された結果となり、これはOリング箇所からの分散相漏れによるものと見られた。つまり、本比較例で使用したSPGの外径に対して選択したOリングサイズが妥当でなく、押さえアダプターにより締め付けて圧着したと思っても、Oリングの捻じれか前述の所謂空間を封止できなかったために隙間から分散相の漏れが発生し粗大粒子が発生したものと言える。
【0053】
(比較例2)
本比較例では、選択する一Oリングが規格AS568-110(外径14.44×内径9.2mm、線径2.62mm)以外比較例1と同じ条件である。その結果、エマルション粒度分布では、実験例1や実験例2の結果と同様、分散粒子のメディアン径(50%D)は約3.8μmで、単分散性の指標となる積算分布の90%D/10%D=αは、α=1.9となり、均一なエマルション粒子が生成されていることが確認できた。よって、本比較例においては、比較例1と異なり、選択した一Oリングが妥当であったため所謂圧迫したOリング部からの漏れが無く、液密・気密が確保され正しい膜乳化が行われたものと言える。
【0054】
以上のとおり、例えばSPGの場合、外径がφ9.5mm乃至φ10.5mmのバラつきがあり、従来の円筒状多孔質膜モジュールでは、選んだその円筒状多孔質膜の外側面と所謂当該円筒部材の内側面の空間をなるべく空隙少なく埋まる最適なOリング規格を選定しなければならない。仮に前述の空間が、押さえアダプターにより当該Oリングを圧迫しても埋まらない一Oリングを選択してしまうと、当該円筒状多孔質膜外周面と当該円筒部材内周面がOリングで密着されず隙間が発生し漏れが発生してしまう。
【0055】
これに対し、本発明の円筒状多孔質膜モジュールであれば、外径がφ9.5mm乃至φ10.5mmのバラつきのある円筒状多孔質膜SPGに対しても、リング径の細かな選択は必要なく、リング径の大小異なる2種類のOリングを当該円筒中心軸に対して放射状に段階的に設けることにより、円筒両側の押さえアダプターの螺合圧迫による捻じれを互いに緩衝しながら前述の所謂空間に隙間なく密着し、円筒状多孔質膜を介して一次室と二次室を液密・気密に区画することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の円筒状多孔質膜モジュールは、従来の円筒状多孔質膜モジュールのような両側の一Oリングが緩むことや、Oリングサイズの選択ミスによる密封不足、これら原因による隙間からの分散相漏れの不具合の心配がなく、円筒軸上に対し放射状にリング径大小の2種類のOリングが円筒状多孔質膜の辺縁部両端に設けられていることにより液密・気密性が確保され、確実に当該多孔質膜微細孔から押し出された分散相粒子(エマルションや気泡)を生成することができる。これは、均一な微細孔を有する多孔質膜の特徴を確実に活かした単分散のエマルションやバブリング、精密ろ過が可能である。これらの技術分野は、食品、医薬品、化粧品、化成品など一般産業から農業、漁業、環境まで産業上多岐にわたりその利用可能性は幅広い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の円筒状多孔質膜モジュールの両側に設置する大小Oリング配置の片側を示す一実施例の側断面図である。
【
図2】本発明の円筒状多孔質膜モジュールの両側に設置する大小Oリング配置の片側を示す一実施例の側断面図である。
【
図3】本発明の円筒状多孔質膜モジュールの一実施例の外観側断面図である。
【
図4】本発明の円筒状多孔質膜モジュールを使用した膜乳化とろ過装置の一実施例の構成図である。
【
図5】本発明の円筒状多孔質膜モジュールにおいて、当該円筒状多孔質膜が当該二次室に露出している一実施例の外観側断面図である。
【
図6】本発明の円筒状多孔質膜モジュールにおいて、当該円筒状多孔質膜を多数本束状に並設した一実施例の構成図である。
【
図7】本発明の円筒状多孔質膜モジュールにおいて、当該円筒状多孔質膜を数本平面状に並設した一実施例の外観側断面図である。
【
図8】本発明の円筒状多孔質膜モジュールを使用した膜バブリング装置の一実施例の構成図である。
【
図9】従来の円筒状多孔質膜モジュールの一実施例の外観側断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 円筒状多孔質膜
1a 円筒状多孔質膜モジュール
2 Oリング
2a 外側面
2s 線径軸中心
3 Oリング
3a 内側面
3s 線径軸中心
4 螺合ねじ部
5 押さえアダプター
5’ 封止押さえアダプター
6 円筒部材
6’ 並設穴
6a Oリング支え部
6b 側口
6c 円筒部材支持体
6d 円筒部材盤
7 ねじキャップ
8 ねじプラグ
8’ 封止ねじプラグ
9a、9b、9c、9d 他室連絡継手
10 一次室
10a、10b 連絡通路
11 一次室
11a、11b 連絡通路
12 二次室
12a、12b 連絡通路
13 分散相タンク
13a 分散相
13b 分散相送液手段
14 連続相タンク
14a 連続相
14b 送液手段
15 処理前相タンク
15a 処理前相
16 処理後相タンク
16a 処理後相
17 レジューサー
18 パッキン
19 バルブ