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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】タンク集合装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
F17C1/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019200734
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021076130
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】阪口 善樹
(72)【発明者】
【氏名】三島 慎一
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-262299(JP,A)
【文献】特開2010-265932(JP,A)
【文献】特開2005-308087(JP,A)
【文献】特開2006-322590(JP,A)
【文献】特開2016-061352(JP,A)
【文献】特開2010-236587(JP,A)
【文献】特開2013-217497(JP,A)
【文献】実開平06-081000(JP,U)
【文献】特開2019-035442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0067602(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108253288(CN,A)
【文献】中国実用新案第208138866(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の小径タンクと、前記各小径タンクが接続されるマニホールドとを備えるタンク集合装置であって、
前記各小径タンクは、筒状の胴部と、前記胴部の軸方向一端側に設けられる第1閉塞部と、前記胴部の軸方向他端側に設けられる第2閉塞部とを有するタンク本体を備えており、
前記第1閉塞部は、外方に突出する筒状の第1のポート部を有しており、
前記第1のポート部は、突出方向に沿って延び、前記胴部の内部と外部とを連通する第1のポート連通孔を備えており、
前記マニホールドは、前記各第1のポート部が挿入される複数の挿入部と、内部に形成されて外部と連通する外部連通流路と、前記各挿入部及び前記外部連通流路を連通する内部連通孔とを備えており、
前記第1のポート部の外周面には雄ネジ部が形成されており、前記挿入部の内周面には雌ネジ部が形成されており、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部との螺合により、前記各小径タンクが前記マニホールドの前記外部連通流路と連通接続されており、
前記第2閉塞部は、外方に突出する筒状の第2のポート部を有しており、
前記第2のポート部は、突出方向に沿って延び、前記胴部の内部と外部とを連通する第2のポート連通孔を備えており、
前記第2のポート部の外周面には雄ネジ部が形成されており、当該雄ネジ部には前記第2のポート連通孔を閉塞する閉塞用袋ナットが螺着されており、
前記各第2のポート部を支持する連結部材を更に備えており、
前記連結部材は、前記第2のポート部が挿入される支持部を備えており、
前記支持部は、前記閉塞用袋ナットの端面との間に空隙部を備えるように構成されており、前記各小径タンクの軸方向の伸びを吸収して支持可能であることを特徴とするタンク集合装置。
【請求項2】
前記タンク本体の外表面には、繊維束のヘリカル巻層からなる補強層が設けられており、
前記ヘリカル巻層は、前記ポート部に形成される前記雄ネジ部の境界位置近傍まで繊維束が巻回されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク集合装置。
【請求項3】
前記各第1のポート部及び前記各第2のポート部の外径寸法DPと、前記胴部の外径寸法DCとの比(DP/DC)は、5/12以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク集合装置。
【請求項4】
前記第1のポート部と前記挿入部との接続箇所をシールするシール機構を更に備えていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のタンク集合装置。
【請求項5】
前記シール機構は、前記第1のポート部の雄ネジ部よりも突出方向先端側の外表面に環状に刻設される嵌装溝と、前記嵌装溝に装着される軸シールと、前記挿入部の内周面とで構成されることを特徴とする請求項に記載のタンク集合装置。
【請求項6】
前記シール機構は、前記挿入部の開口縁に形成される環状の開口部嵌装溝と、前記開口部嵌装溝に装着される端面シールと、前記第1のポート部と前記第1閉塞部との境界領域に形成され、前記第1のポート部の基端部周りを囲繞する環状の膨出部とで構成されることを特徴とする請求項に記載のタンク集合装置。
【請求項7】
前記各小径タンクにおける前記胴部の外径寸法DCは、200mm以下であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のタンク集合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク集合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池で発電した電力によって走行する燃料電池自動車の開発が進んでいる。このような自動車では、例えば、車室のフロアの下部等に水素ガスのタンクを配置することが検討されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1に開示のタンク集合装置は、配置スペース上の制約を考慮して、図11に示すように、小型のタンク100を複数本配置してこれらの一端部に形成されたポート部101をマニホールド105で連結し、1つのバルブ(図示せず)で流量調整するように構成されている。各タンク100のポート部101とマニホールド105とは、図12に示すように、ポート部101の内部に形成される貫通孔の内周面に形成される雌ネジ部102と、マニホールド105から外方に突出して形成される筒状の挿入部106の外周面上に形成される雄ネジ部107とを螺合させることにより接続される構造を有している。
【0004】
また、タンクの外周部には、タンクの軸方向の強度を補うための補強層が形成されている。この補強層は、タンクに対して繊維束を傾斜させた状態で周方向に取り囲むように巻き付けることによって形成されるヘリカル巻層として構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-32034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示のタンク集合装置は、省スペース化できるものであり優れた効果を奏するものではあるが、より一層の省スペース化が求められている。この省スペース化を図るためには、例えば、タンクの外径を更に小さくすることが考えられるが、タンク外径を単に小さくすると、図13に示すように、タンクの軸線Lに対するヘリカル巻層の繊維束Zの傾斜角θが大きくなってしまい、タンクの軸方向の強度を補うためのヘリカル巻層自体の強度が低下してしまうという問題があった。また、繊維束Zの傾斜角が大きくなることによって生じるヘリカル巻層自体の強度低下を抑制するためには、ヘリカル巻層の厚みを増大させる必要があり製造コストが増加するという問題も生じる。
【0007】
上記問題を解消するために、タンク外径を小さくすると共に、ポート部の外径も小さくすることもできるが、このような方策を採用すると、ポート部の外径を小さくすることに起因して、その内部における貫通孔の内周面に形成される雌ネジ部の内径も小さくなってしまい、また、これに併せてマニホールドにおける挿入部に形成される雄ネジ部の外径も小さく構成する必要があり、ポート部と挿入部との間での接続強度が格段に低下するという問題が生じる。また、ポート部に形成される雌ネジ部の内径が小さいことに起因して、この雌ネジ部を形成することが困難になるという問題も生じる。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、タンクの外径を更に小さくしても強度が低下することを効果的に防止することができるタンク集合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記目的は、複数の小径タンクと、前記各小径タンクが接続されるマニホールドとを備えるタンク集合装置であって、前記各小径タンクは、筒状の胴部と、前記胴部の軸方向一端側に設けられる第1閉塞部と、前記胴部の軸方向他端側に設けられる第2閉塞部とを有するタンク本体を備えており、前記第1閉塞部は、外方に突出する筒状の第1のポート部を有しており、前記第1のポート部は、突出方向に沿って延び、前記胴部の内部と外部とを連通する第1のポート連通孔を備えており、前記マニホールドは、前記各第1のポート部が挿入される複数の挿入部と、内部に形成されて外部と連通する外部連通流路と、前記各挿入部及び前記外部連通流路を連通する内部連通孔とを備えており、前記第1のポート部の外周面には雄ネジ部が形成されており、前記挿入部の内周面には雌ネジ部が形成されており、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部との螺合により、前記各小径タンクが前記マニホールドの前記外部連通流路と連通接続されており、前記第2閉塞部は、外方に突出する筒状の第2のポート部を有しており、前記第2のポート部は、突出方向に沿って延び、前記胴部の内部と外部とを連通する第2のポート連通孔を備えており、前記第2のポート部の外周面には雄ネジ部が形成されており、当該雄ネジ部には前記第2のポート連通孔を閉塞する閉塞用袋ナットが螺着されており、前記各第2のポート部を支持する連結部材を更に備えており、前記連結部材は、前記第2のポート部が挿入される支持部を備えており、前記支持部は、前記閉塞用袋ナットの端面との間に空隙部を備えるように構成されており、前記各小径タンクの軸方向の伸びを吸収して支持可能であることを特徴とするタンク集合装置により達成される。
【0010】
また、上記タンク集合装置に関し、前記タンク本体の外表面には、繊維束のヘリカル巻層からなる補強層が設けられており、前記ヘリカル巻層は、前記ポート部に形成される前記雄ネジ部の境界位置近傍まで繊維束が巻回されて構成されていることが好ましい
【0011】
また、前記各第1のポート部及び前記各第2のポート部の外径寸法DPと、前記胴部の外径寸法DCとの比(DP/DC)は、5/12以下であることが好ましい。
【0012】
また、前記第1のポート部と前記挿入部との接続箇所をシールするシール機構を更に備えていることが好ましい。
【0013】
また、前記シール機構は、前記第1のポート部の雄ネジ部よりも突出方向先端側の外表面に環状に刻設される嵌装溝と、前記嵌装溝に装着される軸シールと、前記挿入部の内周面とで構成することができる。
【0014】
また、前記シール機構は、前記挿入部の開口縁に形成される環状の開口部嵌装溝と、前記開口部嵌装溝に装着される端面シールと、前記第1のポート部と前記第1閉塞部との境界領域に形成され、前記第1のポート部の基端部周りを囲繞する環状の膨出部とで構成することができる。
【0015】
また、前記各小径タンクにおける前記胴部の外径寸法DCは、200mm以下の寸法とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タンクの外径を更に小さくしても強度が低下することを効果的に防止することができるタンク集合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るタンク集合装置の平面図である。
図2図1のA-A断面における一部省略概略構成断面図である。
図3図1に示すタンク集合装置が備える小径タンクの一部省略概略構成断面図である。
図4】小径タンクが備える補強層を説明するための説明図である。
図5図1に示すタンク集合装置が備えるマニホールドの概略構成断面図である。
図6図1に示すタンク集合装置の変形例を示す平面図である。
図7図6のB-B断面図である。
図8図7に示すタンク集合装置が備える連結部材の他の変形例を説明する説明図である。
図9図1に示すタンク集合装置が備えるマニホールドの変形例を示す概略構成断面図である。
図10図1に示すタンク集合装置の変形例を説明するための説明図である。
図11】従来のタンク集合装置を説明するための平面図である。
図12】従来のタンク集合装置におけるタンクとマニホールドとの接続構造を説明するための概略構成断面図である。
図13】本発明の課題を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。図1は、本発明の一実施形態にかかるタンク集合装置1を示す平面図であり、図2は、そのA-A断面における一部省略概略構成断面図である。本発明に係るタンク集合装置1は、例えば、燃料電池で発電した電力によって走行する燃料電池自動車に搭載される水素ガス貯蔵・供給用のタンク集合装置や、天然ガスを燃料として走行する天然ガス車両に搭載される天然ガス貯蔵・供給用のタンク集合装置として利用できるものであり、図1等に示すように、複数の小径タンク2と、当該各小径タンク2の一方端側が接続されるマニホールド5とを備えて構成されている。このようなタンク集合装置1は、例えば、燃料電池自動車や天然ガス自動車のフロアパネルの車両下方側にてフロアパネルに沿うように配置することができる。
【0019】
各小径タンク2は、円筒状の胴部21と、該胴部21の軸方向一端側に設けられる第1閉塞部22と、胴部21の軸方向他端側に設けられる第2閉塞部23とを有するタンク本体24と、当該タンク本体24の外面側を覆うように設けられた補強層25とを備えている。この小径タンク2は、使用時には70MPa程度の圧力に耐えることができるように構成されている。
【0020】
各タンク本体24が備える第1閉塞部22及び第2閉塞部23は、ドーム状の形態を有して構成されている。ドーム状に形成される第1閉塞部22及び第2閉塞部23の各頂部は、胴部21(タンク本体24)の軸線上に配設されるように構成されている。また、図3の一部省略概略構成断面図に示すように、第1閉塞部22の頂部には、円筒状の第1のポート部26が形成されており、第2閉塞部23の頂部にも同様の筒状の第2のポート部27が形成されている。これら第1及び第2のポート部27は、それぞれ、胴部21の軸線上であって、当該軸線方向に沿って外方に突出するように形成されている。
【0021】
また、第1のポート部26の外周面には雄ネジ部28が形成されると共に、その内部には、第1のポート部26の突出方向に沿って延び、胴部21の内部と外部とを連通する第1のポート連通孔29が形成されている。同様に、第2のポート部27の外周面にも雄ネジ部30が形成されると共に、その内部には、第2のポート部27の突出方向に沿って延び、胴部21の内部と外部とを連通する第2のポート連通孔31が形成されている。なお、第2のポート部27には、第2のポート連通孔31を閉塞するための閉塞用袋ナット32が螺着している。
【0022】
また、各第1のポート部26(各第2のポート部27)の外径寸法DPと、胴部21の外径寸法DCとの比(DP/DC)は、“3/20”以上“5/12”以下となるように構成することが好ましい。また、胴部21の外径寸法DCは、120mm以上200mm以下であることが好ましく、120mm以上150mm以下であることがより好ましい。第1のポート部26の外径寸法DP(最大外径寸法)は、30mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0023】
ここで、各タンク本体24を構成する材料は特に限定されないが、例えば、金属製として構成することが好ましい。金属製のタンク本体24は、例えば、アルミニウム合金製や鋼鉄製等からなるパイプ形状や板形状からスピニング加工等により容器形状を形成したあとで、第1及び第2のポート部26,27の形状を形成するものが挙げられる。
【0024】
補強層25は、タンク本体24の外表面に硬化性樹脂が予め含浸された繊維10を巻き付けることによって形成される。強化層3の構造の詳細については後述する。
硬化性樹脂が予め含浸された繊維束を巻き付けて、硬化性樹脂を硬化させることにより形成される。このような補強層25としては、図4に示すように、タンク本体24に対して繊維束Zを傾斜させた状態で周方向に取り囲むように巻き付けることによって形成されるヘリカル巻層を例示することができる。ヘリカル巻層は、主にタンク本体24を軸方向に支持する機能を有する。ヘリカル巻層の繊維束Zは、タンク本体24の径方向から見たときに、タンク本体24の軸線Lに対して傾斜するように巻き付けられる。軸線Lに対する傾斜角θは、0°よりも大きく30°以下の範囲に設定することが好ましい。また、ヘリカル巻層においては、繊維束Zがタンク本体24の一方のドーム状の端部から他方のドーム状の端部にて、たすきがけ状に巻き付けられる。なお、ヘリカル巻層を形成するときは、繊維束Zでタンク本体24の外周面を覆うことで一の単層を形成した後、その単層の上に繊維束Zを巻き付けて更に単層を形成する。このような単層を複数形成することによって、ヘリカル巻層が形成される。ヘリカル巻層内の単層の数は、2~20程度に設定することが好ましい。
【0025】
また、補強層25としては、上述の繊維束のヘリカル巻層の他、主にタンク本体24を径方向に支持する機能を有するフープ巻層(図示せず)を採用してもよい。フープ層は、タンク本体24に対して繊維束を周方向に巻き付けることによって形成される層である。このとき、フープ巻層の繊維束は、タンク本体24の径方向から見たときに、タンク本体24の軸線Lと略垂直となるように巻き付けられる。なお、フープ巻層を形成するときは、繊維束でタンク本体24の外周面を覆うことで一の単層を形成した後、その単層の上に繊維束を巻き付けて更に単層を形成する。このような単層を複数形成することによって、フープ巻層が形成される。フープ巻層内の単層の数は、1~10程度に設定することが好ましい。
【0026】
なお、補強層25として、上述のヘリカル巻層とフープ巻層とを組み合わせて構成してもよい。
【0027】
ここで、当該繊維束の繊維数(フィラメント)は、特に制限されるものではないが1000フィラメント~50000フィラメント、好ましくは3000フィラメント~30000フィラメントの範囲である。なお、繊維束の繊維数が、1000フィラメントより低いと繊維中に含まれる熱硬化性樹脂の含有量が少なくなる場合があり、50000フィラメントを超えると繊維が太くなり、巻きつけるのが困難になる。
【0028】
繊維に含浸される硬化樹脂としては、熱で硬化する熱硬化性樹脂を採用することが好ましい。このような熱で硬化する硬化性樹脂の種類としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アリル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、熱で硬化する硬化性樹脂に加える硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン等の脂肪族アミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミンまたはジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族アミン、ピペリジンまたはジアザピシクロウンデセン等の第一、第三アミン、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物硬化剤等が挙げられる。
【0029】
また、補強層25を構成する繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリエチレン繊維、スチール繊維、ザイロン繊維、ビニロン繊維等が挙げられるが、特に高強度、高弾性率かつ軽量な炭素繊維を用いてよい。
【0030】
マニホールド5は、複数の小径タンク2を集約して連結する機能を有する部材であり、長手方向に沿った概略構成断面図である図5に示すように、長尺棒状のマニホールド本体51を備えている。このマニホールド本体51は、複数の挿入部52と、外部連通流路53と、複数の内部連通孔54とを備えている。本実施形態においては、マニホールド本体51を角柱状に構成しているが、このような形態に特に限定されず、例えば、円柱状の形態を有するように構成してもよい。
【0031】
各挿入部52は、各小径タンク2が有する第1のポート部26が挿入される部位であり、マニホールド本体51の長手方向に沿って所定間隔をあけて配置されている。これら挿入部52は、マニホールド本体51の側面に形成される穴部として構成されている。なお、この挿入部52の深さが、第1のポート部26の突出方向長さと同程度の寸法となるように、挿入部52は構成される。各挿入部52の内周面には、雌ネジ部55が形成されており、小径タンク2が有する第1のポート部26の雄ネジ部28を螺合することにより、各小径タンク2を単一のマニホールド5に連結できるように構成されている。
【0032】
外部連通流路53は、マニホールド本体51の内部において、該マニホールド本体51の長手方向に沿って延びるように形成されている。当該外部連通流路53は、マニホールド本体51の一方端側51aにおいて開放して、外部と連通するように構成されている。なお、本実施形態においては、外部連通流路53は、マニホールド本体51の他方端側において開放していない構造を有するように構成されている。
【0033】
各内部連通孔54は、マニホールド本体51の内部において形成されており、各挿入部52及び外部連通流路53を連通する流路としての機能を有する。本実施形態においては、マニホールド本体51の長手方向に対して垂直な方向を長手方向とするように各内部連通孔54は形成されている。
【0034】
また、第1のポート部26と挿入部52との接続箇所から水素ガスや天然ガスが外部に漏れ出ることを防止するためのシール機構を備えている。このシール機構は、第1ポート部26の雄ネジ部28よりも突出方向先端側の外表面に環状に刻設される嵌装溝33と、嵌装溝33に装着されるOリング等の軸シール34と、挿入部52の内周面とで構成される。第1のポート部26を挿入部52に設置した際に、嵌装溝33と挿入部52の内周面との間で軸シール34を圧着できるようにシール機構は構成される。
【0035】
同様に、第2のポート部27の外周面と閉塞用袋ナット32の内周面との間にも、水素ガスや天然ガスが外部に漏れ出ることを防止するためのシール機構が設けられている。シール機構の具体的構成は、上述の第1のポート部26におけるものと同様の構成を採用することができる。
【0036】
ここで、マニホールド本体51の一方端側51aにおいて開放する外部連通流路53における開放端には、流量調整用のバルブが接続する。
【0037】
本発明に係るタンク集合装置1は、上述のような構成を採用することにより、マニホールド5に各小径タンク2の軸方向一端側(第1のポート部26)が固定されると共に、マニホールド5の外部連通流路53、内部連通孔54と、第1のポート部26のポート連通孔29を介してタンク本体24の内部と外部(バルブ)が連通される。
【0038】
本発明に係るタンク集合装置1は、各小径タンク2の第1のポート部26の外周面に雄ネジ部28を形成すると共に、当該ポート部26が挿入されるマニホールド5の挿入部52の内周面に雌ネジ部55を形成するように構成されているが、このような構成を有するがゆえに、更なる小型化のためにタンク本体24の外径を小さくすると共に、繊維束の傾斜角が大きくなってヘリカル巻層の強度が低下することを防止すべく第1のポート部26の外径(最大外径)を小さくする場合であっても、従来構成に比べて、第1のポート部26と挿入部52との螺着構造を大きく構成することができるため、第1のポート部26と挿入部52(各小径タンク2とマニホールド5)との接続状態を安定的に強固なものとすることが可能となり、第1のポート部26と挿入部52(各小径タンク2とマニホールド5)との接続部分の接続強度の向上を図ることができる。また、第1のポート部26の外周面上に雄ネジ部28を形成することによってマニホールド5との連結手段を構成しているため、従来構成のように、第1のポート部26の内部に雌ネジ部を形成する場合に比べて、マニホールド5との連結手段を形成する作業性を向上させることができる。
【0039】
換言すると、本発明に係るタンク集合装置1は、小径タンク2の外径をより一層小径化したいという要求、小径タンク2の軸線Lに対するヘリカル巻層の繊維束の傾斜角を極力小さくして、小径タンク2の軸方向の強度を補うためのヘリカル巻層自体の強度が低下してしまうことを防止したいという要求、ヘリカル巻層の厚みを増大させることなく製造コストを抑えたいという要求、第1のポート部26と挿入部52との間での接続強度を向上させたいという要求、第1のポート部26と挿入部52との間での接続構造を容易に形成したいという要求の全てを満たすことが可能となる。
【0040】
また、本実施形態においては、各小径タンク2が有する第1のポート部26の外周面とマニホールド5における各挿入部52の内周面との間をシールするシール機構を設けるように構成されている。このような構成を採用することにより、シール領域を広く形成することが可能となり、水素ガスや天然ガスが、小径タンク2とマニホールド5との接続部分から漏出することを効果的に抑制することが可能となる。特に、第1のポート部26において、雄ネジ部28よりも突出方向先端側の外表面に環状に刻設される嵌装溝33を形成し、当該嵌装溝33に軸シール34を装着することにより、第1のポート部26の外周面とマニホールド5における各挿入部52の内周面との間をシールする構成を採用することにより、軸シール34の第1のポート部26からの脱落を防止しつつ効果的に水素ガスや天然ガスが漏出することを抑制することができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態に係るタンク集合装置1について説明したが、タンク集合装置1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、タンク本体24の第2閉塞部23が第2のポート部27を備えるように構成されているが、このような第2のポート部27を形成しないようにタンク本体24を構成することもできる。
【0042】
また、上記実施形態においては、アルミニウム合金製や鋼鉄製等からなるパイプ形状や板形状からスピニング加工等により容器形状を形成したあとで、第1及び第2のポート部27の形状を形成することにより各タンク本体24を構成する方法について例示しているが、タンク本体24の形成方法は、このような方法に特に限定されず、例えば、予め円筒状に形成した胴部21の両端開口部に、別体として形成される第1閉塞部22及び第2閉塞部23を接合することによりタンク本体24を形成してもよい。なお、第1閉塞部22及び第2閉塞部23に設けられる第1及び第2のポート部26,27は、第1閉塞部22及び第2閉塞部23を胴部21に接合する前段階において形成するようにしてもよく、或いは、接合後に形成するようにしてもよい。また、各タンク本体24を樹脂製として構成してもよい。樹脂製のタンク本体24としては、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を回転成形やブロー成形にて容器形状に賦形されたものに、金属製の第1及び第2のポート部26,27を取り付けることにより形成することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、図6の平面図に示すように、各小径タンク2の第2閉塞部23側を連結支持する連結部材6を備えるように構成してもよい。この連結部材6は、長尺棒状の連結部材本体61を備えており、当該連結部材本体61は、図6のB-B断面図である図7に示すように、支持部62を備えている。この支持部62は、各小径タンク2が有する閉塞用袋ナット32付きの第2のポート部27が挿入される部位であり、連結部材本体61の長手方向に沿って所定間隔をあけて配置されている。各支持部62は、連結部材本体61の側面に形成される穴部として構成されている。なお、連結部材本体61を角柱状に構成しているが、このような形態に特に限定されず、例えば、円柱状の形態を有するように構成してもよい。このような連結部材6を有することにより、各小径タンク2の第2閉塞部23側が安定的に支持されるため、第1のポート部26と挿入部52との接続箇所に予期せぬ外力が生じ損傷することを効果的に抑制することができる。また、穴部として形成される支持部62の内部底面62aと閉塞用袋ナット32の端面32aとの間に空隙部を設けるようにして、各小径タンク2が有する閉塞用袋ナット32付きの第2のポート部27を挿入配置することが好ましい。このような配置構造を採用することにより、各小径タンク2内に水素ガスや天然ガスが貯蔵される際に、当該各小径タンク2が軸方向に伸びた場合であっても、その伸びを安定的に吸収して支持することが可能となる。
【0044】
また、上記連結部材6の構成としては、種々の構成のものを採用することができる。例えば、図8に示すように、第2のポート部27における雄ネジ部28を支持部62から突き出させることができるように連結部材6を構成し、当該突き出た雄ネジ部28に対して閉塞用袋ナット32を螺着して第2のポート部27を閉塞しつつ、該閉塞用袋ナット32の端面が連結部材6の表面に押圧し、連結部材6をタンク本体24側に押し付けるように構成してもよい。このような構成を採用する場合、連結部材6と各小径タンク2における第2閉塞部23側との強固な一体化を図ることが可能となり、タンク集合装置1全体としての剛性を高めることができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、マニホールド5が有する外部連通流路53が、マニホールド本体51の他方端側51bにおいて開放していない構造を採用しているが、このような構成に特に限定されない。例えば、図9の概略構成断面図に示すように、外部連通流路53が、マニホールド本体51の他方端側51bにおいて開放する構成を採用し、当該他端側51bにおける開放端に、他のマニホールド5と接続する接続部56を設けるように構成してもよい。このような接続部56としては、例えば、マニホールド本体51の他方端51bに雌ネジ部を有する穴状部として構成することができる。各マニホールド5に形成される接続部56同士が、例えば、内部に連通孔を有する接続部材(図示せず)を介して接続されることにより、複数のタンク集合装置1における各小径タンク2の内部と、外部(バルブ)とが連通される。
【0046】
また、上記実施形態においては、第1のポート部26の外周面とマニホールド5における挿入部52の内周面との間からの水素ガスや天然ガスの漏出を防止するためのシール機構として、軸シール34を備えるように構成しているが、このようなシール機構に特に限定されない。例えば、図10に示すような端面シール41を用いてシール機構を構成してもよい。具体的には、マニホールド5が有する挿入部52の開口縁に環状の開口部嵌装溝40を形成し、この開口部嵌装溝40にリング状の端面シール41を装着すると共に、第1のポート部26と第1閉塞部22との境界領域に、第1のポート部26の基端部周りを囲繞する環状の膨出部42を形成し、第1のポート部26を挿入部52に設置した際に、開口部嵌装溝40と膨出部42との間で端面シール41を圧着できるようにシール機構を構成する。なお、軸シール34によるシール機構と、端面シール41によるシール機構とは、いずれか一方を採用してもよく、或いは、両者を併用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 タンク集合装置
2 小径タンク
21 胴部
22 第1閉塞部
23 第2閉塞部
24 タンク本体
25 補強層
26 第1のポート部
27 第2のポート部
28 雄ネジ部
29 第1のポート連通孔
30 雄ネジ部
31 第2のポート連通孔
32 閉塞用袋ナット
33 嵌装溝
5 マニホールド
51 マニホールド本体
52 挿入部
53 外部連通流路
54 内部連通孔
55 雌ネジ部
6 連結部材
61 連結部材本体
62 支持部
図1
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