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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】インクジェット印字装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20240213BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240213BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B41J15/04
B41J2/01 305
B41J2/21
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022022332
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2023119429
(43)【公開日】2023-08-28
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000161057
【氏名又は名称】株式会社ミヤコシ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】小坂 英哲
(72)【発明者】
【氏名】今 秀俊
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088026(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/04
B41J 2/01
B41J 2/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字基材の搬送経路を複数有し、該搬送経路を切り替えることにより第1印字部と第2印字部とで印字の順序を逆にすることができるインクジェット印字装置であって、
前記被印字基材を供給するための供給部と、
前記被印字基材に印字を施し乾燥を行う前記第1印字部および前記第2印字部と、
印字された前記被印字基材を回収するための排出部と、
を備え、
前記供給部、前記第1印字部、前記第2印字部、前記排出部の順で直列に配置されており、
少なくとも、前記被印字基材の一方の面に、前記第1印字部、前記第2印字部の順で印字を施す第1搬送経路と、前記第2印字部、前記第1印字部の順で印字を施す第2搬送経路とを有するインクジェット印字装置。
【請求項2】
前記供給部と前記第1印字部との間には、上流側基点ローラが設けられ、
前記第2印字部と前記排出部との間には、下流側基点ローラが設けられ、
前記第1印字部が、前記被印字基材を該第1印字部の内部に案内するための第1入口ローラと、前記被印字基材を該第1印字部から外部に案内するための第1出口ローラとを有し、
前記第2印字部が、前記被印字基材を該第2印字部の内部に案内するための第2入口ローラと、前記被印字基材を該第2印字部から外部に案内するための第2出口ローラとを有し、
前記第1搬送経路においては、前記被印字基材が、前記上流側基点ローラから前記第1入口ローラに搬送され、前記第1出口ローラから前記第2入口ローラに搬送され、前記第2出口ローラから前記下流側基点ローラに搬送されるものであり、
前記第2搬送経路においては、前記被印字基材が、前記上流側基点ローラから前記第2入口ローラに搬送され、前記第2出口ローラから前記第1入口ローラに搬送され、前記第1出口ローラから前記下流側基点ローラに搬送されるものである請求項1記載のインクジェット印字装置。
【請求項3】
前記第1入口ローラ、前記第1出口ローラ、前記第2入口ローラおよび前記第2出口ローラには、前記被印字基材を把持するための把持手段が取り付けられている請求項2記載のインクジェット印字装置。
【請求項4】
前記被印字基材にインク受理層を形成するための前処理部を更に備え、
該前処理部が、前記供給部と前記第1印字部との間に配置されており、
前記前処理部が、前記上流側基点ローラを有し、
該上流側基点ローラが、前記被印字基材を該前処理部から外部に案内するものである請求項2又は3に記載のインクジェット印字装置。
【請求項5】
前記前処理部と前記第1印字部との間、および、前記第1印字部と前記第2印字部との間には、それぞれ、切り替え作業を行うための作業空間部が設けられており、
前記第1搬送経路および前記第2搬送経路が、前記作業空間部の上方に設けられる請求項4記載のインクジェット印字装置。
【請求項6】
前記被印字基材にオーバーコート層を形成するための後処理部を更に備え、
該後処理部が、前記第2印字部と前記排出部との間に配置されており、
前記後処理部が、前記下流側基点ローラを有し、
該下流側基点ローラが、前記被印字基材を該後処理部の内部に案内するものである請求項2~5のいずれか1項に記載のインクジェット印字装置。
【請求項7】
前記第1印字部および前記第2印字部のうちの一方において印字に用いられるインクが、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよびブラックインクからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上であり、
他方において印字に用いられるインクが、ホワイトインクである請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェット印字装置。
【請求項8】
前記第1搬送経路および前記第2搬送経路のうち使用しない方の搬送経路であり、かつ、前記第1搬送経路と前記第2搬送経路とで重複しない搬送経路、には不使用被印字基材が配置されている請求項1~7のいずれか1項に記載のインクジェット印字装置。
【請求項9】
前記不使用被印字基材の両端に位置するローラには、該不使用被印字基材を保持するための保持手段が取り付けられている請求項8記載のインクジェット印字装置。
【請求項10】
前記被印字基材が、包装用の透明又は半透明フィルムである請求項1~9のいずれか1項に記載のインクジェット印字装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印字基材の搬送経路を複数有し、当該搬送経路を切り替えることにより、1台の装置で表刷りおよび裏刷りの印字が可能なインクジェット印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印字装置は、インクを微滴化し、被印字基材に対し、直接吹き付けることで、文字や模様等のデザインを印字するものである。
インクジェット印字装置は、被印字基材に対し、所望の位置に所望のタイミングで所望のデザインの印字を施すことが可能であるため、その特性を活かした印字が様々な分野で行われている。
【0003】
例えば、商品の包装袋の用途においては、フィルムに対し表刷りや裏刷りによるデザインの印字が行われている。
なお、表刷りの印字とは、被印字基材を袋状にしたときに、印字面が外側になるものであり、裏刷りの印字とは、被印字基材を袋状にしたときに、印字面が内側になるものである。
ちなみに、包装袋のデザインとして、背景画の印字と、デザイン画の印字とを施したい場合、表刷りの印字と裏刷りの印字とでは、印字の順序が逆になる。
【0004】
ところで、表刷りと裏刷りの印字をインクジェットで行うことができるインクジェット印字装置が開発されている。
具体的には、少なくとも、表刷りの場合に、ウェブ状印刷基材の表面に対して白色水性インクを吐出する第一白色インクジェットヘッドと、これを乾燥する第一ドラム式乾燥ユニットと、表刷りおよび裏刷りの場合に、ウェブ状印刷基材の表面に対して非白色水性インクを吐出するシングルパス方式インクジェットヘッドと、裏刷りの場合に、ウェブ状印刷基材の表面に対して白色水性インクを吐出する第二白色インクジェットヘッドと、これを乾燥する第二ドラム式乾燥ユニットとを備えるインクジェットプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6916907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載のインクジェットプリンタにおいては、表刷りおよび裏刷りの印字を実現するためには、通常のインクジェットヘッドに加え、第一白色インクジェットヘッドと第二白色インクジェットヘッドとを設ける必要がある。この場合、印字するパートが少なくとも3か所必要となるため、装置が大型化するという欠点がある。
また、裏刷りの場合、インクジェットヘッドから非白色水性インクが吐出された直後に、第二白色インクジェットヘッドから白色インクが吐出されるので、これらのインク同士がウェブ状印刷基材上で混ざってしまい、滲み等の混色が生じる恐れがある。
なお、非白色水性インクの吐出と、第二白色インクジェットヘッドからの白色インクの吐出との間の搬送経路に乾燥装置を増設した場合は、乾燥により、混色を抑制することができるものの、やはり装置が大型化することになる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトでありながら、混色が生じることを防止し、かつ、表刷りおよび裏刷りの印字が可能なインクジェット印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、印字を施すパートとして、第1印字部と第2印字部との2か所を備えるものとし、被印字基材の搬送経路として、少なくとも、第1搬送経路と第2搬送経路とを有するものとし、これらの搬送経路を切り替えることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、被印字基材の搬送経路を複数有し、該搬送経路を切り替えることにより第1印字部と第2印字部とで印字の順序を逆にすることができるインクジェット印字装置であって、被印字基材を供給するための供給部と、被印字基材に印字を施し乾燥を行う第1印字部および第2印字部と、印字された被印字基材を回収するための排出部と、を備え、供給部、第1印字部、第2印字部、排出部の順で直列に配置されており、少なくとも、被印字基材の一方の面に、第1印字部、第2印字部の順で印字を施す第1搬送経路と、第2印字部、第1印字部の順で印字を施す第2搬送経路とを有するインクジェット印字装置である。
【0010】
本発明においては、供給部と第1印字部との間には、上流側基点ローラが設けられ、第2印字部と排出部との間には、下流側基点ローラが設けられ、第1印字部が、被印字基材を該第1印字部の内部に案内するための第1入口ローラと、被印字基材を該第1印字部から外部に案内するための第1出口ローラとを有し、第2印字部が、被印字基材を該第2印字部の内部に案内するための第2入口ローラと、被印字基材を該第2印字部から外部に案内するための第2出口ローラとを有し、第1搬送経路においては、被印字基材が、上流側基点ローラから第1入口ローラに搬送され、第1出口ローラから第2入口ローラに搬送され、第2出口ローラから下流側基点ローラに搬送されるものであり、第2搬送経路においては、被印字基材が、上流側基点ローラから第2入口ローラに搬送され、第2出口ローラから第1入口ローラに搬送され、第1出口ローラから下流側基点ローラに搬送されるものであることが好ましい。
【0011】
本発明においては、第1入口ローラ、第1出口ローラ、第2入口ローラおよび第2出口ローラには、被印字基材を把持するための把持手段が取り付けられていることが好ましい。
【0012】
本発明は、被印字基材にインク受理層を形成するための前処理部を更に備え、該前処理部が、供給部と第1印字部との間に配置されており、前処理部が、上流側基点ローラを有し、該上流側基点ローラが、被印字基材を該前処理部から外部に案内するものであることが好ましい。
【0013】
本発明は、前処理部と第1印字部との間、および、第1印字部と第2印字部との間には、それぞれ、切り替え作業を行うための作業空間部が設けられており、第1搬送経路および第2搬送経路が、作業空間部の上方に設けられることが好ましい。
【0014】
本発明は、被印字基材にオーバーコート層を形成するための後処理部を更に備え、該後処理部が、第2印字部と排出部との間に配置されており、後処理部が、下流側基点ローラを有し、該下流側基点ローラが、被印字基材を該後処理部の内部に案内するものであることが好ましい。
【0015】
本発明においては、第1印字部および第2印字部のうちの一方において印字に用いられるインクが、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよびブラックインクからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上であり、他方において印字に用いられるインクが、ホワイトインクであることが好ましい。
【0016】
本発明においては、第1搬送経路および第2搬送経路のうち使用しない方の搬送経路であり、かつ、第1搬送経路と第2搬送経路とで重複しない搬送経路、には不使用被印字基材が配置されていることが好ましい。
このとき、不使用被印字基材の両端に位置するローラには、該不使用被印字基材を保持するための保持手段が取り付けられていることが好ましい。
【0017】
本発明においては、被印字基材が、包装用の透明又は半透明フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のインクジェット印字装置は、印字を施すパートとして、少なくとも、第1印字部および第2印字部を備えればよいので、装置自体をコンパクトにすることができる。
また、第1印字部および第2印字部においては、それぞれで印字を施した後、それぞれで乾燥が行われるため、新たに乾燥装置を増設する必要はなく、混色が生じることも防止することができる。
また、被印字基材の搬送経路として、第1印字部、第2印字部の順で印字を施す第1搬送経路と、第2印字部、第1印字部の順で印字を施す第2搬送経路とを有するので、これらの搬送経路を切り替えることにより、被印字基材に対する、第1印字部による印字と、第2印字部による印字との順序を逆にすることができる。すなわち、第1搬送経路と第2搬送経路を切り替えることにより、印字部におけるインクの入れ替えを行うことなく、裏刷りおよび表刷りの印字を行うことが可能となる。
なお、インクの入れ替えは、手間がかかると共に、ロット間での色違いが生じる恐れがある。
【0019】
具体的には、第1搬送経路においては、被印字基材が、上流側基点ローラから第1入口ローラに搬送され、第1出口ローラから第2入口ローラに搬送され、第2出口ローラから下流側基点ローラに搬送されるものとし、第2搬送経路においては、被印字基材が、上流側基点ローラから第2入口ローラに搬送され、第2出口ローラから第1入口ローラに搬送され、第1出口ローラから下流側基点ローラに搬送されるものとすればよい。
したがって、被印字基材の搬送経路の切り替えは、これらのローラ間の搬送をそれぞれ切り替えることにより、比較的容易に行うことができる。
【0020】
本発明のインクジェット印字装置においては、第1入口ローラ、第1出口ローラ、第2入口ローラおよび第2出口ローラが、被印字基材を把持するための把持手段を有することにより、被印字基材を各ローラの位置で把持することができる。
したがって、被印字基材を把持した状態とすることにより、搬送経路の切り替え作業をより容易に行うことが可能となる。
【0021】
本発明のインクジェット印字装置においては、少なくとも、前処理部と第1印字部との間、および、第1印字部と第2印字部との間に、切り替え作業を行うための作業空間部を設けることにより、切り替え作業をし易くなる。
また、第1搬送経路および第2搬送経路を、作業空間部の上方に設けることにより、作業空間部に人が出入りすることにより生じる粉塵が、搬送経路を搬送中の被印字基材に付着することを極力防止することができる。
【0022】
本発明のインクジェット印字装置においては、第1搬送経路および第2搬送経路のうち使用しない方の搬送経路であり、かつ、第1搬送経路と第2搬送経路とで重複しない搬送経路、に不使用被印字基材を配置することにより、例えば、搬送経路を切り替える際に、元の搬送経路にある被印字基材を所定の位置で切断し、その端部と、不使用被印字基材の端部を連結するだけで新たな搬送経路に被印字基材を配置できるので、搬送経路の切り替え作業をより一層容易に行うことが可能となる。
また、不使用被印字基材の両端に位置するローラに、不使用被印字基材を保持するための保持手段が取り付けられている場合、被印字基材を保持した状態とすることにより、稼働時に、不使用被印字基材が落下することを防止できると共に、切り替え時に、搬送経路の切り替え作業を更に容易に行うことが可能となる。
【0023】
本発明のインクジェット印字装置は、前処理部を備えるので、インク受理層の形成と、印字とを一連の工程で行うことができる。
また、前処理部が上流側基点ローラを有するものとすることで、装置をよりコンパクトにすることができる。
【0024】
本発明のインクジェット印字装置は、後処理部を備えるので、印字と、オーバーコート層の形成とを一連の工程で行うことが可能となる。
また、後処理部が下流側基点ローラを有するものとすることで、装置をよりコンパクトにすることができる。
【0025】
本発明のインクジェット印字装置においては、第1印字部および2印字部のうちの一方において印字に用いられるインクが、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよびブラックインクからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上であり、他方において印字に用いられるインクが、ホワイトインクである場合、カラーインクとホワイトインクとを用いた表刷りの印字又は裏刷りの印字を、混色を抑制しつつ、行うことができる。
このとき、被印字基材を透明又は半透明フィルムとすることにより、商品の包装用として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明に係るインクジェット印字装置の第1実施形態を概略的に示す側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置における第1搬送経路を説明するための部分側面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置における第2搬送経路を説明するための部分側面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置における第1搬送経路および第2搬送経路の切り替えを説明するための原理図である。
図5(a)】図5(a)は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置を用いて製造される食品包装用の裏刷りの印字物を示す模式断面図である。
図5(b)】図5(b)は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置を用いて製造される食品包装用の表刷りの印字物を示す模式断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係るインクジェット印字装置における第1搬送経路を説明するための部分側面図である。
図7図7は、第2実施形態に係るインクジェット印字装置における第2搬送経路を説明するための部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
本発明に係るインクジェット印字装置は、被印字基材に対し、インクジェット方式にて印字を施す装置である。
また、本発明に係るインクジェット印字装置は、後述するように、印字を施すパートを2か所備えており、被印字基材の搬送経路を切り替えることにより、これらの印字の順序を逆にすることが可能となっている。
すなわち、第1搬送経路と第2搬送経路を切り替えることにより、表刷りおよび裏刷りの印字を行うことが可能となっている。
【0029】
上記被印字基材の素材としては、紙、布、不織布、フィルム、ゴム、金属等、特に限定されないが、後述するように、商品の包装用であり、表刷りおよび裏刷りを行う場合は、透明又は半透明のフィルムを採用することが好ましい。
また、上記インクジェット方式としては、ピエゾ方式、サーマル方式等のオンデマンド型インクジェットを好適に採用することができる。
また、印字ヘッドの方式としては、シリアルヘッド方式、ラインヘッド方式を採用することができる。
なお、後述する、第1実施形態に係るインクジェット印字装置および第2実施形態に係るインクジェット印字装置においては、ラインヘッド方式を採用している。
【0030】
ここで、本明細書において、「上流」とは、被印字基材Xの搬送経路において、被印字基材Xの搬送方向に対する上流を意味し、「下流」とは、被印字基材Xの搬送経路において、被印字基材Xの搬送方向に対する下流を意味する。
また、インクジェット印字装置において、供給部側を「前方」とし、排出部側を「後方」としている。すなわち、図1でいう紙面左側が前方、紙面右側が後方である。
【0031】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るインクジェット印字装置について説明する。
図1は、本発明に係るインクジェット印字装置の第1実施形態を概略的に示す側面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るインクジェット印字装置100は、被印字基材Xを供給するための供給部1と、被印字基材Xにインク受理層を形成するための前処理部2と、被印字基材Xに印字を施し乾燥を行う第1印字部3および第2印字部4と、被印字基材Xにオーバーコート層を形成するための後処理部5と、印字された画像を読み取るための画像読み取り部7と、印字された被印字基材Xを回収するための排出部6と、を備える。
かかるインクジェット印字装置100においては、供給部1、前処理部2、第1印字部3、第2印字部4、後処理部5、画像読み取り部7、排出部6の順で直列に配置されている。
【0032】
インクジェット印字装置100においては、少なくとも、第1印字部3および第2印字部4を備えればよいので、装置自体をコンパクトにすることができる。
また、インクジェット印字装置100においては、第1印字部3および第2印字部4それぞれで印字を施した後、乾燥が行われるため、新たに乾燥装置を増設する必要はなく、混色が生じることも防止することができる。
また、インクジェット印字装置100は、前処理部2および後処理部5を備えるので、インク受理層の形成と、印字および乾燥と、オーバーコート層の形成とを一連の工程で行うことが可能となる。
【0033】
供給部1は、被印字基材Xを供給するための部位であり、ロール状に巻いた被印字基材Xが取り付けられる供給軸10と、被印字基材Xを送り出すための送りローラ13と、送りローラ13の周面に圧接されたニップローラ13aと、これらを収容する筐体1aとを備える。
また、これらに加え、供給部1は、筐体1a内に、被印字基材Xの蛇行を防止するための蛇行防止装置11と、被印字基材Xの張力を調整するためのダンサー12と、被印字基材Xの張力を検出するための張力検出装置14とを備える。
なお、供給部1においては、送りローラ13が駆動ローラとなっている。
【0034】
供給部1においては、送りローラ13とニップローラ13aとで、被印字基材Xを挟持し、図示しない駆動モータで送りローラ13を回転駆動させることで、供給軸10が回転し、被印字基材Xが送り出されるようになっている。
このとき、供給軸10にはパウダーブレーキで回転抵抗が付与されているので、被印字基材Xには、その回転抵抗の大きさ(ブレーキ力)に見合う値の張力が付与されることになる。
【0035】
また、供給部1においては、蛇行防止装置11が、被印字基材Xの幅方向の位置を検出し、正常な位置からずれている場合、被印字基材Xを幅方向に移動させて位置を調整するようになっている。
また、供給部1においては、張力検出装置14が、搬送される被印字基材Xの張力を検出し、検出した張力に応じてダンサー12を制御し、搬送される被印字基材Xの張力を適正な状態に調整するようになっている。
【0036】
前処理部2は、被印字基材Xにインク受理層を形成するための部位であり、被印字基材Xにインク受理液を付与するためのコーター処理装置21と、インク受理液が付与された被印字基材Xを乾燥するためのIR乾燥機22と、被印字基材Xを前処理部2から外部に案内するための上流側基点ローラ24と、これらを収容する筐体2aとを備える。
なお、前処理部2の内部において、上流側基点ローラ24は、後方側に配置されている。
また、後述する搬送経路の切り替えは、被印字基材Xが上流側基点ローラ24まで案内された位置以後の下流側で行われる。
また、これらに加え、前処理部2は、筐体2a内に、被印字基材Xの表面改質処理を施すためのコロナ処理装置20と、被印字基材Xを冷却して送り出すためのクーリングローラ23と、クーリングローラ23の周面に圧接されたニップローラ23aとを備える。
なお、前処理部2においては、クーリングローラ23が駆動ローラとなっている。
【0037】
前処理部2においては、まず、コロナ処理装置20が、被印字基材Xにコロナ放電処理を施し、被印字基材Xの表面を改質する。これにより、被印字基材Xは、表面の濡れ性が向上する。
次に、前処理部2においては、コーター処理装置21により、被印字基材Xにインク受理液が塗工され、IR乾燥機22により、被印字基材Xが乾燥され、被印字基材X上に付与されたインク受理液がインク受理層となる。
なお、インク受理層とは、付与されたインクを受理することにより、インクを被印字基材Xに固定させる層である。
また、インク受理層の組成については、従来公知のものを適宜採用できる。
前処理部2においては、被印字基材Xの表面が改質された後に、インク受理層を形成するので、被印字基材Xとインク受理層との密着性が向上する。
【0038】
次に、前処理部2においては、被印字基材Xがクーリングローラ23に接しながら案内される。
これにより、IR乾燥機22で温度が上昇した被印字基材Xの温度が下げられる。
そして、上流側基点ローラ24は、クーリングローラ23により冷却された被印字基材Xを、前処理部2から外部に案内する。
【0039】
第1印字部3および第2印字部4は、被印字基材Xに印字を施し、乾燥を行う部位である。
なお、第1実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、直列に配置された2つの印字部のうち、前方側を第1印字部3とし、後方側を第2印字部4としている。
第1印字部3は、被印字基材Xを第1印字部3の内部に案内するための第1入口ローラ32と、第1入口ローラ32の周面に圧接された第1入口ニップローラ32aと、被印字基材Xにインクを付与するための印字ヘッド30と、インクが付与された被印字基材Xを乾燥するための乾燥部31と、被印字基材Xを該第1印字部3から外部に案内するための第1出口ローラ33と、第1出口ローラ33の周面に圧接された第1出口ニップローラ33aと、これらを収容する筐体3aとを備える。
すなわち、第1入口ローラ32から第1出口ローラ33までの搬送経路が第1印字部3における搬送経路となる。また、第1印字部3における搬送経路は、後述する、第1搬送経路と第2搬送経路とで共通している。
なお、第1入口ローラ32および第1出口ローラ33は、何れも、印字ヘッド30および乾燥部31よりも前方側に配置されている。また、後述する搬送経路の切り替えは、被印字基材Xが第1入口ローラ32に案内される位置以前の上流側、および、被印字基材Xが第1出口ローラ33まで案内された位置以後の下流側で行われる。
【0040】
また、これに加え、第1印字部3は、筐体3a内に、被印字基材Xを送り出すための送りローラ34と、送りローラ34の周面に圧接されたニップローラ34aと、印字ヘッド30より上流側に設けられたCUEマークセンサー36と、印字ヘッド30より下流側に設けられた自動見当カメラ38と、第1印字部3における被印字基材Xの張力を検出するための張力検出装置37と、被印字基材Xを冷却して送り出すためのクーリングローラ35と、クーリングローラ35の周面に圧接されたニップローラ35aとを備える。
なお、第1印字部3においては、第1入口ローラ32、送りローラ34、クーリングローラ35および第1出口ローラ33が駆動ローラとなっている。
【0041】
第1印字部3においては、第1入口ローラ32が、被印字基材Xを、第1印字部3の内部に案内する。
第1入口ローラ32および第1入口ニップローラ32aは、第1印字部3の入口に設置され、送りローラ34およびニップローラ34aは、印字ヘッド30により印字される位置と、乾燥部31との間に設置される。
第1印字部3においては、第1入口ローラ32と第1入口ニップローラ32aとで、被印字基材Xを挟持し、図示しない駆動モータで第1入口ローラ32を回転駆動させることで、被印字基材Xが送り出されるようになっている。
また、送りローラ34とニップローラ34aとで、被印字基材Xを挟持し、図示しない駆動モータで送りローラ34を回転駆動させることで、被印字基材Xが送り出されるようになっている。
また、第1印字部3においては、張力検出装置37が、搬送される被印字基材Xの張力を検出し、検出した張力に応じて送りローラ34が制御される。これにより、搬送される被印字基材Xの張力を適正な状態に調整するようになっている。
【0042】
第1印字部3の内部においては、印字ヘッド30によりデザイン画の印字が施される。
印字ヘッド30によるデザイン画の印字は、CUEマークセンサー36が、被印字基材Xに予め印字されたマークを検出し、図示しない制御部へ検出信号を送信し、制御部が、検出信号を受信したタイミングから、予め設定された搬送距離だけ被印字基材Xが搬送された時点で開始される。
なお、被印字基材Xの搬送距離は、任意のローラに設けた図示しないエンコーダから発信される計測信号に基づいて制御部により算出される。
【0043】
ここで、第1印字部3において、印字ヘッド30によるデザイン画の印字に用いられるインクは、染料又は顔料を含むカラーインクであり、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)およびブラックインク(K)からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上である。
なお、カラーインクは、これら(YMCK)に限定されず、これらが配合された配合インク、光輝性が付与された光輝性カラーインク、金属感のあるメタリックカラーインク等を使用することも可能である。
なお、被印字基材Xが食品包装用のフィルムである場合、安全性の観点から、これらのインクは水性であることが好ましい。
【0044】
第1印字部3において、印字が施された被印字基材Xは、印字の直後に、自動見当カメラ38により撮影され、印字結果が検出される。
そして、自動見当カメラ38の印字結果に応じて、印字ヘッド30によるデザイン画の印字のタイミングが調整され、見当が合わせられる。
【0045】
第1印字部3においては、その後、乾燥部31により乾燥が行われる。
乾燥部31は、IR乾燥機31aと、熱風乾燥機31bとを有する。
印字が施された被印字基材Xは、まず、IR乾燥機31aにより乾燥され、次いで、渦巻状の経路に沿って案内される際に、熱風乾燥機31bにより乾燥される。
これにより、インクは被印字基材Xに固着し、後の第2印字部における印字の際に混色が生じることを抑制できる。
【0046】
ちなみに、被印字基材Xが軟質フィルム等で高熱により変形等のダメージを受ける恐れがある場合、極力低い温度で長時間乾燥することが好ましい。
第1実施形態に係るインクジェット印字装置の乾燥部31においては、渦巻状の経路を使用することで、装置を大型化することなく被印字基材Xにダメージを与えない低い温度で長時間乾燥することを可能としている。
【0047】
第1印字部3においては、乾燥後の被印字基材Xがクーリングローラ35に接しながら案内される。これにより、IR乾燥機31aで温度が上昇した被印字基材Xの温度が下げられる。
そして、第1出口ローラ33は、クーリングローラ35により冷却された被印字基材Xを、第1印字部3から外部に案内する。
【0048】
第2印字部4は、被印字基材Xを第2印字部4の内部に案内するための第2入口ローラ42と、第2入口ローラ42の周面に圧接された第2入口ニップローラ42aと、被印字基材Xにインクを付与するための印字ヘッド40と、インクが付与された被印字基材Xを乾燥するための乾燥部41と、被印字基材Xを該第2印字部4から外部に案内するための第2出口ローラ43と、第2出口ローラ43の周面に圧接された第2出口ニップローラ43aと、これらを収容する筐体4aとを備える。
すなわち、第2入口ローラ42から第2出口ローラ43までの搬送経路が第2印字部4における搬送経路となる。
また、第2印字部4における搬送経路は、後述する、第1搬送経路と第2搬送経路とで共通している。
また、乾燥部41は、IR乾燥機41aと、熱風乾燥機41bとを有する。
なお、第2入口ローラ42および第2出口ローラ43は、何れも、印字ヘッド40および乾燥部41よりも前方側に配置されている。また、後述する搬送経路の切り替えは、被印字基材Xが第2入口ローラ42に案内される位置以前の上流側、および、被印字基材Xが第2出口ローラ43まで案内された位置以後の下流側で行われる。
【0049】
また、これに加え、第2印字部4は、筐体4a内に、被印字基材Xを送り出すための送りローラ44と、送りローラ44の周面に圧接されたニップローラ44aと、印字ヘッド40より上流側に設けられたCUEマークセンサー46と、印字ヘッド40より下流側に設けられた自動見当カメラ48と、被印字基材Xを冷却して送り出すためのクーリングローラ45と、クーリングローラ45の周面に圧接されたニップローラ45aとを備える。
なお、第2印字部4においては、第2入口ローラ42、送りローラ44、クーリングローラ45および第2出口ローラ43が駆動ローラとなっている。
ここで、第2印字部4における、乾燥部41、CUEマークセンサー46、自動見当カメラ48、クーリングローラ45は、第1印字部3における、乾燥部31、CUEマークセンサー36、自動見当カメラ38、クーリングローラ35とそれぞれ同じ構成となっているので、重複する説明を省略する。
【0050】
第2印字部4においては、第2入口ローラ42が、被印字基材Xを、第2印字部4の内部に案内する。
第2入口ローラ42および第2入口ニップローラ42aは、第2印字部4の入口に設置され、送りローラ44およびニップローラ44aは、印字ヘッド40により印字される位置と、乾燥部41との間に設置される。
第2印字部4においては、第2入口ローラ42と第2入口ニップローラ42aとで、被印字基材Xを挟持し、図示しない駆動モータで第2入口ローラ42を回転駆動させることで、被印字基材Xが送り出されるようになっている。
また、送りローラ44とニップローラ44aとで、被印字基材Xを挟持し、図示しない駆動モータで送りローラ44を回転駆動させることで、被印字基材Xが送り出されるようになっている。
【0051】
第2印字部4の内部においては、印字ヘッド40により背景画の印字が施される。
第2印字部4において、印字ヘッド40による背景画の印字に用いられるインクは、染料又は顔料を含むホワイトインク(W)である。
なお、被印字基材Xが食品包装用のフィルムである場合、安全性の観点から、ホワイトインクは水性であることが好ましい。
【0052】
したがって、インクジェット印字装置100においては、第1印字部3、第2印字部4の順で印字が行われた場合、被印字基材Xの表面には、デザイン画、背景画の順で印字されことになり、第2印字部4、第1印字部3の順で印字が行われた場合、被印字基材Xの表面には、背景画、デザイン画の順で印字されことになる。
すなわち、後述するように、被印字基材Xの搬送経路を変えることにより、表刷りおよび裏刷りの印字が可能となる。
【0053】
後処理部5は、被印字基材Xにオーバーコート層を形成するための部位であり、被印字基材Xを後処理部5の内部に案内するための下流側基点ローラ54と、下流側基点ローラ54の周面に圧接された下流側基点ニップローラ54aと、被印字基材Xにオーバーコート液を付与するためのコーター処理装置51と、オーバーコート液が付与された被印字基材Xを乾燥するためのIR乾燥機52と、これらを収容する筐体5aとを備える。
なお、後処理部5の内部において、下流側基点ローラ54は、前方側に配置されている。
また、後述する搬送経路の切り替えは、被印字基材Xが下流側基点ローラ54まで案内される位置以前の上流側で行われる。
また、これらに加え、後処理部5は、筐体5a内に、被印字基材Xを冷却して送り出すためのクーリングローラ53と、クーリングローラ53の周面に圧接されたニップローラ53aとを備える。
なお、後処理部5においては、下流側基点ローラ54およびクーリングローラ53が駆動ローラとなっている。
【0054】
後処理部5においては、コーター処理装置51により、被印字基材Xにオーバーコート液が塗工され、IR乾燥機52により、被印字基材Xが乾燥され、被印字基材X上に付与されたオーバーコート液がオーバーコート層となる。
なお、オーバーコート層とは、印字面を保護するための透明な層である。
また、オーバーコート層の組成については、従来公知のものを適宜採用できる。
次に、後処理部5においては、被印字基材Xがクーリングローラ53に接しながら案内される。これにより、IR乾燥機52で温度が上昇した被印字基材Xの温度が下げられる。
【0055】
画像読み取り部7は、印字されたデザイン画および背景画からなる画像を読み取る部位である。
画像読み取り部7で読み取られた画像データは、図示しない制御装置に送信され、当該制御装置にて、色合いや印字位置のずれの有無等の判定が行われる。なお、不具合があった場合は、それに応じて、印字のタイミング等の調整がなされる。
【0056】
排出部6は、印字された被印字基材Xを回収するための部位であり、被印字基材Xを送り込むための送りローラ61と、送りローラ61の周面に圧接されたニップローラ61aと、被印字基材Xを巻き取るための巻き取り軸60と、これらを収容する筐体6aとを備える。
また、これらに加え、排出部6は、被印字基材Xの張力を調整するためのダンサー62を備える。
なお、排出部6においては、送りローラ61が駆動ローラとなっている。
【0057】
排出部6においては、送りローラ61とニップローラ61aとで、被印字基材Xを挟持し、図示しない駆動モータで送りローラ61を回転駆動させることで、被印字基材Xを巻き取り軸60に送り込むようになっている。そして、巻き取り軸60は、図示しない駆動モータで回転駆動され、被印字基材Xを巻き取る。
このとき、排出部6においては、ダンサー62の調整により、巻き取られる被印字基材Xの張力を適正な状態に調整するようになっているので、被印字基材Xは、適正な張力で巻き取り軸60に巻き取られることになる。
【0058】
インクジェット印字装置100においては、前処理部2と第1印字部3とが連絡部C1を介して連絡されている。
そして、前処理部2と第1印字部3との間の連絡部C1の上方には、第1作業空間部S1が設けられている。
第1作業空間部S1は、作業者が侵入できる程度の前後方向の幅を有しており、連絡部C1の上に乗って、切り替え作業を行うことが可能となっている。
【0059】
同様に、第1印字部3と第2印字部4とが連絡部C2を介して連絡されている。
そして、第1印字部3と第2印字部4との間の連絡部C2の上方には、第2作業空間部S2が設けられている。
第2作業空間部S2は、作業者が侵入できる程度の前後方向の幅を有しており、連絡部C2の上に乗って、切り替え作業を行うことが可能となっている。
また、第2印字部4と後処理部5とが連絡部C3を介して連絡されている。
そして、第2印字部4と後処理部5との間の連絡部C3の上方には、第3作業空間部S3が設けられている。
第3作業空間部S3は、作業者が侵入できる程度の前後方向の幅を有しており、連絡部C3の上に乗って、切り替え作業を行うことが可能となっている。
これらのことにより、インクジェット印字装置100においては、搬送経路の切り替え作業がし易くなっている。
【0060】
ここで、第1作業空間部S1、第2作業空間部S2および第3作業空間部S3のサイズは、それぞれ、作業性の観点から、前後方向の幅が600~1200mmであることが好ましく、高さが1800~2000mmであることが好ましい。
なお、第1作業空間部S1、第2作業空間部S2および第3作業空間部S3のサイズは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0061】
次に、搬送経路について説明する。
第1実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、被印字基材Xの一方の面に、第1印字部3、第2印字部4の順で印字を施す第1搬送経路R1と、第2印字部4、第1印字部3の順で印字を施す第2搬送経路R2とを有する。
すなわち、第1搬送経路R1と第2搬送経路R2とでは、第1印字部3におけるカラーインクの印字および第2印字部4におけるホワイトインクの印字の順序が逆になっている。
【0062】
図2は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置における第1搬送経路を説明するための部分側面図であり、図3は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置における第2搬送経路を説明するための部分側面図である。なお、前処理部2以前の搬送経路、および、第2印字部4以降の搬送経路は、図1に示した通りであり、かつ、第1搬送経路R1と第2搬送経路R2とで共通するので、図2および図3では省略している。
【0063】
図2に示すように、第1搬送経路R1においては、供給部1から送り出され、前処理部2を経た被印字基材Xが、前処理部2の上流側基点ローラ24から下方に向かい、第1作業空間部S1の下の連絡部C1の内部を通った後、上方に向かい、第1印字部3の第1入口ローラ32に搬送される。
【0064】
次に、第1入口ローラ32から第1印字部3の内部に入り、当該第1印字部3の印字ヘッド30によりデザイン画の印字が施されると共に、乾燥部31により乾燥が行われ、第1印字部3の第1出口ローラ33から第1印字部3の外部に搬送される。
次に、第1出口ローラ33から下方に向かい、第1印字部3の乾燥部31の下方を通過し、第2作業空間部S2の下の連絡部C2の内部を通過した後、上方に向かい、第2印字部4の第2入口ローラ42に搬送される。
【0065】
次に、第2入口ローラ42から第2印字部4の内部に入り、当該第2印字部4の印字ヘッド40により背景画の印字が施されると共に、乾燥部41により乾燥が行われ、第2印字部4の第2出口ローラ43から第2印字部4の外部に搬送される。
次に、第2出口ローラ43から下方に向かい、第2印字部4の乾燥部41の下方を通過し、第3作業空間部S3の下の連絡部C3の内部を通過した後、後処理部5の下流側基点ローラ54に搬送される(図1参照)。
【0066】
そして、後処理部5を経た後、排出部6に搬送される。
したがって、第1搬送経路R1によれば、デザイン画、背景画の順で印字が施される裏刷りの印字が可能となる。
なお、第1搬送経路R1においては、上流側基点ローラ24、第1入口ローラ32、第1出口ローラ33、第2入口ローラ42、第2出口ローラ43、下流側基点ローラ54以外にも必要に応じて適所に被印字基材Xを案内するためのローラが配置されている。
【0067】
図3に示すように、第2搬送経路R2においては、供給部1から送り出され、前処理部2を経た被印字基材Xが、前処理部2の上流側基点ローラ24から上方に向かい、第1作業空間部S1の上方を通過し、第1印字部3の印字ヘッド30の上方を通過し、第2作業空間部S2の上方を通過した後、下方に向かい、第2印字部4の第1入口ローラ42に搬送される。
【0068】
次に、第2入口ローラ42から第2印字部4の内部に入り、当該第2印字部4の印字ヘッド40により背景画の印字が施されると共に、乾燥部41により乾燥が行われ、第2印字部4の第2出口ローラ43から第2印字部4の外部に搬送される。
次に、第2出口ローラ43から下方に向かい、第2作業空間部S2の下の連絡部C2の内部を通過した後、上方に向かい、第1印字部3の印字ヘッド30の上方を通過した後、下方に向かい、第1印字部3の第1入口ローラ32に搬送される。
【0069】
次に、第1入口ローラ32から第1印字部3の内部に入り、当該第1印字部3の印字ヘッド30によりデザイン画の印字が施されると共に、乾燥部31により乾燥が行われ、第1印字部3の第1出口ローラ33から第1印字部3の外部に搬送される。
次に、第1出口ローラ33から下方に向かい、第1印字部3の乾燥部31の下方を通過し、第2作業空間部S2の下の連絡部C2の内部を通過し、第2印字部4の乾燥部41の下方を通過し、第3作業空間部S3の下の連絡部C3の内部を通過した後、後処理部5の下流側基点ローラ54に搬送される(図1参照)。
【0070】
そして、後処理部5を経た後、排出部6に搬送される。
したがって、第2搬送経路R2によれば、背景画、デザイン画の順で印字が施される表刷りの印字が可能となる。
なお、第2搬送経路R2においては、上流側基点ローラ24、第1入口ローラ32、第1出口ローラ33、第2入口ローラ42、第2出口ローラ43、下流側基点ローラ54以外にも必要に応じて適所に被印字基材Xを案内するためのローラが配置されている。
【0071】
図4は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置における第1搬送経路および第2搬送経路の切り替えを説明するための原理図である。
なお、第1実施形態に係るインクジェット印字装置は、第1印字部3と第2印字部4とは直列に配置されているが(図1参照)、図4においては便宜的に並列に配置して説明する。
また、図4においては、第1搬送経路R1を実線、第2搬送経路R2を破線で示す。
図4に示すように、第1搬送経路R1および第2搬送経路R2においては、供給部1から上流側基点ローラ24までの搬送経路、第1印字部3内部の搬送経路、第2印字部4内部の搬送経路、および、下流側基点ローラ54から排出部6までの搬送経路、は共通している。
【0072】
一方で、第1搬送経路R1においては、被印字基材Xが、上流側基点ローラ24から第1入口ローラ32に搬送され、第1出口ローラ33から第2入口ローラ42に搬送され、第2出口ローラ43から下流側基点ローラ54に搬送され、第2搬送経路R2においては、被印字基材Xが、上流側基点ローラ24から第2入口ローラ42に搬送され、第2出口ローラ43から第1入口ローラ32に搬送され、第1出口ローラ33から下流側基点ローラ54に搬送される点で異なっている。
【0073】
したがって、例えば、第1搬送経路R1から第2搬送経路R2に切り替える場合は、上流側基点ローラ24からの被印字基材Xの搬送先を、第1入口ローラ32から第2入口ローラ42に切り替え、下流側基点ローラ54までの被印字基材Xの搬送元を、第2出口ローラ43から第1出口ローラ33に切り替え、第1出口ローラ33から第2入口ローラ42に搬送されていた被印字基材Xを、第2出口ローラ43から第1入口ローラ32に搬送されるように切り替えればよい。
このとき、上流側基点ローラ24と、第2入口ローラ42の上流側のローラとは、それぞれ、被印字基材Xの通過面が変更することになる。
なお、これらの切り替えは、被印字基材X自体を入れ替えることにより行ってもよく、被印字基材Xの切断および連結により行ってもよい。
また、第2搬送経路R2から第1搬送経路R1に切り替える場合は、これの逆となる。
【0074】
図1図2および図3に戻り、インクジェット印字装置100においては、下流側基点ローラ54、第1入口ローラ32、第1出口ローラ33、第2入口ローラ42および第2出口ローラ43には、被印字基材Xを把持するための把持手段が取り付けられている。
下流側基点ローラ54においては、下流側基点ニップローラ54aが把持手段として下流側基点ローラ54の周面に圧接されている。下流側基点ローラ54および下流側基点ニップローラ54aは、被印字基材Xを後処理部5の内部に案内するだけでなく、静止した被印字基材Xをその位置で把持固定することが可能となっている。
【0075】
第1入口ローラ32においては、上述した第1入口ニップローラ32aが把持手段に相当する。第1入口ローラ32および第1入口ニップローラ32aは、被印字基材Xを送り出すだけでなく、静止した被印字基材Xをその位置で把持固定することも可能となっている。
また、第1出口ローラ33においては、上述した第1出口ニップローラ33aが把持手段に相当する。第1出口ローラ33および第1出口ニップローラ33aは、被印字基材Xを第1印字部3から外部に案内するだけでなく、静止した被印字基材Xをその位置で把持固定することも可能となっている。
【0076】
第2入口ローラ42においては、上述した第2入口ニップローラ42aが把持手段に相当する。第2入口ローラ42および第2入口ニップローラ42aは、被印字基材Xを送り出すだけでなく、静止した被印字基材Xをその位置で把持固定することも可能となっている。
また、第2出口ローラ43においては、上述した第2出口ニップローラ43aが把持手段に相当する。第2出口ローラ43および第2出口ニップローラ43aは、被印字基材Xを第2印字部4から外部に案内するだけでなく、静止した被印字基材Xをその位置で把持固定することも可能となっている。
【0077】
これらのことにより、インクジェット印字装置100においては、被印字基材Xの切り替え時に、被印字基材Xを、少なくとも、下流側基点ローラ54、第1入口ローラ32、第1出口ローラ33、第2入口ローラ42および第2出口ローラ43で、一時的に把持固定することができるので、搬送経路の切り替え作業をより容易に行うことが可能となっている。
なお、少なくとも、第1入口ローラ32、第1出口ローラ33、第2入口ローラ42および第2出口ローラ43に、被印字基材を把持するための把持手段が取り付けられていることが好ましい。
【0078】
第1実施形態に係るインクジェット印字装置100において、第1搬送経路R1および第2搬送経路R2のうち使用しない方の搬送経路であり、かつ、第1搬送経路R1と第2搬送経路R2とで重複しない搬送経路、には不使用被印字基材が配置されている。
第1実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、第1不使用被印字基材X1、第2不使用被印字基材X2および第3不使用被印字基材X3を有している。
これにより、搬送経路を切り替える際に、元の搬送経路にある被印字基材Xを所定の位置で切断し、その端部と、不使用被印字基材の端部を連結するだけで、不使用被印字基材を被印字基材Xとして、新たな搬送経路に配置できるので、搬送経路の切り替え作業をより一層容易に行うことが可能となる。
なお、不使用被印字基材の端部のうち、搬送経路における上流側の端部を上流側端部といい、下流側の端部を下流側端部という。
【0079】
具体的には、例えば、図2に示す第1搬送経路R1において、第1不使用被印字基材X1は、上流側端部X11が、第2搬送経路R2における上流側基点ローラ24より下流側であり、かつ、上流側基点ローラ24の上方に位置し、下流側端部X12が、第2搬送経路R2における第2入口ローラ42より上流側であり、かつ、第2入口ローラ42の近傍に位置している。
そして、第1不使用被印字基材X1は、上流側端部X11から、第1作業空間部S1の上方を通過し、第1印字部3の印字ヘッド30の上方を通過し、第2作業空間部S2の上を通過した後、下方に向かい、下流側端部X12まで延びている。
【0080】
これにより、第1搬送経路R1から第2搬送経路R2に切り替える場合、上流側基点ローラ24から第1入口ローラ32まで繋がっている被印字基材Xを、上流側基点ローラ24の下流側であり、かつ、上流側基点ローラ24の近傍で切断し、その切断位置より上流側の被印字基材Xを第1不使用被印字基材X1の上流側端部X11に連結すると共に、第1出口ローラ33から第2入口ローラ42まで繋がっている被印字基材Xを、第1搬送経路R1における第2入口ローラ42の上流側であり、かつ、第2入口ローラ42の近傍で切断し、その切断位置より下流側の被印字基材Xを第1不使用被印字基材X1の下流側端部X12に連結することにより、前処理部2から第1印字部3への被印字基材Xの経路を、前処理部2から第2印字部4への被印字基材Xの経路に、簡単に切り替えることができる。
【0081】
また、図2に示す第1搬送経路R1において、第2不使用被印字基材X2は、上流側端部X21が、第2搬送経路R2における第2出口ローラ43より下流側であり、かつ、第1印字部3の第2作業空間部S2側の後方下部Pに位置し、下流側端部X22が、第2搬送経路R2における第1入口ローラ32より上流側であり、かつ、第1入口ローラ32の近傍に位置している。
そして、第2不使用被印字基材X2は、上流側端部X21から、上方に向かい、第1印字部3の印字ヘッド30の上方を通過した後、下方に向かい、下流側端部X22まで延びている。
【0082】
これにより、第1搬送経路R1から第2搬送経路R2に切り替える場合、第2出口ローラ43から下流側基点ローラ54まで繋がっている被印字基材Xを、第1搬送経路R1における第2出口ローラ43の下流側であり、かつ、第2出口ローラ43の近傍で切断し、その切断位置より上流側の被印字基材Xを第2不使用被印字基材X2の上流側端部X21に連結すると共に、上述の上流側基点ローラ24の近傍で切断され第1入口ローラ32まで繋がっている被印字基材Xを、第1搬送経路R1における第1入口ローラ32の上流側であり、かつ、第1入口ローラ32の近傍で切断し、その切断位置より下流側の被印字基材Xを第2不使用被印字基材X2の下流側端部X22に連結することにより、前処理部2から第1印字部3への被印字基材Xの経路および第2印字部4から後処理部5への被印字基材Xの経路を、第2印字部4から第1印字部3への被印字基材Xの経路に、簡単に切り替えることができる。
【0083】
図3に示す第2搬送経路R2において、第3不使用被印字基材X3は、上流側端部X31が、第1搬送経路R1における上流側基点ローラ24より下流側であり、かつ、上流側基点ローラ24の近傍に位置し、下流側端部X32が、第1搬送経路R1における第1入口ローラ32より上流側であり、かつ、第1入口ローラ32の近傍に位置している。
そして、第3不使用被印字基材X3は、上流側端部X31から、下方に向かい、第1作業空間部S1の下の連絡部C1の内部を通過した後、上方に向かい、下流側端部X32まで延びている。
【0084】
これにより、第2搬送経路R2から第1搬送経路R1に切り替える場合、上流側基点ローラ24から第2入口ローラ42まで繋がっている被印字基材Xを、第2搬送経路R2における上流側基点ローラ24の下流側であり、かつ、上流側基点ローラ24の近傍で切断し、その切断位置より上流側の被印字基材Xを第3不使用被印字基材X3の上流側端部X31に連結すると共に、第2出口ローラ43から第1入口ローラ32まで繋がっている被印字基材Xを、第2搬送経路R2における第1入口ローラ32の上流側であり、かつ、第1入口ローラ32の近傍で切断し、その切断位置より下流側の被印字基材Xを第3不使用被印字基材X3の下流側端部X32に連結することにより、前処理部2から第2印字部4への被印字基材Xの経路および第2印字部4から第1印字部3への被印字基材Xの経路を、前処理部2から第1印字部3への被印字基材Xの経路に、簡単に切り替えることができる。
【0085】
第1実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、不使用被印字基材X1,X2,X3の両端に位置するローラ(端部ローラ)に、対応する不使用被印字基材X1,X2,X3を保持するための保持手段が取り付けられている。
図2に示す第1不使用被印字基材X1においては、上流側端部X11に位置する第1上流側端部ローラ71の周面に、保持手段として第1上流側端部ニップローラ71aが圧接されており、下流側端部X12に位置する第1下流側端部ローラ72の周面に、保持手段として第1下流側端部ニップローラ72aが圧接されている。
第1上流側端部ローラ71および第1上流側端部ニップローラ71aは、静止した第1不使用被印字基材X1の上流側端部X11をその位置で保持することが可能となっており、第1下流側端部ローラ72および第1下流側端部ニップローラ72aは、静止した第1不使用被印字基材X1の下流側端部X12をその位置で保持することが可能となっている。
【0086】
また、第2不使用被印字基材X2においては、上流側端部X21に位置する第2上流側端部ローラ73の周面に、保持手段として第2上流側端部ニップローラ73aが圧接されており、下流側端部X22に位置する第2下流側端部ローラ74の周面に、保持手段として第2下流側端部ニップローラ74aが圧接されている。
第2上流側端部ローラ73および第2上流側端部ニップローラ73aは、静止した第2不使用被印字基材X2の上流側端部X21をその位置で保持することが可能となっており、第2下流側端部ローラ74および第2下流側端部ニップローラ74aは、静止した第2不使用被印字基材X2の下流側端部X22をその位置で保持することが可能となっている。
【0087】
同様に、図3に示す第3不使用被印字基材X3においては、上流側端部X31に位置する第3上流側端部ローラ75の周面に、保持手段として第3上流側端部ニップローラ75aが圧接されており、下流側端部X32に位置する第3下流側端部ローラ76の周面に、保持手段として第3下流側端部ニップローラ76aが圧接されている。
第3上流側端部ローラ75および第3上流側端部ニップローラ75aは、静止した第3不使用被印字基材X3の上流側端部X31をその位置で保持することが可能となっており、第3下流側端部ローラ76および第3下流側端部ニップローラ76aは、静止した第3不使用被印字基材X3の下流側端部X32をその位置で保持することが可能となっている。
【0088】
これらのことにより、第1実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、不使用被印字基材X1,X2,X3の両端を一時的に保持することができるので、不使用被印字基材X1,X2,X3の不使用時には、それが落下することを防止することができ、搬送経路の切り替え作業時には、作業を更に容易に行うことが可能となる。
【0089】
上述したように、インクジェット印字装置100においては、例えば、被印字基材Xとして食品包装用の軟質フィルムを用い、軟質フィルムを第1搬送経路R1に通して、印字等を施すことにより裏刷りの印字物が得られ、軟質フィルムを第2搬送経路R2に通して、印字等を施すことにより表刷りの印字物が得られる。
【0090】
図5(a)は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置を用いて製造される食品包装用の裏刷りの印字物を示す模式断面図であり、図5(b)は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置を用いて製造される食品包装用の表刷りの印字物を示す模式断面図である。
なお、図5(a)および図5(b)においては、説明のため、デザイン画A11および背景画A12を一定の厚みを有するものとして示している。
図5の(a)に示すように、裏刷りの印字物101は、透明又は半透明の軟質フィルムからなる被印字基材Xと、当該被印字基材Xの裏面に積層されたインク受理層A1と、当該インク受理層A1の裏面に設けられたデザイン画A11と、当該デザイン画A11の裏面に設けられた背景画A12と、当該背景画A12の裏面に積層されたオーバーコート層A2とを備える。
裏刷りの印字物101においては、インク受理層A1の裏面に、デザイン画A11および背景画A12がこの順序で描かれており、背景画A12は、デザイン画A11を覆うように描かれている。
したがって、裏刷りの印字物101においては、被印字基材X側からデザイン画A11を視認するようになっている。
【0091】
また、図5の(b)に示すように、表刷りの印字物102は、透明又は半透明の軟質フィルムからなる被印字基材Xと、当該被印字基材Xの表面に積層されたインク受理層B1と、当該インク受理層B1の表面に設けられた背景画B12と、当該背景画B12の表面に設けられたデザイン画B11と、当該デザイン画B11の表面に積層された透明又は半透明のオーバーコート層B2とを備える。
表刷りの印字物102においては、インク受理層B1の表面に、背景画B12およびデザイン画B11がこの順序で描かれており、デザイン画B11は、背景画B12に重なるように描かれている。
したがって、表刷りの印字物102においては、オーバーコート層B2側からデザイン画B11を視認するようになっている。
【0092】
このように、インクジェット印字装置100を用いることにより、裏刷りの印字物101および表刷りの印字物102を製造することができる。
また、インクジェット印字装置100を用いることにより、混色が生じることを抑制することができる。
【0093】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るインクジェット印字装置について説明する。
第2実施形態に係るインクジェット印字装置は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置100と同様に、被印字基材を供給するための供給部と、被印字基材にインク受理層を形成するための前処理部と、被印字基材に印字を施し乾燥を行う第1印字部および第2印字部と、被印字基材にオーバーコート層を形成するための後処理部と、印字された画像を読み取るための画像読み取り部と、印字された被印字基材を回収するための排出部と、を備える。
かかるインクジェット印字装置においては、供給部、前処理部、第1印字部、第2印字部、後処理部、画像読み取り部、排出部の順で直列に配置されている。
なお、第2実施形態に係るインクジェット印字装置は、具体的な搬送経路、および、それに伴う不使用被印字基材の位置が異なること以外は、第1実施形態に係るインクジェット印字装置100と同じであるので、共通する説明は省略する。
【0094】
図6は、第2実施形態に係るインクジェット印字装置における第1搬送経路を説明するための部分側面図であり、図7は、第2実施形態に係るインクジェット印字装置における第2搬送経路を説明するための部分側面図である。
なお、前処理部2以前の搬送経路、および、第2印字部以降の搬送経路は、図1に示した通りであり、かつ、第1搬送経路と第2搬送経路とで共通するので、図6および図7では省略している。
【0095】
図6に示すように、第1搬送経路R1aにおいては、供給部1から送り出され、前処理部2を経た被印字基材Xが、前処理部2の上流側基点ローラ24から上方に向かい、第1作業空間部S1の上方を通過した後、下方に向かい、第1印字部3の第1入口ローラ32に搬送される。
【0096】
次に、第1入口ローラ32から第1印字部3の内部に入り、当該第1印字部3の印字ヘッド30によりデザイン画の印字が施されると共に、乾燥部31により乾燥が行われ、第1印字部3の第1出口ローラ33から第1印字部3の外部に搬送される。
次に、第1出口ローラ33から下方に向かい、第1印字部3の乾燥部31の下方を通過した後、乾燥部31の後方で上方に向かい、第2作業空間部S2の上方を通過した後、下方に向かい、第2印字部4の第2入口ローラ42に搬送される。
【0097】
次に、第2入口ローラ42から第2印字部4の内部に入り、当該第2印字部4の印字ヘッド40により背景画の印字が施されると共に、乾燥部41により乾燥が行われ、第2印字部4の第2出口ローラ43から第2印字部4の外部に搬送される。
次に、第2出口ローラ43から下方に向かい、第2印字部4の乾燥部41の下方を通過し、第3作業空間部S3の下の連絡部C3の内部を通過した後、後処理部5の下流側基点ローラ54に搬送される。
【0098】
そして、後処理部5を経た後、排出部6に搬送される。
したがって、第1搬送経路R1aによれば、デザイン画、背景画の順で印字が施される裏刷りの印字が可能となる。
なお、第1搬送経路R1aにおいては、上流側基点ローラ24、第1入口ローラ32、第1出口ローラ33、第2入口ローラ42、第2出口ローラ43、下流側基点ローラ54以外にも必要に応じて適所に被印字基材Xを案内するためのローラが配置されている。
【0099】
図7に示すように、第2搬送経路R2aにおいては、供給部1から送り出され、前処理部2を経た被印字基材Xが、前処理部2の上流側基点ローラ24から上方に向かい、第1作業空間部S1の上方を通過し、第1印字部3の印字ヘッド30の上方を通過し、第2作業空間部S2の上方を通過した後、下方に向かい、第2印字部4の第1入口ローラ42に搬送される。
【0100】
次に、第2入口ローラ42から第2印字部4の内部に入り、当該第2印字部4の印字ヘッド40により背景画の印字が施されると共に、乾燥部41により乾燥が行われ、第2印字部4の第2出口ローラ43から第2印字部4の外部に搬送される。
次に、第2出口ローラ43から上方に向かい、第2作業空間部S2の上方を通り、第1印字部3の印字ヘッド30の上方を通過した後、下方に向かい、第1印字部3の第1入口ローラ32に搬送される。
【0101】
次に、第1入口ローラ32から第1印字部3の内部に入り、当該第1印字部3の印字ヘッド30によりデザイン画の印字が施されると共に、乾燥部31により乾燥が行われ、第1印字部3の第1出口ローラ33から第1印字部3の外部に搬送される。
次に、第1出口ローラ33から下方に向かい、第1印字部3の乾燥部31の下方を通過した後、乾燥部31の後方で上方に向かい、第2作業空間部S2の上方を通過した後、下方に向かい、第2印字部4の乾燥部41の前方で下方に向かい、乾燥部41の下方を通過し、第3作業空間部S3の下の連絡部C3の内部を通過した後、後処理部5の下流側基点ローラ54に搬送される。
【0102】
そして、後処理部5を経た後、排出部6に搬送される。
したがって、第2搬送経路R2aによれば、背景画、デザイン画の順で印字が施される表刷りの印字が可能となる。
なお、第2搬送経路R2aにおいては、上流側基点ローラ24、第1入口ローラ32、第1出口ローラ33、第2入口ローラ42、第2出口ローラ43、下流側基点ローラ54以外にも必要に応じて適所に被印字基材Xを案内するためのローラが配置されている。
【0103】
このように、第2実施形態に係るインクジェット印字装置においては、第1搬送経路R1aおよび第2搬送経路R2aが、必ず、第1作業空間部S1および第2作業空間部S2の上方を通過するように設けられている。この場合、第1作業空間部S1および第2作業空間部S2に人が出入りすることにより生じる粉塵が、搬送経路を搬送中の被印字基材Xに付着することを極力防止することができる。
ここで、第1搬送経路R1aおよび第2搬送経路R2aの高さは、粉塵が舞う量の観点から、地面から少なくとも、1000mm以上の位置であることが好ましく、1800mm以上の位置であることがより好ましい。
【0104】
第2実施形態に係るインクジェット印字装置において、第1搬送経路R1aおよび第2搬送経路R2aのうち使用しない方の搬送経路であり、かつ、第1搬送経路R1aと第2搬送経路R2aとで重複しない搬送経路、には不使用被印字基材が配置されている。
第2実施形態に係るインクジェット印字装置においては、第1不使用被印字基材X1a、第2不使用被印字基材X2aおよび第3不使用被印字基材X3aを有している。
これにより、搬送経路を切り替える際に、元の搬送経路にある被印字基材Xを所定の位置で切断し、その端部と、不使用被印字基材の端部を連結するだけで、不使用被印字基材を被印字基材Xとして、新たな搬送経路に配置できるので、搬送経路の切り替え作業をより一層容易に行うことが可能となる。
【0105】
具体的には、例えば、図6に示す第1搬送経路R1aにおいて、第1不使用被印字基材X1aは、上流側端部X1a1が、第2搬送経路R2aにおける上流側基点ローラ24より下流側であり、かつ、第1印字部3の印字ヘッド30の上方に位置し、下流側端部X1a2が、第2搬送経路R2aにおける第2入口ローラ42より上流側であり、かつ、第2入口ローラ42の上方に位置している。
そして、第1不使用被印字基材X1aは、上流側端部X1a1から、印字ヘッド30および第2作業空間部S2の上方を通過し、下流側端部X1a2まで延びている。
【0106】
これにより、第1搬送経路R1aから第2搬送経路R2aに切り替える場合、上流側基点ローラ24から第1入口ローラ32まで繋がっている被印字基材Xを、第1搬送経路R1aにおける第1入口ローラ32の上流側であり、かつ、第1入口ローラ32の近傍で切断し、その切断位置より上流側の被印字基材Xを第1不使用被印字基材X1aの上流側端部X1a1に連結すると共に、第1出口ローラ33から第2入口ローラ42まで繋がっている被印字基材Xを、第1搬送経路R1aにおける第2入口ローラ42の上流側であり、かつ、第2入口ローラ42の近傍で切断し、その切断位置より下流側の被印字基材Xを第1不使用被印字基材X1aの下流側端部X1a2に連結することにより、前処理部2から第1印字部3への被印字基材Xの経路を、前処理部2から第2印字部4への被印字基材Xの経路に、簡単に切り替えることができる。
【0107】
また、図6に示す第1搬送経路R1aにおいて、第2不使用被印字基材X2aは、上流側端部X2a1が、第2搬送経路R2aにおける第2出口ローラ43より下流側であり、かつ、第2出口ローラ43の上方に位置し、下流側端部X2a2が、第2搬送経路R2aにおける第1入口ローラ32より上流側であり、かつ、第1印字部3の印字ヘッド30の上方に位置している。
そして、第2不使用被印字基材X2aは、上流側端部X2a1から、第2作業空間部S2の上方を通過し、下流側端部X2a2まで延びている。
なお、第1不使用被印字基材X1aと第2不使用被印字基材X2aとは略平行となっており、第1不使用被印字基材X1aが第2不使用被印字基材X2aよりも上方に位置している。
【0108】
これにより、第1搬送経路R1aから第2搬送経路R2aに切り替える場合、第2出口ローラ43から下流側基点ローラ54まで繋がっている被印字基材Xを、第1搬送経路R1aにおける第2出口ローラ43の下流側であり、かつ、第2出口ローラ43の近傍で切断し、その切断位置より上流側の被印字基材Xを第2不使用被印字基材X2aの上流側端部X2a1に連結すると共に、上述の第1入口ローラ32の近傍で切断した被印字基材Xの切断位置より下流側の被印字基材Xを第2不使用被印字基材X2aの下流側端部X2a2に連結することにより、前処理部2から第1印字部3への被印字基材Xの経路および第2印字部4から後処理部5への被印字基材Xの経路を、第2印字部4から第1印字部3への被印字基材Xの経路に、簡単に切り替えることができる。
【0109】
また、図6に示す第1搬送経路R1aにおいて、第3不使用被印字基材X3aは、上流側端部X3a1が、第2搬送経路R2aにおける第1出口ローラ33より下流側であり、かつ、第2印字部4内の第2入口ローラ42の前方に位置し、下流側端部X3a2が、第2搬送経路R2aにおける下流側基点ローラ54より上流側であり、かつ、第2印字部4内の第2出口ローラ43の前方に位置している。
そして、第3不使用被印字基材X3aは、上流側端部X3a1から、下方に向かい、下流側端部X3a2まで延びている。
【0110】
これにより、第1搬送経路R1aから第2搬送経路R2aに切り替える場合、上述の第2入口ローラ42の近傍で切断した被印字基材Xの切断位置より上流側の被印字基材Xを第3不使用被印字基材X3aの上流側端部X3a1に連結すると共に、上述の第2出口ローラ43の近傍で切断した被印字基材Xの切断位置より下流側の被印字基材Xを第3不使用被印字基材X3aの下流側端部X3a2に連結することにより、第1印字部3から第2印字部4への被印字基材Xの経路および第2印字部4から後処理部5への被印字基材Xの経路を、第1印字部から後処理部5への被印字基材Xの経路に、簡単に切り替えることができる。
【0111】
第2実施形態に係るインクジェット印字装置においては、不使用被印字基材X1a,X2a,X3aの両端に位置するローラ(端部ローラ)に、対応する不使用被印字基材X1a,X2a,X3aを保持するための保持手段が取り付けられている。
図6に示す第1不使用被印字基材X1aにおいては、上流側端部X1a1に位置する第1上流側端部ローラ81の周面に、保持手段として第1上流側端部ニップローラ81aが圧接されており、下流側端部X1a2に位置する第1下流側端部ローラ82の周面に、保持手段として第1下流側端部ニップローラ82aが圧接されている。
第1上流側端部ローラ81および第1上流側端部ニップローラ81aは、静止した第1不使用被印字基材X1aの上流側端部X1a1をその位置で保持することが可能となっており、第1下流側端部ローラ82および第1下流側端部ニップローラ82aは、静止した第1不使用被印字基材X1aの下流側端部X1a2をその位置で保持することが可能となっている。
【0112】
また、第2不使用被印字基材X2aにおいては、上流側端部X2a1に位置する第2上流側端部ローラ83の周面に、保持手段として第2上流側端部ニップローラ83aが圧接されており、下流側端部X2a2に位置する第2下流側端部ローラ84の周面に、保持手段として第2下流側端部ニップローラ84aが圧接されている。
第2上流側端部ローラ83および第2上流側端部ニップローラ83aは、静止した第2不使用被印字基材X2aの上流側端部X2a1をその位置で保持することが可能となっており、第2下流側端部ローラ84および第2下流側端部ニップローラ84aは、静止した第2不使用被印字基材X2aの下流側端部X2a2をその位置で保持することが可能となっている。
【0113】
また、第3不使用被印字基材X3aにおいては、上流側端部X3a1に位置する第3上流側端部ローラ85の周面に、保持手段として第3上流側端部ニップローラ85aが圧接されており、下流側端部X3a2に位置する第3下流側端部ローラ86の周面に、保持手段として第3下流側端部ニップローラ86aが圧接されている。
第3上流側端部ローラ85および第3上流側端部ニップローラ85aは、静止した第3不使用被印字基材X3aの上流側端部X3a1をその位置で保持することが可能となっており、第3下流側端部ローラ86および第3下流側端部ニップローラ86aは、静止した第3不使用被印字基材X3aの下流側端部X3a2をその位置で保持することが可能となっている。
【0114】
これらのことにより、第2実施形態に係るインクジェット印字装置においては、不使用被印字基材X1a,X2a,X3aの両端を一時的に保持することができるので、不使用被印字基材X1a,X2a,X3aの不使用時には、それが落下することを防止することができ、搬送経路の切り替え作業時には、作業を更に容易に行うことが可能となる。
【0115】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0116】
本実施形態に係るインクジェット印字装置は、供給部1、前処理部2、第1印字部3、第2印字部4、後処理部5、画像読み取り部7および排出部6を備えているが、前処理部2,後処理部5および画像読み取り部7は、必須の構成ではない。
また、第1印字部3および第2印字部4の他に、更に印字部を備えていてもよい。
【0117】
本実施形態に係るインクジェット印字装置において、供給部1は、供給軸10に巻き取られた状態から被印字基材Xを引き出す方式を採用しているが、被印字基材Xを供給可能であれば、これに限定されない。
また、供給部1は、蛇行防止装置11、ダンサー12、張力検出装置14等を備えているが、必須の構成ではない。
【0118】
本実施形態に係るインクジェット印字装置において、前処理部2は、コロナ処理装置20、クーリングローラ23、上流側基点ローラ24等を備えているが、必須の構成ではない。
なお、前処理部2が無い場合、上流側基点ローラ24は、供給部1と第1印字部3との間の搬送経路に設けられ、前処理部2が上流側基点ローラ24を有しない場合、上流側基点ローラ24は、前処理部2と第1印字部3との間の搬送経路に設けられる。
【0119】
本実施形態に係るインクジェット印字装置において、第1印字部3の第1入口ローラ32は、図示しない駆動モータで回転駆動させているが、駆動モータ等が無く、自由回転するものであってもよい。
また、第1印字部3において、乾燥部31は、IR乾燥機31aと、渦巻状の経路を有する熱風乾燥機31bとを備えているが、乾燥部31の構成はこれに限定されない。
また、第1印字部3は、送りローラ34、ニップローラ34a、CUEマークセンサー36、自動見当カメラ38、張力検出装置37、クーリングローラ35等を備えているが、必須の構成ではない。
【0120】
同様に、第2印字部4の第2入口ローラ42は、図示しない駆動モータで回転駆動させているが、駆動モータ等が無く、自由回転するものであってもよい。
また、第2印字部4において、乾燥部41は、IR乾燥機41aと、渦巻状の経路を有する熱風乾燥機41bとを備えているが、乾燥部41の構成はこれに限定されない。
また、第2印字部4は、送りローラ44、ニップローラ44a、CUEマークセンサー46、自動見当カメラ48、クーリングローラ45等を備えているが、必須の構成ではない。
【0121】
本実施形態に係るインクジェット印字装置においては、第1印字部3でカラーインクを印字し、第2印字部4でホワイトインクを印字しているが、これに限定されない。
また、インクが逆であってもよい。すなわち、第1印字部3でホワイトインクを印字し、第2印字部4でカラーインクを印字してもよい。この場合、第1搬送経路を経由した場合、表刷りの印字物が得られ、第2搬送経路を経由した場合、裏刷りの印字物が得られる。
【0122】
本実施形態に係るインクジェット印字装置においては、水系のカラーインクおよび水系のホワイトインクを用いているが、紫外線硬化型のカラーインクおよびホワイトインクを用いてもよい。この場合、乾燥部の代わりに、UV照射機が取り付けられる。
【0123】
本実施形態に係るインクジェット印字装置において、後処理部5は、被印字基材Xにオーバーコート液を付与して、オーバーコート層を形成しているが、これに限定されず、例えば、ラミネート加工を行うようにしてもよい。
また、後処理部5は、下流側基点ローラ54、クーリングローラ53等を備えているが、必須の構成ではない。
なお、後処理部5が無い場合、下流側基点ローラ54は、第2印字部4と排出部6との間の搬送経路に設けられ、後処理部5が下流側基点ローラ54を有しない場合、下流側基点ローラ54は、第2印字部4と後処理部5との間の搬送経路に設けられる。
【0124】
本実施形態に係るインクジェット印字装置において、排出部6は、印字された被印字基材Xを巻き取り軸60に巻き取る方式を採用しているが、被印字基材Xを回収可能であれば、これに限定されない。例えば、振り落とし方式等を採用してもよい。
また、排出部6は、ダンサー62等を備えているが、必須の構成ではない。
【0125】
本実施形態に係るインクジェット印字装置においては、前処理部2と第1印字部3とが連絡部C1を介して連絡され、連絡部C1の上方に第1作業空間部S1が設けられているが、必須の構成ではない。
また、第1印字部3と第2印字部4とが連絡部C2を介して連絡され、連絡部C2の上方に第2作業空間部S2が設けられているが、必須の構成ではない。
また、第2印字部4と後処理部5とが連絡部C3を介して連絡され、連絡部C3の上方に第3作業空間部S3が設けられているが、必須の構成ではない。
【0126】
本実施形態に係るインクジェット印字装置においては、下流側基点ローラ54に把持手段として下流側基点ニップローラ54aが取り付けられ、第1入口ローラ32に把持手段として第1入口ニップローラ32aが取り付けられ、第1出口ローラ33に把持手段として第1出口ニップローラ33aが取り付けられ、第2入口ローラ42に把持手段として第2入口ニップローラ42aが取り付けられ、第2出口ローラ43に把持手段として第2出口ニップローラ43aが取り付けられているが、把持手段はこれらに限定されない。
【0127】
第1実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、第1不使用被印字基材X1、第2不使用被印字基材X2、第3不使用被印字基材X3が配置されているが、これらは必須ではなく、また、配置位置も図2および図3に示す位置に限定されない。
同様に、第2実施形態に係るインクジェット印字装置においては、第1不使用被印字基材X1a、第2不使用被印字基材X2a、第3不使用被印字基材X3aが配置されているが、これらは必須ではなく、また、配置位置も図6に示す位置に限定されない。
【0128】
第1実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、第1上流側端部ローラ71に保持手段として第1上流側端部ニップローラ71aが取り付けられ、第1下流側端部ローラ72に保持手段として第1下流側端部ニップローラ72aが取り付けられ、第2上流側端部ローラ73に保持手段として第2上流側端部ニップローラ73aが取り付けられ、第2下流側端部ローラ74に保持手段として第2下流側端部ニップローラ74aが取り付けられ、第3上流側端部ローラ75に保持手段として第3上流側端部ニップローラ75aが取り付けられ、第3下流側端部ローラ76に保持手段として第3下流側端部ニップローラ76aが取り付けられているが、保持手段はこれらに限定されない。
なお、第2実施形態に係るインクジェット印字装置においても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のインクジェット印字装置は、インクを微滴化し、被印字基材Xに対し、直接吹き付けることで、文字や模様等のデザインを印字する装置として利用できる。
また、インクジェット印字装置は、被印字基材Xとして、透明又は半透明のフィルムを使用した場合、被印字基材Xの搬送経路を切り替えることにより、同じ装置で、表刷りおよび裏刷りの印字を行うことができる。
【符号の説明】
【0130】
1・・・供給部
10・・・供給軸
100・・・インクジェット印字装置
101・・・裏刷りの印字物
102・・・表刷りの印字物
11・・・蛇行防止装置
12,62・・・ダンサー
13,34,44,61・・・送りローラ
13a,23a,34a,35a,44a,45a,53a,61a・・・ニップローラ
14,37・・・張力検出装置
1a,2a,3a,4a,5a,6a・・・筐体
2・・・前処理部
20・・・コロナ処理装置
21,51・・・コーター処理装置
22,52・・・IR乾燥機
23,35,45,53・・・クーリングローラ
24・・・上流側基点ローラ
3・・・第1印字部
30,40・・・印字ヘッド
31,41・・・乾燥部
31a,41a・・・IR乾燥機
31b,41b・・・熱風乾燥機
32・・・第1入口ローラ
32a・・・第1入口ニップローラ
33・・・第1出口ローラ
33a・・・第1出口ニップローラ
36,46・・・CUEマークセンサー
38,48・・・自動見当カメラ
4・・・第2印字部
42・・・第2入口ローラ
42a・・・第2入口ニップローラ
43・・・第2出口ローラ
43a・・・第2出口ニップローラ
5・・・後処理部
54・・・下流側基点ローラ
54a・・・下流側基点ニップローラ
6・・・排出部
60・・・巻き取り軸
7・・・画像読み取り部
71,81・・・第1上流側端部ローラ
71a,81a・・・第1上流側端部ニップローラ
72,82・・・第1下流側端部ローラ
72a,82a・・・第1下流側端部ニップローラ
73,83・・・第2上流側端部ローラ
73a,83a・・・第2上流側端部ニップローラ
74,84・・・第2下流側端部ローラ
74a,84a・・・第2下流側端部ニップローラ
75,85・・・第3上流側端部ローラ
75a,85a・・・第3上流側端部ニップローラ
76,86・・・第3下流側端部ローラ
76a,86a・・・第3下流側端部ニップローラ
A1,B1・・・インク受理層
A11,B11・・・デザイン画
A12,B12・・・背景画
A2,B2・・・オーバーコート層
C1,C2,C3・・・連絡部
P・・・後方下部
R1,R1a・・・第1搬送経路
R2,R2a・・・第2搬送経路
S1・・・第1作業空間部
S2・・・第2作業空間部
S3・・・第3作業空間部
X・・・被印字基材
X1,X1a・・・第1不使用被印字基材
X11,X1a1,X21,X2a1,X31,X3a1・・・上流側端部
X12,X1a2,X22,X2a2,X32,X3a2・・・下流側端部
X2,X2a・・・第2不使用被印字基材
X3,X3a・・・第3不使用被印字基材
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7