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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】工作機械の切屑検出装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20240213BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20240213BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240213BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B23Q17/09 Z
G05B19/18 W
B23Q17/24 Z
B23Q3/155 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020027519
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130177
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】303024138
【氏名又は名称】株式会社ニイガタマシンテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】池田 直弘
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-197383(JP,A)
【文献】特開平03-150405(JP,A)
【文献】特開平09-085583(JP,A)
【文献】特開平11-170104(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056264(WO,A1)
【文献】特開平10-227623(JP,A)
【文献】特開2001-116700(JP,A)
【文献】特開2019-166614(JP,A)
【文献】特開2019-030917(JP,A)
【文献】特開2017-080842(JP,A)
【文献】特開2017-035765(JP,A)
【文献】特開2016-042066(JP,A)
【文献】特開2000-146856(JP,A)
【文献】特開平06-229928(JP,A)
【文献】実開昭60-186154(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099371(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0222705(US,A1)
【文献】国際公開第2015/104945(WO,A1)
【文献】特開平08-197382(JP,A)
【文献】特開平03-228543(JP,A)
【文献】特開2015-024455(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016119973(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155-3/157
B23Q 11/00-13/00
B23Q 17/00-23/00
G05B 19/18-19/416
G06T 1/00
G06T 7/00
G01N 21/03-21/15
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を格納する工具マガジンと前記工具を装着してワークを切削する主軸との間で前記工具を交換して切削可能な工作機械において、
前記工具を照射する第1光源と、
前記第1光源で照射された前記工具を撮像する第一撮像手段と、
前記第1光源と異なる角度から前記工具を照射する第2光源と、
前記第2光源で照射された前記工具を前記第一撮像手段と異なる角度で撮像する第二撮像手段と、
前記工具の工具径及び工具長の情報に基づいて、前記第一撮像手段及び第二撮像手段で撮影した切削前後の前記工具の撮影画像を対比して切屑付着の有無を判定する切屑付着判定手段と、
を備え
前記切屑付着判定手段は、前記第一撮像手段及び第二撮像手段で撮像した撮影画像を碁盤の目状に区分けした複数の画像認識区画から選択した切削前後の前記工具を含む前記画像認識区画同士を対比して切屑付着の有無を判定することを特徴とする工作機械の切屑検出装置。
【請求項2】
前記第一撮像手段及び第二撮像手段による前記工具の撮影位置は、切削前後の前記工具を前記工具マガジンの工具ポットに収納した割り出し位置である請求項1に記載された工作機械の切屑検出装置。
【請求項3】
前記第一撮像手段及び第二撮像手段による前記工具の撮影位置は、前記工具マガジンと前記主軸との間で前記工具を交換可能な工具チェンジャに保持された切削前後の工具の待機位置である請求項1に記載された工作機械の切屑検出装置。
【請求項4】
前記画像認識区画は前記工具における工具長方向の先端部、付け根部、前記先端部及び付け根部の中間部が選択されている請求項に記載された工作機械の切屑検出装置。
【請求項5】
前記画像認識区画は前記工具の径方向外側に離間した位置が選択されている請求項1または4に記載された工作機械の切屑検出装置。
【請求項6】
前記主軸の近傍には前記主軸に装着された工具の付着物を吹き飛ばすエア噴射ノズルが設置されている請求項1からのいずれか1項に記載された工作機械の切屑検出装置。
【請求項7】
前記第一撮像手段及び第二撮像手段は、前記主軸を備えた加工室と仕切られた工具マガジンを備えた工具収納室に設置されている請求項1からのいずれか1項に記載された工作機械の切屑検出装置。
【請求項8】
前記第1光源と前記第2光源は色相が相違している請求項1からのいずれか1項に記載された工作機械の切屑検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工時に主軸に装着した切削工具に切屑が付着することを工具交換時に検出することのできる工作機械の切屑検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動工具交換装置を備えた工作機械では、工具マガジンの工具ポットに装着された工具の中から切削に必要な切削工具(以下、単に工具という)を検出する。そして、工具マガジンの割り出し位置で該当する工具を工具チェンジャによってピックアップして主軸に装着し、切削後に工具ポットに戻している。工具によってワークを切削する際、工具に切屑が付着したり絡まったりすることがある。
工具に切屑が付着等しているとワークを傷つけたり工具が折れたりすることがある。また、切屑が付着等した工具を工具マガジンに収納した際に隣の工具に絡まったり、工具マガジンの移動時に工具が落下したりすることがある。これらの不具合を回避するために、工具に付着した切屑の有無を検出してその工具で次の切削をしないようにすることが必要である。
【0003】
工具に切屑が付着したことを検出する手段として例えば次の技術が提案されている。例えば特許文献1に記載された切屑付着検知方法では、切屑付着検知対象外エリアと切屑付着検知エリアを設定して切屑付着検知エリア内で切屑付着の有無を光学的に検知している。切屑付着対象外エリアは切削工具の外側のオフセット幅をエリアとする。
工具使用後の撮像による画像データのうち切屑付着検知エリアに対応する画像データのみを切屑付着検知対象の画像データとして切屑の有無を判別し、この判別結果により切削工具に切屑が付着しているか否かを検知する。切屑付着有無の判定は背景を無反射の背景板として反射像を全て切屑として認識するとしている。
【0004】
また、特許文献2に記載された加工屑検出装置では、工作機械の加工室内における加工屑の有無を検出して清掃機構による清掃を行うものである。切屑の検出に際してラインレーザ光が切屑に当たって乱反射することによる断続的な反射光を撮像ユニットで検査画像として取得し、ラインレーザ光の像に基づいて画像処理部で加工屑の有無を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-197383号公報
【文献】特開2019-30917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の切屑付着検知装置では、切削工具の外側に設定されたオフセット幅の外側へ突出する切屑の検出が対象であり、切削工具の輪郭内でカメラに向かって飛び出す方向の切屑は検知できなかった。また、切削工具に付着する切屑はいろいろな形態になるため、1方向からの撮影では切削工具の裏に隠れた切屑を検知できなかった。しかも、特許文献1では、反射像を対象とするため無反射板が必要であり、カメラは工具出し入れ準備位置近傍で撮影するため噴霧状の切削液や切粉の粉塵等による画像の汚れが生じるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された加工屑検出装置は、ラインレーザ光による一方向からの撮影に基づく画像解析を行うものであるため、工具に付着する切屑の方向や向きによっては切屑を検出できなかった。また、切削液や粉塵が舞う加工室内でカメラによる撮影を行うため、カメラに保護ガラス板があったとしても汚れが付着するため安定した撮影は困難である。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、従来、検出できなかった工具に付着した切屑を効率よく検出できるようにした工作機械の切屑検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る工作機械の切屑検出装置は、工具を格納する工具マガジンと工具を装着してワークを切削する主軸との間で工具を交換して切削可能な工作機械において、工具を照射する第1光源と、第1光源で照射された工具を撮像する第一撮像手段と、第1光源と異なる角度から工具を照射する第2光源と、第2光源で照射された工具を第一撮像手段と異なる角度で撮像する第二撮像手段と、工具の工具径及び工具長の情報に基づいて、第一撮像手段及び第二撮像手段で撮像した切削前後の工具の撮影画像を対比して切屑付着の有無を判定する切屑付着判定手段と、を備え、前記切屑付着判定手段は、前記第一撮像手段及び第二撮像手段で撮像した撮影画像を碁盤の目状に区分けした複数の画像認識区画から選択した切削前後の前記工具を含む前記画像認識区画同士を対比して切屑付着の有無を判定することを特徴とする。
また、本発明に係る工作機械の切屑検出装置は、工具を格納する工具マガジンと工具を装着してワークを切削する主軸との間で工具を交換して切削可能な工作機械において、工具を照射する第1光源と、第1光源で照射された工具を撮像する第一撮像手段と、第1光源と異なる角度から工具を照射する第2光源と、第2光源で照射された工具を第一撮像手段と異なる角度で撮像する第二撮像手段と、工具の工具径及び工具長の情報に基づいて、第一撮像手段及び第二撮像手段で撮像した切削前後の工具の撮影画像を対比して切屑付着の有無を判定する切屑付着判定手段と、を備えたことが好ましい。
本発明によれば、第一撮像手段及び第二撮像手段で異なる角度から撮像した切削前後の工具の撮影画像を切屑付着判定手段で対比することで、切削後の工具に付着する切屑を検出して切屑付着の有無を判定することができる。そのため、一方の撮像手段では撮像できない工具の裏面に付着したり工具輪郭内で突出したりする切屑を、撮影角度の異なる第一撮像手段及び第二撮像手段によって判別することができる。
【0010】
また、切屑付着判定手段は、第一撮像手段及び第二撮像手段で撮像した撮影画像を碁盤の目状に区分けした複数の画像認識区画から選択した工具周囲の切削前後の画像認識区画同士を対比して切屑付着の有無を判定することが好ましい。
第一撮像手段及び第二撮像手段で撮像した工具の撮影画像を碁盤の目状に仕切った多数の画像認識区画から工具周囲のいくつかの画像認識区画を選択することで、切削前後の撮影画像を対比して工具から突出する切屑の輪郭によって切屑の有無を判別できるため高速に判定できる。
【0011】
また、第一撮像手段及び第二撮像手段による工具の撮影位置は、切削前後の工具を工具マガジンの工具ポットに収納した割り出し位置であることが好ましい。
工具マガジンの割り出し位置で切削前後の工具を撮影することで、工具に切屑が付着している場合には工具ポットに収納し、次の切削時には予備の工具を使用することができる。
【0012】
また、第一撮像手段及び第二撮像手段による工具の撮影位置は、前記工具マガジンと前記主軸との間で前記工具を交換可能な工具チェンジャに保持された切削前後の工具の待機位置であってもよい。
工具マガジンから引き出した切削前の工具と切削後の工具とをそれぞれ待機位置で撮影して対比することで、工具マガジンへ収納する前の工具について切屑付着の有無を判別することができる。そのため、工具に切屑が付着し突出している場合には、切削後の工具を工具マガジンの工具ポットに収納することを中止したり、退避用の工具ポットに収納させて隣りの工具に切屑が干渉しないようにすることができる。
【0013】
また、画像認識区画は工具における工具長方向の先端部、付け根部、前記先端部及び付け根部の中間部が選択されていることが好ましい。
工具の輪郭における工具長方向の先端部、付け根部、中間部の画像認識区画を選択すると切屑の付着を検出し易いので、少ない数の画像認識区画で効率的且つ高速に切屑の付着の有無を判定できる。
【0014】
また、画像認識区画は工具の径方向外側に離間した位置が選択されていてもよい。
工具に切屑が絡みつく径方向の範囲が大きくても画像認識区画で判定して切屑の付着範囲を認識できる。
【0015】
また、主軸の近傍には主軸に装着された工具の付着物を吹き飛ばすエア噴射ノズルが設置されていてもよい。
工具の付着物として切削液や切粉や付着の軽い切屑等が付着していてもエア噴射ノズルで吹き飛ばすことができるため、切屑の有無を第一撮像手段及び第二撮像手段によって精度良く判定できる。
【0016】
また、第一撮像手段及び第二撮像手段は、主軸を備えた加工室と仕切られた工具マガジンを備えた工具収納室に設置されていることが好ましい。
第一撮像手段及び第二撮像手段を、主軸を備えた加工室と仕切られた工具収納室に設置して切屑の検出を行うことで、第一撮像手段や第二撮像手段が切屑や切削液や切粉等で汚れることを防止できる。
【0017】
第1光源と第2光源は色相が相違していてもよい。
第一撮像手段及び第二撮像手段によって工具を撮像する際、透過光による工具に付着した切屑の画像と乱反射光による切屑の画像を異なる色相で同時に判別することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る工作機械の切屑検出装置によれば、工具に付着する切屑を複数の方向から撮影して複数の画像認識区画で切屑付着の有無を検出するため、従来検出できなかった方向に付着する切屑も確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一実施形態による工作機械の切屑検出装置の要部構成図である。
図2】工具マガジンの工具割り出し位置と第一カメラ及び第1光源、第二カメラ及び第2光源との関係を示す図である。
図3】割り出し位置の工具ポットと主軸との間で工具をスイングする工程と待機位置を説明する平面図である。
図4】回転軸線上で主軸に工具が装着された状態の図である。
図5】割り出し位置にある工具と第一カメラ及び第1光源との位置関係を示す図である。
図6】割り出し位置にある工具と第一カメラ及び第1光源、第二カメラ及び第2光源との位置関係を示す図である。
図7】第一カメラ及び第1光源、第二カメラ及び第2光源と制御部のブロック図とを示す図である。
図8】主軸に装着された工具に切屑が絡まった状態の撮影画像の図である。
図9図8に示す撮影画像を碁盤の目状に区分けした画像認識区画を示す図である。
図10】工作機械の切屑検出装置による切屑検出方法を示すフローチャートである。
図11】第二実施形態による切屑検出装置に用いるU軸機能を備えた主軸の側面図である。
図12】工具チェンジャによる工具の待機位置と第一カメラ及び第1光源、第二カメラ及び第2光源との関係を示す図である。
図13】U軸機能を備えた主軸に装着した工具に切屑が絡まった状態の撮影画像の図である。
図14図13に示す工具の撮影画像における画像認識区画を示す図である。
図15】U軸機能を備えた主軸の工具に切屑が大きく絡まった撮影画像における画像認識区画を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態による工作機械の切屑検出装置について添付図面により説明する。まず、本発明の第一実施形態による工作機械の切屑検出装置を図1乃至図10により説明する。
図1は第一実施形態による工作機械1を示すものである。本実施形態による工作機械1は、例えば横形の工作機械1が用いられている。この工作機械1は、ベース3と、ベース3上の前部に設けられていてX軸方向に移動可能なテーブル4と、ベース3上の後部に設けられていてZ軸方向に移動可能なコラム5と、コラム5に支持されてY軸方向に移動可能な主軸ヘッド6とを備えている。主軸ヘッド6には後述するようにU軸機能を備えた主軸8が設置されている。
【0021】
本実施形態による工作機械1は、工具マガジン10に装着された複数の工具Tのいずれかを割り出し位置Wで選択的に取り出して主軸8に装着する自動工具交換装置7と、切削前後で割り出し位置Wの工具ポット11にそれぞれ装着した工具Tの撮影画像から切屑を検出する切屑検出装置2とを備えている。
テーブル4の上面の中央には、ワーク(図示せず)を取り付けたパレットPが自動交換可能に載置されている。ワークは、主軸ヘッド6に設けられた主軸8の中ぐりスピンドルに装着された工具Tで加工させられる。パレットPには、テーブル4がパレット交換位置に移動したときに、テーブル4上の加工済みワークと段取りテーブル上の新しいワークとを互いに入れ替える、従来周知の2面式自動パレット交換装置が設けられている。
【0022】
図4において、本実施形態による工作機械1では、主軸8に装着された工具Tを主軸8の回転軸線Oと同軸に位置決めして回転切削するため、通常の主軸8と同じ切削加工を行える。なお、本実施形態による工作機械1では、図11に示すように、主軸8をU軸機能付きとして回転軸線Oに直交する主軸面上の径方向に移動させて保持することができる。この場合には、工具Tは回転軸線Oを中心にリング状に旋回加工するため、切削工具としてワークの穴径加工やテーパ穴加工等を行える。
【0023】
図1において、コラム5の側方には多種の工具Tをそれぞれ格納する複数の工具ポット11を配列させた工具マガジン10を備えている。工具ポット11には工具Tの主軸8に装着される装着部分が工具ポット11内に嵌合保持され、工具Tの刃先及び工具本体部分が外部に露出している。工具マガジン10は、図2に示すように、工具ポット11が例えば略U字状に配列されて複数のホイール12を介して旋回可能なチェーン式の無端ベルト状に形成されている。
複数のホイール12のいずれかに駆動モータM1が連結されて工具マガジン10を自動的に周回可能としている。工具マガジン10に収納された複数の工具Tは予めその種類(工具長及び工具径を含む)が登録されており、主軸8に装着された工具Tの切削の手順に応じて次に使用すべき工具Tを割り出し位置Wに移動させて取り外し可能に位置決めできる。
【0024】
図3において、工具マガジン10と主軸8との間には、工具Tを交換可能な自動工具交換用(ATC)の工具チェンジャ18が設けられている。工具チェンジャ18は水平旋回可能であり、旋回方向の両端部に工具ポット11との間で工具Tを受け渡す第一グリッパアーム15と主軸8で切削に用いた使用済み工具Tを受け渡す第二グリッパアーム16とが設けられている。
【0025】
図3に示すように、工具チェンジャ18は工具マガジン10の割り出し位置Wと主軸8との間で、スイング駆動装置14によって水平面内をスイング(旋回)して角度を工具ポット11と同一の方向と直交する方向(主軸8と平行な方向)との間で90度向きを変えることができる。更に、工具チェンジャ18は左右方向のスライド移動及び180度水平回転させることができる。
即ち、割り出し位置Wにある工具ポット11から次に使用する工具Tを第一グリッパアーム15で把持して引き出し、工具チェンジャ18を90度旋回して角度を切り換え可能である。しかも、スイング途中の角度45度の待機位置Vで停止して工具Tを保持可能である。
【0026】
そして、工具チェンジャ18を90度スイングさせた後、水平方向にスライドさせて、第二グリッパアーム16で主軸8に装着された使用(切削)済み工具Tを把持して抜き差し方向に引き出す。工具チェンジャ18を水平方向に180度回転させて再び抜き差し方向に差し込むことで、第一グリッパアーム15で把持された切削前の工具Tを主軸8に装着する。第二グリッパアーム16で把持した切削済み工具Tは工具チェンジャ18を水平移動させた後、90度旋回させて水平に保持することで割り出し位置Wの工具ポット11に収納可能になる。工具チェンジャ18はスイング駆動装置14によって、このような工具交換作業を繰り返して行う。
図3において、主軸8の近傍には使用済み工具Tにエアを噴射するエア噴射ノズル21が設置されている。切削後の工具Tには切削液(クーラント)や切粉や切屑が付着しており、この切削液や切粉をエア噴射ノズル21のエアで吹き飛ばすことができる。また、工具Tに軽く付着した切屑もエアで吹き飛ばすことができる。
【0027】
図1に示す工作機械1において、主軸8と工具マガジン10との間には、工具チェンジャ18の下方側に仕切り板23が設置され、仕切り板23の上方には開閉可能なシャッター24が設置されている。工具Tによるワークの切削加工時にはシャッター24を閉鎖することで、主軸8等を備えた加工室25と工具マガジン10を備えた工具収納室26とに仕切ることができる。シャッター24を閉鎖させた状態で工具チェンジャ18は例えば加工室25内に保持され、スイング駆動装置14は工具収納室26内に保持される。
工具交換時にはシャッター24を開放させて工具チェンジャ18を工具収納室26内まで水平方向に旋回可能としている。シャッター24の閉鎖状態において加工室25内で工具Tによる切削加工を行うことで、切屑や切粉、切削液等が工具収納室26内に飛散することを阻止できる。
【0028】
次に、工具Tに付着する切屑を検出するための撮影装置を備えた切屑検出装置2について説明する。
図2及び図5に示す工具マガジン10において、工具マガジン10の内側には割り出し位置Wにある工具Tを照射する第1光源28が設置され、割り出し位置Wにある工具Tを挟んで第1光源28に対向する位置には第一カメラ29が第一撮像手段として設置されている。第一カメラ29は工具マガジン10の外側に位置している。第一カメラ29では、図5に示すように、第1光源28と反対側における工具Tの半面(以下、これを表面Taという)を透過光として撮影可能であるが、第1光源28側の半面(以下、裏面Tbという)は死角になり、この部分の切屑は撮影できない。
また、第1光源28の周囲には保護カバー28aが設置され、後述する第二カメラ32に照射光が直接入射しないように設定されている。同様に第一カメラ29の周囲にも保護カバー29aが配設され、後述する第2光源31の照射光が直接入射しないようになっている。
【0029】
図2及び図6において、工具マガジン10の外側には第1光源28と第一カメラ29の光路に交差する方向であって工具マガジン10の外側に第2光源31が設置されている。第2光源31の光は第1光源28の光と色相が相違するものとする。この第2光源31からの照射光は第一カメラ29で撮影できない割り出し位置Wの工具Tの裏面Tb側を照射可能であり、しかも第一カメラ29に直接照明光が入射しないように保護カバー31aで遮蔽されている。
第2光源31に対して工具Tを挟んで対向する位置には第二カメラ32が第二撮像手段として設置されている。第二カメラ32も第1光源28から照射光が直接入射しないように保護カバー32aによって遮蔽されている。第二カメラ32には第2光源31と反対側の工具Tの表面について透過光として撮影可能である。
【0030】
また、第1光源28から照射される工具Tの裏面Tbでの反射光は第二カメラ32では受光できず、工具Tの裏面Tbに付着した切屑での乱反射光のみが第二カメラ32に入射可能である。また、第1光源28の光が第一カメラ29に到達しない工具Tの裏面Tbの切屑について、色相の相違する第2光源31からの照射光の切屑での乱反射光が第一カメラ29に入射可能である。そのため、第2光源31は第一カメラ29側に寄った位置(90度より小さい角度位置)に設置されている。
そのため、第一カメラ29では、第1光源28の透過光と第2光源31の色相の異なる乱反射光が受光可能であり、第二カメラ32では、第2光源31の透過光と第1光源28の色相の異なる乱反射光が受光可能である。各乱反射光は透過光と色相が相違するため、分離して切屑の有無を判定することができる。
【0031】
第一カメラ29と第二カメラ32は割り出し位置Wの工具Tに対して略90度の角度で配置されているため、工具Tの全周を撮影できるものではないが、工具Tに付着して工具Tの輪郭から外側に突出する切屑を透過光や乱反射光によってほぼ全周に亘って検出できる。
第1光源28と第2光源31は後述する制御部34における照明点灯手段35によって点灯と消灯がそれぞれ切り換え制御される。また、第一カメラ29と第二カメラ32は制御部34におけるカメラ制御手段36によって撮影と撮影中止とがそれぞれ切り換え制御される。
【0032】
工作機械1の自動工具交換装置7と切屑検出装置2は、図7に示す制御部34によって駆動を制御される。制御部34において、自動工具交換装置7は工具マガジン駆動手段39と工具交換手段40とを備えている。工具マガジン駆動手段39は、工具マガジン10を駆動させて次にワークの切削加工に用いる工具Tを割り出し位置Wに移動させるものである。工具交換手段40は、スイング駆動装置14によって工具チェンジャ18を駆動させて割り出し位置Wにある切削前の工具Tを工具ポット11から取り外して主軸8に取り付けると共に、切削済みの工具Tを主軸8から取り外して所定の割り出し位置Wに移動させて工具ポット11に装着するものである。
【0033】
制御部34は、主軸8で使用した切削済み工具Tを工具チェンジャ18で取り外して工具マガジン10の割り出し位置Wにある所定の工具ポット11に装着された状態を検出して切屑検出指令を出力する切屑検出指令手段41を有している。また、切屑検出装置2は、切屑検出指令に基づいて第一カメラ29及び第二カメラ32で撮像した工具Tの各撮影画像データに基づいて工具Tに切屑付着の有無を判定する切屑付着判定手段42を備えている。
制御部34は、更に工具マガジン10における各工具Tの工具径データ及び工具長データ等の工具情報を記憶しておき、切屑検出指令に基づいて必要な工具情報を切屑付着判定手段42に出力する工具情報記憶手段43と、切屑付着判定手段42で工具Tに切屑が付着されたことを判別するとアラーム処理するアラーム処理手段44とを備えている。
【0034】
次に、切屑付着判定手段42における切削済みの工具Tに付着する切屑の有無を判定する手法について説明する。先ず、工具Tの切削前の画像を第一カメラ29及び第二カメラ32によって割り出し位置Wで撮影しておく。次に、工具Tを主軸8の回転軸線Oと同軸に装着して回転切削する場合、例えば図8に示すように、発生した切屑kは工具Tの刃先の周囲に絡まって付着する。これらの画像は第一カメラ29及び第二カメラ32で撮像した各画像を合成した撮影画像Mとして処理するが、個別の撮影画像Mとして処理してもよい。
図8に示す工具Tの画像は、工具情報記憶手段43から入力した工具径及び工具長のデータを読み込んでこれらに基づいて補正した割り出し位置Wにおける撮影画像Mとして画面内に表示されている。この撮影画像Mはカラーでも多色でも二色でもよく、工具Tは割り出し位置Wで工具ポット11内に収納されている。
【0035】
図8に示す工具Tの撮影画像Mを、図9に示すように、撮像範囲に基づいて予め設定された単位の画像認識区画m毎に仕切って縦横方向に配列した画像認識区画群で区分けしている。この図において、1単位の画像認識区画mは四方に隣接する画像認識区画mと僅かにオーバーラップして隙間なく配列されていることが好ましい。図9に示す処理画像において、工具Tの周囲全体における画像認識区画m群をピックアップして切屑kの有無を判定すると高精度な判定が可能であるが、処理に時間がかかる。そのため、工具Tの上下で先端部、付け根部、そして中間部の画像認識区画mを例えば6個選択して切屑kの有無を判断するものとした。選択した6個の画像認識区画mは網目部で示す区画である。また、中間部の画像認識区画mは中央に設置できないので工具Tの上下でその前後に振り分けて配置した。
【0036】
そして、選択した6個の画像認識区画m内の画像において、切削前の工具Tの径方向と長さ方向の最大値と撮像した物体の面積をそれぞれ算出して記憶しておき、これを切削加工後の6個の画像認識区画mによる工具Tの画像と比較する。そして、切削後の工具Tの画像面積が切削前のものより大きい場合に切屑が付着したと認定する。
なお、工具Tの先端部、付け根部、そして中間部の画像認識区画mを選択したのはいずれかに切屑kが付着する可能性が高いところを選択したためである。なお、選択する画像認識区画mの数は6個に限らない。工具Tの周囲全体の画像認識区画mを選択すればより高精度であるが、演算する画像認識区画m数が増大するので検出速度が低下し、効率が悪くなる。画像認識区画mの数を減少させれば検出速度は増加するが検出精度が低下する。そのため、切屑kの検出精度と検出速度とのバランスによって高精度で効率よく検出できる画像認識区画mの数と場所を適宜選択できる。
【0037】
本第一実施形態による工作機械1の切屑検出装置2は上述した構成を有しており、次に切屑検出方法について図10に示すフローチャートに沿って説明する。
工作機械1において、主軸8に装着された工具Tによってテーブル4のパレットPに装着されたワークを切削加工する。加工終了後、工具マガジン10に装着された複数種の工具Tから次に使用する工具Tの番号(種類)を制御部34に読み込む(S1=ステップ1、以下同じ)。これにより、制御部34の工具情報記憶手段43から次の工具Tの工具長及び工具径を、工具長補正値及び工具径補正値として切屑付着判定手段42に読み込む(S2)。一方、工具マガジン10では次に使用する工具Tの工具ポット11を割り出し位置Wに位置決めさせるべく工具マガジン10を周回移動させる(S3)。
【0038】
そして、割り出し位置Wに保持された使用前の次の工具Tを色相の異なる第1光源28及び第2光源31で照射して、第一カメラ29及び第二カメラ32で撮像する(S4)。図5及び図6に示すように、第一カメラ29では工具Tの表面Taと第2光源31で乱反射した裏面Tbに付着し突出する切屑を撮像し、第二カメラ32では第2光源31による工具Tの裏面Tbの一部と第1光源28で乱反射した裏面Tbに付着して突出する切屑を撮像する。
第一カメラ29及び第二カメラ32で撮影された各画像に基づいて合成された撮影画像Mにおける工具Tの像を区画した多数の画像認識区画mを碁盤の目状に設定する(S5)。各画像認識区画mにおける次の工具Tの切削前の画像の最大長、最大径、そして面積を演算して記憶する(S6)。
【0039】
次の工具Tは工具チェンジャ18の第一グリッパアーム15で把持されて工具ポット11から引き出され、スイング駆動装置14によって90度旋回させられ、更に水平移動することで、第二グリッパアーム16で主軸8に装着された使用済みの工具Tを把持する。工具チェンジャ18によって切削済みの工具Tは主軸8から引き出され、工具チェンジャ18を180度水平回転させて次の工具Tを主軸8に装着する。
切削済みの工具Tを主軸8から引き出す処理に先立って、エア噴射ノズル21で工具Tにエアを噴射することによって切削液や切粉や付着の軽い切屑等の付着物を吹き飛ばすことができる。そのため、第一カメラ29及び第二カメラ32による切屑付着画像を安定化させることができる。なお、エア噴射は連続して行うよりも間欠的に噴射することがより好ましい。
【0040】
そして、工具チェンジャ18の第二グリッパアーム16に把持された使用済み工具Tは水平移動させられ、更に90度スイングさせた後に割り出し位置Wにある所定の工具ポット11に装着することで位置決めする(S7)。この状態で切削済み工具Tは切刃部及び工具本体の部分が露出しており、その表面に切屑が付着していることがある。この切削済みの工具Tについて第一カメラ29及び第二カメラ32で撮影する。
【0041】
第一カメラ29では工具Tの表面Taを第1光源28の透過光で撮影できるが裏面Tbに付着した切屑は撮影できない。第2光源31の照射光のうち裏面Tbに付着し突出する切屑の乱反射光を受光して第一カメラ29で一部撮影できる。また、第二カメラ32では第2光源31による透過光で工具Tの裏面Tbを撮影し、更に第1光源28の乱反射光で裏面Tbに付着し突出した切屑の乱反射光を受光して一部撮影できる。第一カメラ29には第1光源28の透過光による工具Tの輪郭外に突出する切屑の光と影が撮影され、これと同時に色相の異なる第2光源31による裏面Tbから突出する切屑の乱反射光が受光される。第2光源31の乱反射光による画像は第1光源28の画像と色相が相違するので分離して判定できる。
【0042】
切屑付着判定手段42では、第一カメラ29及び第二カメラ32の画像から撮影画像Mを読み取り、各画像認識区画mを読み込む(S9)。そして、各画像認識区画mから使用済み工具Tの最大長、最大径、面積をそれぞれ演算によって求める(S10)。次いで、この切削済み工具Tについて切削前に割り出し位置Wで検出した各画像認識区画mの演算値を読み込んで(S11)、切削前後の各画像認識区画mの演算値を対比して切削後の工具Tの面に切屑が付着したか否かの判定を行う(S12)。
【0043】
これにより、切削前の工具Tとの比較により切削後の工具Tの工具長、工具径、面積の少なくともいずれかがより大きいと認識された場合、切屑が付着していると判定する。判定に際し、工具Tの輪郭から突出している切屑や輪郭内で突出する切屑を判別できる。これらの場合には、アラーム処理手段44によって表示画面に表示すると共に後処理を行う(S13)。後処理に際し、切屑が付着した工具Tは元の工具ポット11に戻されており、次回の切削に際しては工具マガジン10の別の工具ポット11に装着された予備の工具Tを使用するよう指令を出力する。このような処理を繰り返して行うことで、非接触且つ高速で使用済み工具Tに切屑付着の有無を検出できる。
【0044】
上述したように本第一実施形態による工作機械1の切屑検出装置2によれば、加工済みの工具Tに切屑が付着した場合に、2方向から第一カメラ29及び第二カメラ32によって裏面に隠れた切屑も撮影できて画像処理によって切屑付着の有無を検出することができる。また、第一カメラ29及び第二カメラ32による撮像画像に基づく撮影画像Mを碁盤の目状に区分けした多数の画像認識区画mから、切削前後の工具Tの周囲の6個の画像認識区画mに基づいて切屑kの有無を判定できるため検出時間を短縮できて高速判定できる。
しかも、工具Tに巻き付く切屑を検出することで当該工具Tは工具ポット11に収納し、次回には予備の工具Tに交換して使用することで連続加工を継続することができ、工作機械1やワークが損傷する不具合を防止することができる。
【0045】
また、色相の相違する第1光源28と第2光源31によって切削前後の工具Tを照射することで、工具Tの輪郭内に付着する切屑を色の差で別個に画像として検出できる。しかも、画像の撮影に際して透過光と乱反射光の両方を利用するため、切屑を多重判定できて判定精度が高まり、無反射板等の設備が不要である。
また、第一カメラ29及び第二カメラ32を加工室25とシャッター24で仕切られた工具収納室26に設置したため、加工時に切削液や切粉、切屑等が飛散して第一カメラ29や第二カメラ32に付着して汚れること等を防止できる。
しかも、切削後の工具Tはエア噴射ノズル21で切削液や切粉や付着の軽い切屑等を吹き飛ばすことができるため、第一カメラ29及び第二カメラ32による切屑付着画像を安定化することができる。
【0046】
なお、本発明による工作機械1の切屑検出装置2は、上述した第一実施形態によるものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。以下に、本発明の他の実施形態や変形例等について説明するが、上述した第一実施形態による工作機械1の切屑検出装置2と同一または同様な部材、部品には同一の符号を用いて説明する。
【0047】
次に本発明の第二実施形態による工作機械1の切屑検出装置2Aについて、図11図14により説明する。
本第二実施形態による工作機械1の切屑検出装置2Aでは、図11に示すように、主軸8をU軸機能付きとして回転軸線Oに対して直交する主軸面上の径方向に適宜距離だけ移動させて保持している。そのため、切削工具(以下、工具という)Tは回転軸線Oを中心にリング状に旋回加工するため、ワークの大小の穴加工やテーパ穴加工、外径加工等を行える。
通常、旋盤を用いた旋削加工は、ワークを回転させて固定した工具Tをワークに当てることで旋削加工を行うが、本実施形態によるU軸機能付き主軸8は、ワークを固定すると共に工具Tを回転軸線O周りに旋回させて旋削加工を行う。本第二実施形態による工作機械1の切屑検出装置2Aはこのように配設した主軸8に装着された工具Tを用いている。
【0048】
本実施形態による工作機械1の切屑検出装置2Aでは、工具Tの刃先が連続してワークに接しながら切削加工するので、連続的な切屑が発生して工具Tに巻き付きやすい。工具Tに巻き付いた切屑でワークを傷つけたり工具Tを折損させてしまったり、工具マガジン10の工具ポット11に収納されて隣りの工具Tに絡まったりすることがある。本第二実施形態による工作機械1の切屑検出装置2Aは、このような課題をも解決できるようにしたものである。
【0049】
本第二実施形態では、工具Tを工具マガジン10の工具ポット11から工具チェンジャ18によって引き出して90度スイングさせて工具Tを第一グリッパアーム15で水平に保持する位置から主軸8に平行な水平位置に変更する(図3参照)。その工程の途中における例えば45度の傾斜角度に工具Tの待機位置Vが設定されている。本第二実施形態では切削後の工具Tに絡まる切屑kの外径が大きくて工具ポット11に装着できない場合があるので、待機位置Vで切削前後の工具Tの撮影を行うようにした。
【0050】
図12は本実施形態による切屑検出装置2Aを示すものであり、第1光源28及び第一カメラ29は例えば第一実施形態と同一位置配置されているが、異なる位置に移動して設置されてもよい。第一カメラ29によって工具チェンジャ18に把持された待機位置Vにおける工具Tの表面Taの撮影を行うことができる。第2光源31及び第二カメラ32は待機位置Vにおける工具Tを挟んで対向する位置に配設されている。この場合、第二カメラ32は工具マガジン10の外側に固定され、第2光源31は工具Tを挟んで第二カメラ32に対向する位置に配設されている。
なお、第1光源28及び第一カメラ29と第2光源31及び第二カメラ32は、第一実施形態と同様に、待機位置Vにおける切削前後の工具Tに対して、図6に示す配置と同様に配設されている。そのため、第一カメラ29及び第二カメラ32は工具Tに対して略90度の角度位置に配設されている。
【0051】
本第二実施形態による切屑検出装置2Aでは、第二カメラ32は第2光源31による透過光によって工具Tの表面Taを撮影できる。また、第二カメラ32は第1光源28の乱反射光によって第2光源31の影になる部分を乱反射光によって異なる色相で撮影できる。また、第一カメラ29では第二カメラ32による撮像範囲の死角になる裏面Tbに付着する切屑を乱反射光によって撮像できる。なお、本実施形態における工具Tの表面Ta,裏面Tbは第一実施形態の表面Ta,裏面Tbと位置が相違している。
そのため、切削前後の工具Tについて、待機位置Vで第一カメラ29及び第二カメラ32によって工具Tのほぼ全周の輪郭から突出する切屑を撮影でき、切屑が付着している場合には確実に撮像できる。
【0052】
本第二実施形態による切屑検出装置2Aにおいても、第一実施形態と同様に図10に示すフローチャートに沿って切屑kの検出作業を行う。なお、図13から図15は工具Tに対する切屑kの絡みつき範囲の大きさを示すために、仮想的にU軸機能付き工具Tとして旋回する状態で主軸8に装着したものを示す説明図である。
図13は主軸8に装着した切削後の工具Tを示している。図13は、回転軸線Oを中心に旋回して回転する工具Tの刃先と付け根に切屑kが絡まって付着した撮影画像Mが示されている。この画像は第一カメラ29及び第二カメラ32で撮像した各画像を合成した画像として処理される。
図14に示す工具Tの画像は工具情報記憶手段43から入力した工具径補正値及び工具長補正値のデータを読み込んで補正した待機位置Vにおける撮影画像Mとして全体画面に表示されている。
【0053】
図13に示す切削後の工具Tの撮影画像Mを、図14に示すように、予め設定された画像認識区画mに基づいて仕切って縦横方向に碁盤の目状に区分けしている。各画像認識区画mは四方に隣接する画像認識区画mと僅かにオーバーラップして隙間なく配列されている。図14に示す処理画像において、工具Tの先端部、付け根部、そして中間部の画像認識区画mを例えば6個選択して切屑kの有無を判断するものとした。中間部の画像認識区画mは先端部と付け根部の中央にないため、工具Tの上下で前後に画像認識区画mを設定した。
【0054】
図14において、工具Tの中間と付け根の間の画像認識区画mに切屑kが位置する場合には検出できないので手動設定で追加の画像認識区画maを設定することで切屑kを検出できるようにした。そして、選択した8個の画像認識区画m、ma内の画像において、工具Tの径方向と長さ方向の最大値と撮像した物体の面積をそれぞれ算出して記憶しておく。また、切削前における待機位置での工具Tの撮影画像Mにおける同様な8個の画像認識区画m、maも記憶している。
【0055】
これら切削加工前と切削加工後における工具Tの8個の画像認識区画m、maを読み出して、制御部34における切屑付着判定手段42で比較して工具Tの面積に差があるか否かを判定する。切削後の工具Tの面積が大きい場合には、工具Tに切屑kが付着している旨認定する。切屑付着判定手段42で切削後の工具Tに切屑kが付着していると判定した場合には、アラーム処理手段44によってアラーム処理をする。
この場合、加工後の工具Tを所定の工具ポット11に収納し、次の加工時には予備の工具Tを使用するよう指令を出力する。
【0056】
なお、工具TはU軸機能付き主軸8を備えているため、工具Tを主軸8に装着した状態で回転軸線Oを中心に旋回させてワークを旋削加工すると遠心力によって絡みつく切屑kはより大きな外径を以って工具Tの旋回方向外側に突出することがある。切屑kがこのように工具Tの外周側に突出して絡みついた場合、加工後の工具Tを工具マガジン10の工具ポット11に収納すると隣りの工具Tと干渉してしまうおそれがある。この場合、工具マガジン10の周回作動時に工具ポット11に収納された工具Tが落下する等のトラブルを生じる原因になる。
そのため、この場合には、図15に示すように、旋回する工具Tの旋回径より大きな切屑kを判定できる画像認識区画mbを工具長の範囲に亘って自動的に設定することができる。画像認識区画mbは工具Tの像から径方向外側に大きく離間した位置に設定されている。
【0057】
切屑付着判定手段42で画像認識区画mbによって工具Tに外径のより大きな切屑kが付着していることを判定した場合には、加工後の工具Tを工具ポット11に収納せず、アラーム処理手段44で加工を中止するアラーム処理を行う。或いは、例えば工具マガジン10における両隣りの工具ポット11を空にした退避用工具ポットに加工後の工具Tを返却し、次の切削加工では予備の工具Tを使用するように設定することができる。
【0058】
なお、上述した第一実施形態では、工具Tを工具マガジン10の割り出し位置Wにおける工具ポット11に装着した状態で切削前後の工具Tを撮像し、第二実施形態では工具Tを割り出し位置Wの工具ポット11から外れたスイング工程の待機位置Vで撮像して、切屑付着の有無を判定した。しかし、本発明では、撮影位置は割り出し位置Wや待機位置Vに限定されない。工具Tを切削前後で撮像できればよく、適宜の位置で撮像して切屑付着判定手段42で切屑付着の有無を判定できればよい。その際、第1光源28及び第2光源31、第一カメラ29及び第二カメラ32の設置位置は工具マガジン10内外に限定されることなく、適宜の位置に設置できる。
【0059】
上述した各実施形態では、工作機械1における回転軸線O上に主軸8を設けた切削加工機やU軸機能付き主軸8を備えて切削及び旋削を行う複合加工装置を含む切屑検出装置2、2Aについて説明した。しかし、本発明による切屑検出装置はワークを設置したテーブル4を回転させることで、工具Tによって旋削加工する旋削加工装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 工作機械
2、2A 切屑検出装置
7 自動工具交換装置
8 主軸
10 工具マガジン
11 工具ポット
18 工具チェンジャ
21 エア噴射ノズル
28 第1光源
29 第一カメラ
31 第2光源
32 第二カメラ
34 制御部
40 工具交換装置
41 切屑検出指令手段
42 切屑付着判定手段
43 工具情報記憶手段
44 アラーム処理手段
T 切削工具、工具
k 切屑
M 撮影画像
m、ma、mb 画像認識区画
W 割り出し位置
V 待機位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15