(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】中継部配設型スプリンクラー及び散水装置
(51)【国際特許分類】
B05B 3/06 20060101AFI20240213BHJP
E01H 8/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B05B3/06 B
E01H8/02
(21)【出願番号】P 2019205114
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000150095
【氏名又は名称】株式会社竹村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】大竹 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】田淵 学
(72)【発明者】
【氏名】鎧坂 勝則
(72)【発明者】
【氏名】川田 充洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 重憲
(72)【発明者】
【氏名】野池 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 高弘
(72)【発明者】
【氏名】福澤 晋
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079707(JP,A)
【文献】特開昭61-095107(JP,A)
【文献】実開平04-134446(JP,U)
【文献】実公昭51-025773(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00 -3/18,
7/00- 9/08
A01G 25/00-29/00
E01H 1/00-15/00
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水路の中途部に連結できるように、送水にかかる一次側連結部と二次側連結部とを備える中継部配設型スプリンクラーであって、
前記一次側連結部と前記二次側連結部との間の通水路が軸心に形成された通水軸状体と、
該通水軸状体の軸心を中心に回動可能に外嵌されることで配設され、前記通水軸状体の通水路から分水される水を受けるリング状の分水室が設けられるように形成され、該分水室に連続されて散水用の吐水口が設けられた分水回動体とを備え、
前記吐水口の位置が前記通水軸状体の軸心を中心に回動駆動することでより広範囲に散水できるように、前記分水回動体を回動駆動させる機構を備え、
前記分水回動体を回動駆動させる機構が、
前記分水室から前記吐水口へ連続する管路であって、水路が二つに分岐されて一方の支水路と他方の支水路が形成された分岐管と、
該分岐管の根元部において先端側が前記分水室内へ臨んで配されると共に水平方向へ回動するように、後端側で回動可能に軸着され、水流の前記分岐管への流れを前記一方の支水路と前記他方の支水路との間で切換える分岐板と、
前記通水軸状体の側に一対が設けられ、前記分岐板と接触して該分岐板を反対に回動させると共に前記分水回動体の回動を阻止することで、水流の前記分岐管への流れを前記一方の支水路と前記他方の支水路との間で切換えるように作用する切換突起とを備えることを特徴とする中継部配設型スプリンクラー。
【請求項2】
前記分水室内の前記通水軸状体に設けられ、前記通水路にかかる給水圧が所定の圧力を超えた際に前記分水室に分水されるように開く分水開閉弁部を備えることを特徴とする
請求項1記載の中継部配設型スプリンクラー。
【請求項3】
前記分水開閉弁部が、前記通水軸状体における通水路が径方向に拡大された部位であってリング状に形成された部位の上面部に通水孔が設けられた通水路拡大部と、前記通水孔を開閉する開閉弁と、該開閉弁を、前記通水孔を閉じる方向である下方へ付勢する弾性部材とによって構成されていることを特徴とする
請求項2記載の中継部配設型スプリンクラー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の中継部配設型スプリンクラーの前記二次側連結部に接続されたスプリンクラーヘッドを備えることを特徴とする散水装置。
【請求項5】
前記スプリンクラーヘッドの散水範囲と、前記中継部配設型スプリンクラーの散水範囲とが異なるように、前記スプリンクラーヘッドと前記中継部配設型スプリンクラーとの回動範囲が別々に設定されていることを特徴とする
請求項4記載の散水装置。
【請求項6】
前記スプリンクラーヘッドの散水範囲が鉄道の車両走行路であり、前記中継部配設型スプリンクラーの散水範囲が鉄道の保守点検のための作業用通路であって、消雪のために散水を行うことを特徴とする
請求項4又は5記載の散水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通水路の中途部に連結できるように、送水にかかる一次側連結部と二次側連結部とを備える中継部配設型スプリンクラー、及びその中継部配設型スプリンクラーを備える散水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のノズルが設けられたスプリンクラーとしては、側面に水導入口を開口する内筒と、内筒の外周に回動可能に装着するノズル体と、ノズル体の上端に軸支するとともに捩りコイル発条の復原力でノズル体への打撃を可能とするブレードとを構成し、ノズル体には、ブレードに水の噴出を可能とする一方ノズルと、散水飛距離を長く設けた他方ノズルとを形成し、ノズル体の安定した回転を行いながら、散水作業を行う(特許文献1)ものが提案されている。
【0003】
従来、軌道用消雪方式としては、降雪により積雪した軌道上に向けて、軌道を間に存して互いに対峙させた複数の散水装置から散水し消雪してなる手段を備え、前記各各の散水装置からの散水量を降雪量に応じた散水圧力により加減調整するとともに、この散水圧力に応じて前記各各の散水装置からの散水角度を可変調整して散水飛距離を一定にしてなることを特徴とする(特許文献2)ものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-248493号公報(第1頁)
【文献】特開昭62-253810号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中継部配設型スプリンクラー及び散水装置に関して解決しようとする課題は、上記従来のものは、通水路の先端に配設されて一方向のみに散水する形態のスプリンクラーヘッドに関するものであり、通水路の中途部には連結できない構造であって、スプリンクラーとしての種々の使用条件に対応できる自由度を高めることができないことにある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、通水路の中途部に適切に連結できる構造であって、スプリンクラーとしての種々の使用条件に対応できる自由度を高めることができる中継部配設型スプリンクラー及び散水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる中継部配設型スプリンクラーの一形態によれば、通水路の中途部に連結できるように、送水にかかる一次側連結部と二次側連結部とを備える中継部配設型スプリンクラーであって、前記一次側連結部と前記二次側連結部との間の通水路が軸心に形成された通水軸状体と、 該通水軸状体の軸心を中心に回動可能に外嵌されることで配設され、前記通水軸状体の通水路から分水される水を受けるリング状の分水室が設けられるように形成され、該分水室に連続されて散水用の吐水口が設けられた分水回動体とを備える。
【0008】
また、本発明にかかる中継部配設型スプリンクラーの一形態によれば、前記分水室内の前記通水軸状体に設けられ、前記通水路にかかる給水圧が所定の圧力を超えた際に前記分水室に分水されるように開く分水開閉弁部を備えることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明にかかる中継部配設型スプリンクラーの一形態によれば、前記分水開閉弁部が、前記通水軸状体における通水路が径方向に拡大された部位であってリング状に形成された部位の上面部に通水孔が設けられた通水路拡大部と、前記通水孔を開閉する開閉弁と、該開閉弁を、前記通水孔を閉じる方向である下方へ付勢する弾性部材とによって構成されていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明にかかる中継部配設型スプリンクラーの一形態によれば、前記吐水口の位置が前記通水軸状体の軸心を中心に回動駆動することでより広範囲に散水できるように、前記分水回動体を回動駆動させる機構を備えることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明にかかる中継部配設型スプリンクラーの一形態によれば、前記分水回動体を回動駆動させる機構が、前記分水室から前記吐水口へ連続する管路であって、水路が二つに分岐されて一方の支水路と他方の支水路が形成された分岐管と、該分岐管の根元部において先端側が前記分水室内へ臨んで配されると共に水平方向へ回動するように、後端側で回動可能に軸着され、水流の前記分岐管への流れを前記一方の支水路と前記他方の支水路との間で切換える分岐板と、前記通水軸状体の側に一対が設けられ、前記分岐板と接触して該分岐板を反対に回動させると共に前記分水回動体の回動を阻止することで、水流の前記分岐管への流れを前記一方の支水路と前記他方の支水路との間で切換えるように作用する切換突起とを備えることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明にかかる散水装置の一形態によれば、上記の中継部配設型スプリンクラーの前記二次側連結部に接続されたスプリンクラーヘッドを備えることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明にかかる散水装置の一形態によれば、前記スプリンクラーヘッドの散水範囲と、前記中継部配設型スプリンクラーの散水範囲とが異なるように、前記スプリンクラーヘッドと前記中継部配設型スプリンクラーとの回動範囲が別々に設定されていることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明にかかる散水装置の一形態によれば、前記スプリンクラーヘッドの散水範囲が鉄道の車両走行路であり、前記中継部配設型スプリンクラーの散水範囲が鉄道の保守点検のための作業用通路であって、消雪のために散水を行うことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる中継部配設型スプリンクラー及び散水装置によれば、通水路の中途部に適切に連結でき、スプリンクラーとしての種々の使用条件に対応できる自由度を高めることができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる散水装置の形態例を示す側面図である。
【
図2】
図1の形態例の中継部配設型スプリンクラーの部分が断面の側面図である。
【
図3】
図1の形態例で示された散水装置のうちの中継部配設型スプリンクラーの部分にかかる断面図である。
【
図4】
図3の形態例の作動状態を示す断面図である。
【
図5】本発明にかかる中継部配設型スプリンクラーの回動機構の形態例を説明する断面平面図(1)である。
【
図6】
図5の形態例の作動状況を示す断面平面図(2)である。
【
図7】
図5の形態例の作動状況を示す断面平面図(3)である。
【
図8】
図5の形態例の作動状況を示す断面平面図(4)である。
【
図9】
図5の形態例の作動状況を示す断面平面図(5)である。
【
図10】
図5の形態例の作動状況を示す断面平面図(6)である。
【
図11】
図5の形態例の作動状況を示す断面平面図(7)である。
【
図12】
図5の形態例の作動状況を示す断面平面図(8)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる中継部配設型スプリンクラー及び散水装置の形態例を添付図面(
図1~12)に基づいて詳細に説明する。本発明は、通水路21の中途部に連結できるように、送水にかかる一次側連結部11と二次側連結部12とを備える中継部配設型スプリンクラー10、及びそれを用いた散水装置に関するものである。なお、
図3~12の図中で記載されている矢印(符号にかかる引き出し線の矢印を除く。)は、散水用の水の流れを示している。
【0018】
図2~4に示すように、20は通水軸状体であり、一次側連結部11と二次側連結部12との間の通水路21が軸心に形成された形態に設けられている。
本形態例の通水軸状体20は、スピンドル状下側部材20aの上端部の雄ネジ部に、スピンドル状上側部材20bの下端部の雌ネジ部が螺合することによって一体化した形態に構成されている。
【0019】
また、本形態例の一次側連結部11は、通水軸状体20の下端の雄ネジ部に、O-リングで水密シールされた状態に、継手として機能する一次側押えナット11aが、螺合されて固定されることで設けられている。同様に、本形態例の二次側連結部12は、通水軸状体20の上端の雄ネジ部に、O-リングで水密シールされた状態に、継手として機能する二次側押えナット12aが、螺合されて固定されることで設けられている。
【0020】
30は分水回動体であり、通水軸状体20の軸心を中心に回動可能に外嵌されることで配設され、通水軸状体20の通水路21から分水される水を受けるリング状の分水室31が設けられるように形成され、その分水室31に連続されて散水用の吐水口32が設けられている。
【0021】
本形態例の分水回動体30は、回動ベースナット部30aと、回動ベースナット部30aに螺合されて一体化された筒状回動本体部30cと、回動ベースナット部30aの内底面に接して通水軸状体20に外嵌されると共に回動ベースナット部30aに内嵌された回動ベースリング部30bとによって構成されており、シール部材の一例であるO-リングによって、水密シールされた状態で、回動可能に外嵌されている。
【0022】
これによれば、通水路21の中途部に接続することができ、所望の方向へ回動させることができる中継部配設型スプリンクラー10を、好適に構成することができる。すなわち、この中継部配設型スプリンクラー10によれば、例えば、通水路21の先端に取り付けられるスプリンクラーヘッド(本形態例では二次側連結部12に連結されたスプリンクラーヘッド50(
図1及び2参照))とは別の所望の位置に回動させ、その所望の方向へ散水することができる。但し、スプリンクラーヘッド50と中継部配設型スプリンクラー10とを、同方向に向けて使用してもよいのは勿論である。
【0023】
なお、本形態例の分水回動体30は、通水軸状体20に外嵌された一次側ワッシャ13aと一次側スペーサ14aを介して一次側押えナット11aに押えられた状態で上側に保持されると共に、通水軸状体20に外嵌された二次側ワッシャ13bと二次側スペーサ14bを介して二次側押えナット12aに押えられた状態で下側に保持されている。これによって、分水回動体30が、通水軸状体20の軸心を中心にスムーズ回動できる。
【0024】
また、本形態例では、分水室31内の通水軸状体20に設けられ、通水路21にかかる給水圧が所定の圧力を超えた際に分水室31に分水されるように開く分水開閉弁部40を備える。
【0025】
これによれば、給水圧が一定以下の場合には、
図3に示すように、分水開閉弁部40が閉じた状態であるため、散水用の水がスプリンクラーヘッド50のみに給水されることになる。このため、二次側連結部12に連結されたスプリンクラーヘッド50を優先的に作動させて散水を行うことができる。これに対し、給水圧が一定以上に達した際には、
図4に示すように、分水開閉弁部40が開いた状態となるため、分水がなされ、中継部配設型スプリンクラー10も作動して、スプリンクラーヘッド50とは別の所望の方向へ所望の強さで散水を行うことができる。
【0026】
すなわち、本形態例では、一例として、スプリンクラーヘッド50による散水を主とすれば、中継部配設型スプリンクラー10による散水が補助的なものとなり、その二つの散水は、別々に、その方向や強度などが異なった状態で行うことができる。なお、本形態例の
図1及び2に示すスプリンクラーヘッド50は、汎用されているインパクトスプリンクラーであり、選択的に回動角度を設定して散水を行うことができる構成を備えるものとなっている。
【0027】
また、本形態例では、分水開閉弁部40が、通水軸状体20における通水路21が径方向に拡大された部位であってリング状に形成された部位の上面部41aに通水孔42が設けられた通水路拡大部41と、その通水孔42を開閉する開閉弁43と、その開閉弁43を、通水孔42を閉じる方向である下方へ付勢する弾性部材44とによって構成されている。なお、本形態例では、
図3~5などに示すように、通水軸状体20における通水路拡大部41は扁平なリング状(又はディスク状)に形成されており、その通水路拡大部41を形成する部位の上面部41aに、複数の通水孔42が設けられている。
【0028】
これによれば、中継部配設型スプリンクラー10に、分水開閉弁部40の構成を合理的でコンパクトに組み込むことができる。なお、本形態例の弾性部材44は、コイルスプリングであり、通水軸状体20に外嵌されており、そのコイルスプリングの下端がリング状の開閉弁43に当接し、そのコイルスプリングの上端が通水軸状体20に係止されたC型止め輪45によって保持されたワッシャ部材46に当接して保持され、最終的に通水軸状体20に受けられた状態であって圧縮された状態に配設されている。また、本形態例の開閉弁43は、上層部材であるワッシャに下層部材である板パッキンが固着されて構成されている。なお、弾性部材としては、このコイルスプリングに限定されるものではなく、既知の弾性を生じる手段を適宜選択的に用いてもよい。
【0029】
さらに、本形態例では、吐水口32の位置が通水軸状体20の軸心を中心に回動駆動することでより広範囲に散水できるように、分水回動体30を回動駆動させる機構を備える。
【0030】
これによれば、スプリンクラーヘッド50(インパクトスプリンクラー)による回動動作を伴った散水とは別に、中継部配設型スプリンクラー10による回動動作を伴った散水を好適に行うことができ、散水範囲を適切に拡大できる。
なお、本形態例の中継部配設型スプリンクラー10によれば、二次側連結部12をプラグによって塞いだ形態とすることで、独立した状態で使用することもできる。
【0031】
そして、本形態例における分水回動体30を回動駆動させる機構では、
図5~12に示すように、以下のような構成を備える。
33は分岐管であり、分水室31から吐水口32へ連続する管路であって、水路が二つに分岐されて一方の支水路33aと他方の支水路33bが形成されている。
また、本形態例では、吐水口32が、一方の吐水口32aと他方の吐水口32bとに分岐されており、一方の支水路33aが一方の吐水口32aに連続し、他方の支水路33bが他方の吐水口32bに連続する形態となっている。
【0032】
35は分岐板であり、分岐管33の根元部において先端側35aが分水室31内へ臨んで配されると共に水平方向へ回動するように、後端側で回動可能に軸着され、水流の分岐管33への流れを一方の支水路33aと他方の支水路33bとの間で切換えるように設けられている。すなわち、本形態例では、矩形に形成された分岐板35が、その後端側35bで、筒状回動本体部33cの周壁に形成された通水開口部及び分岐管33の入口部において上下に起立された状態で固定されている軸部材34に軸着されることによって、水平方向に回動可能に配され、一方の支水路33aの入口と、他方の支水路33bの入口との開閉を交互に切換えることができるように設けられている。
【0033】
22は切換突起であり、本形態例では、通水軸状体20の側に一対22a、22bに分かれた形態(
図5など参照)に設けられ、分岐板35と接触してその分岐板35を反対に回動させると共に分水回動体30の回動を阻止することで、水流の分岐管33への流れを一方の支水路33aと他方の支水路33bとの間で切換えるように作用するように設けられている。なお、本形態例では、この一対の切換突起22a、22bが、通水軸状体20のスピンドル状上側部材20bの下側の部位であって、通水路拡大部を形成する部位の上部側で外周側に一体化された形態に設けられている。なお、本形態例では、分岐板35の先端部が分水室31内へ所要の長さ突出する取り合いに配され、その先端部が一対の切換突起22a、22bに当接できる形態になっている。
【0034】
これによれば、中継部配設型スプリンクラー10の分水回動体30を回動駆動させる機構を、合理的でコンパクトに構成することができる。
【0035】
なお、吐水口32について、吐水が放物線を描いて散水されるように、仰角を設定することによって、より遠くへ散水できるように調整することができる。
また、本形態例の一対の切換突起22a、22bは、軸心を中心に180度反対の位置に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、分水回動体30の回動角度範囲に対応させて、適宜選択的に、その角度位置を設定することができるのは勿論である。
【0036】
この分水回動体30の回動駆動の作動状態を、
図5~12に基づいて説明する。
先ず、
図5には、一方の方向(図面上では左方向)にいっぱいに吐水口32が向けられた状態が示されており、その状態では、分岐板35の先端側35aが、一方の切換突起22a(図面上では左側に位置する切換突起22)に当接して回動され、筒状回動本体部30cの周壁に形成された通水開口部の他方の口縁へ当接されて受けられ、中立位置を基準にすると反時計方向に回動された状態となっている。これによって、分岐板35が、一方の支水路33aを開き、他方の支水路33bを閉じることになり、散水用の水が、一方の支水路33aを通過して一方の分岐吐水口32aから吐水されて散水がなされることになる。この際の散水の方向は、吐水口32に傾斜した角度に設けられた一方の吐水方向規制部32cによって規制され、図面上において反時計回り方向である一方向に吐出される。
【0037】
このように
図5に示す状態で散水がなされると、その通水による圧力(動圧)の反動によって、
図6に示すように、分水回動体30が本形態例では時計回り(右回り)に回動を始めることになる。この際、分岐板35は、一方の支水路33aを開いて他方の支水路33bを塞ぐ状態を、前述の動圧の反動によって維持することになる。従って、その後も、
図7及び8に示すように、分水回動体30は、さらに右回りに回動する。そして、
図8に示すように、分岐板35の先端が、他方の切換突起22b(図面上では右側に位置する切換突起22)に接触し、その分岐板35が時計回り(右回り)の回動を始める。さらに、分水回動体30が慣性力を伴ってさらに右回りに回動すると、
図9に示すように、分岐板35の先端側35aも、他方の切換突起22bに当接した状態でさらに右回りに回動されることになり、その分岐板35の先端側35aは、筒状回動本体部30cの周壁に形成された通水開口部の一方の口縁へ当接されて受けられることになり、その回動が停止され、中立位置を基準にすると
図5の状態から反転することになる。
【0038】
この
図9に示す状態では、分岐板35が、他方の支水路33bを開き、一方の支水路33aを閉じることになり、散水用の水が、他方の支水路33bを通過して他方の分岐吐水口32bから吐水されて散水がなされることになる。この際の散水の方向は、吐水口32に傾斜した角度に設けられた他方の吐水方向規制部32dによって規制され、図面上において時計回り方向である他方向に吐出される。
【0039】
このように
図9に示す状態で散水がなされると、その通水による圧力(動圧)の反動によって、
図10に示すように、分水回動体30が本形態例では反時計回り(左回り)に回動を始めることになる。この際、分岐板35は、他方の支水路33bを開いて一方の支水路33aを塞ぐ状態を、前述の動圧の反動によって維持することになる。従って、その後も、
図11及び12に示すように、分水回動体30は、さらに左回りに回動する。そして、
図12に示すように、分岐板35の先端が、一方の切換突起22a(図面上では左側に位置する切換突起22)に接触し、その分岐板35が反時計回り(左回り)の回動を始める。さらに、分水回動体30が慣性力を伴って左回りに回動すると、
図5に示すように、分岐板35の先端側35aも、一方の切換突起22aに当接した状態でさらに左回りに回動されることになり、その分岐板35の先端側35aは、筒状回動本体部30cの周壁に形成された通水開口部の他方の口縁へ当接されて受けられることになり、その回動が停止され、中立位置を基準にすると
図9~11の状態から反転することになって、
図5に示す状態に戻ることになる。
【0040】
以上の行程によって、中継部配設型スプリンクラー10にかかる吐水口32の往復回動の動作から成る一つの散水サイクルがなされたことになり、この散水サイクルが繰り返されることによって、中継部配設型スプリンクラー10による連続的な自動回動による散水がなされることになる。
【0041】
次に、以上に記載の中継部配設型スプリンクラー10を用いた散水装置について説明する。
図1及び2に示した形態例の散水装置によれば、中継部配設型スプリンクラー10の二次側連結部12に接続されたスプリンクラーヘッド50を備えることを特徴としている。
【0042】
これによれば、スプリンクラーヘッド50と中継部配設型スプリンクラー10とを上下に直結した状態に備える散水装置であって、両者の機能を同時に利用することができる散水装置を、合理的且つコンパクトに構成することができる。
【0043】
また、本形態例にかかる散水装置によれば、スプリンクラーヘッド50の散水範囲と、中継部配設型スプリンクラー10の散水範囲とが異なるように、スプリンクラーヘッド50と中継部配設型スプリンクラー10との回動範囲が別々に設定されている。
【0044】
これによれば、スプリンクラーヘッド50と中継部配設型スプリンクラー10と使い分けることができ、被散水面の方向別に異なる散水仕様が要求される場合において、より広い範囲について同時且つ適切に散水を行うことが可能となる。
【0045】
また、本形態例にかかる散水装置によれば、スプリンクラーヘッド50の散水範囲が鉄道の車両走行路であり、中継部配設型スプリンクラー10の散水範囲が鉄道の保守点検のための作業用通路であって、消雪のために散水を行うことを特徴とすることができる。
【0046】
すなわち、スプリンクラーヘッド50によれば、より広い範囲を占める被散水面としての一例である鉄道の車両走行路について適切に散水することができる。そして、中継部配設型スプリンクラー10によれば、鉄道の車両走行路に比較して狭い範囲の被散水面となると共に、その鉄道の車両走行路に対して反対の向きに位置する鉄道の作業用通路について適切に散水することができる。
【0047】
さらに、本発明にかかる中継部配設型スプリンクラー10については、通水路の先端に設置されるものではなく、通水路の中途部に連結できるものであるため、複数段に連結することも可能である。すなわち、直列に複数を連結できる。これによれば、被散水面を複数に分割して、それぞれの分割被散水面に応じた散水をきめ細かく行うことができる。
【0048】
また、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明は以上の形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0049】
10 中継部配設型スプリンクラー
11 一次側連結部
11a 一次側押えナット
12 二次側連結部
12a 二次側押えナット
13a 一次側ワッシャ
13b 二次側ワッシャ
14a 一次側スペーサ
14b 二次側スペーサ
20 通水軸状体
20a スピンドル状下側部材
20b スピンドル状上側部材
21 通水路
22 切換突起
22a 一方の切換突起
22b 他方の切換突起
30 分水回動体
30a 回動ベースナット部
30b 回動ベースリング部
30c 筒状回動本体部
31 分水室
32 吐水口
32a 一方の分岐吐水口
32b 他方の分岐吐水口
32c 一方の吐水方向規制部
32d 他方の吐水方向規制部
33 分岐管
33a 一方の支水路
33b 他方の支水路
34 軸部材
35 分岐板
35a 先端側
35b 後端側
40 分水開閉弁部
41 通水路拡大部
41a 上面部
42 通水孔
43 開閉弁
44 弾性部材
45 C型止め輪
46 ワッシャ部材
50 スプリンクラーヘッド