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特許7433636ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブヘッドの製造方法
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  • 特許-ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブヘッドの製造方法 図1
  • 特許-ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブヘッドの製造方法 図2
  • 特許-ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブヘッドの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20240213BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240213BHJP
【FI】
A63B53/04 C
A63B53/04 B
A63B102:32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020021269
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021126208
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】513163487
【氏名又は名称】株式会社 ロア・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇一郎
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-230046(JP,A)
【文献】特開2007-160702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0295986(US,A1)
【文献】登録実用新案第3138485(JP,U)
【文献】特開2019-130294(JP,A)
【文献】特開2002-095778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B53/00-53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空となっているヘッド本体部と、
前記ヘッド本体部に結合されており、ボールを打撃するフェース面を有する、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、及びカーボンのうちの少なくとも一つにより構成されるフェース部材と、
前記フェース部材における前記ヘッド本体部側に接合された銀製又は金製の緩衝部材と、
を有し、
前記緩衝部材は、前記フェース部材の中心位置に対して、左右対称の位置に複数設けられている、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記ゴルフクラブヘッドの高さ方向において前記フェース部材の中心に近づくにつれて、前記高さ方向に直交する前記フェース部材の左右方向において前記フェース部材の中心から離れる形状を有する、
請求項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記フェース部材の中心位置を含む領域に設けられている、
請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記緩衝部材が前記フェース部材に接合された状態における前記ゴルフクラブヘッドのCT値が、前記緩衝部材が前記フェース部材に接合されていない状態における前記ゴルフクラブヘッドのCT値よりも小さい、
請求項1からのいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
ヘッド本体部と、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、及びカーボンのうちの少なくとも一つの金属により構成されるフェース部材と、を準備する工程と、
前記フェース部材における前記ヘッド本体部側に銀製又は金製の緩衝部材を接合する工程と、
前記緩衝部材が接合された前記フェース部材を前記ヘッド本体部に接合する工程と、
を有し、
前記緩衝部材を接合する工程において、前記フェース部材の中心位置に対して、左右対称の位置に複数の前記緩衝部材を接合する、ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェース面の内側に樹脂を設けることにより、CT値を規定範囲内に収めつつ飛距離性能を向上させるための技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6581322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフクラブヘッドの内側に樹脂を固定した場合、フェース面に金属だけが用いられたゴルフクラブヘッドの打感と異なり、打者によっては違和感が生じる場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、飛距離性能を維持しつつ、金属だけでフェース面が構成されたゴルフクラブヘッドの打感と同様の打感を得られるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のゴルフクラブヘッドは、内部が中空となっているヘッド本体部と、前記ヘッド本体部に結合されており、ボールを打撃するフェース面を有する、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、及びカーボンのうちの少なくとも一つにより構成されるフェース部材と、前記フェース部材における前記ヘッド本体部側に接合された銀製又は金製の緩衝部材と、を有する。
【0007】
前記緩衝部材は、前記フェース部材の中心位置に対して、左右対称の位置に複数設けられていてもよい。
【0008】
前記緩衝部材は、前記ゴルフクラブヘッドの高さ方向において前記フェース部材の中心に近づくにつれて、前記高さ方向に直交する前記フェース部材の左右方向において前記フェース部材の中心から離れる形状を有してもよい。
【0009】
前記緩衝部材は、前記フェース部材の中心位置を含む領域に設けられていてもよい。また、前記緩衝部材が前記フェース部材に接合された状態における前記ゴルフクラブヘッドのCT値が、前記緩衝部材が前記フェース部材に接合されていない状態における前記ゴルフクラブヘッドのCT値よりも小さくてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様のゴルフクラブヘッドの製造方法は、ヘッド本体部と、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、及びカーボンのうちの少なくとも一つの金属により構成されるフェース部材と、を準備する工程と、前記フェース部材における前記ヘッド本体部側に銀製又は金製の緩衝部材を接合する工程と、前記緩衝部材が接合された前記フェース部材を前記ヘッド本体部に接合する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴルフクラブヘッドの飛距離性能を維持しつつ、金属だけでフェース面が構成されたゴルフクラブヘッドの打感と同様の打感を得ることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ゴルフクラブヘッドSの外観を示す図である。
図2】フェース部材2の構造を示す図である。
図3】変形例に係るフェース部材2の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ゴルフクラブヘッドSの構成]
図1は、ゴルフクラブヘッドSの外観を示す図である。図1(a)は、ゴルフクラブヘッドSを上方から視認した場合の外観図であり、図1(b)は、ゴルフクラブヘッドSを正面側から視認した場合の外観図である。
【0014】
ゴルフクラブヘッドSは、中空構造を有する。ゴルフクラブヘッドSは、ヘッド本体部1と、フェース部材2と、緩衝部材3と、を有する。
【0015】
ヘッド本体部1は、ゴルフボールを当てる部分であり、内部が中空になっている。ヘッド本体部1は、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、及びカーボンのうちの少なくとも一つからなる。
【0016】
ヘッド本体部1は、ソール部11、接続部12、ネック部13及びクラウン部14を有する。ソール部11は、ヘッド本体部1における底面を形成する。
【0017】
接続部12は、ソール部11のトウ側の上端とヒール側の上端とに接続されている、ソール部11の前端付近の上方に位置する部分である。接続部12は、ソール部11と一体的に形成されている。
【0018】
ネック部13は、図示しないゴルフクラブのシャフトが取り付けられる部分である。ネック部13は、円筒形状である。ネック部13は、接続部12におけるヒール側の端部付近から略上方に向かって延伸している。
【0019】
クラウン部14は、滑らかな湾曲面を有し、ヘッド本体部1における上面を形成する。クラウン部14は、ソール部11の上端の縁と接続部12の後端の縁とで形成されている穴を塞ぐようにして、当該穴の縁に固定されている。
【0020】
フェース部材2は、ヘッド本体部1に結合している。フェース部材2は、滑らかな湾曲面を有し、ヘッド本体部1における前面を形成する。フェース部材2は、ソール部11の前端の縁と接続部12の前端の縁とで形成されている穴を塞ぐようにして、当該穴の縁に固定されている。
【0021】
図2は、フェース部材2の構造を示す図である。フェース部材2は、フェース面21と裏面22とを有する。フェース面21は、フェース部材2におけるゴルフボールを打撃する領域である。裏面22は、フェース面21と反対側の面であり、フェース部材2がヘッド本体部1に接合された状態で、ヘッド本体部1の側の面である。
【0022】
図2(a)は、フェース部材2の裏面22の側の構成を示す図である。裏面22には、複数の緩衝部材3(緩衝部材3R及び緩衝部材3L)が設けられている。緩衝部材3の詳細については後述する。
【0023】
図2(b)は、図2(a)におけるA-A線断面図である。図2(c)は、緩衝部材3が設けられていない状態のフェース部材2の断面図である。図2(c)に示すように、裏面22には、緩衝部材3が設けられる凹部23R及び凹部23Lが形成されている。
【0024】
フェース部材2は、緩衝部材3を構成する金属である銀よりも硬い金属で形成されており、例えば、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、及びカーボンのうちの少なくとも一つにより構成されている。
【0025】
ところで、ゴルフクラブヘッドの反発性能は、ゴルフ競技を管理する所定の機関(例えばR&A(Royal and Ancient Golf Club of St. Andrews))が定めるルールによって規制されている。ゴルフクラブヘッドの反発性能が、上記ルールにおいて定められているCT(Characteristic Time)値の規格値を超えた場合、ルール不適合となり、当該ゴルフクラブヘッドをゴルフ競技において使用することができない。
【0026】
例えば、フェース部材2の厚み、形状及び材質によっては、フェース面21の反発係数が大きくなり、上記ルールにおいて定められている規格値を超えてしまうおそれがある。そこで、フェース部材2の反発係数が大きい場合であってもゴルフクラブヘッドSのCT値が規格値を超えないように、裏面22には緩衝部材3が設けられている。
【0027】
緩衝部材3は、フェース部材2がゴルフボールを打撃したときにフェース部材2が受ける衝撃を緩和させるための板状部材である。緩衝部材3は、フェース部材2におけるヘッド本体部1の側(裏面22)に接合されている。図2に示す例において、緩衝部材3は、裏面22に形成された凹部23に少なくとも一部が収まった状態で、溶接材4によって溶接されている。
【0028】
緩衝部材3は、フェース部材2を構成する金属よりも柔らかく、反発係数が小さい金属で形成されており、例えば金又は銀により形成されている。フェース部材2の裏面22に、フェース部材2を構成する金属よりも柔らかい金属が接合されていることにより、フェース部材2の反発係数が大きい場合であってもゴルフクラブヘッドSのCT値を規格値内にすることができる。
【0029】
具体的には、緩衝部材3がフェース部材2に接合された状態におけるゴルフクラブヘッドSのCT値は、緩衝部材3がフェース部材2に接合されていない状態におけるゴルフクラブヘッドSのCT値(例えば規格値以上の値)よりも小さい。フェース部材2に緩衝部材3が設けられていることにより、フェース部材2の反発性能が低減してスピン量を低減させることができるので、裏面22に緩衝部材3が接合されていない場合に比べて飛距離性能を向上させることができる。
【0030】
さらに、緩衝部材3が金属により形成されているので、打者GがゴルフクラブヘッドSで球を打撃したときの打感が、裏面22に樹脂が設けられているゴルフクラブの打感と異なり、裏面22に何も設けられていないゴルフクラブの打感と同等になる。したがって、ゴルフクラブヘッドSは、緩衝部材3が設けられていないゴルフクラブの打感を維持しつつ、飛距離性能を向上させることができる。
【0031】
緩衝部材3は、フェース部材2の中心位置(スイートスポットの位置)に対して、左右対称の位置に複数設けられている。緩衝部材3がこのように設けられていることで、スイートスポット付近に球が当たった場合の打感が、緩衝部材3が設けられていない場合と同等になり、かつ飛距離性能を向上させることができる。
【0032】
緩衝部材3は、ゴルフクラブヘッドSの高さ方向においてフェース部材2の中心に近づくにつれて、高さ方向に直交するフェース部材2の左右方向においてフェース部材2の中心から離れる形状(例えばV字形状)を有する。緩衝部材3がこのような形状を有することで、裏面22に緩衝部材3が設けられていない領域を広げつつ、CT値が規格値に入るようにゴルフクラブヘッドSを構成しやすくなる。
【0033】
[ゴルフクラブヘッドSの製造方法]
続いて、ゴルフクラブヘッドSの製造方法について説明する。まず、ヘッド本体部1及びフェース部材2を準備する。具体的には、ヘッド本体部1と、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、及びカーボンのうちの少なくとも一つの金属により構成されるフェース部材2と、を準備する。この際、緩衝部材3を設ける位置に凹部23が形成されたフェース部材2を準備する。
【0034】
続いて、フェース部材2におけるヘッド本体部1の側に緩衝部材3を接合する。具体的には、凹部23に緩衝部材3を載置した状態でロウ付け溶接することにより、フェース部材2に緩衝部材3を接合する。溶接温度を1000度以上にすることで、例えばフェース部材2がチタン製であり緩衝部材3が銀製である場合であっても、フェース部材2と緩衝部材3とを良好に接合することができる。
【0035】
最後に、緩衝部材3が接合されたフェース部材2をヘッド本体部1に接合する。以上の工程により、ゴルフクラブヘッドSを製造することができる。
【0036】
[変形例]
図3は、変形例に係るフェース部材2の構造を示す図である。図2に示したフェース部材2においては、緩衝部材3がフェース部材2の中心位置を含まない領域に設けられていた。これに対して、図3に示すフェース部材2においては、フェース部材2の中心位置を含む位置に緩衝部材5が設けられている。図3に示す緩衝部材5は楕円形をしているが、緩衝部材5は円形であっても多角形であってもよい。
【0037】
緩衝部材5は、緩衝部材3と同様に、フェース部材2を構成する金属よりも柔らかく、反発係数が小さい金属で形成されており、例えば金又は銀により形成されている。このような緩衝部材5がフェース部材2の中心位置を含む位置に設けられていることで、フェース部材2の単体での反発係数を大きくしつつCT値が規格値に収まるゴルフクラブヘッドSを用いて球を打った打者Gが、緩衝部材3が設けられていない場合の打感に近い打感を得ることができる。
【0038】
[ゴルフクラブヘッドSによる効果]
以上説明したように、本実施の形態に係るゴルフクラブヘッドSは、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、及びカーボンのうちの少なくとも一つにより構成されるフェース部材2と、フェース部材2におけるヘッド本体部1の側に接合された銀製又は金製の緩衝部材3と、を有する。ゴルフクラブヘッドSがこのような構造を有することで、例えばフェース部材2を薄くして反発係数を小さくしつつ、CT値を規格値内に収めることが可能になる。さらに、緩衝部材3が銀製又は金製等の金属により形成されているので、ゴルフクラブヘッドSを用いて球を打った打者Gが、緩衝部材3が設けられていない場合の打感に近い打感を得ることができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0040】
1 ヘッド本体部
2 フェース部材
3 緩衝部材
4 溶接材
5 緩衝部材
11 ソール部
12 接続部
13 ネック部
14 クラウン部
21 フェース面
22 裏面
23 凹部
図1
図2
図3