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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】自動車の排気口の位置調整セット
(51)【国際特許分類】
   B60K 13/04 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
B60K13/04 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020100532
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021194932
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】304037418
【氏名又は名称】株式会社ムーンフェイス
(74)【代理人】
【識別番号】100101524
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 卓郎
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-016054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
F01N 13/08
F16F 15/08
F16L 3/205
F16M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に固定された車体側ハンガーピン及び当該自動車の排気管の末端部の近傍に固定された排気管側ハンガーピンを用いて当該自動車の排気口の位置を調整する、自動車の排気口の位置調整機構セットであって、
ハンガー本体と、スペーサとを有し、
前記ハンガー本体は、一対の貫通孔を有し、
そのうちの一方の前記貫通孔に前記車体側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該車体側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に移動可能であり、
他方の前記貫通孔に前記排気管側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に相対的に移動可能であり、
前記スペーサは、ほぼ筒状をなし、前記車体側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該車体側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の移動を制限し、前記排気管側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の相対的移動を制限するものであり、
前記スペーサには、その長さ方向に沿って、その周方向に延びる複数の切り込み部が形成されている、
自動車の排気口の位置調整機構セット。
【請求項2】
自動車の車体に固定された車体側ハンガーピン及び当該自動車の排気管の末端部の近傍に固定された排気管側ハンガーピンを用いて当該自動車の排気口の位置を調整する、自動車の排気口の位置調整機構セットであって、
ハンガー本体と、スペーサと、結束バンドとを有し、
前記ハンガー本体は、一対の貫通孔を有し、
そのうちの一方の前記貫通孔に前記車体側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該車体側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に移動可能であり、
他方の前記貫通孔に前記排気管側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に相対的に移動可能であり、
前記スペーサは、ほぼ筒状をなし、前記車体側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該車体側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の移動を制限し、前記排気管側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の相対的移動を制限するものであり、
前記スペーサには、その長さ方向に沿って、その周方向に延びる複数の溝部が形成されており
前記結束バンドは、前記スペーサの前記複数の溝部のいずれかに対して嵌合され当該スペーサを一巡した状態で固定されることによって、適宜、当該スペーサに対して使用されるものである、
自動車の排気口の位置調整機構セット。
【請求項3】
自動車の車体に固定された車体側ハンガーピン及び当該自動車の排気管の末端部の近傍
に固定された排気管側ハンガーピンを用いて当該自動車の排気口の位置を調整する、自動
車の排気口の位置調整機構セットであって、
ハンガー本体と、スペーサと、結束バンドとを有し、
前記ハンガー本体は、一対の貫通孔を有し、
そのうちの一方の前記貫通孔に前記車体側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該車体側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に移動可能であり、
他方の前記貫通孔に前記排気管側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に相対的に移動可能であり、
前記スペーサは、ほぼ筒状をなし、前記車体側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該車体側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の移動を制限し、前記排気管側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の相対的移動を制限するものであ
前記スペーサの先端部にはつば部が形成されており、
前記スペーサには、その長さ方向に沿って、その周方向に延びる複数の溝部が形成されており、当該スペーサのうち隣接する前記溝部の間の部分及び後端部が突条部であり、
前記溝部のうちの当該スペーサの先端部の側の縁部に切り込み部が形成されており
前記結束バンドは、前記スペーサの前記複数の溝部のいずれかに対して嵌合され当該スペーサを一巡した状態で固定されることによって、適宜、当該スペーサに対して使用されるものである、
自動車の排気口の位置調整機構セット。
【請求項4】
自動車の車体に固定された車体側ハンガーピン及び当該自動車の排気管の末端部の近傍に固定された排気管側ハンガーピンを用いて当該自動車の排気口の位置を調整する、自動車の排気口の位置調整機構セットであって、
ハンガー本体と、スペーサと、結束バンドとを有し、
前記ハンガー本体は、一対の貫通孔を有し、
そのうちの一方の前記貫通孔に前記車体側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該車体側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に移動可能であり、
他方の前記貫通孔に前記排気管側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に相対的に移動可能であり、
前記スペーサは、ほぼ筒状をなし、前記車体側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該車体側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の移動を制限し、前記排気管側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の相対的移動を制限するものであ
前記スペーサの両端部にはつば部が形成されており、
前記スペーサには、その長さ方向に沿って、その周方向に延びる複数の溝部が形成されており、当該スペーサのうち隣接する前記溝部の間の部分が突条部であり、
前記溝部のうちの当該スペーサの先端部及び後端部の側の縁部に切り込み部が形成されており
前記結束バンドは、前記スペーサの前記複数の溝部のいずれかに対して嵌合され当該スペーサを一巡した状態で固定されることによって、適宜、当該スペーサに対して使用されるものである、
自動車の排気口の位置調整機構セット。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の自動車の排気口の位置調整機構セットであって、
前記スペーサは、その一側部においてその全長にわたって延びるスリットを有し、当該スリットは弾性的に拡幅可能である、
自動車の排気口の位置調整機構セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の排気管の末端部である排気口の位置を調整する機構を構成するセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンにおいて燃料を燃焼させて駆動力を得る自動車においては、燃料が燃焼した後に発生する排気を放出すべく、エンジンの下流側に排気管が接続されている。
排気管は、主として自動車の床下に配設されており、図2に示すように、その末端部(排気口E)は、一般的に、車体の後端部に配設されている。
【0003】
エンジンが車体の前部に配設される一般的な自動車においては、排気管は、自動車の床下において車体の前部から後端部まで及ぶ長いものであり、その途中の複数箇所において、自動車の床板に対して、各々多少の変位が許容されつつ吊り下げられている。
こうして、排気管は、多少の変位が許容されつつ(すなわち「遊び」を有して)、自動車の床下において所定の位置に位置づけられている。
そして、同じく図2に示すように、自動車によっては、その車体の後端部の下縁部に円弧状又は半円形状の切欠部(排気口用切欠部N)が形成されており、その排気口用切欠部Nに排気口Eが位置づけられようとされている。
【0004】
ところで、前述したように排気管は多少の変位が許容された状態で自動車の床下に配設されており、図2(b)において1点鎖線及び2点鎖線で示すように、必ずしも排気口Eが排気口用切欠部Nの中央(左右方向における中央)に位置する(実線で示す)とは限らないのが実情である。
排気管は自動車の床下に位置するため、基本的には人の目には触れないのであるが、図2に示すように、排気口用切欠部N及び排気口Eは人の目に触れるものであり、排気口Eが排気口用切欠部Nの中央(左右方向における中央)に位置していないと、見苦しい印象を与える。
このため、排気口Eの位置を調整して所定の位置(排気口用切欠部Nの中央)に位置づけるニーズがある。
【0005】
また、一方で、車体に排気口用切欠部が形成されていない自動車においても、使用者の好みに応じて排気口の位置を調整したい、というニーズもある。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術を示すものとして、例えば、特許文献1が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-041969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、自動車の排気口の位置を調整することができる機構のセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様は、自動車の車体に固定された車体側ハンガーピン及び当該自動車の排気管の末端部の近傍に固定された排気管側ハンガーピンを用いて当該自動車の排気口の位置を調整する、自動車の排気口の位置調整機構セットであって、ハンガー本体と、スペーサとを有し、前記ハンガー本体は、一対の貫通孔を有し、そのうちの一方の前記貫通孔に前記車体側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該車体側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に移動可能であり、他方の前記貫通孔に前記排気管側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、当該ハンガー本体は、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に相対的に移動可能であり、前記スペーサは、ほぼ筒状をなし、前記車体側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該車体側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の移動を制限し、前記排気管側ハンガーピンの可動取付部のうち、前記ハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、当該排気管側ハンガーピンの可動取付部における前記ハンガー本体の相対的移動を制限するものである、自動車の排気口の位置調整機構セットである。
【0010】
なお、「…ハンガー本体の移動を制限し」の「制限」には、「阻止」が含まれる。
【0011】
この態様の自動車の排気口の位置調整機構セットでは、ハンガー本体の一方の貫通孔に車体側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされ、他方の貫通孔に排気管側ハンガーピンの可動取付部が挿通状態とされる。ハンガー本体は、車体側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に移動可能であり、排気管側ハンガーピンの可動取付部において、その長さ方向に相対的に移動可能である。
ハンガー本体が車体側ハンガーピンの可動取付部においていずれの位置に位置づけられるか、及び、ハンガー本体が排気管側ハンガーピンの可動取付部において相対的にいずれの位置に位置づけられるかによって、車体に対する排気管側ハンガーピンの位置が変動する。
そして、ハンガー本体が車体側ハンガーピンの可動取付部においていずれかの位置に位置づけられた状態で、スペーサが車体側ハンガーピンの可動取付部のうちハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、車体側ハンガーピンの可動取付部におけるハンガー本体の移動が制限される。同様に、ハンガー本体が排気管側ハンガーピンの可動取付部において相対的にいずれかの位置に位置づけられた状態で、スペーサが排気管側ハンガーピンの可動取付部のうちハンガー本体から露出している部分に取り付けられることによって、排気管側ハンガーピンの可動取付部におけるハンガー本体の相対的な移動が制限される。
こうして、排気管側ハンガーピンの位置が所定の位置又はその近傍に維持され、排気口の位置が所定の位置又はその近傍に維持される。
以上のようにして、この態様の自動車の排気口の位置調整機構セットでは、排気口の位置が調整されるのである。
【0012】
なお、「…ハンガー本体の移動を制限し」の全ての「制限」が「阻止」の場合は、排気管側ハンガーピンの位置が所定の位置に維持され、それ以外の場合は所定の位置又はその近傍に維持される。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットであって、前記スペーサは、その一側部においてその全長にわたって延びるスリットを有し、当該スリットは弾性的に拡幅可能である、自動車の排気口の位置調整機構セットである。
【0014】
この態様の自動車の排気口の位置調整機構セットでは、第1の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、スペーサは、その一側部においてその全長にわたって延びるスリットを有し、そのスリットは弾性的に拡幅可能である。このため、スペーサは、そのスリットが弾性的に拡幅した状態で、当該スリットから、車体側ハンガーピン/排気管側ハンガーピンの可動取付部に対して、その長さ方向とは垂直の方向から求心的に嵌合されることによって、当該可動取付部に容易に取り付けられ得る。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットであって、前記スペーサには、その長さ方向に沿って、その周方向に延びる複数の切り込み部が形成されている、自動車の排気口の位置調整機構セットである。
【0016】
この態様の自動車の排気口の位置調整機構セットでは、第1又は第2のの態様の自動車の排気口の位置調整機構セットの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、スペーサは、その長さ方向における複数の部位に形成された切り込み部において切断しやすく、いずれかの切り込み部において切断することによって、容易にその長さを調整することができる。
こうして、車体側ハンガーピン/排気管側ハンガーピンの可動取付部のうちハンガー本体から露出している部分に、容易に、適切な長さのスペーサを取り付けることが可能となる。
【0017】
本発明の第4の態様は、第1~第3のいずれかの態様の自動車の排気口の位置調整機構セットであって、さらに、結束バンドを有し、前記スペーサには、その長さ方向に沿って、その周方向に延びる複数の溝部が形成されている、自動車の排気口の位置調整機構セット。
【0018】
この態様の自動車の排気口の位置調整機構セットでは、第1~第3のいずれかの態様の自動車の排気口の位置調整機構セットの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、車体側ハンガーピン/排気管側ハンガーピンの可動取付部に取り付けられたスペーサの溝部(その長さ方向における複数の部位に形成された溝部のうちの一又は複数の溝部)に結束バンドが取り付けられ、結束バンドがスペーサを締め付けることによって、スペーサとハンガー本体との間に押圧力が作用する際にもスペーサが変位することが防止され、ハンガー本体が変位することが防止される。
【0019】
本発明の第5の態様は、第1~第4のいずれかの態様の自動車の排気口の位置調整機構セットであって、前記スペーサの先端部にはつば部が形成されている、自動車の排気口の位置調整機構セットである。
【0020】
この態様の自動車の排気口の位置調整機構セットでは、第1~第4のいずれかの態様の自動車の排気口の位置調整機構セットの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、スペーサの先端部につば部が形成されているため、スペーサが車体側/排気管側ハンガーピンの可動取付部に対して取り付けられる際に、つば部がハンガー本体の側に対向する向きとされることによって、スペーサとハンガー本体との間に押圧力が作用する際に、つば部においてスペーサに加わる圧力が分散され、スペーサが変形等することが防止され、ハンガー本体が変位することが防止される。
【0021】
本発明の第6の態様は、第1又は第2の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットであって、
さらに、結束バンドを有し、前記スペーサの先端部にはつば部が形成されており、前記スペーサには、その長さ方向に沿って、その周方向に延びる複数の溝部が形成されており、当該スペーサのうち隣接する前記溝部の間の部分及び後端部が突条部であり、前記溝部のうちの当該スペーサの先端部の側の縁部に切り込み部が形成されている、自動車の排気口の位置調整機構セットである。
【0022】
この態様の自動車の排気口の位置調整機構セットでは、第1又は第2の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットの作用効果、及び、第3~第5の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットの作用効果が得られるとともに、以下の作用効果が得られる。
【0023】
すなわち、切り込み部において切断されない状態のスペーサの後端部、及び、切り込み部において切断された状態のスペーサの後端部には突条部が存在することとなる。
このため、スペーサが車体側/排気管側ハンガーピンの可動取付部に対して取り付けられる際に、つば部がハンガー本体の側に対向する向きとされることによって、突条部が車体側/排気管側ハンガーピンの可動取付部の端部に対向することとなり、スペーサと当該ハンガーピンの可動取付部の端部との間に押圧力が作用する際にスペーサに加わる圧力が分散され、スペーサが変形等することが防止され、ハンガー本体が変位することが防止される。
【0024】
本発明の第7の態様は、第1又は第2の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットであって、さらに、結束バンドを有し、前記スペーサの両端部にはつば部が形成されており、前記スペーサには、その長さ方向に沿って、その周方向に延びる複数の溝部が形成されており、当該スペーサのうち隣接する前記溝部の間の部分が突条部であり、前記溝部のうちの当該スペーサの先端部及び後端部の側の縁部に切り込み部が形成されている、自動車の排気口の位置調整機構セットである。
【0025】
この態様の自動車の排気口の位置調整機構セットでは、第1又は第2の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットの作用効果、及び、第6の態様の自動車の排気口の位置調整機構セットの作用効果が得られるとともに、以下の作用効果が得られる。
【0026】
すなわち、スペーサの両端部につば部が形成されているため、1つのスペーサが切り込み部において切断されて使用されることによって、一端部につば部が形成されているスペーサ2つを使用するのと同等のことを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットを示す斜視図である。
図2】(a)は、自動車を示す背面図である。(b)は、そのうち、排気口用切欠部及びその近傍を拡大して示す部分拡大図である。
図3】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットのうち、ハンガー本体を示す図である。(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図(一部破断)である。
図4】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットのうち、スペーサを示す図である。(a)は斜視図、(b)は断面図(長さ方向に延びる平面で仮想的に切断)、(c)は断面図(長さ方向とは垂直の平面で仮想的に切断)、(d)は(b)の部分拡大図である。
図5】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットのうちハンガー本体及びスペーサ等並びにその使用方法の概略を示す斜視図である。
図6】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットのうち、スペーサの取付工程を示す断面図である。
図7】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットのうち、スペーサの使用方法を示す断面図である。
図8】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットの使用方法を示す図である。排気口を中立位置に維持する場合を示す。
図9】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットの使用方法を示す図である。排気口を最大限右方向に偏位させる場合を示す。
図10】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットの使用方法を示す図である。排気口を最大限左方向に偏位させる場合を示す。
図11】本発明の実施例1の自動車の排気口の位置調整セットの使用方法を示す図である。排気口を若干右方向に偏位させる場合を示す。
図12】本発明の実施例2の自動車の排気口の位置調整セットのうちハンガー本体及びスペーサ等並びにその使用方法の概略を示す斜視図である。
図13】本発明の実施例2の自動車の排気口の位置調整セットのうち、スペーサを示す図である。(a)は斜視図、(b)は断面図(長さ方向に延びる平面で仮想的に切断)、(c)は断面図(長さ方向とは垂直の平面で仮想的に切断)、(d)は(b)の部分拡大図である。
図14】本発明の実施例2のスペーサの切断方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施例1]
次に、本発明の実施例1について、図1図11に基づいて説明する。
図1に示すように、この自動車の排気口の位置調整セットは、ハンガー本体10,スペーサ20,結束バンド30を有している。
排気管Pの末端部(排気口E)の近傍は、車体側ハンガーピン50及び排気管側ハンガーピン60とともに、このセットによって、その位置が調整されつつ、自動車の車体の床下面に吊り下げられる。
【0029】
この自動車においては、エンジン(図示省略)が車体の前部に配設されている。排気管Pの基端部はエンジンに接続されており、排気管Pは、車体の床下(床板Fの下側)において、途中で曲がりつつ、車体の前部から後端部まで長く延びている。
排気管Pの途中には、浄化装置及び消音器(マフラー)が設けられており(ともに図示省略)、浄化装置においては触媒を用いて排気が浄化され、消音器においては排気音が低減される。
【0030】
図1及び図2に示すように、排気管Pの末端部(排気口E)は、自動車の床下において、車体の後端部に位置している。
排気管Pの末端部(排気口E)及びその近傍は、車体の長さ方向に沿って後方に延びるとともに、ほぼ水平に、又は、下流側(排気口Eの側)に向かうにつれて徐々に下方に向かうように水平から傾斜して延びている。
【0031】
排気管Pは、前述したように車体の前部から後端部まで及ぶ長いものであり、その途中の複数箇所において、自動車の床下面(床板Fの下面)に対して吊り下げられている。
排気管Pは、その複数箇所のうちの末端部(排気口E)の近傍以外においては、次のように吊り下げられている。
その機構は、ハンガー本体を主体として形成されている。ハンガー本体はゴム製であり、一対の貫通孔を有している。
一方の貫通孔に車体側ハンガーピンが挿通され、他方の貫通孔に排気管側ハンガーピンが挿通されている。
ハンガー本体は、車体側ハンガーピンに対してその長さ方向に移動可能であるとともに、排気管側ハンガーピンに対してその長さ方向に相対的に移動可能である。
こうして、排気管Pは、多少の変位が許容されつつ(すなわち「遊び」を有して)、自動車の床下において所定の位置に位置づけられているのである。
【0032】
図1に基づいて前述したように、この自動車の排気口の位置調整セットは、ハンガー本体10,スペーサ20,結束バンド30を有し、排気口E(排気管Pの末端部)の近傍において、車体側ハンガーピン50,排気管側ハンガーピン60とともに使用される。
【0033】
車体側ハンガーピン50は、以下のように、車体側に固定されたピンである。
図1及び図5に示すように、車体の床板Fの下面には補強材Rが固定されている。補強材Rは、中空の四角形状断面を有し、車体の長さ方向に延びている。車体側ハンガーピン50は、補強材Rに対して固定されている。こうして、車体側ハンガーピン50は、車体側に固定されている。
【0034】
車体側ハンガーピン50は、車体の幅方向(左右方向)にほぼ水平に延びている。
車体側ハンガーピン50の先端部には、円錐台状の抜け止め部58が設けられている。車体側ハンガーピン50の基端部の近傍には、円板状のストッパ59が固定されている。
車体側ハンガーピン50のうち、ストッパ59と抜け止め部58との間の部分が、車体側可動取付部55である。
【0035】
同じく図1及び図5に示すように、排気管側ハンガーピン60は、排気管Pに固定されたピンである。
排気管側ハンガーピン60は、その基端部から先端部にかけて、結合部61,略鉛直部62,略水平部63(本体部)が、各々折り曲げ部を挟んで形成されている。
排気管側ハンガーピン60は、結合部61において、排気管Pの末端部の近傍に対して溶接によって結合されている。略鉛直部62は、直線状にほぼ鉛直に延びている。
【0036】
略水平部63は、車体の幅方向(左右方向)にほぼ水平に延びている。
略水平部63の先端部には、円錐台状の抜け止め部68が設けられている。略水平部63と略鉛直部62との間の折り曲げ部がストッパとして機能する。これを折り曲げストッパ69ということとする。
排気管側ハンガーピン60の略水平部63のうち、折り曲げストッパ69と抜け止め部68との間の部分が、排気管側可動取付部65である。
【0037】
車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)及び排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)は、同径の円形断面を有している。
【0038】
図1図3図5に示すように、ハンガー本体10(「インシュレータ」ともいわれる)は、ほぼ、直方体をベースに、その両端部が半円形断面状に面取りされた形状を有している。
ハンガー本体10はゴム製であって弾性的に変形可能であり、一対の貫通孔(第1貫通孔12a,第2貫通孔12b)を有している。
一対の貫通孔12a,12bは、ハンガー本体10の長さ方向に延びている。すなわち、各貫通孔12a,12bは、相互に平行に、ハンガー本体10の一方の端面と他方の端面との間に及んでいる。各貫通孔12a,12bは、弾性的に拡径可能である。
ハンガー本体10のうち、両貫通孔12a,12bの間の部分には、H字状の貫通孔14が形成されている。
【0039】
図5に示すように、一方の貫通孔(第1貫通孔12a)に車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)が挿通状態とされ、他方の貫通孔(第2貫通孔12b)に排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)が挿通状態とされる。
自然状態における各貫通孔12a,12bの径は、各ハンガーピン50,60(各可動取付部55,65)の径に対応している。
各ハンガーピン50,60の可動取付部55,65の長さは、ハンガー本体10の長さ(各貫通孔12a,12bの長さ)よりも長く設定されている。仮にそれらよりも短いものであると、各ハンガーピン50,60の可動取付部55,65にハンガー本体10が取り付けられ得ないことになるため、長めに設定されているのである。
【0040】
第1挿通孔12aにおいてハンガー本体10が車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)に対して嵌合されることによって、前述したように、車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)は、ハンガー本体10の第1貫通孔12aに対して挿通状態とされる。
その取付工程の際、車体側ハンガーピン50は、抜け止め部58から第1貫通孔12aに相対的に挿入され、ハンガー本体10の弾性に基づいて、抜け止め部58によって第1貫通孔12aが弾性的に拡径し、その状態で抜け止め部58が第1貫通孔12aを相対的に通過し、その通過後に第1貫通孔12aが元の自然状態に戻り、挿通状態となるのである。
その挿通状態において、ハンガー本体10は、車体側ハンガーピン50に対して、車体側可動取付部55の範囲において、その長さ方向に移動可能である。すなわち、ハンガー本体10は、その一端部が抜け止め部58に当接する位置と、その他端部がストッパ59に当接する位置との間を移動可能である。
【0041】
同じく前述したように、排気管側ハンガーピン60の略水平部63は、第2貫通孔12bに対して挿通状態とされる。
その取付工程の際、排気管側ハンガーピン60(略水平部63)は、抜け止め部68から第2貫通孔12bに挿入され、ハンガー本体10の弾性に基づいて、抜け止め部68によって第2貫通孔12bが弾性的に拡径し、その状態で抜け止め部68が第2貫通孔12bを通過し、その通過後に第2貫通孔12bが元の自然状態に戻り、挿通状態となるのである。
その挿通状態において、ハンガー本体10は、排気管側ハンガーピン60(略水平部63)に対して、排気管側可動取付部65の範囲において、相対的に、その長さ方向に移動可能である。すなわち、ハンガー本体10は、その一端部が抜け止め部68に当接する位置と、その他端部がストッパ69に当接する位置との間を相対的に移動可能である。
【0042】
上述したように、車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)とハンガー本体10との間の車体側可動取付部55の長さ方向における相対的な位置関係が変位可能であり、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)とハンガー本体10との間の排気管側可動取付部65の長さ方向における相対的な位置関係が変位可能である。
このことから、ハンガー本体10と両ハンガーピン50,60(両可動取付部55,65)との間の相対的位置関係が各々変位されることによって、車体(補強材R)に対する排気管Pの末端部の近傍(排気管側ハンガーピン60の結合部61)の左右方向における位置が調整される。こうして、排気口Eの左右方向における位置が変動する。
すなわち、前述したように車体側可動取付部55及び排気管側可動取付部65は車体の幅方向(左右方向)に延びており、両者の長さ方向において両者とハンガー本体との間の相対的な位置関係が変位可能のため、結果的に、排気口Eの車体の幅方向(左右方向)における位置が変動するのである。
そして、後述するように、スペーサ20によって、その位置関係が維持(固定)されるのである。
【0043】
図1及び図5に示すように、スペーサ20は2組存在する。すなわち、車体側ハンガーピン50(第1貫通孔12a)に対して一対のスペーサ20が用意され、排気管側ハンガーピン60(第2貫通孔12b)に対して一対のスペーサ20が用意されている。
すべてのスペーサ20は同一の構造を有しており、使用状態において、各組における一対のスペーサ20は逆向きとされる。
【0044】
図4に示すように、スペーサ20は、ほぼ円筒状をしており、その先端部にはつば部22が形成されている。すなわち、スペーサ20は、円筒状のスペーサ本体部21及びつば部22を有している。
スペーサ20の内径は、各ハンガーピン50,60(各可動取付部55,65)の外径に対応している。
スペーサ20は、ゴム又は合成樹脂によって形成され、弾性的に変形可能である。
スペーサ20には、スリット25,複数の凹凸(溝部26,突条部27),複数の切り込み部28が形成されている。
【0045】
スリット25は、スペーサ20の一側部において、その全長にわたって形成されている。すなわち、スリット25は、スペーサ20の周壁部の一部(周方向における一部)が欠落するようにして形成されており、スペーサ20の長さ方向に沿って直線状に形成されている。
前述したようにスペーサ20は弾性的に変形可能であるため、スリット25は、弾性的に拡幅可能である。
【0046】
このため、図6に示すように、スペーサ20は、次のようにして、各ハンガーピン50,60の可動取付部55,65に対して取り付けられ得る。
図6(a)→(b)に示すように、スペーサ20は、スリット25の側からハンガーピン50,60(可動取付部55,65)の外周面に対して、ハンガーピン50,60(可動取付部55,65)の長さ方向とは垂直の方向に沿って、求心的に(可動取付部55,65の中心軸線に向かう方向に)導かれる。
図6(b)に示すようにスリット25の両縁部がハンガーピン50,60(可動取付部55,65)の外周面に当接した後に、図6(b)→(c)に示すように、スペーサ20がさらに求心方向にハンガーピン50,60に対して押圧されることによって、ハンガーピン50,60から受ける反力に基づいて、スリット25が徐々に拡幅していく。
次に、図6(c)→(d)に示すように、その拡幅したスリット25がハンガーピン50,60(可動取付部55,65)を通過し、その通過後に、図6(d)に示すように、スリット25の幅が元の自然状態に戻る。
こうして、図6(d)に示すように、スペーサ20は、各ハンガーピン50,60の可動取付部55,65に対して同心的に取り付けられるのである。
【0047】
図4に示すように、各凹凸(溝部26,突条部27)はほぼ円環状をなし、スペーサ本体部21の長さ方向に沿って複数形成されている。。
すなわち、厚肉円筒状のスペーサ本体部21に、その長さ方向に沿って、複数(例えば5つ)の溝部26が形成されているといえる。各溝部26は、スペーサ本体部21の全周(スリット25を除く)にわたって形成されており、スペーサ本体部21(スリット25を除く)を一巡している。
別の見方をすると、薄肉円筒状のスペーサ本体部21に、その長さ方向に沿って、複数(例えば5つ)の突条部27が形成されているともいえる。各突条部27は、スペーサ本体部21の全周(スリット25を除く)にわたって形成されており、スペーサ本体部21(スリット25を除く)を一巡している。
こうして、スペーサ本体21の長さ方向に沿って、ともに複数(例えば5つ)の溝部26及び突条部27が交互に形成されている。
【0048】
各切り込み部28は、各溝部26のうちのスペーサ20の先端部の側(つば部22の側)の縁部に形成されている。切り込み部28は、溝部26に沿って、スペーサ本体部21の全周(スリット25を除く)にわたって形成されており、スペーサ本体部21(スリット25を除く)を一巡している。
別の見方をすると、各切り込み部28は、各突条部27のうちのスペーサ20の後端部の側(つば部22とは反対の側)の縁部に形成されている。つば部22の縁部であってつば部22とスペーサ本体部21との境界部分にも形成されている。切り込み部28は、突条部27又はつば部22に沿って、スペーサ本体部21の全周(スリット25を除く)にわたって形成されており、スペーサ本体部21(スリット25を除く)を一巡している。
【0049】
図4(d)に示すように、切り込み部28は、ほぼV字状断面を有しており、ともにほぼ円環状の第1面29a及び第2面29bを有している。
第1面29aは、切り込み部28のうち、スペーサ20の先端部の側の面である。第1面29aは、溝部26の底面のうち、スペーサ20の先端部の側の縁部から、溝部26の底面と垂直に求心方向に延びている。
第2面29bは、切り込み部28のうち、スペーサ20の後端部の側の面である。第2面29bは、溝部26の底面のうち、スペーサ20の先端部の側の縁部の近傍から、傾斜して延びている。すなわち、切り込み部28の底部に向かうにつれて、徐々にスペーサ20の先端部の側に向かうように、溝部26の底面と垂直な面から若干(例えば30°)傾斜して求心的に延びている。
スペーサ20は、各切り込み部28において、鋏やナイフを用いて、使用者によって、第1面29aに沿って容易に切断され得る(図7(c)参照)。こうして、スペーサ20(スペーサ本体部21)の長さは調整可能である。
【0050】
図7に示すように、各ハンガーピン50,60の可動取付部55,65に対して、スペーサ20は、次のように取り付けられる。
一対のスペーサ20のうちの一方又は両方が、適宜その長さが調整された状態で、各可動取付部55,65のうち、ハンガー本体10から露出している部分に取り付けられる。
すなわち、ストッパ59/折り曲げストッパ69とハンガー本体10との間に隙間があって当該部分の可動取付部55,65がハンガー本体から露出している場合、及び/又は、抜け止め部58,68とハンガー本体10との間の部分に隙間があって当該部分の可動取付部55,65がハンガー本体から露出している場合に、当該露出している部分に取り付けられる。
【0051】
図7(a)及び(c)に示すように、ハンガーピン50,60の可動取付部55,65のうち、ストッパ59/折り曲げストッパ69とハンガー本体10との間の部分にスペーサ20が取り付けられる場合は、次のようにされる。
スペーサ20は、つば部22がハンガー本体10の側に位置する向きとされ、つば部22がハンガー本体10に当接又は近接し、スペーサ20の後端部の突条部27がストッパ59/折り曲げストッパ69に当接又は近接するようにされる。
【0052】
一方、図7(b)及び(c)に示すように、ハンガーピン50,60の可動取付部55,65のうち、抜け止め部58,68とハンガー本体10との間の部分にスペーサ20が取り付けられる場合は、次のようにされる。
スペーサ20は、つば部22がハンガー本体10の側に位置する向きとされ、つば部22がハンガー本体10に当接又は近接し、スペーサ20の後端部の突条部27が抜け止め部58,68に当接又は近接するようにされる。
【0053】
以上のように各ハンガーピン50,60の可動取付部55,65のうちハンガー本体10から露出している部分にスペーサ20が取り付けられることによって、ハンガー本体10が可動取付部55,65においてその長さ方向に移動することが制限される。
「制限」には「阻止」が含まれる。各スペーサ20において、その先端部(つば部22)がハンガー本体10に当接し、その後端部(突条部27)がストッパ59/折り曲げストッパ69/抜け止め部58,68に当接する場合は、ハンガー本体10が可動取付部55,65においてその長さ方向に移動することが阻止される。
以上のようにして、ハンガー本体10が可動取付部55,65のうち所定の位置又はその近傍に維持される。
【0054】
以上の際において、ハンガー本体10に対しては、スペーサ20のうちつば部22が対応するため、スペーサ本体部21(特に、仮にその溝部26)が対応する場合と比較して、ハンガー本体10との間で押圧力が作用する際にスペーサ20に加わる圧力が分散され、スペーサ20が変形等することが防止される。
すなわち、自動車の走行時の振動等によってハンガー本体10が各ハンガーピン50,60の可動取付部55,65に対して左方向/右方向に変位しようとする際にも、スペーサ20がその長さ方向に圧縮されて左方向/右方向に変位することが防止され、ハンガー本体10が左方向/右方向に変位することが防止される。
同様に、ストッパ59/折り曲げストッパ69に対しては、スペーサ20のうち突条部27が対応するため、仮に溝部26が対応する場合と比較して、ハンガー本体10と当接する際にスペーサ20に加わる圧力が分散され、スペーサ20が変形等することが防止され、上述と同様のことがいえる。
【0055】
図1に示すように、結束バンド30は、公知の構造を有しており、可撓性を有する合成樹脂によって形成されている。結束バンド30は、頭部32,ストラップ部35を有している。
ストラップ部35は、幅細の帯状をしており、その先端部の側以外の大半部分のおもて面には、多数の歯が形成されている。
頭部32には挿通孔が形成されており、嵌合孔には爪部が形成されている。
そして、ストラップ部35が挿通孔に挿通され、いずれかの歯に爪部が係合することによって、いずれかの周長に維持される(固定される)。
【0056】
図7に示すように、結束バンド30は、次のように使用される。
前述したようにハンガーピン50,60の可動取付部55,65に対してスペーサ20が取り付けられた状態で、結束バンド30は、適宜、スペーサ20に対して使用される。
すなわち、結束バンド30は、スペーサ20のいずれかの溝部26に対して嵌合され、ストラップ部35がスペーサ20を締め付けつつ一巡した状態で固定される。
特に、結束バンド30は、スペーサ20の原則として複数の溝部26のうち、最も先端部の側の(すなわち、最もつば部22に近い)溝部26に対して使用される。さらには、最も後端部の側の(すなわち、つば部22から最も遠い)溝部26に対しても使用される場合がある。
【0057】
結束バンド30が使用されることによって、ハンガー本体10が可動取付部55,65のうち所定の位置又はその近傍に、より確実に維持される。
すなわち、前述したように、自動車の走行時の振動等によってハンガー本体10が車体側ハンガーピン50/排気管側ハンガーピン60に対して左方向/右方向に変位しようとする際にも、スペーサ20がその長さ方向に圧縮されて左方向/右方向に変位することがより確実に防止され、ハンガー本体10が左方向/右方向に変位することがより確実に防止される。
【0058】
次に、この自動車の排気口Eの位置調整セットの使用方法及び作用効果について説明する。
図5に基づいて前述したように、ハンガー本体10の車体側ハンガーピン50及び排気管側ハンガーピン60(略水平部63)に対する相対的位置関係が各々調整されることによって、排気口Eの位置(左右方向における位置)が調整される。すなわち、車体(補強材R)に対する排気管Pの末端部の近傍(排気管側ハンガーピン60の結合部61)の位置(左右方向における位置)が調整され、ひいては排気口Eの位置(左右方向における位置)が調整される。
その左右方向における調整可能範囲のうちの中央の位置を中立位置ということとする。
【0059】
まず、第1のケースは、図8に示すように、排気口Eを左右に偏位させることなく上述の中立位置に位置づけた際に、排気口Eが本来の位置に位置する場合である。すなわち、図2(b)において実線で示すように、排気口Eが切欠部Nの中央等、所望の位置に位置する場合である。
そのためには、種々の方法がある。
【0060】
第1の方法は、図8(a)に示すように、次のとおりである。
車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)に対してハンガー本体10を最大限右方向に偏位させる(その詳細については後述の第2のケースを参照)。
それとともに、ハンガー本体10に対して排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)を最大限左方向に偏位させる。すなわち、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対してハンガー本体10も最大限右方向に偏位させる(その詳細については後述の第3のケースを参照)。
【0061】
第2の方法は、図8(b)に示すように、次のとおりである。
車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)に対してハンガー本体10を最大限左方向に偏位させる(第3のケースを参照)。
それとともに、ハンガー本体10に対して排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)を最大限右方向に偏位させる。すなわち、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対してハンガー本体10も最大限左方向に偏位させる(第2のケースを参照)。
【0062】
以上が代表例であるが、図8(c)に示すように、次の第3の方法もある。
車体側ハンガーピン50の車体側可動取付部55のうちのほぼ中央位置にハンガー本体10を維持する。
それととともに、排気管側ハンガーピン60の排気管側可動取付部65のうちのほぼ中央位置にハンガー本体10を維持する。
すなわち、車体側ハンガーピン50の車体側可動取付部55のうちのほぼ中央位置にハンガー本体10を位置づけ、一対のスペーサ20を適宜切断して長さ調整し、一方のスペーサ20を車体側ハンガーピン50のうちのハンガー本体10とストッパ59との間に取り付け、他方のスペーサ20を同じくハンガー本体10と抜け止め部58との間に取り付ける。
同様に、排気管側ハンガーピン60の排気管側可動取付部65のうちのほぼ中央位置にハンガー本体10を位置づけ、一対のスペーサ20を適宜切断して長さ調整し、一方のスペーサ20を排気管側ハンガーピン60のうちのハンガー本体10と折り曲げストッパ69との間に取り付け、他方のスペーサ20を同じくハンガー本体10と抜け止め部68との間に取り付ける。
【0063】
以上のようにして、第1~第3の方法のいずれにおいても、排気口Eを中立位置(又はその近傍)に維持することができる。
【0064】
第2のケースは、図9において1点鎖線で示すように、仮に排気口Eを中立位置に位置づけた際には、排気口Eが本来の位置(図9において実線で示す)から大きく左方向にずれる場合である。すなわち、図2(b)において1点鎖線で示すように、排気口Eが切欠部Nの中央(同実線で示す)等、所望の位置から大きく左方向にずれる場合である。
このケースの場合は、以下のように、車体側ハンガーピン50に対してハンガー本体10を最大限右方向に偏位させるとともに、ハンガー本体10に対して排気管側ハンガーピン60を最大限右方向に偏位させることによって、車体に対して排気口Eを最大限右方向に偏位させる。
【0065】
すなわち、車体側ハンガーピン50の車体側可動取付部55に対してハンガー本体10を最大限右方向に位置づけ、ハンガー本体10を抜け止め部58に当接させる。
その状態で、必要に応じてスペーサ20の長さを適宜調整し、そのスペーサ20を車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)のうちのハンガー本体10とストッパ59との間に取り付ける。
こうして、ハンガー本体10は、スペーサ20によって左方向に移動することが阻止(制限)されて、車体側ハンガーピン50に対して最大限右方向に位置づけられた状態で固定される(すなわち、車体側可動取付部55の右端部(又はその近傍)にハンガー本体10を維持する)。
【0066】
同様に、ハンガー本体10に対して排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)を最大限右方向に位置づけ、折り曲げストッパ69をハンガー本体10に当接させる。すなわち、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対してハンガー本体10を最大限左方向に位置づけ、ハンガー本体10を折り曲げストッパ69に当接させる。
その状態で、必要に応じてスペーサ20の長さを適宜調整し、そのスペーサ20を排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)のうちのハンガー本体10と抜け止め部68との間に取り付ける。
こうして、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)は、スペーサ20によって、ハンガー本体10に対して左方向に移動することが阻止(制限)されて、ハンガー本体10に対して最大限右方向に位置づけられた状態で固定される。
すなわち、ハンガー本体10は、スペーサ20によって、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対して相対的に右方向に移動することが阻止(制限)されて、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対して相対的に最大限左方向に位置づけられた状態で固定される(すなわち、排気管側可動取付部65の左端部(又はその近傍)にハンガー本体10を維持する)。
【0067】
以上のようにして、図9において実線で示すように、排気口Eを最大限右方向に偏位させ、排気口Eを所望の位置(又はその近傍)に位置づけることができる。
【0068】
逆に、第3のケースは、図10において2点鎖線で示すように、仮に排気口Eを中立位置に位置づけた際には、排気口Eが本来の位置から大きく右方向にずれる場合である。すなわち、図2(b)において2点鎖線で示すように、排気口Eが切欠部Nの中央(同実線で示す)等、所望の位置から大きく右方向にずれる場合である。
このケースの場合は、以下のように、車体側ハンガーピン50に対してハンガー本体10を最大限左方向に偏位させるとともに、ハンガー本体10に対して排気管側ハンガーピン60を最大限左方向に偏位させることによって、車体に対して排気口Eを最大限左方向に偏位させる。
【0069】
すなわち、車体側ハンガーピン50の車体側可動取付部55に対してハンガー本体10を最大限左方向に位置づけ、ハンガー本体10をストッパ59に当接させる。
その状態で、必要に応じてスペーサ20の長さを適宜調整し、そのスペーサ20を車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)のうちのハンガー本体10と抜け止め部58との間に取り付ける。
こうして、ハンガー本体10は、スペーサ20によって右方向に移動することが阻止(制限)されて、車体側ハンガーピン50に対して最大限左方向に位置づけられた状態で固定される(車体側可動取付部55の左端部(又はその近傍)にハンガー本体10を維持する)。
【0070】
同様に、ハンガー本体10に対して排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)を最大限左方向に位置づけ、抜け止め部68をハンガー本体10に当接させる。すなわち、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対してハンガー本体10を最大限右方向に位置づけ(排気管側可動取付部65の右端部にハンガー本体10を位置づけ)、ハンガー本体10を抜け止め部68に当接させる。
その状態で、必要に応じてスペーサ20の長さを適宜調整し、そのスペーサ20を排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)のうちのハンガー本体10と折り曲げストッパ69との間に取り付ける。
こうして、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)は、スペーサ20によって、ハンガー本体10に対して右方向に移動することが阻止(制限)されて、ハンガー本体10に対して最大限左方向に位置づけられた状態で固定される。
すなわち、ハンガー本体10は、スペーサ20によって、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対して相対的に左方向に移動することが阻止(制限)されて、排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対して相対的に最大限右方向に位置づけられた状態で固定される(排気管側ハンガーピン60の排気管側可動取付部65のうちの右端部(又はその近傍)にハンガー本体10を維持する)。
【0071】
以上のようにして、図10において実線で示すように、排気口Eを最大限左方向に偏位させ、排気口Eを所望の位置(又はその近傍)に位置づけることができる。
【0072】
第4のケースは、図11において1点鎖線で示すように、仮に排気口Eを中立位置に位置づけた際には、排気口Eが本来の位置からやや左方向にずれる場合である。
この場合は、以下の種々の方法によって、車体に対して排気口Eを若干右方向に偏位させる。
【0073】
第1の方法は、図11(a)に示すように、次のとおりである。
第2のケースのように、車体側ハンガーピン50(車体側可動取付部55)に対してハンガー本体10を最大限右方向に偏位させる(車体側可動取付部55の右端部にハンガー本体10を維持する)。
それとともに、第1のケースの第3の方法のように、排気管側ハンガーピン60の排気管側可動取付部65のうちのほぼ中央位置にハンガー本体10を維持する。
【0074】
第2の方法は、図11(b)に示すように、次のとおりである。
第1のケースの第3の方法のように、車体側ハンガーピン50の車体側可動取付部55のうちのほぼ中央位置にハンガー本体10を維持する。
それとともに、第2のケースのように、ハンガー本体10に対して排気管側ハンガーピン60を最大限右方向に偏位させる。すなわち、ハンガー本体10を排気管側ハンガーピン60(排気管側可動取付部65)に対して最大限左方向に偏位させる(排気管側ハンガーピン60の排気管側可動取付部65のうちの左端部にハンガー本体10を維持する)。
【0075】
第3の方法は、図11(c)に示すように、次のとおりである。
車体側ハンガーピン50の車体側可動取付部55の中央位置より若干右寄りの位置にハンガー本体10を維持する。
それとともに、排気管側ハンガーピン60の排気管側可動取付部65の車体側可動取付部55のうちの左端部よりも若干中央寄りの位置にハンガー本体10を維持する。
【0076】
以上のようにして、排気口Eを若干右方向に偏位させ、排気口Eを所望の位置に位置づけることができる。
【0077】
上述の第4のケースとは逆に、仮に排気口Eを中立位置に位置づけた際には、排気口Eが本来の位置からやや右方向にずれる場合には、上述とは対称的な操作を行う。
こうして、排気口Eをやや左方向に偏位させ、排気口Eを所望の位置に位置づけることができる。
【0078】
以上のようにして、又は、上述の種々のケースのうちの間の操作を行うことによって、排気口Eを容易に所望の位置(又はその近傍)に位置づけることができるのである。
【0079】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について、図12図14に基づいて説明する。
実施例2は、実施例1の変形例であって、実施例1との相違点を中心に説明する。実施例1と共通する要素については同一の符号を付すとともに、対応する要素については対応する符号(「100」を加えた符号))を付して、適宜説明を省略する。
【0080】
図12に示すように、この自動車の排気口の位置調整セットは、ハンガー本体10,スペーサ120,結束バンド30(図1参照)を有している。
図1及び図5に示すように、スペーサ120は1組存在する。すなわち、車体側ハンガーピン50(第1貫通孔12a)に対して1つのスペーサ120が用意され、排気管側ハンガーピン60(第2貫通孔12b)に対して1つのスペーサ120が用意されている。
【0081】
図13に示すように、スペーサ120は、ほぼ円筒状をしており、その両端部(先端部及び後端部)につば部122が形成されている。すなわち、スペーサ120は、円筒状のスペーサ本体部121及び一対のつば部122を有している。
【0082】
各切り込み部28は、各溝部26のうちのスペーサ120の先端部及び後端部の側の両縁部に形成されている。
別の見方をすると、各切り込み部28は、各突条部27のうちのスペーサ120の先端部及び後端部の側の両縁部に形成されているともいえる。
【0083】
この実施例においては、基本的には、各スペーサ120は、所定の部位(切り込み部28)において切断されて使用される。
図14(a)に示すように、一方のつば部122から最も遠い溝部26のうちの当該一方のつば部122の側の切り込み部28においてスペーサ120が切断されることによって、実施例1におけるスペーサ20(切断前)が形成される。
【0084】
このため、図7(a)及び(b)に基づいて説明したように、ハンガー本体10のうちの片側にのみスペーサ(20)が取り付けられる場合には、図14(a)に示すように、スペーサ120は、上記の切り込み部28、又は、他の溝部26のうち当該一方のつば部122の側の切り込み部28において切断される。
【0085】
一方、図7(c)に基づいて説明したように、ハンガー本体10のうちの両側にスペーサ(20)が取り付けられる場合には、スペーサ120は、次のように切断されて使用される。
図14(b)に示すように、一方のつば部122に関連して、所定の溝部26のうち当該一方の側の切り込み部28において切断されるとともに、他方のつば部122に関連して、所定の溝部26のうち当該他方の側の切り込み部28において切断される。
こうして、切断後の実施例1におけるスペーサ20が形成される。
【0086】
以上のようにして、この実施例においては、スペーサ120が1組存在するのみで、実施例1と同様のことを行うことが可能となるのである。
【0087】
なお、上述のものはあくまで本発明の実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
すなわち、上記実施例のうちの一部の要素が含まれない態様もあり得る。
【符号の説明】
【0088】
10 ハンガー本体
12a 第1貫通孔(貫通孔)
12b 第2貫通孔(貫通孔)
20 スペーサ
22 つば部
25 スリット
26 溝部
27 突条部
28 切り込み部
30 結束バンド
50 車体側ハンガーピン
55 車体側可動取付部(可動取付部)
60 排気管側ハンガーピン
65 排気管側可動取付部(可動取付部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12
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図14