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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】表面実装型クランプ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/57 20110101AFI20240213BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01R12/57
H05K1/18 U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021030953
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131813
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 智久
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05709574(US,A)
【文献】登録実用新案第3201535(JP,U)
【文献】特開2005-100940(JP,A)
【文献】特開2015-109262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装面へ表面実装されて、その実装箇所において線状又は柱状の保持対象物を保持可能に構成される表面実装型クランプであって、
第1接合面、第1吸着面、第2接合面、第2吸着面及び保持部を備え、
前記第1接合面、前記第1吸着面、前記第2接合面、前記第2吸着面及び前記保持部は、単一の金属板によって一体成形されており、
前記第1接合面及び前記第2接合面は、それぞれが前記部品実装面へはんだ付け可能に構成され、前記表面実装型クランプが前記部品実装面へ表面実装される際には、前記第1接合面及び前記第2接合面のうちのいずれか一方が前記部品実装面へはんだ付けされ、
前記第1吸着面及び前記第2吸着面は、それぞれが自動実装機の吸引ノズルで吸着可能に構成され、前記第1吸着面が前記第1接合面とは反対方向に向けられ、前記第2吸着面が前記第2接合面とは反対方向に向けられ、
前記保持部は、前記保持対象物を内側へと導入可能な開口箇所を有し、前記保持対象物が前記開口箇所から前記内側へと導入された際に、前記保持対象物の外周を前記開口箇所以外の範囲で囲むことによって前記保持対象物を保持可能に構成され、
前記開口箇所が向けられる方向を開口方向として、前記第1接合面が前記部品実装面にはんだ付けされた場合と、前記第2接合面が前記部品実装面にはんだ付けされた場合とでは、前記開口方向が異なる方向となるように構成されており
前記第1接合面が下方向に向けられ、前記第1吸着面が上方向に向けられ、前記第2接合面が斜め左下方向に向けられ、前記第2吸着面が斜め右上方向に向けられて、前記保持部が前後方向に延びる前記保持対象物を保持可能となる、第1の向きとされた状態において、
左右方向に延在する部分であり、当該部分を構成する前記金属板の一方の面が下方向に向けられて前記第1接合面とされている第1水平部と、
第1曲げ部を介して前記第1水平部の左端に連結されて、前記第1曲げ部から斜め右上方向へと延びる部分である第1傾斜部と、
第2曲げ部を介して前記第1水平部の右端に連結されて、前記第2曲げ部から斜め左上方向へと延びる部分であり、当該部分を構成する前記金属板の一方の面が斜め右上方向に向けられて前記第2吸着面とされている第2傾斜部と、
第3曲げ部を介して前記第1傾斜部の上端に連結されて、前記第3曲げ部から斜め右下方向へと延びる部分であり、当該部分を構成する前記金属板の一方の面が斜め左下方向に向けられて前記第2接合面とされている第3傾斜部と、
第4曲げ部を介して前記第2傾斜部の上端に連結されて、前記第4曲げ部から右方向へと延びる部分であり、当該部分を構成する前記金属板の一方の面が上方向に向けられて前記第1吸着面とされている第2水平部と、
を備え、
前記第3曲げ部と前記第4曲げ部との間には、前記開口箇所となる間隙が形成されていて、前記第1水平部、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部によって、前記保持部が構成されている、
表面実装型クランプ。
【請求項2】
請求項に記載の表面実装型クランプであって、
前記第2接合面が下方向に向けられ、前記第2吸着面が上方向に向けられ、前記第1接合面が斜め右下方向に向けられ、前記第1吸着面が斜め右上方向に向けられて、前記保持部が前後方向に延びる前記保持対象物を保持可能となる、第2の向きとされた状態において、
前記第1吸着面及び前記第3曲げ部は、前記第3曲げ部の方が前記第1吸着面よりも左方向へ突出するように構成されている、
表面実装型クランプ。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の表面実装型クランプであって、
前記第1の向きとされた状態において、
前記第1傾斜部には、斜め右下方向へ突出する第1突出部が設けられ、
前記第2傾斜部には、斜め左下方向へ突出する第2突出部が設けられ、
前記第1突出部及び前記第2突出部によって、前記保持部によって保持された前記保持対象物が前記開口箇所に近づく方向へ変位するのを抑制するように構成されている、
表面実装型クランプ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の表面実装型クランプであって、
前記開口方向と前記部品実装面のなす角度を開口角度として、前記第1接合面が前記部品実装面にはんだ付けされた場合には、前記開口角度が50度以上90度以下となり、前記第2接合面が前記部品実装面にはんだ付けされた場合には、前記開口角度が0度以上45度以下となるように構成されている、
表面実装型クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面実装型クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装面に表面実装可能な表面実装型クランプが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の交換部品用クリップ(本開示でいう表面実装型クランプに相当。)は、部品実装面にはんだ付けされる底部と、底部から延出する一対の金属片によって構成される保持部とを備える。部品実装面が上方に向けられている場合、交換部品(本開示でいう保持対象物に相当。)を保持部の上方から下方へと移動させることにより、交換部品を保持部へと導入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-126459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、電子回路基板が配設される場所によっては、保持部の上方向(すなわち、部品実装面が向けられる方向。)には十分な作業空間を確保できない場合がある。この場合、交換部品用クリップの上方向に交換部品を配置する作業が難しく、作業性が悪い。
【0005】
また、例えば、電子回路基板が配設される場所によっては、保持部の横方向(すなわち、部品実装面に沿った方向。)になら作業空間を確保できる場合がある。しかし、上記交換部品用クリップでは、保持部の横方向からは、交換部品を保持部へと導入することができない。
【0006】
さらに、例えば、保持部の上方向に作業空間を確保できる場合と、保持部の横方向に作業空間を確保できる場合とで、それぞれの場合に適した別形状の交換部品用クリップを用意することはできる。しかし、この場合、それら別形状の交換部品用クリップそれぞれの汎用性が低下する。
【0007】
本開示の一局面においては、従来品に比べ、保持対象物を保持部へ導入する際の自由度が高い表面実装型クランプを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面における表面実装型クランプは、部品実装面へ表面実装されて、その実装箇所において線状又は柱状の保持対象物を保持可能に構成される表面実装型クランプである。この表面実装型クランプは、第1接合面、第1吸着面、第2接合面、第2吸着面及び保持部を備える。第1接合面、第1吸着面、第2接合面、第2吸着面及び保持部は、単一の金属板によって一体成形されている。第1接合面及び第2接合面は、それぞれが部品実装面へはんだ付け可能に構成され、表面実装型クランプが部品実装面へ表面実装される際には、第1接合面及び第2接合面のうちのいずれか一方が部品実装面へはんだ付けされる。第1吸着面及び第2吸着面は、それぞれが自動実装機の吸引ノズルで吸着可能に構成され、第1吸着面が第1接合面とは反対方向に向けられ、第2吸着面が第2接合面とは反対方向に向けられる。保持部は、保持対象物を内側へと導入可能な開口箇所を有し、保持対象物が開口箇所から内側へと導入された際に、保持対象物の外周を開口箇所以外の範囲
で囲むことによって保持対象物を保持可能に構成される。開口箇所が向けられる方向を開口方向として、第1接合面が部品実装面にはんだ付けされた場合と、第2接合面が部品実装面にはんだ付けされた場合とでは、開口方向が異なる方向となるように構成されている。
【0009】
このように構成される表面実装型クランプによれば、第1接合面が部品実装面にはんだ付けされた場合と、第2接合面が部品実装面にはんだ付けされた場合とでは、保持部の開口方向が異なる方向となる。したがって、例えば、保持部へ保持対象物を導入する作業を実施する上で、より好都合な開口方向となる接合面を、第1接合面及び第2接合面の中から選択し、表面実装型クランプを部品実装面に表面実装することができる。これにより、保持部へ保持対象物を導入する作業を実施する際の作業性を向上させることができる。
【0010】
また、上述の異なる開口方向それぞれに対応する別形状の表面実装型クランプをそれぞれ用意する場合に比べ、本開示の表面実装型クランプの方が汎用性は高くなる。したがって、別形状の2製品で対応する代わりに、単一形状の1製品での対応が可能となり、量産効果によって、製品の製造コストを低減することができる。
【0011】
なお、本開示の表面実装型クランプは、更に以下のような構成を備えていてもよい。
(A)開口方向と部品実装面のなす角度を開口角度として、第1接合面が部品実装面にはんだ付けされた場合には、開口角度が50度以上90度以下となり、第2接合面が部品実装面にはんだ付けされた場合には、開口角度が0度以上45度以下となるように構成されていてもよい。
【0012】
(B)第1接合面が下方向に向けられ、第1吸着面が上方向に向けられ、第2接合面が斜め左下方向に向けられ、第2吸着面が斜め右上方向に向けられて、保持部が前後方向に延びる保持対象物を保持可能となる、第1の向きとされた状態において、第1水平部と、第1傾斜部と、第2傾斜部と、第3傾斜部と、第2水平部と、を備えてもよい。第1水平部は、左右方向に延在する部分であり、当該部分を構成する金属板の一方の面が下方向に向けられて第1接合面とされている。第1傾斜部は、第1曲げ部を介して第1水平部の左端に連結されて、第1曲げ部から斜め右上方向へと延びる部分である。第2傾斜部は、第2曲げ部を介して第1水平部の右端に連結されて、第2曲げ部から斜め左上方向へと延びる部分であり、当該部分を構成する金属板の一方の面が斜め右上方向に向けられて第2吸着面とされている。第3傾斜部は、第3曲げ部を介して第1傾斜部の上端に連結されて、第3曲げ部から斜め右下方向へと延びる部分であり、当該部分を構成する金属板の一方の面が斜め左下方向に向けられて第2接合面とされている。第2水平部は、第4曲げ部を介して第2傾斜部の上端に連結されて、第4曲げ部から右方向へと延びる部分であり、当該部分を構成する金属板の一方の面が上方向に向けられて第1吸着面とされている。第3曲げ部と第4曲げ部との間には、開口箇所となる間隙が形成されていて、第1水平部、第1傾斜部及び第2傾斜部によって、保持部が構成されていてもよい。
【0013】
(C)第2接合面が下方向に向けられ、第2吸着面が上方向に向けられ、第1接合面が斜め右下方向に向けられ、第1吸着面が斜め右上方向に向けられて、保持部が前後方向に延びる保持対象物を保持可能となる、第2の向きとされた状態において、第1吸着面及び第3曲げ部は、上方から見ると、第3曲げ部の方が第1吸着面よりも左方向へ突出するように構成されていてもよい。
【0014】
(D)第1の向きとされた状態において、第1傾斜部には、斜め右下方向へ突出する第1突出部が設けられてもよい。第2傾斜部には、斜め左下方向へ突出する第2突出部が設けられてもよい。第1突出部及び第2突出部によって、保持部によって保持された保持対象物が開口箇所に近づく方向へ変位するのを抑制するように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aは第1接合面が下方向に向けられた状態にある表面実装型コンタクトを右上前方から見た場合の斜視図である。図1Bは第1接合面が下方向に向けられた状態にある表面実装型コンタクトを右下後方から見た場合の斜視図である。図1Cは第2接合面が下方向に向けられた状態にある表面実装型コンタクトを右上前方から見た場合の斜視図である。図1Dは、第2接合面が下方向に向けられた状態にある表面実装型コンタクトを左上後方から見た場合の斜視図である。
図2図2Aは第1接合面が部品実装面にはんだ付けされた表面実装型コンタクトの使用状態を示す説明図である。図2Bは第2接合面が部品実装面にはんだ付けされた表面実装型コンタクトの使用状態を示す説明図である。
図3図3Aは表面実装型コンタクトの平面図である。図3Bは表面実装型コンタクトの左側面図である。図3Cは表面実装型コンタクトの正面図である。図3Dは表面実装型コンタクトの右側面図である。図3Eは表面実装型コンタクトの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、上述の表面実装型クランプについて、例示的な実施形態を挙げて説明する。
[表面実装型クランプの構成]
図1A図1B図1C及び図1Dに示す表面実装型クランプ1は、第1接合面3A、第1吸着面5A、第2接合面3B、第2吸着面5B及び保持部7を備える。第1接合面3A、第1吸着面5A、第2接合面3B、第2吸着面5B及び保持部7は、単一の金属板(本実施形態においては、ばね用りん青銅の薄板、厚さ0.15±0.03mm。)によって一体成形されている。表面実装型クランプ1は、図2A及び図2Bに例示するように、電子回路基板51の部品実装面53へ表面実装されて、その実装箇所において線状又は柱状の保持対象物55を保持可能に構成されている。
【0017】
第1接合面3A及び第2接合面3Bは、それぞれが部品実装面53へはんだ付け可能に構成される。第1吸着面5A及び第2吸着面5Bは、それぞれが自動実装機の吸引ノズルで吸着可能に構成される。第1吸着面5Aは第1接合面3Aとは反対方向に向けられる。第2吸着面5Bは第2接合面3Bとは反対方向に向けられる。表面実装型クランプ1が部品実装面53へ表面実装される際には、第1接合面3A及び第2接合面3Bのうちのいずれか一方が部品実装面53へはんだ付けされる。
【0018】
より詳しくは、表面実装型クランプ1は、図1A及び図1Bに示すように、第1の向きにして使用することができる。表面実装型クランプ1が第1の向きにされた場合、第1接合面3Aは下方向に向けられ、第1吸着面5Aは上方向に向けられる。そのため、自動実装機の吸引ノズルで第1吸着面5Aを吸着して、図2Aに示すように、水平に配置された電子回路基板51の部品実装面53の上に表面実装型クランプ1を配置し、第1接合面3Aを部品実装面53にはんだ付けすることができる。
【0019】
本実施形態において、表面実装型クランプ1が第1の向きにされた場合は、左右方向寸法が約2.5mm、前後方向寸法が約1.8mm、上下方向寸法が約1.65mmとなる。第1接合面3Aと第1吸着面5Aとの間の上下方向寸法は、約1.65mmである。表面実装型クランプ1が第1の向きにされた場合、第2接合面3Bは斜め左下方向に向けられ、第2吸着面5Bは斜め右上方向に向けられる。
【0020】
また、表面実装型クランプ1は、図1C及び図1Dに示すように、第2の向きにして使用することができる。表面実装型クランプ1が第2の向きにされた場合、第2接合面3Bは下方向に向けられ、第2吸着面5Bは上方向に向けられる。そのため、自動実装機の吸引ノズルで第2吸着面5Bを吸着して、図2Bに示すように、水平に配置された電子回路
基板51の部品実装面53の上に表面実装型クランプ1を配置し、第2接合面3Bを部品実装面53にはんだ付けすることできる。
【0021】
本実施形態において、表面実装型クランプ1が第2の向きにされた場合は、左右方向寸法が約1.77mm、前後方向寸法が約1.8mm、上下方向寸法が約2.51mmとなる。第2接合面3Bと第2吸着面5Bとの間の上下方向寸法は、約1.79mmである。表面実装型クランプ1が第2の向きにされた場合、第1接合面3Aは斜め右下方向に向けられ、第1吸着面5Aは斜め右上方向に向けられる。
【0022】
保持部7は、図2A及び図2Bに示すように、線状又は柱状の保持対象物55を内側へと導入可能な開口箇所9を有する。保持対象物55が開口箇所9から保持部7の内側へと導入された際、保持部7は、保持対象物55の外周を開口箇所9以外の範囲で囲むことによって保持対象物55を保持可能に構成されている。表面実装型クランプ1が第1の向き及び第2の向きのいずれの向きにされた場合でも、保持部7は前後方向に延びる線状又は柱状の保持対象物55を保持することができる。本実施形態の場合、直径1.15±0.05mmのケーブルが保持対象物55である。ただし、類似形状の保持対象物55であれば、ケーブル以外の線状体や柱状体を保持することもできる。
【0023】
本実施形態の場合、表面実装型クランプ1は、図3A図3B図3C図3D及び図3Eに示すように、第1水平部11A、第1傾斜部13A、第2傾斜部13B、第3傾斜部13C及び第2水平部11Bを備える。なお、表面実装型クランプ1の背面図は、図3Cに示す正面図と対称に表れる。
【0024】
第1水平部11Aは、表面実装型クランプ1が第1の向きにされた状態において、左右方向に延在する部分である。第1水平部11Aを構成する金属板の一方の面が下方向に向けられて第1接合面3Aとされている。第1傾斜部13Aは、第1曲げ部15Aを介して第1水平部11Aの左端に連結されて、第1曲げ部15Aから斜め右上方向へと延びる部分である。第2傾斜部13Bは、第2曲げ部15Bを介して第1水平部11Aの右端に連結されて、第2曲げ部15Bから斜め左上方向へと延びる部分である。第2傾斜部13Bを構成する金属板の一方の面が斜め右上方向に向けられて第2吸着面5Bとされている。
【0025】
第3傾斜部13Cは、第3曲げ部15Cを介して第1傾斜部13Aの上端に連結されて、第3曲げ部15Cから斜め右下方向へと延びる部分である。第3傾斜部13Cを構成する金属板の一方の面が斜め左下方向に向けられて第2接合面3Bとされている。第2水平部11Bは、第4曲げ部15Dを介して第2傾斜部13Bの上端に連結されて、第4曲げ部15Dから右方向へと延びる部分である。第2水平部11Bを構成する金属板の一方の面が上方向に向けられて第1吸着面5Aとされている。
【0026】
第3曲げ部15Cと第4曲げ部15Dとの間には、開口箇所9となる間隙が形成されていて、第1水平部11A、第1傾斜部13A及び第2傾斜部13Bによって、保持部7が構成されている。保持部7の開口箇所9が向けられる方向(以下、開口方向と称する。)は、第1接合面3Aが部品実装面53にはんだ付けされた場合と、第2接合面3Bが部品実装面53にはんだ付けされた場合とでは、異なる方向となるように構成されている。
【0027】
より詳しくは、開口方向と部品実装面53のなす角度(以下、開口角度と称する。)を見ると、本実施形態の場合、図2Aに示すように、第1接合面3Aが部品実装面53にはんだ付けされた場合には、開口方向D1と部品実装面53のなす開口角度が90度となる。したがって、保持対象物55を保持部7へ導入する際には、保持対象物55を保持部7の真上から下方向へと移動させることにより、保持対象物55を保持部7へ導入することができる。
【0028】
一方、図2Bに示すように、第2接合面3Bが部品実装面53にはんだ付けされた場合には、開口方向D2と部品実装面53のなす開口角度が約5度となる。したがって、保持対象物55を保持部7へ導入する際には、保持対象物55を保持部7のほぼ真横(図2Bでは保持部7の左方。)から横方向(図2Bでは右方向。)へと移動させることにより、保持対象物55を保持部7へ導入することができる。
【0029】
なお、ここでいう開口方向は、開口箇所9において最小開口幅となる箇所の幅方向(図2A及び図2Bにおいて両端矢印付き二点鎖線で示す方向。)に直交する方向である。本実施形態の場合、開口箇所9において最小開口幅となる箇所は、第1傾斜部13A及び第2傾斜部13Bの上端間である。
【0030】
第2接合面3Bが部品実装面53にはんだ付けされた場合に、第1吸着面5A及び第3曲げ部15Cは、図2Bに示すように、第3曲げ部15Cの方が第1吸着面5Aよりも左方向へ突出するように構成されている。すなわち、左右方向について、第1吸着面5Aの左端は図2Bに示す位置P1にあり、第3曲げ部15Cの左端は図2Bに示す位置P2にあり、第3曲げ部15Cの方が第1吸着面5Aよりも左方向へ突出する位置にある。
【0031】
そのため、保持対象物55を第1吸着面5Aに沿ってほぼ下方へと移動させれば、保持対象物55が保持部7のほぼ真横に到達したところで、左方へ突出する第3曲げ部15Cに保持対象物55が接触する。これにより、保持対象物55は、第3曲げ部15Cによって下方への移動を抑制されるので、その位置で保持対象物55を横方向(図2Bでは右方向。)へと移動させて、保持対象物55を保持部7へ導入することができる。
【0032】
したがって、第3曲げ部15C相当の箇所に、第1吸着面5Aよりも左方へと突出する部分が存在しない場合とは異なり、下方へと移動させた保持対象物55が部品実装面53に到達するのを抑制できる。よって、保持対象物55を開口箇所9のほぼ真横となる位置に容易に位置決めすることができ、保持対象物55を保持部7へ容易に導入することができる。
【0033】
第1傾斜部13Aには、第1突出部17Aが設けられている。第1突出部17Aは、表面実装型クランプ1が第1の向きとされた状態において、斜め右下方向へ突出している。第2傾斜部13Bには、第2突出部17Bが設けられている。第2突出部17Bは、表面実装型クランプ1が第1の向きとされた状態において、斜め左下方向へ突出している。本実施形態において、第1突出部17A及び第2突出部17Bの突出方向への高さ方向寸法は、約0.12mmとされている。これら第1突出部17A及び第2突出部17Bは、保持部7によって保持された保持対象物55が開口箇所9に近づく方向へ変位するのを抑制する。したがって、第1突出部17A相当物及び第2突出部17B相当物が存在しない場合に比べ、保持対象物55をしっかりと保持することができる。
【0034】
[効果]
このように構成される表面実装型クランプ1によれば、第1接合面3Aが部品実装面53にはんだ付けされた場合と、第2接合面3Bが部品実装面53にはんだ付けされた場合とでは、保持部7の開口方向が異なる方向となる。したがって、例えば、保持部7へ保持対象物55を導入する作業を実施する上で、より好都合な開口方向となる接合面を、第1接合面3A及び第2接合面3Bの中から選択し、表面実装型クランプ1を部品実装面53に表面実装することができる。これにより、保持部7へ保持対象物55を導入する作業を実施する際の作業性を向上させることができる。
【0035】
また、上述の異なる開口方向それぞれに対応する別形状の表面実装型クランプ1をそれ
ぞれ用意する場合に比べ、表面実装型クランプ1の汎用性が高くなる。したがって、別形状の2製品で対応する代わりに、単一形状の1製品での対応が可能となり、量産効果によって、製品の製造コストを低減することができる。
【0036】
[他の実施形態]
以上、表面実装型クランプ1について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0037】
例えば、上記実施形態では、第1接合面3Aが部品実装面53にはんだ付けされた場合には、開口角度が90度となるように構成されているが、この開口角度に限らない。第1接合面3Aが部品実装面53にはんだ付けされた場合に、開口方向を概ね上方向に向けるのであれば、例えば、開口角度が50度以上90度以下となるように構成されていればよい。
【0038】
また、上記実施形態では、第2接合面3Bが部品実装面53にはんだ付けされた場合には、開口角度が約5度となるように構成されているが、この開口角度に限らない。第2接合面3Bが部品実装面53にはんだ付けされた場合に、開口方向を概ね横方向に向けるのであれば、例えば、開口角度が0度以上45度以下となるように構成されていればよい。
【0039】
また、上記実施形態では、第1突出部17A及び第2突出部17Bが設けられているが、第1突出部17A及び第2突出部17Bを設けるか否かは任意である。また、第1突出部17A及び第2突出部17Bは、いずれか一方が設けられていてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、第1接合面3Aと第1吸着面5Aが平行に構成されているが、これらの面の平行度は、表面実装型クランプ1を自動実装機で表面実装する際に問題とならない程度の平行度が確保されていればよい。また、上記実施形態では、第2接合面3Bと第2吸着面5Bが平行に構成されているが、これらの面の平行度は、表面実装型クランプ1を自動実装機で表面実装する際に問題とならない程度の平行度が確保されていればよい。すなわち、これら2組の面は、幾何学的な意味で完全に平行である必要はない。換言すれば、本開示でいう反対方向は、幾何学的な意味で厳密に180度反対となる方向でなくてもよく、上述のように表面実装時に問題とならない程度の平行度が確保されるような方向であればよい。
【符号の説明】
【0041】
1…表面実装型クランプ、3A…第1接合面、3B…第2接合面、5A…第1吸着面、5B…第2吸着面、7…保持部、9…開口箇所、11A…第1水平部、11B…第2水平部、13A…第1傾斜部、13B…第2傾斜部、13C…第3傾斜部、15A…第1曲げ部、15B…第2曲げ部、15C…第3曲げ部、15D…第4曲げ部、17A…第1突出部、17B…第2突出部。
図1
図2
図3