(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ラクトコッカス属細菌由来のナノ小胞及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 35/744 20150101AFI20240213BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240213BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240213BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20240213BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240213BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
A61K35/744
A23L33/135
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P29/00 101
A61K9/72
A61K8/9728
A61Q19/00
C12N1/20 E
(21)【出願番号】P 2021208104
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2020542572の分割
【原出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0015382
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0012758
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヘ-シム
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/144139(WO,A2)
【文献】特表2013-507354(JP,A)
【文献】Kim, M. H. et al.,A Metagenomic Analysis Provides a Culture-Independent Pathogen Detection for Atopic Dermatitis,Allergy, Asthma & Immunology Research,2017年09月,Vol.9, No.5,p.453-461,doi:10.4168/aair.2017.9.5.453
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A23L 33/00-33/29
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス
・ラクティス(Lactococcus
lactis)由来の小胞を有効成分として含む
、炎症性疾患
の予防又は治療用薬学的組成物
であって、
前記炎症性疾患が、インターロイキン-6(IL-6)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)により媒介される、薬学的組成物。
【請求項2】
前記小胞は、平均直径が10~200nmである
、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記小胞は、ラクトコッカス
・ラクティス(Lactococcus
lactis)から自然的又は人工的に分泌される
、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
ラクトコッカス
・ラクティス(Lactococcus
lactis)由来の小胞を有効成分として含む
、炎症性疾患
の予防又は改善用食品組成物
であって、
前記炎症性疾患が、インターロイキン-6(IL-6)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)により媒介される、食品組成物。
【請求項5】
前記小胞は、平均直径が10~200nmである
、請求項
4に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記小胞は、ラクトコッカス
・ラクティス(Lactococcus
lactis)から自然的又は人工的に分泌される
、請求項
4に記載の食品組成物。
【請求項7】
ラクトコッカス
・ラクティス(Lactococcus
lactis)由来の小胞を有効成分として含む
、炎症性疾患
の予防又は治療用吸入剤組成物
であって、
前記炎症性疾患が、インターロイキン-6(IL-6)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)により媒介される、吸入剤組成物。
【請求項8】
ラクトコッカス
・ラクティス(Lactococcus
lactis)由来の小胞を有効成分として含む、炎症性疾患の予防又は改善用化粧料組成物
であって、
前記炎症性疾患が、インターロイキン-6(IL-6)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)により媒介される、化粧料組成物。
【請求項9】
ラクトコッカス
・ラクティス(Lactococcus
lactis)由来の小胞の
、炎症性疾患
の予防又は治療用薬剤の製造のための使用
であって、
前記炎症性疾患が、インターロイキン-6(IL-6)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)により媒介される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトコッカス属細菌由来のナノ小胞及びその用途に関し、より具体的に、ラクトコッカス属細菌に由来するナノ小胞を用いた代謝疾患、心血管疾患、腎不全、及び神経精神疾患の診断方法、及び前記疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀に入ってから過去伝染病と認識された急性感染性疾患の重要性が低下する一方で、ヒトとマイクロバイオームとの不調和によって発生する免疫機能の異常を伴った慢性疾患が生活の質とヒトの寿命を決定する主な疾患となり、疾病パターンが変わった。特に、食習慣の西欧化による糖尿病などの代謝疾患、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患、パーキンソン病、認知症、うつ病などの神経精神疾患、腎不全、及び炎症性疾患などが国民保健に大きな問題になっている。
【0003】
炎症(Inflammation)は、細胞及び組織の損傷や感染に対する局部的又は全身的な防御機構であって、主に免疫系を成す体液性メディエーター(humoral mediator)が直接反応することや、局部的又は全身的作動システム(effector system)を刺激することによって起こる連鎖的な生体反応により誘発される。主な炎症性疾患としては、胃炎、炎症性腸炎などの消化器疾患、歯周炎などの口腔疾患、喘息、慢性閉鎖性肺疾患(COPD)、鼻炎などの呼吸器疾患、アトピー性皮膚炎、脱毛、乾癬などの皮膚疾患、退行性関節炎、関節リウマチなどのような関節炎;及び肥満、糖尿病、肝硬変などの代謝疾患が含まれる。
【0004】
慢性炎症の発生には、外部原因因子に対する免疫機能に異常を伴っているが、細菌に由来する原因因子に対する免疫反応は、IL-17サイトカインを分泌するTh17免疫反応が重要であり、細菌性原因因子に曝露時にTh17免疫反応による好中球性炎症が発生する。炎症が発生する過程でTNF-alphaのような炎症性メディエーターが重要な役割を担当する。また、細菌性原因因子により分泌されるIL-6は、Th17細胞への分化だけでなく、心血管疾患、脳神経精神疾患の病因にも関与することが最近報告されている。
【0005】
人体に共生する微生物は100兆に至り、ヒト細胞より10倍多く、微生物の遺伝子数は、ヒトの遺伝子数の100倍を超えることが知られている。微生物叢(microbiotaあるいはmicrobiome)は、与えられた生息域に存在する真正細菌(bacteria)、古細菌(archaea)、真核生物(eukarya)を含む微生物集団(microbial community)を言い、腸内微生物叢は、ヒトの生理現象に重要な役割をし、人体細胞と相互作用を通じてヒトの健康と疾患に大きい影響を及ぼすと知られている。
【0006】
人体に共生する真正細菌及び古細菌は、他の細胞への遺伝子、タンパク質などの情報を交換するために、ナノメートルサイズの小胞(vesicle)を分泌する。粘膜は、200ナノメートル(nm)サイズ以上の粒子は通過できない物理的な防御膜を形成して、粘膜に共生する細菌である場合には、粘膜を通過しないが、細菌由来の小胞は、サイズが100ナノメートルサイズ以下であるので、比較的自由に粘膜を通じて上皮細胞を通過した後に人体に吸収される。人体に吸収される病原性細菌由来の小胞は、最近、糖尿病、肥満などの代謝疾患の病因に重要な役割を担っていることが明らかになった。
【0007】
一方、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌は、乳酸を分泌するグラム陽性球菌であって、このうち、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)菌は、チーズのような乳製品、発酵野菜、酒類などの発酵に重要な菌であることが知られている。ラクトコッカス・ラクティス菌は、ミルク及び植物を材料として発酵した物質から分離することができる。しかしながら、まだラクトコッカス属細菌に由来する小胞を用いた診断及び治療技術に対する報告は全くないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、前述のような従来の問題点を解決するために、鋭意研究した結果、メタゲノム分析を通して正常ヒトに比べて糖尿病などの代謝疾患、心筋梗塞、心房細動、脳卒中などの心血管疾患、腎不全、及びパーキンソン病、うつ病などの神経精神疾患臨床患者由来のサンプルでラクトコッカス属細菌由来の小胞の含有量が顕著に減少していることを確認した。また、ラクトコッカス属細菌由来の小胞を体外で分離した後、治療効能を評価した結果、抗炎症効果を確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0009】
これより、本発明は、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、又はうつ病の診断のための情報提供方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞を有効成分として含む糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防、治療、又は改善用組成物を提供することを他の目的とする。
【0011】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、下記のステップを含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、又はうつ病の診断のための情報提供方法を提供する:
(a)正常ヒト及び被検者のサンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出するステップ;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて作製したプライマーペアを用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行った後、それぞれのPCR産物を収得するステップ;及び
(c)前記PCR産物の定量分析を通して正常ヒトに比べてラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞の含有量が低い場合、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、又はうつ病と判定するステップ。
【0013】
また、本発明は、下記のステップを含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、又はうつ病の診断方法を提供する:
(a)正常ヒト及び被検者のサンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出するステップ;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて作製したプライマーペアを用いてPCRを行った後、それぞれのPCR産物を収得するステップ;及び
(c)前記PCR産物の定量分析を通して正常ヒトに比べてラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞の含有量が低い場合、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、又はうつ病と判定するステップ。
【0014】
本発明のさらに他の具現例において、前記(a)ステップでのサンプルは、血液、尿、又は唾液でありうる。
【0015】
本発明のさらに他の具現例において、前記(b)ステップでのプライマーペアは、配列番号1及び配列番号2のプライマーでありうる。
【0016】
また、本発明は、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞を有効成分として含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞を有効成分として含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞を有効成分として含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は治療用吸入剤組成物を提供する。
【0019】
本発明の一具現例において、前記炎症性疾患は、アトピー性皮膚炎、にきび、乾癬、副鼻腔炎、鼻炎、結膜炎、喘息、皮膚炎、炎症性コラーゲン血管疾患、糸球体腎炎、脳炎、炎症性腸炎、慢性閉鎖性肺疾患、敗血症、敗血性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、ウイルス又はバクテリア感染による慢性炎症疾患、大腸炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、関節リウマチ、反応性関節炎、骨関節炎、強皮症、骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎、心内膜炎、心嚢炎、嚢胞性線維症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、らい病、梅毒、ライム病、ボレリア症(Borreliosis)、神経性ボレリア症、結核、サルコイドーシス、ループス、凍傷ループス、結核性ループス、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、黄斑変性、ブドウ膜炎、過敏性腸症候群、クローン病、シェーグレン症候群、線維筋痛症、慢性疲労症候群、慢性疲労免疫不全症候群、筋痛性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、及び多発性硬化症よりなる群から選ばれる1種以上でありうる。
【0020】
本発明の他の具現例において、前記炎症性疾患は、インターロイキン-6(Interleukin-6,IL-6)又は腫瘍壊死因子アルファ(Tumor necrosis factor-α、TNF-α)により媒介される疾患でありうる。
【0021】
また、本発明は、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞を有効成分として含む、炎症性疾患の予防又は改善用化粧料組成物を提供する。
【0022】
本発明の一具現例において、前記炎症性疾患は、アトピー性皮膚炎、にきび、及び乾癬よりなる群から選ばれる1種以上でありうる。
【0023】
また、本発明は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞を有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与するステップを含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は治療用途を提供する。
【0025】
本発明の一具現例において、前記小胞は、ラクトコッカス・ラクティス(L.lactis)に由来するものでありうる。
【0026】
本発明の他の具現例において、前記小胞は、平均直径が10~200nmのものでありうる。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記小胞は、ラクトコッカス属細菌から自然的又は人工的に分泌されるものでありうる。
本発明の実施形態は、例えば以下のものが挙げられる。
[1]
ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞を有効成分として含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
[2]
前記炎症性疾患は、アトピー性皮膚炎、にきび、乾癬、副鼻腔炎、鼻炎、結膜炎、喘息、皮膚炎、炎症性コラーゲン血管疾患、糸球体腎炎、脳炎、炎症性腸炎、慢性閉鎖性肺疾患、敗血症、敗血性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、ウイルス又はバクテリア感染による慢性炎症疾患、大腸炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、関節リウマチ、反応性関節炎、骨関節炎、強皮症、骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎、心内膜炎、心嚢炎、嚢胞性線維症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、らい病、梅毒、ライム病、ボレリア症(Borreliosis)、神経性ボレリア症、結核、サルコイドーシス、ループス、凍傷ループス、結核性ループス、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、黄斑変性、ブドウ膜炎、過敏性腸症候群、クローン病、シェーグレン症候群、線維筋痛症、慢性疲労症候群、慢性疲労免疫不全症候群、筋痛性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、及び多発性硬化症よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、[1]に記載の薬学的組成物。
[3]
前記炎症性疾患は、インターロイキン-6(IL-6)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)により媒介される疾患であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の薬学的組成物。
[4]
前記小胞は、平均直径が10~200nmであることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1に記載の薬学的組成物。
[5]
前記小胞は、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌から自然的又は人工的に分泌されることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1に記載の薬学的組成物。
[6]
前記ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)から分泌されることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1に記載の薬学的組成物。
[7]
ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞を有効成分として含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は改善用食品組成物。
[8]
前記炎症性疾患は、アトピー皮膚炎、にきび、乾癬、副鼻腔炎、鼻炎、結膜炎、喘息、皮膚炎、炎症性コラーゲン血管疾患、糸球体腎炎、脳炎、炎症性腸炎、慢性閉鎖性肺疾患、敗血症、敗血性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、ウイルス又はバクテリア感染による慢性炎症疾患、大腸炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、関節リウマチ、反応性関節炎、骨関節炎、強皮症、骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎、心内膜炎、心嚢炎、嚢胞性線維症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、らい病、梅毒、ライム病、ボレリア症(Borreliosis)、神経性ボレリア症、結核、サルコイドーシス、ループス、凍傷ループス、結核性ループス、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、黄斑変性、ブドウ膜炎、過敏性腸症候群、クローン病、シェーグレン症候群、線維筋痛症、慢性疲労症候群、慢性疲労免疫不全症候群、筋痛性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、及び多発性硬化症よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、[7]に記載の食品組成物。
[9]
前記炎症性疾患は、インターロイキン-6(IL-6)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)により媒介される疾患であることを特徴とする、[7]又は[8]に記載の食品組成物。
[10]
前記小胞は、平均直径が10~200nmであることを特徴とする、[7]~[9]のいずれか1に記載の食品組成物。
[11]
前記小胞は、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌から自然的又は人工的に分泌されることを特徴とする、[7]~[10]のいずれか1に記載の食品組成物。
[12]
前記ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)から分泌されることを特徴とする、[7]~[11]のいずれか1に記載の食品組成物。
[13]
ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞を有効成分として含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は治療用吸入剤組成物。
[14]
ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞を有効成分として含む、炎症性疾患の予防又は改善用化粧料組成物。
[15]
前記炎症性疾患は、アトピー性皮膚炎、にきび、及び乾癬よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、[14]に記載の化粧料組成物。
[16]
ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞の、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は治療用薬剤の製造のための使用。
【発明の効果】
【0028】
本発明者らは、腸内細菌である場合には、体内に吸収されないが、細菌由来の小胞である場合には、体内に吸収されて、全身的に分布し、腎臓、肝臓、肺を通じて体外に排泄されることを確認し、患者の血液、尿又は唾液などに存在する細菌由来の小胞メタゲノム分析を通して糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、及びうつ病患者のサンプルに存在するラクトコッカス属細菌由来の小胞が正常ヒトに比べて有意に減少していることを確認した。また、ラクトコッカス属細菌の1種であるラクトコッカス・ラクティスを体外で培養して小胞を分離した後、体外で炎症細胞に投与したとき、病原性小胞によるIL-6及びTNF-αなどの炎症メディエーターの分泌を有意に抑制したことを確認したところ、本発明によるラクトコッカス属細菌由来の小胞は、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、又はうつ病の診断方法、及び前記疾患又は炎症性疾患に対する食品又は薬物などの予防用あるいは治療用組成物に有用であると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1aは、マウスに細菌と細菌由来の小胞(EV)を口腔で投与した後、時間ごとに細菌と小胞の分布の様子を撮影した写真であり、
図1bは、口腔で投与した後12時間目に、血液、腎臓、肝臓、及び様々な臓器を摘出して、細菌と小胞の体内分布の様子を評価した結果である。
【
図2】
図2は、糖尿病患者及び正常ヒトの唾液に存在する細菌及び細菌由来の小胞メタゲノム分析を実施した後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を比較した結果である。
【
図3】
図3は、糖尿病患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来の小胞メタゲノム分析を実施した後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を比較した結果である。
【
図4】
図4は、心筋梗塞患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来の小胞メタゲノム分析を実施した後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を比較した結果である。
【
図5】
図5は、心房細動患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来の小胞メタゲノム分析を実施した後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を比較した結果である。
【
図6】
図6は、脳卒中患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来の小胞メタゲノム分析を実施した後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を比較した結果である。
【
図7】
図7は、腎不全患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来の小胞メタゲノム分析を実施した後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を比較した結果である。
【
図8】
図8は、パーキンソン病患者及び正常ヒト尿に存在する細菌由来の小胞メタゲノム分析を実施した後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を比較した結果である。
【
図9】
図9は、うつ病患者及び正常ヒトの尿に存在する細菌由来の小胞メタゲノム分析を実施した後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を比較した結果である。
【
図10】
図10は、ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞の細胞死滅効果を評価するために、ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞をマクロファージ(Raw264.7 cell)に処理して細胞死滅を評価した結果である。
【
図11】
図11は、ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞の炎症誘発効果を評価するために、ラクトコッカス菌由来の小胞をマクロファージ(Raw264.7 cell)に処理して炎症メディエーターであるIL-6及びTNF-αの分泌程度を病原性小胞である大腸菌小胞(E.coli EV)と比較した結果である。
【
図12】
図12は、ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞の抗炎症効果を評価するために、病原性小胞である大腸菌小胞(E.coli EV)の処理前にラクトコッカス菌由来の小胞を前処理して、大腸菌小胞による炎症メディエーターであるIL-6及びTNF-αの分泌に及ぼす影響を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞及びその用途に関する。
【0031】
本発明者らは、メタゲノム分析を通して正常ヒトに比べて糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、及びうつ病患者由来のサンプルでラクトコッカス属細菌由来の小胞の含有量が顕著に減少していることを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0032】
本発明では、ラクトコッカス属細菌由来の小胞が、正常ヒトに比べて糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、及びうつ病患者で有意に減少していることを確認し、また、ラクトコッカス属細菌の一種であるラクトコッカス・ラクティス(L.lactis)菌株から小胞を分離し、その特性を確認することによって、前記小胞を前記疾患又は炎症性疾患の予防又は治療用組成物として用いることができることを確認した。
【0033】
これより、本発明は、下記のステップを含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、又はうつ病の診断のための情報提供方法を提供する:
(a)正常ヒト及び被検者のサンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出するステップ;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて製作したプライマーペアを用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行った後、それぞれのPCR産物を収得するステップ;及び
(c)前記PCR産物の定量分析を通して正常ヒトに比べてラクトコッカス(Lactococcus)属細菌由来の小胞の含有量が低い場合、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、又はうつ病と判定するステップ。
【0034】
本発明において使用される用語「診断」とは、広い意味では、患者の病の実態をすべての面にわたって判断することを意味する。判断の内容は、病名、病因、病型、軽重、病状の詳細な様子、合併症の有無、及び予後などである。本発明において診断は、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、及びうつ病の発病の有無及び疾患のレベルなどを判断することである。
【0035】
本発明において使用される用語「代謝疾患(metabolic disease)」は、哺乳動物の体内で代謝障害により様々な臓器に合併症が発生する疾患を意味し、例えば、高脂血症、糖尿などの代謝障害、及びその合併症などを含み、本発明において、代謝疾患は、好ましくは糖尿病を含むが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明において使用される用語「心血管疾患(cardiovascular disease)」は、哺乳動物の心血管系に疾患が発生することを意味し、例えば、心筋梗塞、心筋症、狭心症、不整脈などの心臓疾患;血管炎;認知症、脳卒中などの脳血管疾患などを含み、本発明において、心血管疾患は、好ましくは心筋梗塞、心房細動、又は脳卒中を含むが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明において使用される用語「神経精神疾患(neuropsychiatric disease)」は、哺乳動物の神経系統及び脳に発生する疾患を意味し、例えば、パーキンソン病、認知症などの脳疾患;うつ病、強迫障害、統合失調症などの精神疾患などを含み、本発明において、神経精神疾患は、好ましくはパーキンソン病、又はうつ病を含むが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明において使用される用語「炎症性疾患(inflammatory disease)」は、哺乳動物体内の炎症反応により誘発される疾患を意味し、本発明において前記炎症性疾患は、アトピー性皮膚炎、にきび、乾癬、副鼻腔炎、鼻炎、結膜炎、喘息、皮膚炎、炎症性コラーゲン血管疾患、糸球体腎炎、脳炎、炎症性腸炎、慢性閉鎖性肺疾患、敗血症、敗血性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、ウイルス又はバクテリア感染による慢性炎症疾患、大腸炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、関節リウマチ、反応性関節炎、骨関節炎、強皮症、骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎、心内膜炎、心嚢炎、嚢胞性線維症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、らい病、梅毒、ライム病、ボレリア症(Borreliosis)、神経性ボレリア症、結核、サルコイドーシス、ループス、凍傷ループス、結核性ループス、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、黄斑変性、ブドウ膜炎、過敏性腸症候群、クローン病、シェーグレン症候群、線維筋痛症、慢性疲労症候群、慢性疲労免疫不全症候群、筋痛性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、及び多発性硬化症よりなる群から選ばれる1種以上でありうるが、これに制限されない。
【0039】
本発明において使用される用語「ナノ小胞(Nanovesicle)」あるいは「小胞(Vesicle)」とは、多様な細菌から分泌されるナノサイズの膜からなる構造物を意味する。ラクトコッカスのようなグラム陽性菌由来の小胞は、タンパク質と核酸の他にも、細菌の細胞壁の構成成分であるペプチドグリカンとリポタイコ酸、及び小胞内に様々な低分子化合物を有している。本発明において、ナノ小胞あるいは小胞は、ラクトコッカス属細菌から自然的に分泌されるか、又は人工的に生産するものであって、球形の形態であり、10~200nmの平均直径を有している。
【0040】
前記小胞は、ラクトコッカス属細菌を含む培養液を遠心分離、超高速遠心分離、高圧処理、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍・解凍、電気穿孔、機械的分解、化学物質処理、フィルタによる濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動、及びキャピラリー電気泳動からなる群より選ばれる1種以上の方法を用いて分離することができる。また、不純物の除去のための洗浄、収得された小胞の濃縮などの過程をさらに含むことができる。
【0041】
本発明において使用される用語「メタゲノム」とは、「群遺伝子」とも言い、土壌、動物の腸など孤立した地域内のすべてのウイルス、細菌、カビなどを含む遺伝子の総和を意味するものであって、主に培養にならない微生物を分析するために、シーケンサーを使用して一度に多くの微生物を同定することを説明する遺伝子の概念に使用される。特に、メタゲノムは、1種のゲノム、遺伝子を言うものではなく、一つの環境単位のすべての種の遺伝子であって、一種の混合遺伝子を言う。これは、オミックス的に生物学が発展する過程で1種を定義するとき、機能的に既存の1種だけでなく、多様な種が互いに相互作用して完全な種を作るという観点から出た用語である。技術的には、高速シーケンス法を用いて、種に関係なく、すべてのDNA、RNAを分析して、一つの環境内でのすべての種を同定し、相互作用、代謝作用を解明する技法の対象である。
【0042】
本発明において、前記(a)ステップでのサンプルは、血液、尿、又は唾液でありうるが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明において、前記(b)ステップでのプライマーペアは、配列番号1及び配列番号2のプライマーでありうる。
【0044】
本発明の他の様態として、本発明は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は治療用組成物を提供する。本発明において、前記組成物は、薬学的組成物、経口用組成物、口腔噴霧剤、又は吸入剤組成物を含むことができる。
【0045】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、及び炎症性疾患からなる群より選ばれる1種以上の疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0046】
本発明において、前記炎症性疾患は、IL-6又はTNF-αにより媒介される疾患でありうるが、これに制限されない。
【0047】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、炎症性疾患の予防又は改善用化粧料組成物を提供する。
【0048】
本発明において、前記化粧料組成物は、アトピー性皮膚炎、にきび、及び乾癬よりなる群から選ばれる炎症性疾患を予防又は改善する用途でありうるが、これに制限されない。
【0049】
本発明において使用される用語「予防」とは、本発明による組成物の投与により糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、又は炎症性疾患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0050】
本発明において使用される用語「治療」とは、本発明による組成物の投与により糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、うつ病、又は炎症性疾患に対する症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0051】
本発明において使用される 用語「改善」とは、治療される状態と関連したパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。
【0052】
本発明の一実施例では、細菌及び細菌由来の小胞をマウスの経口で投与して細菌及び小胞の体内吸収、分布、及び排泄様子を評価して、細菌である場合には、腸粘膜を通じて吸収されないのに対し、小胞は、投与5分以内に吸収されて全身的に分布し、腎臓、肝臓などを通じて排泄されることを確認した(実施例1参照)。
【0053】
本発明の他の実施例では、糖尿病患者及び正常ヒトの唾液でメタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトの唾液に比べて、糖尿病患者の唾液でラクトコッカス属細菌及びラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(実施例3参照)。
【0054】
本発明の他の実施例では、糖尿病患者及び正常ヒトの血液でメタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトの血液に比べて、糖尿病患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(実施例4参照)。
【0055】
本発明の他の実施例では、心筋梗塞患者及び正常ヒトの血液でメタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトの血液に比べて、心筋梗塞患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(実施例5参照)。
【0056】
本発明の他の実施例では、心房細動患者及び正常ヒトの血液でメタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトの血液に比べて、心房細動患者の血液にラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(実施例6参照)。
【0057】
本発明の他の実施例では、脳卒中患者及び正常ヒトの血液でメタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトの血液に比べて、脳卒中患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(実施例7参照)。
【0058】
本発明の他の実施例では、腎不全患者及び正常ヒトの血液でメタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトの血液に比べて、腎不全患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(実施例8参照)。
【0059】
本発明の他の実施例では、パーキンソン病患者及び正常ヒトの尿でメタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトの尿に比べて、パーキンソン病患者の尿でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(実施例9参照)。
【0060】
本発明の他の実施例では、うつ病患者及び正常ヒトの尿でメタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトの尿に比べて、うつ病患者の尿でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(実施例10参照)。
【0061】
本発明の他の実施例では、ラクトコッカス属細菌に属するラクトコッカス・ラクティス菌株を培養し、これから分泌された小胞の炎症誘発効果を評価したが、多様な濃度のラクトコッカス・ラクティス由来の小胞をマクロファージに処理した後、代表的病原性小胞である大腸菌由来の小胞を処理して炎症メディエーターの分泌程度と比較した結果、大腸菌由来の小胞によるIL-6及びTNF-αの分泌と比較してラクトコッカス・ラクティス由来の小胞による分泌能が顕著に減少していた(実施例12参照)。
【0062】
本発明の他の実施例では、ラクトコッカス・ラクティス菌株由来の小胞の抗炎症効果を示すかを評価したが、多様な濃度のラクトコッカス・ラクティス由来の小胞をマクロファージに処理した後、炎症メディエーターの分泌を評価した結果、病原性小胞である大腸菌由来の小胞を処理して炎症メディエーターの分泌を評価した結果、大腸菌由来の小胞によるIL-6及びTNF-αの分泌をラクトコッカス・ラクティス由来の小胞が効率的に抑制することを確認した(実施例13参照)。
【0063】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。前記薬学的に許容可能な担体は、製剤時に通常用いられるものであって、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、シクロデキストリン、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソームなどを含むが、これに限定されず、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液など他の通常の添加剤をさらに含むことができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤などを付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒、又は錠剤に製剤化することができる。適合した薬学的に許される担体及び製剤化に関しては、レミントンの文献に開示されている方法を用いて各成分によって好適に製剤化することができる。本発明の薬学的組成物は、剤形に特別な制限はないが、注射剤、吸入剤、皮膚外用剤、又は経口摂取剤などに製剤化することができる。
【0064】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与したり非経口投与(例えば、静脈内、皮下、皮膚、鼻腔、気道に適用)することができ、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者により適宜選択され得る。
【0065】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量のレベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素によって決定され得る。本発明による組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次又は同時に投与され得、単一又は多重投与され得る。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定され得る。
【0066】
具体的に、本発明による薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重によって変わり得、一般的には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは0.01~100mgを毎日又は隔日投与したり1日に1~3回に分けて投与することができる。しかしながら、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減され得るので、前記投与量がいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0067】
本発明の食品組成物は、健康機能食品組成物を含む。本発明による食品組成物は、有効成分を食品にそのまま添加したり、他の食品又は食品成分と共に使用され得、通常の方法によって適切に使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的(予防又は改善用)によって適宜決定され得る。一般的に、食品又は飲料の製造時に、本発明の組成物は、原料に対して15重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で添加される。しかしながら、健康及び衛生を目的としたり又は健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下でありうる。
【0068】
本発明の食品組成物は、指示された割合で必須成分として前記有効成分を含有すること他に、他の成分には特別な制限がなく、通常の飲料のように様々な香味剤又は天然炭水化物などをさらなる成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えばレバウディオサイドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を好適に使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、当業者の選択によって適切に決定され得る。
【0069】
前記の他に本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。このような成分は、独立して、又は組み合わせて使用することができる。このような添加剤の比率も、当業者によって適宜選択され得る。
【0070】
本発明の吸入剤組成物では、有効成分を吸入剤にそのまま添加したり、他の成分と共に使用され得、通常の方法によって適宜使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的
(予防又は治療用)に応じて適宜決定され得る。
【0071】
本発明の化粧料組成物は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞だけでなく、化粧料組成物に通常用いられる成分を含むことができ、例えば抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料、及び香料のような通常の補助剤、そして担体を含むことができる。
【0072】
また、本発明の組成物は、ラクトコッカス属細菌由来の小胞以外に、ラクトコッカス属細菌由来の小胞と反応して皮膚保護効果を損傷させない限度で従来から使われてきた有機紫外線遮断剤を混合して使用することもできる。前記有機紫外線遮断剤としては、グリセリルPABA、ドロメトリゾールトリシロキサン、ドロメトリゾール、ジガロイルトリオレエート、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、DEA-メトキシシンナメート、ローソンとジヒドロキシアセトンの混合物、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、4-メチルベンジリデンカンファ、メンチルアントラニレート、ベンゾフェノン-3(オキシベンゾン)、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-8(ジオキシフェニルベンゾン)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、シノキサート、エチルジヒドロキシプロピルPABA、オクトクリレン、エチルヘキシルジメチルPABA、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリシレート、エチルヘキシルトリアゾン、イソアミル-p-メトキシシンナメート、ポリシリコン-15(マロン酸ジメチコジエチルベンザル)、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸及びその塩類、TEA-サリシレート及びアミノ安息香酸(PABA)からなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0073】
本発明の化粧料組成物を添加できる製品としては、例えば、収れん化粧水、柔軟化粧水、栄養化粧水、各種クリーム、エッセンス、パック、ファンデーションなどのような化粧品類と、クレンジング、洗顔剤、石鹸、トリートメント、美容液などがある。本発明の化粧料組成物の具体的な剤形としては、スキンローション、スキンソフトナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、シャンプー、クレジングフォーム、クレジングローション、クレンジングクリーム、ボディローション、ボディクレンザー、乳液、リップスティック、メイクアップベース、ファンデーション、プレスパウダー、ルースパウダー、アイシャドウなどの剤形を含む。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をさらに容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が制限されるものではない。
【0075】
[実施例1.腸内細菌及び細菌由来の小胞の体内吸収、分布、及び排泄様子の分析]
腸内細菌と細菌由来の小胞が胃腸管を通じて全身的に吸収されるかを評価するために、次のような方法で実験を行った。マウスの胃腸に蛍光で標識した腸内細菌と腸内細菌由来の小胞をそれぞれ50μgの用量で、胃腸管に投与し、0分、5分、3時間、6時間、12時間後に蛍光を測定した。マウスの全体イメージを観察した結果、
図1aに示されたように、細菌である場合には、全身的に吸収されなかったが、細菌由来の小胞である場合には、投与5分後に全身的に吸収され、投与3時間後には、膀胱に蛍光が濃く観察されて、小胞が泌尿器系に排泄されることが分かった。また、小胞は、投与12時間まで体内に存在することが分かった(
図1a参照)。
【0076】
腸内細菌と腸内細菌由来の小胞が全身的に吸収された後、様々な臓器に浸潤された様子を評価するために、蛍光で標識した50μgの細菌と細菌由来の小胞を前記の方法のように投与した後、投与12時間後に血液、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉を採取した。採取した組織で蛍光を観察した結果、
図1bに示されたように、細菌由来の小胞が血液、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉、腎臓に分布したが、細菌は吸収されないことが分かった(
図1b参照)。
【0077】
[実施例2.臨床サンプルで細菌由来の小胞メタゲノム分析]
血液、尿、唾液などの臨床サンプルをまず10mlのチューブに入れ、遠心分離法(3,500×g、10min、4℃)で浮遊物を沈め、上清のみを新しい10mlのチューブに移した。0.22μmのフィルタを用いて細菌及び異物を除去した後、セントリプレップチューブ(centrifugal filters 50kD)に移して1,500×g、4℃で15分間遠心分離して、50kDより小さい物質は捨てて、10mlまで濃縮させた。さらに0.22μmのフィルタを用いて細菌及び異物を除去した後、Type 90tiローターで150,000×g、4℃で3時間超高速遠心分離方法を用いて上清を捨て、固まったペレットを生理食塩水(PBS)で溶かした。
【0078】
前記方法で分離した小胞100μlを100℃でボイルして内部のDNAを脂質外に出るようにした後、氷に5分間冷ました。そして、残った浮遊物を除去するために、10,000×g、4℃で30分間遠心分離し、上清のみを集めた。そして、Nanodropを用いてDNA量を定量した。以後、前記抽出されたDNAに細菌由来のDNAが存在するかを確認するために、下記表1に示した16S rDNAプライマーでPCRを行って、前記抽出された遺伝子に細菌由来の遺伝子が存在することを確認した。
【0079】
【0080】
前記方法で抽出したDNAを前記の16S rDNAプライマーを用いて増幅した後、シーケンシングを行い(Illumina MiSeq sequencer)、その結果をStandard Flowgram Format(SFF)ファイルに出力し、GS FLX software(v2.9)を用いてSFFファイルをsequenceファイル(.fasta)とnucleotide quality scoreファイルに変換した後、リードの信用度評価を確認し、window(20bps)平均base call accuracyが99%未満(Phred score<20)である部分を除去した。Operational Taxonomy Unit(OTU)分析のためには、UCLUSTとUSEARCHを用いてシーケンス類似度によってクラスタリングを行い、属(genus)は94%、科(family)は90%、目(order)は85%、綱(class)は80%、門(phylum)は75%シーケンス類似度を基準としてクラスタリングを行い、各OTUの門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、属(genus)レベルの分類を行い、BLASTNとGreenGenesの16S RNAシーケンスデータベース(108,453シーケンス)を用いて属レベルで97%以上のシーケンス類似度を有する細菌をプロファイリングした(QIIME)。
【0081】
[実施例3.糖尿病患者及び正常ヒトの唾液内細菌及び細菌由来の小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で糖尿病患者47人の唾液、及び年齢と性別をマッチングした正常ヒト277人の唾液を対象として、唾液内に存在する細菌及び小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、ラクトコッカス属細菌及び細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの唾液に比べて糖尿病患者の唾液でラクトコッカス属細菌及びラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表2、表3、及び
図2参照)。
【0082】
【0083】
【0084】
[実施例4.糖尿病患者及び正常ヒトの血液細菌由来の小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で糖尿病患者61人の血液、及び年齢と性別をマッチングした正常ヒト122人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて糖尿病患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表4及び
図3参照)。
【0085】
【0086】
[実施例5.心筋梗塞患者及び正常ヒトの血液細菌由来の小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で心筋梗塞患者57人の血液、及び年齢と性別をマッチングした正常対照群163人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心筋梗塞患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表5及び
図4参照)。
【0087】
【0088】
[実施例6.心房細動患者及び正常ヒトの血液細菌由来の小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で心房細動患者32人の血液、及び年齢と性別をマッチングした正常ヒト64人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心房細動患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表6及び
図5参照)。
【0089】
【0090】
[実施例7.脳卒中患者及び正常ヒトの血液細菌由来の小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で脳卒中患者115人の血液、及び年齢と性別をマッチングした正常ヒト109人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて脳卒中患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表7及び
図6参照)。
【0091】
【0092】
[実施例8.腎不全患者及び正常ヒトの血液細菌由来の小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で腎不全患者21人の血液、及び年齢と性別をマッチングした正常ヒト20人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて腎不全患者の血液でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表8及び
図7参照)。
【0093】
【0094】
[実施例9.パーキンソン病患者及び正常ヒトの尿細菌由来の小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法でパーキンソン病患者39人の尿、及び年齢と性別をマッチングした正常ヒト79人の尿を対象として、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べてパーキンソン病患者の尿でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表9及び
図8参照)。
【0095】
【0096】
[実施例10.うつ病患者及び正常ヒトの尿細菌由来の小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法でうつ病患者20人の尿、及び年齢と性別をマッチングした正常ヒト20人の尿を対象として、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、ラクトコッカス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べてうつ病患者の尿でラクトコッカス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表10及び
図9参照)。
【0097】
【0098】
[実施例11.ラクトコッカス・ラクティス培養液からの小胞分離]
前記実施例に基づいて、ラクトコッカス・ラクティス菌株(L.lactis)を培養した後、その小胞を分離して、特性を分析した。ラクトコッカス・ラクティス菌株を37℃好気性条件で吸光度(OD600)が1.0~1.5になるまでMRS(de Man-Rogosa and Sharpe)培地で培養した後、LB(Luria-Bertani)培地に継代培養した。以後、菌株が含まれている培地を回収して、10,000g、4℃で20分間遠心分離して菌株を除去し、0.22μmのフィルタに濾過した。濾過した上清を100kDa Pellicon 2 Cassetteフィルタメンブレン(Merck Millipore,US)でMasterFlex pump system(Cole-Parmer,US)を用いて精密ろ過(microfiltration)を通じて50ml体積に濃縮した。濃縮させた上清をさらに0.22μmのフィルタで濾過した。以後、BCAアッセイを用いてタンパク質を定量し、得られた小胞に対して下記実験を実施した。
【0099】
[実施例12.ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞の炎症誘発抑制効果]
炎症細胞でラクトコッカス・ラクティス由来の小胞(L.lactis EV)の炎症メディエーター(IL-6、TNF-α)の分泌に対する影響を調べるために、マウスマクロファージ株であるRaw 264.7細胞にラクトコッカス・ラクティス由来の小胞を多様な濃度(0.1、1、10μg/ml)で処理した後、細胞死滅とELISAを行った。より具体的に、48ウェル細胞培養プレート内に4×104個ずつ分注し、Raw
264.7細胞にDMEM無血清培地を入れた多様な濃度のラクトコッカス・ラクティス由来の小胞を処理して12時間培養した。以後、細胞死滅は、EZ-CYTOX(Dogen,Korea)を用いて測定し、細胞培養液は、1.5mlのチューブに集めて、3000gで5分間遠心分離し、上層液を集めて-80℃に保管しておいた後、ELISAを行った。
【0100】
ELISAを行うために、キャプチャー(Capture)抗体をPBSに希釈させて、96ウェルポリスチレンプレートに作用濃度に合うように50μlずつ分注した後、4℃で一晩中反応させた。以後、PBST(0.05% tween-20が入っているPBS)溶液100μlで3回ずつ洗浄した後、RD(1% BSAが入っているPBS)溶液100μlを分注して常温で1時間ブロッキングした。サンプル及びスタンダードを濃度に合うように50μlずつ分注し、常温で2時間反応させた。PBST 100μlで3回洗浄した後、検出抗体をRDに希釈させて、作用濃度に合うように50μlずつ分注し、常温で2時間反応させた。PBST 100μlで3回洗浄した後、Strpetavidin-HRP(R&D system,USA)をRDに1/40で希釈させて、50μlずつ分注して、常温で20分間反応させた。最後に、PBST 100μlで3回洗浄した後、TMB基質(SurModics,USA)50μlを分注し、5分~20分後、発色を進め、1M硫酸溶液を50μlずつ分注して反応を中止し、SpectraMax M3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,USA)を用いて450nmで吸光度を測定した。
【0101】
その結果、
図10に示されたように、ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞処理による炎症細胞の細胞死滅が誘導されなかった。また、0.1、1μg/mlのラクトコッカス・ラクティス由来の小胞処理によるマウスマクロファージ株の炎症メディエーター(IL-6、TNF-α)の分泌は、病原性小胞である大腸菌由来の小胞(E.coli EV)より顕著に低いことを確認した(
図11参照)。
【0102】
[実施例13.ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞の抗炎症効果]
前記結果に基づいて、ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞の抗炎症効果を評価するために、多様な濃度(0.1、1、10μg/ml)のラクトコッカス・ラクティス由来の小胞をマウスマクロファージ株に12時間前処理した後、病原性小胞である大腸菌由来の小胞1μg/mlで処理し、12時間後、炎症性サイトカインの分泌をELISAで測定した。その結果、ラクトコッカス・ラクティス由来の小胞を前処理した場合、大腸菌由来の小胞によるIL-6及びTNF-αの分泌が顕著に抑制されることを確認した(
図12参照)。特にラクトコッカス・ラクティス由来の小胞の前処理によるTNF-αの分泌抑制効果が、有用微生物対照群であるラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)由来の小胞の前処理によるTNF-αの分泌抑制効果より大きいことを確認した(
図12参照)。前記結果は、大腸菌由来の小胞のような病原性小胞により誘導される炎症反応をラクトコッカス・ラクティス由来の小胞が効率的に抑制することができることを意味する。
【0103】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によるラクトコッカス属細菌由来の小胞は、糖尿病、心筋梗塞、心房細動、脳卒中、腎不全、パーキンソン病、及びうつ病に対する診断方法、及び前記疾患又は炎症性疾患に対する食品又は薬物などの予防用あるいは治療用組成物に有用に用いられるものと期待される。
【配列表】