(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】浮腫治療およびその監視
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20240101AFI20240213BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A61F13/02 D
A61B5/00 102A
(21)【出願番号】P 2022073205
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2018555817の分割
【原出願日】2017-01-13
【審査請求日】2022-04-27
(32)【優先日】2016-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】518249498
【氏名又は名称】スペシャルバンデージャー.ディーケー エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェンズ エットラップ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリック ハーボー
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/156174(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0296749(US,A1)
【文献】特表2011-513037(JP,A)
【文献】特表2015-532880(JP,A)
【文献】米国特許第8948839(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/14
A61B5/00-5/01、5/11、5/256
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧迫包帯の効果を決定するための方法であって、
身体部上に前記圧迫包帯を巻くことであって、前記圧迫包帯は、前記圧迫包帯の下または前記圧迫包帯の内部または前記圧迫包帯の上に少なくとも1つのセンサを備え、前記圧迫包帯および前記少なくとも1つのセンサは、前記身体部に接着されておらず、前記少なくとも1つのセンサのそれぞれは、
前記身体部の少なくとも一部の上または前記身体部の少なくとも一部の周りの2つ以上の導電層であって、前記2つ以上の導電層は、伸縮自在である、2つ以上の導電層と、
前記2つ以上の導電層に電気的に接続されている測定ユニットであって、前記測定ユニットは、前記2つ以上の導電層に関連する電気特性を測定するように構成されており、前記電気特性は、前記身体部の周囲の測定値に関連し、前記電気特性は、静電容量であり、前記静電容量は、前記2つ以上の導電層の長さに比例する、測定ユニットと
を備える、ことと、
所定の期間の間、前記身体部の周囲の複数の測定値を登録することと、
前記身体部の周囲が所定のカットオフ値より低減したとき、および/または、前記身体部の周囲の低減が前記所定の期間の後に所定のカットオフ値を超えたとき、前記圧迫包帯が効率的であることを決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記所定の期間は、少なくとも12時間である、および/または、前記低減に対する前記カットオフ値は、少なくとも0.5cm~3.0cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサは、前記身体部の周りに、および/または、前記身体部の上に、および/または、前記身体部に接触する第2の弾性支持材料上に置かれるように構成されている第1の弾性支持材料を備え、前記第1の弾性支持材料は、長手方向軸を画定する第1の弾性支持材料の長さと、水平方向を画定する第1の弾性支持材料の幅と、横方向軸を画定する第1の弾性支持材料の厚さとを有する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2つ以上の導電層は、その弛緩した状態に対して少なくとも20%伸びることが可能である導電層の長さを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記身体部の周囲の測定値を受信ユニットに送信するように構成されている送信ユニットをさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのセンサは、前記2つ以上の導電層から
、長手方向に沿って、および/または、水平方向に沿って延在する1つ以上の非弾性支持材料をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサは、前記第1の弾性支持材料から前記長手方向軸に沿って、および/または、前記水平方向に沿って延在する1つ以上の非弾性支持材料をさらに備え、および/または、前記第1の弾性支持材料は、前記身体部の皮膚に取り付けられるように構成されている、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記測定ユニットは、前記2つ以上の導電層に関連するさらなる電気特性を測定するようにさらに構成されており、前記電気特性は、温度および/または湿度に関連する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのセンサは、温度および/または湿度を測定するためのセンサをさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記2つ以上の導電層に接触する少なくとも1つの追加層をさらに備え、前記少なくとも1つの追加層は、弾性であり、前記少なくとも1つの追加層は、前記2つ以上の導電層に湿潤が移動しないように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
身体部の慢性浮腫の維持治療のための圧迫衣類を設計するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法の使用であって、前記方法は、
少なくとも1つの所定の期間の間、少なくとも2つのセンサの位置から前記身体部の周囲の複数の測定値を取得することと、
前記センサの位置に対応する前記身体部の各区分に関する圧迫要件を決定することと、
前記決定された圧迫要件に基づいて、圧迫ストッキングを設計することと
をさらに含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮腫の治療ならびに治療および治療に使用するための衣類の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に浮腫を治療するための方法および治療の効果を監視するための方法に関する。より詳細には、本開示は、身体部の周囲の測定値の測定を含み、そこにおいて身体部は腫れていることがあり、そうすると、例えば、腫れが低減しているかまたは増加しているかどうかを観察できる。
【0003】
浮腫はいくつかの基礎疾患によって起きることがある。最も一般的な形は、静脈不全およびリンパ浮腫に起因する浮腫である。
【0004】
静脈不全から起こる浮腫は通常脚に見られ、両脚に見られることが多い。
【0005】
リンパ浮腫は腕、脚、胴、頭および首などのあらゆる身体部に腫れとして現れることがあり、一般に癌の手術または放射線治療を受けた個人に見出される。
【0006】
浮腫は、流体が組織空間内に蓄積した結果であり、著しい身体的および心理的罹患状態になることがある。多い症状は痛みおよび不快感であり、潰瘍および皮膚感染症に対する脆弱性が増すことにより、入院が増え、抗生物質に依存する時間が長くなる可能性がある。静脈不全およびリンパ浮腫による浮腫は慢性状態であり、これは適切な管理によって緩和され得る。慢性浮腫が適切に治療されない場合、時間が経つにつれて組織内の流体および老廃物が組織を厚くして線維症(過剰な線維組織)をもたらす可能性がある。組織は堅くなり、腫れは手足の挙上で低減しない。
【0007】
慢性浮腫を管理する1つのやり方は、圧迫の組合せ、例えば包帯または圧迫衣類の使用およびリンパマッサージを伴う、もしくは伴わない運動を通して腫れを低減させることである。
【0008】
多くの圧迫システムが入手可能である。患者に適切な圧迫製品を選択するために、特に脚の潰瘍がある患者は様々な製品の完全な理解が必要である。しかしこの選択は、規格化された圧迫分類の不足、専門用語に関する混乱、およびどの型の圧迫システムが最も効果的であるかについての証拠が不足しているので困難である恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、医師が患者と協力して最適な圧迫包帯または衣類を選択し、包帯または衣類の効果を監視し、包帯または衣類を変えるときの決定を支援することができるために、浮腫の治療、特に慢性浮腫を監視するための方法に関する。
【0010】
したがって一態様では、本発明は、圧迫包帯を巻くことによる身体部内の浮腫の治療効果を決定するための方法に関し、該方法は、
該身体部に該包帯を巻き付けることと、
該包帯を巻いた下、内部または上で該身体部に少なくとも1つのセンサを付けることであって、各センサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、
1つまたは複数の導電層に電気接続される測定ユニットであって、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する、測定ユニットとを備える、センサを付けることと、
身体部の周囲の複数の測定値を所定の期間登録することと、
身体部の周囲が所定のカットオフ値より低減した、かつ/または身体部の周囲の低減が該所定の期間の後に所定のカットオフ値を超えたときに、治療が効率的であることを決定することとを含む。
【0011】
加えて、本発明は、慢性浮腫の治療のための方法に関し、該治療は身体部内の慢性浮腫の維持圧迫治療の効果を決定するための方法を含み、該方法は、
該身体部に圧迫包帯または衣類を付けることと、
該包帯または衣類の下、内部または上で該身体部に少なくとも1つのセンサを付けることであって、各センサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、
1つまたは複数の導電層に電気接続される測定ユニットであって、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する、測定ユニットとを備える、センサを付けることと、
身体部の周囲の複数の測定値を所定の期間登録することと、
身体部の周囲が該所定の期間に所定の間隔の範囲内で変化するときに、治療が効率的であることを決定することとを含む。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、身体部に包帯を巻くための圧迫包帯または衣類の耐用寿命の終了を決定するための方法に関し、該方法は、
該身体部に該包帯または衣類を付けることと、
該包帯または衣類の下、内部または上で該身体部に少なくとも1つのセンサを付けることであって、各センサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、
1つまたは複数の導電層に電気接続される測定ユニットであって、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する、測定ユニットとを備える、センサを付けることと、
身体部の周囲の複数の測定値を所定の期間登録することと、
身体部の周囲が所定のカットオフ値を超えて増加した、かつ/または増加が該所定の期間に所定のカットオフを超えたときに、圧迫包帯または衣類の耐用寿命が終了したことを決定することとを含む。
【0013】
また本発明は、包帯を巻いた身体部を有する個人における皮膚感染症の危険性を決定するための方法にも関し、該方法は、
該身体部に圧迫包帯を巻き付けることと、
該包帯を巻いた下、内部または上で該身体部にセンサを付けることであって、各センサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、
身体部の温度および/または湿度を測定するように構成された測定ユニットとを備える、センサを付けることと、
身体部の複数の該測定値を所定の期間登録することと、
温度および/または湿度の測定が該所定の期間に所定のカットオフを超えたときに、包帯の下に皮膚感染症の危険性があることを決定することとを含む。
【0014】
別の態様では、導電層は信号により収縮可能であり、能動的圧迫に使用されてもよく、したがって本発明は身体部の浮腫の治療のための方法に関し、
該身体部に包帯を付けることと、
該包帯を巻いた下、内部または上で該身体部に作動可能なセンサを付けることであって、該センサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在であり、導電層(複数可)は層(複数可)に印加された信号により収縮可能である、1つまたは複数の導電層と、
1つまたは複数の導電層に電気接続される測定ユニットであって、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の温度および/または湿度の測定値に関連する、測定ユニットとを備える、センサを付けることと、
身体部の複数の該測定値を所定の期間登録することと、
身体部の周囲が該所定の期間の後に所定のカットオフを超えて増加するときに、センサを作動させ、それによってセンサを収縮することとを含む。
【0015】
さらに圧迫治療効果の監視を通して獲得された情報は、最適化された圧迫衣類の設計に使用されてもよく、その結果として本発明は、身体部内の慢性浮腫の維持治療のための圧迫衣類を設計するための方法に関し、該方法は、
少なくとも1つの所定期間に上に定義されたような方法により少なくとも2つのセンサ位置のそれぞれに対する身体部の周囲の該複数の測定値を獲得することと、
センサ位置に対応する身体部のそれぞれの区分に対する圧迫要求を決定することと、
決定された圧迫要求に基づいて圧迫ストッキングを設計することとを含む。
【0016】
また本発明は、最適化された圧迫衣類にも関する。
【0017】
さらなる態様は個人のための治療計画を同定するための方法に関し、該身体部に包帯を巻き付けるステップと、該包帯を巻いた下、内部または上で該身体部に少なくとも1つのセンサを付けるステップであって、各センサは、該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、1つまたは複数の導電層に電気接続される測定ユニットであって、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する、測定ユニットとを備える、センサを付けるステップと、身体部の周囲の複数の測定値を所定の期間登録することと、身体部の動きの複数の測定値を所定の期間登録するステップと、身体部の動きの該複数の測定値から治療計画を決定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の位置Bにおける脚の周囲に関連する電気特性が経時でどのように変化するかを示す図である。約24時間の期間が横軸に沿って示され、電気特性、静電容量が縦軸に沿って示されている。数個の測定点は24時間周期に沿って示されている。最初は包帯が脚に付けられた第1の測定値1を示す。第2の測定値2は患者が座位から歩行に変わったときである。第3の測定値3は、包帯を脚に再度付ける前であり、測定値4は包帯を再度付けた後である。測定値5は患者が脚を水平位置にしているときである。測定値6は患者が就寝したときであり、測定値7は患者が起床したときである。測定値8では、患者は車を運転している。最後に測定値9で測定が終わる。
【
図2】
図1に記載されたように測定された脚の周囲に関する電気特性が、現在第2の位置Cにあり、経時でどのように変化するかを示す図である。約24時間の期間が横軸に沿って示され、電気特性、静電容量が縦軸に沿って示されている。数個の測定点は24時間周期に沿って示されている。最初は包帯が脚に付けた第1の測定値1を示す。第2の測定値2は患者が座位から歩行に変わったときである。第3の測定値3は、包帯を脚に再度付ける前であり、測定値4は包帯を再度付けた後である。測定値5は患者が脚を水平位置にしているときである。測定値6は患者が就寝したときであり、測定値7は患者が起床したときである。測定値8では、患者は車を運転している。最後に測定値9で測定が終わる。
図1と
図2を比較によってわかるように、同じ脚は異なる位置、すなわちBおよびCにおいて周囲が異なる変化をする。したがってこれらの2つの図は、包帯を再度付ける、または交換する必要があるときのより正確な測定値は、少なくとも2つの異なる位置の少なくとも2つの異なる測定値を有することによって提供されることを示す。
【
図3A】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図3B】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図3C】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図4A】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図4B】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図4C】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図5A】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図5B】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図5C】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図6A】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図6B】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図6C】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図7A】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図7B】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図7C】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図8A】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図8B】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図8C】本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して測定される電気特性の別の例を示す図である。
【
図9】本発明の第1の態様によるデバイスの他の実施形態を示す図である。
【
図10】本発明の第1の態様によるデバイスの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
以下の定義は本文書を通して使用される。
【0020】
浮腫は身体部の腫れを意味し、用語「浮腫」は静脈不全ならびにリンパ浮腫に起因する浮腫を網羅する。
【0021】
圧迫包帯は、身体部の周りに巻き付ける包帯の層を意味する。
【0022】
圧迫衣類は、治療する身体部に適合する衣類を意味し、脚用の圧迫ストッキングと同様に腕の圧迫手袋、圧迫ベスト、および圧迫マスクを含む。
【0023】
圧迫治療は、腫れを低減するための初期治療と、個人が浮腫を患っている際に腫れを抑止するための維持治療に分割される。
【0024】
本発明の詳細
浮腫の治療、具体的には慢性浮腫、例えば静脈不全またはリンパ浮腫によって生じた浮腫は、主に圧迫包帯および圧迫衣類の使用を通した水腫性身体部の圧迫である。
【0025】
通常治療は、腫れをできる限り低減させる初期圧迫治療と、新しい腫れの危険性を低減するために行われる維持圧迫治療に分割されてもよい。
【0026】
圧迫包帯および圧迫衣類は、浮腫の低減を維持するために1日に24時間、または毎日少なくとも歩いている時間に着用することを意味し、定期的に交換しなければならない。圧迫衣類は、特別に仕立てられてもよく、または店頭で購入されてもよい、すなわち標準の大きさであってもよい。一部の人は特別に仕立てられた圧迫衣類が必要になり、これらの衣類が正確に適合することが重要である。
【0027】
圧迫包帯または衣類の材料は、通常弾性、長伸性、非弾性、または短伸性を特徴とする。用語弾性および長伸性(弾性/長伸性)包帯は同義で使用されることが多く、非弾性および短伸性(非弾性/短伸性)包帯も同様である。伸張性はこれら2つの基本的な型の間で際立って異なる。伸張性は、包帯を引っ張ったときに伸びることができる程度を指す。概して弾性/長伸性包帯は100%を超える最大伸張性を有するのに対して、非弾性/短伸性包帯は100%未満の最大伸張性を有する。しかし例えば異なる業者からの非弾性材料は、同じ区分内の材料であっても異なる程度の弾性および耐久性を有することがある。
【0028】
以下に論じるように、2つの異なる型の圧迫包帯および衣類の材料は、異なる型の浮腫および患者に適することがある。
【0029】
段階的圧迫、すなわち心臓に向かって段階的に低減する圧力は、圧迫治療法の基本原理である。身体の総血液量のほぼ60%~80%は静脈循環内にある。歩行中または体重移動中、腓筋の収縮は主に静脈を通って血液を心臓に戻すことを意味する。短伸性包帯は腓筋の収縮に対して外力を生成する。短伸性包帯が収縮して短縮するときに短伸性包帯により腓筋が外方に隆起できないので、短伸性包帯は内方への圧力を発生させる。この力は静脈を圧迫しポンプ供給し、血液を心臓に向かって推進させ、包帯の段階的圧迫(脹脛より足首の圧力が大きい)により、不全静脈を通って血液が逆流するのを防ぐ。これは作動圧力と呼ばれる。したがって短伸性圧迫治療は高い作動圧力をもたらす。
【0030】
逆に、長伸性包帯は浮腫が増大するにつれて伸びる。また長伸性包帯は腓筋の収縮にほとんど抵抗しない。したがって長伸性包帯は低い作動圧力を有し、腓筋のポンプ供給を促進せず、浮腫の抑制をほとんどなさない。しかし最初に長伸性包帯が浮腫を治療する初期段階において適切な治療を提供することがある。
【0031】
浮腫の治療は、圧迫包帯が過剰流体を除去する役に立つので、圧迫包帯を着用しながら歩行などの一般運動、または特定の治療的運動をするものであることが多い。
【0032】
圧迫包帯および圧迫衣類
上に定義されたように、圧迫包帯は身体部の周りに巻き付ける、任意選択ではパッドと組み合わせた1つまたは複数の層からなる包帯である。圧迫包帯は、一般に腫れを低減するために浮腫治療の初期段階に使用される。圧迫包帯は定期的に、例えば少なくとも3日毎に付け変えられてもよい。
【0033】
また上に定義されたように、圧迫衣類はあらゆる身体部に提供されてもよい。圧迫衣類の大部分は圧迫ストッキングである。以下にストッキングについてさらに詳しく論じるが、その検討は他の型の衣類にも等しく適応する。
【0034】
圧迫ストッキングは、2つの異なる工程、平編み工程または丸編み工程のいずれか1つによって製造される。
【0035】
平編み機によって製造された圧迫ストッキングは、編みパターンに従って1段毎に編まれる。平編みストッキングは、表された解剖学的形状に従ってほとんど無制限の形状および大きさに製造することができ、また極端な変形にさえも適合するように作ることもできる。平編み工程は特注製品、特により高い圧迫クラスに適する。完璧に適合するので、ストッキングは圧迫の適正なレベル、ならびに圧力の段階を極端な身体形状に対しても届けることができる。平編みストッキングは一般により厚く、縫い目を有する。
【0036】
丸編み圧迫ストッキングは、標準の女性用ナイロンのように円筒上で編まれ、縫い目を有さない。一般にストッキングの全長にわたって段毎に同数の輪が使用される。丸編みは主にサポートストッキングおよび予防用ストッキングの製造に適している。縫い目のない丸編みストッキングは、平編みによって製造されるストッキングより細かく/より薄く、外見をより魅力的に作ることができる。
【0037】
圧迫包帯または圧迫衣類の選択とは無関係に、包帯または衣類は、細心の注意で取り扱った場合であっても耐久性は限られている。約6か月後には、圧迫包帯または圧迫衣類は擦り切れ、その圧迫効果を失う。
【0038】
しかし圧迫治療が非常に効率的であるので腫れが低減した場合に、古いものが太過ぎる時点になるより早目に圧迫ストッキングを交換する必要があることもある。
【0039】
治療効果の決定
一態様では、本発明は、身体部内の浮腫の治療効果、具体的には腫れを低減させるべき初期治療の効果を決定するための方法に関する。方法は、圧迫包帯または衣類を付けること、さらに該身体部に以下に詳細に記載されるように少なくとも1つのセンサを付けることを含む。センサは、治療される患者ならびに包帯および衣類に適するように、圧迫包帯または衣類の下、内部または上に付けられてもよい。
【0040】
方法は、治療される身体部毎に1つのセンサを使用して実行されてもよいが、通常は少なくとも2つのセンサが使用されることが好ましく、より好ましくは治療効果を決定するために必要な情報を獲得するために少なくとも3つのセンサが使用される。センサは好ましくは当技術分野で使用される標準測定位置に位置付けられる。測定のための標準位置は脚に対して
図1に示されており、脚だけでなく他の身体部に対する標準位置は浮腫を治療する臨床医のための教科書および指針に見出すことができる。
【0041】
センサの使用により、身体部の周囲の複数の測定値が所定の期間に測定される。所定の期間は治療段階および治療される患者の条件を考慮したあらゆる適切な期間である。通常所定の期間は少なくとも12時間、例えば少なくとも24時間、例えば少なくとも2日、えば少なくとも3日である。
【0042】
また治療効果は、患者によって行われる運動を考慮して決定されてもよい。好ましい実施形態では、センサは問題になっている身体部の動きに対する測定値を提供できる。概して身体部の動きが大きいほど、腫れの低減は速い。したがって治療効果は、行われたあらゆる運動を考慮した腫れの低減の測定値であってもよい。動きは以下に記載されるようなセンサを通して直接測定されてもよく、または動きは以下に記載されるような加速度計などのあらゆる他の手段によって測定されてもよい。
【0043】
所定の期間内に測定は定期的な間隔で、好ましくは1時間当たり数回行われる。具体的には監視中に患者によって行われたあらゆる動きを考慮するために、測定を好ましくは1時間当たり少なくとも4回、より好ましくは1時間当たり少なくとも6回または1時間当たり12回行う。
【0044】
所定の期間の終了後、身体部の周囲が所定のカットオフ値より低減した、かつ/または身体部の周囲の低減が所定のカットオフ値を超えたときに、治療が効率的であることが決定される。
【0045】
カットオフは標準カットオフであってもよく、または治療段階および患者の条件を個々に考慮して決定されてもよい。通常低減のためのカットオフは、初期治療の終了に向かって低減されるために治療の開始において1日当たり少なくとも0.5cm~3cmである。別の実施形態では、カットオフは少なくとも1%~6%の低減などのパーセンテージの低減として定義される。一般にカットオフが高いほど、所定の期間に患者が行った運動が多い。
【0046】
この方法を行うことにより、先行技術の方法によって獲得されるものよりはるかに早く治療効果を評価することができ、さらに治療の文書化も本方法によって促進される。
【0047】
治療が有効であると証明されなかった場合、患者の運動を考慮して、圧迫包帯もしくは衣類の材料の変更または圧迫包帯の場合に包帯を巻き直すなど、治療の変更を考えなければならない。
【0048】
別の態様では、本発明は、身体部内の慢性浮腫の維持圧迫治療、すなわち腫れの初期低減の後に新しい腫れを防ぐための効率を決定するための方法に関する。
【0049】
上記の方法のように、本方法は、該身体部に圧迫包帯または衣類を付けること、および該包帯または衣類の下、内部または上で該身体部に少なくとも1つのセンサを付けることに関与する。
【0050】
また身体部の周囲の複数の測定値は所定の期間測定され、一般に初期治療と同じ測定頻度で維持治療に対して実行される。さらに上記のセンサの数ならびにセンサの位置が、本発明の本態様と同様に良好に適用される。
【0051】
維持圧迫治療は、身体部の周囲が該所定の期間所定の範囲内で変化し、その範囲を超えて増加しないときに有効であると決定される。その範囲は一般に数センチメートル、例えば約3cm、より好ましくは2cmである。腫れが該範囲内に収まらないほど大きい場合、具体的には次の期間の測定結果が同じ傾向を示す場合、圧迫治療が有効でない危険性が大きい。
【0052】
また所定の期間を通して実行された複数の測定に起因して、方法はその日の間にばらつきについての有益な情報も提供する。脚の浮腫を有し、例えば学校の教師および一部の職人のように、その日の一部を起立している患者に対して、この方法は、患者が働いているとき、および家にいるときに圧迫治療が有効であるかどうかについての情報を提供してもよく、これは患者が仕事用および自宅用の異なる圧迫ストッキングを必要とすることがあるという結論を導くことがある。
【0053】
さらに上記のように治療を監視することにより、圧迫包帯または衣類が効率的に作用している患者は、腫れが低減しない、または実際に増加した人と同じ頻度で通院する必要がないかもしれないという点で、患者に対する通院を調整することもできる。
【0054】
上に論じたように、異なる販売業者からの圧迫包帯または衣類は、弾性および耐久性に関して異なる圧迫特徴を示す。個々の患者に適合するように設計された圧迫衣類は、市販であっても特注品であっても、毎日着用し、衣類のある特定の着用に及ぼす定期的な洗濯をしなければならない。通常患者は間で交換するために数組の衣類を有するが、健康保険などにより全額または一部が支給される場合、患者は通常半年毎に3組以上は付与されない。したがって圧迫特徴が要求を満たさないとき、患者が新しい腫れの形成ならびに次の潰瘍および感染症の深刻な副作用の危険にさらされるので、圧迫特徴の耐久性は患者にとって非常に重要な要因であると考えられる。
【0055】
本発明は、圧迫衣類に対する耐用寿命が終了した、または終わりを迎えるとき、すなわち圧迫衣類の圧迫特徴が問題のある患者に対する要求を満たさず、したがって新しい組の衣類を取得することが適切であるときを決定するための方法を提供する。
【0056】
したがって本発明は身体部に包帯を巻くための圧迫包帯または衣類の耐用寿命の終了を決定するための方法に関し、該方法は、
該身体部に圧迫包帯または衣類を付けることと、
該包帯または衣類の下、内部または上で該身体部に少なくとも1つのセンサを付けることであって、各センサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、
1つまたは複数の導電層に電気接続される測定ユニットであって、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する、測定ユニットとを備える、センサを付けることと、
身体部の周囲の複数の測定値を所定の期間登録することと、
身体部の周囲が所定のカットオフ値を超えた、かつ/または増加が該所定の期間に所定のカットオフを超えたときに、圧迫包帯または衣類の耐用寿命が終了したことを決定することとを含む。
【0057】
上に論じたように、浮腫を患った個人は浮腫の身体部に皮膚の感染症を起こす危険がある。本発明は感染症の危険性を決定するための方法を提供し、それによって早期に警告する信号が提供されて感染症の防止または早期治療のどちらかを導く。したがって本発明は、包帯を巻いた身体部を有する個人の皮膚の感染症の危険性を決定するための方法に関し、該方法は、
該身体部に圧迫包帯を巻き付けることと、
該包帯を巻いた下、内部または上で該身体部にセンサを付けることであって、該センサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、
身体部の温度および/または湿度を測定するように構成された測定ユニットとを備える、センサを付けることと、
身体部の複数の該測定値を所定の期間登録することと、
温度および/または湿度の測定が該所定の期間に所定のカットオフを超えたときに、包帯の下に皮膚感染症の危険性があることを決定することとを含む。
【0058】
身体部の温度および/または湿度を測定するように構成された測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に電気接続されてもよく、それによって測定ユニットは1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は、単一の導電層の抵抗率が温度に依存してもよく、抵抗率を登録することにより温度の測定値が獲得されるという点で、身体部の温度および/または湿度の測定値に関する。
【0059】
代替形態では、測定ユニットは温度および/または湿度を測定するためのセンサを備える。
【0060】
圧迫包帯または衣類の下の温度または湿度のいずれかを測定することにより、患者および/または医師に疑わしい感染症の初期の兆候を提供する。本発明による方法により、患者が包帯または衣類を着用している間に感染症の危険性が決定されることができるので、感染症に対して身体部を検査するために包帯または衣類をそれほど頻繁に取り除く必要はない。一方、患者が包帯または衣類を着用していても、依然として早期の警告を得ることができる。一般に0.5℃以上の温度上昇、例えば1.0℃以上の温度上昇が、感染症の指標である。
【0061】
作動可能なセンサ
また本発明のさらに別の態様では、周囲の変化を測定するためのセンサは、電気信号などの信号への応答として収縮することができる作動可能なセンサであってもよい。それによってセンサ(複数可)も浮腫の治療の活性部であってもよく、その結果として本発明は身体部の浮腫を治療するための方法にさらに関し、
該身体部に包帯を付けることと、
該包帯を巻いた下、内部または上で該身体部に作動可能なセンサを付けることであって、該センサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在であり、導電層(複数可)は層(複数可)に印加された信号により収縮可能である、1つまたは複数の導電層備える、センサを付けることと、
身体部の複数の該測定値を所定の期間登録することと、
身体部の周囲が該所定の期間の後に所定のカットオフを超えて増加するときに、センサを作動させ、それによってセンサを収縮することとを含む。
【0062】
また好ましい実施形態では、方法は制御ユニットおよび送信ユニットも含み、それによって制御ユニットは、例えば送信ユニットから直接身体部の周囲の測定値を受領することにより、長手方向軸に沿って1つまたは複数の導電層の長さを制御するように構成される。
【0063】
以下に詳細に記載される1つまたは複数の導電層は、制御ユニットが例えば身体の周囲の測定値に基づいて入力を受信すると、制御ユニットが層(複数可)の収縮を起こすために1つまたは複数の導電層に電気信号を送信することができるように、アクチュエータとして構成されてもよい。
【0064】
したがって制御ユニットを有することによって、本発明は、測定ユニットからの出力に基づいた命令を受信すると、さらに身体部に第1の弾性支持材料を締め付けることに基づいたフィードバック機構、すなわち治療を提供する。換言すると、本発明は、自動的に自己適応可能な支持材料、例えば包帯および/または圧迫衣類を提供してもよい。
【0065】
好ましくは、方法は少なくとも2つの作動可能なセンサを含み、それによってセンサの作動が各センサに対して個別に行われる。一実施形態では、一方のセンサは1つの規模に収縮され、他方は別の規模に収縮されるか、または身体部の局所に起きるかもしれない腫れを収納するために全く収縮されなくてもよい。
【0066】
収縮は、行われた測定が弛緩またはさらなる収縮のいずれかの必要性を示すことがあるまで、センサの数と無関係に永久的な収縮であってもよい。別の実施形態では、または作動可能なセンサはリンパ排出を提供するために間欠ポンプ療法を行うために、収縮と弛緩を反復する脈動運動を行う。後者の実施形態では、2、3個のセンサをポンプ療法に使用する場合に好ましい。
【0067】
圧迫衣類の設計
本発明のさらに別の態様では、治療効果の監視から獲得された結果に基づいて圧迫衣類を設計するための方法が提供される。個々の患者から獲得された情報から、患者の浮腫を最も効果的なやり方で治療するために必要であり得る、正確な圧迫特徴を有する圧迫衣類を設計することが可能である。例えば監視中に、より大きな圧迫力が身体部の一部の区分に必要であり、身体部の正常な区分にはあまり必要がないことに直面することがある。今日の圧迫衣類、特に圧迫ストッキングは、衣類全体を通して同じ弾性が提供されており、衣類を個別化するための唯一の方法は、衣類の様々な区分の幅を適合させることである。
【0068】
したがって一態様では、本発明は身体部内の慢性浮腫の維持治療用の圧迫衣類を設計するための方法に関し、該方法は、
上に定義されたような方法により少なくとも2つのセンサ位置のそれぞれに対する身体部の周囲の該複数の測定値を獲得することと、
センサ位置に対応する身体部のそれぞれの区分に対する圧迫要件を決定することと、
決定された圧迫要件に基づいて圧迫ストッキングを設計することとを含む。
【0069】
圧迫ストッキングは、測定位置に対応する少なくとも2つのストッキングの区分、より好ましくは少なくとも3つのストッキングの区分を有するように設計されてもよい。各ストッキングの区分は、異なる圧迫特徴を有するように設計されてもよい。一例は、足首のすぐ上の圧力を増すことができるストッキングであり、別の例は、ストッキングの上部で圧力を低減することができるストッキング、またはそれらの組合せである。
【0070】
好ましくは、1つの圧迫衣類の効率を監視することから獲得された情報は、ストッキングの様々な区分における個別の圧迫特徴への必要性を考慮するために、個別化されたストッキングの生産ラインに直接伝達されてもよい。
【0071】
さらに本発明は、少なくとも第1の区分および第2の区分を備える維持圧迫治療のための圧迫ストッキングに関し、第1の区分における圧迫特徴は上に論じたように第2の区分における圧迫特徴と異なる。
【0072】
治療計画の決定
さらなる態様では、本発明は治療計画を決定するための方法に関する。方法は、該身体部に包帯を巻き付けるステップと、該包帯を巻いた下、内部または上で該身体部に少なくとも1つのセンサを付けるステップであって、各センサは、該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、1つまたは複数の導電層に電気接続される測定ユニットであって、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する、測定ユニットとを備える、センサを付けるステップと、身体部の周囲の複数の測定値を所定の期間登録すること、身体部の動きの複数の測定値を所定の期間登録するステップと、身体部の動きの該複数の測定値から治療計画を決定するステップとを含む。
【0073】
身体部の動きに基づくように治療計画を決定することにより、個人の挙動のフィードバックが可能であることがある。このようなフィードバックは個人の最適な治療を提供することができる。
【0074】
一実施形態では、身体部の動きの複数の測定値は加速度計を使用して測定される。加速度計は、例えば個人の身体部に取り付けられてもよい。
【0075】
別の実施形態では、身体部の動きの複数の測定値は、例えば加速度計の代替としてセンサを使用して測定される。
【0076】
別の実施形態では、加速度計はセンサと統合される。
【0077】
好ましい実施形態では、治療計画は個人の活動に関連する。例えば加速度計および/またはセンサからの読取値を使用して個人に最良のものをその個人に通知してもよい。例えば最適な治療は、個人がその後4時間以内に30分程度サイクリングまたは歩行をする計画をする場合に有効であることを個人に通知してもよい。個人の活動に関連するような通知は、個人の現在の活動および/または記録された活動に基づいてもよい。例えば加速度計および/またはセンサは、個人が就寝などにより活動していない、またはウォーキング、ランニング、もしくはサイクリングなどの活動をしているかどうかを決定するように構成されてもよい。活動に基づいて、個人は個人のタイプに応じて関連付けられてもよい。例えば非常に活動的な人は人1として関連付けられてもよく、非常に非活動的な人は人3として関連付けられてもよい。個人の活動および/またはタイプに基づいて、個人は、その個人に最も適した治療計画を通知されてもよい。これに関して個別化された治療が達成される。
【0078】
好ましくは、治療計画は、携帯電話、タブレット、またはコンピュータなどの表示装置上で個人に表示される。
【0079】
ほとんどの態様によれば、センサは身体部に付けられる。これらの態様の最も好ましい実施形態では、少なくとも1つのセンサを該身体部に付けるステップの後、伸びの量が所定量未満である場合に、伸びの不足に関する警告が個人に表示装置上で表示され、伸びの量が所定量を超える場合に、伸びの過剰に関する警告が個人に表示装置上で表示されるように、センサの伸びの量を決定するステップが続く。これによって最も適した治療を提供するセンサが身体部に適正に付けられる。
【0080】
コンピュータにより実施される方法
また上記の方法は、浮腫の治療を管理するためにコンピュータにより実施される方法として提供されてもよい。したがって上記のいずれの方法でも、方法は、
身体部の周囲の複数の測定値をコンピュータ内に受信するステップであって、該複数の測定値のそれぞれは、身体部の周囲の絶対値または前の値と異なることを表すデルタ値のいずれかである、受信するステップと、
身体部の周囲が所定のカットオフを超えるかどうかを決定するステップと、
表示装置を表示システムに戻すステップであって、表示装置は周囲が所定のカットオフを超えるかどうかを表す、表示装置を表示システムに戻すステップとをさらに含んでもよい。
【0081】
表示装置は、周囲が所定のカットオフを超える値に変化した場合に、コンピュータ画面上の視覚警報などのあらゆる型の関連情報であってもよい。それによって医師および患者を治療する他の専門家が、注意を必要であり得る患者を特定する役に立ち、良好な患者に時間を費やさない。表示システムは、患者が自身の治療を監視するために患者も同様に利用可能であってもよい。
【0082】
それによって本発明による方法は、遠隔治療方法にも含まれてもよい。この場合、患者を治療する専門家は、患者から離れて位置し、少なくとも初期情報は自動情報と患者とのデジタル通信の組合せを電話により、コンピュータを通して、またはイーメールとして提供される。
【0083】
センサ
本発明によるセンサは、
該身体部の少なくとも一部の上または周りの1つまたは複数の導電層であって、導電層(複数可)は伸縮自在である、1つまたは複数の導電層と、
1つまたは複数の導電層に電気接続される測定ユニットであって、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する、測定ユニットとを備える。
【0084】
好ましくは、センサは身体部の周りおよび/もしくは上、ならびに/または身体部と接触する第2の弾性支持材料上に置くように構成された第1の弾性支持材料を備える。好ましくは、1つまたは複数の導電層は該第1の弾性支持材料と接触する。
【0085】
導電層(複数可)
1つまたは複数の導電層は、10-2Ωcm未満、例えば10-4Ωcm未満である抵抗率を有する材料から作成されてもよい。
【0086】
好ましくは、1つまたは複数の導電層は、金属または導電性合金、例えば銀、金、ニッケルの群から選択された金属から作成されてもよい。別法として他の適切な金属または導電性合金が選択されてもよい。
【0087】
1つまたは複数の導電層は、例えばニッケルでメッキされた炭素スクリムを有する導電性アクリルから作成されたような電気テープであってもよい。テープは接着性であってもよい。
【0088】
1つまたは複数の導電層は、0.01μm~0.1μmの範囲内、例えば0.02μm~0.1μmの範囲内、例えば0.08μm~0.1μmの範囲内の厚さを有してもよい。
【0089】
第1の導体は、第1の接続点において1つまたは複数の導電層に取り付けられてもよい。導体は従来のワイヤまたはケーブルのような細長い本体として形成されてもよい。別の実施形態では、導体は円形、長円形、または電極と電気通信を確立するのに適した別の形状であるポーチとして形成されてもよい。導体は、導体の長さが変化してもよいように非常に弾性的に変形可能であってもよく、または導体は少なくとも柔軟に曲げられてもよい。
【0090】
1つまたは複数の導電層は、弛緩した状態で弾性支持部の長さに対して90%未満、例えば75%未満、例えば60%未満、例えば50%未満、例えば40%未満、例えば30%未満、例えば20%未満、または例えば10%未満の導電層の長さを有してもよい。これは導電層の長さの費用を低減することができ、依然として身体部の周囲の測定値を提供する。
【0091】
1つまたは複数の導電層は、弛緩した状態で2cm~85cmの導電層の長さを有してもよい。
【0092】
1つまたは複数の導電層は、弛緩した状態で、また縦軸に沿って、2mm~80mm、または2cm~15cmの導電層の幅を有してもよい。
【0093】
1つまたは複数の導電層は、その弛緩した状態に対して少なくとも20%伸びることができる導電層の長さを有してもよい。
【0094】
1つまたは複数の導電層は、第1の弾性支持材料と同程度に伸びることが可能であってもよい。
【0095】
1つまたは複数の導電層は、第1の弾性支持材料が身体部の周りおよび/もしくは上、ならびに/または身体部と接触する第2の弾性支持材料上に置かれると、導電層の長さがその弛緩した状態に対して少なくとも20%予め伸びるように、身体部によって画定される導電層の長さを有してもよい。
【0096】
デバイスの一実施形態では、1つまたは複数の導電層は、縦軸に沿って互いから分離される。
【0097】
デバイスの別の実施形態では、1つまたは複数の導電層は、長手方向軸に沿って互いから分離され、具体的には1つまたは複数の導電層は、該導電層の2つの間に伸縮自在のフィルムを有することにより横方向軸に沿って互いから分離されてもよい。伸縮自在のフィルムは、電気特性が伸縮自在のフィルムの静電容量であることを画定する。伸縮自在のフィルムの静電容量は、その上に2つの導電層の重複部分が存在する面積に比例し、2つの導電層の間の距離に反比例する、すなわち伸縮自在のフィルムの厚さに反比例する。したがって静電容量は導電層の長さにも比例する。それゆえ、導電層が長いほど、静電容量は大きい。したがって腫れることにより、長さおよびそれによって周囲が増加し、したがって静電容量が増加する。
【0098】
別法としておよび/または追加として、電気特性は導電層(複数可)の抵抗率である。抵抗率は導電層の長さに比例し、導電層の断面積、すなわち導電層の厚さおよび幅に反比例する。それゆえ、導電層が長いほど静電容量は大きい。したがって腫れることにより、長さおよびそれによって周囲が増加し、したがって抵抗率が増加する。
【0099】
1つまたは複数の導電層が伸びると、それに関連した静電容量と抵抗率との差は、静電容量が伸縮自在のフィルムの厚さの変化によって影響を受けるのに対して、抵抗率は1つまたは複数の導電層の厚さの変化によって影響を受ける。
【0100】
しかし1つまたは複数の導電層および伸縮自在のフィルムの厚さが同じやり方で変形され得る場合、長さに比例する測定の方法に差がないことがある。一方、伸縮自在のフィルムは、1つまたは複数の導電層と異なるやり方で変形するように選択されてもよく、それによって抵抗率の測定に比べて静電容量を測定する際に利点を提供するのは、具体的には静電容量は1つまたは複数の導電層の長さの変形に依存してほぼ直線的に行うことができるからである。伸縮自在のフィルムのいくつかの特徴は以下の章に記載される。
【0101】
2層間に伸縮自在のフィルムを使用し、静電容量を測定することにより、具体的には伸縮自在のフィルムが高分子であるときに、誘電性電気活性高分子(EAP)構造を提供するための手段が提供される。
【0102】
本発明の一実施形態では、伸縮自在のフィルムは、1010Ωcmを超える抵抗率を有する材料から作成されてもよい高分子である。
【0103】
好ましくは、誘電材料の抵抗率は導電層の抵抗率よりはるかに高く、好ましくは少なくとも1014~1018倍高い。
【0104】
フィルム構造は、積層構造を形成するために互いの上に接着接合された、または単に積み重ねられた、いずれかのあらゆる数の層の弾性的に変形可能な高分子フィルム、例えば1、2、3、4、または5層の弾性的に変形可能なフィルムを備えてもよい。弾性的に変形可能なフィルムは、具体的には誘電材料から作成されてもよく、誘電材料は本明細書では、2以上の比誘電率を有する材料などの電流を伝導することなく電界を維持できるあらゆる材料を網羅すると考えられる。誘電材料は、高分子、例えば弱い粘着性シリコンなどのシリコンエラストマなどのエラストマ、または概して弾性的変形に関する特徴と同じエラストマを有する材料であることが可能である。例えば3つはすべてWacker Chemic製であるElastosil RT625、Elastosil RT622、Elastosil RT601は、誘電材料として使用することができる。
【0105】
本概念では、用語「誘電材料」は、これに限定されないが具体的には、2以上の比誘電率を有する材料を意味すると解釈されるべきである。
【0106】
エラストマではない誘電材料を使用する場合、誘電材料は、例えば弾性に関してエラストマのような特性を有するべきであることに留意するべきである。したがって誘電材料は、合成物を誘電材料の変形に起因して偏向させることができ、それによって押し/引くことができるほどに変形可能であるべきである。
【0107】
フィルムは10μm~200μm、例えば20μm~150μm、例えば30μm~100μm、例えば40μm~80μmの厚さを有してもよい。
【0108】
2つの導電層の設定に関して、第1の導体は第1の接続点において第1の導電層に取り付けられてもよく、第2の導体は第2の接続点において第2の導電層に取り付けられてもよい。導体は従来のワイヤまたはケーブルのような細長い本体として形成されてもよい。別の実施形態では、導体は円形、長円形、または電極の一方と電気通信を確立するのに適した別の形状であるポーチとして形成されてもよい。
【0109】
記載されたような伸縮自在のフィルム、具体的には誘電性電気活性高分子を有することによって、1つまたは複数の導電層はアクチュエータとして構成されることが明らかである。次いで高分子を圧搾する2つの電極の間の静電力により作動が引き起こされる。誘電エラストマは非常に高い歪みが可能であり、基本的に電圧が加えられたときに、高分子が厚さを圧迫し、電界に起因して面積が拡張できることにより、その静電容量を変えるコンデンサである。
【0110】
したがって伸縮自在のフィルムを使用することにより、人工筋肉として働くことができるデバイスが提供される。
【0111】
弾性支持材料
一実施形態では、第1の弾性支持材料は、身体部の皮膚に取り付けられるように構成される。第1の弾性支持材料は、例えば綿、アクリル繊維を備え、通気性があり、防水性であってもよい。
【0112】
最も好ましい実施形態では、第1の弾性支持材料はポリウレタン繊維、例えばエラスティンから構成される。
【0113】
他の最も好ましい実施形態では、第1の弾性支持材料は、その摩擦係数によって画定される滑面で構成され、滑面と鋼鉄面との間の摩擦係数は0.2~0.4である。
【0114】
摩擦係数は、標準摩擦試験を使用して、例えば日本繊維機械学会の風合い計量と規格化研究委員会によって開発されたシステムである、KESシステムとして公知の市販システムを使用して測定されてもよい。具体的には、摩擦係数はKES-FB4を使用して測定されてもよい。
【0115】
摩擦係数は、温度および湿度を含む多くの要因に依存する。したがって本明細書に言及されたような摩擦係数は、相対湿度が65±2%および温度が22±1℃に条件付けられた織物であってもよい。
【0116】
摩擦試験は試験材料上にプローブを一定力で摺動させるものであってもよく、それによって摩擦係数曲線が垂直抗力に対する(プローブに取り付けられた)変換器に登録された力の割合によって与えられる。したがって摩擦係数の平均値は曲線の平均高さである。
【0117】
したがって本明細書に言及されたような摩擦係数は、運動摩擦係数と呼ばれることがある。さらに本明細書に言及されたような摩擦係数は、平均運動摩擦係数と呼ばれることがある。
【0118】
また摩擦係数はプローブ材料にも依存することが明らかである。標準化された測定に対して、プローブは鋼鉄で作製される。
【0119】
しかし例えば測定プローブを多分力センサで皮膚の一部の上を擦ることによって、皮膚上の織物の摩擦係数の測定を提供できることがあり、それによって摩擦係数を決定するために垂直抗力および接線力を測定することができる。身体の異なる部分、すなわち身体の異なる皮膚の部分は、織物の摩擦係数の測定結果が変わることがわかっている。さらに皮膚の上で測定したときの摩擦係数は皮膚のタイプに大きく依存し、人によって様々であるので、標準測定の提供を困難にさせる。
【0120】
この理由から、摩擦係数を画定するために使用されるような鋼鉄のプローブは、摩擦係数に対して標準測定が可能である。
【0121】
本明細書に説明されたように、第1の弾性支持材料は、患者と接触する可能性があるデバイスの層であり得るので、皮膚と接触することがある。
【0122】
その摩擦係数によって画定される滑面で構成された第1の弾性支持材料を有することにより(滑面と鋼鉄面との間の摩擦係数は0.2~0.4である)、デバイスの配置を身体部上で変えないように、デバイスを皮膚の上に置くことができることを本発明者らは発見した。さらに上に定義されたように0.2~0.4の摩擦係数では、第1の弾性支持材料を例えば身体部に接着しないことによりしわが寄ることなく、身体部に容易に適応する接触面をデバイスが画定するようにデバイスを皮膚の上に置くことができる。
【0123】
本明細書に説明されたように、第1の弾性支持材料は、包帯などの第2の弾性材料と接触してもよい。
【0124】
その摩擦係数によって画定される滑面で構成された第1の弾性支持材料を有することにより(滑面と鋼鉄面との間の摩擦係数は0.2~0.4である)、弾性支持材料を例えば包帯などの第2の弾性支持材料に接着しないことによりしわが寄ることなく、デバイスを身体部に適応させることができることを本発明者らは発見した。
【0125】
換言すると、上に定義されたように0.2~0.4の摩擦係数は、第1の弾性支持材料が身体部または第2の弾性支持材料に接着しないように、第1の弾性支持材料の表面を身体部に適応できるために選択される。この具体的な摩擦係数は最適値を提供することを本発明者らは発見した。値がより低かった場合、デバイスを誤った場所に置いたはずである。値がより高かった場合は、デバイスにしわが寄ったはずである。したがって上に定義されたように0.2~0.4の摩擦係数は、身体部の周囲の非常に正確な測定を促進することを本発明者らは発見した。
【0126】
第2の実施形態では、弛緩した状態における第1の弾性支持材料の長さは、15cm~85cmである。それによって第1の弾性支持材料は様々な大きさの様々な身体部に適合するように構成されるはずである。
【0127】
第3の実施形態では、第1の弾性支持材料は身体の周りに適合するように構成された円帯である。円帯は本発明によるデバイスから、例えば第1の弾性支持材料の2つの端部を縫い合わせることにより作成されてもよい。換言すると、第1の弾性支持材料または少なくともその一部は円帯を形成するために縫うことができ得る。
【0128】
一部の実施形態では、第1の弾性支持材料または少なくともその一部は接着可能である。このような実施形態は、デバイスに取り付けられる送信ユニットを提供してもよい。
【0129】
最も好ましくは、キットは複数のデバイスを備え、それぞれのデバイスは本発明の第1の態様による身体部の周囲の測定値を提供するように構成される。複数のデバイスは、4つのデバイスまでであってもよく、それぞれのデバイスは第1の弾性支持材料がまさに記載されたように円形であるように構成され、それぞれのデバイスは異なる第1の弾性支持材料の長さをもつ。このようにして1つの周囲を有する第1のデバイスは、第1の周囲間隔をもつ腫れた脚を有する一部の患者に適合することがある一方で、第2の周囲を有する別のデバイスは、第2の周囲間隔を有する他の患者に適合することがある。第2の周囲は、例えば第1の周囲間隔より大きくてもよい。これに関連して、第2のデバイスを有する患者の腫れがひいた場合は、その患者は第1のデバイスに適合できることがあり、それによってより効率的な測定および/または治療を達成することもある。
【0130】
また先に記載されたように、弾性支持部の幅は、弛緩した状態で1cm~15cmであってもよい。
【0131】
第1の弾性支持材料の長さは、その弛緩した状態に対して少なくとも20%伸びることができる。この実施形態では、まず第1に例えば第1の弾性支持層が、またそれによって1つまたは複数の導電層もほぼ弛緩した状態であるように、第1の弾性支持材料が身体部に取り付けられた場合、周囲は少なくとも20%増加することができる周囲の測定が提供される。第2に、例えば1つまたは複数の導電層が第1の弾性支持材料を身体部および/または第2の弾性支持材料上に置く工程で少なくとも20%まで予め伸びている場合に、第1の弾性支持材料が身体部および/または第2の弾性支持材料の周りに置かれた後、周囲が低減することが可能である周囲の測定が提供される。
【0132】
好ましい実施形態では、第1の弾性支持材料の長さは、その弛緩した状態に対して250%まで、例えば40%まで、例えば60%まで、例えば80%まで、例えば100%まで、例えば120%まで、例えば150%まで、または例えば200%まで延びることができる。
【0133】
最も好ましい実施形態では、第1の弾性支持材料は1つまたは複数の導電層と同程度に伸びることができる。
【0134】
追加層
一実施形態では、1つまたは複数の導電層の上および/または下に配置された少なくとも1つの追加層が提供され、この少なくとも1つの追加層は弾性であり、また少なくとも1つの追加層は第1の弾性支持材料と接触するように構成され、それによって1つまたは複数の導電層を第1の弾性支持材料と少なくとも1つの追加層との間にカプセル化し、そのため1つまたは複数の導電層の少なくとも一部が、第1の弾性支持材料に対して、かつ/または少なくとも1つの追加層に対して動くことができる。好ましくは少なくとも1つの追加層は、第1の弾性支持材料と同一である。
【0135】
さらに別の実施形態では、少なくとも1つの追加層は、弛緩した状態で縦軸に沿って1cm~15cmの追加層の幅を有する。
【0136】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加層は、第1の弾性支持材料と同程度に伸びることができる。
【0137】
測定ユニット
先に記載されたように一実施形態では、例えば伸びることに起因する高分子フィルムにおける変形により、フィルム構造の対向する表面上に配置された2つの導電層の間の距離が変わる。これにより静電容量が変わり、したがって測定ユニットを使用することによって変形を測定することができる。
【0138】
デバイスの別の実施形態では、測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するようにさらに構成され、電気特性は温度および/または湿度に関する。例えばこれは、抵抗率が例えば温度に依存することが公知であるように、単一の導電層の抵抗率を測定することによって達成させることができる。
【0139】
代替または追加の実施形態では、デバイスは温度および/または湿度を測定するためにセンサをさらに備える。
【0140】
別の代替または追加の実施形態では、デバイスは、例えばデバイスを着用している人の活動を監視することができるために加速度計をさらに備える。
【0141】
好ましくは、測定ユニットは第1の弾性支持材料に取り付けられてもよい。
【0142】
しかし一部の実施形態では、測定ユニットは、例えば1つまたは複数の導電層に連結されたワイヤを使用して、第1の弾性支持材料から切り離されてもよい。
【0143】
送信ユニット、受信ユニットおよび制御ユニット
一実施形態では、方法は、身体部の周囲の測定値を受信ユニットに送信するように構成された送信ユニットをさらに備える。受信ユニットは、身体部の周囲の測定値をもつデータを無線通信により、かつ/または有線通信により受信してもよい。
【0144】
一部の実施形態では、受信ユニットはデータ記憶ユニットを備えてもよい。一実施形態では、データ記憶ユニットは、ハードドライブ、例えば半導体ドライブなどのポータブルドライブ、または有線通信の場合に例えばUSBを介して連結された光学ドライブである。
【0145】
またデバイスの好ましい実施形態では、データ記憶ユニットは第1の弾性支持部に取り外し可能に取り付けられてもよい。これはデバイスの統合的解決策であるが、第1の弾性支持材料からデータ記憶ユニットを取ることが可能であり得、それによってデータ記憶ユニットを外部データアクセスユニット、例えばコンピュータまたは携帯用デバイスに差し込み、それによってデータ記憶ユニット上のデータにアクセスする解決策を促進してもよい。
【0146】
デバイスの一部の実施形態では、送信ユニットおよび/または測定ユニットおよび/または受信ユニットは1つのユニットに統合される。
【0147】
別の好ましい実施形態では、受信ユニットは第1の弾性支持材料から切り離される。これは、デバイスが包帯の下に置かれた場合、または単に受信ユニットが取り外し可能に取り付けられたユニットである必要がない場合に、重要な例であることがある。例えば受信ユニットがコンピュータ、サーバまたは携帯用デバイスであってもよい。これらのあらゆる受信ユニットにアクセスすることにより、身体部の周囲の測定値をもつデータにアクセスすることができる。
【0148】
最も好ましい実施形態では、方法は、例えば送信ユニットから直接身体部の周囲の測定値を受信することにより、長手方向軸に沿って1つまたは複数の導電層の長さを制御するように構成された制御ユニットをさらに備える。1つまたは複数の導電層はアクチュエータとして構成されてもよいので、制御装置が例えば身体部の周囲の測定値に基づいて入力を受信したときにその長さを短縮するように、制御ユニットが電気信号を1つまたは複数の導電層に送信してもよい。したがって制御ユニットを有することにより、本発明は、測定ユニットからの出力に基づいた命令を受信したときに、第1の弾性支持材料を身体部にさらに締め付けることに基づくフィードバック機構、すなわち治療を提供する。換言すると本発明は、例えば包帯および/または圧迫衣類などの自動的に自己適合可能な支持材料を提供してもよい。
【0149】
例示
例1-本発明による方法に適切なデバイス
図1は、本発明の様々な態様による測定値を提供するのに適切なデバイスの一例を示し、ここではデバイスは、身体部の周りおよび/または上に置くように構成された第1の弾性支持材料1を備えることが見られ、第1の弾性支持材料は長手方向軸2を画定する第1の弾性支持材料の長さを有し、第1の弾性支持材料の幅は縦軸3を画定する。長手方向軸の少なくとも一部に沿って、かつ/または縦軸の少なくとも一部に沿って第1の弾性支持材料の少なくとも一部に接触する1つまたは複数の導電層が存在する(層(複数可)は第1の弾性支持材料の下にあるので見えない)。加えて1つまたは複数の導電層と接触する、すなわち第1の弾性支持材料の下に1つの追加層が存在し、少なくとも1つの追加層は弾性であり、少なくとも1つの追加層は1つまたは複数の導電層に湿潤が移動しないように構成される。したがって1つまたは複数の導電層は2層の間に埋め込まれているので、1つまたは複数の導電層は見えない。測定ユニットを1つまたは複数の導電層に電気接続することができ、この場合測定ユニットは、1つまたは複数の導電層への有線接続4を使用して第1の弾性支持材料1から切り離される。測定ユニット(ここでは見えない)は、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電子特性は身体部の周囲の測定値に関連する。さらに第1の弾性支持部の幅は、縦軸3を画定し、弛緩した状態で約5cmである。第1の弾性支持材料は、両端を互いに取り付けることができるように(ここでは取り付け手段は両側面上にあるので、1端部内の取り付け手段のみが見える)、長手方向軸の両端に取り付け手段5を有することにより、身体部の周りおよび/または上に置くように構成される。
【0150】
例2-所定の期間の測定値の提供
例1に実証したようなデバイスは、深刻な脚の浮腫を患っている患者に付けられた。2つのデバイスは、
図2aおよび
図2bにおいて測定のときに見られるように、約12時間の期間の間に位置BおよびCで圧迫包帯の下で脚の周りに付けられた。
【0151】
この例では、電気特性は静電容量であり、12時間で腫れが低減するにつれて細くなる脚に応じて静電容量が低減することがわかる。したがって静電容量、すなわち電気特性は身体部、この例では脚の周囲の測定値に関連することができる。夜間、すなわち22:15~5:00に脚は上がっており、患者が横になっているために脚は実際に細くなっていることに気付くことができる。夜間に静電容量は約6nFから5.5nFに下がる。周囲の対応する低減は59cmから53cmであった。
図2aおよび2bにおけるグラフは、初めは5~10分毎の測定、次いで座位から遅い歩行への変化などの変化毎に対する測定を示す。包帯のあらゆる変化、動き、または就寝中に脚を水平位置にすることにより、腫れは著しく低減し、それによって脚の周囲が著しく低減することは明らかであり、これは監視する方法によって記録される。また治療が効率的ではなく、包帯を巻き直してから約3時間後に著しく新たに腫れが低減し、適度な低減のみが位置Cに見られる前に新しい包帯が必要であるときも明らかである。また2つのセンサを使用することにより、より多くの情報が治療効果について提供され得ることも明らかである。
【0152】
例3-測定ユニットからの第2の測定
図3Aは、本発明の第1の態様によるデバイスの測定ユニットを使用して24時間の期間の間に測定された電気特性の一例を示す。
【0153】
図3Bは、24時間の期間の間の活動記録の一例を示し、25時間は
図3Aの24時間と同一である。
【0154】
図3Cは、温度を測定するためのセンサを使用して24時間の期間の間に測定された温度の一例を示し、25時間は
図3Aの24時間と同一である。
【0155】
デバイスは、午前8:00前後の開始から脚の周りに置かれた。この例では、電気特性は静電容量であり、8:00~0:00の期間に腫れが低減するにつれて脚が細くなるのに応じて静電容量は低減することが見られる。したがって静電容量、すなわち電気特性は、身体部、この場合は脚の周囲の測定値に関連することが可能である。この例では、周囲は1晩で約3.7cm低減する。
【0156】
同じ期間に、デバイスを着用する患者は測定期間に患者の活動を記録するように言われている。この例では、記録は手動でなされる。しかし一部の実施形態では、デバイスは、デバイスを着用している患者の活動を自動的に記録するように構成された加速度計を備える。
【0157】
また同じ期間に、患者の脚の温度は
図3Cに示されたように測定されている。温度は、患者の活動および/または脚の炎症の表示に関連してもよい。
【0158】
例4-測定ユニットからのさらなる測定
図4~
図8は
図3に示されたような測定と同様のさらなる測定を示す。
図3~
図8は、デバイスが個人に5夜を含む5日間付けたことを実証する。5夜にわたって、身体部、この例では脚の周囲は、6.3cmだけ低減した。
図3~
図8から見られるように、脚は夜間に周囲が低減し、昼間に周囲が増加する。
【0159】
第1夜に周囲は57cmから53.3cmに低減する。第2夜に周囲は52.4cmに低減する。第3夜に周囲は52.1cmに低減する。第4夜に周囲は51.6cmに低減し、その後新しい包帯を付ける。第5夜に周囲は50.7cmに低減する。
【0160】
提供されたように本発明は、身体部の周囲を測定することができる。
図3~
図8に示された測定に関する場合については、包帯を変える必要があるとき、例えば示されたように包帯がもはやその特定の周囲に最適ではないことを示す、脚の周囲が5cmを超えて低減したときを決定するために測定を使用することができる。示されたように、これはすでに4夜の後に起こった。本発明は、腫れた脚をより効率的に治療するデバイスおよび方法を提供する。さらに実験結果は、腫れのひきが直線ではないことを実証している。しかし周囲は数日の昼夜にわたって効率的に低減するように、昼間に脚は腫れ、夜間に腫れがひく。本発明は、このようにして以前できなかったような腫れた脚の治療への洞察を提供した。したがって本明細書に開示されたのは新規のデバイスだけではない。新規の治療も本明細書に記載されたようにデバイスの使用によって達成される。
【0161】
例5-デバイスの別の実施形態
図9は、本発明の第1の態様によるデバイスの別の例を示し、ここではデバイスが、身体部の周りおよび/または上に置くように構成された第1の弾性支持材料1を備えることが見られ、第1の弾性支持材料は長手方向軸2(軸はここでは示されていない)を画定する第1の弾性支持材料の長さを有し、第1の弾性支持材料の幅は縦軸3(軸はここでは示されていない)を画定する。2つの弾性層の間にカプセル化された1つまたは複数の導電層が存在する。したがって1つまたは複数の導電層は2層の間にあるように見えない。測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に電気接続することができ、この場合測定ユニットは、1つまたは複数の導電層への有線連結4を使用して第1の弾性支持材料1から切り離される。ここでは示されていない測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する。この例では、第1の弾性支持材料1は、一旦第1の弾性支持材料が身体部の周りおよび/または上に置かれると、第1の弾性支持材料が適所に留まるように、ポリウレタン繊維から作成された材料(第1の弾性支持材料はポリウレタン繊維から作成されている)と同様の粗度に適合した表面生地を備える。さらに縦軸3を画定する第1の弾性支持幅は、弛緩した状態で約1.5cmである。第1の弾性支持材料は、両端を互いに取り付けることができるように、長手方向軸の両端に取り付け手段5を有することにより、身体部の周りおよび/または上に置くように構成される。
【0162】
例6-測定ユニットを備えたデバイスの別の実施形態
図10は、今は測定ユニット6を含む、本発明の第1の態様によるデバイスの別の例を示し、ここではデバイスは、身体部の周りおよび/または上に置くように構成された第1の弾性支持材料1を備えることが見られ、第1の弾性支持材料は長手方向軸(2)(軸はここでは示されていない)を画定する第1の弾性支持材料の長さを有し、第1の弾性支持材料の幅は縦軸3(軸はここでは示されていない)を画定する。2つの弾性層の間にカプセル化された1つまたは複数の導電層が存在する。したがって1つまたは複数の導電層は2層の間にあるように見えない。測定ユニットは、1つまたは複数の導電層に電気接続することができ、この場合測定ユニットは、1つまたは複数の導電層への有線連結4を使用して第1の弾性支持材料1から切り離される。ここでは示されていない測定ユニット6は、1つまたは複数の導電層に関連した電気特性を測定するように構成され、電気特性は身体部の周囲の測定値に関連する。この例では、第1の弾性支持材料1は、一旦第1の弾性支持材料が身体部の周りおよび/または上に置かれると、第1の弾性支持材料が適所に留まるように、ポリウレタン繊維から作成された材料(第1の弾性支持材料はポリウレタン繊維から作成されている)と同様の粗度に適合した表面生地を備える。さらに縦軸3を画定する第1の弾性支持部の幅は、弛緩した状態で約1.5cmである。第1の弾性支持材料は、両端を互いに取り付けることができるように、長手方向軸の両端に取り付け手段5を有することにより、身体部の周りおよび/または上に置くように構成される。