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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】粒子及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20240213BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240213BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240213BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240213BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CES
C08J3/20 Z CFD
C08J3/20 Z CFG
C08J3/12 Z CET
C08L1/02 ZAB
C08L101/00
C08K5/103
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023058259
(22)【出願日】2023-03-31
(62)【分割の表示】P 2019025032の分割
【原出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2023086753
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 TOKYO PACK 2018(2018東京国際包装展) 展示日 平成30年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】山田 知夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 太平
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025053(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158686(WO,A1)
【文献】特開2008-019355(JP,A)
【文献】特開2002-138179(JP,A)
【文献】特開2012-172147(JP,A)
【文献】特開2013-014741(JP,A)
【文献】特開2016-094541(JP,A)
【文献】特開2017-122177(JP,A)
【文献】SUDAR, A. et al.,Fracture resistance of hybrid PP/elastomer/wood composites,Composite Structures,2016年05月01日,Vol.141,pp.1-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28、99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂とセルロース粉末とを含む樹脂組成物であって
前記セルロース粉末が、前記樹脂組成物100質量部当たり10質量部~60質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれており、
前記樹脂組成物に含まれる前記セルロース粉末と前記熱可塑性樹脂との合計質量は、前記樹脂組成物の質量に対して、70質量%~98質量%であり、
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%を占め、
第一の滑材と前記第一の滑材の融点よりも高い融点を有する第二の滑材とをさらに含み、
前記樹脂組成物は、前記第一の滑剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、前記第二の滑剤として脂肪酸金属塩を含み、
前記樹脂組成物中の前記第一の滑材の含有量は、前記セルロース粉末100質量部に対して、0.5質量部~5質量部であり、
前記樹脂組成物中の前記第二の滑材の含有量は、前記セルロース粉末100質量部に対して、3質量部~20質量部である、
前記樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記セルロース粉末が、100メッシュパスが90%以上である粒度を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はポリエステル系樹脂である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%を占める、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子及び樹脂組成物に関し、特にはセルロース粉末含有被覆層を有する粒子及び当該粒子を用いて製造される樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス素材を含むプラスチック成形品が注目されている。当該プラスチック成形品は、バイオマス素材を石油系材料の代替として含むので、燃焼時に排出されるCOを削減可能である。バイオマス素材としては、例えば廃棄物系バイオマス(食物廃棄物、家畜排泄物、建築廃材、及び古紙など)、未利用バイオマス(農作物非食用部及び林地残材など)、及び、資源穀物を挙げることができる。より具体的なバイオマス素材の例として、例えば木粉、稲わら、竹、及び古米などを挙げることができる。
【0003】
バイオマス素材を含むプラスチック成形品に関して、例えば、下記特許文献1には、50~70重量%の澱粉と、20~40重量%の熱可塑性樹脂と、0.1~10重量%の融点が60~100℃の低融点添加剤と、1~15重量%の融点が100℃~150℃の高融点添加剤を含み、熱可塑性樹脂の粒状体のコア部を有し、該粒状体のコア部表面に少なくとも高融点添加剤により付着した、少なくとも低融点添加剤を含有する澱粉を含む粉粒体の被覆層を備える澱粉・樹脂複合中間粒体を原料とする樹脂溶融押出してなる澱粉・樹脂複合成形加工材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-104629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオマス素材を含むプラスチック成形品の物性の向上が求められている。例えば剛性、耐熱性、又は寸法安定性などの物性を向上させることができれば、バイオマス素材を含むプラスチック成形品の用途がさらに広がり、さらに環境に貢献できると考えられる。そこで、本発明は、バイオマス素材を含むプラスチック成形品の物性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構成を有する粒子によって、バイオマス素材の含有割合が高く且つ優れた物性を有する樹脂組成物を製造することができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂からなる粒子コア部と、当該粒子コア部の少なくとも一部を覆うセルロース粉末含有被覆層と、から構成されている粒子を提供する。
本発明の一つの実施態様に従い、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%を占めうる。
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%を占めうる。
前記粒子は、フィルム又はシートを成形するために用いられうる。
本発明の他の実施態様に従い、前記セルロース粉末が、100メッシュパスが90%以上である粒度を有しうる。
前記粒子は、射出成形のために用いられうる。
前記被覆層は、第一の滑材と前記第一の滑材の融点よりも高い融点を有する第二の滑材とを含みうる。
前記第二の滑材が、脂肪酸金属塩、炭化水素、高級アルコール、脂肪族アミド、及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含みうる。
前記第一の滑材はグリセリン脂肪酸エステルを含みうる。
前記粒子は、直径3mm~10mmの略球状形態を有しうる。
【0008】
また、本発明は、熱可塑性樹脂とセルロース粉末とを含み、前記セルロース粉末の含有
割合が、樹脂組成物の質量に対し20質量%~50質量%であり、
第一の滑材と前記第一の滑材の融点よりも高い融点を有する第二の滑材とをさらに含む
、樹脂組成物も提供する。
本発明の一つの実施態様に従い、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち
、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロ
ース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%を占めうる。
本発明の他の実施態様に従い、前記セルロース粉末が、100メッシュパスが90%以
上である粒度を有しうる。
前記樹脂組成物は、前記第一の滑剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、前
記第二の滑剤として脂肪酸金属塩を含んでよい。
前記セルロース粉末と前記熱可塑性樹脂との合計質量は、前記樹脂組成物の質量に対し
て、70質量%~98質量%であってよい。
また、本発明は、
熱可塑性樹脂とセルロース粉末とを含む樹脂組成物であって、
前記セルロース粉末が、前記樹脂組成物100質量部当たり10質量部~60質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれており、
前記樹脂組成物に含まれる前記セルロース粉末と前記熱可塑性樹脂との合計質量は、前記樹脂組成物の質量に対して、70質量%~98質量%であり、
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%を占め、
第一の滑材と前記第一の滑材の融点よりも高い融点を有する第二の滑材とをさらに含み、
前記樹脂組成物は、前記第一の滑剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、前記第二の滑剤として脂肪酸金属塩を含み、
前記樹脂組成物中の前記第一の滑材の含有量は、前記セルロース粉末100質量部に対して、0.5質量部~5質量部であり、
前記樹脂組成物中の前記第二の滑材の含有量は、前記セルロース粉末100質量部に対して、3質量部~20質量部である、
前記樹脂組成物も提供する。
前記樹脂組成物は熱可塑性樹脂組成物であってよい。
前記セルロース粉末は、100メッシュパスが90%以上である粒度を有しうる。
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はポリエステル系樹脂であってよい。
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%を占めうる。

【発明の効果】
【0009】
本発明の粒子によって、セルロース含有割合の高い樹脂組成物を製造することができる。さらに、当該樹脂組成物は、例えば剛性、耐熱性、及び寸法安定性などの物性に優れている。
また、当該粒子の被覆層に含まれるセルロース粉末として、特定のセルロース粉末を採用することによって、さらに物性を向上することができる。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従う粒子の一例の模式図である。
図2】曲げ弾性率の評価結果を示す図である。
図3】荷重たわみ温度の評価結果を示す図である。
図4】寸法安定性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。
【0012】
1.粒子
【0013】
本発明の粒子の模式図を図1に示す。図1に示されるとおり、本発明の粒子1は、熱可塑性樹脂からなる粒子コア部2と当該粒子コア部の少なくとも一部を覆うセルロース粉末含有被覆層3とから構成されている。本発明の粒子は、セルロース含有樹脂組成物を製造するために適しており、特にはセルロース含有割合が高い樹脂組成物を製造するために適している。さらに、本発明の粒子を用いることで、樹脂組成物内でのセルロース粉末の分散性を向上させることもできる。以下で、当該粒子コア部及び当該被覆層について説明する。
【0014】
1-1.粒子コア部
【0015】
前記粒子コア部は熱可塑性樹脂から形成されている。当該熱可塑性樹脂は、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はポリエステル系樹脂であってよく、好ましくはポリオレフィン系樹脂である。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα-オレフィン類)を主要なモノマーとする重合により得られる高分子である。当該ポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物であってよい。ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレンを主成分とする樹脂であり、例えばポリエチレンを当該樹脂質量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上、好ましくは98質量%以上の割合で含みうる。ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂であり、例えばポリプロピレンを当該樹脂質量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上の割合で含みうる。
ポリエチレンは、より具体的には低密度ポリエチレン(LDPE: Low Density Polyethylene)、高密度ポリエチレン(HDPE: High Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン(VLDPE:Very Low Density Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene)、若しくは超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE: Ultra High Molecular Weight-Polyethylene)、又は、これらのうちの2種以上の組み合わせでありうる。
ポリプロピレンは、より具体的には、ホモポリマーのポリプロピレン、又は、ランダムコポリマー若しくはブロックコポリマーのポリプロピレン(例えばエチレン-プロピレン共重合体など)であってよい。
【0017】
前記ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂であってよく、例えばバイオマスポリエチレン及び/又はバイオマスポリプロピレンでありうる。バイオマスポリエチレンは、例えばLDPE、LLDPE、又はHDPEでありうる。前記ポリオレフィン系樹脂としてバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂を採用することによって、CO2排出量を削減することができる。
【0018】
前記ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン系樹脂であってもよい。例えば前記ポリオレフィン系樹脂は、例えばメタロセン触媒系のポリエチレン若しくはポリプロピレンであってよく、又は、これらの組み合わせであってもよい。
【0019】
前記ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレンを主成分とする樹脂であり、例えばポリスチレンを当該樹脂質量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上、好ましくは98質量%以上の割合で含みうる。ポリスチレンの例として、例えば汎用ポリスチレン(GPPS)及び耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などを挙げることができる。
【0020】
前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミドを主成分とする樹脂であり、例えばポリアミドを当該樹脂質量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上、好ましくは98質量%以上の割合で含みうる。前記ポリアミドは、例えば脂肪族ポリアミドであってよく、より具体的にはポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、又はポリアミド6・12でありうる。
【0021】
前記ポリエステル系樹脂は、ポリエステルを主成分とする樹脂であり、例えばポリエステルを当該樹脂質量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上、好ましくは98質量%以上の割合で含みうる。ポリエステルの例として、ポリエチレンテレフタレート(以下PETともいう)、ポリブチレンサクシネート(以下PBSともいう)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下PBSAともいう)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下PBATともいう)、ポリヒドロキシアルカン酸(以下PHAともいう)、ポリ乳酸(以下PLAともいう)、ポリブチレンテレフタレート(以下PBTともいう)、ポリエチレンナフタレート(以下PENともいう)、及びポリアリレート(以下PARともいう)、ポリカーボネート(以下PCともいう)を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上の組み合わせがポリエステルとして用いられうる。
【0022】
本発明において、前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、以下で説明する第二の滑剤の融点よりも高い融点を有する。すなわち、前記熱可塑性樹脂は、第一の滑剤及び第二の滑剤のいずれの融点よりも高い融点を有する。これにより、本発明の粒子を製造する際に、第一の滑剤及び第二の滑剤は融解するが当該熱可塑性樹脂は融解しない温度で材料を混合することができ、より容易に粒子コア部の周囲にセルロース粉末含有被覆層を形成することができる。前記熱可塑性樹脂は、好ましくは110℃~250℃、より好ましくは115℃~230℃、さらにより好ましくは120℃~210℃の融点を有しうる。
【0023】
前記粒子コア部は、好ましくは略球状形態を有し、より好ましくは直径2mm~9mmの略球状形態、より好ましくは直径2mm~7mm、特に好ましくは直径3mm~5mmの略球状形態を有しうる。このような形状を有する粒子コア部を採用することによって、当該粒子コア部の全体にわたってセルロース粉末を被覆することがより容易になる。
本発明の粒子は、好ましくは略球状形態を有し、より好ましくは直径3mm~10mmの略球状形態、さらにより好ましくは直径4mm~7mmの略球状形態を有しうる。
以上の寸法を有することによって、以下で述べる樹脂組成物の製造において、各成分が混ざりやすくなり、当該樹脂組成物をより容易に製造することができる。
【0024】
前記粒子コア部は、本発明の粒子の質量のうち好ましくは20質量%~90質量%、より好ましくは20質量%~80質量%、さらにより好ましくは30質量%~70質量%を占めうる。すなわち、前記粒子コア部を構成する熱可塑性樹脂の含有量が、本発明の粒子の質量に対して、好ましくは20質量%~90質量%、より好ましくは20質量%~80質量%、さらにより好ましくは30質量%~70質量%でありうる。
【0025】
1-2.セルロース粉末含有被覆層
【0026】
前記セルロース粉末含有被覆層は、前記粒子コア部の少なくとも一部を覆い、好ましくは前記粒子コア部の表面の80%以上の面積を覆い、より好ましくは90%以上の面積を覆い、特に好ましくは前記粒子コア部の表面の全体を覆う。
【0027】
前記セルロース粉末含有被覆層は、好ましくは滑材を含む。当該滑材によって、当該被覆層を構成するセルロース粉末が、前記粒子コア部の表面に付着されうる。滑材は、樹脂組成物と成形加工機との間の摩擦及び/又は粒子間の摩擦を低減させうる。滑材によって、樹脂組成物の流動性及び/又は離形性が改善されうる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様に従い、前記セルロース粉末含有被覆層は、第一の滑材と前記第一の滑材の融点よりも高い融点を有する第二の滑材とを含む。これら融点の異なる2種の滑材を含むことによって、前記セルロース粉末を前記粒子コア部により容易に付着させることができる。前記第一の滑材は、例えば50℃~100℃、好ましくは55℃~90℃、より好ましくは60℃~80℃の融点を有しうる。前記第二の滑材は、例えば100℃~160℃、好ましくは100℃~150℃、より好ましくは100℃~140℃の融点を有しうる。
【0029】
前記第一の滑材として、例えばエステル系滑材を挙げることができ、特には上記で述べた数値範囲内の融点を有するエステル系滑材が用いられうる。エステル系滑材として、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、特殊脂肪酸エステル、及び高級アルコール脂肪酸エステルを挙げることができる。前記グリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、アセチル化モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、及び中鎖脂肪酸モノグリセリドを包含する。
本発明の好ましい実施態様に従い、前記第一の滑材はエステル系滑材を含み、より好ましくはグリセリン脂肪酸エステルを含み、さらにより好ましくはグリセリンモノステアレートを含む。前記第一の滑材は、エステル系滑材のみであってよく、より好ましくはグリセリン脂肪酸エステルのみであってもよい、さらにより好ましくはグリセリンモノステアレートのみであってもよい。
【0030】
前記第二の滑材は、脂肪酸金属塩、炭化水素、高級アルコール、脂肪族アミド、及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含みうる。前記第二の滑材は、特には上記で述べた数値範囲内の融点を有する、脂肪酸金属塩、炭化水素、高級アルコール、脂肪族アミド、及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物でありうる。
前記脂肪酸金属塩として、例えば炭素数が10~30、特には炭素数が12~25の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を挙げることができる。より具体的には、前記第二の滑材は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種でありうる。
【0031】
本発明の特に好ましい実施態様に従い、前記第一の滑材が前記グリセリン脂肪酸エステルであり、且つ、前記第二の滑材が前記脂肪酸金属塩でありうる。第一及び第二の滑材としてこれら化合物を用いることによって、本発明の粒子から樹脂組成物を製造するための押出における溶融粘度をより適切なものとすることができる。
【0032】
前記粒子中の前記第一の滑材の含有量は、前記セルロース粉末100質量部に対して、例えば0.5質量部~5質量部、好ましくは1質量部~4質量部でありうる。
前記粒子中の前記第二の滑材の含有量は、前記セルロース粉末100質量部に対して、例えば3質量部~20質量部、好ましくは5質量部~15質量部でありうる。特には、前記粒子中の脂肪酸金属塩の含有量が、前記セルロース粉末100質量部に対して、例えば3質量部~20質量部、好ましくは5質量部~15質量部でありうる。
第一及び第二の滑材の量を以上で述べた数値範囲内とすることが、本発明の粒子から製造される樹脂組成物の溶融粘度を成形に適したものとすることに寄与する。
また、第一及び第二の滑材の量が以上で述べた数値範囲内にあることは、本発明の粒子の製造に適しており、すなわち、熱可塑性樹脂からなる粒子コア部の表面にセルロース粉末を付着させることをより容易にし、すなわち本発明の粒子の製造をより効率的に行うことが可能となる。
【0033】
前記セルロース粉末含有被覆層に含まれるセルロース粉末の粒子サイズD50(メジアン径)は、例えば15μm~150μmであり、特には好ましくは20μm~100μmでありうる。前記粒子サイズD50は、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD-3100、株式会社島津製作所)を用いた湿式測定により決定される。上記数値範囲内の粒子サイズを有するセルロース粉末が、本発明の粒子を形成するために適している。また、セルロース粉末が、上記数値範囲内の粒子サイズを有することが、本発明の樹脂組成物中のセルロース粉末の分散性の向上に貢献しうる。
【0034】
本発明の一つの好ましい実施態様に従い、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%、好ましくは70%~100%、より好ましくは80%~100%、さらにより好ましくは85%~100%を占める。セルロース繊維の数に関する上記割合は、セルロース粉末の全セルロース繊維数のうちの、0μm~9.8μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合(以下、「第一の割合」という)と0μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合(以下、「第二の割合」という)とを、前記レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により決定し、前記第二の割合から前記第一の割合を差し引くことによって求められる。前記数値範囲「0μm~9.8μm」及び「0μm~110.6μm」はいずれも、前記湿式測定において、前記レーザ回折式粒度分布測定装置に対して入力される数値範囲である。
この実施態様において、特に好ましくは、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%、好ましくは0%~25%、より好ましくは0%~20%、さらにより好ましくは0%~15%を占める。セルロース繊維の数に関する上記割合は、セルロース粉末の全セルロース繊維数のうちの、0μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合(上記「第二の割合」である)と0μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合(以下、「第三の割合」という)とを、前記レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により決定し、前記第三の割合から前記第二の割合を差し引くことによって求められる。前記数値範囲「0μm~110.6μm」及び「0μm~998.4μm」はいずれも、前記湿式測定において、前記レーザ回折式粒度分布測定装置に対して入力される数値範囲である。
上記粒子サイズ分布を有するセルロース粉末は、例えばパルプを酸などの化学薬品により処理を行うことで製造されうる。上記粒子サイズ分布を有するセルロース粉末として、例えばKCフロックW400(日本製紙株式会社)を挙げることができる。
本発明の粒子は、フィルム又はシートを成形するために用いられうる。特にはこの実施態様における粒子サイズ分布を有するセルロース粉末を用いることによって、フィルム及びシートなどの厚みの薄い成形品を本発明の粒子を用いて製造する場合により良い成形性(特には真空成形における成形性)がもたらされる。
特には、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の80%~100%、さらにより好ましくは85%~100%を占めることによって、本発明の粒子を用いて製造された樹脂組成物を真空成形に付して得られる成形品における破れ又は穴の発生を防ぐことができる。成形品の破れ又は穴の発生を防ぐために、特に好ましくは、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~20%、さらにより好ましくは0%~15%を占める。
以上のとおり、この実施態様に従う粒子は、フィルム又はシートを成形するための樹脂組成物の製造のために適しており、すなわちフィルム又はシートを製造するために用いられうる。なお、この実施態様に従う粒子は、射出成形のために用いられてもよい。
【0035】
本発明の他の好ましい実施態様に従い、前記セルロース粉末は、100メッシュパスが90%以上である粒度を有しうる。この実施態様において、より好ましくは、前記セルロース粉末が、100メッシュパスが90%以上である粒度を有し、且つ、前記セルロース粉末の見掛比重が0.30g/ml~0.40g/mlでありうる。
【0036】
前記粒度は、標準篩い法により測定され、具体的には以下のとおりに測定される。すなわち、試料10gを100メッシュの標準ふるいに入れ、受け皿及び蓋を当該標準ふるいにセットし、そして、ロータップ型振とう機で40分間振とうする。そして、試料質量(10g)及び篩い残分の質量から、以下の式により、粒度が求められる。
粒度(%)=[(試料質量(g)-篩い残分(g))/試料質量(g)]×100
【0037】
前記見掛け比重は、以下のとおりに測定される。すなわち、試料10gを天秤で精秤し、50mlメスシリンダーに入れる。当該試料が飛び散らないようにして当該メスシリンダーの底をゴムシートを敷いた台の上にあてて叩く。当該叩く作業を、試料がこれ以上詰まらなくなるまで続ける。当該叩く作業の後に、試料の表面を平らにし、その目盛り(容積、ml)を読む。そして、以下の式で見かけ比重が求められる。
見掛け比重(g/ml)=試料(10g)/容積(ml)
【0038】
上記粒度(又は上記粒度及び上記見掛比重)を有するセルロース粉末は、例えばパルプを機械的に粉砕(例えばジェットミル粉砕)することによって製造されうる。上記粒度(又は上記粒度及び上記見掛比重)を有するセルロース粉末として、例えばKCフロック100GKを挙げることができる。
本発明の粒子は、射出成形のために用いられうる。特には、上記粒度(又は上記粒度及び上記見掛比重)を有するセルロース粉末を用いることによって、本発明の粒子を射出成形に付する場合に良い成形性がもたらされる。さらに、上記セルロース粉末は、本発明の粒子を用いて製造される樹脂組成物の強度及び/又は耐熱性の向上に寄与する。
【0039】
本発明の粒子を構成する前記セルロース粉末と前記熱可塑性樹脂との合計質量は、前記粒子の質量に対して、例えば70質量%~98質量%、好ましくは80質量%~97質量%、より好ましくは85質量%~95%でありうる。前記合計質量が当該範囲内にあることによって、当該粒子から製造される樹脂組成物中の樹脂量を高めることができ、さらにはセルロース粉末の含有量を高めることができる。
【0040】
前記セルロース粉末含有樹脂層には、さらに他の成分が含まれていてもよい。当該他の成分として、例えば相溶化剤及び着色剤を挙げることができる。
【0041】
前記相溶化剤は、当該粒子から製造される樹脂組成物中においてセルロースをより均一に分散させるために用いられうる。前記相溶化剤は、前記熱可塑性樹脂の種類に応じて選択されてよい。前記相溶化剤として、例えば酸変性ポリオレフィン、酸変性ナイロン、酸変性ポリスチレン、酸変性EVA、酸変性エチレン共重合ポリマー、酸変性アクリレート、アクリル酸変性EVA、及び変性エチレンアクリレートなどを挙げることができる。
【0042】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、前記相溶化剤は好ましくは酸変性ポリオレフィンであり、特には無水カルボン酸変性ポリオレフィン又はオレフィン系のコモノマーでありうる。
当該無水カルボン酸変性ポリオレフィンを構成する無水カルボン酸は、好ましくは無水マレイン酸でありうる。前記相溶化剤は、例えば無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂であり、より特には無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、及び無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる1つ又は2以上の組み合わせであってよい。前記相溶化剤には、ゴム成分が分散されていてもよい。
前記相溶化剤は、前記粒子100質量部当たり、例えば0.1質量部~10質量部、より好ましくは0.5質量部~6質量部の含有割合で、前記粒子に含まれうる。
【0043】
前記着色剤は、当該粒子から製造される樹脂組成物に着色を施すために用いられうる。前記着色剤として、例えば酸化チタン、カーボンブラック、染料、及び顔料を挙げることができる。
【0044】
また、前記他の成分として、例えば酸化防止剤及び耐衝撃剤などが用いられてもよい。酸化防止剤として、例えばフェノール系の酸化防止剤が用いられうる。耐衝撃剤として、例えばスチレン系熱可塑性エラストマーであってよく、より具体的には例えばスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、及びスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)を挙げることができる。
【0045】
1-3.本発明の粒子の製造方法
【0046】
本発明の粒子の製造方法は、以下の工程を含みうる:
(1)セルロース粉末、第一の滑剤、第二の滑剤、及び、粒子コア部となる熱可塑性樹脂を、当該第二の滑剤の融点以上であり且つ当該熱可塑性樹脂の温度よりも低い温度で混合して、融解した当該第一の滑剤及び当該第二の滑剤、当該セルロース粉末、並びに当該熱可塑性樹脂を含む混合物を得る混合工程;及び
(2)前記混合工程において得られた前記混合物を、当該第一の滑剤の融点以上であり且つ当該第二の滑剤の融点より低い温度に、撹拌しながら冷却する冷却工程。
前記冷却工程において、前記第二の滑剤が固化されて、前記粒子コア部の表面に前記第一の滑剤、前記第二の滑剤、及び前記セルロース粉末を含むセルロース粉末含有被覆層が形成されて、本発明の粒子が得られる。
以下で、各工程についてより詳細に説明する
【0047】
(1)混合工程
【0048】
前記混合工程において、セルロース粉末、第一の滑剤、第二の滑剤、及び、粒子コア部となる熱可塑性樹脂が混合される。前記混合工程において、上記1-2.で述べた他の成分(例えば相溶化剤、着色剤、酸化防止剤、及び耐衝撃剤など)も混合されてよい。
【0049】
前記混合工程は、例えば混合温度を上記温度に設定可能である当技術分野で既知の撹拌装置により行われてよい。前記混合工程は、上記のとおり、当該第二の滑剤の融点以上であり且つ当該熱可塑性樹脂の温度よりも低い温度で行われる。前記混合工程は、例えば100℃~160℃、好ましくは100℃~150℃、より好ましくは100℃~140℃で行われうる。
【0050】
前記混合工程において、上記温度で混合を行うことによって、前記第一の滑剤及び前記第二の滑剤が融解する一方で、前記熱可塑性樹脂は融解しない。前記混合工程において、セルロース粉末と、固形の熱可塑性樹脂と、融解した前記第一の滑剤及び前記第二の滑剤とが混合された状態が形成される。
【0051】
前記混合工程において得られた混合物は、好ましくは前記第二の滑剤の融点より低い温度にならないように(特には当該混合工程において採用された温度を維持したままで)、前記冷却工程が行われる装置へと供給されうる。
【0052】
(2)冷却工程
【0053】
前記冷却工程において、前記混合工程において得られた混合物は、撹拌されながら、当該第一の滑剤の融点以上であり且つ当該第二の滑剤の融点より低い温度へと冷却されうる。撹拌しながら冷却を行うことによって、粒子コア部周囲に、より均一なセルロース粉末含有被覆層が形成されて、本発明の粒子が得られうる。
【0054】
前記冷却工程は、前記混合工程において得られた混合物を、当該第一の滑剤の融点以上であり且つ当該第二の滑剤の融点より低い温度へと冷却可能な撹拌装置により行われうる。
【0055】
上記製造方法により得られた本発明の粒子は、好ましくは、当該第一の滑剤の融点以上であり且つ当該第二の滑剤の融点より低い温度で維持される。これにより、前記粒子からセルロース粉末が剥離することを防ぐことができる。
【0056】
1-4.本発明の粒子の使用方法
【0057】
本発明の粒子は、例えばセルロース粉末と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物を製造するために用いられうる。例えば、本発明の粒子を、当該粒子を構成する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し及び混錬することによって、当該粒子を構成するセルロース粉末が当該熱可塑性樹脂中に分散された樹脂組成物が得られる。本発明の粒子を用いて当該樹脂組成物を製造することによって、セルロース粉末がよく分散した樹脂組成物を製造することができる。本発明の粒子を用いて得られる樹脂組成物は、以下「2.樹脂組成物」において述べる本発明に従う樹脂組成物でありうる。
【0058】
2.樹脂組成物
【0059】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とセルロース粉末とを含み、前記セルロース粉末の含有割合が、樹脂組成物の質量に対し20質量%~50質量%である。さらに、本発明の樹脂組成物は、第一の滑材と前記第一の滑材の融点よりも高い融点を有する第二の滑材とをさらに含む。
【0060】
2-1.樹脂組成物の組成
【0061】
本発明の樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂及びセルロース粉末は、上記「1-1.粒子コア部」及び「1-2.セルロース粉末含有被覆層」において説明したとおりであり、当該説明が本発明の樹脂組成物についても当てはまる。
【0062】
本発明の樹脂組成物中の前記セルロース粉末の含有割合は、当該樹脂組成物の質量に対し20質量%~50質量%であり、好ましくは22質量%~48質量%、より好ましくは25質量%~45質量%でありうる。
【0063】
本発明の樹脂組成物に含まれる前記セルロース粉末と前記熱可塑性樹脂との合計質量は、当該樹脂組成物の質量に対して、例えば70質量%~98質量%、好ましくは80質量%~97質量%、より好ましくは85質量%~95質量%でありうる。前記合計質量が当該範囲内にあることによって、当該樹脂組成物中の樹脂量を高めることができ、さらにはセルロース粉末の含有量を高めることができる。
【0064】
本発明の樹脂組成物に含まれる前記セルロース粉末の質量と前記熱可塑性樹脂の質量との比は、好ましくは1:1~1:4、より好ましくは1:1~1:3、さらにより好ましくは1:1~1:2.5でありうる。当該範囲内の比によって、当該樹脂組成物中のセルロース粉末の分散性を向上することができる。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、第一の滑材と前記第一の滑材の融点よりも高い融点を有する第二の滑材とを含む。前記第一の滑材及び前記第二の滑材は、上記「1-2.セルロース粉末含有被覆層」において説明したとおりであり、当該説明が本発明の樹脂組成物についてもあてはまる。本発明の特に好ましい実施態様に従い、前記第一の滑材が前記グリセリン脂肪酸エステルであり、且つ、前記第二の滑材が前記脂肪酸金属塩でありうる。
【0066】
本発明の樹脂組成物中の前記第一の滑材の含有量は、前記セルロース粉末100質量部に対して、例えば0.5質量部~5質量部、好ましくは1質量部~4質量部でありうる。
本発明の樹脂組成物中の前記第二の滑材の含有量は、前記セルロース粉末100質量部に対して、例えば3質量部~20質量部、好ましくは5質量部~15質量部でありうる。
第一及び第二の滑材の量を以上で述べた数値範囲内とすることが、本発明の樹脂組成物の溶融粘度を成形に適したものとすることに寄与する。
【0067】
本発明の樹脂組成物中に含まれる前記セルロース粉末の粒子サイズD50(メジアン径)は、例えば15μm~150μmであり、特には好ましくは20μm~100μmでありうる。前記粒子サイズD50は、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD-3100、株式会社島津製作所)を用いた湿式測定により決定される。上記数値範囲内の粒子サイズを有するセルロース粉末を用いることが、本発明の樹脂組成物中のセルロース粉末の分散性の向上に貢献しうる。
【0068】
本発明の一つの好ましい実施態様に従い、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%、好ましくは70%~100%、より好ましくは80%~100%、さらにより好ましくは85%~100%を占める。セルロース繊維の数に関する上記割合の算出方法は、上記「1-2.セルロース粉末含有被覆層」において述べたとおりである。
この実施態様において、特に好ましくは、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%、好ましくは0%~25%、より好ましくは0%~20%、さらにより好ましくは0%~15%を占める。セルロース繊維の数に関する上記割合の算出方法も、上記「1-2.セルロース粉末含有被覆層」において述べたとおりである。
本発明の樹脂組成物は、このような粒子サイズ分布を有するセルロース粉末を含むことによって、フィルム及びシートなどの厚みの薄い成形品を製造する場合により良い成形性(特には真空成形における成形性)がもたらされる。
特には、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の80%~100%、さらにより好ましくは85%~100%を占めることによって、本発明の樹脂組成物を真空成形に付して得られる成形品における破れ又は穴の発生を防ぐことができる。成形品の破れ又は穴の発生を防ぐために、特に好ましくは、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~20%、さらにより好ましくは0%~15%を占める。
以上のとおり、この実施態様に従う本発明の樹脂組成物は、フィルム又はシートを成形するために用いられうる。
【0069】
本発明の他の好ましい実施態様に従い、前記セルロース粉末は、100メッシュパスが90%以上である粒度を有しうる。この実施態様において、より好ましくは、前記セルロース粉末が、100メッシュパスが90%以上である粒度を有し、且つ、前記セルロース粉末の見掛比重が0.30g/ml~0.40g/mlでありうる。前記粒度及び見掛比重は、上記「1-2.セルロース粉末含有被覆層」において述べたとおりに測定される。
上記粒度(又は上記粒度及び上記見掛比重)を有するセルロース粉末を用いることによって、本発明の樹脂組成物を射出成形に付する場合に良い成形性がもたらされる。さらに、上記セルロース粉末は、本発明の樹脂組成物の強度及び/又は耐熱性の向上に寄与する。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、さらに他の成分が含みうる。当該他の成分として、例えば相溶化剤及び着色剤を挙げることができる。当該相溶化剤及び着色剤は、上記「1-2.セルロース粉末含有被覆層」において述べたとおりである。また、当該他の成分として、例えば酸化防止剤及び耐衝撃剤などが用いられてもよい。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、フィルム又はシートを成形するために用いられうる。すなわち、本発明は、フィルム又はシートの形状にある本発明の樹脂組成物も提供する。当該フィルムの厚みは、例えば10μm~500μm、特には10μm~300μm、より特には10μm~200μmでありうる。当該シートの厚みは、例えば0.2mm~2mm、特には0.3mm~1.5mm、より特には0.4mm~1mmでありうる。
【0072】
2-2.樹脂組成物の物性
【0073】
本発明の樹脂組成物は、温度23℃且つ湿度50%の環境下にて28日間おかれた場合の寸法変化率が、好ましくは-0.5%~+0.5%であり、より好ましくは-0.4%~+0.4%であり、さらに好ましくは-0.2%~+0.2%でありうる。当該寸法変化率は、長辺32cm×短辺14cm×厚み0.4mmの寸法を有する樹脂組成物の長辺方向における寸法変化率である。本発明の樹脂組成物は、このように寸法変化率が低い。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、JIS K 7171に従い測定した場合の曲げ弾性率が、好ましくは1.8GPa以上であり、より好ましくは1.8GPa~3GPaであり、さらにより好ましくは2GPa~2.8GPaでありうる。当該曲げ弾性率は、長辺8cm×短辺1cm×厚み0.5cmの寸法を有する樹脂組成物に対して測定される。本発明の樹脂組成物は、このような曲げ弾性率を有し、すなわち優れた剛性を有する。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、JIS K 7191に従い測定した場合の荷重たわみ温度が、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは100℃~150℃であり、さらにより好ましくは105℃~130℃でありうる。当該荷重たわみ温度は、長辺8cm×短辺1cm×厚み0.5cmの寸法を有する樹脂組成物に対して測定される。当該測定における荷重は0.45MPaである。本発明の樹脂組成物は、このような荷重たわみ温度を有し、すなわち優れた耐熱性を有する。
【0076】
2-3.樹脂組成物の製造方法
【0077】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明の粒子を、当該粒子の粒子コア部を形成する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し及び混錬する混錬工程を含む。当該混錬工程によって得られた混錬産物が、本発明の樹脂組成物である。前記製造方法はさらに、前記混錬工程において得られた樹脂組成物を成形する成形工程を含んでもよい。成形された当該樹脂組成物も、本発明の樹脂組成物に包含される。以下混錬工程及び成形工程について説明する。
【0078】
(1)混錬工程
【0079】
前記混錬工程において用いられる本発明の粒子は、上記「1.粒子」において説明したとおりのものであり、その説明が本発明の製造方法においてもあてはまる。前記混錬工程において、本発明の粒子に含まれる熱可塑性樹脂が溶融され、そして、溶融した当該熱可塑性樹脂中に、本発明の粒子のセルロース粉末含有被覆層に含まれるセルロース粉末が分散される。また、当該混錬工程において、本発明の粒子に含まれうる第一の滑剤及び第二の滑剤も溶融され、そして、当該熱可塑性樹脂と混合されうる。
【0080】
好ましくは、前記「1-3.本発明の粒子の製造方法」において述べた冷却工程において得られた本発明の粒子は、当該第一の滑剤の融点以上であり且つ当該第二の滑剤の融点より低い温度で維持されたまま、前記混錬工程を行うための装置(以下で述べる押出機など)へと供給されうる。
【0081】
前記混錬工程は、本発明の粒子に含まれる熱可塑性樹脂が溶融可能な温度において行われうる。当該温度は、用いられる熱可塑性樹脂の融点に応じて当業者により適宜選択されてよい。前記混錬工程は、例えば100℃~250℃、好ましくは110℃~250℃、より好ましくは115℃~230℃、さらにより好ましくは120℃~210℃、特に好ましくは120℃~190℃で行われうる。
【0082】
前記混錬工程は、例えば二軸混錬押出機若しくは一軸混錬押出機により行われてよい。これらの押出機として、当技術分野で既知の装置が用いられてよい。好ましくは、前記混錬工程は、二軸混錬押出機による加熱及び混錬処理を少なくとも含む。二軸混錬押出機として、同方向回転式の二軸混錬押出機が用いられてよく、又は、異方向回転式の二軸混錬押出機が用いられてもよい。二軸混錬押出機による混錬処理を行うことにより、セルロース粉末がより均一に分散した樹脂組成物を得ることができる。
【0083】
前記混錬工程において得られた混錬産物は、ペレット化されることなく、そのまま成形工程に付されてよい。これにより、ペレット化工程を省略することができる。
なお、前記混錬工程において得られた混錬産物はペレット化されてもよい。当該ペレット化された樹脂組成物が、成形工程に付されてもよい。
【0084】
(2)成形工程
【0085】
前記成形工程において、前記混錬工程において製造された樹脂組成物の成形が行われる。本発明の樹脂組成物は、例えば20μm~5mmの厚みを有する成形品を成形するために適しており、すなわち、当該成形品を成形するために用いられうる。
【0086】
前記成形工程において、本発明の樹脂組成物は、例えばフィルム又はシートへと成形されうる。前記フィルム又はシートの厚みは、例えば0.01mm~5mmでありうる。前記フィルムを製造するために、インフレーション成形が行われうる。当該インフレーション成形は、例えばリングダイを用いて行われうる。また、前記シートを製造するために、Tダイを用いた成形が行われうる。これらの成形において、例えば前記混錬産物がペレット化されることなく、そのままこれらのダイから押し出されてよく、又は、前記ペレット化された樹脂組成物が溶融され、そして、溶融した樹脂組成物がこれらのダイから押し出されてもよい。
【0087】
代替的には、前記成形工程において、本発明の樹脂組成物は、射出成形又は真空成形によって成形されうる。例えば、本発明の樹脂組成物は容器の形状に成形されうる。容器の形状に成形するために、前記射出成形又は真空成形が用いられうる。前記射出成形において、本発明の樹脂組成物は、溶融した状態で、所望の形状(例えば容器)を当該樹脂組成物に付与するための金型内に射出されうる。当該金型内で、当該樹脂組成物が冷却されて、所望の形状を有する樹脂組成物(成形品)が得られる。前記真空成形において、前記シートを加熱により軟化して、軟化した当該シートを吸引によって金型に密着させて、成形される。
【0088】
2-4.樹脂組成物の具体例
【0089】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性であってよい。本発明の樹脂組成物が熱可塑性であることによって、種々の形状を有する成形品を製造することができる。以下で本発明に従う樹脂組成物の組成及び用途のより詳細な具体例を説明する。
【0090】
(1)シート成形用熱可塑性樹脂組成物
【0091】
本発明の一つの実施態様に従い、前記熱可塑性樹脂組成物は、セルロース粉末とポリプロピレンとを含みうる。
前記セルロース粉末は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば10質量部~60質量部、好ましくは15質量部~55質量部、より好ましくは20質量部~50質量部、さらにより好ましくは25質量部~45質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれる。
前記ポリプロピレンは、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば30質量部~80質量部、好ましくは35質量部~75質量部、より好ましくは40質量部~70質量部、さらにより好ましくは45質量部~65質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれる。
【0092】
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%、好ましくは70%~100%、より好ましくは80%~100%、さらにより好ましくは85%~100%を占める。特に好ましくは、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%、好ましくは0%~25%、より好ましくは0%~20%、さらにより好ましくは0%~15%を占める。
【0093】
前記樹脂組成物はさらに、前記第一の滑剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、前記第二の滑剤として脂肪酸金属塩を含みうる。
当該グリセリン脂肪酸エステルは、例えばグリセリンモノステアレートでありうる。当該グリセリン脂肪酸エステルは、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば0.3質量部~3質量部、好ましくは0.4質量部~2質量部、より好ましくは0.5質量部~1.5質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
前記脂肪酸金属塩は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば2質量部~6質量部、好ましくは2.5質量部~5.5質量部、より好ましくは3質量部~5質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
前記脂肪酸金属塩は、例えば炭素数が10~30、特には炭素数が12~25の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を挙げることができる。より具体的には、前記第二の滑材は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種でありうる。
【0094】
前記樹脂組成物は、耐衝撃剤をさらに含みうる。当該耐衝撃剤として、スチレン系熱可塑性エラストマーが含まれてよい。 前記耐衝撃剤は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば0.3質量部~3質量部、好ましくは0.4質量部~2質量部、より好ましくは0.5質量部~1.5質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
【0095】
前記樹脂組成物は、例えば相溶化剤、酸化防止剤、及び着色料などの他の成分をさらに含んでもよい。相溶化剤として、好ましくは無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂を含みうる。当該相溶化剤は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば0.1質量部~3質量部、好ましくは0.2質量部~2質量部、より好ましくは0.5質量部~1.5質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
【0096】
この実施態様に従う熱可塑性樹脂組成物は、シートを成形するために適しており、例えば0.2mm~2mm、特には0.3mm~1.5mm、より特には0.3mm~1.4mm、さらにより特には0.4mm~1mmの厚みを有するシートを成形するために用いられる。
この実施態様に従う熱可塑性樹脂組成物は、セルロース粉末の分散性に優れているので、例えば0.2mm~0.4mmなどの極めて薄いシートを成形しても、破れ又は穴あきが生じにくい。
また、この実施態様に従う熱可塑性樹脂組成物を真空成形のために用いることができる。当該真空成形によって、所望の形状を有する成形品(例えば容器)を製造することができる。
【0097】
(2)射出成形用熱可塑性樹脂組成物
【0098】
本発明の他の実施態様に従い、前記熱可塑性樹脂組成物は、セルロース粉末とポリプロピレンとを含みうる。
前記セルロース粉末は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば10質量部~60質量部、好ましくは15質量部~55質量部、より好ましくは20質量部~50質量部、さらにより好ましくは25質量部~45質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれる。
前記ポリプロピレンは、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば30質量部~80質量部、好ましくは35質量部~75質量部、より好ましくは40質量部~70質量部、さらにより好ましくは45質量部~65質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれる。
【0099】
前記セルロース粉末は、100メッシュパスが90%以上である粒度を有しうる。より好ましくは、前記セルロース粉末が、100メッシュパスが90%以上である粒度を有し、且つ、前記セルロース粉末の見掛比重が0.30g/ml~0.40g/mlでありうる。
【0100】
前記樹脂組成物はさらに、前記第一の滑剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、前記第二の滑剤として脂肪酸金属塩を含みうる。
当該グリセリン脂肪酸エステルは、例えばグリセリンモノステアレートでありうる。当該グリセリン脂肪酸エステルは、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば0.3質量部~3質量部、好ましくは0.4質量部~2質量部、より好ましくは0.5質量部~1.5質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
前記脂肪酸金属塩は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば2質量部~6質量部、好ましくは2.5質量部~5.5質量部、より好ましくは3質量部~5質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
前記脂肪酸金属塩は、例えば炭素数が10~30、特には炭素数が12~25の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を挙げることができる。より具体的には、前記第二の滑材は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種でありうる。
【0101】
前記樹脂組成物は、例えば相溶化剤、酸化防止剤、及び着色料などの他の成分をさらに含んでもよい。相溶化剤として、好ましくは無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂を含みうる。当該相溶化剤は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば0.5質量部~5質量部、好ましくは1質量部~4質量部、より好ましくは1.5質量部~3.5質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
【0102】
この実施態様に従う樹脂組成物は、射出成形に適しており、例えば射出成形により容器を形成するために用いられうる。
【0103】
(3)フィルム成形用熱可塑性樹脂組成物
【0104】
本発明の他の実施態様に従い、前記熱可塑性樹脂組成物は、セルロース粉末とポリエチレンとを含みうる。
前記セルロース粉末は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば10質量部~60質量部、好ましくは15質量部~55質量部、より好ましくは20質量部~50質量部、さらにより好ましくは25質量部~45質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれる。
前記ポリエチレンは、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば30質量部~80質量部、好ましくは35質量部~75質量部、より好ましくは40質量部~70質量部、さらにより好ましくは45質量部~65質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれる。
【0105】
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%、好ましくは70%~100%、より好ましくは80%~100%、さらにより好ましくは85%~100%を占める。特に好ましくは、前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%、好ましくは0%~25%、より好ましくは0%~20%、さらにより好ましくは0%~15%を占める。
【0106】
前記樹脂組成物はさらに、前記第一の滑剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含み、且つ、前記第二の滑剤として脂肪酸金属塩を含みうる。
当該グリセリン脂肪酸エステルは、例えばグリセリンモノステアレートでありうる。当該グリセリン脂肪酸エステルは、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば0.1質量部~1質量部、好ましくは0.2質量部~0.9質量部、より好ましくは0.3質量部~0.8質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
前記脂肪酸金属塩は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば1質量部~3質量部、好ましくは1.5質量部~2.5質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
前記脂肪酸金属塩は、例えば炭素数が10~30、特には炭素数が12~25の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を挙げることができる。より具体的には、前記第二の滑材は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種でありうる。
【0107】
前記樹脂組成物は、例えば相溶化剤、酸化防止剤、及び着色料などの他の成分をさらに含んでもよい。相溶化剤として、好ましくは無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン樹脂を含みうる。当該相溶化剤は、前記熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば1質量部~10質量部、好ましくは3質量部~7質量部、より好ましくは4質量部~6質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれうる。
【0108】
この実施態様に従う熱可塑性樹脂組成物は、インフレーション成形によりフィルムを成形するために適しており、例えば10μm~500μm、特には10μm~300μm、より特には10μm~200μm、さらにより特には60μm~100μmの厚みを有するフィルムを成形するために用いられる。
この実施態様に従う熱可塑性樹脂組成物は、セルロース粉末の分散性に優れているので、例えば50μm~100μmなどの極めて薄いフィルムを成形しても、破れ又は穴あきが生じにくい。
【実施例
【0109】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表例であり、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されるものでない。また、以下に記載の「実施例1-3」及び「実施例1-5」は、それぞれ「参考例1-3」及び「参考例1-5」と読み替えるものとする。
【0110】
試験例1:セルロース粉末を含む樹脂組成物の製造及び当該樹脂組成物から成形されたシートの評価
【0111】
(実施例1-1)
【0112】
(粒子の製造)
【0113】
以下表1に示されるように、セルロース粉末(KCフロックW400、日本製紙株式会社)30質量部、ポリプロピレン(PP、FL6632G、住友化学株式会社)59質量部、グリセリン脂肪酸エステル(S-100、理研ビタミン株式会社)1質量部、脂肪酸金属塩4質量部、耐衝撃剤1質量部、相溶化剤1質量部、酸化防止剤1質量部、及び、白色MB3質量部を用意した。以下表2に、前記セルロース粉末の0μm~9.8μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合、0μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合、及び9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合を示されている。また、以下の表3には、各セルロース粉末の、0μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合、0μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合、及び110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合を示されている。また、前記脂肪酸金属塩の融点は、前記グリセリン脂肪酸エステルの融点よりも高い。表2及び3中に記載の割合は、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD-3100、株式会社島津製作所)を用いた湿式測定によって測定された。
これらの材料を用いて、ポリプロピレンがセルロース粉末により被覆された粒子(以下、「実施例1-1の粒子」という)を製造した。当該粒子の製造方法を以下で説明する。
【0114】
【表1】
【0115】
(1)混合工程
攪拌装置(高温撹拌機、株式会社カワタ)内で、セルロース粉末30質量部、ポリプロピレン粒子59質量部、グリセリン脂肪酸エステル(第一の滑材)1質量部、脂肪酸金属塩(金属石鹸、第二の滑材)4質量部、耐衝撃剤1質量部、相溶化剤1質量部、酸化防止剤1質量部、及び、白色MB3質量部を混合した。当該混合における当該攪拌装置の回転数は45Hzであった。また、当該混合を行いながら、当該攪拌装置の温度を120℃まで上昇させた。120℃は、当該グリセリン脂肪酸エステルの融点及び当該脂肪酸金属の融点のいずれよりも高く、当該ポリプロピレンの融点よりも低い。当該混合において、当該グリセリン脂肪酸エステル及び当該脂肪酸金属が融解され、そして、これら滑材を当該セルロース粉末及び当該ポリプロピレン粒子全体に行き渡らせた。
【0116】
(2)冷却工程
前記混合工程において得られた高温の混合物を、冷却可能な攪拌装置(冷却撹拌機、株式会社カワタ)内に投入し、当該攪拌装置内で、回転数25Hzで攪拌しながら70℃へ冷却した。70℃は、当該グリセリン脂肪酸エステルの融点よりも高く、且つ、当該脂肪酸金属の融点よりも低い。当該攪拌しながらの冷却により、ポリプロピレン粒子コア部がセルロース粉末含有被覆層によって被覆された粒子(実施例1-1の粒子)が得られた。
当該粒子は、ストックタンク内に移され、約70℃で維持された。
【0117】
(樹脂組成物の製造)
【0118】
ストックタンク中に約70℃で維持されている実施例1-1の粒子を、混錬押出機を用いて、当該粒子に含まれる熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)の融点より高い温度へと加熱しながら混錬して、樹脂組成物(以下、「実施例1-1の樹脂組成物」ともいう)を得た。当該混錬における、シリンダ温度は160℃~200℃であった。当該樹脂組成物は、当該混錬押出機に備えられたTダイから押し出されてシート状に成形された。得られたシート状樹脂組成物は、引き取りロールによって引き取られた。当該引き取り過程において当該シート状樹脂組成物は冷却された。冷却後のシート状樹脂組成物(以下、「実施例1-1のシート」ともいう)の厚みは、0.5mmであった。実施例1-1のシートは、剛性、耐熱性、及び寸法安定性に優れていた。
【0119】
(実施例1-2~1-6)
【0120】
セルロース粉末として、KCフロックの代わりに以下表2に示されるセルロース粉末を用いたこと以外は実施例1-1と同じ方法で、樹脂組成物から形成されるシートを製造した。各実施例のシートを、実施例1-1のシートと同様に、「実施例1-2のシート」及び「実施例1-3のシート」などという。実施例1-2~実施例1-6のシートのいずれもが、剛性、耐熱性、及び寸法安定性に優れていた。
また、表2には、各セルロース粉末の、0μm~9.8μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合、0μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合、及び9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合を示す。また、以下の表3には、各セルロース粉末の、0μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合、0μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合、及び110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数の割合を示す。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
実施例1-1~1-6のシートのそれぞれを用いて真空成形を行った。当該真空成形は、以下のとおりに行われた。すなわち、各シートを、450℃に設定された真空成形装置(FVS-500P、株式会社脇坂エンジニアリング)内で、約25秒間加熱して軟化し、そして、軟化したシートを、同装置により成形した。当該成形において用いられた型は、縦9.7cm、横9.7cm、及び高さ3.0cmの寸法を有する直方体の形状を有していた。当該成形において、縦9.7cm、横9.7cm、及び深さ3.0cmの容器が成形された。
【0124】
各シートの成形性(真空成形に適用できたか)、及び、真空成形により各シートから成形された成形品を以下の評価基準に従い評価した。
<成形性>
可:適用できた(成形品は当該型に従う形状を有した)
不可:適用できなかった(穴あきが多く、成形品は当該型に従う形状を有さなかった)
<成形品の評価>
A:なめらかな表面を有し、且つ、穴又は破れの無い成形品であった
B:ややざらつきのある表面を有し、且つ、わずかに穴を有する成形品であった
C:ざらつきのある表面を有し、且つ、穴を有する成形品であった
【0125】
評価結果を以下表4に示す。
【0126】
【表4】
【0127】
表4に示されるとおり、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-4、及び実施例1-6のシートのいずれもが真空成形に適用することができたが、実施例1-3及び1-5のシートは真空成形に適用できなかった。この結果より、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%、好ましくは70%~100%であることによって、本発明の樹脂組成物は、真空成形のための成形性に優れていることが分かる。
より特には、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%、好ましくは0%~25%であることによって、特に優れた成形品を得ることができると分かる。
【0128】
また、実施例1-1~1-6のうち、実施例1-1は成形品の評価結果がAであり、特に優れた成形品を成形することができた。この結果より、本発明の粒子のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の80%~100%、より好ましくは85%~100%を占めるセルロース粉末を用いることによって、特に優れた成形品を得ることができると分かる。
より特には、セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~20%、より好ましくは0%~15%を占めるセルロース粉末を用いることによって、特に優れた成形品を得ることができると分かる。
【0129】
試験例2:熱可塑性樹脂とセルロース粉末の比率の変更
【0130】
(実施例2-1)
【0131】
以下表5に示されるとおり、セルロース粉末の量を40質量部とし且つポリプロピレンの量を49質量部としたこと以外は実施例1-1と同じ方法で、樹脂組成物から形成されるシート(以下、「実施例2-1のシート」という)を製造した。
【0132】
【表5】
【0133】
実施例2-1のシートも、真空成形に適用することができた。また、実施例2-1のシートを上記試験例1において述べた評価基準に従い評価したところ、A評価であった。
【0134】
なお、粒子の製造のし易さという観点から、実施例1-1は、実施例2-1よりも優れていた。これは、実施例1-1におけるセルロース粉末の量に対する滑剤の量(特には第二の滑剤の量)が、実施例2-1におけるものよりも多かったためであると考えられる。そのため、本発明の粒子(又は本発明の樹脂組成物)中の第二の滑剤(特には脂肪酸金属塩)の含有量は、セルロース粉末100質量部に対して、好ましくは10質量部超であり、より好ましくは11質量部以上でありうる。
【0135】
試験例3:樹脂組成物の製造及び当該樹脂組成物から成形されたシートの評価
【0136】
(実施例3)
【0137】
以下表6中の実施例3の列に示されるように、セルロース粉末(KCフロック100GK、日本製紙株式会社)30質量部、ポリプロピレン(ホモプロピレン、J108M、プライムポリマー社)62.5質量部、脂肪酸金属塩4質量部、及び相溶化剤2.5質量部を用意した。これらの材料を混合し、二軸混錬押出機を用いてペレット化した。混錬温度は約140℃であり、回転数は12rpmであった。得られたペレットから、射出成形装置(射出成型機、住友重機工業株式会社)を用いて、以下の曲げ弾性率評価、荷重たわみ温度評価、及び寸法安定性評価において用いられる試験片の形状へと射出成形した。当該試験片の厚みは1.0mmであった。当該射出成形において、ペレットを溶融するための温度は170℃であった。
【0138】
【表6】
【0139】
(比較例3)
【0140】
実施例3と同様の射出成形によって、ポリプロピレン(ホモプロピレン、J108M、プライムポリマー社)を、試験片の形状へと射出成形した。
【0141】
(評価)
【0142】
(1)曲げ弾性率の評価
実施例3のシート及び比較例3のシートの曲げ弾性率を測定した。当該測定は、JIS K 7171に従い行われた。当該測定に用いられた試験片は、長辺8cm×短辺1cm×厚み0.5cmの寸法を有した。測定結果を図2に示す。図2に示されるとおり、実施例3のシートは、比較例3のシートよりも曲げ弾性率が高かった。この結果より、セルロース粉末を含むことによって、シートの剛性が向上することが分かる。
また、バイオマス材料を含むポリオレフィン系樹脂組成物は、バイオマス材料を含まないポリオレフィン系樹脂組成物と比べて剛性(曲げ弾性率)が低くなる傾向にあるが、バイオマス材料としてセルロース粉末を採用することによって、剛性が向上することが分かる。
【0143】
(2)荷重たわみ温度の評価
実施例3のシート及び比較例3のシートの荷重たわみ温度を測定した。当該測定は、JIS K 7191に従い、重量0.45MPaの荷重により、フラットワイズで行われた。当該測定に用いられた試験片は、長辺8cm×短辺1cm×厚み0.5cmの寸法を有した。測定結果を図3に示す。図3に示されるとおり、実施例3のシートは、比較例3のシートよりも荷重たわみ温度が高かった。この結果より、セルロース粉末を含むことによって、シートの耐熱性が向上することが分かる。
また、バイオマス材料を含むポリオレフィン系樹脂組成物は、バイオマス材料を含まないポリオレフィン系樹脂組成物と比べて耐熱性(荷重たわみ温度)が低くなる傾向にあるが、バイオマス材料としてセルロース粉末を採用することによって、耐熱性が向上することが分かる。
【0144】
(3)寸法安定性の評価
実施例3のシートの寸法安定性を評価した。当該評価において用いられた試験片は、長辺32cm×短辺14cm×厚み0.4mmの寸法を有した。当該評価は、実施例3のシートを温度23度且つ湿度50%の条件下に30日間放置した場合の長辺方向の寸法を測定し、測定された寸法から寸法変化率を算出した。寸法変化率は、以下の式により算出された
寸法変化率(%)=[L-L]/L×100
ここで、Lは、放置後に測定された寸法であり、Lは、放置開始前の寸法である。
寸法変化率の測定結果を図4に示す。図4に示されるとおり、実施例3のシートの寸法変化率(図4中の凡例「30%」)は、当該30日間にわたって、-0.2%~+0.2%の範囲内であった。この結果より、実施例3のシートは、寸法安定性に優れていることが分かる。
実施例3のシート中のセルロース粉末含有割合は30質量%であるが、この割合を40質量%にした場合(図4中の凡例「40%」)であっても、当該30日間にわたって、-0.2%~+0.2%の範囲内であった。この結果より、セルロース粉末の含有割合が40質量%であっても、寸法安定性に優れていることが分かる。
また、バイオマス材料を含むポリオレフィン系樹脂組成物は、バイオマス材料を含まないポリオレフィン系樹脂組成物と比べて寸法安定性が劣る傾向にあるが、バイオマス材料としてセルロース粉末を採用することによって、より優れた寸法安定性が向上することが分かる。
【0145】
なお、本発明は以下も提供する。
[1]
熱可塑性樹脂からなる粒子コア部と、当該粒子コア部の少なくとも一部を覆うセルロース粉末含有被覆層と、から構成されている粒子。
[2]
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、9.8μm~110.6μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の65%~100%を占める、[1]に記載の粒子。
[3]
前記セルロース粉末を構成するセルロース繊維のうち、110.6μm~998.4μmの粒子サイズを有するセルロース繊維の数が、前記セルロース粉末を構成する全セルロース繊維の数の0%~30%を占める、[1]又は[2]に記載の粒子。
[4]
フィルム又はシートを成形するために用いられる、[1]~[3]のいずれか一つに記載の粒子。
[5]
前記セルロース粉末が、100メッシュパスが90%以上である粒度を有する、[1]に記載の粒子。
[6]
射出成形のために用いられる、[1]~[3]及び[5]のいずれか一つに記載の粒子。
[7]
前記被覆層が、第一の滑材と前記第一の滑材の融点よりも高い融点を有する第二の滑材とを含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の粒子。
[8]
前記第二の滑材が、脂肪酸金属塩、炭化水素、高級アルコール、脂肪族アミド、及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項7に記載の粒子。
[9]
前記第一の滑材がグリセリン脂肪酸エステルを含む、[7]又は[8]に記載の粒子。
[10]
前記粒子が、直径3mm~10mmの略球状形態を有する、[1]~[9]のいずれか一つに記載の粒子。
図1
図2
図3
図4