(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】真皮線維芽細胞の機能賦活用剤及びそれを含んでなる化粧品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20240213BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20240213BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240213BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240213BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240213BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240213BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/98
A61Q19/00
A61K31/7088
A61K35/28
A61P17/00
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2023095498
(22)【出願日】2023-06-09
【審査請求日】2023-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598043054
【氏名又は名称】日生バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松永 政司
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0065925(KR,A)
【文献】国際公開第2020/022131(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/200299(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0083868(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第113248573(CN,A)
【文献】国際公開第2006/134685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 35/00-35/0768
A61K 36/06-36/068
A61P 1/00-43/00
A23L 2/00- 2/84
A23L 5/40- 5/49
A23L 31/00-33/29
A23L 23/00-25/10
A23L 35/00
A23K 10/00-40/35
A23K 50/15
C12N 1/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サケ科魚類の精巣由来のDNAの加水分解物と細胞外小胞とを有効成分として含む、真皮線維芽細胞の
コラーゲン産生促進用剤であって、
前記DNAの加水分解物が、分子量が12,000以下である画分を10~80%含有するものであり、
前記DNAの加水分解物の含有量が、0.001質量%以上1質量%以下であり、
前記細胞外小胞が、間葉系幹細胞に由来するものであり、
前記細胞外小胞の含有量が、総蛋白質の含有量として0.00001×10
-3
質量%以上0.5×10
-3
質量%以下であり、
前記DNAの加水分解物の含有量と、前記総蛋白質の含有量としての前記細胞外小胞の含有量との質量比が、1:10
-8
~1:10
-1
である、
前記真皮線維芽細胞の
コラーゲン産生促進用剤。
【請求項2】
請求項1に記載の
コラーゲン産生促進用剤を含んでなる化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真皮線維芽細胞の機能賦活用剤に関し、さらに詳しくは、DNAの加水分解物と細胞外小胞を有効成分として含む真皮線維芽細胞の機能賦活用剤及びそれを含んでなる化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外界と接している表皮、その内側に位置し表皮と強い力で接着している真皮、さらにその内側にあり真皮と筋肉の間に位置している皮下脂肪組織に、大きく分けることができる。表皮と皮下脂肪組織の間に位置する真皮は、乳頭層と真皮網状層、結合性繊維組織から構成される。この真皮の約70%はコラーゲンが占め、他に弾性線維(エラスチン)、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックス成分により構成される。これら真皮を構成するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等は、真皮網状層に存在する真皮線維芽細胞により生成される。
【0003】
一般的に、紫外線、乾燥、加齢等により、これら繊維が破壊され、古くなって弾力が低下するとともに、細胞外マトリックス成分の産生機能が低下することが、肌の張りや弾力の低下、シワやたるみ等の肌の老化原因と考えられている。このように、皮膚の弾力性の低下やシワ形成等の老化現象には、真皮の細胞外マトリックス成分、特にコラーゲンやヒアルロン酸の減少が関与している。したがって、真皮線維芽細胞の機能を賦活させて前記した細胞外マトリックス成分の産生を増加させれば、肌の老化を予防又は改善できると考えられる。
【0004】
ここで、安全で効果の優れた機能性食品として用いられているデオキシリボ核酸(DNA)は、肌状態(水分量、皮脂量、皮溝密度、しわ、しみ、そばかす等)の改善効果を有することが報告されている(特許文献1、2)。
【0005】
一方、エクソソーム等の細胞外小胞を含有するヒト幹細胞培養液には、美白やしわ改善、抗老化等さまざまな有用性があることが報告されている(非特許文献1)。また、ケール由来のエクソソームが皮膚線維芽細胞においてコラーゲン産生促進作用を発揮することが報告されている(特許文献3)。
【0006】
しかしながら、これらDNA(デオキシリボ核酸)と細胞外小胞との相互作用について、本発明者らの知る限り、報告はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-291062号公報
【文献】特開2008-63315号公報
【文献】特開2022-92330号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】「ヒト幹細胞培養液の美容力」株式会社ニュートリエントライブラリー、2020年3月26日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
真皮線維芽細胞の機能を賦活させて細胞外マトリックス成分、特にコラーゲンやヒアルロン酸の産生を増加させれば、前記のとおり、肌の老化の予防又は改善が期待できる。そこで、本発明の課題は、より優れた真皮線維芽細胞の賦活効果を有し、かつ安全性が高く、長期間にわたって安心して使用できる真皮線維芽細胞の機能賦活用剤及びそれを含んでなる化粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、長期間服用しても安全であるDNAの加水分解物(以下「加水分解DNA」ということがある。)と細胞外小胞が、それぞれ単独で用いた場合と比べて、真皮線維芽細胞に対する賦活作用を著しく高める、すなわちコラーゲン産生促進作用及びヒアルロン酸産生促進作用を相乗的に高めることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
(1)DNAの加水分解物と細胞外小胞とを有効成分として含む、真皮線維芽細胞の機能賦活用剤であって、前記機能賦活がコラーゲン産生促進作用又はヒアルロン酸産生促進作用の何れか一方若しくは両方であることを特徴とする真皮線維芽細胞の機能賦活用剤。
(2)DNAの加水分解物が、分子量が12,000以下である画分を10~80%含有するものであり、細胞外小胞が、間葉系幹細胞に由来するものである、前記(1)に記載の機能賦活用剤。
(3)前記(1)又は(2)に記載の機能賦活用剤を含んでなる化粧品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有効成分である加水分解DNAと細胞外小胞とが、真皮線維芽細胞に対する賦活作用を相乗的に顕著に高める効果(以下「相乗効果」ということがある。)を奏するので、皮膚の抗老化、すなわち肌の張りや弾力の低下、シワやたるみ等の肌の老化の予防又は改善等の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例で用いた加水分解DNA-Naのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分析結果を示す図である。図の横軸は保持時間(分)、縦軸は紫外領域(波長260nm)の吸光度である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。また、有効成分の含有量(%)は特に明記しない限り質量パーセント(wt%)である。
【0015】
本発明の機能賦活用剤は、加水分解DNAと細胞外小胞とを有効成分として含み、加水分解DNAは、例えば動植物から抽出したDNAを加水分解処理することにより調製することができる成分であり、細胞外小胞は、例えば動植物細胞に由来するエクソソームやマイクロベシクル等の細胞外小胞である。
【0016】
ここで、真皮線維芽細胞に対する賦活作用とは、真皮線維芽細胞のコラーゲン産生促進作用又はヒアルロン酸産生促進作用に何れか一方若しくは両方であることを意味する。また、真皮線維芽細胞の機能賦活とは、これと同様のことを意味する。
【0017】
本発明の真皮線維芽細胞の機能賦活用剤は、加水分解DNAと細胞外小胞を有効成分として含み、必要に応じて、その他の任意成分をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明における加水分解DNAは、DNAを加水分解処理することにより調製することができる成分である。DNAの供給源は、動物、植物、微生物等の様々な生物であってよく、また、DNAとしては合成DNAを使用してもよい。これらの中で特に、DNAを多く含むことや水産加工上の廃棄物を有効利用できるといった観点から、鮭、鱒、鱈といった魚類の精巣(白子)由来のDNAを使用することが好ましい。
【0019】
魚類の精巣からのDNAの抽出及び精製は常法により(例えば特開2005-245394号公報の記載に準じて)行うことができる。例えば、魚類の精巣を粗砕し、粗砕した魚類の精巣にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)処理を行い、酵素処理した溶液にアルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)を加えて、DNAをDNA塩(DNAナトリウム塩)として沈殿させ、この沈殿物を回収する。もしくは酵素処理した溶液に酸(塩酸、りん酸、クエン酸等)を加え、DNAを沈殿させ、この沈殿物を回収し、水酸化ナトリウムで中和して乾燥することでDNA塩(DNAナトリウム塩)を得ることができる。
【0020】
得られたDNA塩を、ヌクレアーゼ等の核酸分解酵素を用いて加水分解することにより、加水分解DNAを得ることができる。加水分解処理に使用するヌクレアーゼとしては、例えば、アオカビ由来のヌクレアーゼを使用することができる。
【0021】
加水分解は、例えば、65℃前後に調整した温水に、上記DNA塩(DNAナトリウム塩)を原料として投入し、撹拌後、さらに70℃に加温し、ヌクレアーゼを加えて反応させることで行うことができる。加水分解処理時の温度としては、60~75℃が好ましく、70℃がより好ましい。
【0022】
得られた加水分解生成物を、例えば凍結乾燥させることで、粉末状の加水分解DNAを得ることができる。上記の手法による加水分解DNAは、通常、ナトリウム塩の状態で得ることができる。なお、塩は、ナトリウム塩に限られるものではなく、例えばカリウム塩、又はカルシウム塩であってもよい。また、加水分解DNAは塩ではなく、遊離体であってもよい。
【0023】
加水分解DNAは、分子量が12,000以下である画分を10~80%含有することが好ましく、分子量が5,000以下である画分を10~80%含有することがより好ましい。なお、分子量分布の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)で試料を分子量に基づいて分別した後にUV検出器によって定量することにより行うことができる。
【0024】
本発明において、細胞外小胞とは、国際細胞外小胞学会(International Society for Extracellular Vesicles; ISEV)定義のとおり、「細胞から放出される核を持たない(複製できない)脂質二重膜で囲まれた粒子」を意味する。細胞外小胞は、微生物、植物、動物等の様々な細胞において産生されることが知られており、それらが産生する細胞外小胞の性質も、由来する細胞や産生時の条件によって異なる。また細胞外小胞は体液や牛乳等の乳、果汁等から分離されたものであってもよい。
【0025】
さらに細胞外小胞は、細胞から放出(分泌)されたままの天然型であっても、それに改変を加えた改変型であってもよい。改変型としては、例えば、供給元の細胞へ遺伝子導入したりすることで内包物を変化させたもの、細胞から分泌(放出)後の小胞に対して、その表面にペプチドや抗体を付加させたもの、特定の医薬品をに内包させたもの等が挙げられる。
【0026】
細胞外小胞は、産生機構の違いから次のとおり分類されている(ドージンニュース Vol.169 Reviews 細胞外小胞、エクソソームの特性と機能)。
(1)エクソソーム;50~150nm程度サイズのエンドサイトーシス過程で形成されるエンドソーム膜由来の小胞。
(2)マイクロベシクル;100~1,000nm程度サイズの細胞膜から直接出芽して細胞外へと分泌される小胞。
(3)アポトーシス小胞;アポトーシスを起こした細胞により膜から出芽されるマイクロメートル程度のサイズの小胞(2,000×g程度の低速遠心で分離されるため、他の小胞とは区別がしやすい)。
【0027】
細胞外小胞は、通常ナノメーター~マイクローターサイズであればよい。特に(1)エクソソームと(2)マイクロベシクルは、構成成分やサイズが共通するものがあり、完全に分離するのは困難であるが、50~1,000nm程度サイズが好ましく、50~150nm程度サイズがより好ましい。
【0028】
本発明における細胞小胞は、(3)アポトーシス小胞を含まないものが好ましく、(1)実質的にエクソソームのみからなるものが特に好ましく、(1)エクソソームと(2)マイクロベシクルを含むものであってもよい。
【0029】
本発明において用い得る細胞の種類は、細胞外小胞を放出(分泌)するものである限り、特に限定されない。前記のとおり、細胞外小胞は、微生物、植物、動物等の様々な細胞において生産されることが知られており、それらが生産する細胞外小胞の性質も、由来する細胞や産生時の条件によって異なる。従って、本発明において、前記した加水分解DNAとの併用したときに相乗効果を奏する細胞外小胞であれば、何れの種類の細胞から産生(放出又は分泌)される細胞外小胞も用いることができる。
【0030】
微生物細胞としては、例えば、乳酸菌、酵母、細菌等を用いることができる。乳酸菌としては、例えば、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)等が挙げられる。
【0031】
酵母としては、例えば、ハンセニアスポラ・ヴィネアエ(Hanseniaspora vineae)、クロエケラ・アピキュラーラ(Kloeckera apiculata)、サッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・パラドクサス(Saccharomyces paradoxus)等が挙げられる。
【0032】
細菌としては、例えば、グラム陰性細菌である大腸菌(Escherichia coli)、同じくグラム陰性菌であるパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)等が挙げられる。
【0033】
本発明において、植物細胞は種を問わず、植物生体そのものであっても培養細胞であってもよく、種子や果実(例えばアセロラ果実等)であってもよい。
【0034】
本発明において、動物細胞は、通常培養細胞が用いられる。培養細胞は、体細胞の培養細胞であっても、生殖細胞の培養細胞であってもよい。
【0035】
体細胞としては、肝細胞、膵細胞、筋細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、膵細胞、腎細胞、肺細胞、心筋細胞、滑膜細胞、リンパ球、赤血球、白血球、単球、マクロファージ、巨核球の血球細胞、又はこれらの疾患細胞から選択されるものが挙げられる。具体的には、例えば、ヒト骨芽細胞、ヒト軟骨細胞、ヒト心筋細胞、ヒト線維芽細胞、ヒト滑膜細胞、ヒト肝細胞及びそれらの疾患細胞からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0036】
生殖細胞としては、例えば、有性生殖のための配偶子、即ち卵子、卵細胞、精子、精細胞、無性生殖のための胞子等が挙げられる。
【0037】
本発明において、培養細胞として多能性幹細胞が好ましく用いられる。多能性幹細胞とは、あらゆる組織の細胞へと分化する能力(分化多能性)を有する幹細胞の総称することを意味する。多能性幹細胞には、例えば、胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell:ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell:iPS細胞)、ntES細胞(nuclear transfer Embryonic Stem Cell)等が含まれる。これらの中で、ES細胞又はiPS細胞が好ましい。
【0038】
本発明において、培養細胞として組織幹細胞が好ましく用いられる。組織幹細胞とは、分化可能な細胞系列が特定の組織に限定されているが、多様な細胞種へ分化可能な能力(分化多能性)を有する幹細胞を意味する。組織幹細胞には、例えば、神経幹細胞、上皮幹細胞、心筋細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、消化管上皮幹細胞、生殖幹細胞、骨格筋細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞等が含まれる。これらの中で間葉系幹細胞が好ましい。
【0039】
本発明において、培養細胞は、肉腫細胞、株化細胞及び形質転換細胞等を用いてもよい。ここで、「肉腫」とは、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血液等の非上皮性細胞由来の結合組織細胞に発生する癌を意味し、肉腫細胞は、かかる肉腫に由来する細胞を意味する。「株化細胞」とは、長期間にわたって体外で維持され、一定の安定した性質をもつに至り、半永久的な継代培養が可能になった培養細胞を意味する。「形質転換細胞」は、細胞外部から核酸(DNA等)を導入し、遺伝的性質を変化させた細胞を意味する。
【0040】
具体的には、「株化細胞」としては、例えば、PC12細胞(ラット副腎髄質由来)、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来)、HEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来)、HL-60細胞(ヒト白血球細胞由来)、HeLa細胞(ヒト子宮頸癌由来)、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓上皮細胞由来)、MDCK細胞(イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来)、HepG2細胞(ヒト肝癌由来)等ヒトを含む様々な生物種の様々な組織に由来する細胞株が挙げられる。
【0041】
これらの培養細胞は、老化や疾患のないものが好ましい。また細胞外小胞、中でもエクソソームは、幹細胞や癌細胞等の未分化な細胞において活発に産生されることが知られており、本発明にける培養細胞は、幹細胞、例えば間葉系幹細胞を用いるのがより好ましい。
【0042】
間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)とは、骨髄に存在する非造血系の接着性および自己複製能を持ち、試験管内で脂肪、骨、軟骨への分化能を有する細胞集団として単離された骨髄間質細胞の一種である(生体医工学ウェブ辞典)。間葉系幹細胞は、骨髄に存在するものだけでなく脂肪・血液・臍帯・臍帯血・骨膜・軟骨膜・軟骨等の組織に由来するものあってもよく、現時点で、国際細胞治療学会が提案する次の3項目の基準を満たすものであればよい(Drug Delivery System 29-2, 2014)
【0043】
(1)プラスチックプレートへの接着能を有すること
(2)表面抗原CD105、CD73、CD90が陽性で、CD45、CD34、CD14またはCD11b、CD79aまたはCD19、HLA-DRが陰性であること
(3)試験管内(in vitro)で骨芽細胞・軟骨細胞・脂肪細胞への分化能をもつこと
【0044】
細胞はそれ自体既知の通常用いられる方法により、その性質に応じて、例えば表面抗原等の発現を指標として単離・培養すればよい。
【0045】
また培養細胞や微生物等は、寄託センター、例えば、理化学研究所バイオリソース研究センター(RIKEN BioResource Research Center)、アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ATCCTM;American Type Culture Collection)、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター(NBRC)カタログ等に記載されているか、これら寄託センターに寄託されているものを用いることもできる。さらに細胞は、市販品を購入して用いることもできる。
【0046】
本発明において、細胞外小胞の産生に用いる培養細胞は、間葉系幹細胞は好ましく、培養に際し、活性酸素種を適切に除去して培養された細胞、即ち細胞内のグルタチオン濃度が適切に保持された細胞が好ましい。
【0047】
用い得る間葉系幹細胞としては、例えばヒト骨髓間葉系幹細胞(human bone marrow mesenchymal stem cell)、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(human umbilical cord-derived mesenchymal stem cell)、ヒト胚幹細胞分化間葉系幹細胞(human embryonic stem cell derived mesenchymal stem cell)等が挙げられる。これらの中で、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞が特に好ましい。
【0048】
細胞外小胞は、細胞から放出(分泌)されたものを、それ自体既知の通常用いられる方法によって回収(分離・精製)することにより得ることができる。回収する方法としては、例えば、超遠心法、限外ろ過法、密度勾配遠心法、ポリマー沈殿法、免疫沈降法等が挙げられ、細胞の種類や回収する目的とする小胞の特性に応じて、これらの方法を適宜組み合わせて行えばよい。
【0049】
ここで、超遠心法とは、低速遠心にて細胞残渣除去後に100,000~200,000×gで超遠心して細胞外小胞を分離する方法である。限外ろ過法とは、目的のサイズに応じたフィルターを用いて細胞外小胞を分類する方法である。密度勾配遠心法とは、超遠心で得られた粗分画をさらに密度勾配にかけて精製する方法である。ポリマー沈殿法とは、ポリマーによる低速遠心沈降により細胞外小胞を分離する方法である。免疫沈降法とは、細胞外小胞のマーカータンパク質や脂質に対するアフィニティー法により細胞外小胞を分離する方法である。
【0050】
さらに具体的には、例えば、微生物の細胞外小胞は、その培養上清を、必要に応じて適当な液体と混合する等の前処理をして、上記方法により回収することができる。
【0051】
植物の細胞外小胞は、例えば植物体や果実の搾汁液を、必要に応じて適当な液体(例えばリン酸緩衝生理食塩水)と混合する等の前処理をして、上記方法により回収することができる。
【0052】
動物の細胞外小胞の製造に際して、前記のとおり細胞自体の健全性や安全性ともに、製造過程におけるマイコプラズマやウイルス、エンドトキシン、培地成分などのコンタミネーションを防ぐ適切な管理を行う必要がある。
【0053】
まず、細胞を80%コンフルエント程度まで培養し、次に細胞外小胞の産生用の適当な培地、例えばフェノールレッドや血清等の成分を含有しない培地で培養して細胞外小胞を培地に放出(分泌)させて培地を回収し、必要に応じてさらに細胞や細胞の破片を除き、前記のとおり、例えば超遠心分離法、限外ろ過法又はそれらの組み合わせにより、目的とするサイズの細胞外小胞を分離・精製すればよい。さらに、必要に応じて、濃縮や乾燥による粉末化したり、適当な保存用の添加剤等を加えたりしてもよい。
【0054】
さらに、細胞外小胞は、その使用目的や用途に応じた製品が市販されており、それらを入手して使用してもよい。
【0055】
本発明において、機能賦活用剤中の有効成分の含有量は、製剤の種類や形態、使用目的、使用頻度等により異なり、一律に規定するのは困難である。各成分の含有量や含有量比は特に制限されないが、真皮線維芽細胞の賦活作用に対して相乗効果を奏する含有量や含有量比であることが好ましい。
【0056】
具体的には、例えば機能賦活用剤を皮膚へ適用する(機能賦活用剤が化粧品である)場合は次のとおりである。加水分解DNAの含有量は、下限が好ましくは0.001%(0.01mg/mL)以上、より好ましく0.01%(0.1mg/mL)以上であり、上限は特に限定されないが好ましくは1%(10mg/mL)以下、より好ましくは0.5%(5mg/mL)以下、より好ましくは0.2%(2mg/mL)以下である。
【0057】
また、細胞外小胞の含有量は、総蛋白質の含有量として、下限が好ましくは0.00001×10-3%(0.0001μg/mL)以上、より好ましくは0.0001×10-3%(0.001μg/mL)以上、さらに好ましくは0.00015×10-3%(0.0015μg/mL)以上であり、上限は特に限定されないが好ましくは0.5×10-3%(5μg/mL)以下、好ましくは0.1×10-3%(1μg/mL)以下である。
【0058】
また、細胞外小胞の総数として、下限が好ましくは1×103個/mL以上、より好ましくは1×104個/mL以上、さらに好ましくは1×105個/mL以上であり、上限は特に限定されないが好ましくは5x1010個/mL以下、好ましくは0.5x108個/mL以下である。
【0059】
また、加水分解DNAと細胞外小胞との含有量比に特に制限はないが、加水分解DNAの質量と細胞外小胞に含有する蛋白質との質量比で、加水分解DNA:細胞外小胞=1:10-8~1:10-1が好ましく、1:10-7~1:10-2がより好ましい。
【0060】
加水分解DNAや細胞外小胞の含有量や含有量比が好ましい範囲内であると、後述する実施例で具体的に示されているとおり、真皮線維芽細胞の賦活作用(コラーゲン産生促進、ヒアルロン酸産生促進)に対して顕著な相乗効果な効果を奏する点で有利である。
【0061】
ここで、真皮線維芽細胞の賦活作用における相乗効果とは、真皮線維芽細胞に対して加水分解DNAと細胞外小胞を併用したとき、コラーゲン産生率、ヒアルロン酸産生率のいずれかが、各々を単独で使用したときの程度を足し合わせたよりも大きい(有意に大きい)ことを意味する。また、有意な効果とは、陰性対照と比較した場合に有意差のある効果を意味する。
【0062】
本発明の機能賦活用剤は、加水分解DNAと細胞外小胞、必要に応じてその他の成分とを常法により混合することにより、所望の剤型に製造することができる。ここで、その他の成分としては、後述する本発明の化粧品が含有し得る任意成分と同様の成分が挙げられる。
【0063】
本発明の化粧品は、皮膚線維芽細胞の機能賦活用剤を含んでなるものである。ここで「含んでなる」とは、所望する製品形態に応じた生理学的に許容されうる担体や併用可能な他の補助成分等の任意成分を含んでいてもよいことを意味する。
【0064】
本発明の化粧品は、例えば基礎化粧品や頭皮及び毛髪に塗布して使用するための頭髪用化粧品等として提供することができる。なお、本発明において化粧品とは薬事法の化粧品に加え、医薬部外品も包含される。
【0065】
本発明の機能賦活用剤を化粧品として提供する場合、採り得る剤型は、皮膚に適用可能なものであれば特に制限はない。具体的には、液状、乳剤状、ゲル状、クリーム状、軟膏状、フォーム状、ミスト状、エアロゾル状等の剤型で、ローション、乳液、クリーム、ジェル、ゼリー、エッセンス、リップクリーム、パック、マスク等として提供することができる。
【0066】
これら化粧品が含有し得るその他の任意成分としては、特に制限はなく、通常の化粧品に配合され得る添加剤等を使用することができる。かかる添加剤としては、例えば、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、酸化防止剤、ビタミン剤、天然抽出物等が挙げられる。これらその他の任意成分の含有量にも、特に制限はなく、所望の剤型等に応じて適宜選択することができる。
【0067】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
[実施例1]真皮線維芽細胞の細胞賦活作用
1 試験の目的及び概要
真皮線維芽細胞が産生するコラーゲンは皮膚のハリ、線維芽細胞が産生するヒアルロン酸は皮膚の柔軟性や潤いに重要な役割を果たしていると考えられている。そこで、真皮線維芽細胞と用いて、被験品(加水分解DNA-Naと間葉系幹細胞由来の細胞外小胞)のコラーゲン及びヒアルロン酸産生促進作用を評価した。
【0069】
2 材料と試験方法
2-1 細胞
ヒト新生児由来の真皮線維芽細胞株NB1RGB細胞(RIKEN BRC,Japan)を、CO2インキュベータ(CO2濃度 5%、37℃)で培養し、本試験を実施した。
【0070】
2-2 培地
10.0%(v/v)Fetal Bovine Serum FBS, Cat No. SH30071.03, Hyclone, UK)および1.0%(v/v)抗真菌剤(Antibiotic-Antimycotic 100X, Cat No. 15240-062, Invitrogen, USA)を含むEagle’s Minimal Essential Medium(EMEM, Cat No.051-07615, Wako, Japan)を用いた。
【0071】
2-3 被験品
2-3-1 加水分解DNA-Na(オリゴDNA)
日生バイオ株式会社製の加水分解DNA-Na(製品名)の10%水溶液(オリゴDNA10%水溶液)を被験品として用いた。本品は、前記した方法により、サケ科魚類の精巣(白子)からDNAのNa塩を抽出し、それを加水分解することにより調製したものである。
なお、使用した日生バイオ株式会社製の加水分解DNA-Naのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分析結果を
図1に、保持時間と分子量の関係は、表1に示す。分子量目安の12,000はCytochrome C(MW 12,400)の保持時間を基とした。
【0072】
【0073】
上記分析結果より、日生バイオ(株)社製の加水分解DNA-Naの分子量による画分は以下のとおりである。
分子量12,000~5,000の画分(溶出時間20分~25分未満):32.0%
分子量5,000以下の画分(溶出時間25分以降):32.4%
以上のことから、日生バイオ社製の加水分解DNA-Naの分子量12,000以下である画分は64.4%である。
【0074】
0.5%FBS含有EMEMによって被験品(オリゴDNA10%水溶液)を希釈して計3濃度(0.1%, 0.5%, 1%)を用時調製した。DNA-Naの終濃度は、それぞれ0.01%(0.1mg/ml)、0.05%(0.5mg/ml)、0.1%(1mg/ml)である。対照には0.5%FBS含有EMEMを用いた。
【0075】
2-3-2 ヒト臍帯間葉系幹細胞由来細胞外小胞(ExoVESICLE)
セルツーイン社(cell2in Inc.)製のExoVESICLE(製品名)を被験品として用いた。
本品は、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(human umbilical cord-derived mesenchymal stem cell;ソウル大学病院産婦人科から臍帯試料を受けて作成)を、80%コンフルエント程度まで培養し、フェノールレッドや血清を含有しない培地で培養して細胞外小胞を培地に放出(分泌)させ、遠心分離により細胞や細胞の破片を除き、フィルターろ過、限外ろ過により分離したものである。
【0076】
本品のpHは7.6、総蛋白質量は30μg/ml、小胞(粒子)数は9×108個/ml、粒度分布の平均(mean)が115.8nm、中央値(median)が106.5nmである。
【0077】
0.5%FBS含有EMEMによって被験品(ExoVESICLE)を希釈して計3濃度(0.01%, 0.1%, 0.2%)を用時調製した。蛋白質量換算の終濃度は、それぞれ0.003μg/ml、0.03μg/ml、0.06μg/mlである。対照には0.5%FBS含有EMEMを用いた。
【0078】
2-3-3 オリゴDNAとExoVESICLEの混合液
0.5%FBS含有EMEMによって被験品(オリゴDNA+ExoVESICLE)を希釈して計3濃度(1+0.01%, 1+0.1%, 1+0.2%)を用時調製した。DNA-Naの終濃度は0.1%(1mg/ml)、ExoVESICLE(蛋白質量換算)の終濃度は、それぞれ0.003μg/ml、0.03μg/ml、0.06μg/mlである。対照には0.5%FBS含有EMEMを用いた。
【0079】
2-4 試験構成
細胞増殖、コラーゲン産生およびヒアルロン酸産生の算出には1つの処理群につき96ウェルプレート(細胞増殖:CatNo. 3860-096、Iwaki、japan。コラーゲン産生およびヒアルロン酸産生:Cat No. 3855, Thermo scientific, USA)の3ウェルを用いた。また、1プレートにつき被験品群、対照群をそれぞれ1群設けて試験を実施した。被験品調製を含め、試験に関わる操作は特に記載のないかぎり室温で実施した。
【0080】
2-5 試験操作
2-5-1 細胞培養
96ウェルプレートに1.0×104 cells/wellの密度でNB1RGB細胞を播種し、CO2インキュベータ内で24時間培養した。また、培養時の乾燥を防ぐため、試験に用いないウェルにPhosphate buffer saline(PBS(-), Cat No. 198601,Nissui, Japan)を200 μL加えた。
【0081】
24時間後、培地を除去し96ウェルプレートに100 μLの被験品および対照を添加し、CO2インキュベータ内で48時間培養した。
【0082】
48時間後、培養上清を新しい96ウェルプレートに分注・冷凍保存(-80℃)した。2-5-3および2-5-4に示す方法により、Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay (ELISA)にて、この培養上清中のコラーゲン量およびヒアルロン酸量を測定し、被験品のコラーゲン・ヒアルロン酸産生促進作用を評価した。また、培養上清を除去した96ウェルプレートの細胞数を2-5-2に示す方法により評価し、被験品の細胞増殖作用を評価した。
【0083】
2-5-2 細胞増殖作用評価
真皮線維芽細胞の増殖に及ぼす被験品の作用を次のとおり評価した。培地を除去した96ウェルプレートを100 μLのPBS(-)で洗浄した。次に、100 μLの0.5 mg/mL 3-(4,5-Dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide(MTT, CAS No. 298-93-1,Sigma-Aldrich, USA)溶液を加え、CO2インキュベータ内で2時間インキュベートした。
【0084】
MTT溶液を除去し、100 μLのPBS(-)で洗浄後、200 μLの2-プロパノール (CAS No. 67-63-0, Wako, Japan) を加えて不溶性のホルマザンを溶解した。96ウェルプレート内の色素を均一に分散した後、マイクロプレートリーダー(SPARKTM 10M, TECAN, Switzerland)を用いて570 nmの吸光度(OD570)を測定した。
【0085】
対照群のOD570を100%として被験品添加群のOD570、すなわち細胞増殖の作用を被験品の細胞増殖作用(%)として算出した。
【0086】
2-5-3 コラーゲン産生促進作用評価
I型コラーゲンの産生量に対する被験品の効果を直接ELISA法で次のとおり評価した。PBS(-)で4倍希釈した培養上清を高吸着型96ウェルプレートに100 μL添加し、4℃で一晩インキュベートした。標準物質としてI型コラーゲン溶液(Cat No. 009-001-103, RCK, USA)を使用した。
【0087】
固相した培養上清を除去し、200 μLの0.05% Tween20含有PBS(-)(PBS-T, Tween20: CAS No. 9005-64-5,Sigma-Aldrich, USA)でマイクロプレートを洗浄し、150 μLの1% Bovine Serum Albumin (BSA, Cat No. PRL68700-50G, Proliant, USA) 溶液を加え、37℃で1時間インキュベートした。
【0088】
BSA溶液を除去し、200 μLのPBS-Tで洗浄後、0.5%BSA含有PBS(-)で調製した100 ng/mL ビオチン標識CollagenType I Antibody(Cat No. 600-406-103, ROCKLAND, USA)溶液を100 μL加え、37℃で1時間インキュベートした。
【0089】
抗体溶液を除去し、200 μLのPBS-Tで洗浄後、0.5%BSA含有PBS(-)で調製したStreptavidin-HRP(Cat No.CJ30H-1, Agilent Technologies, USA, 1:10000)溶液を100 μL加え、室温で30分間インキュベートした。次に、Streptavidin-HRP溶液を除去し、200 μLのPBS-Tで洗浄後、2,2’-azinobis (3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonicacid) diammonium salt(ABTS, Cat No. 5110-0010, KPL, USA)溶液を100 μL加え、発色を確認し、96ウェルプレート内の色素を均一にした後、マイクロプレートリーダーを用いて405 nmの吸光度(OD405)を測定した。
【0090】
対照群のOD405を100%として、被験品のコラーゲン産生率を算出した。また、対照および被験品のOD405を、2-5-2(細胞増殖作用評価)で測定したOD570で除した値を細胞あたりのコラーゲン産生率として算出した。対照群の細胞あたりのコラーゲン産生率を100%として被験品の細胞あたりのコラーゲン産生率を算出した。
【0091】
2-5-4 ヒアルロン酸産生促進作用評価
コラーゲンやエラスチンの間で水分を抱え込むと言われているヒアルロン酸の産生量に対する被験品の効果をサンドイッチELISAで次のとおり評価した。
【0092】
PBSで調製したHyaluronan Binding Protein(HABP, Cat No. BC40,Hokudo, Japan, 1:5500)溶液を高吸着型96ウェルプレートに100 μL加え、4℃で一晩インキュベートした。
【0093】
固相したHABP溶液を除去し、200 μLのPBS-T溶液で洗浄後、1%BSA溶液を150 μL加え、室温で1時間インキュベートした。
BSA溶液を除去し、200 μLのPBS-Tで洗浄後、PBS(-)で100倍希釈した培養上清を100 μL加え、室温で1時間インキュベートした。標準物質にはヒアルロン酸ナトリウム (Cat No. 087-04511,Wako, Japan) を使用した。
【0094】
培養上清を除去し、200 μLのPBS-Tで洗浄後、0.5%BSA含有PBS(-)で調製したビオチン標識HABP (Cat No.BC41, Hokudo, Japan, 1:2000) 溶液を100 μL加え、4℃下で一晩静置させた。
【0095】
ビオチン標識HABP溶液を除去し、200 μLのPBS-Tで洗浄後、0.5%BSA含有PBS(-)で調製したStreptavidin-HRP溶液 (1:10000) を100 μL加え、30分間室温静置させた。Streptavidin-HRP溶液を除去し、200 μLのPBS-Tで洗浄後、100 μLのABTS溶液を加え、発色を確認した。
【0096】
96ウェルプレート内の色素を均一にした後、マイクロプレートリーダーを用いて405 nmの吸光度 (OD405) を測定した。
【0097】
対照群のOD405を100%として、被験品のヒアルロン酸産生率を算出した。また、対照および被験品のOD405を、2-5-2(細胞増殖作用評価)で測定したOD570で除した値を細胞あたりのヒアルロン酸産生率として算出した。対照群の細胞あたりのヒアルロン酸産生率を100%として被験品の細胞あたりのヒアルロン酸産生率を算出した。
【0098】
3 有意差検定
試験ごとに、対照と被験品添加群を対応のないt検定で有意差検定を実施した。検定はいずれも両側で有意水準を5%未満とした。
【0099】
4 試験結果
4-1 オリゴDNA
何れの濃度においても細胞増殖に有意な変化はなかった。一方、細胞当たりのコラーゲン産生率およびヒアルロン酸産生率が、対象と比較して有意に増加した(表2)。この結果から、オリゴDNAは、線維芽細胞のコラーゲン産生およびヒアルロン酸産生を高めることが示唆された。
【0100】
4-2 ExoVESICLE
何れの濃度においても細胞増殖に有意な変化はなかった。一方、細胞あたりのヒアルロン酸産生率が、対照と比較して有意に増加した(表2)。この結果から、ExoVESICLEは、線維芽細胞のヒアルロン酸産生を高めることが示唆された。
【0101】
4-3 オリゴDNAとExoVESICLEの併用
何れの濃度においても細胞増殖に有意な変化はなかった。一方、細胞あたりのコラーゲン産生率及びヒアルロン酸産生率が、対照と比較して有意に増加した(表2)。この結果から、オリゴDNAとExoVESICLEは、併用により、線維芽細胞のコラーゲン産生およびヒアルロン酸産生を顕著に高めることが示唆された。
【0102】
【0103】
表2から、オリゴDNA(加水分解DNA-Na)とExoVESICLE(ヒト臍帯間葉系幹細胞由来細胞外小胞)を併用した場合の細胞あたりのコラーゲン産生率及びヒアルロン酸産生率は、各々を単独で使用した場合の程度(率)を足し合わせたよりも顕著に大きいことがわかる。これにより、真皮線維芽細胞の機能賦活作用(コラーゲン産生促進作用及びヒアルロン酸産生促進作用)に対するオリゴDNAとExoVESICLEの相乗効果が確認できる。
【要約】
【課題】本発明は、安全性が高く、長期間にわたって安心して使用できる真皮線維芽細胞の機能賦活用剤、該機能賦活用剤を含んでなる化粧品を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の真皮線維芽細胞の機能賦活用剤又は該機能賦活用剤を含んでなる化粧品は、DNAの加水分解物と細胞外小胞とを有効成分として含む。この有効成分は、真皮線維芽細胞の機能賦活作用を有するので、肌の張りや弾力の低下、しわやたるみ等の皮膚の老化の予防又は改善が期待される。
【選択図】なし