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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】タッピングガイド
(51)【国際特許分類】
   B23G 1/26 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
B23G1/26 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023133036
(22)【出願日】2023-08-17
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2023045380
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515198500
【氏名又は名称】古川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(72)【発明者】
【氏名】古川 敏也
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3021899(JP,U)
【文献】登録実用新案第3170636(JP,U)
【文献】特開2019-213776(JP,A)
【文献】特開2005-281963(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181981(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 1/26
B23B45/14
B25G 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS B 4430に規定されたタップを嵌挿してガイド可能な貫通穴を有するタッピングガイドであって、
前記貫通穴と直角方向の平面からなる底面と、前記貫通穴の長手方向と平行な面で形成された、六角形状の上面と六角形状の前記底面との間の六つの側面とを有し、前記六つの側面の隣同士の面の方向が変化する6か所すべての境界部に前記側面を掴む指を案内する案内凹部を形成し、
前記貫通穴の形態が、
少なくとも3.15~3.25mm、及び、6.3~6.5mmの直径の2つの貫通穴を有し、35~38mmの長さを有する第一形態、あるいは、
少なくとも5.5~5.7mmの直径の1つの貫通穴を有し、27~35mmの長さを有する第二形態であることを特徴とするタッピングガイド。
【請求項2】
JIS B 4430に規定されたタップを嵌挿してガイド可能な貫通穴を有するタッピングガイドであって、
前記貫通穴と直角方向の平面からなる底面と、前記貫通穴の長手方向と平行な面で形成された、六角形状の上面と六角形状の前記底面との間の六つの側面とを有し、前記六つの側面の隣同士の面の方向が変化する6か所すべての境界部に前記側面を掴む指を案内する案内凹部を形成し、
前記貫通穴の形態が、
前記貫通穴の直径が3.15~3.25mm、4.0~4.1mm、5.0~5.1mm、6.3~6.5mm、8.0~8.2mm、及び、10.0~10.2mmで、前記貫通穴の長さが35~38mmである第一形態、あるいは、
前記貫通穴の直径が4.0~4.1mm、5.0~5.1mm、5.5~5.7mm、6.0~6.2mm、8.0~8.2mm、10.0~10.2mm、及び、12.0~12.2mmで、前記貫通穴の長さが27~35mmである第二形態であることを特徴とするタッピングガイド。
【請求項3】
最大直径の前記貫通穴を中央部に配置し、他の複数の貫通穴を、前記最大直径の前記貫通穴の中心から半径方向で離隔した位置であって前記最大直径の前記貫通穴を中心とした円状に、かつ最小直径の貫通穴から円周方向に順に直径を大きくした貫通穴を一周するように設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のタッピングガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップを真っすぐに立てるためのガイドとなるタッピングガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
タップ立てに習熟していない人がタップを立てると、下穴に斜めにねじ山を刻んだり、下穴に少し斜めに入ったところでタップをまっすぐな姿勢に戻そうとして無理に力を入れて回してタップを折損させるという問題があった。特に、呼び径が小さいタップは人のタップを回す力がタップのせん断耐力を超えやすいので折損しやすいという問題があった。
【0003】
特許文献1には、タップ穴の差込み口側に固定する基材に、平坦な固定面と、固定面を差込み口側に固定したときタップ穴に合せるタップ差込み穴とを形成してなるタップ立て用補助具が開示されている。
【0004】
特許文献2には、タップを入れるための貫通穴と、前記貫通穴を前記タップを立てるベき面に対して垂直に保つための平面とをもつタップ立て治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭和55-17735号公報
【文献】実開昭和58-128826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明は、1つのタップ立て用補助具では、1つ又は2つのサイズの呼び径のタップしか使用できないので、現場では3mm、4mm、8mm、10mm等の種々の呼び径のタップを使用していることから、複数個揃えなければならず、一般的に工場で働く複数の作業者間で共有で使用するので、複数のタップ立て用補助具をどこに置いたかが常時わかるように日常管理をしなければならないという煩わしい問題があった。また、タップ立て用補助具の側面が平面視で四角形状であるので角が直角の部位を強く握ると手で掴みにくいことから、タップ立て用補助具をしっかりと固定化し難いという問題もあった。
【0007】
特許文献2の発明は、明細書に記載されているのは2mm用から5mm用の小径用のタップを対象にした考案であり、タップ径よりほぼ0.1mm大きな径の貫通穴を設けて、前記貫通穴にタップを入れるが、タップ立て治具が物体とタップとによって固定され、抜き取れないことがあると記載され、この対応としてタップ立て治具を分割型にした考案である。このため、1つのタップを立てる毎にタップ立て治具を分解し組み立てるという繰り返しをしなければならないという煩わしい問題があった。また、タップ立て治具を動かさないようにするために、円筒型のタップ立て治具の底面に平板を固定し、この平板の底面にゴム板や吸盤を取り付けている。円筒形状の部分は手で滑りやすいことから、ゴム板や吸盤により固定化させる考案であるが、吸盤の場合には位置合わせ後にギュッと吸盤を押さえた瞬間に下穴の中心と貫通穴の中心がずれやすいという問題があった。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、タップの中心を被加工物の下穴の中心とずれないで真っすぐに立てることができ、呼び径が小さいタップも大きいタップも1つのタッピングガイドで可能とすることができ、手で容易に固定化ができるタッピングガイドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のタッピングガイドは、JIS B 4430に規定されたタップを嵌挿してガイド可能な貫通穴を有するタッピングガイドであって、前記貫通穴と直角方向の平面からなる底面と、前記貫通穴の長手方向と平行な面で形成された、六角形状の上面と六角形状の前記底面との間の六つの側面とを有し、前記六つの側面の隣同士の面の方向が変化する6か所すべての境界部に前記側面を掴む指を案内する案内凹部を形成し、前記貫通穴の形態が、少なくとも3.15~3.25mm、及び、6.3~6.5mmの直径の2つの貫通穴を有し、35~38mmの長さを有する第一形態、あるいは、少なくとも5.5~5.7mmの直径の1つの貫通穴を有し、27~35mmの長さを有する第二形態であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のタッピングガイドは、JIS B 4430に規定されたタップを嵌挿してガイド可能な貫通穴を有するタッピングガイドであって、前記貫通穴と直角方向の平面からなる底面と、前記貫通穴の長手方向と平行な面で形成された、六角形状の上面と六角形状の前記底面との間の六つの側面とを有し、前記六つの側面の隣同士の面の方向が変化する6か所すべての境界部に前記側面を掴む指を案内する案内凹部を形成し、前記貫通穴の形態が、前記貫通穴の直径が3.15~3.25mm、4.0~4.1mm、5.0~5.1mm、6.3~6.5mm、8.0~8.2mm、及び、10.0~10.2mmで、前記貫通穴の長さが35~38mmである第一形態、あるいは、前記貫通穴の直径が4.0~4.1mm、5.0~5.1mm、5.5~5.7mm、6.0~6.2mm、8.0~8.2mm、10.0~10.2mm、及び、12.0~12.2mmで、前記貫通穴の長さが27~35mmである第二形態であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のタッピングガイドは、請求項1又は2において、最大直径の前記貫通穴を中央部に配置し、他の複数の貫通穴を、前記最大直径の前記貫通穴の中心から半径方向で離隔した位置であって前記最大直径の前記貫通穴を中心とした円状に、かつ最小直径の貫通穴から円周方向に順に直径を大きくした貫通穴を一周するように設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタッピングガイドは、1つのタッピングガイドで6~7種類以上の呼び径のタップを立てられるという効果を奏する。このため、工場で働く複数の作業者間で使用しても1つなので日常管理が容易にできるという効果を奏する。また、呼びM3のタップは細いねじ部より太いシャンク部の外周面を貫通穴の内周面でガイドさせるようにしたので、折損しやすい呼びM3の直径の小さいタップを折損しないようにすることができたという効果を奏する。
【0013】
また、前記タッピングガイドは、片手でタップを立てながら、もう一方の手でタッピングガイドを強く掴んでタッピングガイドを下方に強く押さえつけられることから、平面視でタッピングガイドの貫通穴の中心と下穴の中心の位置をタップ螺入時にずらさないようにできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】呼び径が7種類のタップを立てることができる本発明のタッピングガイドの平面説明図である。
図2図1の正面説明図である。
図3図1において、A-A断面の断面説明図である。
図4図1において、B-B断面の断面説明図である。
図5】タップの説明図で、(a)はねじ部の直径よりシャンク部の直径の方が大きいタップで、(b)はねじ部の直径がシャンク部の直径より大きいタップの説明図である。
図6図5に示したねじ部の直径よりシャンク部の直径の方が大きいタップと、ねじ部の直径がシャンク部の直径より大きいタップとを同一にタッピングガイドの貫通穴に挿入した状態の説明図である。
図7】タップハンドルを嵌入した、ねじ部の直径よりシャンク部の直径の方が大きいタップをタッピングガイドの貫通穴に挿入した状態の説明図である。
図8】タップハンドルを嵌入した、ねじ部の直径がシャンク部の直径より大きいタップをタッピングガイドの貫通穴に挿入した状態の説明図である。
図9】呼び径が6種類のタップを立てることができる本発明のタッピングガイドの平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
タップ立て作業に習熟していない人が、タップ10のガイドを使用しないで金属や非金属の被加工物30にタップ10を立てるときに、タップ10が被加工物30の下穴31に対してタップハンドル20を回したときにタップ10の姿勢がやや斜めの姿勢になりやすく、そのままタップハンドル20を回すと螺刻された雌ねじが斜めになるという問題や、少しタップ10が下穴31に斜めに入ったところでタップ10の姿勢を真っすぐに戻そうとタップハンドル20の姿勢を被加工物30の面に対して直角に真っすぐにして強く回すとタップ10の先端の食い付き部11を支点としてタップ10を捩る方向に力がかかってタップ10が折損するという問題があった。特に呼び径が小さいタップを立てるときにタップ10のせん断耐力より回す力が上回って折損しやすいという問題があった。発明者はタップ立て作業に習熟していない人でもタップ10を真っすぐに立てることができ、折損しないようにすることを課題として本発明のタッピングガイド1を想到した。
【0016】
本発明のタッピングガイド1は、図1図2に示すように、六角形状の上面と、六角形状の底面6と、上面と底面との間の6つの側面5と、上面と底面とを貫通させた、タップ10をガイドする貫通穴2が複数設けられ、前記側面5のすべての境界部には指を案内する案内凹部4が形成されている。前記側面5と貫通穴2a~2gの長手方向とは平行で、前記貫通穴2a~2gと底面6とは直角方向である。
【0017】
本発明のタッピングガイド1の外形は、図1又は図2に示すように、タップ10を立てるときに片手でタッピングガイド1を固定化しながら、もう一方の片手でタップハンドル20をゆっくりと左右方向に時計周りや反時計周りを繰り返しながら回す。このときに、片手で掴みやすい六角形状の方が、掴みにくく滑りやすい曲面の円形状より好ましい。また、比較例として四角形状は手でやや掴みにくく、八角形状以上の多角形状になると円形状に近づくことから手で掴んでも滑りやすいことから、六角形状が最も好ましい。
【0018】
また、平面視の形状を六角形状とし、前記六角形状の側面5の隣同士の面の方向が変化する境界部のすべてに、前記側面5を掴む指を案内する案内凹部4を形成している。この案内凹部4はほぼ指の太さを考慮して形成されている。このため、指を前記案内凹部4に押し当てて下方に押しあてやすいので、使用中の前記タッピングガイド1の貫通穴2a~2gのいずれかの1か所の中心と、下穴31の中心とを、タップ10をタップハンドル20で回して螺刻中にずれにくくするという効果を奏する。
【0019】
また、前記タッピングガイド1の材質は、プラスチックのように比重が軽いと指が少し触れただけで動いて貫通穴2a~2gのいずれかの中心が下穴31の中心とずれるので、鉄又は銅等のように比重が重い方が、位置ずれが発生しにくいので好ましい。また、前記タッピングガイド1の表面は、硬質クロムメッキなどの耐摩耗性の高い表面処理を施工すれば前記貫通穴2が摩耗し難くなるので長期間前記貫通穴2の直径の寸法精度を維持できる。
【0020】
前記タップ10は、例えば、ねじ部12の直径の大きさで呼びM3や呼びM10等があり、図5(a)、(b)に示すように、下側から上側に向かって順に、被加工物30のタップ用下穴31に最初に接触する食い付き部11a、11b、前記下穴31に雌ねじを螺刻する、切りくずを排出する溝が形成されたねじ部12a、12b、断面が円形状のシャンク部13a、13b、断面が四角の四角部14a、14bの構成になっている。そして、図7又は図8に示すように、前記四角部14a、14bにはタップハンドル20が取付・取り外し自在にセットされる。
【0021】
次にタップ10の寸法は、JIS B 4430:1998のメートルねじ用ハンドタップには、下記の表1、表2、表4、表5に示すように形状別で呼び別にタップの寸法が規定されている。表1にはメートル並目ねじ用ネック付きタップの寸法が記載され、表2にはメートル細目ねじ用ネック付きタップの寸法が記載され、表4にはメートル並目ねじ用J形タップが記載され、表5にはメートル細目ねじ用J形タップが記載されている。表1、表2、表4及び表5において、呼びはタップがM3用かM4用かというねじ部12の大きさを表示し、外径の基準寸法はねじ部12の外径を表示し、シャンク径はシャンク部13の直径を表示し、ねじ先からシャンクまでの長さは、前記食い付き部11から前記シャンク部13の前端までの長さを表示し、全長は前記食い付き部11から前記四角部14の後端までの長さを表示し、シャンク四角部の長さは四角部14の長さを表示し、ピッチはねじ部12のピッチを表示している。
【0022】
まず、メートル並目ねじ用ネック付きタップ又はメートル細目ねじ用ネック付きタップを使用するタッピングガイド1について説明する。前記メートル並目ねじ用ネック付きタップと前記メートル細目ねじ用ネック付きタップとはねじ部12の外径やシャンク部13の外径は同じであるが、ピッチの寸法が異なる。表1及び表2から、例えば呼びM3の場合は、ねじ部12の外径が3mmでシャンク部13の外径が3.15mmで、ねじ先からシャンクまでの長さが18mmで全長が48mmでタップハンドルを嵌める四角部14の長さが5mmで、ピッチは並目が0.5mmで細目が0.35mmであることを示している。また、M8の場合は、ねじ部12の外径が8mmでシャンク部13の外径が8mmで、ねじ先からシャンクまでの長さが35mmで全長が72mmでタップハンドル20を嵌める四角部14の長さが9mmで、ピッチは並目が1.25mmで細目が1.0mmであることを示している。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
前記タップ10の形態には、図5(a)に示すように、ねじ部12aの外径が、断面が円形状のシャンク部13aの外径より小さいタップ10aのA形態と、図5(b)に示すようにねじ部12bの直径が、断面が円形状のシャンク部13bの外径より大きいタップ10bのB形態がある。本発明のタッピングガイド1は、図6に示すように、1つのタッピングガイド1で、A形態のタップ10aもB形態のタップ10bも、ねじ部12の外径とシャンク部13の外径の径が大きい方をガイド可能にする発明である。
【0026】
メートル並目ねじ用ネック付きタップ又はメートル細目ねじ用ネック付きタップを使用するタッピングガイド1の厚み、すなわち貫通穴2の長さLを検討する。前記貫通穴2の長さLは、被加工物30の下穴31にタップ10を少なくとも3山螺刻させるとすると、ねじ部12の外径よりシャンク部13の外径が大きいタップ10aについては、シャンク部13を少なくとも3山螺刻するまでをガイドする長さ以上が必要であり、かつ、最も全長が短いタップ10のタップハンドル20が嵌入される四角部14が3山螺刻されても前記タッピングガイド1の上面に露出できる長さ以下にしなければならない。ねじ部12の外径がシャンク部13の外径と同じ場合、及び、ねじ部12の外径がシャンク部13の外径より大きいタップ10の場合は、貫通穴2の長さLは、ねじ部12をガイドできる長さでよい。
【0027】
JIS B 4430:1998のメートルねじ用ハンドタップのメートル並目ねじ用ネック付きタップ及びメートル細目ねじ用ネック付きタップの呼びM3、呼びM4、呼びM5、呼びM6、呼びM8、呼びM10までを使用可能にするタッピングガイド1の貫通穴2の長さLを求める。表1及び表2から、前記貫通穴2として必要な最も短い長さLは、ねじ部12の外径よりシャンク部13の外径の方が大きい呼びM3から呼びM6まででは「ねじ先からシャンク部先端」までの最大の長さが30mmで、呼びM3から呼びM6までで最も大きいピッチが1.0mmであるので(1.0mm×3山=3.0mm)に余裕代2mmを加算した5mmを確保すると、(30+5)=35mm以上の長さが必要であり、かつ、全長が最も短いタップである呼びM3のタップを3山螺入させてもタップハンドル20が嵌入状態であるようにするために、(呼びM3の全長48mm-四角部の長さ5mm-3山螺入分の5mm)=38mm以下であることが必要である。呼びM8以上はねじ部12の外径がシャンク部13の外径と同じなのでシャンク部13をガイドできる長さは必要がない。よって、メートル並目ねじ用ネック付きタップ又はメートル細目ねじ用ネック付きタップ用の貫通穴2の長さ、すなわちタッピングガイド1の厚みは35~38mmとなる。前記35~38mmには、35mm、36mm、37mm、38mmなどが含まれる。
【0028】
次に、メートル並目ねじ用ネック付きタップ又はメートル細目ねじ用ネック付きタップを使用するタッピングガイド1の貫通穴2の直径を検討する。タッピングガイド1の貫通穴2の直径は、表3に示すように、ねじ部12の外径やシャンク部13の外径が小さい場合、例えば呼びM3~呼びM5の場合はタップ10のシャンク部13の外径に0~0.1mm大きい貫通穴2にし、例えば呼びM6~呼びM10のようにねじ部12の外径が大きい場合はねじ部12の外径に0~0.2mm大きい貫通穴にする。この基準で決めた貫通穴2の大きさを表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
表3において、呼びM3の場合における3.15~3.25の範囲とは、例えば3.15、3.20、3.25等いずれの直径でもよく、呼びM6の場合における6.3~6.5の範囲とは、例えば6.3、6.35、6.40、6.45、6.50等いずれの直径でもよい。
【0031】
次に、表4に示すメートル並目ねじ用J形タップ、及び、表5に示すメートル細目ねじ用J形タップを使用するタッピングガイド1について説明する。前記メートル並目ねじ用J形タップと前記メートル細目ねじ用J形タップとは、ねじ部12の外径とシャンク部13の外径が同じであるので、同じタッピングガイド1を使用することができる。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
メートル並目ねじ用J形タップ又はメートル細目ねじ用J形タップを使用するタッピングガイド1の厚み、すなわち貫通穴2の長さLを検討する。前記貫通穴2の長さLは、被加工物30の下穴31にタップ10を3山螺刻させるとして、ねじ部12の外径よりシャンク部13の外径が大きいタップ10については、少なくとも3山螺刻するまでシャンク部13をガイドする長さ以上が必要で、かつ、最も全長が短いタップ10のタップハンドル20が嵌入される四角部14が3山螺入されてもタッピングガイド1の上面より露出できる長さ以下にしなければならない。ねじ部12の外径がシャンク部13の外径と同じタップ10の場合、及び、ねじ部12の外径がシャンク部13の外径より大きいタップ10の場合は、ねじ部12がガイドできる長さでよい。
【0035】
JIS B 4430:1998のメートルねじ用ハンドタップのメートル並目ねじ用J形タップ及びメートル細目ねじ用J形タップの呼びM3、呼びM4、呼びM5、呼びM6、呼びM8、呼びM10、呼びM12までを使用可能にするタッピングガイド1の貫通穴2の長さLを求める。表4及び表5から、ねじ部12の外径よりシャンク部13の外径の方が大きいのは呼びM3から呼びM5までで、「ねじ先からシャンク部先端」までで最大の長さが22mmで、及びM3から呼びM5までで最も大きいピッチが0.8mmであるので(0.8mm×3山=2.4mm)に余裕代2.6mmを加算した5mmを確保すると(22mm+5mm)=27mm以上の長さを必要であり、かつ、全長が最も短いタップである呼びM3のタップを3山螺入させてもタップハンドル20が嵌入状態であるようにするために、(呼びM3の全長46mm-四角部の長さ6mm-3山螺入分の5mm)=35mm以下であることが必要である。呼びM6はねじ部12の外径とシャンク部13の外径が同じであるのでシャンク部13をガイドできる長さは必要がなく、呼びM8~呼びM12はねじ部12の外径がシャンク部13の外径より大きいのでシャンク部13をガイドできる長さは必要がない。よって、メートル並目ねじ用J形タップ及びメートル細目ねじ用J形タップ用の貫通穴2の長さL、すなわちタッピングガイド1の厚みは27~35mmとなる。前記27~35mmには、27mm、28mm、29mm、30mm、31mm、32mm、33mm、34mm、35mmなどが含まれる。また、タッピングガイド1の厚みを27~30mmにした場合には、呼びM2のタップ用の貫通穴2も設けることができる。
【0036】
次に、メートル並目ねじ用J形タップ又はメートル細目ねじ用J形タップを使用するタッピングガイド1の貫通穴2の直径を検討する。タッピングガイド1の貫通穴2の直径は、表4及び表5に示すように、ねじ部12の外径やシャンク部13の外径が小さい場合、例えば呼びM3~呼びM5の場合はタップ10のシャンク部13の外径に0~0.1mm大きい貫通穴2にし、例えば呼びM6~呼びM10のようにねじ部12の外径が大きい場合はねじ部12の外径に0~0.2mm大きい貫通穴にする。この設定の貫通穴の大きさを表6に示す。
【0037】
【表6】
【0038】
表6において、呼びM3の場合における4.0~4.1の範囲とは、例えば4.0、4.05、4.1等いずれの直径でもよく、呼びM8の場合における8.0~8.2の範囲とは、例えば8.0、8.1、8.2等いずれの直径でもよい。
【0039】
したがって、本発明のタッピングガイド1は、JIS B 4430:1998に規定されたタップ10を嵌挿してガイド可能な貫通穴2を有するタッピングガイド1であって、前記貫通穴2と直角方向の平面からなる底面6と、前記貫通穴2の長手方向と平行な面で形成された、平面視で六角形状の側面5とを有し、前記六角形状の側面5の隣同士の面の方向が変化する6か所すべての境界部に前記側面5を掴む指を案内する案内凹部4を形成し、前記貫通穴2の形態が、前記貫通穴2の直径が3.15~3.25mm、4.0~4.1mm、5.0~5.1mm、6.3~6.5mm、8.0~8.2mm、10.0~10.2mmで、前記貫通穴2の長さLが35~38mmである第一形態、あるいは、前記貫通穴2の直径が4.0~4.1mm、5.0~5.1mm、5.5~5.7mm、6.0~6.2mm、8.0~8.2mm、10.0~10.2mm、12.0~12.2mmで、前記貫通穴2の長さLが27~35mmである第二形態である。
【0040】
また、一般的なタッピングガイドはねじ部12のみをガイドするようになっているため、例えば、呼びM3のタップ10のガイドをする貫通穴2の直径はねじ部12の直径は3mmであるので、3.0~3.1mmで形成されている。よって、本発明のタッピングガイド1を、ねじ部12の直径の寸法が含まれる貫通穴2を外して特定することもできる。
【0041】
よって、本発明のタッピングガイド1は、JIS B 4430に規定されたタップ10を嵌挿してガイド可能な貫通穴2を有するタッピングガイド1であって、前記貫通穴2と直角方向の平面からなる底面6と、前記貫通穴2の長手方向と平行な面で形成された、平面視で六角形状の側面5とを有し、前記六角形状の側面5の隣同士の面の方向が変化する6か所すべての境界部に前記側面5を掴む指を案内する案内凹部4を形成し、前記貫通穴2の形態が、少なくとも3.15~3.25mm、及び、6.3~6.5mmの直径の2つの貫通穴を有し、35~38mmの長さを有する第一形態、あるいは、少なくとも5.5~5.7mmの直径の1つの貫通穴を有し、27~35mmの長さを有する第二形態である。
【0042】
前記貫通穴2の形態が、少なくとも3.15~3.25mm、及び、6.3~6.5mmの直径の2つの貫通穴を有し、35~38mmの長さを有する第一形態、あるいは、少なくとも5.5~5.7mmの直径の1つの貫通穴を有し、27~35mmの長さを有する第二形態とすることにより、前記貫通穴2に、呼びM3用貫通穴2g、呼びM4用貫通穴2f、呼びM5用貫通穴2e、呼びM6用貫通穴2d、呼びM8用貫通穴2c、呼びM10用貫通穴2b、呼びM12用貫通穴2aの内から選択した呼び径用の貫通穴2を追加することができる。
【0043】
第二形態の貫通穴2gの直径4.0~4.1mmは呼びM3のタップ10用の貫通穴2gであるが、誤って呼びM4のタップ10を嵌入した場合のポカヨケについて説明する。第二形態は、表4及び表5に示す、メートル並目ねじ用J形タップ又はメートル細目ねじ用J形タップを使用可能とするタッピングガイド1の貫通穴2である。第二形態の貫通穴2gは直径が4.0~4.1mmで長さが27~35mmである。前記貫通穴2gに呼びM4のタップ10を嵌入しようとすると、ねじ部12の外径は表4又は表5から4mmであるのでねじ部12の部分は嵌入できるが、「ねじ先からシャンク部13までの長さ」が15mm又は20mmに対して、貫通穴2の長さが27mmであるので、直径5mmのシャンク部13がタッピングガイド1の上面に引っかかってシャンク部13を貫通穴2に嵌入させることができず、呼びM4のタップ10の食い付き部11が被加工物30まで到達できないようになっている。
【0044】
前記第一形態のタッピングガイド1は、例えば図9に示すような平面視のタッピングガイド1で、メートル並目ねじ用ネック付きタップ又はメートル細目ねじ用ネック付きタップに使用でき、前記第二形態のタッピングガイド1は、例えば図1に示すような平面視のタッピングガイド1で、メートル並目ねじ用J形タップ又はメートル細目ねじ用J形タップに使用される。
【0045】
次に、前記貫通穴2の配置について説明する。前記貫通穴2は、最大直径の前記貫通穴2を中央部に配置し、他の複数の貫通穴2を、前記最大直径の前記貫通穴2の中心から半径方向で離隔した位置であって前記最大直径の前記貫通穴2を中心とした円状に、かつ最小直径の貫通穴2から円周方向に順に直径を大きくした貫通穴2を一周するように設ける。
【0046】
前記貫通穴2は、図1又は図9に示すように、複数の呼び径が異なる前記タップ10をそれぞれ嵌挿可能に複数設けられる。図1に示すように、例えば、前記第二形態のタッピングガイド1の場合、呼びM12のタップ用の貫通穴2aを中心に設け、前記貫通穴2aの中心から半径方向で離隔した位置であって前記最大直径の前記貫通穴2aを中心とした円状に、呼びM3、呼びM4、呼びM5のタップ用の前記A形態の貫通穴2g、2f、2eの合計3か所を一つの円状に順に設け、続けて、呼びM6、呼びM8、呼びM10のタップ用の前記B形態の貫通穴2d、2c、2bを一つの円状に順に設けに合計3か所設ける。これにより、1つのタッピングガイド1で、7種類の呼び径が異なるタップ10を立てることができる。
【0047】
前記貫通穴2については、例えば図3に示すように貫通穴2aが設けられ、図4に示すように貫通穴2eが設けられる。
【0048】
前記第一形態のタッピングガイド1の場合も、図9に示すように、呼びM10タップ用の貫通穴2bを中心に設け、前記貫通穴2bの中心から半径方向で離隔した位置であって前記最大直径の前記貫通穴2bを中心とした円状に、呼びM3、呼びM4、呼びM5のタップ用の前記A形態の貫通穴2g、2f、2eを合計3か所を一つの円状に順に設け、続けて、呼びM6、呼びM8のタップ用の前記B形態の貫通穴2d、2cを一つの円状に順に設ける。
【0049】
そして、それぞれの前記貫通穴2a~2gは、呼び径の異なる前記タップ10ごとに前記タップ10のねじ部12と断面が円形状の前記シャンク部13とのうちで直径が大きい方の部位をガイド可能とすることができる。
【0050】
図5(a)に示すように呼び径が小さいタップ10aは、断面が円形状の前記シャンク部13aが前記ねじ部12aより大きいため、図7に示すように、前記タッピングガイド1にタップ10aを嵌挿させて立てたときには、前記ねじ部12aと前記貫通穴2eの内周面とは間隙G1ができ、前記シャンク部13aを貫通穴2eの内周面と接触するようにした。これにより、前記ねじ部12aより太いシャンク部13aでガイドするので、直径が小さいねじ部12aでガイドするよりも安定し折れにくくすることができた。
【0051】
次に、図5(b)に示すように呼び径が大きいタップ10bは、ねじ部12bが、断面が円形状のシャンク部13bより大きいため、図8に示すように、前記タッピングガイド1にタップ10bを嵌挿させて立てたときには、断面が円形状の前記シャンク部13bと貫通穴2aの内周面とは間隙G2ができ、前記ねじ部12bを貫通穴2aの内周面と接触するようにした。これにより、前記シャンク部13bより大きい前記ねじ部12bでガイドするので、被加工物30の面に対して直角の姿勢を安定させることができ、タップ10bによる雌ねじを斜めにせずに真っすぐに安定して螺刻させることができた。
【0052】
前記タッピングガイド1は、呼び径の異なるタップ10ごとに前記タップ10のうちで最も外径の大きい部位をガイドするようにしたことにより、手でタップハンドル20を左右方向に時計周りや反時計周りを繰り返しながら回して螺刻するときにタップ10を折損しにくくし真っすぐに立てやすくすることができた。
【0053】
タッピングガイド1の使用方法は、図7又は図8に示すように、被加工物30の表面にタッピングガイド1を載置し、被加工物30の下穴31の中心に、タッピングガイド1の貫通穴2a~貫通穴2gのうちから選択したいずれかの中心を合わせる。そして、タップハンドル20を嵌設したタップ10を選択した前記貫通穴2a~2gのうちのいずれかに嵌挿させる。なお、前記タップ10を立てる前に選択した貫通穴2a~2gのいずれかには油を注いで螺刻しやすくする。
【0054】
次に、前記タップハンドル20を左右方向に時計回りや反時計周りを交互に繰り返しながら回して下穴31に雌ねじを3山くらい螺刻したら、タップ10を前記タッピングガイド1のガイドなしで前記被加工物30に安定して螺入させることができるので、前記タップ10を3山ほど螺入させた状態で、前記タップハンドル20を前記タップ10の四角部14から取り外し、前記タッピングガイド1を持ち上げて抜き取る。そして、再び前記タップハンドル20を立っている前記タップ10に取り付けて前記タップハンドル20を左右方向に時計回りや反時計周りを交互に繰り返しながら回して下穴31に雌ねじを所定の深さまで螺刻する。
【符号の説明】
【0055】
1 タッピングガイド
2、2a~2g 貫通穴
4 案内凹部
5 側面
6 底面
10、10a~10b タップ
11、11a~11b 食い付き部
12、12a~12b ねじ部
13、13a~13b シャンク部
14、14a~14b 四角部
20 タップハンドル
30 被加工物
31 下穴
G1~G2 間隙
L 長さ
【要約】      (修正有)
【課題】呼び径が小さいタップも大きいタップも使用でき、手で容易に固定化ができ、呼び径が小さいタッピングガイドを提供することを課題とする。
【解決手段】貫通穴と直角方向の平面からなる底面と、貫通穴の長手方向と平行な面で形成された、平面視で六角形状の側面とを有し、六角形状の側面の隣同士の面の方向が変化する6か所すべての境界部に側面を掴む指を案内する案内凹部を形成し、貫通穴の形態が、少なくとも3.15~3.25mm、及び、6.3~6.5mmの直径の2つの貫通穴を有し、35~38mmの長さを有する第一形態、あるいは、少なくとも5.5~5.7mmの直径の1つの貫通穴を有し、27~35mmの長さを有する第二形態であるタッピングガイドより課題解決できた。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9