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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】樹脂封止装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
H01L21/56 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023150401
(22)【出願日】2023-09-15
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501184434
【氏名又は名称】アサヒ・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】石井 正明
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-77280(JP,A)
【文献】特開2017-7170(JP,A)
【文献】特開平11-77734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/56
H01L23/28-23/31
B29C33/00-33/76
B29C39/26-39/36
B29C41/38-41/44
B29C43/36-43/50
B29C45/00-45/84
B29C49/48-49/70
B29C51/30-51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の端面に複数の外部接続端子をそれぞれ略垂直に立設するための孔を備える複数のスリーブが立設され、かつ前記基板の他方の端面に放熱部材が配設された電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であって、
それぞれキャビティ凹部を備える第1の型および第2の型により前記電子部品をクランプする金型であり、前記第1の型のキャビティ凹部の底面に形成された複数の貫通孔にそれぞれ進退自在に配設された複数の押圧部材を備え、前記複数の貫通孔からそれぞれ進出した前記複数の押圧部材が前記クランプにより前記複数のスリーブの端面にそれぞれ当接して押圧し、かつ前記第2の型のキャビティ凹部の底面に前記放熱部材が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、前記複数のスリーブのそれぞれの端面と前記放熱部材端面とが露出して成形される金型を有する樹脂封止装置。
【請求項2】
基板の一方の端面に、先端部分に段部を備え、前記段部の先端に前記段部より細いピン部を備える複数の外部接続端子がそれぞれ略垂直に立設され、かつ前記基板の他方の端面に放熱部材が配設された電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であって、
それぞれキャビティ凹部を備える第1の型および第2の型により前記電子部品をクランプする金型であり、前記第1の型のキャビティ凹部の底面に形成された複数の貫通孔にそれぞれ進退自在に配設され、前記複数の外部接続端子のピン部がそれぞれ挿入される挿入孔を有し、前記ピン部が前記挿入孔にそれぞれ挿入された状態で前記複数の外部接続端子の段部にそれぞれ当接して押圧する複数の押圧部材を備え、前記複数の貫通孔からそれぞれ進出した前記複数の押圧部材が、前記クランプにより前記ピン部が前記挿入孔にそれぞれ挿入された状態で前記段部に当接して押圧し、かつ前記第2の型のキャビティ凹部の底面に前記放熱部材が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、前記複数の外部接続端子のそれぞれのピン部および段部と前記放熱部材端面とが露出して成形される金型を有する樹脂封止装置。
【請求項3】
前記複数の押圧部材は、前記挿入孔から進退可能に配設された可動ピンであり、前記挿入孔内に浸入した樹脂を掻き出す可動ピンを有する請求項2記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
前記複数の押圧部材を進出させる弾性部材であり、前記複数の押圧部材を1つずつまたは複数付勢する弾性部材を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂封止装置。
【請求項5】
前記第1の型のキャビティ凹部の底面または前記第2の型のキャビティ凹部の底面のいずれか一方または両方に張設される離型フィルムを有する請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂封止装置。
【請求項6】
前記第1の型のキャビティ凹部の底面または前記第2の型のキャビティ凹部の底面のいずれか一方または両方に張設される離型フィルムを有する請求項4記載の樹脂封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放熱板、絶縁層、基板、半導体パワーチップおよび基板に垂直に立った外部接続端子(以下、「垂直端子」と称す。)から構成される大型のパワーモジュールを成形する方法として、周囲に樹脂ケースの外枠をセットし、液状樹脂でポッティング後、樹脂ケースの材質と同じ材質の蓋をする方法がある。または、小型のパワーモジュールをエポキシ樹脂で成形したものを大型パワーモジュールの樹脂ケースの外枠へ組み込み、液状樹脂でポッティングを行う方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
垂直端子は、基板の放熱面および放熱板の反対側にあるので、アースとの間の距離が長く取れ、良好な絶縁特性が確保できるという利点がある。また、各種外部回路装置を大型のパワーモジュールの上面に積み重ね配置することができるため、各種外部回路装置との接続のための配線間距離を短くでき、ノイズの低減と、これによる信頼性の向上が得られ、さらには小型化が図れるという利点がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
垂直端子の露出成形方法としては、例えば特許文献3に記載の方法が知られている。この方法では、集積回路を構成した基板面に、リードピンを垂直に立設し、金型を用いて樹脂で封止したパッケージにおいて、パッケージは、成形前に予めリードピンに挿入し、かつ密着し、成形後に取り出し可能なアタッチメントによる露出部を有し、この露出部を端子として構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7224272号公報
【文献】特開平10-22435号公報
【文献】実開平3-110847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大型のパワーモジュールの周囲に樹脂ケースの枠をセットし、液状樹脂でポッティングする場合、外枠および蓋の樹脂ケース、接着材、シリコーン等のゲル材、注入工程の部材や工程等が必要になり、硬化時間も長く、コストもかかるという問題がある。
【0007】
特許文献3に記載の方法では、ゴムや樹脂等のアタッチメントを使用するため、変形してしまうという問題がある。また、アタッチメント着脱の工程も発生するため、コストがかかるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明においては、少ない部材および製造工程で電子部品の外部接続端子が露出した樹脂封止製品を得ることが可能な樹脂封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の樹脂封止装置は、基板の一方の端面に複数の外部接続端子をそれぞれ略垂直に立設するための孔を備える複数のスリーブが立設され、かつ基板の他方の端面に放熱部材が配設された電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であって、それぞれキャビティ凹部を備える第1の型および第2の型により電子部品をクランプする金型であり、第1の型のキャビティ凹部の底面に形成された複数の貫通孔にそれぞれ進退自在に配設された複数の押圧部材を備え、複数の貫通孔からそれぞれ進出した複数の押圧部材がクランプにより複数のスリーブの端面にそれぞれ当接して押圧し、かつ第2の型のキャビティ凹部の底面に放熱部材が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、複数のスリーブのそれぞれの端面と放熱部材端面とが露出して成形される金型を有するものである。
【0010】
本発明の樹脂封止装置によれば、第1の型および第2の型により電子部品をクランプすると、複数の貫通孔からそれぞれ進出した複数の押圧部材が複数のスリーブの端面にそれぞれ当接して押圧し、かつ第2の型のキャビティ凹部の底面に放熱部材が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、複数のスリーブのそれぞれの端面と複数の押圧部材との間に樹脂が浸入するのを防止することができ、複数のスリーブのそれぞれの端面と放熱部材端面とが露出して成形される。これにより、成形後に複数のスリーブの孔にそれぞれ外部接続端子を立設することで、外部接続端子が露出した樹脂封止製品を得ることができる。特に、本発明の樹脂封止装置では、複数のスリーブの端面を複数の押圧部材により個別に押圧するので、放熱部材端面から複数のスリーブのそれぞれの端面までの高さのばらつきを吸収することができ、スリーブの孔内へ樹脂が浸入するのを防ぐことができる。また、過剰な金型クランプ荷重も吸収することができる。
【0011】
また、上記スリーブに代えて、先端部分に段部を備え、段部の先端に段部より細いピン部を備える複数の外部接続端子がそれぞれ略垂直に立設されたものとすることができる。すなわち、本発明の別の樹脂封止装置は、基板の一方の端面に、先端部分に段部を備え、段部の先端に段部より細いピン部を備える複数の外部接続端子がそれぞれ略垂直に立設され、かつ基板の他方の端面に放熱部材が配設された電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であって、それぞれキャビティ凹部を備える第1の型および第2の型により電子部品をクランプする金型であり、第1の型のキャビティ凹部の底面に形成された複数の貫通孔にそれぞれ進退自在に配設され、複数の外部接続端子のピン部がそれぞれ挿入される挿入孔を有し、ピン部が挿入孔にそれぞれ挿入された状態で複数の外部接続端子の段部にそれぞれ当接して押圧する複数の押圧部材を備え、複数の貫通孔からそれぞれ進出した複数の押圧部材がクランプによりピン部が挿入孔にそれぞれ挿入された状態で段部に当接して押圧し、かつ第2の型のキャビティ凹部の底面に放熱部材が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、複数の外部接続端子のそれぞれのピン部および段部と放熱部材端面とが露出して成形される金型を有するものである。
【0012】
本発明の樹脂封止装置によれば、第1の型および第2の型により電子部品をクランプすると、複数の貫通孔からそれぞれ進出した複数の押圧部材は、ピン部が挿入孔にそれぞれ挿入された状態で複数の外部接続端子の段部にそれぞれ複数の押圧部材が当接して押圧し、かつ第2の型のキャビティ凹部の底面に放熱部材が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、複数の外部接続端子のそれぞれの段部と複数の押圧部材との間に樹脂が浸入するのを防止することができ、複数の外部接続端子のそれぞれのピン部および段部と放熱部材端面とが露出して成形される。これにより、成形後にスリーブの孔に外部接続端子を立設することなく、外部接続端子が露出した樹脂封止製品を得ることができる。特に、本発明の樹脂封止装置では、複数の外部接続端子の段部を複数の押圧部材により個別に押圧するので、放熱部材端面から複数の外部接続端子の段部までの高さのばらつきを吸収することができ、挿入孔内へ樹脂が浸入してピン部を覆うのを防ぐことができる。また、過剰な金型クランプ荷重も吸収することができる。
【0013】
ここで、複数の押圧部材は、挿入孔から進退可能に配設された可動ピンであり、挿入孔内に浸入した樹脂を掻き出す可動ピンを有することが望ましい。これにより、挿入孔内に樹脂が浸入した場合、可動ピンで挿入孔内の樹脂を掻き出して自動清掃することができる。
【0014】
また、本発明の樹脂封止装置は、複数の押圧部材を進出させる弾性部材であり、複数の押圧部材を1つずつまたは複数付勢する弾性部材を有するものとすることができる。これにより、スリーブや外部接続端子の段部を適正な圧力で押圧することが可能となる。また、1つの弾性部材で複数の押圧部材を付勢する場合には、複数の押圧部材のピッチを狭くしても弾性部材によりまとめて押圧することが可能となる。
【0015】
また、本発明の樹脂封止装置は、第1の型のキャビティ凹部の底面または第2の型のキャビティ凹部の底面のいずれか一方または両方に張設される離型フィルムを有することが望ましい。これにより、複数のスリーブのそれぞれの端面または複数の外部接続端子のそれぞれの段部と複数の押圧部材との間、あるいは放熱部材端面に樹脂が浸入するのをさらに防止することができる。また、金型のクランプにより電子部品に過剰な圧力がかかった場合でも、離型フィルムの厚みと弾性により過剰な圧力を吸収することができる。
【発明の効果】
【0016】
(1)基板の一方の端面に複数の外部接続端子をそれぞれ略垂直に立設するための孔を備える複数のスリーブが立設され、かつ基板の他方の端面に放熱部材が配設された電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であって、それぞれキャビティ凹部を備える第1の型および第2の型により電子部品をクランプする金型であり、第1の型のキャビティ凹部の底面に形成された複数の貫通孔からそれぞれ進退自在に配設され、複数のスリーブの端面に個別に当接して押圧する複数の押圧部材を備え、複数の貫通孔から複数の押圧部材がそれぞれ進出して複数のスリーブの端面にそれぞれ当接して押圧し、かつ第2の型のキャビティ凹部の底面に放熱部材が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、複数のスリーブのそれぞれの端面と放熱部材端面とが露出して成形される金型を有する樹脂封止装置によれば、成形後に複数のスリーブの孔にそれぞれ外部接続端子を立設することで、少ない部材および製造工程で電子部品の外部接続端子が露出した樹脂封止製品を得ることが可能となる。また、放熱部材端面から複数のスリーブのそれぞれの端面までの高さのばらつきを吸収することができ、スリーブの孔内の樹脂の浸入を防ぐことができるので、品質の良い樹脂封止製品を得ることができる。さらに、過剰な金型クランプ荷重も吸収することができるので、電子部品の破損を防止することができ、品質が向上する。
【0017】
(2)基板の一方の端面に、先端部分に段部を備え、段部の先端に段部より細いピン部を備える複数の外部接続端子がそれぞれ略垂直に立設され、かつ基板の他方の端面に放熱部材が配設された電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置であって、それぞれキャビティ凹部を備える第1の型および第2の型により電子部品をクランプする金型であり、第1の型のキャビティ凹部の底面に形成された複数の貫通孔からそれぞれ進退自在に配設され、複数の外部接続端子のピン部がそれぞれ挿入される挿入孔を有し、ピン部が挿入孔にそれぞれ挿入された状態で複数の外部接続端子の段部にそれぞれ当接して押圧する複数の押圧部材を備え、複数の貫通孔から複数の押圧部材がそれぞれ進出して複数の外部接続端子の段部に当接して押圧し、かつ第2の型のキャビティ凹部の底面に放熱部材が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、複数の外部接続端子のそれぞれのピン部と放熱部材端面とが露出して成形される金型を有する樹脂封止装置によれば、少ない部材および製造工程で外部接続端子が露出した樹脂封止製品を得ることができ、成形後にスリーブの孔に外部接続端子を立設する工程を削減することができる。また、放熱部材端面から複数の外部接続端子の段部までの高さのばらつきを吸収することができ、挿入孔内へ樹脂が浸入してピン部を覆うのを防ぐことができるので、品質の良い樹脂封止製品を得ることができる。さらに、過剰な金型クランプ荷重も吸収することができるので、電子部品の破損を防止することができ、品質が向上する。
【0018】
(3)複数の押圧部材は、挿入孔から進退可能に配設された可動ピンであり、挿入孔内に浸入した樹脂を掻き出す可動ピンを有することにより、挿入孔内に樹脂が浸入した場合、可動ピンで挿入孔内の樹脂を掻き出して自動清掃することができ、金型のクリーニング作業を軽減することができる。
【0019】
(4)複数の押圧部材を進出させる弾性部材であり、複数の押圧部材を1つずつまたは複数付勢する弾性部材を有する構成により、スリーブや外部接続端子の段部を適正な圧力で押圧することが可能となるため、過剰な力で電子部品を破損することがない。また、1つの弾性部材で複数の押圧部材を付勢する場合には、スリーブや外部接続端子のピッチが狭い電子部品であっても複数の押圧部材のピッチを狭くして対応することが可能となる。
【0020】
(5)第1の型のキャビティ凹部の底面または第2の型のキャビティ凹部の底面のいずれか一方または両方に張設される離型フィルムを有することにより、複数のスリーブのそれぞれの端面または複数の外部接続端子のそれぞれの段部と複数の押圧部材との間、あるいは放熱部材端面に樹脂が浸入するのをさらに防止することができる。また、金型のクランプにより電子部品に過剰な圧力がかかった場合でも、離型フィルムの厚みと弾性により過剰な圧力を吸収することができ、電子部品の破損を防止することができ、さらに品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図である。
図2図1の金型の型締め後の状態を示す図である。
図3】本発明の第2実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図である。
図4図3の金型の型締め後の状態を示す図である。
図5】本発明の第3実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図である。
図6図5の金型の型締め後の状態を示す図である。
図7】本発明の第4実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図である。
図8図7の金型の型締め後の状態を示す図である。
図9】本発明の第5実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図である。
図10図9の金型の型締め後の状態を示す図である。
図11】本発明の第6実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図である。
図12図11の金型の型締め後の状態を示す図である。
図13】本発明の第7実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図である。
図14図13の可動ピンの動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施の形態1>
図1は本発明の第1実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図、図2図1の金型の型締め後の状態を示す図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の第1実施形態における樹脂封止装置1Aは、電子部品10を樹脂封止するものである。電子部品10には、基板11の一方の端面に複数のスリーブ12が立設され、他方の端面に放熱部材13が配設されている。また、基板11上には、パワー半導体チップ(図示せず。)等が配設されている。スリーブ12は、基板11に対して外部接続端子(図示せず。)を略垂直に立設するための孔12Aを備える。なお、基板11の例として、リードフレーム等の金属板が挙げられる。
【0024】
樹脂封止装置1Aは、第1の型としての上金型2Aおよび第2の型としての下金型2Bからなる金型2を備える。電子部品10は上金型2Aおよび下金型2Bによりクランプされ、キャビティ凹部3A,3Bに樹脂が充填されることにより樹脂封止される。
【0025】
上金型2Aのキャビティ凹部3Aの底面3A-1には複数の貫通孔4が形成されている。複数の貫通孔4には、それぞれ押圧部材としてのロッド5が進退自在に配設されている。ロッド5の端面4Aの外径は、スリーブ12の端面12Bの外径と略同一である。ロッド5は、弾性部材としてのバネ6により貫通孔4からキャビティ凹部3A内へ進出する方向に1つずつ付勢されている。ロッド5は、スリーブ12の端面12Bに個別に当接し、スリーブ12の孔12Aを塞ぐようにしてスリーブ12を押圧する。
【0026】
上記樹脂封止装置1Aにおいて、図2に示すように、上金型2Aおよび下金型2Bにより電子部品10をクランプして型締めを行った状態では、上金型2Aの複数の貫通孔4から進出している複数のロッド5が複数のスリーブ12の端面12Bにそれぞれ当接して押圧し、かつ下金型2Bのキャビティ凹部3Bの底面3B-1に放熱部材13の端面13Bが当接した状態となる。
【0027】
このような状態で樹脂が充填されることにより、複数のスリーブ12のそれぞれの端面12Bと複数のロッド5の間に樹脂が浸入するのを防止することができ、複数のスリーブ12のそれぞれの端面12Bと放熱部材13の端面13Bとが露出して成形され、スリーブ12の孔12Aが空いたままとなる。これにより、成形後に複数のスリーブ12の孔12Aにそれぞれ外部接続端子(図示せず。)を立設することで、外部接続端子が露出した樹脂封止製品を得ることができる。
【0028】
特に、この樹脂封止装置1Aでは、複数のスリーブ12の端面12Bを複数のロッド5により個別に押圧するので、放熱部材13の端面13Bから複数のスリーブ12のそれぞれの端面12Bまでの高さのばらつきを吸収することができ、スリーブ12の孔12A内へ樹脂が浸入するのを防ぐことができるので、品質の良い樹脂封止製品を得ることができる。また、過剰な金型クランプ荷重もバネ6により吸収することができるので、電子部品の破損を防止することができ、品質が向上する。
【0029】
また、この樹脂封止装置1Aでは、ロッド5の端面4Aの外径が、スリーブ12の端面12Bの外径と略同一であることから、キャビティ凹部3A内への樹脂充填時に樹脂圧がロッド5の端面4Aに加わることがない。これにより、樹脂圧でロッド5が押し上げられてロッド5とスリーブ12との間に隙間が発生することがなく、樹脂漏れを防ぐことができる。
【0030】
<実施の形態2>
図3は本発明の第2実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図、図4図3の金型の型締め後の状態を示す図である。なお、以下において、上述の構成要素と共通する構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0031】
図3および図4に示すように、本発明の第2実施形態における樹脂封止装置1Bでは、第1実施形態における樹脂封止装置1Aに加えて、上金型2Aに離型フィルム20を張設している。離型フィルム20は、少なくとも上金型2Aのキャビティ凹部3Aの底面3A-1を覆うものとする。この離型フィルム20がスリーブ12の端面12Bに密着することで、スリーブ12の端面12Bに樹脂が浸入するのをさらに防止することができ、品質が向上する。
【0032】
また、図示しないが、下金型2Bにも離型フィルムを張設することが可能である。このとき離型フィルムは、少なくとも下金型2Bのキャビティ凹部3Bの底面3B-1を覆うものとする。この離型フィルム20が放熱部材13の端面13Bに密着することで、放熱部材13の端面13Bも樹脂が浸入するのをさらに防止することができ、品質が向上する。
【0033】
また、このように離型フィルムを張設することで、金型2のクランプにより電子部品10に過剰な圧力がかかった場合でも、この離型フィルムの厚みと弾性により過剰な圧力を吸収することも可能である。したがって、電子部品10の破損を防止することができ、さらに品質が向上する。
【0034】
<実施の形態3>
図5は本発明の第3実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図、図6図5の金型の型締め後の状態を示す図である。なお、以下において、上述の構成要素と共通する構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
図5および図6に示すように、本発明の第3実施形態における樹脂封止装置1Cでは、1個のバネ6に対し、2個のロッド5を介して2個のスリーブ12を押圧する構成である。これにより、スリーブ12間のピッチが狭い電子部品であっても、ロッド5の間隔を狭くして対応することが可能である。なお、1個のバネ6に対し、3個以上のロッド5を介してそれぞれスリーブ12を個別に押圧する構成とすることも可能である。
【0036】
<実施の形態4>
図7は本発明の第4実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図、図8図7の金型の型締め後の状態を示す図である。なお、以下において、上述の構成要素と共通する構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0037】
図7および図8に示すように、本発明の第4実施形態における樹脂封止装置1Dでは、第3実施形態における樹脂封止装置1Cに加えて、上金型2Aに離型フィルム20を張設している。離型フィルム20は、少なくとも上金型2Aのキャビティ凹部3Aの底面3A-1を覆うものとする。この離型フィルム20がスリーブ12の端面12Bに密着することで、スリーブ12の端面12Bに樹脂が浸入するのをさらに防止することができ、品質が向上する。
【0038】
また、図示しないが、下金型2Bにも離型フィルムを張設することが可能である。このとき離型フィルムは、少なくとも下金型2Bのキャビティ凹部3Bの底面3B-1を覆うものとする。この離型フィルム20が放熱部材13の端面13Bに密着することで、放熱部材13の端面13Bも樹脂が浸入するのをさらに防止することができ、品質が向上する。
【0039】
<実施の形態5>
図9は本発明の第5実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図、図10図9の金型の型締め後の状態を示す図である。なお、以下において、上述の構成要素と共通する構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
図9および図10に示すように、本発明の第5実施形態における樹脂封止装置1Eでは、第1実施形態における樹脂封止装置1Aの複数のスリーブ12に代えて、複数の外部接続端子50が基板11に対してそれぞれ略垂直に立設されたものである。外部接続端子50は、先端部分に段部50Aを備え、段部50Aの先端に段部50Aより細いピン部50Bを備える。
【0041】
また、上金型2Aのキャビティ凹部3Aに設けられた複数の貫通孔4には、それぞれ第1実施形態におけるロッド5に代えて、外部接続端子50のピン部50Bがそれぞれ挿入される挿入孔51Aを有するロッド51を備える。ロッド51の端面51Bの外径は、外部接続端子50の段部50Aの外径と略同一である。ロッド51は、ピン部50Bが挿入孔51Aに挿入された状態で外部接続端子50の段部50Aにそれぞれ当接し、挿入孔51Aを塞ぐようにして外部接続端子50を押圧する。
【0042】
上記樹脂封止装置1Eにおいて、図10に示すように、上金型2Aおよび下金型2Bにより電子部品10をクランプして型締めを行った状態では、上金型2Aの複数の貫通孔4から進出している複数のロッド51の挿入孔51Aに複数の外部接続端子50のピン部50Bが挿入され、このピン部50Bが挿入孔51Aにそれぞれ挿入された状態で複数の外部接続端子50の段部50Aにそれぞれ複数のロッド51が当接して押圧し、かつ下金型2Bのキャビティ凹部3Bの底面3B-1に放熱部材13が当接した状態となる。
【0043】
このような状態で樹脂が充填されることにより、複数の外部接続端子50のそれぞれの段部50Aと複数のロッド51との間に樹脂が浸入するのを防止することができ、複数の外部接続端子50のそれぞれのピン部50Bおよび段部50Aと放熱部材13の端面13Bとが露出して成形される。これにより、第1実施形態における樹脂封止装置1Aのように成形後にスリーブ12の孔12Aに外部接続端子を立設することなく、初めから外部接続端子50が露出した樹脂封止製品を得ることができる。
【0044】
特に、この樹脂封止装置1Eでは、複数の外部接続端子50の段部50Aを複数のロッド51により個別に押圧するので、放熱部材13の端面13Bから複数の外部接続端子50の段部50Aまでの高さのばらつきを吸収することができ、挿入孔51A内へ樹脂が浸入してピン部50Bを覆うのを防ぐことができるので、品質の良い樹脂封止製品を得ることができる。また、過剰な金型クランプ荷重もバネ6により吸収することができるので、電子部品の破損を防止することができ、品質が向上する。
【0045】
また、この樹脂封止装置1Eでは、ロッド51の端面51Bの外径が、外部接続端子50の段部50Aの外径と略同一であることから、キャビティ凹部3A内への樹脂充填時に樹脂圧がロッド51の端面51Bに加わることがない。これにより、樹脂圧でロッド51が押し上げられてロッド51と外部接続端子50の段部50Aとの間に隙間が発生することがなく、樹脂漏れを防ぐことができる。
【0046】
<実施の形態6>
図11は本発明の第6実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図、図12図11の金型の型締め後の状態を示す図である。なお、以下において、上述の構成要素と共通する構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
図11および図12に示すように、本発明の第6実施形態における樹脂封止装置1Fでは、1個のバネ6に対し、2個のロッド51を介して2個の外部接続端子50を押圧する構成である。これにより、外部接続端子50間のピッチが狭い電子部品であっても、ロッド51の間隔を狭くして対応することが可能である。なお、1個のバネ6に対し、3個以上のロッド51を介してそれぞれ外部接続端子50を個別に押圧する構成とすることも可能である。
【0048】
<実施の形態7>
図13は本発明の第7実施形態における樹脂封止装置の主要部を示す概略構成図、図14図13の可動ピンの動作状態を示す図である。なお、以下において、上述の構成要素と共通する構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0049】
図13に示すように、本発明の第7実施形態における樹脂封止装置1Gでは、ロッド51の挿入孔51Aが貫通して設けられており、この挿入孔51Aから進退可能に配設された可動ピン52を有する。可動ピン52は、挿入孔51A内への退避状態においては、外部接続端子50のピン部50Bが挿入された際に邪魔にならない位置にある。一方、可動ピン52は挿入孔51Aから進出する際には、図14に示すようにロッド51の端面51Bから突出する位置まで進出する。
【0050】
これにより、挿入孔51A内に樹脂が浸入した場合、成形後に可動ピン52をロッド51の端面51Bから突出する位置まで進出させることにより、挿入孔51A内の樹脂を掻き出して自動清掃することができ、金型2のクリーニング作業を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、電子部品を樹脂封止する樹脂封止装置に関し、特に、樹脂封止製品としてパワー半導体チップを用いたパワーモジュールを成形する樹脂封止装置として好適である。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 樹脂封止装置
2 金型
2A 上金型
2B 下金型
3A,3B キャビティ凹部
4 貫通孔
5 ロッド
6 バネ
10 電子部品
11 基板
12 スリーブ
13 放熱部材
20 離型フィルム
50 外部接続端子
50A 段部
50B ピン部
51 ロッド
【要約】
【課題】少ない部材および製造工程で電子部品の外部接続端子が露出した樹脂封止製品を得ることが可能な樹脂封止装置の提供。
【解決手段】樹脂封止装置1Aは、それぞれキャビティ凹部3A,3Bを備える上金型2Aおよび下金型2Bにより電子部品10をクランプする金型2であり、上金型2Aのキャビティ凹部3Aの底面3A-1に形成された複数の貫通孔4にそれぞれ進退自在に配設された複数のロッド5を備え、複数の貫通孔4からそれぞれ進出した複数のロッド5が、クランプにより複数のスリーブ12の端面12Bにそれぞれ当接して押圧し、かつ下金型2Bのキャビティ凹部3Bの底面3B-1に放熱部材13が当接した状態で、樹脂が充填されることにより、複数のスリーブ12のそれぞれの端面12Bと放熱部材13の端面13Bとが露出して成形される金型2を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14