(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20240213BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240213BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240213BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240213BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20240213BHJP
C25B 1/46 20060101ALI20240213BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240213BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20240213BHJP
H01M 8/0668 20160101ALI20240213BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240213BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/14 220
B01D53/18 110
B01D53/14 210
C25B1/46
C25B9/00 C
H01M8/0656
H01M8/0668
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2023551108
(86)(22)【出願日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2023021554
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2022199049
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023073210
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521234434
【氏名又は名称】環境工学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【氏名又は名称】安 修央
(74)【代理人】
【識別番号】100229529
【氏名又は名称】奥木 英行
(72)【発明者】
【氏名】反町 健司
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/149281(WO,A1)
【文献】特開2004-089770(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0131428(KR,A)
【文献】特開2016-060950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0098244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/62
B01D53/14
B01D53/18
B01D53/78
B01D53/96
C01B32/50
C25B 1/01
C25B 1/22
C25B 1/34
C25B 9/00
C25B 9/60
H01M 8/0656
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解槽、反応槽、送液手段、および、送ガス手段を含み、
前記電気分解槽は、隔膜、陽極、および、陰極を含み、
前記電気分解槽内に、前記隔膜により陽極電解室及び陰極電解室が設けられ、
前記陽極電解室に前記陽極が配置され、
前記陰極電解室に前記陰極が配置され、
前記陽極電解室及び前記陰極電解室の双方に、前記送液手段により、金属塩水溶液が供給可能であり、
前記陰極電解室において、電気分解により水酸化金属
塩水溶液を生成し、
前記反応槽に、前記送液手段により、前記水酸化金属塩水溶液を送液可能であり、
前記反応槽において、前記送ガス手段により、前記水酸化金属塩水溶液中に二酸化炭素含有ガスを供給可能であり、
前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素は、前記水酸化金属塩水溶液中の金属塩と反応して炭酸塩を生成し、
前記電気分解槽において、前記陽極電解室で生成した塩素ガスは、前記送ガス手段により、前記陽極電解室中の前記金属塩水溶液中に供給可能である、
二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
さらに、回収槽を含み、
前記回収槽に、前記送液手段により、前記炭酸塩を含む炭酸塩含有液を供給可能である、
請求項1記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記回収槽に、前記送液手段により、前記陽極電解室で生成した塩酸を含む塩酸水溶液を供給可能であり、
前記塩酸水溶液により、前記炭酸塩含有液から二酸化炭素ガスを分離可能な、
請求項2記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記陽極電解室は、紫外線照射手段を含み、
前記紫外線照射手段により、前記陽極電解室で生成した次亜塩素酸を分解して塩酸を生成させる、
請求項3記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
前記陽極電解室及び前記陰極電解室の少なくとも一方に、前記送液手段により、前記回収槽において前記炭酸塩含有液から前記二酸化炭素ガスを分離して生成する金属塩水溶液を供給可能な、
請求項3又は4記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記陽極電解室及び前記陰極電解室の少なくとも一方に、前記送液手段により、海水を供給可能である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
前記回収槽に、前記送液手段により、海水を供給可能である、
請求項2又は3記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
さらに、燃料電池発電装置を含み、
前記燃料電池発電装置に、前記送ガス手段により、前記陰極電解室で生成した水素ガスを供給可能である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
前記燃料電池発電装置は、前記陽極及び前記陰極に電気を供給可能である、
請求項8記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項10】
さらに、太陽光発電装置を含み、
前記太陽光発電装置は、前記陽極及び前記陰極に電気を供給可能である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項11】
電気分解工程、反応工程、および、塩素ガス供給工程を含み、
前記電気分解工程は、電気分解槽を用いて実施され、
前記電気分解槽は、隔膜、陽極、および、陰極を含み、
前記電気分解槽内に、前記隔膜により陽極電解室及び陰極電解室が設けられ、
前記陽極電解室に前記陽極が配置され、
前記陰極電解室に前記陰極が配置され、
前記電気分解工程は、前記陽極電解室及び前記陰極電解室の双方に、金属塩水溶液を供給し、前記陰極電解室において、電気分解により水酸化金属
塩水溶液を生成し、
前記反応工程は、反応槽を用いて実施され、
前記反応工程は、前記反応槽に、前記水酸化金属塩水溶液を送液し、前記反応槽において、前記水酸化金属塩水溶液中に二酸化炭素含有ガスを供給し、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素は、前記水酸化金属塩水溶液中の金属塩と反応して炭酸塩を生成し、
前記塩素ガス供給工程は、前記電気分解槽において、前記陽極電解室で生成した塩素ガスを、前記陽極電解室中の前記金属塩水溶液中に供給する、
二酸化炭素回収方法。
【請求項12】
さらに、回収工程を含み、
前記回収工程は、回収槽を用いて実施され、
前記回収工程は、前記回収槽に、前記炭酸塩を含む炭酸塩含有液を供給する、
請求項11記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項13】
前記回収工程は、前記回収槽に、前記陽極電解室で生成した塩酸を含む塩酸水溶液を供給し、前記塩酸水溶液により、前記炭酸塩含有液から二酸化炭素ガスを分離する、
請求項12記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項14】
前記陽極電解室は、紫外線照射手段を含み、
前記電気分解工程は、前記紫外線照射手段により、前記陽極電解室で生成した次亜塩素酸を分解して塩酸を生成させる、
請求項13記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項15】
さらに、金属塩水溶液供給工程を含み、
前記金属塩水溶液供給工程は、前記陽極電解室及び前記陰極電解室の少なくとも一方に、前記回収槽において前記炭酸塩含有液から前記二酸化炭素ガスを分離して生成する金属塩水溶液を供給する、
請求項13又は14記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項16】
さらに、海水供給工程を含み、
前記海水供給工程は、前記陽極電解室及び前記陰極電解室の少なくとも一方に、海水を供給可能である、
請求項11から14のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項17】
さらに、回収槽海水供給工程を含み、
前記回収槽海水供給工程は、前記回収槽に、海水を供給可能である、
請求項12又は13記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項18】
さらに、燃料電池発電装置を使用し、
燃料電池発電工程を含み、
前記燃料
電池発電工程は、
前記燃料電池発電装置に、前記陰極電解室で生成した水素ガスを供給する、
請求項11から14のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項19】
前記燃料
電池発電工程は、前記燃料電池発電装置から、前記陽極及び前記陰極に電気を供給する、
請求項18記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項20】
さらに、太陽光発電装置を使用し、
太陽光発電工程を含み、
前記太陽光発電工程は、前記陽極及び前記陰極に電気を供給する、
請求項11から14のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気分解を利用した二酸化炭素固定の技術が開示されている。特許文献1のシステムは、まず、塩化ナトリウム水溶液を電気分解して水酸化ナトリウム水溶液を生成する。つぎに、前記システムは、前記水酸化ナトリウム水溶液に二酸化炭素を含む空気を供給する方法で、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを含む水溶液を生成する。そして、前記システムは、前記水溶液に、電気分解で生成した塩酸を供給することによって、二酸化炭素ガスを取り出すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムは、電気分解に伴い塩素ガスを発生させる。なお、前記塩素ガスの一部は、水溶液に溶解し、塩酸及び次亜塩素酸となる。一方、水溶液に溶解しなかった前記塩素ガスは、塩素ガスのまま残存する。そのため、前記システムは、残存した前記塩素ガスを、装置の外部に排出させないことが課題となる。
【0005】
そこで、本開示は、電気分解を利用し、かつ、電気分解に伴い発生する塩素ガスの外部排出を防止できる二酸化炭素回収装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示における二酸化炭素回収装置は、
電気分解槽、反応槽、送液手段、および、送ガス手段を含み、
前記電気分解槽は、隔膜、陽極、および、陰極を含み、
前記電気分解槽内に、前記隔膜により陽極電解室及び陰極電解室が設けられ、
前記陽極電解室に前記陽極が配置され、
前記陰極電解室に前記陰極が配置され、
前記陽極電解室及び前記陰極電解室の双方に、前記送液手段により、金属塩水溶液が供給可能であり、
前記陰極電解室において、電気分解により水酸化金属水溶液が生成し、
前記反応槽に、前記送液手段により、前記水酸化金属塩水溶液を送液可能であり、
前記反応槽において、前記送ガス手段により、前記水酸化金属塩水溶液中に二酸化炭素含有ガスを供給可能であり、
前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素は、前記水酸化金属塩水溶液中の金属塩と反応して炭酸塩を生成し、
前記電気分解槽において、前記陽極電解室で生成した塩化ガスは、前記送ガス手段により、前記陽極電解室中の前記金属塩水溶液中に供給可能である。
【0007】
本開示における二酸化炭素回収方法は、
電気分解工程、反応工程、および、塩素ガス供給工程を含み、
前記電気分解工程は、電気分解槽を用いて実施され、
前記電気分解槽は、隔膜、陽極、および、陰極を含み、
前記電気分解槽内に、前記隔膜により陽極電解室及び陰極電解室が設けられ、
前記陽極電解室に前記陽極が配置され、
前記陰極電解室に前記陰極が配置され、
前記電気分解工程は、前記陽極電解室及び前記陰極電解室の双方に、金属塩水溶液を供給し、前記陰極電解室において、電気分解により水酸化金属水溶液が生成し、
前記反応工程は、反応槽を用いて実施され、
前記反応工程は、前記反応槽に、前記水酸化金属塩水溶液を送液し、前記反応槽において、前記水酸化金属塩水溶液中に二酸化炭素含有ガスを供給し、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素は、前記水酸化金属塩水溶液中の金属塩と反応して炭酸塩を生成し、
塩素ガス供給工程は、前記電気分解槽において、前記陽極電解室で生成した塩素ガスを、前記陽極電解室中の前記金属塩水溶液中に供給する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電気分解を利用した二酸化炭素回収を行う際に、電気分解に伴い発生する塩素ガスの外部排出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第1の概略図である。
【
図2】
図2は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第2の概略図である。
【
図3】
図3は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第3の概略図である。
【
図4】
図4は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第4の概略図である。
【
図5】
図5は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第5の概略図である。
【
図6】
図6は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第6の概略図である。
【
図7】
図7は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第7の概略図である。
【
図8】
図8は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第8の概略図である。
【
図9】
図9は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の構成の一例を示す第9の概略図である。
【
図10】
図10は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の具体的な一例を示す縦断面図である。
【
図11】
図11は、本開示にかかる二酸化炭素回収装置の具体的な他の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態の装置及び方法について図を用いて説明する。本開示は、以下の実施形態には限定されない。以下の各図において、同一部分には、同一符号を付している。また、各実施形態の説明は、特に言及がない限り、互いの説明を援用でき、各実施形態の構成は、特に言及がない限り、組合せ可能である。
【0011】
[実施形態1]
まず、
図1を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1A(以下「本装置1A」ともいう。)の構成の一例を説明する。
図1に示すように、本装置1Aは、例えば、電気分解槽2及び反応槽3を含む。なお、前記電気分解槽2及び前記反応槽3は、例えば、
図1のように直方体の容器であるが、これに限定されない。前記各槽は、例えば、円筒状のものでもよく、その形状はどのようなものであってもよい。また、前記電気分解槽2及び前記反応槽3は、それぞれ独立したものでもよく、一体のものであってもよい。さらに、前記電気分解槽2及び前記反応槽3は、それぞれ1つで本装置1Aを構成してもよく、少なくとも一方が2以上で本装置1Aを構成してもよく、その数は限定されない。なお、前記各槽の材質は、前記電気分解槽2における電気分解及び前記反応槽3における化学反応が可能なものであればよく、その態様はどのようなものであってもよい。
【0012】
前記電気分解槽2は、隔膜100、陽極24及び陰極25を含む。そして、前記電気分解槽2内に、前記隔膜100により陽極電解室20及び陰極電解室21が設けられている。なお、前記隔膜100は、例えば、硬質の部材でもよく、半透膜のような膜状の部材であってもよい。このように、前記隔膜100の材質は、限定されない。また、
図1では、前記隔膜100は、前記電気分解槽2の底部まで延び、前記電気分解槽2を完全に分割しているが、これに限定されない。前記隔膜100は、例えば、前記電気分解槽2の上部から中央付近まで延び、記電気分解槽2の下部がつながっている状態であってもよい。前記隔膜100の形状、位置及び材質等は、電気分解槽2中に陽極電解室20及び陰極電解室21を区分けし、電気分解槽中2の水溶液を電気分解し、その生成物を陽極電解室20及び陰極電解室21内にそれぞれ生成できるものであれば、どのような態様であってもよい。そこで、例えば、電気分解槽2の空間を左右に区画している隔膜100は、硬質の不透過性素材からなりその下端側が開放されて陽極電解室20と陰極電解室21を連通させてもよい。また、前記隔壁100は、半透膜からなり、電気分解槽2の左右の空間を完全に区画した構成としてもよい。前記陽極24は、前記陽極電解室20に配置される。また、前記陰極25は、前記陰極電解室21に配置される。
【0013】
図1のように、本装置1Aは、例えば、送液手段及び送ガス手段を含む。前記送液手段は、例えば、前記電気分解槽2、前記反応槽3等の各槽への水溶液の供給、各槽からの水溶液の排出、任意の槽から他の槽への水溶液の移動等、水溶液を送るための手段である。したがって、前記送液手段は、1つに限定されず、例えば、前記電気分解槽2への水溶液供給のための前記送液手段18及び前記電気分解槽2から前記反応槽3への水溶液の移動のための前記送液手段16のように、2以上であってもよい。なお、
図1の前記送液手段18は、例えば、前記陽極電解室20及び前記陰極電解室21の双方に、金属塩水溶液を供給可能なものである。そして、
図1の前記送液手段16は、例えば、前記電気分解槽2から前記反応槽3に、前記水酸化金属塩水溶液を送液可能なものである。また、前記送液手段は、例えば、硬質のものでも、軟質のものでもよい。前記送液手段は、例えば、パイプ状のものであるが、これに限定されない。前記送液手段の材質及び形状等は、水溶液を送ることができるものであれば、どのような態様であってもよい。また、前記送液手段は、例えば、水溶液を送るためのポンプを備えるものであってもよい。前記送ガス手段は、例えば、各槽への気体の供給、各槽からの気体の排出、任意の位置から他の位置への気体の移動等、気体を送るための手段である。また、前記送ガス手段は、前記送液手段の場合と同様に、1つに限定されず、2以上設けられてもよい。
図1では、前記送ガス手段は、例えば、前記反応槽3への空気の供給のための前記送ガス手段19及び前記電気分解槽2の上部から下部の水溶液中へ気体を送るための前記送ガス手段22である。なお、
図1の前記送ガス手段19は、例えば、前記反応槽において、前記水酸化金属塩水溶液中に二酸化炭素含有ガスを供給可能なものである。また、
図1の前記送ガス手段22は、例えば、前記電気分解槽2において、前記陽極電解室20で生成した塩素ガスを、前記陽極電解室20中の前記金属塩水溶液中に供給可能なものである。そして、前記送ガス手段の材質及び形状等は、前記送液手段の場合と同様に、気体を送ることができるものであれば、どのような態様であってもよく、例えば、ポンプを備えるものであってもよい。
【0014】
つぎに、本実施形態の二酸化炭素回収方法の一例を説明する。本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図1に示す本装置1Aを用いて、次のように実施する。なお、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、
図1の本装置1Aの使用には限定されない。また、以下の各工程の実施する順序は、記載の順序に限定されない。したがって、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、記載された順序と異なる順序で実施してもよく、2以上の工程を同時に実施してもよい。
【0015】
まず、前記電気分解槽2において、前記送液手段18は、前記陽極電解室20及び前記陰極電解室21の双方に、金属塩水溶液を供給する。そして、前記電気分解槽2は、前記陰極電解室21において、電気分解により水酸化金属水溶液を生成する(以上、電気分解工程)。前述のとおり、前記電気分解槽2の前記隔膜100は、例えば、前記電気分解槽2の底面まで延びていない場合がある。つまり、前記電気分解槽2は、例えば、下部でつながっている場合がある。そこで、前記送液手段18は、2か所に前記金属塩水溶液を注入するものに限定されない。前記送液手段18は、例えば、前記電気分解槽2の下部の1か所に前記金属塩水溶液を注入し、前記電気分解槽2内の前記陽極電解室20及び前記陰極電解室21の双方に、金属塩水溶液を供給する態様であってもよい。なお、前記金属には、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が含まれる。そこで、前記金属塩水溶液には、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液等が含まれる。また、前記水酸化金属水溶液には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液等が含まれる。例えば、塩化ナトリウム水溶液を電気分解した場合、前記陽極24側では、塩素ガスが発生し、前記陰極25側では、水素ガスが発生し、水酸化ナトリウム水溶液が生成される。なお、前記陽極24側で発生した塩素ガスの一部は、水溶液中の水と反応して、塩酸と次亜塩素酸になる(Cl2+H2O→HCl+HClO)。
【0016】
つぎに、前記反応槽3において、前記送液手段16は、前記反応槽3に、前記水酸化金属塩水溶液を送液し、前記送ガス手段19は、前記反応槽3において、前記水酸化金属塩水溶液中に二酸化炭素含有ガスを供給し、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素は、前記水酸化金属塩水溶液中の金属塩と反応して炭酸塩を生成する(反応工程)。なお、前記炭酸塩は、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等である。また、前記炭酸塩には、炭酸水素塩が含まれる。したがって、前記炭酸塩は、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等を含む。この工程によって、前記二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素は、前記炭酸塩に取り込まれ、前記二酸化炭素含有ガスから分離される。
【0017】
なお、前記水酸化金属塩水溶液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触方法は、例えば、前記水酸化金属塩水溶液中に前記二酸化炭素含有ガスを泡状にして放出する方法(バブリング)による。このような方法によれば、二酸化炭素と金属塩との反応を効率的にすることができる。また、前記接触方法は、逆に、前記水酸化金属塩水溶液を細かい霧状にして、その中に前記二酸化炭素含有ガスを供給する方法によってもよい。この方法によれば、バブリングの場合と同様に、化学反応を効率的にすることができる。これに加えて、霧状にする方法は、使用する前記水酸化金属塩水溶液の量を少なくすることが可能であり、使用する水を節約する効果もある。
【0018】
前述のとおり、前記電気分解槽2における電気分解によって発生した塩素ガスは、水溶液中の水と反応して、塩酸及び次亜塩素酸になる。しかし、すべての塩素ガスが水と反応するのではなく、塩素ガスとして残存するものもある。
図1では、前記陽極電解室20の上部に、塩素ガスがたまっている。そこで、前記送ガス手段22は、前記電気分解槽2において、前記陽極電解室20で生成した塩素ガスを、前記陽極電解室20中の前記金属塩水溶液中に供給する(塩素ガス供給工程)。前記送ガス手段22は、例えば、
図1の前記陽極電解室20の上部の塩素ガス滞留部分から塩素ガスを排出し、前記陽極電解室20の下部の前記金属塩水溶液中に塩素ガスを放出する。放出された前記塩素ガスは、例えば、水溶液中の水と反応して、塩酸及び次亜塩素酸になる(Cl
2+H
2O→HCl+HClO)。
【0019】
本実施形態の本装置1Aは、このように水との反応を促すことによって、塩素ガスを外部に排出することを防止することができる。また、発生する塩素ガスの外部排出の防止の結果、電気分解の実施を抑える必要性が軽減されることから、この工程には、電気分解を効率化させる効果がある。
【0020】
[実施形態2]
図2を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1B(以下「本装置1B」ともいう。)の構成の一例を説明する。
図2に示すように、本装置1Bは、実施形態1の本装置1Aの構成(電気分解槽2及び反応槽3)に加えて、例えば、回収槽4を含む。本装置1Aの構成については、本実施形態の本装置1Bにおいても同様であるので、実施形態1における説明を援用できる。
【0021】
図2のように、本実施形態の本装置1Bは、例えば、回収槽4を含む。また、例えば、送液手段17は、前記反応槽3において生成された前記炭酸塩を含む炭酸塩含有液を、前記回収槽4に供給することができる。前記回収槽4の形状及び材質等は、前記電気分解槽2及び前記反応槽3の場合と同様に、特に限定されない。なお、実施形態1の場合と同様に、前記電気分解槽2、前記反応槽3及び前記回収槽4は、それぞれ独立したものであってもよく、一体のものであってもよい。さらに、前記電気分解槽2、前記反応槽3及び前記回収槽4は、それぞれ1つで本装置1Bを構成してもよく、少なくとも1つが2以上で本装置1Bを構成してもよく、その数は限定されない。なお、前記送液手段17の形状及び材質等は、他の送液手段の場合と同様に、特に限定されない。
【0022】
つぎに、本実施形態の二酸化炭素回収方法の一例を説明する。本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図2に示す本装置1Bを用いて、次のように実施する。なお、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、
図2の本装置1Bの使用には限定されない。また、以下の各工程の実施する順序は、記載の順序に限定されない。したがって、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、記載された順序と異なる順序で実施してもよく、2以上の工程を同時に実施してもよい。
【0023】
まず、電気分解工程、反応工程、塩素ガス供給工程は、実施形態1の場合と同様であるから、これらの説明を援用できる。
【0024】
つぎに、本実施形態の送液手段17は、前記反応槽3において生成された炭酸塩を含む炭酸塩含有液を、前記回収槽4に供給する(回収工程)。そして、後述のとおり、前記回収槽4に供給された炭酸塩含有液に含まれる炭酸塩が、例えば、炭酸ナトリウムのように水に溶解するものの場合には、本装置1Bは、前記回収槽4において、例えば、塩酸を加えることで、気体として、二酸化炭素を取り出すことができる(Na2CO3+2HCl→2NaCl+H2O+CO2)。また、例えば、前記炭酸塩が炭酸ナトリウムの場合、本装置1Bは、前記回収槽4において、例えば、塩化カルシウムを加えることで、難溶性のある炭酸カルシウムを生成し、固体の炭酸カルシウムとして、二酸化炭素を回収することができる(Na2CO3+CaCl2→2NaCl+CaCO3)。このように、本装置1Bは、前記回収槽4において、前記炭酸塩含有液からさらに二酸化炭素を回収することができる。なお、前述の回収方法の例示は、いずれも一例であり、これに限定されない。なお、回収槽4に送液することにより、前述の回収方法は、例えば、前記回収槽4において、前記反応槽3で使用した水酸化ナトリウム濃度を低く保持した条件で行うことが可能である。その結果、例えば、塩化カルシウムを含む海水を用いた場合のCa(OH)2の生成は抑制される。このため、前記回収方法は、効果的にCaCO3を生成することが可能であり、二酸化炭素固定の効率を向上させる効果を得られる。したがって、前記回収槽4に送液する構成では、例えば、本装置1Bで使用する水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カルシウム水溶液は、前記反応槽3において、高濃度の状態で使用することが可能である。そこで、前記各水溶液の濃度は、限定されず、例えば、0.1mol/L程度に限定されず、例えば、1mol/L程度の濃度としても使用可能である。また、炭酸ナトリウムの水への溶解度は、20℃で22g/100ml(2.1M)、100℃で45g/100ml(4.2M)であるため、水酸化ナトリウムの濃度をさらに上げることが可能である。そのため、例えば、本装置1Bは、水酸化ナトリウム水溶液の使用量を減らすことができるというメリットがある。
【0025】
本実施形態の本装置1Bは、例えば、高濃度の水酸化ナトリウムを利用することが可能である。そのため、本装置1Bの利用には、使用する水の量を大幅に減らす効果がある。
【0026】
[実施形態3]
図3を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1C(以下「本装置1C」ともいう。)の構成の一例を説明する
図3に示すように、本装置1Cは、実施形態2の本装置1Bの構成(電気分解槽2、反応槽3及び回収槽4)に加えて、例えば、前記電気分解槽2の前記陽極電解室20において生成された塩酸水溶液を前記回収槽に供給する送液手段15を含む。本装置1Bの構成については、本実施形態の本装置1Cにおいても同様であるので、実施形態2における説明を援用できる。
【0027】
図3のように、本実施形態の本装置1Cは、例えば、前記電気分解槽2の前記陽極電解室20において生成された塩酸水溶液を前記回収槽に供給する送液手段15を含む。なお、前記送液手段15の形状及び材質等は、他の送液手段の場合と同様に、特に限定されない。
【0028】
つぎに、本実施形態の二酸化炭素回収方法の一例を説明する。本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図3に示す本装置1Cを用いて、次のように実施する。なお、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、
図3の本装置1Cの使用には限定されない。また、以下の各工程の実施する順序は、記載の順序に限定されない。したがって、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、記載された順序と異なる順序で実施してもよく、2以上の工程を同時に実施してもよい。
【0029】
まず、実施形態1の電気分解工程、反応工程、塩素ガス供給工程は、本実施形態においても同様である。また、実施形態2の回収工程は、本実施形態においても同様である。そこで、これらの説明は、本実施形態において援用できる。
【0030】
つぎに、本実施形態の送液手段15は、前記回収槽4に、前記陽極電解室20で生成した塩酸を含む塩酸水溶液を供給する。そして、本装置1Cは、前記回収槽4において、前記塩酸水溶液により、前記炭酸塩含有液から二酸化炭素ガスを分離する(以上、回収工程)。前述のとおり、例えば、炭酸ナトリウムのように水に溶解するものの場合には、本装置1Bは、前記回収槽4において、例えば、塩酸を加えることで、気体として、二酸化炭素を取り出すことができる(Na2CO3+2HCl→2NaCl+H2O+CO2)。
【0031】
本実施形態の本装置1Cは、電気分解に伴い生成された塩酸水溶液を有効利用することができる。これにより、本装置1Bの利用には、無駄のない二酸化炭素回収を実施できる効果がある。
【0032】
[実施形態4]
図4を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1D(以下「本装置1D」ともいう。)の構成の一例を説明する。
図4に示すように、本装置1Dは、実施形態3の本装置1Cの構成(電気分解槽2、反応槽3及び回収槽4)に加えて、例えば、前記電気分解槽2の前記陽極電解室20に紫外線照射手段26を含む。本装置1Cの構成については、本実施形態の本装置1Dにおいても同様であるので、実施形態3における説明を援用できる。
【0033】
図4のように、本実施形態の前記陽極電解室20は、例えば、紫外線照射手段26を含む。前記紫外線照射手段26は、例えば、前記陽極電解室20において生成された塩酸水溶液に紫外線を照射し、前記塩酸水溶液に含まれる次亜塩素酸を分解して塩酸を生成するものである。なお、前記紫外線照射手段26の構造、形状及び配置位置は、前記塩酸水溶液に効果的に紫外線を照射できるものであれば、どのような態様であってもよい。
【0034】
つぎに、本実施形態の二酸化炭素回収方法の一例を説明する。本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図4に示す本装置1Dを用いて、次のように実施する。なお、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、
図4の本装置1Dの使用には限定されない。また、以下の各工程の実施する順序は、記載の順序に限定されない。したがって、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、記載された順序と異なる順序で実施してもよく、2以上の工程を同時に実施してもよい。
【0035】
まず、実施形態1の電気分解工程、反応工程、塩素ガス供給工程は、本実施形態においても同様である。また、実施形態2の回収工程は、本実施形態においても同様である。さらに、実施形態3の回収工程は、本実施形態においても同様である。そこで、これらの説明は、本実施形態において援用できる。
【0036】
つぎに、本実施形態の紫外線照射手段26は、前記陽極電解室20で生成した次亜塩素酸を分解して塩酸を生成させる(電気分解工程)。例えば、前記電気分解槽2において塩化ナトリウム水溶液を電気分解した場合、本装置1Dは、陽極24側に塩素ガスを発生させ、陰極25側に水素ガスを発生させ、水酸化ナトリウムを生成する。そして、陽極24側で発生した塩素ガスは、水溶液中の水と反応し、塩酸と次亜塩素酸となる(Cl2+H2O→HCl+HClO)。本装置1Dは、実施形態3の本装置1Cと同様に、前記回収槽4において、例えば、炭酸塩含有液に塩酸を加えることで、気体として、二酸化炭素を取り出すものである。そして、前述のとおり、塩素ガスと水とによる生成物は、次亜塩素酸を含むものであるため、塩酸の濃度が十分なものではない。そこで、本実施形態の本装置1Dは、前記生成物である塩酸水溶液に紫外線を照射し、前記塩酸水溶液に含まれる次亜塩素酸を分解して、塩酸を生成する(2HClO→2HCl+O2)。なお、前記紫外線照射による効果は、実験により確認されている。当初濃度が1000ppmの次亜塩素酸水(50ml)はpH6.66であったものが、15分の紫外線ライト(智洋製)の照射によりpH6.30まで低下し、さらに15分照射することでpH6.11まで下がり、その後一定となっていた。そのため、紫外線照射により、本装置1Dは、次亜塩素酸を塩酸に変化させながら塩酸濃度が高い水溶液にして、前記陽極電解室20から前記回収槽4に送液することが可能である。
【0037】
本実施形態の本装置1Dは、電気分解に伴い生成される塩酸水溶液の塩酸濃度を向上させることができる。これにより、本装置1Dの利用には、効率的な二酸化炭素回収の効果がある。
【0038】
[実施形態5]
図5を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1E(以下「本装置1E」ともいう。)の構成の一例を説明する。
図5に示すように、本装置1Eは、実施形態3の本装置1Cの構成(電気分解槽2、反応槽3及び回収槽4)に加えて、例えば、前記回収槽4で生成された金属塩水溶液を前記電気分解槽2に送る送液手段18を含む。本装置1Cの構成については、本実施形態の本装置1Eにおいても同様であるので、実施形態3における説明を援用できる。また、本装置1Eは、実施形態4の本装置1Dの構成を含むものであってもよい。
【0039】
図5のように、本実施形態の本装置1Eは、例えば、前記回収槽4において生成された金属塩水溶液を前記電気分解槽2へ送液する送液手段18を含む。なお、前記送液手段18の形状及び材質等は、他の送液手段の場合と同様に、特に限定されない。また、
図5では、前記送液手段18は、実施形態1の前記電気分解槽2への金属塩水溶液の供給のための送液手段18と一体のものとなっているが、これに限定されない。したがって、外部からの金属塩水溶液を供給するための送液手段を、本実施形態における前記送液手段18と別に設けてもよい。
【0040】
つぎに、本実施形態の二酸化炭素回収方法の一例を説明する。本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図5に示す本装置1Eを用いて、次のように実施する。なお、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、
図5の本装置1Eの使用には限定されない。また、以下の各工程の実施する順序は、記載の順序に限定されない。したがって、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、記載された順序と異なる順序で実施してもよく、2以上の工程を同時に実施してもよい。
【0041】
まず、実施形態1の電気分解工程、反応工程、塩素ガス供給工程は、本実施形態においても同様である。また、実施形態2の回収工程は、本実施形態においても同様である。さらに、実施形態3の回収工程は、本実施形態においても同様である。そこで、これらの説明は、本実施形態において援用できる。また、実施形態4の構成を含む場合には、実施形態4における説明も、援用可能である。
【0042】
つぎに、本実施形態の送液手段18は、前記陽極電解室20及び前記陰極電解室21の少なくとも一方に、前記回収槽4において前記炭酸塩含有液から二酸化炭素ガスを分解して生成する金属塩水溶液を供給する(金属塩水溶液供給工程)。なお、前記回収槽4は、前記炭酸塩含有液と塩酸との反応によって、二酸化炭素ガスを発生させ、金属塩水溶液を生成する。例えば、前記炭酸塩含有液が炭酸ナトリウムの場合、前記回収槽4は、二酸化炭素を発生させ、塩化ナトリウムを生成する(Na
2CO
3+2HCl→2NaCl+H
2O+CO
2)。このように生成された金属塩水溶液は、前記送液手段18によって、前記電気分解槽2に送られる。なお、
図5では、実施形態1に関する
図1と同様に、前記電気分解槽2は、隔膜100で上部から底部まで完全に仕切られている。しかし、これに限定されないことは、実施形態1の場合と同様である。例えば、前記電気分解槽2が底部まで仕切られず、前記電気分解槽2が下部でつながっている形状の場合には、前記送液手段18の金属塩水溶液の供給は、例えば、前記電気分解槽2の下部に前記金属塩水溶液を注入し、前記陽極電解室20及び前記陰極電解室21の少なくとも一方に供給される方法であってもよい。
【0043】
本実施形態の本装置1Eは、二酸化炭素回収後の水溶液の再利用が可能である。これにより、本装置1Eの利用には、連続的な、また、継続的な二酸化炭素回収を可能にする効果がある。
【0044】
[実施形態6]
図6を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1F(以下「本装置1F」ともいう。)の構成の一例を説明する本装置1Fは、実施形態1から5の各二酸化炭素回収装置の構成に加えて、例えば、前記電気分解槽2に海水を供給するための送液手段29を含む。実施形態1から5の構成については、本実施形態の本装置1Fにおいても同様であるので、これらの説明を援用できる。なお、
図6は、
図3に係る二酸化炭素回収装置の構成に、本実施形態で加えられた構成を含めた内容の概略図である。
【0045】
図6のように、本実施形態の本装置1Fは、例えば、前記電気分解槽2に海水を供給するための送液手段29を含む。なお、前記送液手段29の形状及び材質等は、他の送液手段の場合と同様に、特に限定されない。
【0046】
本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図6に示す本装置1Fを用いて、前記電気分解槽2に海水を供給して実施する点を除き、実施形態1から5の二酸化炭素回収方法と同様である。なお、海水は、前記送液手段29を用いて、前記陽極電解室20及び前記陰極電解室21の少なくとも一方に供給される。なお、実施形態5の金属塩水溶液の供給の場合と同様に、前記電気分解槽2の構造によって、海水の供給は、例えば、前記電気分解槽の下部に注入される方法であってもよい。また、各工程の実施する順序が限定されないことは、他の実施形態の場合と同様である。
【0047】
本実施形態の本装置1Fは、海水を利用した二酸化炭素回収が可能である。なお、本装置1Fを大型タンカーに載せれば、本装置1Fは、海水を電気分解しながら、電気と水素を得て、二酸化炭素を固定化し、海水中のカルシウムイオンを利用して炭酸カルシウムを生成することができる。
【0048】
[実施形態7]
図7を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1G(以下「本装置1G」ともいう。)の構成の一例を説明する。本装置1Gは、実施形態2又は3の各二酸化炭素回収装置の構成に加えて、例えば、前記回収槽4に海水を供給するための送液手段41を含む。実施形態2又は3の構成については、本実施形態の本装置1Fにおいても同様であるので、これらの説明を援用できる。なお、
図7は、
図3に係る二酸化炭素回収装置の構成に、本実施形態で加えられた構成を含めた内容の概略図である。また、本実施形態には、実施形態6の構成を加えてもよい。
【0049】
図7のように、本実施形態の本装置1Gは、例えば、前記回収槽4に海水を供給するための送液手段41を含む。なお、前記送液手段41の形状及び材質等は、他の送液手段の場合と同様に、特に限定されない。
【0050】
本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図7に示す本装置1Gを用いて、前記回収槽4に海水を供給して実施する点を除き、実施形態2又は3の二酸化炭素回収方法と同様である。また、各工程の実施する順序が限定されないことは、他の実施形態の場合と同様である。さらに、実施形態6の各工程を含むものであってもよい。
【0051】
本実施形態の本装置1Gは、前記回収槽4に海水を取り込むことによって、例えば、前記反応槽3で生成された前記炭酸塩と海水に含まれる塩化カルシウムとの反応によって、炭酸カルシウムが生成される。例えば、炭酸カルシウムは、難溶性を有するため、固体の状態で、前記回収槽4の底に沈殿する。そこで、本装置1Gは、沈殿物を回収することによって、二酸化炭素を回収することが可能である。例えば、前記炭酸塩が炭酸ナトリウムの場合、本装置1Gは、前記回収槽4において、例えば、海水に含まれる塩化カルシウムを加えることで、炭酸カルシウムを生成し、固体の炭酸カルシウムとして、二酸化炭素を回収することができる(Na2CO3+CaCl2→2NaCl+CaCO3)。なお、前述の例示は、一例であり、これに限定されない。
【0052】
本実施形態の本装置1Gは、実施形態6の本装置1Fと同様に、大型タンカーに載せれば、海水を電気分解しながら、電気と水素を得て、二酸化炭素を固定化し、海水中のカルシウムイオンを利用して炭酸カルシウムを生成することができる。
【0053】
[実施形態8]
図8を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1H(以下「本装置1H」ともいう。)の構成の一例を説明する。本装置1Hは、実施形態1から7の各二酸化炭素回収装置の構成に加えて、例えば、燃料電池発電装置30を含む。実施形態1から7の構成については、本実施形態の本装置1Hにおいても同様であるので、これらの説明を援用できる。なお、
図8は、
図3に係る二酸化炭素回収装置の構成に、本実施形態で加えられた構成を含めた内容の概略図である。
【0054】
図8のように、本実施形態の本装置1Hは、例えば、前記燃料電池発電装置30及び前記陰極電解室21で生成した水素ガスを前記燃料電池発電装置30に供給するための送ガス手段13を含む。なお、前記燃料電池発電装置30は、前記電気分解槽2の前記陰極電解室21で、電気分解に伴い生成された水素を利用して、発電を行う装置である。また、前記燃料電池発電装置30は、前記電気分解槽2に備えられた前記陽極24及び前記陰極25に電気を供給可能なものであってもよい。前記燃料電池発電装置30は、水素を利用して発電を行えるものであればよく、その形態及び構造はどのようなものであってもよい。また、前記送ガス手段13の形状及び材質等は、他の送ガス手段の場合と同様に、特に限定されない。
【0055】
本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図8に示す本装置1Hを用いて、前記電気分解槽2の前記陰極電解室21で、電気分解に伴い生成された水素を利用して、発電を行う点を除き、実施形態1から7の二酸化炭素回収方法と同様である。また、各工程の実施する順序が限定されないことは、他の実施形態の場合と同様である。
【0056】
本実施形態の送ガス手段13は、前記陰極電解室21で生成した水素ガスを前記燃料電池発電装置30に供給する(燃料電池発電工程)。そして、前記燃料電池発電装置30は、送ガス手段13によって供給された前記水素を利用して、発電を行う。また、前記燃料電池発電装置30は、発電した電気を、前記電気分解槽2に備えられた前記陽極24及び前記陰極25に供給してもよい。
【0057】
本実施形態の本装置1Hは、電気分解に伴い発生する水素ガスを有効利用することができる。
【0058】
[実施形態9]
図9を用いて、本実施形態の二酸化炭素回収装置1I(以下「本装置1I」ともいう。)の構成の一例を説明する。1Iは、実施形態1から8の各二酸化炭素回収装置の構成に加えて、例えば、太陽光発電装置31を含む。実施形態1から8の構成については、本実施形態の本装置1Iにおいても同様であるので、これらの説明を援用できる。なお、
図9は、
図3に係る二酸化炭素回収装置の構成に、本実施形態で加えられた構成を含めた内容の概略図である。
【0059】
図9のように、本実施形態の本装置1Iは、例えば、前記陽極24及び前記陰極25に電気を供給可能である前記太陽光発電装置31を含む。なお、前記太陽光発電装置31は、前記陽極24及び前記陰極25に電気を供給可能であればよく、その形態及び構造はどのようなものであってもよい。
【0060】
本実施形態の二酸化炭素回収方法は、例えば、
図9に示す本装置1Iを用いて、前記電気分解槽2に備えられた前記陽極24及び前記陰極25に電気を供給する。本実施形態の二酸化炭素回収方法は、前述の点を除き、実施形態1から8の二酸化炭素回収方法と同様である。また、各工程の実施する順序が限定されないことは、他の実施形態の場合と同様である。
【0061】
本実施形態の本装置1Iは、再生可能エネルギーの活用をした二酸化炭素回収を可能とする。
【0062】
以下、
図10を使用して、本開示にかかる二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法の具体例を示す。なお、以下の説明は、具体的な内容の一例であり、前述のとおり、本開示にかかる二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法は、以下の説明に限定されない。また、本発明の二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法は、以下の説明に記載した構成をすべて含むものでなくてもよく、構成を付加したものであってもよい。さらに、本開示にかかる二酸化炭素回収方法は、以下の説明における二酸化炭素回収装置(以下、「本装置1J」ともいう。)の使用に限定されない。
【0063】
本装置1Jは、二酸化炭素を含む空気を空気導入路(送ガス手段19)から導入し、内部で二酸化炭素を分離しながら二酸化炭素の濃度を零又は大幅に低減した状態にして、空気排出路(送ガス手段12)から外部に排出する装置であり、火力発電所のように大量の燃焼ガスを連続的に排出する大規模施設から家屋・オフィス等の小規模施設など、様々な規模の施設に適用することを想定している。
【0064】
本装置1Jは、直方体状で中空の筺体10の内部に、陽極24及び陰極25を有して導入した塩化ナトリウム水溶液を電気分解しながら水酸化ナトリウム水溶液及び塩化水素を含む水溶液を生成する電気分解槽2と、陰極25側で生成した水酸化ナトリウム水溶液を、配管(送液手段16)を介して導入するとともに二酸化炭素を含む空気を空気導入路(送ガス手段19)を介し導入して水酸化ナトリウム水溶液中で気泡生成具191から噴出・バブリングすることで、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム含む水溶液を生成する反応槽3と、生成した炭酸ナトリウム等を含む水溶液を、配管(送液手段17)を介して導入するとともに、その水溶液に配管(送液手段15)を介して塩化水素を含む水溶液を導入して混入することで気体の二酸化炭素を二酸化炭素排出路(送ガス手段11)から取り出す回収槽4と、を備えている。
【0065】
そして、本装置1Jは、電気分解槽2の塩化水素を含む水溶液を貯留する部分の上部側に、その水溶液に紫外線を照射する紫外線照射手段としての紫外線ライト(紫外線照射手段26a,26b)が内装されており、陽極24側で電気分解された水溶液に含有している次亜塩素酸を分解して塩化水素を生成することで、塩化水素の濃度を高めてから配管(送液手段15)を介して回収槽4に導入させる構成とされている。
【0066】
即ち、例えば、電気分解槽2の陽極24側で生成される塩化水素を含む水溶液に紫外線ライト(紫外線照射手段26a,26b)で紫外線を照射する構成を採用したことで、その水溶液に含まれる次亜塩素酸を塩化水素にしながら塩酸濃度が高くpHの低い水溶液にして回収槽4内に導入可能となるため、本装置1Jは、二酸化炭素を効率的に気体の状態にして分離しながら、塩化ナトリウム水溶液を生成して循環使用可能としている。また、反応槽3と回収槽4を別々にしたことで、本装置は、各槽において連続的に処理を行いながら、処理に用いる水溶液を入れ替え作業することなく循環使用可能として、装置の運転効率を高いものとしている。
【0067】
一方、電気分解槽2は、それに内装した陽極24側と陰極25側が、縦向きに延びる隔壁100で縦方向底部側付近から頂壁に達する位置まで空間を区画されて陽極電解室20と陰極電解室21を形成しており、その上部側に気体を各々貯留する空間を有しているとともに、回収槽4で生成された塩化ナトリウム水溶液(塩水)が、その底部側から配管(送液手段18)を介して陽極電解室20及び陰極電解室21の底部側に各々導入される構成となっている。
【0068】
そして、陰極電解室21の水酸化ナトリウム水溶液を、反応槽3に送る配管(送液手段16)の吸入口、及び陽極電解室20の塩化水素を含む水溶液を回収槽4に送る配管(送液手段15)の吸入口は、水溶液貯留部分の上部側に各々開口している。これにより、本装置は、電気分解されていない塩化ナトリウム水溶液を電気分解済みの水溶液に混入して次の槽に導入してしまうことを最小限に抑えながら、回収槽4で生成した塩化ナトリウム水溶液を電気分解槽2に連続的に導入可能としており、装置の連続運転を実現可能としている。
【0069】
なお、上述した電気分解槽2において、陽極24と陰極25の表面では電気分解に伴う熱が生じることから、電気分解で生じた次亜塩素酸及び塩化水素を含む水溶液部分と水酸化ナトリウムを含む水溶液部分の温度が上昇するとともに、陽極24側の上部に配置した紫外線ライト(紫外線照射手段26a,26b)の照射熱も加わって、それらにおける水溶液の熱膨張により槽の上部に上がりやすくなるため、本装置1Jは、配管(送液手段15,16)の吸引口から、電気分解されていない塩化ナトリウム水溶液が電気分解処理済みの水溶液に混入して吸引されにくい状態をさらに高めている。また、電気分解槽2の空間を左右に区画している隔壁100は、硬質の不透過性素材からなりその下端側が開放されて陽極電解室20と陰極電解室21を連通させているが、この隔壁100に半透膜を用いても良く、この場合は電気分解槽2の左右の空間を完全に区画した構成としても良い。
【0070】
また、本装置1Jは、その陽極電解室20において、気体を貯留する上部側の空間から延設されて水溶液を貯留する部分の下部側まで連通させる配管(送ガス手段22)が接続されており、電気分解により生成されて上部空間に溜まった塩素ガスを、ポンプ122で下部側まで搬送して気泡生成具123を介し水溶液中でバブリングさせることで、塩素ガスを水溶液中に溶解させる構成となっている。
【0071】
これにより、電気分解により陽極24側で生じて上部空間に貯留した危険な塩素ガスを、貯留した水溶液の下部側から噴出させながら溶解させることを繰り返すことができ、その大部分を比較的安全な液体の状態(塩酸)にすることができるため、本装置1Jは、装置の安全性を確保しながら塩素ガスの生成量を考慮することなく充分なる出力で電気分解を実施可能として、陰極25側で充分なる濃度の水酸化ナトリウムを生成することができる。
【0072】
なお、陽極電解室20の頂壁には酸素を排出する酸素排出路(送ガス手段14)が、陰極電解室21の頂壁には水素を排出する水素排出路(送ガス手段13)が設けられているが、その排出された酸素や水素は、所定のボンベ等に貯留して様々な目的に利用することができる。例えば、図示は省略するが、本装置は、水素ガスを発電の燃料として使用する燃料電池発電手段を装置に付設しておくことで、それによる電力を装置稼働のための電力の少なくとも一部に使用する方式とすることもでき、この場合は、装置のランニングコストを一層低廉に抑えることが可能となる。なお、本装置は、太陽光発電を利用してもよい。これによって、さらに、ランニングコストを抑えることが可能である。
【0073】
また、図示は省略するが、上述した本装置1Jにおいて、各槽にpHメータを設けるとともに、マイコンと運転制御用ソフトウエアを記憶したメモリを有した電子制御手段を備えたものとして、その電子制御手段が、各槽のpHレベルを検知しながら、配管(送液手段15,16,17,及び18,並びに送ガス手段22)に設けたポンプ151,161,171,181,122及び各通路に設けた電磁弁と紫外線ライト(紫外線照射手段26a,26b)をフィードバック制御により操作する方式とすれば、本装置1Jは、ほぼ自動的且つ連続的に装置の運転を行えるようになる。
【0074】
本装置1Jを最初に運転する際には、塩水導入路(送液手段29)を介して電気分解槽2に所定濃度の塩化ナトリウム水溶液(塩水)を所定の水位まで貯留させるとともに、空気排出路(送ガス手段12)及び二酸化炭素排出路(送ガス手段11)を利用する等して、反応槽3に水酸化ナトリウム水溶液を所定水位まで導入して貯留するとともに、回収槽4に塩化ナトリウム水溶液を導入して所定水位まで貯留しておくと良い。
【0075】
次に、本装置1Jは、陽極24及び陰極25に通電して電気分解を開始しながら、陽極電解室20の紫外線ランプ(紫外線照射手段26a,26b)を点灯させるとともに配管(送ガス手段22)のポンプ122を駆動させる。本装置1Jは、これと同時に、空気導入路(送ガス手段19)と気泡生成器191を介して反応槽3内への二酸化炭素を含む空気(処理対象)の導入を開始する。
【0076】
そして、本装置1Jは、陰極電解室25の水溶液貯留部分の上部側に配置した図示しないpHメータで水溶液の塩基性度が所定レベルに達したことを検知した時点で、配管(送液手段16)のポンプ161を駆動させて反応槽3に水酸化ナトリウム水溶液を導入し、陽極電解室24の水溶液貯留部分の上部側に配置した図示しないpHメータで水溶液の酸性度が所定レベルに達したことを検知した時点で、配管(送液手段15)のポンプ151を駆動させて回収槽4に塩化水素水溶液(塩酸)を導入する。
【0077】
一方、本装置1Jは、反応槽3の水溶液貯留部分の上部側に配置した図示しないpHメータで水溶液の塩基性度が所定レベルまで下がったことを検知した時点で、配管(送液手段17)のポンプ171を駆動して、回収槽4に炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム含む水溶液を導入して、配管(送液手段15)で導入した塩化水素と反応させながら塩化ナトリウムを生成するとともに、反応で生じた二酸化炭素が気体の状態で分離されて上部側空間に溜まる。そして、分離した二酸化炭素は二酸化炭素排出路(送ガス手段11)を介して外部に排出されて所定の貯留手段に貯留される等して、残った塩化ナトリウム水溶液は、配管(送液手段18)のポンプ181を駆動させて水位上昇分だけ送出されて、電気分解槽2の底部から導入されて再利用される。
【0078】
その後は、本装置1Jは、各槽における水溶液は循環して生成・使用されることから、材料を殆ど補充することなく装置の運転を継続することが可能となり、装置のランニングコストを低廉に抑えることができる。一方、電気分解により水素と酸素が排出される分と水分の蒸発等により水位は低下してくるため、本装置への水の補充は、適宜行うことになる。
【0079】
なお、電気分解により陽極24側で塩化水素とともに生成される次亜塩素酸が紫外線照射により分解されて塩化水素になる(2HClO→2HCl+O2)という反応については、本願発明者による実験で確認されている。即ち、当初濃度が1000ppmの次亜塩素酸水(50ml)はpH6.66であったものが、15分の紫外線ライト(智洋製)の照射によりpH6.30まで低下し、さらに15分照射することでpH6.11まで下がり、その後一定となっていた。そのため、本装置1Jは、陽極電解室20において、紫外線ライト(紫外線照射手段26a,26b)の照射により溶液貯留部分の次亜塩素酸を塩化水素に変化させながら塩酸濃度が高くpHの低い水溶液にして送出していることが分かる。
【0080】
なお、本装置1Jにおいて、反応槽3では、導入した水酸化ナトリウム水溶液中で二酸化炭素を含む空気をバブリングして炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを生成する方式を説明したが、導入する水酸化ナトリウム水溶液をミスト化して二酸化炭素を含む空気と混合する方式としても同様である。また、塩化ナトリウム水溶液を使用する代わりに、塩化カリウム水溶液を使用しても、同様に実施することができる。
【0081】
以下、
図11を使用して、本装置の他の具体例を示す。なお、以下の説明は、具体的な内容の一例であり、本開示にかかる本装置及び二酸化炭素回収方法が以下の説明に限定されないこと等は、前述のとおりである。
【0082】
以下の説明における二酸化炭素回収装置(以下「本装置1K」ともいう。)は、前述の具体例と同様の構成をそのまま利用しながら、例えば、配管(送液手段15)に塩酸と次亜塩素酸を含む水溶液を排出する塩酸排出路(送液手段35)を、電磁弁を介して分岐して設けるとともに、回収槽4の上部側に海水等を導入するための海水導入路(送液手段41)を設けるとともに、その底部側に二酸化炭素を固定した固形物を捕捉するためのフィルタ45を追加した構成の二酸化炭素回収装置である。
【0083】
図11の本装置1Kは、二酸化炭素を気体の状態で分離して装置の外で貯留又は使用するのではなく、二酸化炭素を固体の状態にして回収しようとするものである。即ち、陽極電解室20で生成した塩化水素を含む水溶液は使用せずに、塩酸排出路(送液手段35)から排出する構成とし、その代わりに海水導入路(送液手段41)から、海水又は塩化カルシウム(CaCl
2)を回収槽4に投入する方式としている。つまり、前記回収槽4で、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)(炭酸塩)に加えるものは、前述の具体例における本装置1Jでは塩化水素(HCl)であるが、本具体例の本装置1Kでは、海水又は塩化カルシウム(CaCl
2)である。海水を加える場合は、例えば、炭酸マグネシウム(MgCO
3)と炭酸カルシウム(CaCO
3)が得られ、塩化カルシウム(CaCl
2)を加える場合は、炭酸カルシウム(CaCO
3)が得られることになる。前記回収槽4で生成される化合物(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)は、固体の状態で水溶液の中で沈殿する。その結果、本装置1Kは、固体の状態の化合物として、二酸化炭素を回収することができる。また、炭酸カルシウムは、極めて水に難溶であり、無害であるため、二酸化炭素の安全で確実な回収を可能とするものである。
【0084】
尚、海水を電気分解して二酸化炭素を固定する従来技術においては、水酸化ナトリウム水溶液との直接の処理によって、最初に大量の水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が生成されるため、炭酸塩含有液と海水との処理が進まず、水溶液に沈殿する化合物として二酸化炭素を回収することに支障が生じていた。本装置1Kにおいては、二酸化炭素と水酸化ナトリウムとを混合する処理を行った結果生成される炭酸塩含有液との処理によるものであるため、前述のような支障は生じない。
【0085】
例えば、従来の二酸化炭素固定化において、水酸化ナトリウム水溶液とカルシウムイオンを利用する方法では、水酸化ナトリウムの濃度が高い場合、前述のとおり、水酸化ナトリウム水溶液とカルシウムイオンとが先に反応しやすいことから、二酸化炭素の固定化に支障が生じる。そのため、水酸化ナトリウムの濃度を、例えば、0.2mol/L以下にする必要がある。そのため、従来の二酸化炭素の固定化は、大量の水を必要とする。これに対して、本開示にかかる二酸化炭素回収方法では、前述のとおり、従来の方法のような支障は生じないことから、水酸化ナトリウムの濃度を高くすることができる。例えば、前記濃度は、1mol/Lであってもよく、限定されない。その結果、二酸化炭素の固定化に使用する水の量を大幅に少なくすることができる。さらに、前記反応槽3の処理において、前述の水酸化ナトリウムをミスト状にする方法によれば、さらに、水の量を減らすことができる。さらに、この前記反応槽3の反応空間を拡大するために、空き倉庫、巨大ドーム、洞窟、トンネル、廃坑を利用すれば安価で大量に二酸化炭素の固定が可能である。
【0086】
本開示にかかる二酸化炭素回収装置を大型タンカーに載せれば、前記二酸化炭素回収装置は、海水を電気分解しながら、電気と水素を得て、二酸化炭素を固定化し、海水中のカルシウムイオンを利用して炭酸カルシウムを生成することができる。なお、電気分解に伴い発生する水素ガスの利用や太陽光発電を組み合わせれば、大型タンカーの上においても、より安定した二酸化炭素回収の作業が可能となる。また、生成された炭酸カルシウムは、前述のとおり、極めて難解で無害なものであるため、深い海中に放出することも可能である。回収した二酸化炭素の輸送と貯蔵が問題視されているところ、本開示にかかる二酸化炭素回収装置は、これを解決することができる。さらに、原発事故で未使用な広大な土地をタンカー代わりに利用すれば、地球温暖化問題の解決に寄与するとともに、原発事故の被害を受けた地域の活性化に活用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のとおり、二酸化炭素回収装置について、本開示によりランニングコストを低廉に抑えながら、二酸化炭素を含む気体から連続的かつ効率的に二酸化炭素を回収できるようになる。そのため、本発明は、地球温暖化対策等に特に有用である。
【0088】
この出願は、2022年12月14日に出願された日本出願特願2022-199049及び2023年4月27日に出願された日本出願特願2023-073210を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【符号の説明】
【0089】
1Aから1K 二酸化炭素回収装置
2 電気分解槽
3 反応槽
4 回収槽
10 筺体
11~14、19、22 送ガス手段
15~18、29、35、41 送液手段
20 陽極電解室
21 陰極電解室
24 陽極
25 陰極
26a,26b 紫外線照射手段
30 燃料電池発電装置
31 太陽光発電装置
100 隔壁
122,151,161,171,181 ポンプ
【要約】
電気分解を利用し、かつ、電気分解に伴い発生する塩素ガスの外部排出を防止できる二酸化炭素回収装置の提供を目的とする。
本発明の二酸化炭素回収装置1Aは、電気分解槽2、反応槽3、送液手段及び送ガス手段を含み、前記電気分解槽2内に、陽極電解室20及び陰極電解室21が設けられ、金属塩水溶液が供給可能であり、前記陰極電解室20において、電気分解により水酸化金属水溶液を生成し、前記反応槽3に、前記水酸化金属塩水溶液を送液可能であり、前記反応槽3において、前記水酸化金属塩水溶液中に二酸化炭素含有ガスを供給可能であり、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素は、前記水酸化金属塩水溶液中の金属塩と反応して炭酸塩を生成し、前記陽極電解室20で生成した塩素ガスは、前記送ガス手段により、前記陽極電解室20中の前記金属塩水溶液中に供給可能である。