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特許7433696設計品見積システムおよび設計品見積プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】設計品見積システムおよび設計品見積プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240213BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20240213BHJP
   G06F 111/20 20200101ALN20240213BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/12
G06F111:20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019043793
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020027603
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018150830
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮志
(72)【発明者】
【氏名】吉原 拓実
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-211710(JP,A)
【文献】特開2001-060233(JP,A)
【文献】特開2002-351929(JP,A)
【文献】特開2013-246487(JP,A)
【文献】特開2003-030499(JP,A)
【文献】特開2008-090660(JP,A)
【文献】特開2018-116454(JP,A)
【文献】特開2002-073147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/12
G06F 111/20
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去に実績のある自社の製作品である実績品の形状と寸法、加工精度を含む第1の実績情報と、該実績品の価格を含む第2の実績情報を記憶する実績情報記憶手段と、
自社で設計した見積対象の設計品の形状と寸法、加工精度を含む見積対象設計品情報と近似する前記第1の実績情報を有する実績品を前記実績情報記憶手段から抽出し、該実績品の前記第2の実績情報に基づいて前記設計品の推定価格を含む見積結果を演算する見積手段と、
を備えることを特徴とする設計品見積システム。
【請求項2】
設計図から前記第1の実績情報または前記見積対象設計品情報を取得する情報取得手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の設計品見積システム。
【請求項3】
前記第1の実績情報に、前記実績品の材質、重量、表面処理および特殊加工の少なくとも一方を含み、
前記見積対象設計品情報に、前記設計品の材質、重量、表面処理および特殊加工の少なくとも一方を含む、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の設計品見積システム。
【請求項4】
前記第2の実績情報に、前記実績品の納期および製作者の少なくとも一方を含み、
前記見積結果に、前記設計品の推定納期、推奨製作者および前記抽出した実績品の前記第1の実績情報の少なくとも一方を含む、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の設計品見積システム。
【請求項5】
前記推奨製作者に、前記見積対象設計品情報を含む見積依頼を送信する見積依頼手段を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の設計品見積システム。
【請求項6】
前記第2の実績情報に、前記実績品の価格の変動に関する情報を含み、
前記見積手段は、前記実績品の価格の変動に関する情報に基づいて前記設計品の推定価格を演算する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の設計品見積システム。
【請求項7】
前記推定価格と、該推定価格の設計品の実際の価格とに基づいて、前記見積手段の演算を修正する演算修正手段を備える、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の設計品見積システム。
【請求項8】
前記見積手段は、前記抽出した実績品に関する情報を近似率が大きい順に一覧表にして出力する、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の設計品見積システム。
【請求項9】
コンピュータを、
過去に実績のある自社の製作品である実績品の形状と寸法、加工精度を含む第1の実績情報と、該実績品の価格を含む第2の実績情報を記憶する実績情報記憶手段と、
自社で設計した見積対象の設計品の形状と寸法、加工精度を含む見積対象設計品情報と近似する前記第1の実績情報を有する実績品を前記実績情報記憶手段から抽出し、該実績品の前記第2の実績情報に基づいて前記設計品の推定価格を含む見積結果を演算する見積手段、
として機能させることを特徴とする設計品見積プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
設計図から前記第1の実績情報または前記見積対象設計品情報を取得する情報取得手段、として機能させることを特徴とする請求項9に記載の設計品見積プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAD等で設計した設計品の推定価格や推定納期などを見積る設計品見積システムおよび設計品見積プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CAD等で部品などの製作品(既製品ではなく、新たに製作する必要があるもの)を設計する場合、より安価な製作品を設計することが求められる。そのため従来は、設計の都度、請負会社などから見積を入手する必要が生じていた。
【0003】
また、少ない試行回数で容易に見積結果をユーザの希望価格や希望納期の範囲内に近づけることができる、という自動見積システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このシステムは、アイテム群の希望価格・納期を認識する希望価格・納期認識部と、アイテム群の価格・納期を決定するアイテム群価格・納期決定部と、アイテム群を構成する複数のアイテムのうちの少なくとも1つについての製造条件を報知する検討推奨部分認識部とを備え、見積結果を希望価格・納期に近づけるために変更を検討すべき製造条件を提示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-25950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、請負会社などから見積を入手するには、製作品を製作可能な請負会社などを探し、設計図を送って見積を依頼し入手しなければならず、時間と手間がかかっていた。また、従来、設計者の経験と勘で見積をする場合もあるが、見積精度が低かったりバラツキが生じたりする問題がある。一方、特許文献1の技術では、複数のアイテム群の見積結果を希望価格・納期に近づけるために、変更を検討すべき製造条件が提示されるだけであり、個々に設計した製作品の価格や納期を入手できるものではない。
【0006】
そこで本発明は、設計品の推定価格などを簡易に見積可能な、設計品見積システムおよび設計品見積プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、過去に実績のある自社の製作品である実績品の形状と寸法、加工精度を含む第1の実績情報と、該実績品の価格を含む第2の実績情報を記憶する実績情報記憶手段と、自社で設計した見積対象の設計品の形状と寸法、加工精度を含む見積対象設計品情報と近似する前記第1の実績情報を有する実績品を前記実績情報記憶手段から抽出し、該実績品の前記第2の実績情報に基づいて前記設計品の推定価格を含む見積結果を演算する見積手段と、を備えることを特徴とする設計品見積システムである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の設計品見積システムにおいて、設計図から前記第1の実績情報または前記見積対象設計品情報を取得する情報取得手段を備える、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の設計品見積システムにおいて、前記第1の実績情報に、前記実績品の材質、重量、表面処理および特殊加工の少なくとも一方を含み、前記見積対象設計品情報に、前記設計品の材質、重量、表面処理および特殊加工の少なくとも一方を含む、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載の設計品見積システムにおいて、前記第2の実績情報に、前記実績品の納期および製作者の少なくとも一方を含み、前記見積結果に、前記設計品の推定納期、推奨製作者および前記抽出した実績品の前記第1の実績情報の少なくとも一方を含む、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の設計品見積システムにおいて、前記推奨製作者に、前記見積対象設計品情報を含む見積依頼を送信する見積依頼手段を備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5に記載の設計品見積システムにおいて、前記第2の実績情報に、前記実績品の価格の変動に関する情報を含み、前記見積手段は、前記実績品の価格の変動に関する情報に基づいて前記設計品の推定価格を演算する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6に記載の設計品見積システムにおいて、前記推定価格と、該推定価格の設計品の実際の価格とに基づいて、前記見積手段の演算を修正する演算修正手段を備える、ことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7に記載の設計品見積システムにおいて、前記見積手段は、前記抽出した実績品に関する情報を近似率が大きい順に一覧表にして出力する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、コンピュータを、過去に実績のある自社の製作品である実績品の形状と寸法、加工精度を含む第1の実績情報と、該実績品の価格を含む第2の実績情報を記憶する実績情報記憶手段と、自社で設計した見積対象の設計品の形状と寸法、加工精度を含む見積対象設計品情報と近似する前記第1の実績情報を有する実績品を前記実績情報記憶手段から抽出し、該実績品の前記第2の実績情報に基づいて前記設計品の推定価格を含む見積結果を演算する見積手段、として機能させることを特徴とする設計品見積プログラムである。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の設計品見積プログラムにおいて、コンピュータを、設計図から前記第1の実績情報または前記見積対象設計品情報を取得する情報取得手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項9に記載の発明によれば、設計品の形状と寸法など(見積対象設計品情報)と、過去の各実績品の形状と寸法など(第1の実績情報)に基づいて、設計品に近似する実績品が抽出され、この実績品の価格など(第2の実績情報)に基づいて設計品の推定価格など(見積結果)が自動で演算されるため、設計品の推定価格などを簡易かつ迅速に見積・入手することが可能となる。この結果、設計をしながら推定価格を入手して、より安価な製作品を適正かつ迅速に設計することが可能となる。
【0018】
請求項2および請求項10に記載の発明によれば、情報取得手段によって設計図から第1の実績情報または見積対象設計品情報が取得される。例えば、実績品を設計した紙の設計図(紙設計図)をスキャニングした画像から、情報取得手段で第1の実績情報を取得して実績情報記憶手段に記憶することで、実績品の紙設計図に基づく第1の実績情報を容易かつ適正に実績情報記憶手段に記憶、蓄積することが可能となる。また、設計品を設計した紙設計図をスキャニングした画像から、情報取得手段で見積対象設計品情報を取得することで、設計品の紙設計図などに基づいて、設計品の推定価格などを簡易かつ迅速に見積・入手することが可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、第1の実績情報および見積対象設計品情報にそれぞれ、実績品および設計品の材質、重量、表面処理、加工精度および特殊加工などが含まれ、これらの情報が近似する実績品が抽出されて、設計品の推定価格などが演算されるため、設計品の推定価格などをより適正に見積することが可能となる。すなわち、形状と寸法のみならず、材質、重量、表面処理、加工精度および特殊加工などに基づいて、実績品が抽出されるため、設計品の推定価格などをより適正・正確に見積することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、見積結果として、設計品の推定納期や推奨製作者、抽出した実績品の形状と寸法など(第1の実績情報)も演算されるため、設計品を製作する場合に推定される納期や、どの請負会社などに製作依頼したらよいか、過去の実績品の形状や寸法などを知得することができる。この結果、希望納期に適した設計に変更したり、適正な請負会社などに製作依頼したり、あるいは、過去の実績品との共通化などを図ることが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、見積依頼手段によって自動的に推奨製作者に見積依頼が送信されるため、推奨製作者からの見積を容易かつ迅速に入手することが可能となる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、実績品の価格の変動に関する情報に基づいて設計品の推定価格が演算されるため、価格の変動を考慮したより適正・正確な推定価格を取得することが可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、見積手段で演算された推定価格と、この推定価格の対象である設計品の実際の価格とに基づいて、見積手段の演算が修正される。つまり、設計品の実際価格と推定価格との差に基づいて、適正な推定価格が演算されるように見積手段の演算式、演算方法が修正されるため、見積手段による演算精度を高めることが可能となる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、抽出された実績品に関する情報が、近似率が大きい順に一覧表にして出力されるため、設計品に近似する実績品に関する情報を容易かつ適正に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の実施の形態1に係る設計品見積システムを示す概略構成図である。
図2図1の設計品見積システムの見積コンピュータを示す概略構成ブロック図である。
図3図2の見積コンピュータの実績データベースを示すデータ構成図である。
図4図2の見積コンピュータの見積データベースを示すデータ構成図である。
図5図1の設計品見積システムによる見積結果を示す図である。
図6図1の設計品見積システムの動作を示すフローチャートである。
図7】この発明の実施の形態2に係る設計品見積システムの見積コンピュータを示す概略構成ブロック図である。
図8図7の見積コンピュータの情報取得タスクの情報取得対象となる設計図例を示す図である。
図9】この発明の実施の形態2に係る設計品見積システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る設計品見積システム1を示す概略構成図である。この設計品見積システム1は、CAD等で設計した設計品の推定価格や推定納期などを見積るシステムであり、複数の設計端末2と見積コンピュータ3とが、通信網NWを介して通信自在に接続されている。
【0028】
設計端末2は、CADや3Dで製作品などを設計するために使用されるコンピュータであり、CADシステムに連携されて設計者等によって使用される。この設計端末2では、製作品の設計図や製作条件などが作成される。すなわち、自社で設計した見積対象の設計品の形状と寸法、材質、重量、表面処理、加工精度および特殊加工などを含む見積対象設計品情報(後述する第1の実績情報311に対応する情報)が作成される。そして、所定の操作を行うことで見積対象設計品情報が見積コンピュータ3に送られ、これを受けて見積コンピュータ3において後述する見積タスク33が起動されて、その見積結果が設計端末2に送信されるようになっている。ここで、設計品と後述する実績品は、部品単品であってもよいし、複数の部品を組み合わせたアセンブリ品であってもよい。
【0029】
見積コンピュータ3は、見積対象の設計品の推定価格などを見積るコンピュータであり、図2に示すように、主として、実績データベース(実績情報記憶手段)31と、見積データベース(見積情報記憶手段)32と、見積タスク(見積手段)33と、修正タスク(演算修正手段)34と、見積依頼タスク(見積依頼手段)35と、これらを制御などする中央処理部36と、を備える。また、見積コンピュータ3は、図示しない各製作者(請負会社などで後述する推奨製作者を含む)のコンピュータと通信自在となっている。
【0030】
実績データベース31は、過去に見積や製作の実績がある自社の製作品である実績品に関する情報を記憶するデータベースであり、図3に示すように、実績品の識別情報が記憶された実績ID310ごとに、第1の実績情報311と第2の実績情報312とが記憶されている。ここで、実績品には、自社で設計して、請負会社などから見積価格を入手して実際に製作したものだけではなく、見積だけで製作していないものや、見積なしで製作し実際価格(支払時の価格)が存在するものなどを含む。
【0031】
第1の実績情報311は、実績品の形状と寸法などを含む情報であり、設計図3111と、材質3112と、重量3113と、表面処理3114と、加工精度3115、ロット数3116と、製造方法3117と、成型3118と、特殊加工3119と、その他311aとを含む。設計図3111には、実績品の形状と寸法を含む設計図が記憶され、材質3112には、実績品の材質、特性が記憶されている。重量3113には、実績品の重量、質量が記憶され、表面処理3113には、実績品の表面に施した表面加工の有無とその種類(メッキ処理、塗色処理等)が記憶されている。加工精度3115には、実績品の寸法公差、幾何公差などが記憶され、ロット数3116には、実績品の製造個数が記憶され、製造方法3117には、実績品を製造した際の構造や加工方法(嵌め合いやカシメの有無、タップの有無と数、プーリーや歯車、ハニカムの有無など)が記憶されている。成型3118には、実績品を成形型で製造したか否かとその種類(プレス型、射出成形型など)が記憶され、特殊加工3119には、実績品に特殊加工を施した場合のその種類や、実績品が特殊な製作品である場合のその種類(撥水処理の有無、パラボラアンテナや導波管、レドームの場合にそれに関する情報など)が記憶されている。
【0032】
第2の実績情報312は、実績品の価格などを含む情報であり、価格3121と、納期3122と、製作者3123と、その他3124とを含む。価格3121には、実績品の価格が記憶され、この価格としては、請負会社(製作会社)などからの見積価格や実際価格などを含む。さらに、価格3121には、実績品の価格の変動に関する情報が記憶され、例えば、過去から最新に至る価格変動傾向や、製造個数に依存する価格傾向(累計何個でどのくらい安くなるか等)などが記憶される。納期3122には、実績品の納期(製作期間)が記憶され、この納期としては、請負会社などからの見積納期や実際納期などを含む。製作者3123には、実績品を製作した者の識別情報(請負会社の名称、自社製作かなど)と連絡先情報(メールアドレス、住所など)が記憶されている。
【0033】
見積データベース32は、見積タスク33による見積結果と、その見積対象品の実際価格などを記憶するデータベースであり、図4に示すように、見積の識別情報が記憶された見積ID321ごとに、対象ID322と、実績ID323と、マッチ率324と、推定価格325と、推定納期326と、実際価格327と、実際納期328と、その他329とが記憶される。
【0034】
対象ID322には、見積対象の設計品の識別情報が記憶され、実績ID323には、設計品が実際に製作等(見積もりのみを含む)されてその情報が実績データベース31に記憶された場合に、その実績ID310の識別情報が記憶される。マッチ率324には、見積タスク33による後述のマッチ率が記憶され、推定価格325には、見積タスク33による推定価格が記憶され、推定納期326には、見積タスク33による推定納期が記憶される。実際価格327には、設計品が実際に製作等された場合の実際価格(価格3121)が記憶され、実際納期328には、設計品が実際に製作等された場合の実際納期(納期3122)が記憶され、その他329には、後述する図5に示すような見積結果が記憶される。このような実績ID323と実際価格327と実際納期328は、実績データベース31に第2の実績情報312が記憶された際に記憶され、その他の情報は、見積タスク33による見積結果が出力された際に記憶される。
【0035】
見積タスク33は、設計端末2から受信した設計品の見積対象設計品情報と、実績データベース31に記憶された各第1の実績情報311に基づいて、見積対象設計品情報に近似する実績品を抽出し、該実績品の第2の実績情報312に基づいて設計品の推定価格を含む見積結果を演算するプログラム・タスクである。すなわち、設計品の形状や寸法などと近似する形状や寸法などを有する実績品を抽出し、その実績品の実際価格などに基づいて設計品の推定価格などを演算するものである。
【0036】
具体的には、まず、設計品の形状と寸法、材質、重量、表面処理、加工精度および特殊加工などの見積対象設計品情報と、各実績品の設計図3111、材質3112、重量3113、表面処理3114、加工精度3115、特殊加工3119などの第1の実績情報311とを比較し、その近似率・マッチ率が高い(所定値以上の)実績品を抽出する。ここで、見積対象設計品情報ごとに重み付けを設け、特定の見積対象設計品情報に近似する実績品を優先的に抽出するようにしてもよい。例えば、寸法と材質(設計図3111)を重く重み付けし、寸法と材質が近似する実績品を優先的に抽出してもよい。この重み付けは、予め設定してもよいし、見積タスク33の起動時に設定、変更するようにしてもよい。また、抽出する実績品は、ひとつでも複数でもよい。
【0037】
次に、抽出した実績品の価格3121や納期3122などに基づき、所定の演算式、演算方法に従って設計品の推定価格や推定納期などを演算する。この際、マッチ率を考慮して演算し、例えば、マッチ率が高い場合には、実績品の価格3121や納期3122の近似値を推定価格や推定納期とし、マッチ率が低い場合には、どの見積対象設計品情報と第1の実績情報311とが相違するのかなどを考慮し、価格3121や納期3122の値を加減して推定価格や推定納期を演算する。さらに、価格3121に実績品の価格の変動に関する情報が記憶されている場合には、これらの情報に基づいて推定価格を演算する。例えば、過去から最新に至る価格変動傾向に基づいて今回の推定価格を演算したり、今回を含む累計個数が何個になるからどのくらい安くなるかを考慮して価格傾向を演算したりする。
【0038】
また、複数の実績品を抽出した場合には、各実績品の価格3121や納期3122とそのマッチ率に基づき、所定の演算式、演算方法に従って推定価格や推定納期などを演算する。例えば、実績品A、Bが抽出されて実績品Aのマッチ率が実績品Bよりも高い場合、実績品Aの価格3121を基準価格とし、実績品Bのマッチ率と実績品Aとの差異などを考慮し、基準価格を加減して推定価格を演算する。
【0039】
また、見積タスク33で演算、出力する見積結果には、設計品の推奨製作者や抽出した実績品の第1の実績情報311を含む。すなわち、上記のようにして抽出した実績品の製作者3123を推奨製作者として出力するとともに、実績品の設計図3111や材質3112、重量3113など出力する。具体的には、図5に示すように、抽出した各実績品(候補)のマッチ率、図(設計図3111)、材質(材質3112)、重量(重量3113)などの情報を近似率が大きい順に一覧表にして出力する。ここで、抽出した実績品が複数ある場合、マッチ率が最も高い実績品の製作者3123や、特定の(指定された)第1の実績情報311が最も近似している(例えば、特殊加工3119が近似している)実績品の製作者3123を推奨製作者として出力する。
【0040】
このような見積タスク33を起動する際に、入力パラメータとして設計端末2から受信される設計品の見積対象設計品情報は、設計が完了した完全な情報でなくてもよい。例えば、見積対象の製作品の設計図が製作途中・未完成であってもよく、この場合、製作途中の設計図に基づいて実績品を抽出し、その設計図3111や材質3112、重量3113などを出力する。これにより、製作品を独自に設計しなくても、近似する設計図などを取得することができ、実績品の設計を利用して製作品の共通化・共用化を図ることが可能となる。
【0041】
修正タスク34は、見積タスク33による推定価格と、該推定価格の設計品の実際の価格とに基づいて、見積タスク33の演算を修正するプログラム・タスクである。すなわち、ある設計品に対して見積タスク33で推定価格を演算した後に、この設計品に対する実際価格(見積価格を含む)が得られた場合に、推定価格と実際価格との差異などに基づいて推定価格が実際価格に近づくように、見積タスク33の演算式、演算方法を修正するものである。具体的には、例えば、推定価格325が実際価格327に近づくように、演算式の係数や重み付けなどを変更する。
【0042】
ここで、1組の推定価格と実際価格のみからではなく、複数組の推定価格と実際価格に基づいて演算式、演算方法を修正してもよい。また、修正タスク34は、人による任意のタイミングで起動してもよいし、定期的に起動してもよいし、所定の数の実際価格327が記憶された際に起動してもよい。
【0043】
見積依頼タスク35は、上記の推奨製作者に見積対象設計品情報を含む見積依頼を送信するプログラム・タスクである。すなわち、図5に示すような見積結果が設計端末2のディスプレイに表示され、設計端末2において推奨製作者に見積依頼するための所定の操作が行われると、見積対象設計品情報を含む見積依頼書を作成して、その推奨製作者のコンピュータに電子メールなどで送信するものである。
【0044】
次に、このような構成の設計品見積システム1の動作などについて、図6のタイミングチャートに従って説明する。
【0045】
まず、設計者等が設計端末2を使用して設計品を設計し(ステップS1)、所定の操作を行うと、設計図を含む見積対象設計品情報が見積コンピュータ3に送信される(ステップS2)。これを受けて見積コンピュータ3において見積タスク33が起動され(ステップS3)、上記のようにして見積対象設計品情報に近似する実績品が抽出されて、設計品の推定価格などが演算され、推定価格や推定納期などを含む見積結果が設計端末2に送信される(ステップS4)。そして、例えば、図5に示すような見積結果が設計端末2のディスプレイに表示される。
【0046】
ここで、例えば、製作途中の設計図等を設計品の見積対象設計品情報として設計端末2から見積コンピュータ3に送信した場合、製作途中の設計図等に基づいて実績品が抽出され、見積結果が設計端末2に送信される。このため、設計品の設計を完成させなくても、近似する設計図などを取得することができ、製作品の共通化・共用化を図ることが可能となる。
【0047】
また、図5の見積結果を見た設計者等が、見積依頼するための所定の操作を設計端末2で行うと(ステップS5)、見積コンピュータ3で見積依頼タスク35が起動され(ステップS6)、見積対象設計品情報を含む見積依頼書が推奨製作者のコンピュータに送信される。そして、推奨製作者から見積コンピュータ3に見積書が送信されると、該当する設計端末2に見積書が送信される。
【0048】
一方、見積コンピュータ3において、見積タスク33による見積結果が見積データベース32に記憶され(ステップS7)、その後、該設計品に関する実際価格や実際納期などが知得されると、これらが実績データベース31と見積データベース32とに記憶される(ステップS8)。また、所定のタイミングにおいて修正タスク34が起動され(ステップS9)、見積タスク33の演算式、演算方法が修正される。
【0049】
以上のように、この設計品見積システム1によれば、設計品の形状と寸法など(見積対象設計品情報)と、過去の各実績品の形状と寸法など(第1の実績情報311)に基づいて、設計品に近似する実績品が抽出され、この実績品の価格など(第2の実績情報312)に基づいて設計品の推定価格など(見積結果)が自動で演算されるため、設計品の推定価格などを簡易かつ迅速に見積・入手することが可能となる。この結果、設計をしながら推定価格を入手して、より安価な製作品を適正かつ迅速に設計することなどが可能となる。また、自社の実績品に基づいて自社(同社)の設計品の推定価格などを演算するため、自社の企業文化、企業方針などを反映することが可能となる。
【0050】
しかも、実績品の価格の変動に関する情報、例えば、過去から最新に至る価格変動傾向や製造個数に依存する価格傾向など、に基づいて設計品の推定価格が演算されるため、価格の変動を考慮したより適正・正確な推定価格を取得することが可能となる。
【0051】
また、第1の実績情報311および見積対象設計品情報にそれぞれ、実績品および設計品の材質、重量、表面処理、加工精度および特殊加工などが含まれ、これらの情報が近似する実績品が抽出されて、設計品の推定価格などが演算されるため、設計品の推定価格などをより適正に見積することが可能となる。すなわち、形状と寸法のみならず、材質、重量、表面処理、加工精度および特殊加工などに基づいて、実績品が抽出されるため、設計品の推定価格などをより適正・正確に見積することが可能となる。
【0052】
さらに、見積結果として、設計品の推定納期や推奨製作者、抽出した実績品の形状と寸法など(第1の実績情報311)も演算、出力されるため、設計品を製作する場合に推定される納期や、どの請負会社などに製作依頼したらよいか、過去の実績品の形状や寸法などを知得することができる。この結果、希望納期に適した設計に変更したり、適正な請負会社などに製作依頼したり、あるいは、過去の実績品との共通化などを図ることが可能となる。しかも、見積依頼タスク35によって自動的に推奨製作者に見積依頼が送信されるため、推奨製作者からの見積を容易かつ迅速に入手することが可能となる。さらに、図5に示すように、抽出された実績品に関する情報が、近似率が大きい順に一覧表にして出力されるため、設計品に近似する実績品に関する情報を容易かつ適正に把握することができる。
【0053】
また、見積タスク33で演算された推定価格と、この推定価格の対象である設計品の実際の価格とに基づいて、修正タスク34によって見積タスク33の演算が修正される。つまり、設計品の実際価格と推定価格との差に基づいて、適正な推定価格が演算されるように見積タスク33の演算式、演算方法が修正されるため、見積タスク33による演算精度を高めることが可能となる。
【0054】
(実施の形態2)
図7は、この実施の形態に係る設計品見積システムの見積コンピュータ3を示す概略構成ブロック図である。この発明の実施では、情報取得タスク(情報取得手段)37を備える点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0055】
情報取得タスク37は、設計図から第1の実績情報311または見積対象設計品情報を取得するプログラム・タスクである。すなわち、例えば、実績品または設計品が設計された紙の設計図(紙設計図)をスキャニングして得られたデジタル画像(画像設計図)などから、実績品または設計品の形状と寸法、材質、重量、表面処理、加工精度および特殊加工を含む、第1の実績情報311または見積対象設計品情報を取得する。この際、画像解析処理によって、画像設計図から形状や寸法、材質などの情報を抽出する。
【0056】
具体的には、例えば、図8に示すような画像設計図を情報取得対象とする場合、次のようにして第1の実績情報311または見積対象設計品情報を抽出する。
(a)太い実線から形状を抽出し、ハッチングから断面形状を抽出する。
(b)寸法線と寸法補助線から寸法を抽出し、寸法公差記号(例えば、「±0.05」)から寸法公差を抽出し、はめあい公差(例えば、「H7」)から軸や穴の寸法許容差を抽出する。
(c)仕上げ記号から表面あらさを抽出し、幾何公差記号から形状精度や位置精度を抽出し、加工記号から加工方法を抽出する。
(d)その他、文字解析を行い、材質、重量、表面処理、特殊加工などを抽出する。
【0057】
このような情報取得タスク37は、後述するように、見積タスク33で見積もりを行う場合のみならず、実績データベース31に第1の実績情報311を記憶する場合にも起動される。例えば、過去に設計されて紙設計図として保存されている実績品の形状や寸法などを、第1の実績情報311として記憶、蓄積する場合に起動される。この際、例えば、見積コンピュータ3で紙設計図をスキャニングして画像設計図を生成し、情報取得タスク37を起動することで、この画像設計図における実績品の形状や寸法などが抽出、取得される。そして、取得された形状や寸法などを第1の実績情報311として実績データベース31に記憶する。
【0058】
次に、この実施の形態における設計品見積システム1の動作などについて、図9のタイミングチャートに従って説明する。
【0059】
まず、設計者等が設計端末2を使用して、例えば、設計品の紙設計図をスキャニングして画像設計図を生成し(ステップS11)、所定の操作を行うと、この画像設計図が見積コンピュータ3に送信される(ステップS12)。これを受けて見積コンピュータ3において情報取得タスク37が起動され(ステップS13)、上記のようにして、設計品の形状や寸法、材質などの見積対象設計品情報が抽出、取得される。その後、見積タスク33が起動され(ステップS3)、実施の形態1と同様な処理が行われるものである。
【0060】
このように、この実施の形態によれば、情報取得タスク37によって設計図から第1の実績情報311または見積対象設計品情報が取得される。例えば、実績品が設計された紙設計図をスキャニングして画像設計図とし、情報取得タスク37を起動することで、この実績品の形状や寸法などが取得され、第1の実績情報311として実績データベース31に記憶、蓄積することができる。このように、実績品の紙設計図に基づく第1の実績情報311を容易かつ適正に記憶、蓄積することが可能となり、この結果、過去の紙設計図などを活用して十分な第1の実績情報311を蓄積、構築することが可能となる。
【0061】
また、設計品の紙設計図をスキャニングした画像設計図から、情報取得タスク37で見積対象設計品情報を取得することで、設計品の紙設計図などに基づいて、設計品の推定価格などを簡易かつ迅速に見積・入手することが可能となる。つまり、紙に設計品を設計した場合でも、推定価格などを簡易かつ迅速に入手することが可能となる。
【0062】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、実績データベース31と見積データベース32とを別のデータベースにしているが、ひとつのデータベースにしてもよく、また、各設計端末2にこれらのデータベース31、32や見積タスク33などを設けてもよい。また、図5に示すような一覧表を作成、出力する際に、設計者等が指定した材質や重量などの項目の近似率が大きい順に、実績品に関する情報を出力するようにしてもよい。
【0063】
また、実施の形態2では、紙設計図をスキャニングして得られた画像設計図から、第1の実績情報311や見積対象設計品情報を取得する場合について説明したが、紙設計図を撮影して得られた画像設計図や、設計端末2で設計した設計図を画像化した画像設計図などから取得するようにしてもよい。
【0064】
ところで、次のような設計品見積プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、見積コンピュータ3を構成してもよい。すなわち、コンピュータを、過去に実績のある製作品である実績品の形状と寸法を含む第1の実績情報と、該実績品の価格を含む第2の実績情報を記憶する実績情報記憶手段(実績データベース31)と、見積対象の設計品の形状と寸法を含む見積対象設計品情報と、実績情報記憶手段に記憶された各第1の実績情報に基づいて、見積対象設計品情報に近似する実績品を抽出し、該実績品の第2の実績情報に基づいて設計品の推定価格を含む見積結果を演算する見積手段(見積タスク33)と、設計図から第1の実績情報311または見積対象設計品情報を取得する情報取得手段(情報取得タスク37)、として機能させることを特徴とする設計品見積プログラム。
【0065】
1 設計品見積システム
2 設計端末
3 見積コンピュータ
31 実績データベース(実績情報記憶手段)
311 第1の実績情報
312 第2の実績情報
32 見積データベース(見積情報記憶手段)
33 見積タスク(見積手段)
34 修正タスク(演算修正手段)
35 見積依頼タスク(見積依頼手段)
37 情報取得タスク(情報取得手段)
NW 通信網
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9