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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
   A47B 77/06 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
A47B77/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020011627
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115313
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】立川 静香
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 裕也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治人
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-143545(JP,A)
【文献】特開2009-247517(JP,A)
【文献】特開2010-284386(JP,A)
【文献】特開平11-056502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/06
A47K 1/00
F16B 5/00-5/12
F16B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に延びる配管が奥側に配置されるキッチンのキャビネットであって、
背板との間に前記配管を配置するための隙間を有する底板と、
前記隙間の上に載置される配管カバーとを備え、
前記配管カバーは、
前記底板の奥側の端部から上方に向かって延びる前板と、
前記前板の上端から前記背板まで奥行き方向に延びる上板と
前記前板と前記上板とを連結する2枚の横板と、
前記2枚の横板を連結する梁と、
前記横板と前記梁とを連結するアングル材と、
を有し、
前記前板は着脱可能であり、
前記アングル材は、当該アングル材と前記梁とを連結するネジ穴が長穴であることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記隙間は平板の蓋によって塞がれていて、
前記蓋と取り替えて前記配管カバーを取付可能であることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記配管カバーは、前記前板と前記上板とを現場において組み立てるものであって、
前記横板の少なくとも一方はL字状であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅方向に延びる配管が奥側に配置されるキッチンのキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キッチンのリフォームの需要が高まっているが、リフォーム時にはキッチンの既設の配管を考慮する必要がある。例えばキッチンの配管が左右方向(幅方向)に延びている場合、特許文献1のように底板と仕切板によってキャビネット内に段差を形成すれば、配管を避けつつキャビネット内の空間と配管とを仕切ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-64786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キッチンでは、リフォーム後にも配管の点検を行うことや、配管のトラブルがあった際には配管の修理を行うことがある。このとき、特許文献1のように底板と仕切板とが一体品あると、点検や修理を行う際の取り外し作業が大がかりなものとなる。このため、特許文献1のキッチン用キャビネットには更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、幅方向に延びる配管との干渉を避けつつ、配管の点検や修理を容易に行うことが可能なキャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかるキャビネットの代表的な構成は、幅方向に延びる配管が奥側に配置されるキッチンのキャビネットであって、背板との間に配管を配置するための隙間を有する底板と、隙間の上に載置される配管カバーとを備え、配管カバーは、底板の奥側の端部から上方に向かって延びる前板と、前板の上端から背板まで奥行き方向に延びる上板とを有し、前板は着脱可能であることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、配管カバーにおいて前板と上板によって空間が形成される。これにより、幅方向に延びる配管を避けつつ、キャビネット内の空間と配管とを仕切ることができる。そして、配管カバーの前板が着脱可能であることにより、前板を取り外した開口を点検口として使用することできる。したがって、上記構成によれば、前板を取り外すだけで配管の点検や修理を行うことができる。
【0008】
上記隙間は平板の蓋によって塞がれていて、蓋と取り替えて配管カバーを取付可能であるとよい。かかる構成によれば、既設の配管が干渉しない場合には、平板の蓋を用いることにより、キャビネット内の空間をより広く使用することができる。一方、既設の配管が干渉する場合には、蓋と取り換えて配管カバーを取り付けることにより、上述したように配管との干渉を避けつつ、キャビネット内の空間と配管とを仕切ることができる。したがって、既設の配管のパターンが異なる場合であっても共通のキャビネットを使用することが可能となる。
【0009】
上記配管カバーは、前板と上板とを現場において組み立てるものであって、前板と上板とを連結する横板を2枚含み、横板の少なくとも一方はL字状であるとよい。このように配管カバーを現場で組立可能とすることにより、運搬性を高めることができる。また横板の少なくとも一方はL字状であることにより、配管が通過する側にL字状の横板を配置することにより、横板と配管との干渉を避けることができる。そして、横板が予めL字状であることにより、現場において配管に合わせて横板を切断する作業が不要となる。これにより、配管カバーを効率的に組み立てることが可能となる。
【0010】
上記配管カバーは、横板同士を連結する梁を備えているとよい。これにより、キャビネットの背板を利用することなく配管カバーを自立させることが可能となる。またキャビネットの背板を利用する必要がないため、キャビネットの背板の撓みの影響を受けることなく配管カバーを設置することができる。
【0011】
上記配管カバーは、横板と梁とを連結するアングル材を有し、アングル材は、当該アングル材と梁とを連結するネジ穴が長穴であるとよい。これにより、配管カバーの幅方向の寸法を調節することができる。したがって、キャビネットの側板間の寸法や前板の寸法に多少の誤差があった場合においても、寸法誤差を吸収することができ、キャビネットの側板と配管カバーの横板との隙間の発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、幅方向に延びる配管との干渉を避けつつ、配管の点検や修理を容易に行うことが可能なキャビネットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態にかかるキャビネットの全体斜視図である。
図2図1のキャビネットを側方から観察した図である。
図3】本実施形態の配管カバーの詳細を説明する図である。
図4】本実施形態の配管カバーの設置工程を説明する図である。
図5】本実施形態の配管カバーの設置工程を説明する図である。
図6】アングル材の詳細を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかるキャビネット100の全体斜視図である。なお、本実施形態では、キャビネット100としてキッチンのシンクキャビネットを例示するが、これに限定するものではない。キッチンのコンロキャビネット等、キッチンに備えられていて、幅方向に延びる配管が奥側に配置されるキャビネットであれば、他のキャビネットにも本発明を適用可能である。また理解を容易にするために、本実施形態の説明に用いる図面では、キャビネットの手前側の側板および引出を不図示としている。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のキッチンのキャビネット100は、水栓102およびシンク104が設けられるシンクキャビネットである。キャビネット100の下部の奥側には、幅方向に延びる横配管108が配置されている。横配管108には、シンク104から連続する縦配管106が接続されている。横配管108は排水のための勾配が必要であるため、壁側(キャビネット100の外側)が低く、縦配管106側が高く傾斜している。
【0017】
キャビネット100は、背板110、側板112、底板114および配管カバー120を含んで構成され、底板114と背板110との間には横配管108を配置するための隙間118が形成されている。配管カバー120は、底板114と背板110との間の隙間118の上に載置される。配管カバー120は、底板114の奥側の端部から上方に向かって延びる前板122と、前板122の上端から背板110まで奥行き方向に延びる上板124とを有し、前板122は配管カバー120に着脱可能である。
【0018】
上記構成によれば、配管カバー120において前板122と上板124によって形成された空間に横配管108が配置される。これにより、幅方向に延びる横配管108を避けつつ、キャビネット100内の空間と横配管108とを仕切ることができる。また配管カバー120の前板122が着脱可能であることにより、前板122を取り外した開口を点検口として使用することできる。したがって、前板122を取り外すだけで横配管108の点検や修理を行うことが可能となる。
【0019】
従来技術の点検口は底板または配管カバーの上面であり、配管が貫通した水平の板であった。しかし配管である給水・給湯管、排水管にはシールプレート等の止水処理がしてある。さらに点検口の上には水漏れ用のトレーが置いてあったり、水栓のホースが間近に迫っていたりする。このため、従来の点検口(水平の板)を上げて開くことは容易ではなかった。これに対し本発明であれば、容易に前板を開いて、定期点検等を実施することが可能である。
【0020】
図2は、図1のキャビネットを側方から観察した図である。図1では、隙間118の上に配管カバー120が載置されていた。これに対し、図2(a)では、隙間118は、平板の蓋116によって塞がれている。詳細には、図2(b)に示すように、背板110および側板112には、それぞれ支持ブロック110a・112aが取り付けられていて、蓋116はこれらの支持ブロック110a・112aおよび底板114の後側の縁の上に載置される。したがって、本実施形態のキャビネット100では、蓋116は取り外しが容易であり、この蓋116と取り換えて配管カバー120を取り付けることが可能である。
【0021】
上記構成によれば、リフォーム現場において、既設の配管(横配管)が干渉しない場合、すなわち既設の配管が底板114よりも下方に位置する場合には、平板の蓋116を用いることにより、キャビネット100内の空間をより広く使用することができる。一方、既設の配管(横配管)が干渉する場合、すなわち既設の配管が底板114よりも上方に位置する場合には、蓋116と取り換えて配管カバー120を取り付ける。これにより、上述したように配管との干渉を避けつつ、キャビネット100内の空間と配管とを仕切ることができる。このように配管カバー120が選択的に取付可能であることにより、既設の配管のパターンが異なる場合であっても共通のキャビネットを使用することが可能となる。
【0022】
配管カバー120は単純な構造の部材なので、短期で納品することが可能である。そこで、キャビネット100を施工する際にとりあえずキャビネット100のみを発注しておき、必要に応じて後から配管カバー120のみを追加発注することができる。すると、キャビネット100を発注する前に現場の配管の状況を確認する必要がない。また、蓋116を取り外せばよいだけであるから、現場が実は横配管108だったからといってキャビネット100の発注をやり直す必要もない。これらのことから、キャビネット100の施工期間を短くすることが可能である。
【0023】
図3は、本実施形態の配管カバー120の詳細を説明する図である。本実施形態の配管カバー120は、図3に示す部材を現場において組み立てて作られるものである。これにより、リフォーム現場へは嵩張らない状態で運搬できるため、配管カバー120の運搬性を高めることができる。また配管カバー120の上板124には、底板114から取り外した蓋116をそのまま利用することもできる。
【0024】
図3に示すように、配管カバーは、前板122、上板124、およびそれらを連結する2枚の横板126a・126b、梁128を含んで構成される。上板124には、リフォーム現場において縦配管106に相当する位置にそれを挿通する穴124aが加工される。そして、2枚の横板126a・126bのうち、一方の横板126aはL字状となっている。これにより、横配管108が通過する側にL字状の横板126aを配置すれば、横板126aと横配管108との干渉を避けることができる。
【0025】
横板126aが予めL字状であることにより、現場において横配管108に合わせて横板を切断する作業が不要となる。したがって、配管カバー120を組み立てる作業を軽減することが可能となる。なお、本実施形態では、2枚の横板126a・126bのうち一方の横板126aがL字状である構成を例示したが、これに限定するものではない。例えば、2つの横板126a・126bの両方をL字状とすれば、上記と同様の効果を得つつ、部材の共通化を図ることが可能となる。
【0026】
更に図3に示すように、配管カバー120は、2枚の横板126a・126bを連結する梁128を備え、梁128と横板126a・126bとはアングル材130によって連結される。2つの梁128のうち、一方は上板124の手前側に配置されて2枚の横板126a・126bを連結し、他方は上板124の奥側に配置されて2枚の横板126a・126bを連結する。このように梁128を設けることにより、キャビネット100の背板110を利用することなく、すなわちキャビネット100の背板110に支持させることなく配管カバー120を自立させることが可能となる。
【0027】
ここで、キャビネット100の背板110は、特に間口(幅)が広い場合には多少の撓みが生じることがある。このため、キャビネット100の背板110に配管カバー120を支持させる場合、背板110の撓みの影響を受けることがある。これに対し、本実施形態では配管カバー120が梁128によって自立可能であるため、配管カバー120は背板110の撓みの影響を受けることがない。
【0028】
図4および図5は、本実施形態の配管カバー120の設置工程を説明する図である。配管カバー120をキャビネット100の内部に設置する際には、まず隙間118の上に載置されている蓋116を取り外す(図2(b)参照)。そして図4(a)に示すように、配管カバー120を、上板124、横板126a・126bおよび梁128を組み立てた状態とし、隙間118の上に配置する。このとき、四角形状の横板126bは、支持ブロック112aに乗った状態となる。
【0029】
次に図4(b)に示すように、配管カバー120の横板126a・126bをネジ止め等によってキャビネット100の側板112に固定する。その後、図5に示すように手前側の梁128に前板122を取り付けることにより、配管カバー120の設置が完了する。このように、配管カバー120は、前板122以外の部材を先に組み立て、最後に前板122を取り付ける。したがって、前板122を容易に取り外すことができ、縦配管106および横配管108の点検や修理を迅速に行うことが可能である。
【0030】
図6は、アングル材130の詳細を説明する図である。図6(a)に示すように、アングル材130は、横板126aまたは横板126bに当接する横板当接面132、および梁128に当接する梁当接面134を有する。そして、横板当接面132には、アングル材130を横板126a・126bに連結するための丸穴状のネジ穴132aが形成されている。一方、梁当接面134には、アングル材130を梁128に連結するための長穴状のネジ穴134aが形成されている。
【0031】
上記構成によれば、長穴状のネジ穴134aに沿ってアングル材130を梁128に対して移動させることにより、配管カバー120の幅方向の寸法を調節することができる。これにより、キャビネット100の側板間の寸法や配管カバー120の前板122の寸法に多少の誤差があった場合においても、寸法誤差が吸収される。したがって、キャビネット100の側板112と配管カバー120の横板126a・126bとの隙間の発生を防ぐことができる。
【0032】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、幅方向に延びる配管が奥側に配置されるキッチンのキャビネットに利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
100…キャビネット、102…水栓、104…シンク、106…縦配管、108…横配管、110…背板、110a…支持ブロック、112…側板、112a…支持ブロック、114…底板、116…蓋、118…隙間、120…配管カバー、122…前板、124…上板、124a…穴、126a…横板、126b…横板、128…梁、130…アングル材、132…横板当接面、132a…ネジ穴、134…梁当接面、134a…ネジ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6