(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/095 20120101AFI20240213BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20240213BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B60W30/095
B60W40/04
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020015806
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】内田 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅野 宏一
(72)【発明者】
【氏名】玉木 智
(72)【発明者】
【氏名】増田 基
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-084112(JP,A)
【文献】特開2017-132422(JP,A)
【文献】特開2018-158684(JP,A)
【文献】特開2016-071513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/095
B60W 40/04
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の物標を認識する外界認識手段と、
前記外界認識手段の認識結果に基づいて、車線変更の可否を判断する変更可否確認手段と、
変更先の車線における前記外界認識手段による物標の認識の有無とは関係なく、現在の車線から前記車両の車速に応じた車線変更進路角度で変更先の車線まで直線的な車線変更経路を生成する車線変更経路生成手段と、
前記変更可否確認手段により車線変更可と判断された場合に、前記車線変更経路生成手段により生成された前記車線変更経路に沿って前記車両の車線変更を実行する車線変更実行手段と、
前記車線変更実行手段により車線変更が開始され、前記車両が前記車線変更経路に沿って当該車線変更を開始する前の位置から横方向に
変更元の車線と変更先の車線との境界を跨いだ位置まで移動したタイミングで、前記外界認識手段の認識結果に基づいて、車線変更の継続の可否を判断する継続可否確認手段と、
前記継続可否確認手段により車線変更の継続可と判断された場合に、前記車線変更実行手段による車線変更の実行を継続させる車線変更継続手段と、
前記継続可否確認手段により車線変更の継続不可と判断された場合に、前記車両が前記境界を跨いだ位置を保って走行するキャンセル直後直進部分および前記車両の車速に応じた車線変更進路角度で変更元の車線まで直線的に走行する直線変更キャンセル部分を含むキャンセル経路を生成するキャンセル経路生成手段と、
前記キャンセル経路生成手段により生成されたキャンセル経路に沿って前記車両を変更元の車線に戻す車線変更キャンセル手段と、を含む、車両制御装置。
【請求項2】
前記車線変更キャンセル手段により前記車両が変更元の車線に戻された後、前記車両の車線変更の実行を所定時間禁止する禁止手段、をさらに含む、請求項
1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記継続可否確認手段により車線変更の継続不可と判断された場合に、前記車両を前記境界を跨いだ位置を保って走行させた後、前記外界認識手段の認識結果に基づいて、車線変更の継続の可否を再び判断する継続可否再確認手段、をさらに含み、
前記車線変更継続手段は、前記継続可否再確認手段により車線変更の継続可と判断された場合に、前記車線変更実行手段による車線変更の実行を継続させ、
前記車線変更キャンセル手段は、前記継続可否再確認手段により車線変更の継続不可と判断された場合に、前記キャンセル経路生成手段により生成されたキャンセル経路に沿って前記車両を変更元の車線に戻す、請求項1または2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両をユーザの運転操作によらずに自動で走行させる自動運転技術の開発が盛んに行われている。
【0003】
自動運転技術の1つとして、たとえば、車両の走行中の車線をその車線と隣接する車線に自動で変更する自動レーンチェンジの技術が提案されている(たとえば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/155880号
【文献】特開2017-217969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動レーンチェンジでは、車両の挙動が不安定になるような速度調整や左右への操舵の繰り返しを避けて、車両を走行中の車線から隣接する車線に円滑かつ安全に移動させる必要がある。
【0006】
本発明の目的は、車両の円滑かつ安全な自動レーンチェンジを実現できる、車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両制御装置は、車両の周辺の物標を認識する外界認識手段と、外界認識手段の認識結果に基づいて、車線変更の可否を判断する変更可否確認手段と、変更先の車線における外界認識手段による物標の認識の有無とは関係なく、現在の車線から車両の車速に応じた車線変更進路角度で変更先の車線まで直線的な車線変更経路を生成する車線変更経路生成手段と、変更可否確認手段により車線変更可と判断された場合に、車線変更経路生成手段により生成された車線変更経路に沿って車両の車線変更を実行する車線変更実行手段と、車線変更実行手段により車線変更が開始され、車両が車線変更経路に沿って当該車線変更を開始する前の位置から横方向に所定距離の位置まで移動したタイミングで、外界認識手段の認識結果に基づいて、車線変更の継続の可否を判断する継続可否確認手段とを含む。
【0008】
この構成によれば、変更先の車線における外界認識手段による物標の認識の有無とは関係なく、現在の車線から車両の車速に応じた車線変更進路角度で変更先の車線まで直線的な車線変更経路が生成される。そのため、車線変更中に、車両が周囲の物標の動きなどに応じて速度調整や左右に操舵されることを抑制でき、車両の挙動が不安定になることを抑制できる。その結果、車両の挙動が不安定になることによる不安感をユーザに与えることを防止できる。また、車両が安定した挙動で車線間を直線的に移動することにより、車両の車線変更を周囲の車両に報知することができる。
【0009】
また、車両が車線変更経路上を車線変更前の位置から横方向に所定距離の位置まで移動したタイミングで車線変更の継続の可否が判断されるので、車両が車線変更先の車線まで直線的な車線変更経路をたどっても、車両が物標と衝突することを防止できる。
【0010】
車両制御装置は、継続可否確認手段により車線変更の継続不可と判断された場合に、車両の車速に応じた車線変更進路角度で変更元の車線まで直線的なキャンセル経路を生成するキャンセル経路生成手段と、キャンセル経路生成手段により生成されたキャンセル経路に沿って車両を変更元の車線に戻す車線変更キャンセル手段とをさらに含む構成であってもよい。
【0011】
車線変更の継続が不可と判断された場合には、車両の車速に応じた車線変更進路角度で変更元の車線まで直線的なキャンセル経路が生成される。そのため、車両がキャンセル経路に沿って変更元の車線に戻る際にも、車両の挙動が不安定になることを抑制でき、ユーザに不安感を与えることを防止できる。また、車両が安定した挙動で変更元の車線に直線的に戻ることにより、周囲の車両に車線変更をキャンセルしたことを報知できる。
【0012】
車両制御装置は、車線変更キャンセル手段により車両が変更元の車線に戻された後、車両の車線変更の実行を所定時間禁止する禁止手段をさらに含む構成であってもよい。
【0013】
これにより、車両が変更元の車線に戻った後すぐに、車線変更が再び行われることを防止できる。その結果、車両の車線変更およびそのキャンセルが繰り返されることを抑制でき、その繰り返しにより車両の挙動が不安定になることを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の円滑かつ安全な自動レーンチェンジを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動運転車の電気的構成を示すブロック図である。
【
図2】自動運転ECUの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】レーンチェンジ処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】自動運転車のレーンチェンジ時の動きを図解的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
<車両の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る自動運転車1の電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
自動運転車1は、自動運転機能を搭載したことにより、ユーザの運転操作によらずに自動で走行が可能な自動車である。
【0019】
自動運転車1には、各部を制御するため、複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が搭載されている。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成である。マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。また、複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0020】
複数のECUには、自動運転機能を搭載していない通常の自動車と同様、駆動ECU11、操舵ECU12、ブレーキECU13、メータECU14およびボデーECU15が含まれる。
【0021】
駆動ECU11は、自動運転車1の駆動装置21を制御する制御部である。駆動装置21は、エンジンを駆動源として備える構成であってもよいし、モータを駆動源として備える構成であってもよいし、エンジンおよびモータの両方を駆動源として備える構成であってもよい。駆動装置21には、必要に応じて、駆動源からの駆動力を変速して出力する変速機が含まれる。
【0022】
操舵ECU12は、自動運転車1の操舵装置22を制御する制御部である。操舵装置22は、たとえば、電動モータのトルクをステアリング機構に付与する電動パワーステアリング装置である。ステアリング機構は、たとえば、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤを含み、電動モータのトルクによりラック軸が車幅方向に移動すると、そのラック軸の移動に伴って左右の操向輪が左右に転舵するように構成されている。
【0023】
ブレーキECU13は、自動運転車1の制動装置23を制御する制御部である。制動装置23は、電動式であってもよい、油圧式であってもよい。油圧式の制動装置は、ブレーキアクチュエータを備え、このブレーキアクチュエータの機能により、各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が分配され、その油圧により各ブレーキから駆動輪を含む車輪に制動力が付与される。
【0024】
メータECU14は、自動運転車1のメータパネル(図示せず)の各部を制御する制御部である。メータパネルには、車速やエンジン回転数を表示する計器類のほか、各種の情報を表示するための液晶ディスプレイなどの表示器が設けられている。また、メータECU14には、自動運転の緊急停止を指示するために操作される緊急停止スイッチ24が接続されている。
【0025】
ボデーECU15は、自動運転車1の左右の各ウィンカの作動/非作動を制御する。
【0026】
そして、複数のECUには、自動運転車1に特有のECUとして、自動運転ECU31、ライダECU32および単眼カメラECU33が含まれる。
【0027】
自動運転ECU31は、自動運転制御の制御中枢である。自動運転ECU31には、全方位ライダ34およびGPS受信機35が接続されている。
【0028】
全方位ライダ34は、自動運転車1の周囲の物標を認識する外界認識センサであり、360°全方位にレーザ光を照射し、探索範囲内に存在する物体からの反射光を光センサで受光して、その反射光に応じた検出信号を出力する。全方位ライダ34は、たとえば、自動運転車1のルーフ上に配置されている。自動運転ECU31には、全方位ライダ34から出力される検出信号がLANケーブルなどの通信ケーブルを通して入力される。
【0029】
GPS受信機35は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星からの測位信号を受信する受信機である。GPS受信機35は、たとえば、自動運転車1のルーフ上に配置されている。自動運転ECU31には、GPS受信機35が受信した測位信号がUSBケーブルなどの通信ケーブルを介して入力される。
【0030】
ライダECU32には、6個のライダ36が接続されている。ライダ36は、自動運転車1の周囲の物標を認識する外界認識センサであり、探索範囲にレーザ光を照射し、その探索範囲内に存在する物体からの反射光を光センサで受光して、その反射光に応じた検出信号を出力する。ライダ36は、たとえば、自動運転車1のフロントバンパの左端、中央および右端ならびにリヤバンパの左端、中央および右端にそれぞれ配置されている。ライダECU32には、各ライダ36から出力される検出信号がLANケーブルなどの通信ケーブルを通して入力される。
【0031】
また、ライダECU32は、LANケーブルなどの通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されている。ライダECU32は、各ライダ36から出力される検出信号を処理し、その処理により得られるデータを自動運転ECU31に送信する。
【0032】
単眼カメラECU33には、単眼カメラ37が接続されている。単眼カメラ37は、自動運転車1の周囲の物標を認識する外界認識センサであり、所定のフレームレートで静止画を連続して撮影可能なものである。単眼カメラECU33には、単眼カメラ37から連続して出力される静止画の画信号がUSBケーブルなどの通信ケーブルを介して入力される。
【0033】
また、単眼カメラECU33は、LANケーブルなどの通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されている。単眼カメラECU33は、単眼カメラ37から出力される検出信号を処理し、その処理により得られる画像データを自動運転ECU31に送信する。
【0034】
<自動運転ECU>
図2は、自動運転ECU31の機能的な構成を示すブロック図である。
【0035】
自動運転ECU31は、自動運転制御のための機能処理部として、物体認識部41、自己位置推定部42、周辺情報統合部43、経路計画部44および車両制御部45を備えている。これらの機能処理部は、プログラム処理によってソフトウエア的に実現されるか、または、論理回路などのハードウェアにより実現される。
【0036】
物体認識部41は、全方位ライダ34の検出信号から取得される物体(車両、歩行者、建物、縁石などの障害物)までの距離の情報および単眼カメラ37により撮影された画像から、自動運転車1の周囲に存在する車両や歩行者などの物体を認識する。
【0037】
自己位置推定部42は、全方位ライダ34の検出信号から取得される点群データと高精度地
図46の点群データとをマッチングさせて、自動運転車1の位置(自己位置)を推定する。高精度地
図46のデータは、自動運転ECU31のマイコンに内蔵されたメモリに記憶されていてもよいし、自動運転ECU31に接続されたHDD(ハードディスクドライブ)などに記憶されていてもよい。また、自己位置推定部42は、その点群データのマッチングにより推定された自己位置とGPS受信機35が受信した測位信号に基づく自己位置とを統合させて、自己位置の推定精度を高める。
【0038】
周辺情報統合部43には、物体認識部41による物体の認識結果と、自己位置推定部42による自己位置の推定結果とが入力される。また、周辺情報統合部43には、高精度地図(ベクトル地図)46のデータが入力される。周辺情報統合部43は、高精度地図上に自動運転車1や障害物などを配置したデータを作成する。そして、周辺情報統合部43は、自動運転車1の走行経路上の障害物の有無を判断する。また、周辺情報統合部43は、地図情報や物体の認識情報を自動運転車1の車内に配設されたディスプレイなどのHMI(ヒューマンマシンインターフェース)47に出力する。
【0039】
経路計画部44は、周辺情報統合部43で高精度地図上に自動運転車1や障害物などを配置して作成されたデータから、自動運転車1を目標位置に移動させるための軌跡や速度を決定する。より具体的には、経路計画部44は、前方の分岐や右左折レーンなど等を考慮し、高精度地図内で自動運転車1がどのレーンを走行するか選択する。また、経路計画部44は、先行車や停止線などのレーン上の状況により、自動運転車1の加減速を計画する。また、経路計画部44は、自動運転車1を目標位置に移動させる経路などの情報をHMI47に出力する。
【0040】
車両制御部45は、経路計画部44により決定された軌跡や速度などに基づいて、自動運転車1の各部の動作を制御する指令を出力する。
【0041】
<レーンチェンジ処理>
図3は、レーンチェンジ処理の流れを示すフローチャートである。
図4は、自動運転車1のレーンチェンジ時の動きを図解的に示す図である。
【0042】
自動運転車1の走行中に、経路計画部44によりレーンチェンジ(車線変更)が決定されるか、または、ユーザがウィンカを作動させると、自動運転ECU31により、レーンチェンジの要求が発生したと判断されて、
図3に示されたレーンチェンジ処理が実行される。
【0043】
レーンチェンジ処理では、まず、レーンチェンジの実施前に、レーンチェンジを安全に実施できるか否かを確認する処理が行われる(ステップS1)。
【0044】
このレーンチェンジ実施前安全確認処理では、変更先の隣接レーンの前方における車両や静止物などの物標の有無が確認される。物標がない場合、隣接レーンの前方は安全であると判断される。物標がある場合、その物標が車両(車、バイク、トラックなど)であるか否かが判断される。物標が車両ではなく静止物である場合、隣接レーンの前方は安全ではないと判断される。物標が車両である場合、その車両と自動運転車1との距離が算出される。また、車両と自動運転車1との距離および相対速度から算出される衝突予測時間(TTC:Time To Collision)が算出される。そして、衝突予測時間が前方車両TTC閾値以上であり、かつ、前方の車両と自動運転車1との距離が前方車両距離閾値以上である場合、隣接レーンの前方は安全であると判断される。衝突予測時間が前方車両TTC閾値未満であるか、または、前方の車両と自動運転車1との距離が前方車両距離閾値未満である場合、隣接レーンの前方は安全ではないと判断される。
【0045】
また、変更先の隣接レーンの後方における車両の有無が確認される。車両がない場合、隣接レーンの後方は安全であると判断される。車両がある場合、その車両と自動運転車1との距離が算出される。また、車両と自動運転車1との距離および相対速度から算出される衝突予測時間が算出される。そして、衝突予測時間が後方車両TTC閾値以上であり、かつ、後方の車両と自動運転車1との距離が後方車両距離閾値以上である場合、隣接レーンの後方は安全であると判断される。衝突予測時間が後方車両TTC閾値未満であるか、または、後方の車両と自動運転車1との距離が後方車両距離閾値未満である場合、隣接レーンの後方は安全ではないと判断される。
【0046】
そして、変更先の隣接レーンの前方および後方ともに安全であると判断された場合には、安全確認がOKであると判断されて(ステップS2のYES)、レーンチェンジ実施処理が行われる(ステップS3)。
【0047】
レーンチェンジ実施処理では、
図4に示されるように、自動運転車1の経路が3つの部分、つまり元レーン直進部分、直線変更部分およびレーンチェンジ先直進部分に分けられる。そして、元レーン直進部分、直線変更部分およびレーンチェンジ先直進部分における自動運転車1の経路が決定される。元レーン直進部分については、自動運転車1が変更元のレーンをレーンチェンジの要求が発生してから一定時間走行する経路に決定される。直線変更部分については、変更元のレーンに対して自動運転車1の車速に応じた車線変更進路角度で変更先のレーンまで直線的な車線変更経路に決定される。レーンチェンジ先直進部分については、自動運転車1が変更先のレーンを一定時間走行する経路に決定される。そして、自動運転車1を決定された経路に沿って走行させることにより、自動運転車1のレーンチェンジが実施される。
【0048】
自動運転車1が車線変更経路に沿って走行することにより変更元のレーンから横方向に所定距離(たとえば、レーン幅の半分)だけ離れた位置(たとえば、変更先のレーンの車線を跨いだ位置)まで移動すると、レーンチェンジ実施中安全確認処理が実行される(ステップS4)。レーンチェンジ実施中安全確認処理の内容は、前述のレーンチェンジ実施前安全確認処理と同一であるから、その説明を省略する。
【0049】
レーンチェンジ実施中安全確認処理において、変更先の隣接レーンの前方および後方ともに安全であると判断された場合には、安全確認がOKであると判断されて(ステップS5のYES)、レーンチェンジ実施処理が再開される(ステップS6)。そして、レーンチェンジが完了すると、この一連のレーンチェンジ処理が終了される。
【0050】
一方、レーンチェンジ実施中安全確認処理において。変更先の隣接レーンの前方または後方の少なくとも一方が安全ではないと判断された場合には、安全確認がOKではないと判断されて(ステップS5のNO)、レーンチェンジキャンセル実施処理が行われる(ステップS7)。
【0051】
レーンチェンジキャンセル実施処理では、
図4に示されるように、自動運転車1の経路が3つの部分、つまりキャンセル直後直進部分、直線変更キャンセル部分およびキャンセル後直進部分に分けられる。そして、キャンセル直後直進部分、直線変更キャンセル部分およびキャンセル後直進部分における自動運転車1の経路が決定される。キャンセル直後直進部分については、自動運転車1が変更元のレーンから横方向に所定距離だけ離れた位置を保って一定時間走行する経路に決定される。直線変更キャンセル部分については、変更先(復帰元)のレーンに対して自動運転車1の車速に応じた車線変更進路角度で変更元(復帰先)のレーンまで直線的な車線変更経路に決定される。キャンセル後直進部分については、自動運転車1が変更元のレーンを一定時間走行する経路に決定される。そして、自動運転車1を決定された経路に沿って走行させることにより、自動運転車1のレーンチェンジキャンセルが実施される。
【0052】
その後、自動運転車1のレーンチェンジを所定時間禁止することが決定されて(ステップS8)、この一連のレーンチェンジ処理が終了される。
【0053】
<作用効果>
以上のように、自動運転車1のレーンチェンジの際の経路については、変更先のレーン(車線)における物標の有無とは関係なく、変更元のレーンから自動運転車1の車速に応じた車線変更進路角度で変更先のレーンまで直線的な車線変更経路が生成される。そのため、レーンチェンジ中に、自動運転車1が周囲の物標の動きなどに応じて速度調整や左右に操舵されることを抑制でき、自動運転車1の挙動が不安定になることを抑制できる。その結果、自動運転車1の挙動が不安定になることによる不安感をユーザに与えることを防止できる。また、自動運転車1が安定した挙動でレーン間を直線的に移動することにより、自動運転車1のレーンチェンジを周囲の自動運転車1に報知することができる。
【0054】
また、自動運転車1が車線変更経路上をレーンチェンジ前の位置から横方向に所定距離の位置まで移動したタイミングでレーンチェンジの継続の可否が判断されるので、自動運転車1がレーンチェンジ先のレーンまで直線的な車線変更経路をたどっても、自動運転車1が物標と衝突することを防止できる。
【0055】
レーンチェンジの継続が不可と判断された場合には、自動運転車1の車速に応じた車線変更進路角度で変更元(復帰先)のレーンまで直線的なキャンセル経路が生成される。そのため、自動運転車1がキャンセル経路に沿って変更前のレーンに戻る際にも、自動運転車1の挙動が不安定になることを抑制でき、ユーザに不安感を与えることを防止できる。また、自動運転車1が安定した挙動で変更前のレーンに直線的に戻ることにより、周囲の自動運転車1にレーンチェンジをキャンセルしたことを報知できる。
【0056】
さらに、自動運転車1が変更前のレーンに戻された後は、自動運転車1のレーンチェンジが所定時間禁止される。これにより、自動運転車1が変更元のレーンに戻った後すぐに、レーンチェンジが再び行われることを防止できる。その結果、自動運転車1のレーンチェンジおよびそのキャンセルが繰り返されることを抑制でき、その繰り返しにより自動運転車1の挙動が不安定になることを抑制できる。
【0057】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0058】
たとえば、前述の実施形態では、自動運転車1が車線変更経路上をレーンチェンジ前の位置から横方向に所定距離の位置まで移動したタイミングでレーンチェンジの継続の可否が判断されて、継続不可と判断された場合に、自動運転車1がキャンセル経路に沿って変更前のレーンに戻されるとした。これに限らず、レーンチェンジの継続が不可と判断された場合、自動運転車1が変更元のレーンから横方向に所定距離だけ離れた位置を保って一定時間走行した後、レーンチェンジの継続の可否が再び判断されて、継続可能と判断された場合には、レーンチェンジ実施処理が再開され、継続不可と判断された場合には、自動運転車1がキャンセル経路に沿って変更前のレーンに戻されてもよい。
【0059】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:自動運転車(車両)
31:自動運転ECU(車両制御装置、変更可否確認手段、車線変更経路生成手段、車線変更実行手段、継続可否確認手段、キャンセル経路生成手段、車線変更キャンセル手段、禁止手段)
32:ライダECU(外界認識手段)
33:単眼カメラECU(外界認識手段)
34:全方位ライダ(外界認識手段)
36:ライダ(外界認識手段)
37:単眼カメラ(外界認識手段)
41:物体認識部(外界認識手段)
44:経路計画部(車線変更経路生成手段、キャンセル経路生成手段)