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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】転落防止機構
(51)【国際特許分類】
   E01D 15/24 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
E01D15/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020028025
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021014776
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019129424
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶太朗
(72)【発明者】
【氏名】矢野 翔大
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-133369(JP,A)
【文献】特開2001-123415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0235437(US,A1)
【文献】登録実用新案第3074479(JP,U)
【文献】実開昭60-014118(JP,U)
【文献】特開2012-246717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルと、該テーブル側の一端が軸支持されて前記テーブルに対して上向きおよび下向きに傾斜動作する架橋と、を有する架橋装置に対して備え付けられる転落防止機構であり、
前記架橋の長手方向と平行に配置されるとともに前記テーブル側の一端が軸支持されて前記架橋の長手方向と平行のまま上向きおよび下向きに傾斜動作する平行リンクと、
前記架橋の他端に回動自在に連結されるとともに前記平行リンクの他端に回動自在に連結されて前記架橋および前記平行リンクが傾斜動作する際に水平方向に対する傾斜角度が一定に保たれる傾斜調整リンクと、
前記架橋の前記他端の側に上向きおよび下向きに傾斜動作可能に設けられ、水平方向に対する下向き傾斜の角度が前記傾斜調整リンクと連結する部材または前記傾斜調整リンクと連接する部位によって制限される一方で、目標設備との接触に応じて上向き傾斜の角度を変化して前記目標設備との衝突状態を防止する先端ステップと、を有する、
ことを特徴とする転落防止機構。
【請求項2】
前記先端ステップは、前記傾斜調整リンクと連結する可撓性部材によって前記下向き傾斜の角度が制限される、
ことを特徴とする請求項1に記載の転落防止機構。
【請求項3】
前記平行リンクの前記一端が軸支持される位置を前記平行リンクの長手方向に沿って移動させて所望の位置で固定する機構を有し、
前記平行リンクを介して前記傾斜調整リンクの前記傾斜角度を変化させて、前記先端ステップの前記下向き傾斜の角度が調節される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の転落防止機構。
【請求項4】
前記架橋に手摺が備え付けられ、
該手摺が、前記架橋の前記他端の側に、上端に配置される水平フレームと連接して下向きに傾斜する傾斜フレームを有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転落防止機構。
【請求項5】
前記先端ステップが前記目標設備に接地しているか否かに連動して動作する、ライトとスピーカとのうちの少なくとも一方を備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の転落防止機構。
【請求項6】
一端が支持されている架橋と、
前記架橋の他端の側に上向きおよび下向きに傾斜動作可能に設けられ、水平方向に対する下向き傾斜の角度が制限される一方で上向き傾斜は制限されない先端ステップと、
前記先端ステップに固定的に取り付けられて前記水平方向に対して上向きに傾斜する傾動制御部材と、
前記傾動制御部材の前記上向きに傾斜する先端部分の、前記架橋とは反対側に取り付けられる移動部材と、を有
前記傾動制御部材は、前記架橋が目標設備に接近して突き当たると、前記移動部材が前記目標設備の面上を上方に向かって移動して前記先端ステップを上向きに傾斜動作させる、
ことを特徴とする転落防止機構。
【請求項7】
前記傾動制御部材の、前記架橋とは反対側にクッション材が取り付けられる、
ことを特徴とする請求項6に記載の転落防止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶から洋上施設へと乗り移る際の架橋からの転落を防止する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
波浪環境において船舶から洋上施設へと乗り移る際の橋桁部の動揺を抑制して安定性を保とうとする可動式桟橋が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この可動式桟橋は、6自由度モーションベースにより支持された天板と、この天板の上面から横方向に延長された橋桁部とを備えた可動式桟橋であり、橋桁部が複数の分割体を長手方向に接続して構成され、長手方向に隣接する分割体同士を接続する少なくとも1つの水平回転機構と、長手方向に隣接する分割体同士を接続する少なくとも1つの上下回転機構とを備え、水平回転機構を中心にしてこの水平回転機構を介して接続される分割体を水平方向に回動可能にし、上下回転機構を中心にしてこの上下回転機構を介して接続される分割体を上下方向に回動可能にし、さらに、橋桁部の先端に設けたマグネットを洋上施設に吸着して接続するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-137451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、突発的な外乱の波動が生じた場合、橋桁部の先端が洋上設備に対してマグネットで連結されているために橋桁部の先端部や分割体同士の接続部などを破損するおそれがあり、その場合には、乗り移ろうとしていた作業員が転落したり、橋桁部の先端が洋上設備に衝突したりするという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、瞬時的で不規則な波浪が生じた場合でも架橋の先端部が目標設備から離脱することを防いで作業員の転落や架橋先端部の衝突を防止することが可能な転落防止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、テーブルと、該テーブル側の一端が軸支持されて前記テーブルに対して上向きおよび下向きに傾斜動作する架橋と、を有する架橋装置に対して備え付けられる転落防止機構であり、前記架橋の長手方向と平行に配置されるとともに前記テーブル側の一端が軸支持されて前記架橋の長手方向と平行のまま上向きおよび下向きに傾斜動作する平行リンクと、前記架橋の他端に回動自在に連結されるとともに前記平行リンクの他端に回動自在に連結されて前記架橋および前記平行リンクが傾斜動作する際に水平方向に対する傾斜角度が一定に保たれる傾斜調整リンクと、
前記架橋の前記他端の側に上向きおよび下向きに傾斜動作可能に設けられ、水平方向に対する下向き傾斜の角度が前記傾斜調整リンクと連結する部材または前記傾斜調整リンクと連接する部位によって制限される一方で、目標設備との接触に応じて上向き傾斜の角度を変化して前記目標設備との衝突状態を防止する先端ステップと、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の転落防止機構において、前記先端ステップは、前記傾斜調整リンクと連結する可撓性部材によって前記下向き傾斜の角度が制限される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の転落防止機構において、前記平行リンクの前記一端が軸支持される位置を前記平行リンクの長手方向に沿って移動させて所望の位置で固定する機構を有し、前記平行リンクを介して前記傾斜調整リンクの前記傾斜角度を変化させて、前記先端ステップの前記下向き傾斜の角度が調節される、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載の転落防止機構において、前記架橋に手摺が備え付けられ、該手摺が、前記架橋の前記他端の側に、上端に配置される水平フレームと連接して下向きに傾斜する傾斜フレームを有する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4に記載の転落防止機構において、前記先端ステップが前記目標設備に接地しているか否かに連動して動作する、ライトとスピーカとのうちの少なくとも一方を備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、一端が支持されている架橋と、前記架橋の他端の側に上向きおよび下向きに傾斜動作可能に設けられ、水平方向に対する下向き傾斜の角度が制限される一方で上向き傾斜は制限されない先端ステップと、前記先端ステップに固定的に取り付けられて前記水平方向に対して上向きに傾斜する傾動制御部材と、前記傾動制御部材の前記上向きに傾斜する先端部分の、前記架橋とは反対側に取り付けられる移動部材と、を有前記傾動制御部材は、前記架橋が目標設備に接近して突き当たると、前記移動部材が前記目標設備の面上を上方に向かって移動して前記先端ステップを上向きに傾斜動作させる、ことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記傾動制御部材の、前記架橋とは反対側にクッション材が取り付けられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、波浪の影響によって架橋の先端部(テーブルと反対側の端部)が目標設備に対して上方に移動した場合には、傾斜調整リンクと連結する部材または連接する部位の働きにより、架橋の先端部に設けられる先端ステップが所定の傾斜角度よりも下向きに傾斜することが防止されるため、目標設備へと移ろうとして先端ステップに足を乗せている作業員がバランスを崩したり足を踏み外したりして架橋の先端から転落することが防止され、延いては、安全性を向上させることが可能となる。また、波浪の影響によって架橋の先端部が目標設備に対して下方に移動した場合には、架橋の先端部に設けられる先端ステップは上向きの傾斜は制限されず、先端ステップが上向きに傾斜することが許容されるため、先端ステップと目標設備との接触に応じて先端ステップの上向きの傾斜の角度が自由に変化して衝突状態となることが防止され、延いては、目標設備や先端ステップの破損を防止することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、先端ステップの下向き傾斜の角度を制限する仕組みを比較的簡易に構成することが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、先端ステップの下向き傾斜の角度が調節され得るので、架橋装置や目標設備に纏わる条件に応じて先端ステップの下向き傾斜の角度を適切に調節することができ、使い易さや汎用性を向上させることが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、架橋の先端側に於いて手摺が下向きに傾斜するフレームを有して直角部を有しない形状に形成されているので、架橋が下向きに傾斜した際に手摺の上側部分が前方へと突き出ることがなく、手摺が目標設備に突き当たって前記設備を破損したり、手摺と目標設備との間に作業員が挟まれたりする事態を防止することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、先端ステップが目標設備に接地しているか否かを明らかにすることができるので、作業員の安全を一層確実に確保することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、波浪の影響などによって架橋の先端部が上陸目標設備へと前後方向において接触/衝突した場合には、上向き傾動助勢機構(特に、傾動制御部材)の働きにより、架橋の先端部に設けられる傾動制御部材とともに先端ステップが上向きに傾斜動作することによって先端ステップに対して下降角度よりもさらに下向きに傾斜動作させようとする力が加えられることが防止されるため、先端ステップや上陸目標設備の破損を防止することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、傾動制御部材が目標設備へと直接接触したり衝突したりすることがないので、先端ステップや上陸目標設備の破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施の形態1に係る転落防止機構が備え付けられる架橋装置の全体構造を示す側面図である。
図2図1に示す架橋装置の斜視図である。
図3】実施の形態1に係る転落防止機構の動作を説明する模式図であり、架橋の長手方向が水平方向に沿っている状態を示す図である。
図4図3に示す転落防止機構の動作を説明する模式図であり、架橋が上向きに傾斜動作した状態を示す図である。
図5図3に示す転落防止機構の動作を説明する模式図であり、架橋が下向きに傾斜動作した状態を示す図である。
図6図3に示す転落防止機構の先端ステップの動作を説明する模式図であり、(A)は可撓性部材が張った状態で先端ステップが下降角度の姿勢であるときの図であり、(B)は先端ステップが洋上施設に乗り上げて上向きに傾斜動作した状態を示す図である。
図7図3に示す転落防止機構の先端ステップの下降角度の調節の仕方を説明する図であり、(A)は先端ステップが下向き傾斜している状態を示す図であり、(B)は先端ステップが水平の状態を示す図である。
図8】この発明の実施の形態2に係る転落防止機構の側面図である。
図9図8に示す転落防止機構の斜視図である。
図10図8に示す転落防止機構の底面図である。
図11】実施の形態1に係る転落防止機構の動作を説明する模式図である。
図12】実施の形態2に係る転落防止機構の動作を説明する模式図であり、前側車輪が上陸目標設備に接触している状態を示す図である。
図13】実施の形態2に係る転落防止機構の動作を説明する模式図であり、後ろ側車輪が上陸目標設備に接触している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。以下の説明では、各図に表す矢印方向の通りに前後方向、左右方向、および上下方向を定義する。
【0023】
この転落防止機構1は、例えば船舶から洋上施設へと作業員が乗り移る際に使用される架橋装置10に対して備え付けられる。なお、洋上施設としては、具体的には例えば、海上に設置される洋上風力発電設備や海底鉱物掘削プラットホームなどが挙げられる。
【0024】
転落防止機構1が備え付けられる架橋装置10は、特定の形態や機能を備えるものに限定されるものではなく、船舶と洋上施設の上陸目標との間に架け渡される架橋を有する種々の架橋装置が選択され得る。下記の実施の形態では、図1および図2に全体構造を示す架橋装置10に転落防止機構1が備え付けられる。下記の実施の形態に係る架橋装置10は、船舶の甲板に設置される動揺補正機構11と、該動揺補正機構11の上部に設置されるメインテーブル12と、該メインテーブル12に連結される架橋14と、該架橋14を傾斜動作(揺動)させる揺動操作機構17とを有する。なお、架橋14の長手方向が前後方向である。また、下記の実施の形態では、架橋装置10の架橋14の左側に転落防止機構1が設けられるとともに右側に揺動操作機構17が設けられるようにしているが、架橋14の右側に転落防止機構1が設けられるようにしてもよく、或いは、架橋14の左側および右側に左右一対のものとして転落防止機構1が設けられるようにしてもよい。
【0025】
動揺補正機構11は、ヘキサポッド型の構成を備え、波浪による船体の揺れを補正してメインテーブル12を水平に維持するための仕組みである。動揺補正機構11は、船舶の甲板に固定されて設置されるベースフレーム111と、一端がユニバーサルジョイントを介してベースフレーム111に連結されるとともに他端がユニバーサルジョイントを介してメインテーブル12に連結される6本の伸長自在のアクチュエータ112とを有する。
【0026】
ベースフレーム111は、例えば鋼材が用いられて形成され、船舶の甲板に対して強固に固定されて設置される。
【0027】
各アクチュエータ112は、例えば電動シリンダによって構成され、制御装置(図示していない)によって各々制御されて伸縮動作する。
【0028】
6本のアクチュエータ112により、動揺補正機構11は6つの自由度を有する6軸システムとして動作する。具体的には、動揺補正機構11は、船舶が波浪によって前後・左右・上下方向に揺動した際に、制御装置によって揺動を検知して各アクチュエータ112を伸縮制御することによってメインテーブル12を水平に維持するように動作する。
【0029】
メインテーブル12は、平面視において多角形の板状に形成され、動揺補正機構11の6本のアクチュエータ112の伸縮によって板面の傾斜の方向や程度が操作され得るように支持される。図に示す例では、メインテーブル12上のスペースを拡張するための補助テーブル121が取り付けられている。メインテーブル12や補助テーブル121は、例えばアルミフレームが用いられたりハニカム構造が採用されたりなどして、軽量に形成されることが好ましい。
【0030】
メインテーブル12の上面および補助テーブル121の上面の左右縁部それぞれに、メインテーブル12と補助テーブル121とに跨ってテーブル手摺13が取り付けられる。
【0031】
架橋14は、メインテーブル12と洋上施設の上陸目標との間に架け渡される通路として機能するものであり、長板状に形成される。
【0032】
架橋14は、メインテーブル12側の端部(即ち、後端部)が、左右方向に沿って配置される架橋後端回転軸16を介して軸支持されてメインテーブル12の前端部に対して回動可能に連結される。これにより、架橋14は、架橋後端回転軸16を回転中心として、メインテーブル12の板面に対して上向きに傾斜動作可能である(この場合、メインテーブル12からみて仰角に傾斜する)とともに下向きに傾斜動作可能である(この場合、メインテーブル12からみて俯角に傾斜する)ように、メインテーブル12に対して取り付けられる。架橋14は、例えばアルミニウムや繊維強化プラスチックが用いられるなどして、軽量に形成されることが好ましい。
【0033】
架橋14の上面の左右縁部それぞれに、架橋手摺15が取り付けられる。架橋手摺15は、上端に配置される水平フレーム15aと、該水平フレーム15aの前端と連接して下向きに傾斜する第1傾斜フレーム15bと、該第1傾斜フレーム15bの前端と連接してさらに下向きに傾斜する第2傾斜フレーム15cとを有する。すなわち、下記の実施の形態では、架橋手摺15は、前側部分が、上端の水平フレームと前端の垂直フレームとが交差して上側部分に直角部を有する形状ではなく、下向きに傾斜するフレーム15b,15cによって直角部を有しない形状に形成される。なお、第1傾斜フレーム15bおよび第2傾斜フレーム15cは、先端ステップ2に足を乗せている作業員の手が届く範囲に配設されることが好ましい。また、下向きに傾斜するフレームは、2つに限定されるものではなく、1つでもよく、或いは、3つ以上でもよい。また、下向きに傾斜するフレームは、直線状に限定されるものではなく、曲線状であってもよい。
【0034】
揺動操作機構17は、波浪による船体の揺れに応じて上下運動を行う架橋14の先端部が洋上施設の上陸目標と衝突したり上陸目標から大きく離れたりしないように、架橋14をメインテーブル12に対して傾斜動作させるための仕組みである。揺動操作機構17は、操作アーム18と、該操作アーム18を動作させる駆動装置19とを有する。
【0035】
操作アーム18は、側面視において屈曲部18aを有する山形(言い換えると、上下逆向きのV字形)に形成され、屈曲部18aを挟んで前側の第1アーム18bと後ろ側の第2アーム18cとを有する。第1アーム18bの先端部(下端部)が架橋14の長手方向における中央寄りの位置に固定されて取り付けられ、第2アーム18cの先端部(下端部)が架橋後端回転軸16に回動可能に連結される。
【0036】
駆動装置19は、操作アーム18を操作して架橋14をメインテーブル12に対して傾斜動作させるための駆動源である。駆動装置19は、例えば電動シリンダによって構成され、制御装置(図示していない)によって制御されて伸縮動作し、それによって操作アーム18を回動動作させる。駆動装置19は、シリンダチューブ19aと、該シリンダチューブ19aに対して進退自在のピストンロッド19bとを有する。
【0037】
駆動装置19は、メインテーブル12と操作アーム18の屈曲部18aとの間に介在するように配設される。駆動装置19のシリンダチューブ19aは、後端部が、メインテーブル12の上面に対して、ピストンロッド19b側を上方にして傾斜した姿勢で、左右方向に沿って配置される回転軸を介して揺動自在に取り付けられる。駆動装置19のピストンロッド19bは、先端部が、操作アーム18の屈曲部18aに、左右方向に沿って配置される回転軸を介して回動自在に連結される。
【0038】
駆動装置19が収縮動作すると、操作アーム18の屈曲部18aがメインテーブル12側へと引き込まれて、架橋後端回転軸16に連結されている第2アーム18cの先端部を中心として操作アーム18が回動し、第1アーム18bの先端部が固定されている架橋14がメインテーブル12の板面に対して上向きに傾斜動作する。
【0039】
一方、駆動装置19が伸長動作すると、操作アーム18の屈曲部18aがメインテーブル12側から押し出されて、架橋後端回転軸16に連結されている第2アーム18cの先端部を中心として操作アーム18が回動し、第1アーム18bの先端部が固定されている架橋14がメインテーブル12の板面に対して下向きに傾斜動作する。
【0040】
そして、揺動操作機構17は、波浪によって船舶が上下方向に揺動した際に、制御装置によって揺動を検知して駆動装置19を伸縮制御することによって架橋14の先端部が洋上施設の上陸目標と衝突したり上陸目標から大きく離れたりすることを防ぐように動作する。
【0041】
波浪による船体の揺れに応じて制御装置が動揺補正機構11の各アクチュエータ112を制御したり揺動操作機構17の駆動装置19を制御したりすることにより、メインテーブル12を水平に維持しつつ架橋14の先端部と洋上施設の上陸目標との間の距離を適切に保つための仕組みが備えられる。なお、主として、動揺補正機構11によってメインテーブル12を水平に維持しながら、揺動操作機構17によって架橋14の先端部の高さが調節される。
【0042】
メインテーブル12や架橋14の姿勢を操作するための仕組みは、特定の機序に限定されるものではなく、種々の機序が選択され得る。そのような仕組みとして、例えば、測距センサを用いて非接触センシングを行う機序が選択され得る。
【0043】
非接触センシングは、例えば、架橋14の先端部に測距センサとしてのレーザセンサ(図示していない)が設置され、該レーザセンサによって洋上施設の上陸目標までの距離を測定して架橋14の先端部と洋上施設の上陸目標との間の距離を適切に保つように制御装置と協働して機能するものとして構成される。前記距離は、具体的には、水平方向の距離としての前後方向の距離および左右方向の距離、ならびに、上下方向の距離(即ち、高低差)である。
【0044】
制御装置は、例えば下記の処理を所定の時間間隔で繰り返し行うことにより、架橋14の先端部と洋上施設の上陸目標との間の距離を適切に保つことを企図する。
1)レーザセンサによって測定された架橋14の先端部と洋上施設の上陸目標との間の各方向(即ち、前後方向、左右方向、および上下方向)の距離と各方向の許容範囲とをそれぞれ比較する。
2)上記で測定された各方向の距離が許容範囲から外れている場合には、各方向の距離が許容範囲内になるようにするための、動揺補正機構11の動作や揺動操作機構17の動作を演算する。
3)上記で演算された結果に基づいて、動揺補正機構11の各アクチュエータ112と揺動操作機構17の駆動装置19とのうちのどちらか一方もしくは両方に対して駆動指示信号を出力する。
【0045】
特に、前後方向の距離が前後方向の許容範囲から外れていたり左右方向の距離が左右方向の許容範囲から外れていたりする場合は、動揺補正機構11に対して駆動指示信号を出力して6軸の各アクチュエータ112を駆動させる。一方、上下方向の距離が上下方向の許容範囲から外れている場合は、揺動操作機構17に対して駆動指示信号を出力して駆動装置19を駆動させる。
【0046】
なお、各方向の許容範囲は、特定の値に限定されるものではなく、例えば船舶、洋上施設、波浪の状態などの各種条件が考慮されるなどした上で、上限値および下限値が適宜設定される。
【0047】
ここで、不規則で突発的な波浪による船体の揺動に対して、制御装置や駆動装置19の性能の限界により、架橋14の先端部の上下運動に瞬時に対応して前記先端部と洋上施設の上陸目標との間の上下方向の距離(即ち、高低差)を常に一定に保つことは困難である。そして、上下方向の距離が変化した場合には架橋14の先端部と洋上施設の上陸目標との高低差が変化して作業員がバランスを崩したり足を踏み外したり、さらには転落したりするおそれがあり、また、架橋14の先端部が洋上施設に衝突するおそれがある。
【0048】
(実施の形態1)
そこで、この実施の形態に係る転落防止機構1は、メインテーブル12と、該メインテーブル12側の一端が軸支持されてメインテーブル12に対して上向きおよび下向きに傾斜動作する架橋14と、を有する架橋装置10に対して備え付けられる転落防止機構1であり、架橋14の長手方向L14と平行に配置されるとともにメインテーブル12側の一端が軸支持されて架橋14の長手方向L14と平行のまま上向きおよび下向きに傾斜動作する平行リンク4と、架橋14の他端に回動自在に連結されるとともに平行リンク4の他端に回動自在に連結されて架橋14および平行リンク4が傾斜動作する際に水平方向に対する傾斜角度が一定に保たれる傾斜調整リンク7と、架橋14の前記他端の側に上向きおよび下向きに傾斜動作可能に設けられ、水平方向に対する下向き傾斜の角度が傾斜調整リンク7と連結する可撓性部材81によって制限される一方で上向き傾斜は制限されない先端ステップ2と、を有する、ようにしている。
【0049】
なお、図3図7は、この発明の実施の形態1に係る転落防止機構1の概略構成を説明するための模式図であり、各部の詳細構造や相互の寸法関係を厳密に表すものではない。
【0050】
先端ステップ2は、平板状に形成されて架橋14の前端に取り付けられ、架橋14の先端部と洋上施設の上陸目標との間に高低差がある場合に、架橋14と上陸目標との間に介在して作業員が上陸目標へと移り易くするための構造である。
【0051】
先端ステップ2は、架橋14側の端部(即ち、後端部)が、左右方向に沿って配置される架橋前端回転軸3を介して軸支持されて架橋14の前端部に対して回動可能に連結される。これにより、先端ステップ2は、架橋前端回転軸3を回転中心として、架橋14の板面に対して上向きおよび下向きに傾斜動作可能であるように、つまり上下傾斜の自由度を持って、架橋14に対して取り付けられる。先端ステップ2の大きさは、特定の寸法に限定されるものではなく、例えば架橋14や洋上施設の上陸目標の構造が考慮されるなどした上で適当な寸法に適宜設定される。先端ステップ2の前後方向の寸法は、あくまで一例として挙げると、例えば40~70cm程度に設定され得る。
【0052】
先端ステップ2と洋上施設の上陸目標とが接触した際のそれぞれの損傷を防止するため、先端ステップ2の前端面に樹脂製の前面クッション21が取り付けられ、また、下面の前縁部に樹脂製の下面クッション22が取り付けられている。
【0053】
平行リンク4は、長手方向/軸心方向L4が架橋14の長手方向L14と平行になるように設けられた上でメインテーブル12に対して上向きおよび下向きに揺動するリンクであり、メインテーブル12との組み合わせで一組の平行リンクを構成する。平行リンク4は、メインテーブル12に設けられる平行リンク連結機構5を介して一端が回動可能であるように構成されて、メインテーブル12に対して上向きおよび下向きに揺動自在に設けられる。図に示す例では、平行リンク4は、架橋14の左側方近傍位置に配設される。
【0054】
平行リンク連結機構5は、メインテーブル12の上面に対して垂直に起立して設けられるリンク連結柱51と、該リンク連結柱51の前面部に設けられる連結スライダ52と、メインテーブル12の上面に固定されて取り付けられてリンク連結柱51を支持するガイドレール53とを有する。
【0055】
連結スライダ52は、リンク連結柱51の前面部に対してスライド可能に設けられ、リンク連結柱51の長手方向(即ち上下方向)に沿って移動可能であり且つ任意の位置において固定可能であるように構成される。また、連結スライダ52に、左右方向に沿って配置されるリンク後端回転軸6が備えられる。
【0056】
ガイドレール53は、平行リンク4の長手方向/軸心方向L4および架橋14の長手方向L14に沿って(即ち、前後方向に沿って)配置されて、メインテーブル12の上面に対して固定されて設置される。その上で、リンク連結柱51は、該リンク連結柱51の下部がガイドレール53の上面部に対してスライド可能に設けられ、ガイドレール53の長手方向(即ち前後方向)に沿って移動可能であり且つ任意の位置において固定可能であるように構成される。
【0057】
平行リンク4のうちのメインテーブル12側の端部(即ち、後端部)がリンク後端回転軸6を介して軸支持されて平行リンク連結機構5に対して回動可能に連結され、これにより、平行リンク4は、リンク後端回転軸6を回転中心として、メインテーブル12に対して揺動自在であるように構成される。図に示す例では、架橋後端回転軸16の上方位置に、リンク後端回転軸6が設けられる。
【0058】
先端ステップ2は、上下傾斜の自由度を持ち、上下の向きに傾斜動作自在である一方で、下向き傾斜の角度が所定の角度で制限されるように構成される。先端ステップ2の下向き傾斜の角度を制限するための仕組みとして、傾斜調整リンク7と、傾斜制限部8とが設けられる。
【0059】
傾斜調整リンク7は架橋前端回転軸3に回動可能に連結され、これにより、傾斜調整リンク7は架橋14に対して回動可能に設けられ、また、傾斜調整リンク7と先端ステップ2とが相互に回動可能に構成される。
【0060】
また、平行リンク4のうちの先端ステップ2側の端部(即ち、前端部)が、左右方向に沿って配置されるリンク前端回転軸9を介して、架橋前端回転軸3との連結位置の上方位置において、傾斜調整リンク7に対して相互に回動可能に連結される。
【0061】
ここで、架橋14の架橋後端回転軸16の回転軸心から架橋前端回転軸3の回転軸心までの長さと、平行リンク4のリンク後端回転軸6の回転軸心からリンク前端回転軸9の回転軸心までの長さとは、同じ寸法に設定される。なお、平行リンク4の長手方向/軸心方向L4と架橋14の長手方向L14とは平行になるように設けられているので、架橋後端回転軸16の回転軸心からリンク後端回転軸6の回転軸心までの側面視における距離と、架橋前端回転軸3の回転軸心からリンク前端回転軸9の回転軸心までの側面視における距離とは、同じ寸法になる。つまり、架橋後端回転軸16、リンク後端回転軸6、架橋前端回転軸3、およびリンク前端回転軸9は四節平行リンクの各節(回転軸)として機能し、したがって、架橋14と平行リンク4とは相互に平行のままで傾斜動作する。
【0062】
水平方向Hと傾斜調整リンク7の長手方向とがなす角度θ1のことを「初期角度」と呼ぶ。初期角度θ1は、特定の値に限定されるものではなく、例えば40°~120°程度に設定される。図1図5に示す例では、初期角度θ1が水平方向Hに対して上向き傾斜70°に設定されている。
【0063】
平行リンク4の前端部が傾斜調整リンク7に連結された状態で平行リンク4の長手方向L4が架橋14の長手方向L14と平行になるように、平行リンク連結機構5の連結スライダ52により、平行リンク4の後端部の連結位置がリンク連結柱51の長手方向に沿って調節される。そして、平行リンク4の長手方向L4と架橋14の長手方向L14とが相互に平行になっている状態において水平方向Hと傾斜調整リンク7の長手方向とがなす角度が初期角度θ1になる。
【0064】
傾斜制限部8は、傾斜調整リンク7に対する(延いては、水平方向に対する)先端ステップ2の下向き傾斜の角度を所定の角度で制限するための機序である。傾斜制限部8は、可撓性部材81とダンパー82とを有する。ダンパー82は、取付け金具を介して先端ステップ2の左側面に固定されて取り付けられる。
【0065】
可撓性部材81は、傾斜調整リンク7と先端ステップ2との間に介在して、傾斜調整リンク7に対する先端ステップ2の下向きの傾斜の程度を制限するための部材である。可撓性部材81は、可撓性・柔軟性を備えるとともに作業員が乗った状態の先端ステップ2を支持し得る程度の強度を有し且つ伸縮しない(もしくは殆ど伸縮しない)材料が用いられて形成され、具体的には例えばワイヤーロープが用いられて形成される。
【0066】
可撓性部材81の一端は傾斜調整リンク7の上端寄りの位置に連結され、他端はダンパー82に連結される。これにより、可撓性部材81が張った状態で、傾斜調整リンク7に対する先端ステップ2の下向き傾斜の角度が制限される。
【0067】
水平方向Hと先端ステップ2の長手方向とがなす角度θ2のことを「下降角度」と呼ぶ。下降角度θ2は、特定の値に限定されるものではなく、例えば0°~40°程度に設定される。図1図5に示す例では、下降角度θ2が水平方向Hに対して下向き傾斜20°に設定されている。
【0068】
転落防止機構1は、先端ステップ2の接地の状況に応じて動作して先端ステップ2が洋上施設の上陸目標に接地しているか否かを作業員に知らせる仕組みを備えるようにしてもよい。この実施の形態では、先端ステップ2の下面の前縁部に取り付けられている下面クッション22に対してひずみゲージまたは圧力センサが備え付けられるとともに、前記ゲージ/センサから出力される信号に応じて作動するライト20が架橋手摺15の前端寄りの位置に備え付けられる。そして、前記ゲージ/センサによる検知結果に基づいて、先端ステップ2が洋上施設の上陸目標に接地していないときにはライト20が赤色に点灯し(または消灯し)、先端ステップ2が洋上施設の上陸目標に接地しているときにはライト20が青色に点灯するように構成される。なお、ライト20を備える代わりに、或いは、ライト20を備えるとともに、先端ステップ2の接地の状況に応じて動作するスピーカを備え、先端ステップ2が洋上施設の上陸目標に接地しているか否かを知らせる音が発せられるようにしてもよい。
【0069】
次に、上記の構成を備える実施の形態1の転落防止機構1の作用などについて説明する。
【0070】
架橋14の長手方向L14が水平方向Hに沿っているとき、傾斜調整リンク7が初期角度θ1の姿勢になっているとともに、先端ステップ2が下降角度θ2の姿勢になっている(図3)。
【0071】
架橋14が架橋後端回転軸16を回転中心として上向きに傾斜動作すると、架橋14の前端部に連結されている傾斜調整リンク7が上方へと移動し、傾斜調整リンク7に連結されている平行リンク4も上向きに傾斜動作する(図4)。また、架橋14が架橋後端回転軸16を回転中心として下向きに傾斜動作すると、架橋14の前端部に連結されている傾斜調整リンク7が下方へと移動し、傾斜調整リンク7に連結されている平行リンク4も下向きに傾斜動作する(図5)。
【0072】
このとき、架橋後端回転軸16、リンク後端回転軸6、架橋前端回転軸3、およびリンク前端回転軸9は四節平行リンクの各節(回転軸)として機能して架橋14と平行リンク4とは相互に平行のままで傾斜動作し、この構成により、架橋14がどのような傾斜角であっても傾斜調整リンク7の傾斜の程度は変化することなく初期角度θ1の姿勢が維持される(図4図5)。
【0073】
傾斜調整リンク7について初期角度θ1の姿勢が維持されることにより、可撓性部材81が張った状態における先端ステップ2についての下降角度θ2の姿勢が維持される。したがって、架橋14がどのような傾斜角であっても先端ステップ2の傾斜の程度は変化することがなく、架橋14から洋上施設の上陸目標へと移ろうとする作業員の足場が安定する。
【0074】
ここで、架橋手摺15について、上端の水平フレームと前端の垂直フレームとが交差して前側の上側部分に直角部を有する形状の場合には、架橋14が下向きに傾斜動作すると前記直角部が前方へと突き出るので、前記直角部が洋上施設側の設備に突き当たって前記設備を破損したり、前記直角部と洋上施設側の設備との間に作業員が挟まれたりするおそれがある。これに対し、この実施の形態では、架橋手摺15が上端の水平フレーム15aから下向きに傾斜する第1傾斜フレーム15bおよび第2傾斜フレーム15cを有して直角部を有しない形状に形成されているので、架橋14が下向きに傾斜した際に架橋手摺15の前側の上側部分が前方へと突き出ることがなく、架橋手摺15の前端部が洋上施設側の設備に突き当たって前記設備を破損したり、架橋手摺15の前端部と洋上施設側の設備との間に作業員が挟まれたりすることが防止される。
【0075】
また、可撓性部材81が張った状態で先端ステップ2が下降角度θ2の姿勢であるとき(図6(A))、不規則で突発的な波浪による船体の揺動によって架橋14が下向きに移動した際に、駆動装置19による操作が間に合わずに架橋14の先端部が洋上施設に接触した(言い換えると、乗り上げた)場合には、先端ステップ2が架橋前端回転軸3を回転中心として上向きに傾斜動作する(図6(B))。すなわち、先端ステップ2は架橋前端回転軸3を回転中心として架橋14に対して回動自在であるとともに傾斜調整リンク7と先端ステップ2とが相互に回動自在であり、かつ、傾斜制限部8の可撓性部材81によって先端ステップ2の下向き傾斜の角度が所定の角度(下降角度θ2)で制限される一方で先端ステップ2の上向きの傾斜は制限されないので、下面クッション22が洋上施設の上陸目標設備Tに接触した状態で先端ステップ2が上向きに自由に傾斜動作して先端ステップ2と上陸目標設備Tとが衝突して破損することが防止される。なお、図6(B)に示す状態では、可撓性・柔軟性を備える可撓性部材81は単に緩んで撓んだ状態になるだけであり、先端ステップ2が上向きに傾斜動作する際の障害にはならない。
【0076】
なお、先端ステップ2が上向きに傾斜動作した状態から架橋14の先端部と洋上施設の上陸目標設備Tとの間の上下方向の距離が広がると、先端ステップ2は、自由に下向きに傾斜動作し、可撓性部材81が張って下向き傾斜の角度が所定の角度(下降角度θ2)になった姿勢で停止する。このとき、可撓性部材81が連結されているダンパー82の働きにより、先端ステップ2が下向きに傾斜動作して所定の角度(下降角度θ2)で停止させられる際の衝撃が吸収されて緩和される。
【0077】
ここで、先端ステップ2の下降角度θ2は、平行リンク連結機構5の働きによって調節される。具体的には例えば、先端ステップ2の傾斜の程度を、下降角度θ2である状態から、下降角度θ2よりも小さくしたい場合にはリンク連結柱51をガイドレール53の長手方向に沿って後方へと移動させ、逆に、下降角度θ2よりも大きくしたい場合にはリンク連結柱51をガイドレール53の長手方向に沿って前方へと移動させる。具体的には例えば、図7(A)に示すように傾斜調整リンク7の初期角度θ1が上向き傾斜(仰角)70°であるとともに先端ステップ2の下降角度θ2が下向き傾斜(俯角)20°である状態から、図7(B)に示すように、リンク連結柱51を後方へと後退距離Dxだけ移動させると、連結スライダ52を介してリンク連結柱51に連結されている平行リンク4の前端部が同じ距離Dxだけ後方へと移動し、これによって傾斜調整リンク7の傾斜が引き起こされ(初期角度θ1=90°)、可撓性部材81を介して先端ステップ2の傾斜の程度が変化する(下降角度θ2=0°)。このとき、平行リンク4の長手方向L4が架橋14の長手方向L14と平行になるように、平行リンク連結機構5の連結スライダ52により、平行リンク4の後端部の連結位置がリンク連結柱51の長手方向に沿って調節される。
【0078】
この実施の形態1に係る転落防止機構1によれば、波浪の影響によって架橋14の先端部が上陸目標に対して上方に移動した場合には、傾斜制限部8(特に、可撓性部材81)の働きにより、架橋14の先端部に設けられる先端ステップ2が所定の傾斜角度(下降角度θ2)よりも下向きに傾斜することが防止されるため、上陸目標へと移ろうとして先端ステップ2に足を乗せている作業員がバランスを崩したり足を踏み外したりして架橋14の先端から転落することが防止され、延いては、安全性を向上させることが可能となる。また、波浪の影響によって架橋14の先端部が上陸目標に対して下方に移動した場合には、架橋14の先端部に設けられる先端ステップ2は上向きの傾斜は制限されず、先端ステップ2が上向きに傾斜することが許容されるため、先端ステップ2と上陸目標設備Tとの接触に応じて先端ステップ2の上向き傾斜の角度が自由に変化して衝突状態となることが防止され、延いては、上陸目標設備Tや先端ステップ2の破損を防止することが可能となる。
【0079】
(実施の形態2)
図8図13は、この発明の実施の形態2に係る転落防止機構1を示す図である。この実施の形態2では、主に、転落防止機構1の先端ステップ2に上向き傾動助勢機構30が設けられている点で上記の実施の形態1と構成が異なる。この実施の形態2の説明では、上記の実施の形態1と同等の構成については同一符号を付することでその説明を省略する。なお、この実施の形態2の説明では、先端ステップ2が架橋前端回転軸3を回転中心として架橋14の板面に対して上向きに回動して傾斜する動作のことを「傾動」と表現する。
【0080】
なお、図11図13は、この発明の実施の形態2に係る転落防止機構1の概略構成を説明するための模式図であり、各部の詳細構造や相互の寸法関係を厳密に表すものではない。
【0081】
上記の実施の形態1に係る転落防止機構1については、例えば、不規則で突発的な波浪による船体の揺動に対して、制御装置(図示していない)や駆動装置19の性能の限界により、架橋14の前端に取り付けられている先端ステップ2の前端(図に示す例では具体的には、前面クッション21)が洋上施設の上陸目標設備Tへと前後方向において接触/衝突する事態も考えられる。この際、先端ステップ2は、架橋前端回転軸3を回転中心として架橋14に対して回動自在であるところ、傾斜制限部8の可撓性部材81によって下向き傾斜の角度が所定の角度(即ち、下降角度θ2)で制限される一方で、上向きの傾斜は制限されない。このため、可撓性部材81が張った状態で先端ステップ2が下降角度θ2である姿勢から、上向きに傾斜動作することはできる一方で、さらに下向きに傾斜動作することはできない(図11参照)。
【0082】
ここで、架橋14の長手方向L14が水平方向Hに沿っていて傾斜調整リンク7が初期角度θ1の姿勢になっているとともに先端ステップ2が下降角度θ2の姿勢になっている状態で(図11参照)、上陸目標設備Tのうちの、先端ステップ2(特に、前面クッション21)が前後方向において接触/衝突する可能性がある面Tsに沿う方向DTにおいて、前面クッション21が前記面Tsへと当接する位置21Tが架橋前端回転軸3の軸心位置よりも下方に位置する、すなわち、前面クッション21が前記面Tsへと当接する位置21Tが架橋前端回転軸3の軸心から前記面Tsへと下ろした垂線の足の位置3Tよりも下方に位置する。これにより、上陸目標設備Tへと先端ステップ2が接触/衝突したとき、先端ステップ2に発生する力Fは、架橋前端回転軸3の下方を通る方向に働く。このため、先端ステップ2に対してこれを下向きに押し下げる力が働き、下降角度θ2よりもさらに下向きに傾斜動作させようとする力が先端ステップ2に対して加えられることとなり、先端ステップ2や上陸目標設備Tが破損するおそれがある。
【0083】
そこで、この実施の形態に係る転落防止機構1は、一端が支持されている架橋14と、架橋14の他端の側に上向きおよび下向きに傾斜動作可能に設けられ、水平方向に対する下向き傾斜の角度が制限される一方で上向き傾斜は制限されない先端ステップ2と、先端ステップ2に固定的に取り付けられて水平方向に対して上向きに傾斜する傾動制御部材31と、傾動制御部材31の上向きに傾斜する先端部分の、架橋14とは反対側に取り付けられる移動部材としての前側車輪33と、を有する、ようにしている。
【0084】
上向き傾動助勢機構30は、架橋14の前端に取り付けられている先端ステップ2が上陸目標設備Tへと前後方向において接触/衝突した場合に前記先端ステップ2を上向きに傾斜動作させるための仕組みであり、主として、傾動制御部材31、緩衝摺動部材32、前側車輪33、および後ろ側車輪34を有する。
【0085】
傾動制御部材31は、先端ステップ2の左右方向における端面の前端部に固定して取り付けられる。傾動制御部材31を含む上向き傾動助勢機構30は、図に示す例では先端ステップ2の左側の端面に設けられるようにしているが、先端ステップ2の右側の端面に設けられるようにしてもよく、或いは、先端ステップ2の左側の端面および右側の端面に左右一対のものとして設けられるようにしてもよい。傾動制御部材31を含む上向き傾動助勢機構30が左側の端面および右側の端面に左右一対のものとして設けられるようにすることにより、先端ステップ2が傾いてしまう(別言すると、歪んでしまう)ことを防止することができる点で好ましい。
【0086】
傾動制御部材31は、先端ステップ2側の端寄りの部分(即ち、後端寄りの部分;言い換えると、下端寄りの部分)が、先端ステップ2の左側の端面の前端部に対して固定的に取り付けられる。
【0087】
傾動制御部材31の、先端ステップ2とは反対側の面(即ち、前側の面;言い換えると、下側の面)に、傾動制御部材31と上陸目標設備Tとが接触した際のそれぞれの損傷を防止するため、緩衝摺動部材32が取り付けられる。緩衝摺動部材32は、特定の部材や構造に限定されるものではなく、上陸目標設備Tと接触した際にクッション材として機能し得るとともに前記上陸目標設備Tに対して摺動可能であればどのような部材や構造であってもよい。図に示す例では、緩衝摺動部材32として、長手方向直交断面がD型の中空のゴム製のクッション材が取り付けられる(尚、D型の湾曲部分が先端ステップ2とは反対側(即ち、前側;言い換えると、下側)になるように配設される)。
【0088】
傾動制御部材31の、先端ステップ2とは反対側の端部分(即ち、前端部分;言い換えると、上端部分)に、前側車輪33が、緩衝摺動部材32よりも前方や下方へと突出するように固定されて取り付けられる。前側車輪33の取り付けに関連して、傾動制御部材31の前側の面(言い換えると、下側の面)のうち、前側車輪33が取り付けられる部分を除いて、緩衝摺動部材32が取り付けられる。前側車輪33と上陸目標設備Tとが接触/衝突した際の衝撃を緩和するため、前側車輪33と傾動制御部材31との間に介在するように例えばゴムシートなどの緩衝部材が配設された上で前側車輪33が傾動制御部材31に対して取り付けられるようにしてもよい。
【0089】
前側車輪33は、水平回動不能で前後方向のみに沿って回転可能な車輪でもよく、或いは、水平回動自在で全方向に回転可能なキャスタでもよい。図に示す例では、前側車輪33として、傾動制御部材31の前端部分(言い換えると、上端部分)に、水平回動不能で前後方向のみに沿って回転可能な車輪が取り付けられる。
【0090】
なお、傾動制御部材31の前端部分(言い換えると、上端部分)に取り付けられる機序は、車輪に限定されるものではなく、上陸目標設備Tの面Ts上を走行や摺動などして移動可能なものであればどのような仕組みでもよい。傾動制御部材31の前端部分/上端部分に取り付けられる機序(図に示す例では、車輪)のことを「前側移動部材」とも呼ぶ。
【0091】
先端ステップ2の下面の前端部分に後ろ側車輪34が取り付けられる。後ろ側車輪34は、上記の実施の形態1において下面の前縁部に取り付けられる樹脂製の下面クッション22に代わって取り付けられる。
【0092】
後ろ側車輪34は、水平回動不能で前後方向のみに沿って回転可能な車輪でもよく、或いは、水平回動自在で全方向に回転可能なキャスタでもよい。図に示す例では、後ろ側車輪34として、先端ステップ2の下面の前端部分に、左右一対の、水平回動不能で前後方向のみに沿って回転可能な車輪が取り付けられる。
【0093】
後ろ側車輪34は、先端ステップ2の下面に取り付けられた上で、緩衝摺動部材32よりもわずかに突出するように設けられる。後ろ側車輪34について、例えば緩衝摺動部材32が上陸目標設備Tの角部Tcに当接して緩衝摺動部材32の長手方向(即ち、傾動制御部材31の長手方向)に沿って前記角部Tcを摺動して後ろ側車輪34が前記角部Tcへと到達した際に、緩衝摺動部材32からの突出量が大きいと、前記角部Tcに後ろ側車輪34が突き当たって引っ掛かってしまうことがあり得る。このため、後ろ側車輪34は、緩衝摺動部材32が前記角部Tcを摺動している状態から後ろ側車輪34が前記角部Tcと当接して前記角部Tcを乗り越える際の衝撃が過度になったり前記角部Tcに引っ掛かったりすることがないようにするため、先端ステップ2の下面に取り付けられた上で、緩衝摺動部材32よりもわずかに突出するように設けられる。
【0094】
なお、先端ステップ2の下面の前端部分に、後ろ側車輪34ではなく、上記の実施の形態1と同様に下面クッション22が取り付けられるようにしてもよい。さらに言えば、先端ステップ2の下面の前端部分に取り付けられる機序は、上陸目標設備Tの面Ts上を走行や摺動などして移動可能なものであればどのような仕組みでもよい。先端ステップ2の下面の前端部分に取り付けられる機序(図に示す例では、車輪)のことを「後ろ側移動部材」とも呼ぶ。
【0095】
架橋14の長手方向L14が水平方向Hに沿っており、傾斜調整リンク7が初期角度θ1の姿勢になっているとともに先端ステップ2が下降角度θ2の姿勢になっている状態で、水平方向Hに対して所定の上向き傾斜の角度で傾斜するように設けられる。水平方向Hと傾動制御部材31の長手方向とがなす角度θ3のことを「上傾角度」と呼ぶ。上傾角度θ3は、特定の値に限定されるものではなく、例えば20°~50°程度に設定される。図に示す例では、上傾角度θ3が水平方向Hに対して上向き傾斜35°に設定されている。
【0096】
ここで、先端ステップ2を回動自在に支持する架橋前端回転軸3と前側車輪33の回転軸331との相互の位置関係について、架橋14の長手方向L14が水平方向Hに沿っていて傾斜調整リンク7が初期角度θ1の姿勢になっているとともに先端ステップ2が下降角度θ2の姿勢になっており且つ傾動制御部材31が上傾角度θ3の姿勢になっている状態で(図12参照)、上陸目標設備Tのうちの、上向き傾動助勢機構30(特に、前側車輪33)が前後方向において接触/衝突する可能性がある面Tsに沿う方向DTにおいて、前側車輪33が前記面Tsへと当接する位置33Tが架橋前端回転軸3の軸心位置よりも上方に位置するように、すなわち、前側車輪33の回転軸331の軸心から前記面Tsへと下ろした垂線の足の位置33Tが架橋前端回転軸3の軸心から前記面Tsへと下ろした垂線の足の位置3Tよりも上方に位置するように、調整される。これにより、上陸目標設備Tへと上向き傾動助勢機構30が接触/衝突したとき、上向き傾動助勢機構30を介して先端ステップ2に発生する力Fは、架橋前端回転軸3の上方を通る方向に働く。このため、上向き傾動助勢機構30を介して先端ステップ2に対してこれらを上向きに押し上げる力が働き、上向き傾動助勢機構30および先端ステップ2は架橋前端回転軸3を回転中心として上向きに傾斜動作する。
【0097】
また、先端ステップ2を回動自在に支持する架橋前端回転軸3と後ろ側車輪34の回転軸341との相互の位置関係について、前側車輪33が上陸目標設備Tの面Ts上を走行しながら上向き傾動助勢機構30および先端ステップ2が架橋前端回転軸3を回転中心として上向きに傾斜動作して、傾動制御部材31の長手方向および緩衝摺動部材32の長手方向が前記面Tsに沿う方向DTと平行になっている状態で(図13参照)、前記面Tsに沿う方向DTにおいて、後ろ側車輪34が前記面Tsへと当接する位置34Tが架橋前端回転軸3の軸心位置よりも上方に位置するように、すなわち、後ろ側車輪34の回転軸341の軸心から前記面Tsへと下ろした垂線の足の位置34Tが架橋前端回転軸3の軸心から前記面Tsへと下ろした垂線の足の位置3Tよりも上方に位置するように、調整される。これにより、傾動制御部材31の長手方向および緩衝摺動部材32の長手方向が前記面Tsに沿う方向DTと平行になっている状態からさらに上陸目標設備Tへと先端ステップ2が押し込まれたとき、上向き傾動助勢機構30を介して先端ステップ2に発生する力Fは、架橋前端回転軸3の上方を通る方向に働く。このため、上向き傾動助勢機構30を介して先端ステップ2に対してこれらを上向きに押し上げる力が働き、上向き傾動助勢機構30および先端ステップ2は架橋前端回転軸3を回転中心として上向きに傾斜動作する。
【0098】
なお、架橋14の長手方向L14が水平方向Hに沿って傾斜調整リンク7が初期角度θ1の姿勢になっているとともに先端ステップ2が下降角度θ2の姿勢になっており且つ傾動制御部材31が上傾角度θ3の姿勢になっている状態で(図12参照)、傾動制御部材31の前端よりも前側車輪33が前方へと突出するように、また、緩衝摺動部材32の前端よりも前側車輪33が前方へと突出するように、前側車輪33の寸法や取付け位置などが調整される。
【0099】
次に、上記の構成を備える実施の形態2の転落防止機構1の作用などについて説明する。
【0100】
架橋14の長手方向L14が水平方向Hに沿っているとき、傾斜調整リンク7が初期角度θ1の姿勢になっているとともに先端ステップ2が下降角度θ2の姿勢になっており且つ傾動制御部材31が上傾角度θ3の姿勢になっている(図12)。
【0101】
架橋14が上向きや下向きに傾斜動作した際の、架橋14の傾斜動作に関係する各部(具体的には主に、平行リンク4、傾斜調整リンク7、可撓性部材8)の動作や作用は、上記の実施の形態1と同様である。
【0102】
架橋14の先端部が上陸目標設備Tに接触した(言い換えると、乗り上げた)場合には、後ろ側車輪34が上陸目標設備Tに接触した状態で先端ステップ2が架橋前端回転軸3を回転中心として上向きに自由に傾斜動作して先端ステップ2と上陸目標設備Tとが衝突して破損することが防止される。
【0103】
先端ステップ2が上向きに傾斜動作した状態から架橋14の先端部と上陸目標設備Tとの間の上下方向の距離が広がると、先端ステップ2は、自由に下向きに傾斜動作し、可撓性部材81が張って下向き傾斜の角度が所定の角度(即ち、下降角度θ2)になった姿勢で停止する。
【0104】
また、可撓性部材81が張って先端ステップ2の下向き傾斜の角度が所定の角度(下降角度θ2)である姿勢のときに上向き傾動助勢機構30および先端ステップ2が上陸目標設備Tへと前後方向において接触した(言い換えると、突き当たった)場合には、前側車輪33が上陸目標設備Tの面Ts上を走行する。この際、上陸目標設備Tのうちの、前側車輪33が接触している面Tsに沿う方向DTにおいて、前側車輪33が前記面Tsへと当接する位置33Tが架橋前端回転軸3の軸心位置よりも上方に位置するように、即ち、前側車輪33の回転軸331の軸心から前記面Tsへと下ろした垂線の足の位置33Tが架橋前端回転軸3の軸心から前記面Tsへと下ろした垂線の足の位置3Tよりも上方に位置するように、調整されているので、上向き傾動助勢機構30を介して先端ステップ2に発生する力Fは架橋前端回転軸3の上方を通る方向に働くため、上向き傾動助勢機構30を介して先端ステップ2に対してこれらを上向きに押し上げる力が働き、上向き傾動助勢機構30および先端ステップ2は架橋前端回転軸3を回転中心として上向きに傾斜動作する。
【0105】
この実施の形態2に係る転落防止機構1によれば、上記の実施の形態1に係る転落防止機構1による作用効果に加えて下記の作用効果が奏される。すなわち、波浪の影響などによって架橋14の先端部が上陸目標設備Tへと前後方向において接触/衝突した場合には、上向き傾動助勢機構30(特に、傾動制御部材31)の働きにより、架橋14の先端部に設けられる傾動制御部材31とともに先端ステップ2が上向きに傾斜動作することによって先端ステップ2に対して下降角度θ2よりもさらに下向きに傾斜動作させようとする力が加えられることが防止されるため、先端ステップ2や上陸目標設備Tの破損を防止することが可能となる。
【0106】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、転落防止機構1が備え付けられる架橋装置10が動揺補正機構11を有するようにしているが、架橋装置10は動揺補正機構11を有しない構成であってもよい。この場合も、本発明に係る転落防止機構1は、揺動操作機構17の操作による架橋14の傾斜動作との関係において、先端ステップ2の下向き傾斜の角度を所定の角度で制限したり先端ステップ2の上向き傾斜の角度を自由に変化させて衝突状態を防いだりするという作用効果は発揮される。さらに言えば、上記の実施の形態2では架橋装置10を構成する架橋14に取り付けられる先端ステップ2に対して上向き傾動助勢機構30が備え付けられるようにしているが、上向き傾動助勢機構30が備え付けられる対象は架橋装置10を構成する架橋14に取り付けられる先端ステップ2には限定されない。上向き傾動助勢機構30は、上向きの傾斜は制限されない一方で下向き傾斜の角度が所定の角度で制限されるように構成されている先端ステップ2に対して適用可能であり、架橋装置10を構成する架橋14に先端ステップ2が取り付けられていることは必須の構成ではない。
【0107】
また、上記の実施の形態では、船舶に設置されて船舶から洋上施設の上陸目標へと架橋14を架け渡す架橋装置10に対して転落防止機構1が備え付けられるようにしているが、洋上施設側に設置されて洋上施設から船舶へと架橋を架け渡す架橋装置に対して転落防止機構が備え付けられるようにしてもよい。
【0108】
また、上記の実施の形態では、傾斜調整リンク7が架橋前端回転軸3によって連結支持されるとともに先端ステップ2も架橋前端回転軸3によって連結支持されるようにしているが、先端ステップ2は、架橋14の前端側に於いて、他の軸によって連結支持されるようにしてもよい。
【0109】
また、上記の実施の形態では、先端ステップ2が、単一の板状部材が用いられて長さが固定であるように形成されているが、先端ステップ2が、複数の板状部材が用いられて伸縮自在であるように構成されてもよい。この場合には、例えば、洋上施設の上陸目標設備Tの上面に、先端ステップ2の下面クッション22または後ろ側車輪34が嵌まる程度の凹部が形成される。そして、上陸目標設備T側の凹部に下面クッション22または後ろ側車輪34が嵌まり、架橋14の先端部と洋上施設の上陸目標との間の前後距離が波浪の影響によって多少変化した場合でも、先端ステップ2が伸縮することにより、上陸目標から先端ステップ2が脱落することが防止される。なお、先端ステップ2の破損を防ぐため、先端ステップ2が最大寸法まで伸長した状態で架橋14の先端部が上陸目標からさらに離れる向きに動作した場合には先端ステップ2の下面クッション22または後ろ側車輪34が上陸目標設備T側の凹部から外れる程度に、下面クッション22または後ろ側車輪34と凹部との嵌まりの具合が調整されることが好ましい。
【0110】
また、上記の実施の形態では、平行リンク連結機構5によって平行リンク4の後端が前後方向に移動可能であるように構成されているが、平行リンク4の後端の位置が固定されるように構成されてもよい。この場合、傾斜調整リンク7の傾斜の程度(初期角度θ1)を調整して先端ステップ2の傾斜の程度(下降角度θ2)を調整することはできないものの、例えば、可撓性部材81の長さを変えることによって先端ステップ2の傾斜の程度(下降角度θ2)が調整されるようにしてもよい。
【0111】
また、上記の実施の形態では、可撓性部材81によって先端ステップ2の下向き傾斜の角度が所定の角度(下降角度θ2)で制限されるようにしているが、先端ステップ2の下向きの傾斜の程度を制限する一方で先端ステップ2の上向きの傾斜は制限しない機序は可撓性部材81には限定されない。例えば、傾斜調整リンク7の下端から前方へと延出する爪部が設けられ、該爪部によって先端ステップ2の下面が支持されるようにしてもよい。この場合も、先端ステップ2の下面が爪部へと当接することによって先端ステップ2の下向き傾斜の角度が所定の角度で制限される一方で、先端ステップ2の下面を支持する爪部によっては先端ステップ2の上向きの傾斜は制限されないので、下面クッション22が洋上施設の上陸目標設備Tに接触した状態で先端ステップ2が上向きに自由に傾斜動作して先端ステップ2と上陸目標設備Tとが衝突して破損することが防止される。つまり、先端ステップ2の下向き傾斜の角度は、傾斜調整リンク7と連結する部材(例えば可撓性部材81)によって制限されるようにしてもよく、或いは、傾斜調整リンク7と連接する部位(例えば爪部)によって制限されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 転落防止機構
2 先端ステップ
21 前面クッション
21T 前面クッションが上陸目標設備の面へと当接する位置
22 下面クッション
3 架橋前端回転軸
T 架橋前端回転軸の軸心から上陸目標設備の面へと下ろした垂線の足の位置
4 平行リンク
5 平行リンク連結機構
51 リンク連結柱
52 連結スライダ
53 ガイドレール
6 リンク後端回転軸
7 傾斜調整リンク
8 傾斜制限部
81 可撓性部材
82 ダンパー
9 リンク前端回転軸
10 架橋装置
11 動揺補正機構
111 ベースフレーム
112 アクチュエータ
12 メインテーブル
121 補助テーブル
13 テーブル手摺
14 架橋
15 架橋手摺
15a 水平フレーム
15b 第1傾斜フレーム
15c 第2傾斜フレーム
16 架橋後端回転軸
17 揺動操作機構
18 操作アーム
18a 屈曲部
18b 第1アーム
18c 第2アーム
19 駆動装置
19a シリンダチューブ
19b ピストンロッド
20 ライト
30 上向き傾動助勢機構
31 傾動制御部材
32 緩衝摺動部材
33 前側車輪
331 回転軸
33T 前側車輪が上陸目標設備の面へと当接する位置
34 後ろ側車輪
341 回転軸
34T 後ろ側車輪が上陸目標設備の面へと当接する位置
T 上陸目標設備
Ts 上陸目標設備の面(前側車輪が接触/衝突する可能性がある面)
Tc 上陸目標設備の角部
T 上陸目標設備の面に沿う方向
4 平行リンクの長手方向/軸心方向
14 架橋の長手方向
H 水平方向
θ1 初期角度(水平方向と傾斜調整リンクの長手方向とがなす角度)
θ2 下降角度(水平方向と先端ステップの長手方向とがなす角度)
θ3 上傾角度(水平方向と傾動制御部材の長手方向とがなす角度)
F 先端ステップに発生する力
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