IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-変速機 図1
  • 特許-変速機 図2
  • 特許-変速機 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 37/02 20060101AFI20240213BHJP
   B60K 17/08 20060101ALI20240213BHJP
   B60K 17/06 20060101ALI20240213BHJP
   F16D 25/0638 20060101ALI20240213BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
F16H37/02 Q
B60K17/08 H
B60K17/06 J
F16D25/0638
F16D48/02 640P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020080473
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021173398
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】米本 真也
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-062959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/02
B60K 17/08
B60K 17/06
F16D 25/0638
F16D 48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される変速機であって、
駆動源からの動力が入力されるインプット軸と、
前記インプット軸と平行に延びるアウトプット軸と、
前記インプット軸と前記アウトプット軸との間の動力伝達経路上に設けられ、前記インプット軸とそれぞれ平行に延びるプライマリ軸およびセカンダリ軸を有し、前記プライマリ軸から前記セカンダリ軸に動力を変速して伝達する無段変速機構と、
前記インプット軸と平行に延びるリバースアイドラ軸と、
前記プライマリ軸に支持され、前記インプット軸から動力が伝達されるプライマリ伝達ギヤと、
前記プライマリ軸と前記プライマリ伝達ギヤとの間で動力を伝達/遮断する前進クラッチと、
前記セカンダリ軸に支持され、前記インプット軸から前記リバースアイドラ軸を介して動力が伝達されるセカンダリ伝達ギヤと、
前記セカンダリ軸と前記セカンダリ伝達ギヤとの間で動力を伝達/遮断する後進クラッチと、
前記インプット軸の一端部を支持するオイルポンプと、を含み、
前記車両の前進時には、前記前進クラッチが係合され、前記後進クラッチが解放されて、前記インプット軸から前記プライマリ伝達ギヤを介して前記プライマリ軸に動力が伝達されて、前記プライマリ軸から前記セカンダリ軸に伝達される動力が前記セカンダリ軸から前記アウトプット軸に伝達され、
前記車両の後進時には、前記前進クラッチが解放され、前記後進クラッチが係合されて、前記インプット軸から前記リバースアイドラ軸および前記セカンダリ伝達ギヤを介して前記セカンダリ軸に動力が伝達されて、前記セカンダリ軸から前記アウトプット軸に動力が伝達され、
前記前進クラッチは、
前記プライマリ軸と一体に回転するように設けられ、クラッチプレートを保持するクラッチドラムと、
前記プライマリ伝達ギヤと一体に回転するように設けられ、クラッチディスクを前記クラッチプレートと回転軸線方向に対向するように保持するクラッチハブと、
前記クラッチドラムと前記クラッチハブとの間で前記プライマリ軸の軸線方向に移動可能に設けられ、前記クラッチドラムとの間に形成される油圧室内の油圧により、前記クラッチプレートを前記クラッチディスクに押し付ける圧を前記クラッチプレートに加えるクラッチピストンと、を備え
前記プライマリ伝達ギヤと前記オイルポンプとの間のスペースを利用して設けられ、
前記後進クラッチは、前記セカンダリ伝達ギヤと前記オイルポンプとの間のスペースを利用して設けられている、変速機。
【請求項2】
前記前進クラッチの一部および前記後進クラッチの一部は、前記軸線方向に見て前記オイルポンプと重なっている、請求項1に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、変速機を搭載した車両では、エンジンの動力がトルクコンバータを介して変速機に入力され、変速機で変速された動力がデファレンシャルギヤ(差動装置)などを介して駆動輪に伝達される。変速機としては、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)や有段式の自動変速機(AT:Automatic Transmission)が広く知られている。
【0003】
ベルト式の無段変速機では、エンジンからの動力が入力されるインプット軸が無段変速機構のプライマリ軸に動力を伝達可能に接続されており、インプット軸に入力される動力は、インプット軸からプライマリ軸に伝達される。無段変速機構では、セカンダリ軸がプライマリ軸と間隔を空けて平行に配置されて、プライマリ軸に支持されるプライマリプーリとセカンダリ軸に支持されるセカンダリプーリとの間に無端状のベルトが巻き掛けられている。これにより、インプット軸からプライマリ軸に伝達される動力は、プライマリプーリからベルトに伝達され、ベルトからセカンダリプーリに伝達される。そして、セカンダリプーリに伝達される動力がセカンダリ軸を介してアウトプット軸に伝達され、アウトプット軸からデファレンシャルギヤを介して左右の駆動輪に動力が伝達される。
【0004】
また、無段変速機には、車両の前後進を切り替えるための前後進切替機構が含まれる。前後進切替機構の方式の1つとして、インプット軸と平行にリバースアイドラ軸を設ける平行軸ギヤ式が知られている。平行軸ギヤ式では、たとえば、インプット軸上に配置された前進用クラッチおよびプライマリ軸上に配置された後進用クラッチの係合/解放により、インプット軸からプライマリ軸に向けて動力を伝達する経路がリバースアイドラ軸を経由する経路とリバースアイドラ軸を経由しない経路とに切り替えられる。この動力伝達経路の切り替えにより、インプット軸からプライマリ軸に伝達される動力の方向が切り替わる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-113304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、その構成では、車両の後進時に、前進時と比較して、動力の伝達経路がリバースアイドラ軸を経由することによって長くなり、動力の伝達効率が低下する。
【0007】
本発明の目的は、車両の後進時における動力の伝達効率の低下を抑制できる、変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る変速機は、車両に搭載される変速機であって、駆動源からの動力が入力されるインプット軸と、インプット軸と平行に延びるアウトプット軸と、インプット軸とアウトプット軸との間の動力伝達経路上に設けられ、インプット軸とそれぞれ平行に延びるプライマリ軸およびセカンダリ軸を有し、プライマリ軸からセカンダリ軸に動力を変速して伝達する無段変速機構と、インプット軸と平行に延びるリバースアイドラ軸と、プライマリ軸に支持され、インプット軸から動力が伝達されるプライマリ伝達ギヤと、プライマリ軸とプライマリ伝達ギヤとの間で動力を伝達/遮断する前進クラッチと、セカンダリ軸に支持され、インプット軸からリバースアイドラ軸を介して動力が伝達されるセカンダリ伝達ギヤと、セカンダリ軸とセカンダリ伝達ギヤとの間で動力を伝達/遮断する後進クラッチとを含み、車両の前進時には、前進クラッチが係合され、後進クラッチが解放されて、インプット軸からプライマリ伝達ギヤを介してプライマリ軸に動力が伝達されて、プライマリ軸からセカンダリ軸に伝達される動力がセカンダリ軸からアウトプット軸に伝達され、車両の後進時には、前進クラッチが解放され、後進クラッチが係合されて、インプット軸からリバースアイドラ軸およびセカンダリ伝達ギヤを介してセカンダリ軸に動力が伝達されて、セカンダリ軸からアウトプット軸に動力が伝達され、前進クラッチは、プライマリ軸と一体に回転するように設けられ、クラッチプレートを保持するクラッチドラムと、プライマリ伝達ギヤと一体に回転するように設けられ、クラッチディスクをクラッチプレートと回転軸線方向に対向するように保持するクラッチハブと、クラッチドラムとクラッチハブとの間でプライマリ軸の軸線方向に移動可能に設けられ、クラッチドラムとの間に形成される油圧室内の油圧により、クラッチプレートをクラッチディスクに押し付ける圧をクラッチプレートに加えるクラッチピストンとを備える。
【0009】
この構成によれば、車両の前進時には、インプット軸からプライマリ軸に動力が伝達され、その動力がプライマリ軸からセカンダリ軸に変速して伝達され、さらにセカンダリ軸からアウトプット軸に伝達される。そのため、車両の前進時には、インプット軸からアウトプット軸に動力を変速して伝達することができる。
【0010】
一方、車両の後進時には、インプット軸からリバースアイドラ軸を介してセカンダリ軸に動力が伝達され、その動力がセカンダリ軸からアウトプット軸に伝達される。そのため、車両の後進時には、インプット軸からアウトプット軸に無段変速機構を経由せずに動力を伝達することができる。動力がリバースアイドラ軸を経由するが無段変速機構を経由しないので、前進時と比較して、動力の伝達経路が長くなることを抑制でき、動力の伝達効率の低下を抑制できるばかりか、伝達効率を向上させることができる。その結果、変速機が搭載される車両の燃費を向上させることができる。
【0011】
しかも、車両の後進時には、前進クラッチが解放され、動力が無段変速機構を経由しないので、無段変速機構の変速比を小さくして(ハイにして)、前進クラッチのクラッチドラムの回転数を下げることができる。これにより、油圧室内に発生する遠心油圧を下げることができ、その遠心油圧によるクラッチピストンの押し付け圧を低減することができる。その結果、クラッチピストンをクラッチプレートから離間させるための付勢力を発生するリターンスプリングおよびリターンスプリングをクラッチピストンとの間に介在させるバランサの廃止、ないしは、リターンスプリングの荷重を低減でき、変速機のコストおよび質量を低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の後進時には、前進時と比較して、動力の伝達経路が長くなることを抑制でき、動力の伝達効率の低下を抑制できるばかりか、伝達効率を向上させることができる。そのうえ、車両の後進時には、無段変速機構の変速比を小さくして、前進クラッチのクラッチドラムの回転数を下げることにより、油圧室内に発生する遠心油圧を下げて、その遠心油圧によるクラッチピストンの押し付け圧を低減することができる。その結果、リターンスプリングおよびバランサの廃止、ないしは、リターンスプリングの荷重を低減でき、変速機のコストおよび質量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る変速ユニットの構成を示す断面図である。
図2】CVTの構成を図解的に示すスケルトン図である。
図3】プライマリ軸の前端部を図1よりも拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
<変速ユニット>
図1は、本発明の一実施形態に係る変速ユニット1の構成を示す断面図である。なお、図1以降の断面図では、断面を表すハッチングの付与が省略されている。
【0016】
変速ユニット1は、車両に搭載されて、走行用の駆動源としてのエンジン2(E/G)2が発生する動力を変速するユニットである。車両は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)レイアウトを採用している。
【0017】
エンジン2は、たとえば、3気筒4ストロークエンジンであり、クランクシャフトが車体の前後方向に対して縦向きになる縦置きで搭載される。エンジン2の気筒数は、3気筒に限らず、4気筒以上であってもよいし、2気筒以下であってもよい。また、エンジン2のストローク数は、4ストロークに限らず、2ストロークであってもよい。
【0018】
変速ユニット1は、外殻をなすユニットケース3内に、トルクコンバータ4およびCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)5を備えている。
【0019】
<ユニットケース>
ユニットケース3は、第1ケース11、第2ケース12および第3ケース13の3分割で構成されている。第1ケース11、第2ケース12および第3ケース13は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される。
【0020】
第1ケース11、第2ケース12および第3ケース13は、前側(エンジン2側)からこの順に並べられている。第1ケース11と第2ケース12とがボルトで締結され、第2ケース12と第3ケース13とがボルト17で締結されることにより、第1ケース11、第2ケース12および第3ケース13は、一体化されている。
【0021】
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ4は、第1ケース11内に収容されている。トルクコンバータ4は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンハブ23、タービンランナ24、ロックアップ機構25およびステータ26を備えている。
【0022】
フロントカバー21は、車両(車体)の前後方向に延びる回転軸線を中心に略円板状に延び、その外周端部がエンジン2側と反対側(後述する無段変速機構42側)である後側に屈曲した形状をなしている。フロントカバー21の中心部は、前側に膨出している。この膨出した部分には、エンジン2のクランクシャフトが相対回転不能に結合される。
【0023】
ポンプインペラ22は、フロントカバー21の後側に配置されている。ポンプインペラ22の外周端部は、フロントカバー21の外周端部に接続され、回転軸線を中心にフロントカバー21と一体回転可能に設けられている。ポンプインペラ22の内面には、複数のブレード27が放射状に並べて配置されている。
【0024】
タービンハブ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されている。
【0025】
タービンランナ24は、タービンハブ23に固定されている。タービンランナ24のポンプインペラ22との対向面には、複数のブレード28が放射状に並べて配置されている。
【0026】
ロックアップ機構25は、ロックアップピストン31およびダンパ機構32を備えている。
【0027】
ロックアップピストン31は、略円環板状をなし、その内周端部がタービンハブ23に外嵌されて、フロントカバー21とタービンランナ24との間に位置している。ロックアップピストン31に対してタービンランナ24側の係合側油室33の油圧がフロントカバー21側の解放側油室34の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がフロントカバー21側に移動する。そして、ロックアップピストン31がフロントカバー21に押し付けられると、ポンプインペラ22とタービンランナ24とが直結(ロックアップオン)される。逆に、解放側油室34の油圧が係合側油室33の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がタービンランナ24側に移動する。ロックアップピストン31がフロントカバー21から離間した状態では、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結が解除(ロックアップオフ)される。
【0028】
ダンパ機構32は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結時にエンジン2からの振動を減衰するための機構である。
【0029】
ステータ26は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との間に配置されている。
【0030】
ロックアップオフの状態において、エンジントルクによりポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ24に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ24のブレード28で受けられて、タービンランナ24が回転する。このとき、トルクコンバータ4の増幅作用が生じ、タービンランナ24には、エンジントルクよりも大きなトルクが発生する。
【0031】
<CVT>
CVT5は、第2ケース12および第3ケース13内に収容されている。CVT5は、インプット軸41、無段変速機構42、アウトプット軸43およびリバース伝達機構44を備えている。変速ユニット1は、エンジン2の後側に、CVT5のインプット軸41が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで、インプット軸41が後下がりに傾斜するように配置されている。
【0032】
インプット軸41は、中空軸に形成されて、トルクコンバータ4の回転軸線上を延びている。インプット軸41の前端部は、トルクコンバータ4内に挿入されて、タービンハブ23とスプライン嵌合している。
【0033】
なお、以下の説明において、インプット軸41の軸線(軸心)が延びる方向を「軸線方向」という。また、軸線方向と直交する方向、つまりインプット軸41の径方向を「軸径方向」という。
【0034】
インプット軸41の後端部は、第2ケース12内に配置された機械式のオイルポンプ45に回転可能に支持されている。具体的には、オイルポンプ45は、ポンプケース46と、ポンプケース46に後側から接合されるポンプカバー47と、ポンプケース46内のスペースに配置されるポンプギヤ48と、ポンプギヤ48に相対回転不能に結合されるポンプ軸49とを備えている。ポンプカバー47は、第2ケース12に固定され、ポンプケース46内のスペースを後側から閉鎖している。ポンプケース46の前端部には、前側に開放されて、後側に略円柱状に凹んだ軸受凹部51が形成されている。インプット軸41の後端部は、軸受凹部51内に挿入されて、インプット軸41の周面と軸受凹部51の内周面との間に介在されるボールベアリング52を介してポンプケース46に回転可能に支持されている。言い換えれば、インプット軸41の後端部にボールベアリング52が外嵌され、そのボールベアリング52が軸受凹部51に嵌入されることにより、インプット軸41の後端部は、ボールベアリング52を介してポンプケース46に回転可能に支持されている。
【0035】
ポンプ軸49は、ポンプケース46およびポンプカバー47を貫通して設けられている。ポンプ軸49は、ポンプケース46から前側に延び、インプット軸41にその内周面との間に隙間を空けて挿通されている。ポンプ軸49の前端部は、トルクコンバータ4のフロントカバー21に達し、そのフロントカバー21の中心部に相対回転不能に接続されている。これにより、エンジン2の動力によりフロントカバー21が回転すると、フロントカバー21と一体にポンプ軸49およびポンプギヤ48が回転し、オイルポンプ45から油圧が発生する。
【0036】
無段変速機構42は、プライマリ軸54、セカンダリ軸55、プライマリプーリ56、セカンダリプーリ57およびベルト58を備えている。
【0037】
プライマリ軸54およびセカンダリ軸55は、第1ケース11と第2ケース12との間において、インプット軸41と平行に延び、その軸心まわりに回転可能に設けられている。
【0038】
プライマリプーリ56は、プライマリ軸54に固定されたプライマリ固定シーブ61と、プライマリ固定シーブ61にベルト58を挟んで対向配置され、プライマリ軸54に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたプライマリ可動シーブ62とを備えている。プライマリ可動シーブ62は、プライマリ固定シーブ61に対して前側に配置されている。プライマリ可動シーブ62に対してプライマリ固定シーブ61側と反対側、つまり前側には、シリンダ63が設けられ、プライマリ可動シーブ62とシリンダ63との間には、油圧室(ピストン室)64が形成されている。
【0039】
セカンダリプーリ57は、セカンダリ軸55に固定されたセカンダリ固定シーブ65と、セカンダリ固定シーブ65にベルト58を挟んで対向配置され、セカンダリ軸55に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたセカンダリ可動シーブ66とを備えている。セカンダリ可動シーブ66は、セカンダリ固定シーブ65に対して後側に配置されている。セカンダリ可動シーブ66に対してセカンダリ固定シーブ65と反対側、つまり後側には、ピストン67が設けられ、セカンダリ可動シーブ66とピストン67との間には、油圧室68が形成されている。
【0040】
ベルト58は、無端状に形成され、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間に挟まれた状態でプライマリプーリ56に巻き掛けられるとともに、セカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間に挟まれた状態でセカンダリプーリ57に巻き掛けられている。
【0041】
無段変速機構42では、プライマリプーリ56およびセカンダリプーリ57の各油圧室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ56およびセカンダリプーリ57の各溝幅が変更されることにより、ベルト変速比(プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比)が一定の変速比範囲内で連続的に無段階で変更される。
【0042】
具体的には、ベルト変速比が小さくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ56のプライマリ可動シーブ62がプライマリ固定シーブ61側に移動し、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ56に対するベルト58の巻き掛け径が大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、ベルト変速比が小さくなる。
【0043】
ベルト変速比が大きくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト58に対するセカンダリプーリ57の推力がベルト58に対するプライマリプーリ56の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、ベルト変速比が大きくなる。
【0044】
セカンダリプーリ57の油圧室68には、バイアススプリング69が設けられている。バイアススプリング69は、一端がセカンダリ可動シーブ66に弾性的に当接し、他端がピストン67に弾性的に当接している。バイアススプリング69の弾性力により、セカンダリ可動シーブ66およびピストン67が互いに離間する方向に付勢されている。セカンダリ可動シーブ66には、油圧室68内の油圧およびバイアススプリング69による付勢力が付与され、ベルト58には、それに応じた挟圧が付与される。
【0045】
また、インプット軸41には、軸線方向の中央部に、入力ギヤ81が一体に形成されている。これに対応して、プライマリ軸54には、入力ギヤ81と噛合するプライマリ伝達ギヤ82が相対回転可能に支持されている。これらの互いに噛合する入力ギヤ81およびプライマリ伝達ギヤ82とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、プライマリ軸54に対するプライマリ伝達ギヤ82の回転を許容/禁止する前進クラッチ83が設けられている。前進クラッチ83の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
【0046】
前進クラッチ83は、クラッチドラム84、クラッチハブ85およびクラッチピストン86を備えている。クラッチドラム84は、内周端がプライマリ軸54に固定され、プライマリ軸54から軸径方向に延び、外周端部がプライマリ伝達ギヤ82側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ85は、プライマリ伝達ギヤ82と一体に形成され、プライマリ伝達ギヤ82から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム84の外周端部に対して軸径方向の内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン86は、クラッチドラム84とクラッチハブ85との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン86は、クラッチドラム84に液密的に当接しており、クラッチドラム84とクラッチピストン86との間には、クラッチピストン86に作用する油圧が供給される油圧室87が形成されている。また、クラッチピストン86は、リターンスプリング88により、後側に弾性的に付勢されている。
【0047】
クラッチドラム84の外周端部とクラッチハブ85とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム84に保持されるクラッチプレート151(図3参照)とクラッチハブ85に保持されるクラッチディスク152(図3参照)とが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室87に供給される油圧により、クラッチピストン86が前側に移動してクラッチプレート151を後側から押圧すると、クラッチプレート151とクラッチディスク152とが圧接し、前進クラッチ83が係合する。前進クラッチ83の係合により、プライマリ軸54に対するプライマリ伝達ギヤ82の回転が禁止され、プライマリ伝達ギヤ82が回転すると、プライマリ軸54がプライマリ伝達ギヤ82と一体に回転する。前進クラッチ83の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング88の付勢力により、クラッチピストン86が後側に移動し、クラッチディスク152とクラッチプレート151との圧接が解除されて、前進クラッチ83が解放される。前進クラッチ83の解放により、プライマリ軸54に対するプライマリ伝達ギヤ82の回転が許容され、プライマリ伝達ギヤ82が回転しても、その回転がプライマリ軸54に伝達されない。
【0048】
セカンダリ軸55には、セカンダリ伝達ギヤ91が相対回転可能に支持されている。セカンダリ伝達ギヤ91は、軸線方向において、入力ギヤ81とオイルポンプ45との間に配置されている。また、セカンダリ伝達ギヤ91とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、セカンダリ軸55に対するセカンダリ伝達ギヤ91の回転を許容/禁止する後進クラッチ92が設けられている。後進クラッチ92の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
【0049】
後進クラッチ92は、クラッチドラム93、クラッチハブ94およびクラッチピストン95を備えている。クラッチドラム93は、内周端がセカンダリ軸55に固定され、セカンダリ軸55から軸径方向に延び、外周端部がセカンダリ伝達ギヤ91側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ94は、セカンダリ伝達ギヤ91と一体に形成され、セカンダリ伝達ギヤ91から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム93の外周端部に対して軸径方向内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン95は、クラッチドラム93とクラッチハブ94との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン95は、クラッチドラム93に液密的に当接しており、クラッチドラム93とクラッチピストン95との間には、クラッチピストン95に作用する油圧が供給される油圧室96が形成されている。また、クラッチピストン95は、リターンスプリング97により、後側に弾性的に付勢されている。
【0050】
クラッチドラム93の外周端部とクラッチハブ94とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム93に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ94に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室96に供給される油圧により、クラッチピストン95が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、後進クラッチ92が係合する。後進クラッチ92の係合により、セカンダリ軸55に対するセカンダリ伝達ギヤ91の回転が禁止され、セカンダリ伝達ギヤ91が回転すると、セカンダリ軸55がセカンダリ伝達ギヤ91と一体に回転する。後進クラッチ92の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング97の付勢力により、クラッチピストン95が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、後進クラッチ92が解放される。後進クラッチ92の解放により、セカンダリ軸55に対するセカンダリ伝達ギヤ91の回転が許容され、セカンダリ伝達ギヤ91が回転しても、その回転がセカンダリ軸55に伝達されない。
【0051】
アウトプット軸43は、インプット軸41に対して後側に間隔を空けて、インプット軸41と同一軸線上に配置されている。言い換えれば、インプット軸41とアウトプット軸43とは、軸線方向に間隔を空けてそれぞれ前後に、車両の前後方向に沿った縦向きに延びる共通の軸線を有するように配置されている。アウトプット軸43には、出力伝達ギヤ101が一体に形成されている。これに対応して、セカンダリ軸55には、出力伝達ギヤ101と噛合するセカンダリ出力ギヤ102が相対回転不能に支持されている。
【0052】
リバース伝達機構44は、インプット軸41の動力(回転)をセカンダリ伝達ギヤ91に伝達する機構である。リバース伝達機構44には、リバースアイドラ軸103、第1リバースギヤ104および第2リバースギヤ105が含まれる。リバースアイドラ軸103は、軸線方向に延び、第1ケース11と第2ケース12とに跨がって、第1ケース11および第2ケース12に回転可能に支持されている。第1リバースギヤ104は、リバースアイドラ軸103と一体に形成されて、入力ギヤ81と噛合している。第2リバースギヤ105は、第1リバースギヤ104の後側において、リバースアイドラ軸103と一体に形成され、セカンダリ伝達ギヤ91と噛合している。
【0053】
アウトプット軸43とプライマリ軸54との間には、アダプタ111が設けられている。アダプタ111は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される鋳物である。アダプタ111は、アウトプット軸43とプライマリ軸54との間を軸径方向に延びている。アダプタ111の上端部は、後側に突出しており、その突出した部分には、前側に略円柱状に凹んだ凹部112が形成されている。アウトプット軸43の前端部は、凹部112内に挿入されている。アウトプット軸43の周面と凹部112の内周面との間には、ラジアルベアリング113が介在されている。アウトプット軸43の前端部は、ラジアルベアリング113を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。また、アウトプット軸43には、出力伝達ギヤ101が形成されている部分と凹部112内に挿入される部分との間に、軸径方向に沿った円環状の段差面が形成されている。段差面とアダプタ111との間には、スラストベアリング114が介在されている。これにより、アウトプット軸43の前端部は、ラジアルベアリング113およびスラストベアリング114を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。
【0054】
また、アダプタ111には、後側に略円柱状に凹んだ凹部115が形成されている。プライマリ軸54の後端部は、凹部115に挿入されている。プライマリ軸54の周面と凹部115の内周面との間には、ボールベアリング116が介在されている。プライマリ軸54の後端部は、ボールベアリング116を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。
【0055】
アダプタ111の下端部には、前側からボルト117が挿通される。そして、そのボルト117により、アダプタ111は、第3ケース13に取り付けられている。
【0056】
<油供給構造>
第2ケース12の底部には、変速ユニット1の各部へのオイルの供給を制御するためのバルブボディ121が設けられている。
【0057】
また、第2ケース12の底部には、ストレーナ122が設けられている。ストレーナ122は、バルブボディ121と横並びで配置される濾過部123と、濾過部123から延出する管部124とを備えている。管部124は、濾過部123の下部から前側に延出して、バルブボディ121の下側を延びている。管部124は、濾過部123の内部と連通する中空の管状に形成されている。
【0058】
第2ケース12には、オイルパン125が下側から複数のボルト126で固定されている。ストレーナ122の管部124の先端部127は、オイルパン125の中央部に位置しており、先端部127の下面には、オイルを吸い込むための吸込口が形成されている。
【0059】
オイルポンプ45のポンプギヤ48の回転により吸引力が発生し、その吸引力により、オイルパン125に溜まったオイルが吸込口から管部124内に吸い込まれる。管部124内に吸い込まれたオイルは、管部124内を濾過部123に向けて流れ、濾過部123内に設けられた濾過材を通過する。オイルが濾過材を通過することにより、オイル中に含まれる異物が濾過材に捕獲されて、オイル中から異物が除去される。濾過材を通過したオイルは、オイルポンプ45を経由して、バルブボディ121に供給される。そして、バルブボディ121から無段変速機構42などのオイルの供給を必要とする各部に作動油または潤滑油としてオイルが供給される。
【0060】
<動力伝達経路>
図2は、CVT5の構成を図解的に示すスケルトン図である。
【0061】
車両の前進時には、前進クラッチ83が係合されて、後進クラッチ92が解放される。エンジン2からトルクコンバータ4を介してインプット軸41に入力される動力は、前進クラッチ83の係合により、入力ギヤ81からプライマリ伝達ギヤ82を介してプライマリ軸54に伝達される。一方、インプット軸41に入力される動力が入力ギヤ81からセカンダリ伝達ギヤ91に伝達されて、セカンダリ伝達ギヤ91が回転しても、後進クラッチ92の解放により、セカンダリ伝達ギヤ91がセカンダリ軸55に対して空転し、セカンダリ軸55に動力が伝達されない。
【0062】
プライマリ軸54に伝達される動力は、プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比に応じたベルト変速比で変速されて、セカンダリ軸55に伝達される。そして、セカンダリ軸55に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ102から出力伝達ギヤ101を介してアウトプット軸43に伝達される。
【0063】
車両の後進時には、前進クラッチ83が解放されて、後進クラッチ92が係合される。エンジン2からトルクコンバータ4を介してインプット軸41に入力される動力は、後進クラッチ92の係合により、入力ギヤ81からリバース伝達機構44およびセカンダリ伝達ギヤ91を介してセカンダリ軸55に伝達される。このとき、セカンダリ軸55は、車両の前進時と逆方向に回転する。一方、インプット軸41に入力される動力が入力ギヤ81からプライマリ伝達ギヤ82に伝達されて、プライマリ伝達ギヤ82が回転しても、前進クラッチ83の解放により、プライマリ伝達ギヤ82がプライマリ軸54に対して空転し、プライマリ軸54に動力が伝達されない。
【0064】
セカンダリ軸55に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ102から出力伝達ギヤ101を介してアウトプット軸43に伝達される。
【0065】
そして、アウトプット軸43に伝達される動力は、アウトプット軸43からプロペラシャフトに出力されて、プロペラシャフトからリヤデファレンシャルギヤ(リヤデフ)およびドライブシャフトを介して左右の後輪に伝達される。
【0066】
<プライマリ軸周りの構造>
図3は、プライマリ軸54の前端部を図1よりも拡大して示す断面図である。
【0067】
プライマリ軸54は、第1プライマリ軸131と第2プライマリ軸132とに分割して構成されている。第1プライマリ軸131は、第2プライマリ軸132の前側に配置されている。第1プライマリ軸131の後側の端部には、後端面から略円柱状に凹んだ空間を有する接続凹部133が形成されている。第2プライマリ軸132の前側の端部は、接続凹部133内に挿入されて、接続凹部133内において、第2プライマリ軸132の外周面は、接続凹部133の内周面とスプライン嵌合している。プライマリプーリ56は、第2プライマリ軸132に支持されている。
【0068】
第1プライマリ軸131の前側の端部には、ボールベアリング141のインナレース142が相対回転不能に外嵌されている。ボールベアリング141のアウタレース143は、第1ケース11に相対回転不能に保持されている。これにより、第1プライマリ軸131は、ボールベアリング141を介して、第1ケース11に回転可能に支持されている。また、第2プライマリ軸132の前側の端部は、ボールベアリング144を介して、第2ケース12に回転可能に支持されている。第2プライマリ軸132の後端部、つまりプライマリ軸54の後端部は、前述したように、ボールベアリング116を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。
【0069】
前進クラッチ83のクラッチドラム84の内周端は、第1プライマリ軸131に固定されている。クラッチドラム84の外周端部の内側には、複数のクラッチプレート151が軸線方向に間隔を空けて並べて保持されている。クラッチハブ85の外側には、複数のクラッチディスク152が軸線方向に間隔を空けて並べて保持されている。クラッチプレート151とクラッチディスク152とは、軸線方向に交互に並べられている。
【0070】
プライマリ伝達ギヤ82とクラッチピストン86との間には、バランサ153が設けられている。バランサ153は、第1プライマリ軸131とクラッチハブ85との間で軸径方向に延びる円環状に形成され、その内周端部が第1プライマリ軸131に固定されている。リターンスプリング88は、クラッチピストン86とバランサ153との間に圧縮状態で介在されている。これにより、リターンスプリング88の弾性力は、クラッチピストン86をバランサ153から離間させる方向に弾性的に付勢している。
【0071】
<作用効果>
以上のように、車両の前進時には、インプット軸41からプライマリ軸54に動力が伝達され、その動力がプライマリ軸54からセカンダリ軸55に変速して伝達され、さらにセカンダリ軸55からアウトプット軸43に伝達される。そのため、車両の前進時には、インプット軸41からアウトプット軸43に動力を変速して伝達することができる。
【0072】
一方、車両の後進時には、インプット軸41からリバースアイドラ軸103を介してセカンダリ軸55に動力が伝達され、その動力がセカンダリ軸55からアウトプット軸43に伝達される。そのため、車両の後進時には、インプット軸41からアウトプット軸43に無段変速機構42を経由せずに動力を伝達することができる。動力がリバースアイドラ軸103を経由するが無段変速機構42を経由しないので、前進時と比較して、動力の伝達経路が長くなることを抑制でき、動力の伝達効率が低下することを抑制できるばかりか、伝達効率を向上させることができる。その結果、変速ユニット1が搭載される車両の燃費を向上させることができる。
【0073】
しかも、車両の後進時には、前進クラッチ83が解放され、動力が無段変速機構42を経由しないので、無段変速機構42の変速比を小さくして(ハイにして)、前進クラッチ83のクラッチドラム84の回転数を下げることができる。これにより、油圧室87内に発生する遠心油圧を下げることができ、その遠心油圧によるクラッチピストン86の押し付け圧を低減することができる。その結果、クラッチピストン86をクラッチプレート151から離間させるための付勢力を発生するリターンスプリング88およびリターンスプリング88をクラッチピストン86との間に介在させるバランサ153の廃止、ないしは、リターンスプリング88の荷重を低減でき、変速ユニット1のコストおよび質量を低減させることができる。
【0074】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0075】
たとえば、前述の実施形態では、変速ユニット1は、エンジン2の後側に、CVT5のインプット軸41が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで配置されているとした。しかしながら、これに限らず、本発明は、エンジン2の左側または右側に、CVTの入力軸(インプット軸)が車両の左右方向に延びるように横置きされる変速ユニットに適用することもできる。
【0076】
また、無段変速機構42の動力伝達方式は、ベルト式に限らず、チェーン式またはトロイダル式であってもよい。
【0077】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1:変速ユニット(変速機)
41:インプット軸
42:無段変速機構
43:アウトプット軸
54:プライマリ軸
55:セカンダリ軸
82:プライマリ伝達ギヤ
83:前進クラッチ
84:クラッチドラム
85:クラッチハブ
86:クラッチピストン
87:油圧室
91:セカンダリ伝達ギヤ
92:後進クラッチ
103:リバースアイドラ軸
151:クラッチプレート
152:クラッチディスク
図1
図2
図3