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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】架空線自走機
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20240213BHJP
   B61B 7/06 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H02G1/02
B61B7/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020193348
(22)【出願日】2020-11-20
(62)【分割の表示】P 2020034698の分割
【原出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021036765
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019095422
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】武本 純平
(72)【発明者】
【氏名】大田和 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 竜一
(72)【発明者】
【氏名】於保 健一
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-255422(JP,A)
【文献】特開2002-17015(JP,A)
【文献】特開平1-255411(JP,A)
【文献】特開2017-22925(JP,A)
【文献】特開平1-99419(JP,A)
【文献】特開2000-350319(JP,A)
【文献】実開昭59-72812(JP,U)
【文献】実開平3-3111(JP,U)
【文献】特開平11-113123(JP,A)
【文献】特開昭61-293106(JP,A)
【文献】特開昭60-6857(JP,A)
【文献】特開昭59-148504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
B61B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の支持構造物と他方の支持構造物との間に敷設された架空線にセットされ、架空線に沿って走行させられる架空線自走機において、
(a)頂壁、第1、第2の側壁及び底壁を備え、架空線自走機の外周面を覆う筐体と、
(b)該筐体内において、架空線自走機の走行方向に向かって左側及び右側にそれぞれ回転自在に配設され、複数の走行ローラ対を形成する走行ローラを備え、該各走行ローラが架空線を面接触によって挟持する挟持位置、及び該挟持位置から退避した退避位置を採る第1、第2の駆動ユニットと、
(c)前記第1、第2の側壁と第1、第2の駆動ユニットとの間に配設され、第1、第2の駆動ユニットを挟持位置に向けて付勢する付勢部材とを有するとともに、
(d)各駆動ユニットは、架空線自走機の走行方向に延在させて配設され、一つの駆動部によって駆動力を発生させ、駆動部の回転を架空線自走機の走行方向における前方に向けて伝達する駆動力発生部、並びに架空線自走機の走行方向に延在させて配設され、複数の走行ローラ及び各走行ローラ間に配設された伝動部材を備え、前記駆動力発生部から駆動部の回転を受け、前記伝動部材を介して前記各走行ローラを回転させる走行ローラユニットを有し、
(e)前記第1、第2の駆動ユニットが挟持位置に置かれると、前記第1、第2の駆動ユニットを下方で支持する第1、第2の底板によって前記底壁が形成されることを特徴とする架空線自走機。
【請求項2】
前記各走行ローラは、架空線自走機の走行方向に複数の走行ローラ対を形成する請求項1に記載の架空線自走機。
【請求項3】
前記各走行ローラは円筒形の形状を有する請求項1又は2に記載の架空線自走機。
【請求項4】
架空線自走機の走行方向における前記各走行ローラより前方及び後方に、架空線に沿って連れ回りで回転させられ、架空線自走機を案内する案内ローラが配設される請求項1~3のいずれか1項に記載の架空線自走機。
【請求項5】
前記各案内ローラの外周縁に、架空線を収容するV字状の凹溝が形成される請求項4に記載の架空線自走機。
【請求項6】
前記各案内ローラは、架空線を跨設した状態で回転させられる請求項5に記載の架空線自走機。
【請求項7】
前記第1、第2の駆動ユニットが退避位置に置かれたときに、架空線が、第1、第2の駆動ユニット間に形成される隙間を介して筐体の底壁側から筐体内に導入される請求項1~6のいずれか1項に記載の架空線自走機。
【請求項8】
前記駆動力発生部は、駆動部の回転方向を走行ローラの回転方向に変換する運動方向変換部材を備える請求項1~7のいずれか1項に記載の架空線自走機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空線自走機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱、鉄塔等の支持構造物間、例えば、電柱間に敷設された配電線、架空地線等の架空線、例えば、配電線にセットされ、配電線に沿って走行させられ、各種の用途に使用される架空線自走機が提供されている。
【0003】
図2は従来の架空線自走機の側面図である。
【0004】
図において、11は2本の電柱間に敷設された配電線、12は該配電線11に沿って走行させられる架空線自走機である。
【0005】
該架空線自走機12は、本体フレーム14、該本体フレーム14に回転自在に配設された一対の走行ローラ16、18及び下部ローラ20、前記本体フレーム14から垂下させて配設された垂下フレーム22、該垂下フレーム22の下端に取り付けられ、例えば、前記配電線11の下方のビル等との距離を測定する測定機器24等を備える。
【0006】
前記走行ローラ16、18の外周縁には図示されないV字状の凹溝が形成され、該凹溝内に配電線11が収容されるように前記架空線自走機12が配電線11にセットされる。
【0007】
前記本体フレーム14内には図示されないモータが配設され、前記垂下フレーム22には、モータを駆動するための図示されないバッテリ、制御装置等が配設され、前記モータを駆動することによって、架空線自走機12が一方の電柱から他方の電柱まで配電線11に沿って走行させられる。
【0008】
なお、走行ローラ16、18が配電線11から外れないように、下部ローラ20が配電線11を走行ローラ16、18に押し付ける(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-33874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の架空線自走機12は、自重により撓んだ状態で電柱間に架設されている配電線11にセットされるので、一方の電柱から電柱間の中間部分までは円滑に走行させられるが、他方の電柱に近づくほど配電線11の傾きが大きくなるので、配電線11に対して走行ローラ16、18が滑り、走行速度が低くなったり、停止したりしてしまう。
【0011】
そこで、モータを大型化して駆動力を大きくしたり、走行ローラ16、18の径を大きくして、走行ローラ16、18と配電線11との接触面積を大きくしたりすることが考えられるが、モータを大型化したり、走行ローラ16、18の径を大きくしたりすると、架空線自走機12の重心が高くなり、架空線自走機12を安定させて配電線11に沿って走行させることができなくなってしまう。
【0012】
本発明は、前記従来の架空線自走機12の問題点を解決して、支持構造物間を確実に、かつ、安定させて架空線に沿って走行させることができる架空線自走機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の架空線自走機は、一方の支持構造物と他方の支持構造物との間に敷設された架空線にセットされ、架空線に沿って走行させられるようになっている。
【0014】
そして、頂壁、第1、第2の側壁及び底壁を備え、架空線自走機の外周面を覆う筐体と、該筐体内において、架空線自走機の走行方向に向かって左側及び右側にそれぞれ回転自在に配設され、複数の走行ローラ対を形成する走行ローラを備え、該各走行ローラが架空線を面接触によって挟持する挟持位置、及び該挟持位置から退避した退避位置を採る第1、第2の駆動ユニットと、前記第1、第2の側壁と第1、第2の駆動ユニットとの間に配設され、第1、第2の駆動ユニットを挟持位置に向けて付勢する付勢部材とを有する。
また、各駆動ユニットは、架空線自走機の走行方向に延在させて配設され、一つの駆動部によって駆動力を発生させ、駆動部の回転を架空線自走機の走行方向における前方に向けて伝達する駆動力発生部、並びに架空線自走機の走行方向に延在させて配設され、複数の走行ローラ及び各走行ローラ間に配設された伝動部材を備え、前記駆動力発生部から駆動部の回転を受け、前記伝動部材を介して前記各走行ローラを回転させる走行ローラユニットを有する。
そして、前記第1、第2の駆動ユニットが挟持位置に置かれると、前記第1、第2の駆動ユニットを下方で支持する第1、第2の底板によって前記底壁が形成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、架空線自走機は、一方の支持構造物と他方の支持構造物との間に敷設された架空線にセットされ、架空線に沿って走行させられるようになっている。
【0016】
そして、頂壁、第1、第2の側壁及び底壁を備え、架空線自走機の外周面を覆う筐体と、該筐体内において、架空線自走機の走行方向に向かって左側及び右側にそれぞれ回転自在に配設され、複数の走行ローラ対を形成する走行ローラを備え、該各走行ローラが架空線を面接触によって挟持する挟持位置、及び該挟持位置から退避した退避位置を採る第1、第2の駆動ユニットと、前記第1、第2の側壁と第1、第2の駆動ユニットとの間に配設され、第1、第2の駆動ユニットを挟持位置に向けて付勢する付勢部材とを有する。
また、各駆動ユニットは、架空線自走機の走行方向に延在させて配設され、一つの駆動部によって駆動力を発生させ、駆動部の回転を架空線自走機の走行方向における前方に向けて伝達する駆動力発生部、並びに架空線自走機の走行方向に延在させて配設され、複数の走行ローラ及び各走行ローラ間に配設された伝動部材を備え、前記駆動力発生部から駆動部の回転を受け、前記伝動部材を介して前記各走行ローラを回転させる走行ローラユニットを有する。
そして、前記第1、第2の駆動ユニットが挟持位置に置かれると、前記第1、第2の駆動ユニットを下方で支持する第1、第2の底板によって前記底壁が形成される。
【0017】
この場合、第1、第2の駆動ユニットが挟持位置に置かれると、各走行ローラによって架空線が面接触によって挟持されるので、架空線自走機が他方の支持構造物に近づいて架空線の傾きが大きくなっても、架空線に対して走行ローラが滑ることがなく、架空線自走機の走行速度が低くなったり、架空線自走機が停止したりすることがない。
【0018】
そして、駆動部を大型化したり、走行ローラの径を大きくしたりする必要がないので、架空線自走機の重心が高くなることがなく、架空線自走機を確実に、かつ、安定させて走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における架空線自走機の第1の分解斜視図である。
図2】従来の架空線自走機の側面図である。
図3】本発明の実施の形態における架空線自走機の斜視図である。
図4】本発明の実施の形態における架空線自走機の正面図である。
図5】本発明の実施の形態における架空線自走機の平面図である。
図6】本発明の実施の形態における架空線自走機の第2の分解斜視図である。
図7】本発明の実施の形態における架空線自走機の第3の分解斜視図である。
図8】本発明の実施の形態における架空線自走機の第4の分解斜視図である。
図9】本発明の実施の形態における左駆動ユニットの側面図である。
図10】本発明の実施の形態における駆動力発生部の斜視図である。
図11】本発明の実施の形態における駆動力発生部の分解斜視図である。
図12】本発明の実施の形態における走行ローラユニットの分解斜視図である。
図13】本発明の実施の形態における脱落防止棒の分解斜視図である。
図14】本発明の実施の形態における架空線自走機の制御回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、支持構造物としての電柱間に敷設された架空線としての配電線にセットされ、配電線に沿って走行させられ、電柱間に新たな配電線を敷設する架空線自走機について説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態における架空線自走機の第1の分解斜視図、図3は本発明の実施の形態における架空線自走機の斜視図、図4は本発明の実施の形態における架空線自走機の正面図、図5は本発明の実施の形態における架空線自走機の平面図、図6は本発明の実施の形態における架空線自走機の第2の分解斜視図、図7は本発明の実施の形態における架空線自走機の第3の分解斜視図、図8は本発明の実施の形態における架空線自走機の第4の分解斜視図である。なお、図1は架空線自走機を前側右上方から見た分解斜視図、図6及び7は架空線自走機を後側右上方から見た分解斜視図、図8は架空線自走機を前側左上方から見た分解斜視図である。
【0022】
図において、31は電柱間に敷設された配電線、32は該配電線31にセットされる架空線自走機、Csは該架空線自走機32の外周面を覆う、ポリカーボネート等の樹脂材料から成る筐体である。該筐体Csは、架空線自走機32の走行方向における前端及び後端が開放された四角形の形状を有する筒状体から成り、筐体Csの上端に配設された頂壁WT、架空線自走機32の走行方向に向かって左端に配設された第1の側壁としての左側壁WL、右端に配設された第2の側壁としての右側壁WR、及び筐体Csの下端に配設された底壁WBを備え、前記頂壁WTは、頂壁本体Wa、及び該頂壁本体Waに対して揺動自在に、かつ、開閉自在に配設されたカバーWbを備える。
【0023】
前記頂壁WT、左側壁WL及び右側壁WRは、一体的に形成され、逆「U」字型の形状を有する外筐部Hsを形成する。また、底壁WBは、架空線自走機32の幅方向における左右に二つに分割され、かつ、互いに対向させて配設された第1の底板としての左底板部Lp及び第2の底板としての右底板部Rpから成る。
【0024】
なお、左側壁WL、右側壁WR及び頂壁本体Waは、内周面に補強用のメカフレームFL、FR、FTを備える。該各メカフレームFL、FR、FTは、プレス加工等によって形成された金属製のプレートを樹脂材料で覆うことによって形成される。
【0025】
前記筐体Csは、前端に前開口hfが、後端に後開口hrが形成され、架空線自走機32が配電線31にセットされた状態で、配電線31が前開口hfから後開口hrにかけて架空線自走機32を貫通させて延在させられる。
【0026】
また、前記筐体Csの前端部は、図3に示されるように、前開口hfにかけて絞られた形状を有する。したがって、配電線31が樹木の茂み内に架設されている場合であっても、架空線自走機32を樹木の隙間を抜けて走行させることができる。
【0027】
そして、前記筐体Cs内には、架空線自走機32が配電線31にセットされたときに、配電線31を跨設し、架空線自走機32を配電線31が延在する方向に案内する複数の、本実施の形態においては、1対の案内ローラ34、35がそれぞれ前開口hf及び後開口hrと対向させて回転自在に配設される。
【0028】
前記各案内ローラ34、35は、外筐部Hsに対して回転自在に、かつ、前記左側壁WL及び右側壁WR間に架設されたシャフトsh1に対して回転自在に配設される。各案内ローラ34、35の外周縁にはV字状の凹溝m1が形成され、架空線自走機32が配電線31にセットされると、前記凹溝m1内に配電線31が収容され、各案内ローラ34、35が、配電線31を跨設した状態にされる。
【0029】
なお、案内ローラ34、35はリトリルゴム等のゴム材料によって形成される。
【0030】
また、筐体Cs内は、水平に延在させられた区画板45によって二つに分割され、底壁WBと区画板45との間に第1の室としての駆動装置収容室Rm1が、区画板45と頂壁WTとの間に第2の室としての制御装置収容室Rm2が形成され、駆動装置収容室Rm1に、架空線自走機32を配電線31に沿って走行させるための駆動装置Drが収容され、制御装置収容室Rm2に、駆動装置Drの制御を行うための制御装置47、駆動装置Drに電力を供給するバッテリ48、及び該バッテリ48の前端に取り付けられ、架空線自走機32の前方を照射する照射部材としての照射ランプ49が収容される。
【0031】
前記架空線自走機32と図示されないリモコンとが無線によって接続され、作業者が、リモコンを操作し、無線通信を行うことによって、前記駆動装置Drが駆動され、配電線31に沿って架空線自走機32が走行させられる。
【0032】
また、作業者が前記リモコンを操作することによって前記照射ランプ49が点灯させられ、架空線自走機32の前方が照射される。したがって、作業者は、前方における配電線31、碍子等の状態を監視しながら架空線自走機32を走行させることができるだけでなく、遠方から架空線自走機32の位置を確認し、位置に応じて架空線自走機32を円滑に走行させることができる。
【0033】
さらに、頂壁本体Waには、撮像装置としての図示されないカメラが配設され、該カメラによって、架空線自走機32の前方、例えば、配電線31、碍子等の状態が撮影され、リモコンの表示部に前方の状態が表示される。したがって、作業者は、表示部に表示された前方の状態を見ながら架空線自走機32を走行させることができる。
【0034】
なお、前記バッテリ48の出力電圧は7.2〔V〕にされる。
【0035】
前記駆動装置Drは、筐体Cs内において、架空線自走機32の走行方向に向かって左側に配設され、前記左底板部Lpによって支持された第1の駆動ユニットとしての左駆動ユニットLd、及び架空線自走機32の走行方向に向かって右側に配設され、前記右底板部Rpによって支持された第2の駆動ユニットとしての右駆動ユニットRdを備える。
【0036】
前記左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdは、いずれも、前記後開口hr側から前開口hf側に向けて延在させて配設され、後述される駆動部としてのモータM(図9)によって駆動力を発生させる駆動力発生部51、及び該駆動力発生部51の上方に配設され、駆動力発生部51によって発生させられた駆動力を受けて後述される走行ローラ58、59を回転させる走行ローラユニット52を備える。
【0037】
前記左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdは、互いに対向させて、架空線自走機32の幅方向に移動自在に配設され、架空線自走機32の幅方向における中央側に設定された挟持位置、及び架空線自走機32の幅方向における左側壁WL及び右側壁WRに近接させて設定され、前記挟持位置から退避した退避位置を採る。
【0038】
そのために、左側壁WLのメカフレームFLと左駆動ユニットLdとの間、及び右側壁WRのメカフレームFRと右駆動ユニットRdとの間に、それぞれ、複数の、本実施の形態においては、2個の付勢部材としてのスプリングユニットSpが配設され、該各スプリングユニットSpは、所定の付勢力で左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdを前記挟持位置に向けて付勢する。
【0039】
前記各スプリングユニットSpは、一端がメカフレームFL、FRに固定され、他端が左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdと対向させられる芯棒Sp1、及び該芯棒Sp1の外周を包囲し、一端が左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdに、他端がメカフレームFL、FRに固定されたコイルスプリングSp2を備える。該コイルスプリングSp2は芯棒Sp1より長くされ、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdが挟持位置に置かれた状態で、芯棒Sp1の他端と左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdとの間に十分な圧縮代が形成され、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdが退避位置に置かれた状態で、芯棒Sp1の他端と左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdとが当接させられる。
【0040】
また、前記左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdには、前記左側壁WL及び右側壁WRと対向する面に、「L」字型の形状を有する把手55が突出させて形成される。作業者が、両手で各把手55を持ち、左右に移動させると、左駆動ユニットLdと右駆動ユニットRdとの隙間が広くなるので、架空線自走機32を容易に配電線31にセットすることができる。
【0041】
さらに、前記左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdには、それぞれ、複数の、本実施の形態においては、3個の走行ローラ58、59が、互いに対向させて、かつ、回転自在に配設され、架空線自走機32の走行方向に、前方から後方にかけて3個の走行ローラ対Xi(i=1、2、3)を形成する。各走行ローラ58、59は、円筒形の形状を有し、ウレタンゴム、クロロプレンゴム等のゴム材料によって形成される。なお、前記左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdにおける各走行ローラ58、59以外の各部品は、いずれも樹脂材料によって形成される。
【0042】
前記左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdが挟持位置に置かれると、走行ローラ58、59によって配電線31が挟持され、前記左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdが退避位置に置かれると、左駆動ユニットLdと右駆動ユニットRdとの間、及び走行ローラ58、59間に所定の隙間が形成される。
【0043】
前記走行ローラ58、59は、円筒形の形状を有するので、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdが挟持位置に置かれたときに、配電線31と面接触させられ、配電線31との間に隙間を形成することなく、配電線31を確実に挟持する。
【0044】
また、60は、架空線自走機32の所定の箇所に配設され、通線用(パイロット用)の図示されない通線部材(リード線)としてのロープを結ぶための連結部としてのリングであり、該リング60は、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdの各駆動力発生部51から突出させて形成される。
【0045】
作業者が、前記リング60にロープの一端を結ぶとともに、ロープの他端に新たな配電線を結び、一方の電柱側から他方の電柱側に配電線31に沿って架空線自走機32を走行させると、ロープが電柱間に架設される。続いて、作業者が、リング60からロープを取り外し、ロープを引き寄せることによって、新たな配電線を各電柱間に架設し、敷設することができる。
【0046】
そして、図において、61は、前記前開口hf及び後開口hrの近傍において外筐部Hsに対して着脱自在に配設された脱落防止棒である。作業者が、配電線31を筐体Cs内に導入し、架空線自走機32を配電線31にセットした後、各脱落防止棒61を左側壁WLと右側壁WRとの間に架設し、左側壁WL及び右側壁WRに固定すると、筐体Cs内における配電線31の下方が脱落防止棒61によって閉鎖されるので、配電線31が架空線自走機32から外れることがなく、架空線自走機32が配電線31から脱落するのを防止することができる。
【0047】
次に、前記左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdについて説明する。なお、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdは同じ構造を有するので、左駆動ユニットLdについてだけ説明する。
【0048】
図9は本発明の実施の形態における左駆動ユニットの側面図、図10は本発明の実施の形態における駆動力発生部の斜視図、図11は本発明の実施の形態における駆動力発生部の分解斜視図、図12は本発明の実施の形態における走行ローラユニットの分解斜視図である。
【0049】
図において、Ldは左駆動ユニット、51は駆動力発生部、52は走行ローラユニットである。
【0050】
前記駆動力発生部51は、前記モータMを駆動することによって回転を発生させ、発生させた回転を走行ローラユニット52に伝達し、走行ローラ58を走行させる駆動力伝達装置62、モータMが停止する等、架空線自走機32(図1)に異常が発生したときに、モータMと走行ローラ58との連結を遮断するレスキュー装置63、並びに前記駆動力伝達装置62及びレスキュー装置63を隣接させた状態で支持するフレーム64を備える。該フレーム64は、ベース部64a、該ベース部64aの前端及び後端から立ち上げて形成された立上部64b、64c、及び前記ベース部64aの前端側から後端側にかけて、ベース部64aから立ち上げて形成された補助立上部64d、64e、64fを備える。該補助立上部64d、64e、64fのうちの補助立上部64d、64fがベース部64aに固定されるのに対して、補助立上部64eは、ベース部64aに対して配電線31が延在する方向に摺動自在に配設されるとともに、駆動力伝達装置62とレスキュー装置63との間に延在させられ、作業者によるレスキュー装置63の操作に連動させて移動させられる。
【0051】
前記駆動力伝達装置62は、前記モータM、該モータMと隣接させて配設され、フレーム64より後方において立上部64cに取り付けられ、モータMを駆動することによって発生させられた回転を減速する減速機66、該減速機66と隣接させて配設され、フレーム64内において立上部64c及び補助立上部64fに取り付けられた軸継手67、シャフトsh2を介して軸継手67と連結され、モータMの回転の伝達を遮断する継手部材としてのクラッチ69、補助立上部64dを貫通するシャフトsh3を介してクラッチ69と連結された第1の運動方向変換部材としての傘歯車73、並びに該傘歯車73と噛合させられ、傘歯車73に伝達された回転の方向を変換して駆動力発生部51に伝達する第2の運動方向変換部材としての、かつ、回転出力部材としての傘歯車74を備える。なお、傘歯車73、74によって、モータMの回転方向を走行ローラ58の回転方向に変換する運動方向変換部材が構成される。
【0052】
本実施の形態においては、走行ローラ58、59を互いに逆方向に回転させることによって、架空線自走機32が配電線31上を走行させられるようになっているので、左駆動ユニットLdのモータM及び右駆動ユニットRdのモータMは互いに逆方向に駆動される。
【0053】
前記クラッチ69は、補助立上部64eより前方の被駆動側部材71、及び補助立上部64eより後方の駆動側部材72から成り、通常は、駆動側部材72から被駆動側部材71に回転を伝達し、モータMが停止する等、架空線自走機32に異常が発生したときに、駆動側部材72と被駆動側部材71とを分離させる。
【0054】
また、レスキュー装置63は、前記立上部64cから後方に向けて突出させて形成されたスリーブ75、該スリーブ75及び前記立上部64cを貫通させて延在させられ、後端にリング60を、前端に磁石76を備えたレスキュー棒78、並びに前記磁石76と対向させて立上部64bに取り付けられた、強磁性体から成る吸引部材としての鉄板79を備え、前記レスキュー棒78は、後端に前記リング60が形成された第1の連結棒81、前記補助立上部64eを介して前記第1の連結棒81と連結され、フレーム64内において延在させて配設された、第1の連結棒81より径の小さい第2の連結棒82及び前記磁石76から成る。
【0055】
通常は、磁石76が吸引力によって鉄板79に吸引され、前記レスキュー棒78は吸引力によって架空線自走機32に固定されているが、モータMが停止する等、架空線自走機32に異常が発生したときに、ロープを介してレスキュー棒78を引くことによって、吸引力に抗して磁石76を鉄板79から分離させ、レスキュー棒78を後方に移動させることができる。このとき、レスキュー棒78と共に前記補助立上部64eが後方に移動させられ、前記クラッチ69の駆動側部材72が被駆動側部材71から分離させられる。
【0056】
その結果、シャフトsh2、sh3が分離させられるので、作業者がレスキュー棒78を引いて架空線自走機32を回収する際に、停止させられたモータMのロータが回転させられることなく、各走行ローラ58を容易に回転させることができる。
【0057】
なお、ベース部64aに固定された補助立上部64fと、ベース部64aに対して摺動自在に配設された補助立上部64eとの間に、付勢部材としての図示されないスプリングが配設され、該スプリングの付勢力によってレスキュー棒78が前方に向けて付勢される。したがって、作業者がレスキュー棒78を引くのをやめると、スプリングの付勢力によって補助立上部64eが前方に移動させられる。これに伴って、レスキュー棒78が前方に移動させられ、磁石76が吸引力によって鉄板79に吸引されるとともに、前記クラッチ69の駆動側部材72が被駆動側部材71と連結されるので、架空線自走機32を再び走行させることができる。
【0058】
そして、前記走行ローラユニット52は、前記駆動力発生部51のフレーム64を覆うとともに、各走行ローラ58を下方で支持する第1のローラ支持部としての下支持板84、該下支持板84と所定の距離を置いて配設され、各走行ローラ58を上方で支持する第2のローラ支持部としての上支持板85、下支持板84と上支持板85との間に回転自在に配設されたローラ軸sh11~sh13、該ローラ軸sh11~sh13に取り付けられた前記走行ローラ58、ローラ軸sh11、sh12間に張設された第1の伝動部材としてのチェーン88、ローラ軸sh12、sh13間に張設された第2の伝動部材としてのチェーン89等を備える。
【0059】
なお、ローラ軸sh11、sh12には、ローラ軸sh11、sh12間にチェーン88を張設するために、第1の回転伝動部材としてのスプロケットgr1、gr2が形成され、ローラ軸sh12、sh13には、ローラ軸sh12、sh13間にチェーン89を張設するために、第2の回転伝動部材としてのスプロケットgr3、gr4が形成される。
【0060】
また、チェーン88、89にテンションを付与するためのテンションローラ91~93が下支持板84から立ち上げて回転自在に配設され、各テンションローラ91~93に図示されないスプロケットが形成される。
【0061】
駆動力発生部51から伝達された回転が、ローラ軸sh11に伝達されることによって走行ローラ58が回転させられ、また、チェーン88を介してローラ軸sh12に伝達されることによって走行ローラ58が回転させられ、さらに、チェーン89を介してローラ軸sh13に伝達されることによって走行ローラ58が回転させられる。
【0062】
次に、前記脱落防止棒61について説明する。
【0063】
図13は本発明の実施の形態における脱落防止棒の分解斜視図である。
【0064】
図において、61は左側壁WL(図3)と右側壁WRとの間に延在させて配設された脱落防止棒、95は摘み、bt1は前記左側壁WLに形成された図示されない螺合孔と螺合させられる固定部、97は、一端が前記摘み95と螺合によって連結され、他端が、前記右側壁WRに形成された図示されない挿入孔に挿入される挿入部96と螺合によって連結される芯棒、98はスペーサ、101、102は、前記芯棒97の外周を包囲し、芯棒97に対して回転自在に配設されたスリーブ、103はワッシャである。
【0065】
作業者がレスキュー棒78(図11)を引いて架空線自走機32(図1)を回収する際に、配電線31と脱落防止棒61とが当接すると、芯棒97に対してスリーブ101、102が回転させられる。したがって、架空線自走機32を円滑に回収することができるだけでなく、配電線31と脱落防止棒61とが干渉して架空線自走機32が破損するのを防止することができる。
【0066】
なお、前記脱落防止棒61を構成する各部材は、いずれも樹脂材料によって形成される。
【0067】
次に、架空線自走機32の制御装置について説明する。
【0068】
図14は本発明の実施の形態における架空線自走機の制御回路図である。
【0069】
図において、32は架空線自走機、t1~t4はバッテリ48(図1)に接続された7.2〔V〕の電源端子、SW1は電源端子t1に接続された電源スイッチ、SW2はリレースイッチ、111は該リレースイッチSW2に接続された電源ランプ、113は、リレースイッチSW2に接続され、3.3〔V〕の制御用電圧を発生させるDC/DCコンバータ、114は、リレースイッチSW2に接続され、5〔V〕の制御用電圧を発生させるDC/DCコンバータである。
【0070】
電源スイッチSW1がオンにされると、リレースイッチSW2がオンになり、電源ランプ111が点灯されるとともに、DC/DCコンバータ113の電源端子t5に3.3〔V〕の制御用電圧が発生させられ、 DC/DCコンバータ114の電源端子t6に5〔V〕の制御用電圧が発生させられる。
【0071】
また、116は無線受信機、DO1~DO4は無線受信機116の出力端子、Tr1~Tr4はトランジスタ、OR1、OR2はオア回路、NTはノット回路、118、120はモータドライバ、Mはモータ、R1~R4は前記電源端子t6に接続されたプルアップ抵抗、R5~R8は前記トランジスタTr1~Tr4のベースに接続されたベース抵抗である。
【0072】
前記オア回路OR1の入力端子にトランジスタTr1のコレクタ電圧が入力され、オア回路OR1の反転入力端子にトランジスタTr3のコレクタ電圧が入力され、オア回路OR1の出力端子がモータドライバ118、120の一方の入力端子に入力される。また、前記オア回路OR2の入力端子にトランジスタTr2のコレクタ電圧が入力され、オア回路OR2の反転入力端子にノット回路NTの出力電圧が入力され、ノット回路NTの入力端子にトランジスタTr4のコレクタ電圧が入力される。
【0073】
前記リモコンと前記無線受信機116との間で無線通信が行われ、モータドライバ118、120が制御され、モータMの駆動・停止が行われる。なお、必要に応じてモータMを逆方向に駆動し、架空線自走機32を後退させることができる。
【0074】
次に、架空線自走機32の操作方法について説明する。
【0075】
まず、作業者は、レスキュー装置63(図10)の各リング60に通線用のロープの一端を結ぶとともに、ロープの他端に新たな配電線を結ぶ。
【0076】
続いて、作業者は、一方の電柱側において架空線自走機32を配電線31にセットする。そのために、作業者は、両手で各把手55を持ち、スプリングユニットSpの付勢力に抗して各把手55を左右に移動させ、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdを退避位置に置き、左駆動ユニットLdと右駆動ユニットRdとの間に形成された隙間を介して、架空線自走機32の底壁WB側から配電線31を筐体Cs内に導入し、走行ローラ58、59間に置き、続いて、各把手55を元に戻す。
【0077】
これにより、走行ローラ58、59によって配電線31が挟持され、架空線自走機32が配電線31にセットされる。
【0078】
次に、作業者は、脱落防止棒61を、左側壁WLと右側壁WRとの間に架設し、左側壁WL及び右側壁WRに固定する。
【0079】
続いて、作業者が架空線自走機32の電源スイッチSW1をオンにすると、リレースイッチSW2がオンにされ、電源端子t5に3.3〔V〕の制御用電圧が発生させられ、電源端子t6に5〔V〕の制御用電圧が発生させられる。そして、作業者が、リモコンを操作してモータMを駆動すると、モータMによって発生させられた回転が、軸継手67、クラッチ69等を介して傘歯車73、74に伝達され、傘歯車73、74によって運動方向が変換されて駆動力発生部51に伝達される。
【0080】
そして、駆動力発生部51において、前記回転が、ローラ軸sh11に伝達されることによって走行ローラ58が回転させられ、また、チェーン88を介してローラ軸sh12に伝達されることによって走行ローラ58が回転させられ、さらに、チェーン89を介してローラ軸sh13に伝達されることによって走行ローラ58が回転させられる。
【0081】
これにより、架空線自走機32は配電線31に沿って走行を開始する。このとき、案内ローラ34、35は、各走行ローラ58、59より前方及び後方で連れ回りで回転させられ、架空線自走機32を配電線31が延在する方向に案内する。
【0082】
本実施の形態においては、前述されたように、走行ローラ58、59によって3個の走行ローラ対Xiが形成され、該走行ローラ対Xiが、配電線31における複数箇所で十分に大きな力で配電線31を挟持する。
【0083】
したがって、大きな推進力が発生させられるので、他方の電柱に近づいて配電線31の傾きが大きくなっても、走行速度が低くなったり、停止したりすることなく、架空線自走機32を安定させて走行させることができる。
【0084】
また、配電線31には、延在方向における複数箇所に、連結部等の径が変化する部位、すなわち、障害部位が存在するが、架空線自走機32が障害部位に到達すると、走行ローラ58、59がスプリングユニットSpの付勢力によって配電線31を柔軟に、かつ、面接触で挟持するので、架空線自走機32を障害部位を乗り越えて確実に走行させることができる。しかも、各走行ローラ対Xiのうちの一つの走行ローラ対Xiにおいて走行ローラ58、59が障害部位によって離間させられても、他の二つの走行ローラ対Xiによって配電線31が挟持されるので、推進力を低下させることなく架空線自走機32を走行させることができる。
【0085】
このようにして、架空線自走機32が他方の電柱に到達すると、作業者は、リモコンを操作してモータMを停止させ、架空線自走機32の電源スイッチSW1をオフにする。
【0086】
続いて、作業者は、レスキュー装置63の各リング60から通線用のロープを外し、ロープを引き寄せ、ロープの他端に結ばれた新たな配電線を引き寄せ、新たな配電線を2本の電柱間に架設し、敷設する。
【0087】
そして、作業者は、脱落防止棒61を左側壁WL及び右側壁WRから取り外し、架空線自走機32の各把手55を左右に移動させ、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdを退避位置に置き、走行ローラ58、59を配電線31から離間させ、配電線31を左駆動ユニットLdと右駆動ユニットRdとの間に形成された隙間を介して筐体Cs内から取り出す。
【0088】
なお、架空線自走機32を走行させているときに、架空線自走機32に異常が発生した場合、一方の電柱側において、作業者は、ロープを引くことによって、磁石76による吸引力に抗してレスキュー棒78(図11)を後方に移動させ、クラッチ69の駆動側部材72を被駆動側部材71から分離させることができる。したがって、作業者がロープを引いて架空線自走機32を回収する際に、各走行ローラ58、59を容易に回転させることができる。
【0089】
このように、本実施の形態においては、作業者が左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdを挟持位置に置くと、各走行ローラ58、59が配電線31を面接触によって挟持するので、架空線自走機32が他方の電柱に近づいて配電線31の傾きが大きくなっても、配電線31に対して走行ローラ58、59が滑ることがなく、架空線自走機32の走行速度が低くなったり、架空線自走機32が停止したりすることがない。
【0090】
そして、モータMを大型化したり、走行ローラ5、59の径を大きくしたりする必要がないので、架空線自走機32の重心が高くなることがなく、架空線自走機32を確実に、かつ、安定させて走行させることができる。
【0091】
また、本実施の形態においては、架空線自走機32を構成する各部材(ねじ等の固定要素も含む。)が、樹脂材料、ゴム材料等の絶縁性の高い材料によって形成されるので、架空線自走機32が絶縁体を構成する。したがって、架空線自走機32を介して電流が流れるのを確実に防止することができる。
【0092】
さらに、本実施の形態においては、架空線自走機を配電線31に沿って走行させ、カメラによって架空線自走機32の前方だけでなく、配電線31、架空地線等を撮影し、配電線31、架空地線等の目視による劣化診断を行うことができる。その場合、カメラとして赤外線カメラを使用することによって、配電線31、架空地線等の赤外線熱画像診断を行うことができる。
【0093】
また、本実施の形態においては、筐体Csと左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdとの間に配設された各スプリングユニットSpが、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdを挟持位置に向けて付勢するようになっているが、左駆動ユニットLdと右駆動ユニットRdとの間に付勢部材としてのスプリングユニットSpを配設し、該スプリングユニットSpによって、左駆動ユニットLd及び右駆動ユニットRdを挟持位置に向けて付勢するようにすることもできる。
【0094】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0095】
31 配電線
32 架空線自走機
58、59 走行ローラ
Cs 筐体
Ld 左駆動ユニット
M モータ
Rd 右駆動ユニット
Sp スプリングユニット
Xi 走行ローラ対
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14