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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】搬送波再生回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/38 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
H04L27/38 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023006702
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2019018189の分割
【原出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2023040289
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018115524
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 秀史
(72)【発明者】
【氏名】田中 康英
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-265143(JP,A)
【文献】特開昭61-225951(JP,A)
【文献】特開平09-214578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00-27/38
H04L 7/00-7/10
H03L 7/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の位相を回転する位相回転器と、前記位相回転器によって位相が回転された入力信号である位相回転信号に含まれる位相誤差を検出する位相誤差検出器と、前記位相誤差に基づいて位相回転制御信号を生成する回転信号生成部と、を備え、前記位相回転器は、前記位相回転制御信号に基づいて前記入力信号の位相を回転する搬送波再生回路であって、
前記位相誤差検出器は、
複素平面上に基準点が配置される領域であるコンスタレーションが十字状で、該コンスタレーションの外側をI軸またはQ軸を境に進み領域と遅れ領域とに分け、
信号点が前記進み領域と前記遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、前記複素平面上の原点を中心にして全ての前記信号点からなる全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、前記位相誤差を検出する第1の十字エリア誤差検出部と、
前記進み領域と前記遅れ領域とを前記コンスタレーションの一部内側まで拡張し、前記信号点が前記進み領域と前記遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、前記複素平面上の原点を中心にして前記全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、前記位相誤差を検出する第2の十字エリア誤差検出部と、
を備え、前記信号点が前記コンスタレーションの外側に位置する頻度に基づいて、前記第1の十字エリア誤差検出部または前記第2の十字エリア誤差検出部のいずれかの位相誤差を前記回転信号生成部に出力する、
ことを特徴とする搬送波再生回路。
【請求項2】
入力信号の位相を回転する位相回転器と、前記位相回転器によって位相が回転された入力信号である位相回転信号に含まれる位相誤差を検出する位相誤差検出器と、前記位相誤差に基づいて位相回転制御信号を生成する回転信号生成部と、を備え、前記位相回転器は、前記位相回転制御信号に基づいて前記入力信号の位相を回転する搬送波再生回路であって、
前記位相誤差検出器は、
複素平面上に基準点が配置される領域であるコンスタレーションが四角形状で、該コンスタレーションの外側をI軸またはQ軸を境に進み領域と遅れ領域とに分け、さらに、前記コンスタレーションの角部とその外側を含む領域を位相誤差検出領域とし、
信号点が前記位相誤差検出領域に位置する場合には、前記信号点が前記進み領域と前記遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、前記複素平面上の原点を中心にして全ての前記信号点からなる全信号点群がどの方向にずれているかを判断し、
前記信号点が前記位相誤差検出領域に位置しない場合には、直前に判断した方向に前記全信号点群がずれていると判断し、
前記信号点が前記進み領域または前記遅れ領域にどのくらい位置しているかに基づいて、前記位相誤差を検出する、
ことを特徴とする搬送波再生回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル無線伝送において搬送波・受信波を再生する搬送波再生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線トラフィックが増々増加しており、周波数利用の高効率化の観点からデジタル無線伝送においては、高多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation、直角位相振幅変調)方式による高速伝送の要求が高まっている。この高多値QAM方式では、送信装置や受信装置において生じる搬送波の位相ノイズ(位相誤差)などによって、復調性能が劣化する場合がある。このため、位相ノイズと熱雑音の影響度に基づいて復調性能(ビット誤り率)を向上させる、という搬送波再生回路が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この搬送波再生回路は、位相誤差検出器が検出する位相誤差と振幅誤差検出器が検出する振幅誤差とに基づいて、ループフィルタ制御部がループフィルタの帯域幅を制御することで、位相ノイズや熱雑音に応じた適切な帯域幅に設定し、復調性能を向上させる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-101177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高多値化変調においては、搬送波・キャリア再生の位相誤差検出範囲が著しく狭くなる。すなわち、低多値の場合には、図23に示すように、隣接する基準点S1間の距離が大きいため位相誤差検出範囲W1が広いが、高多値の場合には、図24に示すように、隣接する基準点S1間の距離が小さいため位相誤差検出範囲W1が狭くなる。そして、位相誤差検出範囲が著しく狭くなるため、位相ノイズ環境下で図25に示すような位相ジッタ(位相の揺らぎ)が増加する状況になると、搬送波再生の同期外れに至る可能性がある。
【0006】
この結果、進み方向に位相が回転しているのか、遅れ方向に位相が回転しているのか、あるいは、どの基準点S1からどの信号点S2がずれているのか、判別できなくなる。ここで、図25中のハッチング内の誤検出信号により、信号点S2を基準点S1に近づけるように、位相が時計回りに回転し始める。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の搬送波再生回路では、熱雑音の軽減を優先するか、位相ノイズの軽減を優先するかによって、高多値時の搬送波再生ループの諸元を切り替えるものであり、高多値化に伴う位相誤差検出範囲の低下による不安定動作については考慮されていないため、低C/N環境における復調器の安定動作を実現することが困難であった。
【0008】
そこで本発明は、高多値においても安定した高い復調性能を実現可能な搬送波再生回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、入力信号の位相を回転する位相回転器と、前記位相回転器によって位相が回転された入力信号である位相回転信号に含まれる位相誤差を検出する位相誤差検出器と、前記位相誤差に基づいて位相回転制御信号を生成する回転信号生成部と、を備え、前記位相回転器は、前記位相回転制御信号に基づいて前記入力信号の位相を回転する搬送波再生回路であって、前記位相誤差検出器は、複素平面上に基準点が配置される領域であるコンスタレーションが十字状で、該コンスタレーションの外側をI軸またはQ軸を境に進み領域と遅れ領域とに分け、信号点が前記進み領域と前記遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、前記複素平面上の原点を中心にして全ての前記信号点からなる全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、前記位相誤差を検出する第1の十字エリア誤差検出部と、前記進み領域と前記遅れ領域とを前記コンスタレーションの一部内側まで拡張し、前記信号点が前記進み領域と前記遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、前記複素平面上の原点を中心にして前記全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、前記位相誤差を検出する第2の十字エリア誤差検出部と、を備え、前記信号点が前記コンスタレーションの外側に位置する頻度に基づいて、前記第1の十字エリア誤差検出部または前記第2の十字エリア誤差検出部のいずれかの位相誤差を前記回転信号生成部に出力する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、入力信号の位相を回転する位相回転器と、前記位相回転器によって位相が回転された入力信号である位相回転信号に含まれる位相誤差を検出する位相誤差検出器と、前記位相誤差に基づいて位相回転制御信号を生成する回転信号生成部と、を備え、前記位相回転器は、前記位相回転制御信号に基づいて前記入力信号の位相を回転する搬送波再生回路であって、前記位相誤差検出器は、複素平面上に基準点が配置される領域であるコンスタレーションが四角形状で、該コンスタレーションの外側をI軸またはQ軸を境に進み領域と遅れ領域とに分け、さらに、前記コンスタレーションの角部とその外側を含む領域を位相誤差検出領域とし、信号点が前記位相誤差検出領域に位置する場合には、前記信号点が前記進み領域と前記遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、前記複素平面上の原点を中心にして全ての前記信号点からなる全信号点群がどの方向にずれているかを判断し、前記信号点が前記位相誤差検出領域に位置しない場合には、直前に判断した方向に前記全信号点群がずれていると判断し、前記信号点が前記進み領域または前記遅れ領域にどのくらい位置しているかに基づいて、前記位相誤差を検出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、信号点がコンスタレーションの外側に位置する頻度に基づいて、第1の十字エリア誤差検出部または第2の十字エリア誤差検出部のいずれかの位相誤差が回転信号生成部に出力されるため、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となる。すなわち、第1の十字エリア誤差検出部では、コンスタレーションの外側である進み領域と遅れ領域のどちらに信号点が多く位置しているかによって、全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、位相誤差を検出するため、位相誤差を検出できる信号点の数を多く確保することが可能となる。一方、第2の十字エリア誤差検出部では、コンスタレーションの一部内側まで拡張された進み領域と遅れ領域のどちらに信号点が多く位置しているかによって、全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、位相誤差を検出するため、どの方向にずれているかをより正確に判断することが可能となる。
【0012】
従って、このような第1の十字エリア誤差検出部と第2の十字エリア誤差検出部とを併設して、回転信号生成部への出力を切り替えることで、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となるものである。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、信号点が位相誤差検出領域に位置する場合にのみ、全信号点群がどの方向にずれているかを判断し、信号点が位相誤差検出領域に位置しない場合には、直前に判断した方向に全信号点群がずれていると判断する。このため、周波数誤差による回転が速く、ループ引き込み(周波数特性の補償)が始まる前に、すぐに信号点の位置領域が進み領域および遅れ領域に反転する場合でも、どの方向にずれているかをより正確に判断することが可能となる。この結果、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態1に係る搬送波再生回路を示す概略構成ブロック図である。
図2図1の搬送波再生回路における位相誤差検出器を示す概略構成図である。
図3図2の位相誤差検出器のポーラー誤差検出部の検出方法を示す概念図である。
図4図2の位相誤差検出器の全点誤差検出部の検出方法を示す概念図である。
図5】この発明の実施の形態2に係る搬送波再生回路の位相誤差検出器を示す概略構成図である。
図6図5の位相誤差検出器のエリア誤差検出部の検出方法を示す第1の概念図である。
図7図5の位相誤差検出器のエリア誤差検出部の検出方法を示す第2の概念図である。
図8】この発明の実施の形態3に係る搬送波再生回路の位相誤差検出器を示す概略構成図である。
図9】この発明の実施の形態4に係る搬送波再生回路の位相誤差検出器を示す概略構成図である。
図10図9の位相誤差検出器における進み領域と遅れ領域の位置関係を示す図である。
図11図10の進み領域と遅れ領域における誤検出領域と正常検出領域を示す図である。
図12図10の進み領域と遅れ領域を拡張した場合の誤検出領域と正常検出領域を示す図である。
図13図12の進み領域と遅れ領域において、誤差検出対象にならない信号点を示す図である。
図14図9の位相誤差検出器における頻度検出部による検出状態を示す図である。
図15図9の位相誤差検出器において、第1の十字エリア誤差検出部が選択された場合の進み領域と遅れ領域を示す図である。
図16図9の位相誤差検出器において、第2の十字エリア誤差検出部が選択された場合の進み領域と遅れ領域を示す図である。
図17】この発明の実施の形態2において、全信号点群が進み方向に回転した状態を示す図である。
図18図17に続いて、全信号点群がさらに進み方向に回転した状態を示す図である。
図19】この発明の実施の形態5における位相誤差検出領域を示す図である。
図20】この発明の実施の形態5において、全信号点群が進み方向に回転した場合の信号点と位相誤差検出領域の位置関係を示す図である。
図21図20に続いて、全信号点群がさらに進み方向に回転した場合の信号点と位相誤差検出領域の位置関係を示す図である。
図22図21の状態から位相回転が抑制された状態を示す図である。
図23】この発明において、低多値の場合の1つの信号点に対する位相誤差検出範囲を示す概念図である。
図24】この発明において、高多値の場合の1つの信号点に対する位相誤差検出範囲を示す概念図である。
図25】この発明において、高多値化による位相ジッタが生じた状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1図4は、この実施の形態を示し、図1は、この実施の形態に係る搬送波再生回路1を示す概略構成ブロック図である。この搬送波再生回路1は、デジタル無線伝送において搬送波を再生する回路であり、主として、第1の位相回転器(位相回転器)2と、適応等化器3と、位相誤差検出器4と、LPF5と、NCO(回転信号生成部)6と、第2の位相回転器7と、等化器8と、を備える。
【0017】
第1の位相回転器2は、入力信号の位相を回転する回転器・乗算器であり、後述するNCO6の位相回転制御信号に基づいて入力信号の位相を回転する。具体的には、デジタル信号に変換されたIチャネルのベースバンド信号およびQチャネルのベースバンド信号の各々に対して、NCO6の位相回転制御信号の正弦波および余弦波に基づいて位相回転を行うものである。
【0018】
適応等化器3は、第1の位相回転器2によって位相が回転された入力信号である位相回転信号の周波数特性を補償する、つまり、位相回転信号の波形歪やデータ誤りを解消する等化器である。ここで、適応等化器3は、判定帰還型等化器(DFE:Decision Feedback Equalizer)や線形等化器で構成され、判定指向アルゴリズムやCMAアルゴリズムに基づいて、適応等化器3のタップ係数が更新されるようになっている。
【0019】
位相誤差検出器4は、適応等化器3によって補償された位相回転信号に含まれる位相誤差を検出する検出器であり、詳細については後述する。なお、位相誤差には、位相の回転方向(進み方向か遅れ方向か)と位相誤差量(回転量)とを含む。
【0020】
LPF5は、位相誤差検出器4で検出された位相誤差の高周波成分を、所定の帯域幅に応じて除去するフィルタであり、ローパスフィルタ(Low Pass Filter)で構成されている。
【0021】
NCO6は、LPF5で高周波成分が除去された位相誤差に基づいて、位相回転制御信号を生成する生成部であり、NCO(Numerically Controlled Oscillator、数値制御発振器)で構成されている。具体的には、LPF5からの位相誤差に基づいて逆位相の正弦波および余弦波を生成し、第1の位相回転器2に出力することで、第1の位相回転器2による位相回転を制御するものである。さらに、生成した位相回転制御信号を第2の位相回転器7に出力する。
【0022】
第2の位相回転器7は、入力信号の位相を回転する回転器・乗算器であり、NCO6からの位相回転制御信号に基づいて入力信号の位相を回転して、周波数特性を補償する等化器8に出力する。すなわち、適応等化器3によって周波数特性補償(波形歪等が解消)されて検出された位相誤差に基づくNCO6からの正弦波および余弦波に基づいて、入力信号の位相を回転する。このように、搬送波再生ループ(第1の位相回転器2、位相誤差検出器4、LPF5およびNCO6のループ)のなかに適応等化器3が実装されており、これにより、周波数特性を補償した後に推定した位相誤差値に基づいて、入力信号の位相ノイズをキャンセルする。
【0023】
次に、位相誤差検出器4について説明すると、位相誤差検出器4は、図2に示すように、ポーラー誤差検出部41と、全点誤差検出部42と、選択スイッチ44と、を備える。
【0024】
ポーラー誤差検出部41は、図3に示すように、複素平面上の原点(I軸とQ軸の交点)から第1の半径C1外に位置する信号点S2、あるいは、複素平面上の原点から第1の半径C1よりも小さい第2の半径C2内に位置する信号点S2の、少なくとも一方の信号点S2に対して位相誤差を検出する検出部である。
【0025】
すなわち、予め等間隔に縦横に複数の基準点(理想点)S1が配置された複素平面上において、原点から第1の半径C1よりも外側では、基準点S1およびこれに対応する信号点S2の数(図3では3点)が少ない。同様に、予め等間隔に縦横に複数の基準点S1が配置された複素平面上において、原点から第2の半径C2(C2≪C1)よりも内側では、基準点S1およびこれに対応する信号点S2の数(図3では3点)が少ない。換言すると、このような少ない基準点S1および信号点S2が検出対象となり、不安定動作が生じないように半径C1、C2の大きさが設定されている。なお、位相誤差がない場合には、基準点S1と信号点S2とが重なっている。
【0026】
そして、このように基準点S1および信号点S2が少ない領域では、位相誤差検出範囲(検出可能範囲)が広いため、位相の揺らぎなどによる不安定動作が生じにくく、搬送波再生の同期外れに至るのを防止、抑制することができる。つまり、傾斜45度の基準線Lに対する信号点S2のずれ方向を判別することで、進み方向に位相が回転しているのか、遅れ方向に位相が回転しているのかを確実に検出でき、また、基準線Lからの信号点S2のずれ量・回転量を算出することで位相誤差量を確実に検出することが可能となる。一方で、少ない信号点S2に対してのみ位相誤差を検出するため、位相誤差の検出精度は低い。
【0027】
ここで、第1の半径C1外に位置する信号点S2のみで位相誤差を検出するか、第2の半径C2内に位置する信号点S2のみで位相誤差を検出するか、あるいは、双方の信号点S2で位相誤差を検出するかは、要求精度や予測される位相誤差量などに基づいて設定される。
【0028】
全点誤差検出部42は、複素平面上の全信号点S2に対して、該信号点S2に対応する基準点S1を中心とする所定範囲(位相誤差検出範囲)W1内における位相誤差を検出する検出部である。
【0029】
すなわち、図4に示すように、複素平面上に予め等間隔に縦横に複数の基準点S1が配置され、各基準点S1間を等間隔に縦横に区切るように、各基準点S1を中心とする四角形の位相誤差検出範囲W1が密に設定されている。そして、それぞれの位相誤差検出範囲W1において、基準点S1に対して信号点S2が進み方向または遅れ方向にどのくらいずれているか、という位相誤差を算出、検出するものである。ここで、位相誤差検出範囲W1内に位置する信号点S2に対してのみ検出を行い、位相誤差検出範囲W1外に位置する信号点S2に対しては検出を行わない。
【0030】
このような全点誤差検出部42では、複素平面上の全信号点S2に対して位相誤差を検出するため、精度高く位相誤差を検出できるが、高多値化で位相誤差検出範囲W1が狭くなると、位相の揺らぎなどによる不安定動作が生じ、搬送波再生の同期外れに至る可能性がある。
【0031】
選択スイッチ44は、ポーラー誤差検出部41または全点誤差検出部42の一方の位相誤差をNCO6(LPF5)に出力するスイッチであり、ポーラー誤差検出部41からの切替信号に従ってスイッチを切り替える。
【0032】
すなわち、上記のようなポーラー誤差検出部41と全点誤差検出部42による検出を並行して行って選択スイッチ44に入力し、ポーラー誤差検出部41で検出された位相誤差に基づいて、ポーラー誤差検出部41または全点誤差検出部42のいずれかの位相誤差をNCO6に出力する。具体的には、通常時は、全点誤差検出部42の位相誤差をNCO6に出力し、ポーラー誤差検出部41で検出された位相誤差が所定の閾値以上の場合に、不安定動作が生じて搬送波再生の同期外れに至る可能性があるとして、ポーラー誤差検出部41の位相誤差をNCO6に出力すべき切替信号を、ポーラー誤差検出部41から選択スイッチ44に伝送する。その後、ポーラー誤差検出部41で検出された位相誤差が所定の閾値未満(または、それよりも低い値)になった場合に、全点誤差検出部42の位相誤差をNCO6に出力すべき切替信号を、ポーラー誤差検出部41から選択スイッチ44に伝送する。
【0033】
ここで、ポーラー誤差検出部41から選択スイッチ44に切替信号を伝送しているが、選択スイッチ44においてポーラー誤差検出部41で検出された位相誤差が所定の閾値以上か否かを判断して、スイッチを切り替えるようにしてもよい。
【0034】
以上のように、この搬送波再生回路1によれば、ポーラー誤差検出部41で検出された位相誤差に基づいて、ポーラー誤差検出部41または全点誤差検出部42のいずれかの位相誤差がNCO6に出力されるため、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となる。すなわち、全点誤差検出部42では、複素平面上の全信号点S2に対して位相誤差を検出するため、精度高く位相誤差を検出できるが、高多値化で位相の揺らぎなどによる不安定動作が生じると、搬送波再生の同期外れに至る可能性がある。これに対して、ポーラー誤差検出部41では、複素平面上の原点から遠い外側または近い内側の信号点S2に対してのみ位相誤差を検出するため、位相誤差の検出精度は低いが、これらの信号点S2の検出可能範囲が広いため、高多値であっても不安定動作が生じにくく、搬送波再生の同期外れに至るのを防止、抑制することができる。
【0035】
従って、このようなポーラー誤差検出部41と全点誤差検出部42とを併設して、NCO6への出力を切り替えることで、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となるものである。
【0036】
一方、適応等化器3で周波数特性が補償(波形歪等が解消)された位相回転信号の位相誤差に基づいて、位相回転制御信号が生成され入力信号の位相が回転されるため、フェージングによる波形歪がある場合でも、搬送波の位相ノイズを高精度に推定(位相誤差検出器4で検出)して高い復調性能・搬送波再生を実現することが可能となる。さらに、適応等化器3で位相回転信号の周波数特性が補償されるため、熱雑音の影響も軽減することが可能となる。
【0037】
(実施の形態2)
図5は、この実施の形態に係る搬送波再生回路1の位相誤差検出器4を示す概略構成図である。この実施の形態では、エリア誤差検出部43で検出された位相誤差に基づいて、ポーラー誤差検出部41または全点誤差検出部42のいずれかの位相誤差をNCO6に出力する点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0038】
エリア誤差検出部43は、図6図7に示すように、複素平面上の原点(I軸とQ軸の交点)を中心とする検出領域DAに対して、複素平面上の原点を中心にして全信号点S2群がどの方向にどのくらいずれているかに基づいて、位相誤差を検出する検出部である。
【0039】
すなわち、複素平面上に予め等間隔に縦横に複数の基準点S1が配置され、その外縁が四角い検出領域DAの外縁となっている。この検出領域DAの各四辺の外側がそれぞれ、I軸またはQ軸を境にして2つに分けられ、このようにして分けられた8つの領域が順次交互にA領域とB領域に識別されている。
【0040】
そして、検出領域DAに対する全信号点S2群のずれ具合、つまり、信号点S2がA領域またはB領域にどのくらいはみ出ているかを検出することで、位相誤差を検出する。例えば、図6に示すように、信号点S2がA領域に多くはみ出ている場合には、進み方向に位相が回転し、図7に示すように、信号点S2がB領域に多くはみ出ている場合には、遅れ方向に位相が回転していると判定、検出する。また、A領域またはB領域にはみ出た信号点S2の割合(はみ出し量)に基づいて位相誤差量を算出する。つまり、はみ出し量と位相誤差量との対応関係が予め演算、記憶され、この関係に基づいてはみ出し量から位相誤差量を算出する。
【0041】
このようなエリア誤差検出部43で検出された位相誤差に基づいて、ポーラー誤差検出部41または全点誤差検出部42のいずれかの位相誤差をNCO6に出力する。具体的には、通常時は、全点誤差検出部42の位相誤差をNCO6に出力し、エリア誤差検出部43で検出された位相誤差が所定の閾値以上の場合に、不安定動作が生じて搬送波再生の同期外れに至る可能性があるとして、ポーラー誤差検出部41の位相誤差をNCO6に出力すべき切替信号を、エリア誤差検出部43から選択スイッチ44に伝送する。その後、エリア誤差検出部43で検出された位相誤差が所定の閾値未満(または、それよりも低い値)になった場合に、全点誤差検出部42の位相誤差をNCO6に出力すべき切替信号を、エリア誤差検出部43から選択スイッチ44に伝送する。
【0042】
そして、選択スイッチ44は、エリア誤差検出部43からの切替信号に従ってスイッチを切り替える。ここで、エリア誤差検出部43から選択スイッチ44に切替信号を伝送しているが、選択スイッチ44においてエリア誤差検出部43で検出された位相誤差が所定の閾値以上か否かを判断して、スイッチを切り替えるようにしてもよい。
【0043】
このように、この実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、ポーラー誤差検出部41または全点誤差検出部42のいずれかの位相誤差がNCO6に出力されるため、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となる。この際、エリア誤差検出部43で検出された位相誤差に基づいて、いずれの位相誤差をNCO6に出力するかが選択されるため、適正な位相誤差をNCO6に出力することが可能となる。
【0044】
なぜなら、エリア誤差検出部43では、複素平面上の原点を中心とする検出領域DAに対して、複素平面上の原点を中心にして全信号点S2群がどの方向にどのくらいずれているかに基づいて、位相誤差を検出する。すなわち、位相のずれが進み方向か遅れ方向か、位相のずれ量がどのくらいかが、検出領域DAに対する信号点S2群全体のずれ状態で検出されるため、高多値であっても不安定動作が生じにくく、搬送波再生の同期外れに至るのを防止、抑制することができる。そして、このようなエリア誤差検出部43で検出された位相誤差に基づいて、ポーラー誤差検出部41または全点誤差検出部42のいずれかの位相誤差が選択されるため、適正な選択に基づく適正な位相誤差をNCO6に出力することが可能となる。
【0045】
(実施の形態3)
図8は、この実施の形態に係る搬送波再生回路1の位相誤差検出器4を示す概略構成図である。この実施の形態では、全点誤差検出部42とエリア誤差検出部43を備え、エリア誤差検出部43で検出された位相誤差に基づいて、全点誤差検出部42またはエリア誤差検出部43のいずれかの位相誤差をNCO6に出力する点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1、2と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0046】
この実施の形態では、通常時は、全点誤差検出部42の位相誤差をNCO6に出力し、エリア誤差検出部43で検出された位相誤差が所定の閾値以上の場合に、不安定動作が生じて搬送波再生の同期外れに至る可能性があるとして、エリア誤差検出部43の位相誤差をNCO6に出力すべき切替信号を、エリア誤差検出部43から選択スイッチ44に伝送する。その後、エリア誤差検出部43で検出された位相誤差が所定の閾値未満(または、それよりも低い値)になった場合に、全点誤差検出部42の位相誤差をNCO6に出力すべき切替信号を、エリア誤差検出部43から選択スイッチ44に伝送する。
【0047】
そして、選択スイッチ44は、エリア誤差検出部43からの切替信号に従ってスイッチを切り替える。ここで、エリア誤差検出部43から選択スイッチ44に切替信号を伝送しているが、選択スイッチ44においてエリア誤差検出部43で検出された位相誤差が所定の閾値以上か否かを判断して、スイッチを切り替えるようにしてもよい。
【0048】
このように、この実施の形態によれば、エリア誤差検出部43で検出された位相誤差に基づいて、全点誤差検出部42またはエリア誤差検出部43のいずれかの位相誤差がNCO6に出力されるため、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となる。すなわち、全点誤差検出部42では、複素平面上の全信号点S2に対して位相誤差を検出するため、精度高く位相誤差を検出できるが、高多値化で位相の揺らぎなどによる不安定動作が生じると、搬送波再生の同期外れに至る可能性がある。これに対してエリア誤差検出部43では、位相のずれが進み方向か遅れ方向か、位相のずれ量がどのくらいかが、検出領域DAに対する信号点S2群全体のずれ状態で検出されるため、高多値であっても不安定動作が生じにくく、搬送波再生の同期外れに至るのを防止、抑制することができる。
【0049】
従って、このような全点誤差検出部42とエリア誤差検出部43とを併設して、NCO6への出力を切り替えることで、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となるものである。また、実施の形態2と異なりポーラー誤差検出部41を設けないため、構成を簡易にすることが可能となる。
【0050】
(実施の形態4)
図9は、この実施の形態に係る搬送波再生回路1の位相誤差検出器4を示す概略構成図である。この実施の形態では、第1の十字エリア誤差検出部45と第2の十字エリア誤差検出部46と頻度検出部47とを備え、頻度検出部47の検出結果に基づいて、第1の十字エリア誤差検出部45または第2の十字エリア誤差検出部46のいずれかの位相誤差をNCO6に出力する点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0051】
この実施の形態では、図10に示すように、複素平面上に基準点が配置される領域であるコンスタレーションCLが略十字状で、コンスタレーションCLの外側がI軸またはQ軸を境に進み領域と遅れ領域とに分けられている。すなわち、複素平面の原点を中心にI軸方向およびQ軸方向に延びる太い十字状のコンスタレーションCLが設けられ、このコンスタレーションCL内に基準点(図中黒丸)が配置されている。そして、このコンスタレーションCLの外側がI軸、Q軸と原点を通る45度、135度の斜線を境にして、交互に進み領域と遅れ領域とが設けられている。
【0052】
具体的には、第1象限内の十字の水平端側に進み領域、これに隣接する十字の交差内角のQ軸側に遅れ領域、I軸側に進み領域、第1象限内の十字の垂直端側に遅れ領域が設けている。そして、このような進み領域と遅れ領域が、時計回りに回転するように第2象限、第3象限および第4象限に対して順次設けられている。なお、基準点数が2の奇数乗の場合に、コンスタレーションCLが略十字状となる。
【0053】
このような進み領域と遅れ領域は、コンスタレーションCLの外縁から外側のみに設けられている。そして、第1の十字エリア誤差検出部45は、信号点が進み領域と遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、複素平面上の原点を中心にして全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、位相誤差を検出する。すなわち、信号点が遅れ領域よりも進み領域に多くはみ出ている場合には、進み方向に位相が回転し、信号点が進み領域よりも遅れ領域に多くはみ出ている場合には、遅れ方向に位相が回転していると判断、検出する。次に、進み領域または遅れ領域にはみ出た信号点の割合(はみ出し量)に基づいて位相誤差量を算出する。つまり、はみ出し量と位相誤差量との対応関係が予め演算、記憶され、この関係に基づいてはみ出し量から位相誤差量を算出する。
【0054】
このような第1の十字エリア誤差検出部45では、例えば、図11に示すように、位相誤差が大きく全信号点群(図中黒丸)が原点を中心に大きく遅れ方向(図中反時計回り)に回転した場合、進み領域または遅れ領域に位置する信号点は、遅れ領域(正常検出領域)よりも進み領域(誤検出領域)の方が多くなり、誤検出してしまう。そこで、第2の十字エリア誤差検出部46は、図12に示すように、進み領域と遅れ領域とをコンスタレーションCLの一部内側まで拡張し、信号点が拡張した進み領域と遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、複素平面上の原点を中心にして全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、位相誤差を検出する。
【0055】
すなわち、図10に比べて進み領域と遅れ領域を、コンスタレーションCLの外縁よりも内側に拡大する。ここで、拡大量は、全信号点群が大きく回転した場合でも、回転方向を正確に検出できるように設定されている。これにより、例えば、図11の場合と同様に全信号点群が大きく遅れ方向に回転した場合でも、図12に示すように、進み領域または遅れ領域に位置する信号点は、進み領域(誤検出領域)よりも遅れ領域(正常検出領域)の方が多くなり、回転方向を正確に検出できるものである。また、第1の十字エリア誤差検出部45と同様に、進み領域または遅れ領域にはみ出た信号点の割合(はみ出し量)に基づいて位相誤差量を算出する。
【0056】
このような第2の十字エリア誤差検出部46では、進み領域と遅れ領域がコンスタレーションCLの内側に拡大されているため、位相誤差が小さい場合に、検出誤差の対象となる信号点数が少なくなる。すなわち、図13に示すように、コンスタレーションCLと進み領域、遅れ領域が重なるエリア(図中破線の楕円部)においては、位相誤差が小さい場合、進み領域と遅れ領域における信号点数に変化がないため、位相誤差検出が行えない。
【0057】
このため、頻度検出部47は、信号点がコンスタレーションCLの外側に位置する頻度に基づいて、第1の十字エリア誤差検出部45または第2の十字エリア誤差検出部46のいずれの位相誤差をNCO6に出力すべきかを判断する。すなわち、図14に示すように、信号点(図中黒丸)がコンスタレーションCLの外側に位置する頻度、信号点数(図中の楕円内に位置する数)を検出する。そして、頻度が低い場合には、図15に示すように、第1の十字エリア誤差検出部45で検出された位相誤差をNCO6に出力すべき切替信号を選択スイッチ44に伝送し、頻度が高い場合には、図16に示すように、第2の十字エリア誤差検出部46で検出された位相誤差をNCO6に出力すべき切替信号を選択スイッチ44に伝送する。これに従って、選択スイッチ44がスイッチを切り替え、第1の十字エリア誤差検出部45または第2の十字エリア誤差検出部46のいずれかの位相誤差をNCO6に出力する。
【0058】
このように、この実施の形態によれば、信号点がコンスタレーションCLの外側に位置する頻度に基づいて、第1の十字エリア誤差検出部45または第2の十字エリア誤差検出部46のいずれかの位相誤差がNCO6に出力されるため、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となる。すなわち、第1の十字エリア誤差検出部45では、コンスタレーションCLの外側である進み領域と遅れ領域のどちらに信号点が多く位置しているかによって、全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、位相誤差を検出するため、位相誤差を検出できる信号点の数を多く確保することが可能となる。一方、第2の十字エリア誤差検出部46では、コンスタレーションCLの一部内側まで拡張された進み領域と遅れ領域のどちらに信号点が多く位置しているかによって、全信号点群がどの方向にどのくらいずれているかを判断して、位相誤差を検出するため、どの方向にずれているかをより正確に判断することが可能となる。
【0059】
従って、このような第1の十字エリア誤差検出部45と第2の十字エリア誤差検出部46とを併設して、NCO6への出力を切り替えることで、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となるものである。
【0060】
(実施の形態5)
図19図22は、この実施の形態を示し、この実施の形態では、位相誤差検出領域SAを備える点で実施の形態2と構成が異なり、実施の形態2と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0061】
まず、実施の形態2において、図17に示すように、全信号点群(図中黒丸)が進み方向(図中反時計回り)に回転した場合、遅れ領域よりも進み領域に信号点が多く位置するため、全信号点群が進み方向に回転したと判断することができる。しかし、その後、周波数誤差による回転が速く、ループ引き込み(周波数特性の補償)が始まる前に、全信号点群がさらに進み方向に回転した場合、図18に示すように、進み領域よりも遅れ領域に信号点が多く位置するため、全信号点群が遅れ領域に回転したと判断してしまう。つまり、周波数誤差が大きいとループ引き込みが困難となる。
【0062】
そこで、この実施の形態では、位相誤差検出領域SAを設けている。すなわち、図19に示すように、実施の形態2と同様に、複素平面上に基準点(図中黒丸)が配置される領域であるコンスタレーションCLが略四角形状で、このコンスタレーションCLの外側をI軸とQ軸を境に進み領域と遅れ領域とに分けている。そして、コンスタレーションCLの角部とその外側を含む領域を位相誤差検出領域SAとする。換言すると、コンスタレーションCLの角部を含み、進み領域と遅れ領域の端部を含む略四角い領域を位相誤差検出領域SAとする。この位相誤差検出領域SAの大きさは、後述するように、全信号点群がどの方向にずれているかを正確に判断できるように設定されている。
【0063】
そして、この実施の形態に係る位相誤差検出器4は、図20に示すように、信号点(図中黒丸)が位相誤差検出領域SAに位置する場合には、信号点が進み領域と遅れ領域のどちらに多く位置しているかによって、複素平面上の原点を中心にして全信号点群がどの方向にずれているかを判断する。例えば、図20の場合、進み方向にずれていると判断する。一方、図21に示すように、信号点が位相誤差検出領域SAに位置しない場合には、直前に判断した方向に全信号点群がずれていると判断する。つまり、直前の判断を維持する。例えば、図20の状態から図21の状態に移行した場合には、図20の状態が継続されて、進み方向にずれていると判断する。
【0064】
このようにしてずれ方向を判断し、信号点が進み領域または遅れ領域にどのくらい位置しているかに基づいて、位相誤差を検出する。すなわち、ずれ方向であると判断した進み領域または遅れ領域に位置する信号点の割合(はみ出し量)に基づいて、位相誤差量を算出する。この際、はみ出し量と位相誤差量との対応関係が予め演算、記憶され、この関係に基づいてはみ出し量から位相誤差量を算出する。
【0065】
このように、この実施の形態によれば、信号点が位相誤差検出領域SAに位置する場合にのみ、全信号点群がどの方向にずれているかを判断し、信号点が位相誤差検出領域SAに位置しない場合には、直前に判断した方向に全信号点群がずれていると判断する。このため、周波数誤差による回転が速く、ループ引き込み(周波数特性の補償)が始まる前に、すぐに信号点の位置領域が進み領域および遅れ領域に反転する場合でも、どの方向にずれているかをより正確に判断することが可能となる。
【0066】
例えば、図20に示すように、全信号点群が反時計回りに回転すると、信号点が位相誤差検出領域SAに位置するため、進み方向にずれていると判断する。続いて、図21に示すように、全信号点群がさらに反時計回りに回転して、信号点が位相誤差検出領域SAに位置しなくなっても、直前に判断した方向つまり進み方向に全信号点群がずれていると判断する。さらに反時計回りの回転が進んで信号点が遅れ領域に多く位置しても(図18)、信号点が位相誤差検出領域SAに位置しないため、進み方向に全信号点群がずれていると判断する。このため、図22に示すように、進み方向に対する時計回りのループ引き込みが作用して、位相回転が抑制されるものである。このように、ずれ方向が正確に判断される結果、高多値においても安定した高い復調性能を実現することが可能となるものである。
【0067】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0068】
1 搬送波再生回路
2 第1の位相回転器(位相回転器)
3 適応等化器
4 位相誤差検出器
41 ポーラー誤差検出部
42 全点誤差検出部
43 エリア誤差検出部
44 選択スイッチ
45 第1の十字エリア誤差検出部
46 第2の十字エリア誤差検出部
47 頻度検出部
5 LPF
6 NCO(回転信号生成部)
7 第2の位相回転器
8 等化器
S1 基準点
S2 信号点
DA 検出領域
CL コンスタレーション
SA 位相誤差検出領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図25