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特許7433767マルチテナント管理装置、マルチテナント管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】マルチテナント管理装置、マルチテナント管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/06 20230101AFI20240213BHJP
【FI】
G06Q30/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019016487
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020123299
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519038035
【氏名又は名称】佐賀 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 潔
【合議体】
【審判長】伏本 正典
【審判官】緑川 隆
【審判官】松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-024753(JP,A)
【文献】特開2017-107298(JP,A)
【文献】特開平9-297803(JP,A)
【文献】特開2016-153930(JP,A)
【文献】特表2018-531648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のテナントに共通の一のインスタンス内に形成されたアプリケーション基盤上に構築された、該複数のテナントに共通のアプリケーションプログラム、並びに該共通のアプリケーションプログラムを実行する際に用いられる該複数のテナントに共通の定義情報及び該複数のテナント毎に該共通の定義情報との差分情報を記憶する記憶部と、
前記複数のテナントのうちのいずれかのテナントからアクセスされたことに応答して、該アクセスしたテナント専用の差分情報を前記記憶部から検出し、前記共通の定義情報及び該検出したテナント専用の差分情報を用いて、前記共通のアプリケーションプログラムを該テナント専用にカスタマイズして前記共通の一のインスタンス内で実行することにより、該テナント専用の処理を実行する制御部と、
を備えるマルチテナント管理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、各テナント専用のワークフローをさらに記憶し、
前記制御部は、前記複数のテナントのうちのいずれかのテナントからアクセスされたことに応答して、該アクセスしたテナント専用の差分情報及びワークフローを前記記憶部から検出し、該アクセスしたテナント専用のワークフローに従って、前記共通の定義情報及び該検出したテナント専用の差分情報を用いて、前記共通のアプリケーションプログラムを該テナント専用にカスタマイズして前記共通の一のインスタンス内で実行することにより、該テナント専用の処理を実行する、
請求項1に記載のマルチテナント管理装置。
【請求項3】
複数のテナントに共通の一のインスタンス内に形成されたアプリケーション基盤上に構築された、該複数のテナントに共通のアプリケーションプログラム、並びに該共通のアプリケーションプログラムを実行する際に用いられる該複数のテナントに共通の定義情報及び該複数のテナント毎に該共通の定義情報との差分情報を記憶する記憶部を備えるマルチテナント管理装置によるマルチテナント管理方法であって、
前記複数のテナントのうちのいずれかのテナントからアクセスされたことに応答して、該アクセスしたテナント専用の差分情報を前記記憶部から検出するステップと、
前記共通の定義情報及び該検出したテナント専用の差分情報を用いて、前記共通のアプリケーションプログラムを該テナント専用にカスタマイズして前記共通の一のインスタンス内で実行することにより、該テナント専用の処理を実行するステップと、
を備えるマルチテナント管理方法。
【請求項4】
複数のテナントに共通の一のインスタンス内に形成されたアプリケーション基盤上に構築された、該複数のテナントに共通のプログラムであって、
前記共通のプログラム、並びに該共通のプログラムを実行する際に用いられる該複数のテナントに共通の定義情報及び該複数のテナント毎に該共通の定義情報との差分情報を記憶する記憶部を備えるマルチテナント管理装置のコンピュータに、
前記複数のテナントのうちのいずれかのテナントからアクセスされたことに応答して、該アクセスしたテナント専用の差分情報を前記記憶部から検出する手順と、
前記共通の定義情報及び該検出したテナント専用の差分情報を用いて、前記共通のプログラムを該テナント専用にカスタマイズして前記共通の一のインスタンス内で実行することにより、該テナント専用の処理を実行する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチテナント管理装置、マルチテナント管理方法、及びプログラムに関し、特に、保守負担を増加させることなく各テナント専用の処理を実行可能なマルチテナント管理装置、マルチテナント管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
クラウドサービスの普及に伴い、単一のリソースを複数の企業(テナント)で共用するマルチテナントサービスが普及してきている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-146350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチテナントサービスでは、複数のテナントに同一のサービスを提供することで、単一のリソースを複数のテナントで共有することができるため、テナントに低料金でサービスを提供することができる反面、各テナントに個別対応することは難しかった。反対に、各テナントに個別対応しようとすれば、複数のリソースが必要となるため、維持・保守費用が増大し、テナントに低料金でサービスを提供することができなかった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、保守負担を増加させることなく各テナント専用の処理を実行可能なマルチテナント管理装置、マルチテナント管理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るマルチテナント管理装置は、複数のテナントに共通の一のインスタンス内に形成されたアプリケーション基盤上に構築された、該複数のテナントに共通のアプリケーションプログラム、並びに該共通のアプリケーションプログラムを実行する際に用いられる該複数のテナントに共通の定義情報及び各テナント専用の定義情報を記憶する記憶部と、前記複数のテナントのうちのいずれかのテナントからアクセスされたことに応答して、該アクセスしたテナント専用の定義情報を前記記憶部から検出し、前記共通の定義情報及び該検出したテナント専用の定義情報を用いて、前記共通のアプリケーションプログラムを該テナント専用にカスタマイズして前記共通の一のインスタンス内で実行することにより、該テナント専用の処理を実行する制御部と、を備える。
【0007】
上記のマルチテナント管理装置において、前記記憶部は、各テナント専用のワークフローを前記テナント専用の定義情報として記憶し、前記制御部は、前記アクセスしたテナント専用のワークフローに従って、該テナント専用の処理を実行する、ようにしてもよい。
【0008】
上記のマルチテナント管理装置において、前記記憶部は、前記複数のテナント毎に、前記共通の定義情報との差分情報を前記専用の定義情報として記憶し、前記制御部は、前記共通の定義情報及び前記アクセスしたテナント専用の差分情報を用いて、前記共通のアプリケーションプログラムを該テナント専用にカスタマイズして実行する、ようにしてもよい。
【0009】
本発明の第2の観点に係るマルチテナント管理方法は、複数のテナントに共通の一のインスタンス内に形成されたアプリケーション基盤上に構築された、該複数のテナントに共通のアプリケーションプログラム、並びに該共通のアプリケーションプログラムを実行する際に用いられる該複数のテナントに共通の定義情報及び各テナント専用の定義情報を記憶する記憶部を備えるマルチテナント管理装置によるマルチテナント管理方法であって、前記複数のテナントのうちのいずれかのテナントからアクセスされたことに応答して、該アクセスしたテナント専用の定義情報を前記記憶部から検出するステップと、前記共通の定義情報及び該検出したテナント専用の定義情報を用いて、前記共通のアプリケーションプログラムを該テナント専用にカスタマイズして前記共通の一のインスタンス内で実行することにより、該テナント専用の処理を実行するステップと、を備える。
【0010】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、複数のテナントに共通の一のインスタンス内に形成されたアプリケーション基盤上に構築された、該複数のテナントに共通のプログラムであって、前記共通のプログラム、並びに該共通のプログラムを実行する際に用いられる該複数のテナントに共通の定義情報及び各テナント専用の定義情報を記憶する記憶部を備えるマルチテナント管理装置のコンピュータに、前記複数のテナントのうちのいずれかのテナントからアクセスされたことに応答して、該アクセスしたテナント専用の定義情報を前記記憶部から検出する手順と、前記共通の定義情報及び該検出したテナント専用の定義情報を用いて、前記共通のプログラムを該テナント専用にカスタマイズして前記共通の一のインスタンス内で実行することにより、該テナント専用の処理を実行する手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保守負担を増加させることなく各テナント専用の処理を実行可能なマルチテナント管理装置、マルチテナント管理方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るマルチテナントシステムの構成例を示す図である。
図2】企業端末の構成例を示すブロック図である。
図3】マルチテナント管理装置の構成例を示すブロック図である。
図4】(a)は購買依頼申請画面の表示項目のデフォルトの定義情報を例示する図で、(b)は購買依頼申請画面の表示項目の差分情報を例示する図である。
図5】デフォルトの発注ワークフローを例示する図である。
図6】企業独自の発注ワークフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るマルチテナントシステムについて図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施形態に係るマルチテナントシステムは、クラウドコンピューティング等で、単一のリソースを、複数の企業(テナント)で共有するマルチテナントサービスを提供するものである。ここで、企業には、単一の企業のみならず、複数の親子関係にある企業からなる企業グループも含まれる。
【0015】
図1は、本実施形態に係るマルチテナントシステムの構成例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、マルチテナントシステム1は、企業端末2-m-n(m,nは自然数)と、マルチテナント管理装置3と、を具備し、これらはインターネット等のネットワークNを介して相互に通信可能に接続されている。
【0017】
企業端末2-m-nは、例えば汎用のパーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、又はスマートフォン等から構成される。本実施形態において、企業端末2-m-nは、マルチテナントサービスの提供を受ける契約を締結する企業mの各部署nに設置される。
【0018】
図2は、企業端末の構成例を示すブロック図である。
【0019】
図2に示すように、企業端末2-m-nは、表示部21と、操作部22と、通信部23と、制御部24と、を備え、これらはバス等を介して接続されている。
【0020】
表示部21は、例えば汎用の液晶表示装置(Liquid Crystal Display:LCD)等から構成される。本実施形態において、商品の購買依頼をする購買依頼部署に設置される企業端末2-m-1の表示部21は、ウェブブラウザ上に、商品の購買依頼を企業に申請するための購買依頼申請画面等を表示する。
【0021】
操作部22は、例えば汎用のキーボードやマウス等から構成され、各部署の署員によって操作される。
【0022】
本実施形態において、購買依頼部署の署員は、購買依頼部署に設置される企業端末2-m-1の操作部22を操作して、マルチテナント管理装置3にアクセスして、購買依頼申請画面をウェブブラウザ上に表示させたり、購買依頼申請画面において希望納工期や想定金額等の商品の購買依頼の申請内容等を入力したり、商品の購買依頼を申請したりする。また、予算を管理する予算管理部署の署員は、予算の引当後、予算管理部署に設置される企業端末2-m-2の操作部22を操作して、その承認を行う。さらに、仕様を作成する仕様作成部署の署員は、仕様の登録後、仕様作成部署に設置される企業端末2-m-3の操作部22を操作して、その承認を行う。そして、商品の購買を担当する購買担当部署の署員は、購買担当部署に設置される企業端末2-m-3の操作部22を操作して、購買依頼された商品の発注を行う。
【0023】
通信部23は、例えばNIC(Network Interface Card)等の汎用の通信装置を含んで構成される。本実施形態において、通信部23は、マルチテナント管理装置3からネットワークNを介して送信される購買依頼申請画面を表示するための画面表示データ等を受信したり、企業の担当者による操作部22の操作に対応した操作信号等をネットワークNを介してマルチテナント管理装置3に送信したりする。
【0024】
制御部24は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等から構成されている。CPUは、RAMをワークメモリとして用いて、ROMに記憶されている各種プログラム等を適宜実行することにより、企業端末2-m-nの各部の動作を制御する。
【0025】
本実施形態において、制御部24は、マルチテナント管理装置3からネットワークNを介して送信される画面表示データを通信部23で受信したことに応答して、画面表示データに基づく画面をウェブブラウザ上に表示する。また、制御部24は、各部署の署員による操作部22の操作に対応した操作信号を通信部23からネットワークNを介してマルチテナント管理装置3に送信することで、各部署の署員によるネットワークNを介したマルチテナント管理装置3上での各種操作を可能にする。
【0026】
例えば、購買依頼部署に設置される企業端末2-m-1の制御部24は、購買依頼部署の署員による操作部22の操作に応答して、通信部23からネットワークNを介してマルチテナント管理装置3にアクセスする。そして、購買依頼部署に設置される企業端末2-m-1の制御部24は、マルチテナント管理装置3からネットワークNを介して送信される購買依頼申請画面を表示するための画面表示データを通信部23で受信したことに応答して、画面表示データに基づく購買依頼申請画面を表示部21のウェブブラウザ上に表示する。
【0027】
図1に示すマルチテナント管理装置3は、例えば汎用のサーバコンピュータやデータベース(DateBase:DB)等から構成される。本実施形態において、マルチテナント管理装置3は、複数の企業mに共通の一のインスタンス内に形成されたアプリケーション基盤300を有する。
【0028】
アプリケーション基盤300上では、複数の企業mに共通して使用されるアプリケーションプログラム310、並びに共通アプリケーションを実行する際に参照される定義ファイル320等が構築される。
【0029】
図3は、マルチテナント管理装置の構成例を示すブロック図である。
【0030】
図3に示すように、マルチテナント管理装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33と、を備え、これらはバス等を介して接続されている。
【0031】
通信部31は、例えばNIC等の汎用の通信装置を含んで構成される。本実施形態において、通信部31は、企業端末2-m-nからネットワークNを介して送信される操作信号等を受信したり、画面表示データ等をネットワークNを介して企業端末2-m-nに送信したりする。
【0032】
記憶部32は、例えばハードディスクドライブ等の汎用の記憶装置から構成される。
本実施形態において、記憶部32は、アプリケーション基盤300上で構築されたアプリケーションプログラム310及び定義ファイル320等を記憶する。
【0033】
定義ファイル320には、企業定義ファイル321、デフォルト定義ファイル322、及び差分定義ファイル323-m等が含まれる。
【0034】
企業定義ファイル321には、各企業mの企業コードや企業名等の企業定義情報が設定される。
【0035】
デフォルト定義ファイル322には、複数の企業mに共通のデフォルトの定義情報が設定される。本実施形態において、デフォルト定義ファイル322には、各企業mが使用可能な機能や、購買依頼申請画面に表示可能な項目、帳票に出力可能な項目、データベースに登録可能な項目等がデフォルトで設定されている。
【0036】
図4(a)は、購買依頼申請画面の表示項目のデフォルトの定義情報を例示する図である。
【0037】
図4(a)に示すように、デフォルトの定義情報には、全ての表示項目に対して、定義属性として「オリジナル」が設定されるとともに、デフォルトの表示内容が定義されている。図4(a)に示す例では、表示項目「想定金額」には、デフォルトの表示内容として12桁の数字が定義されている。
【0038】
また、図3に示すデフォルト定義ファイル322には、企業端末2-m-nに商品の発注機能を実現させるためのデフォルトの発注ワークフローが定義されている。
【0039】
図5は、デフォルトの発注ワークフローを例示する図である。
【0040】
図5に示すデフォルトの発注ワークフローでは、商品の購買依頼の申請後、申請した企業mの企業コードが特定の値であるか否かを判別する。企業コードが特定の値である場合には、予算管理部署の署員に予算の引当を申請し、予算の引当がされてから、仕様作成部署の署員に仕様の登録を依頼する。これに対して、企業コードが特定の値でない場合には、予算管理部署の署員に予算の引当を依頼することなく、直接、仕様作成部署の署員に仕様の登録を申請する。
【0041】
図3に示す差分定義ファイル323-mには、企業コードに対応付けて、企業m毎に設けられている。差分定義ファイル323-mには、企業m毎にカスタマイズされた、デフォルトの定義情報との差分情報が設定される。
【0042】
図4(b)は、購買依頼申請画面の表示項目の差分情報を例示する図である。
【0043】
図4(b)に示すように、差分情報には、表示項目毎に、定義属性として「差替」、「削除」、及び「追加」のいずれかが設定される。
【0044】
デフォルトの定義情報に設定されているにも関わらず、差分情報に設定されていない表示項目については、購買依頼申請画面においてデフォルトの表示内容のまま表示される。図4に示す例では、希望納工期が、購買依頼申請画面においてデフォルトの表示内容のまま表示される。
【0045】
差分情報において属性情報として「差替」が設定されている表示項目については、購買依頼申請画面においてデフォルトとは異なる、企業m専用の表示内容が表示される。図4(b)に示す例では、表示項目「想定金額」には、企業m専用に定義された表示内容として、14桁の数字が表示される。
【0046】
差分情報において属性情報として「削除」が設定されている表示項目については、購買依頼申請画面に表示されない。
【0047】
差分情報において属性情報として「追加」が設定されている表示項目については、購買依頼申請画面においてデフォルトにはない、企業m専用の表示内容が表示される。図4(b)に示す例では、企業m専用の表示項目として、添付ファイルが表示される。
【0048】
また、図3に示す差分定義ファイル323-mには、企業m専用に定義された発注ワークフローが設定されている。
【0049】
図6は、企業専用の発注ワークフローを例示する図である。
【0050】
図6に示す企業m専用の発注ワークフローでは、商品の購買依頼の申請後、デフォルトの発注ワークフローとは異なり、申請した企業mの企業コードが特定の値であるか否かの判別はせず、その代わりに、購買依頼申請画面において想定金額が入力されたか否かの判別を行う。そして、想定金額が入力された場合には、予算管理部署の署員に想定金額分の予算の引当を申請する前に、購買担当部署の署員に想定金額分の予算の引当を確認する。そして、購買担当部署の署員による予算の引当の確認後、予算管理部署の署員に想定金額分の予算の引当を申請し、予算の引当がされてから、仕様作成部署の署員に仕様の登録を申請する。これに対して、想定金額が入力されていない場合には、予算管理部署の署員に予算の引当を申請することなく、直接、仕様作成部署の署員に仕様の登録を申請する。
【0051】
図3に示す制御部33は、例えばCPU、ROM、及びRAM等から構成されている。CPUは、RAMをワークメモリとして用いて、ROMに記憶されている各種プログラムや記憶部32に記憶されている各種ソフトウェア等を適宜実行することにより、コンテンツ管理装置3の各部の動作を制御する。
【0052】
本実施形態において、制御部33は、画面表示データを通信部31からネットワークNを介して企業端末2-m-nに送信することで、企業端末2-m-nのウェブブラウザ上に、購買依頼申請画面等を表示する。また、制御部33は、企業端末2-m-nからネットワークNを介して送信される操作信号を受信することで、各部署の署員によるネットワークNを介したマルチテナント管理装置3上での操作信号に対応した操作を可能にする。
【0053】
制御部33は、記憶部32に記憶されている定義ファイル320に従って、アプリケーションプログラム310を企業m専用にカスタマイズして共通の一のインスタンス内で実行することにより、企業m毎に異なる発注処理等を実現する。
【0054】
具体的に、制御部33は、企業mの購買依頼部署に設置される企業端末2-m-1からネットワークNを介してマルチテナント管理装置3へアクセスされたことに応答して、企業mの企業コードを企業定義ファイル321から検出する。そして、制御部33は、企業mの企業コードに対応する差分定義ファイル323-mに設定されている企業m専用の発注ワークフローに従って、デフォルトの定義情報、及び検出した企業m専用にカスタマイズされた差分情報を参照しつつ、発注処理を実行する。
【0055】
例えば、制御部33は、発注処理において、デフォルト定義ファイル321に設定されている購買依頼申請画面の表示項目のデフォルトの定義情報、及び企業m専用にカスタマイズされた購買依頼申請画面の表示項目の差分情報に基づいて、企業m専用の購買依頼申請画面を表示するための画面表示データを生成する。そして、制御部33は、企業m専用の購買依頼申請画面を表示するための画面表示データを通信部31からネットワークNを介して企業mの購買依頼部署に設置される企業端末2-m-1に送信することにより、その表示部21のウェブブラウザ上に、企業m専用の購買依頼申請画面を表示させる。
【0056】
購買依頼部署の署員によって商品の購買依頼の申請の操作が行われたことに応答して、制御部33は、購買依頼申請画面において想定金額が入力されたか否かを判別する。想定金額が入力された場合、制御部33は、購買担当部署の署員に想定金額分の予算の引当を確認する予算引当確認画面を表示するための画面表示データを生成する。そして、制御部33は、予算引当確認画面を表示するための画面表示データを通信部31からネットワークNを介して企業mの購買担当部署に設置される企業端末2-m-4に送信することにより、その表示部21のウェブブラウザ上に、予算引当確認画面を表示させる。
【0057】
購買担当部署の署員によって予算引当の確認の操作が行われたことに応答して、制御部33は、予算管理部署の署員に想定金額分の予算の引当を申請する予算引当申請画面を表示するための画面表示データを生成する。そして、制御部33は、予算引当申請画面を表示するための画面表示データを通信部31からネットワークNを介して企業mの予算管理部署に設置される企業端末2-m-2に送信することにより、その表示部21のウェブブラウザ上に、予算引当申請画面を表示させる。
【0058】
購買依頼申請画面において想定金額が入力されていないと判別したこと、若しくは予算の引当後に予算管理部署の署員によって承認の操作が行われたことに応答して、制御部33は、仕様作成部署の署員に仕様の登録を申請する仕様登録申請画面を表示するための画面表示データを生成する。そして、制御部33は、仕様登録申請画面を表示するための画面表示データを通信部31からネットワークNを介して企業mの仕様作成部署に設置される企業端末2-m-3に送信することにより、その表示部21のウェブブラウザ上に、仕様登録申請画面を表示させる。
【0059】
仕様の登録後に仕様作成部署の署員によって承認の操作が行われたことに応答して、制御部33は、購買担当部署の署員に商品の発注を依頼する発注申請画面を表示するための画面表示データを生成する。そして、制御部33は、発注申請画面を表示するための画面表示データを通信部31からネットワークNを介して企業mの購買担当部署に設置される企業端末2-m-4に送信することにより、その表示部21のウェブブラウザ上に、発注申請画面を表示させる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係るマルチテナントシステム1において、マルチテナント管理装置3は、記憶部32と、制御部33と、を備える。
【0061】
記憶部32は、複数の企業(テナント)mに共通のアプリケーションプログラム310、並びにアプリケーションプログラム310を実行する際に用いられる複数の企業mに共通のデフォルトの定義情報及び各企業m専用の定義情報を記憶する。アプリケーションプログラム310、並びに複数の企業mに共通のデフォルトの定義情報及び各企業m専用の定義情報は、複数の企業に共通の一のインスタンス内に形成されたアプリケーション基盤300上に構築される。本実施形態において、記憶部32は、各企業m専用の定義情報として、各企業m専用の発注ワークフローを記憶するとともに、複数の企業m毎に、デフォルトの定義情報との差分情報を記憶する。
【0062】
制御部33は、複数の企業mのうちのいずれかの企業mからアクセスされたことに応答して、アクセスした企業m専用の定義情報を記憶部12から検出し、デフォルトの定義情報及び検出した企業m専用の定義情報を用いて、アプリケーションプログラム310を企業m専用にカスタマイズして共通の一のインスタンス内で実行することにより、アクセスした企業m専用のワークフローに従って、企業m専用の処理を実行する。
【0063】
このように、マルチテナント管理装置3は、デフォルトの定義情報及び企業m専用の定義情報を用いて、複数の企業mに共通のアプリケーションプログラム310を企業m専用にカスタマイズして共通の一のインスタンス内で実行することにより、各企業m専用の処理の実行を可能にすることができる。これにより、マルチテナントサービス装置3は、従来のマルチテナントサービスと同様の保守負担で済むため、従来のマルチテナントサービスと同様の低価格で、従来のマルチテナントサービスでは困難であった、各企業m専用の処理の実行を可能にすることができる。この結果、マルチテナント管理装置3は、保守負担を増加させることなく各企業m専用の処理を実行可能にするといった顕著な効果を奏することができる。
【0064】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施形態の変形態様について、説明する。
【0065】
上記の実施形態において、各企業mに専用の処理は、商品の発注処理であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各企業mに専用の処理は、任意である。
【0066】
上記の実施形態において、制御部33が実行するアプリケーションプログラムは、予め記憶部32等に記憶されていた。しかしながら、本発明は、これに限定されず、上述の処理を実行させるためのアプリケーションプログラムを、既存の汎用のサーバコンピュータに適用することで、上記の実施形態に係るマルチテナント管理装置3として機能させてもよい。
【0067】
このようなアプリケーションプログラムの提供方法は任意であり、例えばコンピュータが読取可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等)に格納して配布してもよいし、インターネット等のネットワーク上のストレージにプログラムを格納しておき、これをダウンロードさせることにより提供してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 マルチテナントシステム
2-m-n 企業端末
3 マルチテナント管理装置
21 表示部
22 操作部
23,31 通信部
24,33 制御部
32 記憶部
300 アプリケーション基盤
310 アプリケーションプログラム
320 定義ファイル
321 企業定義ファイル
322 デフォルト定義ファイル
323-m 差分定義ファイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6