(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】コーティング部材及びコーティング部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/111 20150101AFI20240213BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240213BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20240213BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240213BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240213BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240213BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240213BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G02B1/111
B32B7/023
B05D3/06 Z
B05D5/06 101Z
B05D1/26 Z
B05D3/00 F
B05D3/00 D
B05D7/24 301T
B05D7/24 302P
B05D7/24 302L
B05D7/24 302Y
G02B5/28
(21)【出願番号】P 2019095592
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-04-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 和人
(72)【発明者】
【氏名】細川 武喜
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170246(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00220716(EP,A1)
【文献】特開2016-045230(JP,A)
【文献】特開2014-206688(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196148(WO,A1)
【文献】特開2012-181293(JP,A)
【文献】特開2009-139465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/111
G02B 5/28
B32B 7/023
B05D 3/06
B05D 5/06
B05D 1/26
B05D 3/00
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と、光干渉層形成組成物から形成された光干渉層とを有するコーティング部材の製造方法であって、
基層の視認側の面における少なくとも一部に、インクジェット塗装用の光干渉層形成組成物をインクジェット法により
パターニングまたはグラデーションを呈するように塗装すること、及び
活性エネルギー線を照射し、前記光干渉層を形成すること、
を含み、
前記光干渉層形成組成物は、15~35mN/mの表面張力を有し、
前記光干渉層は、0nmより大きく600nm以下の範囲内の厚さであり、
0.08<(前記基層の屈折率)-(前記光干渉層の屈折率)<0.45の関係を有し、
前記基層における色相のL値、a値及びb値を、L(i)、a(i)及びb(i)とし、
前記光干渉層の厚さt(nm)における色相のL値、a値及びb値を、L
t(ii)、a
t(ii)及びb
t(ii)とし、
ここで、tは前記光干渉層の厚さであって、0 nmより大きく600nm以下であり、
前記基層におけるL(i)、a(i)及びb(i)と、
前記光干渉層における、前記厚さt(nm)でのL
t(ii)、a
t(ii)及びb
t(ii)とが、以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす、
0<L(i) - Lt(ii)<35 式(1)
-30< a(i) - a
t(ii) <30 式(2)
-40< b(i) - b
t(ii) <40 式(3)。
コーティング部材の製造方法。
【請求項2】
前記光干渉層は、0 nmより大きく600nm以下の範囲内の厚さで、
最小厚さ(t
min)と、最大厚さ(t
max)とを有し、更に、
前記最小厚さ(t
min)<最大厚さ(t
max)の関係を有し、
請求項1に記載のコーティング部材の製造方法。
【請求項3】
前記基層における色相のL値、a値及びb値を、L(i)、a(i)及びb(i)とし、
前記光干渉層における、厚さt(nm)での色相のL値、a値及びb値を、L
t(ii)、a
t(ii)及びb
t(ii)とし、
ここで、tは0nmより大きく600nm以下であり、
前記基層における色相と、前記光干渉層における、厚さt(nm)での色相の差ΔEが
1<ΔE<50
の関係を示す、請求項1または2に記載のコーティング部材の製造方法。
【請求項4】
前記光干渉層形成組成物は、樹脂固形分100質量部に対し、300質量部以上9900質量部の有機溶媒を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティング部材の製造方法。
【請求項5】
前記光干渉層形成組成物は、光干渉層形成樹脂成分を含み、
前記光干渉層形成樹脂成分は、不飽和二重結合を有し、活性エネルギー線硬化型の樹脂成分である、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング部材の製造方法。
【請求項6】
前記光干渉層形成組成物は、多官能アクリレート及びフッ素樹脂を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のコーティング部材の製造方法。
【請求項7】
前記光干渉層形成組成物は、多官能アクリレート、シリコーン変性アクリレート及びフッ素樹脂を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のコーティング部材の製造方法。
【請求項8】
前記コーティング部材が、車両の室内に用いる加飾用部材である、請求項1から7のいずれか1項に記載のコーティング部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コーティング部材及びコーティング部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは、コンピュータ、テレビジョン、携帯電話、携帯情報端末機器(タブレットパソコン、モバイル機器および電子手帳など)に加え、デジタルメーター、インストルメントパネル、ナビゲーション、コンソールパネル、センタークラスターおよびヒーターコントロールパネル等の車載用表示パネルに例示されるよう、様々な分野で使用されている。このような製品は、多くの場合、反射防止機能を有するフィルム及び塗膜が設けられている。
【0003】
特開2012-088684号公報(特許文献1)には、例えば液晶ディスプレイの表示部に対して観察者側に配置され、表示領域と非表示領域とを有する表示用前面板であって、表示領域に反射防止膜が形成され、非表示領域に意匠層が形成された表示用前面板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるように、近年のディスプレイ製品においては、反射防止性だけでなく、意匠性を備えることが要求されている。
しかし、特許文献1に記載されている表示用前面板は、表示領域と非表示領域との界面と、反射防止膜が存在する領域と反射防止膜が存在しない領域との界面とを合わせる工程が必要であり、その上、反射防止膜が存在する領域と、反射防止膜が存在しない領域とは、異なる膜材料から形成される。したがって、特許文献1の表示用前面板は、表示領域と非表示領域の境界部分において、光漏れ、光の乱反射などが生じるおそれがある。更に、十分な意匠性を発揮できないおそれがある。
【0006】
また、近年、ディスプレイには、種々のセンサを設ける傾向がある。このため、今後、ディスプレイ製品の最表層などに配置される反射防止膜、意匠層のいずれにおいても、これらのセンサが有する機能を阻害しないことが求められるものと予測される。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、反射防止性と意匠性を共に向上させることができるコーティング部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は下記形態を提供する。
[1]本開示のコーティング部材は、基層と、光干渉層形成組成物から形成された光干渉層とを有するコーティング部材であって、
基層の視認側の面における一部に、光干渉層が配置され、
光干渉層は、0 nmより大きく600nm以下の範囲内であり、
0.08<(前記基層の屈折率)-(前記光干渉層の屈折率)<0.45の関係を有し、
光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物であり、
光干渉層は、インクジェット法により形成された光干渉層である。
[2]別の実施形態において、本開示のコーティング部材は、基層と、光干渉層形成組成物から形成された光干渉層とを有するコーティング部材であって、
基層の視認側の面における少なくとも一部に、光干渉層が配置され、
光干渉層は、0 nmより大きく600nm以下の範囲内で、
最小厚さ(tmin)と、最大厚さ(tmax)とを有し、更に、
最小厚さ(tmin)<最大厚さ(tmax)の関係を有し、
0.08<(前記基層の屈折率)-(前記光干渉層の屈折率)<0.45の関係を有し、
前記光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物であり、
前記光干渉層は、インクジェット法により形成された光干渉層である、
コーティング部材。
[3]一実施形態において、本開示のコーティング部材は、
基層における色相のL値、a値及びb値を、L(i)、a(i)及びb(i)とし、
光干渉層の厚さt(nm)における色相のL値、a値及びb値を、Lt(ii)、at(ii)及びbt(ii)とし、
ここで、tは0 nmより大きく600nm以下であり、
基層におけるL(i)、a(i)及びb(i)と、
光干渉層における、厚さt(nm)でのLt(ii)、at(ii)及びbt(ii)とが、以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす、
コーティング部材;
0<L(i) - Lt(ii)<35 式(1)
-30< a(i) - at(ii) <30 式(2)
-40< b(i) - bt(ii) <40 式(3)。
[4]一実施形態において、本開示のコーティング部材は、
基層における色相のL値、a値及びb値を、L(i) 、a(i)及びb(i)とし、
光干渉層における、厚さt(nm)での色相のL値、a値及びb値を、Lt(ii)、at(ii)及びbt(ii)とし、
ここで、tは0 nmより大きく600nm以下であり、
基層における色相と、光干渉層における、厚さt(nm)での色相の差ΔEが
1<ΔE<50の関係を示す。
[5]一実施形態において、本開示のコーティング部材は、光干渉層形成組成物が、樹脂固形分100質量部に対し、300質量部以上9900質量部の有機溶媒を含む。
[6]一実施形態において、本開示のコーティング部材は、光干渉層形成組成物が、光干渉層形成樹脂成分を含み、光干渉層形成樹脂成分は、不飽和二重結合を有し、活性エネルギー線硬化型の樹脂成分である。
[7]一実施形態において、本開示のコーティング部材は、光干渉層形成組成物が、多官能アクリレート及びフッ素樹脂を含む。
[8]一実施形態において、本開示のコーティング部材は、光干渉層形成組成物が、多官能アクリレート及びシリコーン変性アクリレート及びフッ素樹脂を含む。
[9]一実施形態において、本開示のコーティング部材は、車両の室内に用いる加飾用部材である。
[10]別の実施形態において、本開示は、コーティング部材の製造方法であって、
基層の視認側の面における少なくとも一部に、光干渉層形成組成物をインクジェット法により塗装すること、及び
活性エネルギー線を照射し、光干渉層を形成すること、
を含むコーティング部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のコーティング部材は、優れた反射防止性と意匠性とを有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1B】実施例1のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図2】実施例2のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図3】実施例3のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図4】実施例4のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図5】実施例5のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図6】実施例6のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図7】実施例7のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図8】実施例8のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図9】実施例9のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図10】実施例10のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図11】実施例11のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図12】実施例12のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図13】実施例13のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図14】実施例14のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図15】実施例15のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図16】実施例16のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図17】実施例17のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【
図18】実施例18のコーティング部材の反射率に関する測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を完成させるに至った経緯を説明する。本願発明者等は、上述した課題を解決するために、種々の検討を行った。
例えば、反射防止性を向上させると、意匠性が単調になる傾向があった。一方、意匠性を向上させると、コーティング部材を製造する工程が複雑となる傾向があった。
また、特許文献1に記載されるように、反射防止機能を有する領域を形成する工程と、意匠性を有する領域を形成する工程を経て得られたコーティング部材は、これらの境界領域において、光の反射が生じたり、光漏れが生じたりするだけでなく、意匠性が単純となり得るおそれがあった。
【0012】
そこで、本願発明者等は、鋭意検討した結果、本発明を完成させ、上記課題を解決できるコーティング部材を完成させた。
【0013】
本開示に係るコーティング部材は、
基層と、光干渉層形成組成物から形成された光干渉層とを有するコーティング部材であって、
基層の視認側の面における一部に、光干渉層が配置され、
光干渉層は、0nmより大きく600nm以下の範囲内であり、
0.08<(前記基層の屈折率)-(前記光干渉層の屈折率)<0.45の関係を有し、
光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物であり、
光干渉層は、インクジェット法により形成された光干渉層である、
コーティング部材である。
【0014】
また、本開示に係るコーティング部材は、
基層と、光干渉層形成組成物から形成された光干渉層とを有するコーティング部材であって、
基層の視認側の面における少なくとも一部に、光干渉層が配置され、
光干渉層は、0nmより大きく600nm以下の範囲内で、
最小厚さ(tmin)と、最大厚さ(tmax)とを有し、更に、
最小厚さ(tmin)<最大厚さ(tmax)の関係を有し、
0.08<(前記基層の屈折率)-(前記光干渉層の屈折率)<0.45の関係を有し、
光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物であり、
光干渉層は、インクジェット法により形成された光干渉層である。
【0015】
本開示によると、光干渉層が特定の厚みを有し、その上、光干渉層と基層は屈折率について、特定の関係を有する。このため、反射防止性と意匠性を共に向上させることができるコーティング部材が提供される。
例えば、本開示に係る光干渉層は、このような特定の屈折率の関係を有するため、優れた反射防止性を有することができる。
更に、光干渉層は、0nmより大きく600nm以下の範囲内であり、光干渉層が均一な厚さを有する。
別の実施形態においては、光干渉層は、0nmより大きく600nm以下の範囲内で、最小厚さ(tmin)と、最大厚さ(tmax)とを有し、更に、最小厚さ(tmin)が最大厚さ(tmax)よりも小さい関係を有するので、光の干渉、反射を、任意に調整でき、所望の外観、即ち意匠性にも優れた外観を導くことができる。
例えば、光干渉層は、パターニング、グラデーションを呈することができる。また、光の干渉を調整でき、反射率も調整できるので、例えば、金属調の外観を有するコーティング部材を提供することができる。
別の形態においては、光干渉層は、見る角度、光の当たり方等により、様々な色を呈することができる。
【0016】
また、本開示に係るコーティング部材は、平面方向、すなわち、コーティング部材の厚さ方向と垂直な方向に沿って、光干渉層の厚みを変化させることができる。例えば、本開示に係るコーティング部材の断面方向における光干渉層の形状(厚さ方向における光干渉層の形状)を観察すると、光干渉層は勾配を有してもよく、階段状に厚さが変化していてもよく、凸状の形状を有してもよい。また、本開示に係るコーティング部材は、光干渉層の屈折率が、厚さ方向においては、視認側の屈折率と、視認側から最も離れた位置での屈折率が実質的に同一であってもよい。
更に、本開示のコーティング部材は、一種類の光干渉層形成組成物から光干渉層を形成できるので、複数種の塗料組成物を用いなくてもよい。したがって、異なる塗料組成物を用いることで生じ得る、意図しない光の屈折、反射などを抑制でき、その上、鮮やかな発色を呈することができる。
【0017】
このように、本開示のコーティング部材は、基層の視認側の面における少なくとも一部において、反射防止性を有する領域と、意匠性に優れた領域を有する光干渉層を有することができる。ここで、反射防止性を有する領域と、意匠性に優れた領域は、連続して設けられてもよく、反射防止性を有する領域が意匠性に優れた領域であってもよい。
例えば、光干渉層は、一実施形態において均一な厚みであってよく、別の実施形態において、基層の表面から、厚さ600nm以下の範囲で、勾配を有する層であってもよい。一実施形態において、光干渉層は、特に優れた反射防止性が要求される範囲では平坦な(均一な)厚さを有し、意匠性が要求される領域では、勾配を有する層であってもよい。このような形態において、本開示の光干渉層は、主に優れた反射防止性を示す領域と、主に優れた意匠性を示す領域が連続し得る。このため、反射防止性を示す領域と、優れた意匠性を示す領域の境界部分における光の漏れ、乱反射などを抑制できる。
【0018】
あるいは、光干渉層は、基層の表面から、厚さ600nm以下の範囲で、階段状の層構造を有してもよく、勾配を有する箇所と、階段状の層構造を共に有してもよい。
【0019】
また、本開示のコーティング部材は、表面の反射率及び透過率を任意に可変できるコーティング部材であり、例えば、光干渉技術による反射防止と、金属調等の意匠性を共に備えることができる。
【0020】
更に、本開示における光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物であり、作業性にも優れている。その上、塗装精度が高いコーティング部材である。このため、設計された領域に、所望の塗装を行うことができ、グラデーション等の色彩を、より美しく再現できる。また、光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物であることにより、塗布しない部分にマスキングを施さなくても、任意の場所に塗布できるため、加工性・生産性に優れる。
また、大型化された被塗物、シームレス化された被塗物に対しても、ムラの少ない光干渉層を形成できる。例えば、このよな大型化された被塗物についても、同一面で塗分けが可能である。
その上、インクジェット方式を用い、膜厚の極めて薄い光干渉層を形成できるので、コーティング部材全体の厚みを低減できる。
【0021】
更に、本開示のコーティング部材は、高い硬度、耐傷付性等の物性を有している。
このように、本開示のコーティング部材は、極めて高い意匠性と、ディスプレイ等の視認性を向上できる反射防止能を備え、その上、優れた機械的性質を備えている。
【0022】
別の実施形態において、光干渉層は、コーティング部材の所望領域において、反射率を調整できる。例えば、所望の波長における反射率を低減させ、所望の波長の光を透過させることができる。このため、ディスプレイの内部に設けられ得るセンサが有する特性を、十分に発揮できる。更に、所望の波長範囲を示す光線の透過率を向上させ、かつ、光線の透過率が向上した領域の意匠性を向上させることができる。したがって、センサなどが要求する光線を透過させ、その上、優れた意匠性(例えば、金属調外観)を示すコーティング部材を得ることができる。
また、本開示のコーティング部材は、高い架橋密度を有することも可能であり、各種センサを含めたパネル等への展開も可能である。
必要に応じて、局所的に赤外線反射率を低下させることができ、例えば、その領域に赤外線センサを搭載することが可能となる。このような形態においては、赤外線センサを、視認側から目立たないように搭載することが可能となり、コーティング部材に関するデザインの選択性が幅広くなる。また、センサ機能の向上にも寄与できる。
【0023】
さらに、例えば、380nm~780nmの波長において、高い反射率を有することができ、金属調をより美しく表現できる。また、例えば、青色色調、赤色色調についてもより美しく表現できる。その上、精度の高い塗装を行えるため、デザインの選択性に極めて富んだコーティング部材が提供される。
【0024】
本開示のコーティング部材は、基層の視認側の面における少なくとも一部に、光干渉層が配置される。一実施形態において、ディスプレイ等の表示部に配置される、コーティング部材の領域は、基層の表面に光干渉層が配置され、反射防止性を示してもよい。
【0025】
本開示において、光干渉層は、0nmより大きく600nm以下の範囲内であり、光干渉層が均一な厚さを有する。光干渉層がこのような厚さを有することにより、反射防止性と、意匠性が共に優れた光干渉層を得ることができる。また、表面の平滑性に優れ、ムラが生じない、極めてムラの小さい光干渉層を得ることができ、高い光沢性を有することもできる。
別の実施形態において、光干渉層は、0 nmより大きく600nm以下の範囲内で最小厚さ(tmin)と、最大厚さ(tmax)とを有し、更に、最小厚さ(tmin)<最大厚さ(tmax)の関係を有する。
光干渉層がこのような厚さを有することにより、反射防止性と、意匠性が共に優れた光干渉層を得ることができる。また、表面の平滑性に優れ、ムラが生じない、極めてムラの小さい光干渉層を得ることができ、高い光沢性を有することもできる。
上述の形態をとるため、光干渉層は、基層の同一面上に0nmより大きく600nm以下の範囲で均一な厚さを有している、又は厚さが塗り分けられている。また、任意の膜厚で(可変的に)塗り分けが可能である。
一実施形態において、光干渉層の厚さは、0.1nm以上、1nm以上、10nm以上、30nm以上、50nm以上の厚さを有する。
例えば、光干渉層は、0.1nm以上600nm以下の範囲内で、均一な厚さを有してもよく、別の形態において、このような範囲内で最小厚さ(tmin)と、最大厚さ(tmax)とを有し、最小厚さ(tmin)と、最大厚さ(tmax)とが所定の関係を有する。
【0026】
一実施形態において、最大厚さ(tmax)は、本開示の範囲を逸脱しない限り、10nm以上500nm以下、20nm以上450nm以下、25nm以上400nm以下、30nm以上350nm以下、35nm以上320nm以下、40nm以上300nm以下及び45nm以上200nm以下の範囲からなる群から選択される範囲内に最大厚さを有することができる。
最大厚さ(tmax)がこのような範囲内であり、本開示の条件を満たすことにより、反射防止性と、意匠性が共に優れた光干渉層を得ることができる。
【0027】
本開示において、光干渉層の最大厚さ(tmax)は、最大厚さを有する領域内における平均値を算出することによって求められる。
膜厚の測定は、例えばミクロト-ムなどの器具を用いて断面を析出させ、レーザー顕微鏡、FE-SEMなどを用いて断面観察を行うことによって、測定することができる。
【0028】
本開示において、基層の屈折率と光干渉層の屈折率とは、次の関係を有する。
0.08<(基層の屈折率)-(光干渉層の屈折率)<0.45。例えば、
0.10<(基層の屈折率)-(光干渉層の屈折率)<0.43、
0.15<(基層の屈折率)-(光干渉層の屈折率)<0.42、
0.18<(基層の屈折率)-(光干渉層の屈折率)<0.41、及び
0.20<(基層の屈折率)-(光干渉層の屈折率)<0.40、
からなる群から選択される関係を有してもよい。
基層の屈折率と光干渉層の屈折率がこのような関係を有することにより、色調差を十分に呈することができ、更に、光干渉層の物性に優れたコーティング部材を得ることができる。
屈折率は、JIS K0062に準拠した方法により、アッベ屈折率計によって測定することができる。
【0029】
本開示における光干渉層の屈折率は、例えば、1.30以上2.0以下であり、一実施形態において、1.30以上1.80以下であり、例えば、1.30以上1.76以下であり、1.30以上 1.60以下であってよい。
別の実施形態において、干渉層の屈折率は、1.36以上1.80以下であり、例えば、1.36以上1.76以下であり、1.36以上1.60以下であってよい。
【0030】
また、光干渉層の屈折率が本発明の範囲内である限り、2種以上の光干渉層形成組成物を用いて、光干渉層を形成してもよい。例えば、光干渉層が傾斜を有する形態において、最小厚さ(tmin)までの光干渉層と、最小厚さ(tmin)から最大厚さ(tmax)までの光干渉層における屈折率が異なるように設計してもよい。
光干渉層の屈折率がこのような範囲内であることにより、コーティング部材は、優れた反射防止性を示すことができる。また、所望の波長における光線の反射率を低減でき、ディスプレイの内部に設けられ得るセンサが有する特性を、十分に発揮できる。更に、所望の波長範囲を示す光線の透過率を向上させ、その上、光線の透過率が向上した領域の意匠性を向上させることができる。したがって、センサなどが要求する光線を透過させ、その上、優れた意匠性(例えば、金属調外観)を示すコーティング部材を得ることができる。
【0031】
一実施形態において、コーティング部材は、
基層における色相のL値、a値及びb値を、L(i) 、a(i)及びb(i)とし、
光干渉層の厚さt(nm)における色相のL値、a値及びb値を、Lt(ii)、at(ii)及びbt(ii)とし、
ここで、tは0nmより大きく600nm以下であり、
基層におけるL(i)、a(i)及びb(i)と、
光干渉層における、厚さ(t)nmでのLt(ii)、at(ii)及びbt(ii)とが、以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす;
0<L(i) - Lt(ii)<35 式(1)
-30< a(i) - at(ii) <30 式(2)
-40< b(i) - bt(ii) <40 式(3)。
【0032】
このような関係を有することにより、光の干渉を調整でき、所望の外観、即ち意匠性にも優れた外観を導くことができる。例えば、光干渉層は、グラデーションを呈することができる。また、光の干渉を調整でき、反射率も調整できるので、例えば、金属調の外観を有するコーティング部材を提供することができる。別の形態においては、光干渉層は、見る角度、光の当たり方等により、様々な色を呈することができる。更に、光干渉層のムラ、基層と光干渉層の境界領域におけるムラを抑制でき、優れた意匠性を有するコーティング部材を得ることができる。
一実施形態において、本開示のコーティング部材は、上記式(1)~(3)を全て満たしてもよく、これらのうち少なくとも2つを満たしてもよい。
【0033】
一実施形態において、L(i)及びLt(ii)は、次の関係を有してもよく、
-30<L(i) - Lt(ii)<35 式(1)
例えば、
-20<L(i) - Lt(ii)<35 式(1)であってもよく、
-10<L(i) - Lt(ii)<35 式(1)
の関係であってもよい。
このような関係を有する場合においても、本開示の有する効果を奏し得る。
【0034】
別の実施形態において、L(i)及びLt(ii)は、次の関係を有してもよい。
0<|L(i) - Lt(ii)|<35。ここで、記号||は絶対値を意味する。
例えば、1.5<|L(i) - Lt(ii)|<35 式(1)
の関係を有し得る。
このような関係を有する場合においても、本開示の有する効果を奏し得る。
【0035】
一実施形態において、式(2)は、
-30< a(i) - at(ii) <30 式(2)
(ただし、0を除く)関係を有してもよい。
また、本開示に記載の種々の(a(i) -at(ii))の関係においても、0を除く形態を含み得る。
別の実施形態において、a(i)及びat(ii)は、次の関係を有してもよい。
0<|a(i) - at(ii) |<30 式(2)ここで、記号||は絶対値を意味する。
このような関係を有する場合においても、本開示の有する効果を奏し得る。
【0036】
一実施形態において、式(3)は、
-40< b(i) - bt(ii) <40 式(3)
(ただし、0を除く)関係を有してもよい。
また、本開示に記載の種々の(b(i) - bt(ii))の関係においても、0を除く形態を含み得る。
別の実施形態において、b(i) - bt(ii)は、次の関係を有してもよい。
0<|b(i) - bt(ii) |<40 式(3)ここで、記号||は絶対値を意味する。
このような関係を有する場合においても、本開示の有する効果を奏し得る。
【0037】
本開示において、光干渉層における、厚さt(nm)での色相は、光干渉層の厚さがt(nm)であるコーティング部材の色相を意味する。すなわち、本開示に係る基層と光干渉層とを有するコーティング部材における、厚さt(nm)の光干渉層について測定した色相を意味する。
【0038】
ここで、基層におけるL(i)、a(i)及びb(i)は、例えば、以下の範囲を示し得る。
0<L(i) <40
-30<a(i)<30
-30<b(i)<30
【0039】
例えば、光干渉層における厚さtが76nmの形態において、Lt(ii)、at(ii)及びbt(ii)は、それぞれ、L76(ii)、a76(ii)及びb76(ii)と示すことができる。同様に、厚さtが431nmの形態において、Lt(ii)、at(ii)及びbt(ii)は、それぞれ、色相L431(ii)、a431(ii)及びb431(ii)と示すことができる。
【0040】
ここで、色相のL値、a値及びb値は、JIS Z8781-4、JIS Z8781-5に準拠して求められ、L*a*b*表色系(CIE 1976)による、被測定物の色を表すのに用いられる指標である。この表色系では、L値は明度を表す。そして色相と彩度を示す色度をa値、b値で表す。a値、b値は、クロマティクネス指数と呼ばれ、色の方向を表す。a値は0を基準とし、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相において緑色度が、数値がプラスになる場合は赤色度が増すことを意味する。またb値は0を基準とし、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相が青色度を、プラスになる場合は黄色度を増すことを意味する。なおa値とb値ともに0の場合は、色味がない無彩色となる。
例えば、色相のL値、a値及びb値は、日本電色工業製のSD3000を用い、以下の条件で測定できる。
光源:D65
測定方法:反射
視野:10度
正反射光処理:SCI。
【0041】
一実施形態において、
本開示のコーティング部材は、以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす。
1.5<L(i) - Lt(ii)<35 式(1)
-25< a(i) - at(ii) <25 式(2)
-35< b(i) - bt(ii) <30 式(3)
【0042】
ここで、光干渉層における、厚さtは、0 nmより大きく600nm以下の任意の値を採ることができる。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本開示における光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物であり、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法等と比べて、光干渉層の厚さの制御を、より繊細に行うことができ、例えば、光干渉層の厚さの傾斜を、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法等と比べてスムーズに形成できる。
また、本開示のコーティング部材は、本開示における光干渉層形成組成物がインクジェット塗装用の組成物であるため、塗装精度が高い。このため、設計された領域に、所望の塗装を行うことができ、グラデーション等の色彩を、より美しく再現できる。
さらに、大型化された被塗物、シームレス化された被塗物に対しても、ムラの少ない光干渉層を形成できる。このように、本開示のコーティング部材は、極めて高い意匠性を有することができる。
その上、高い意匠性を備えながら、光干渉層の所望の領域における赤外線等の透過率をコントロール、例えば、赤外線透過率を高くすることができるので、赤外線センサを設けることができる。したがって、光干渉層の所望の領域において、高い意匠性を有しつつ、その上、高い赤外線透過率を示すことができる。
【0043】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが76nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
10<L(i) - L76(ii)<35 式(1)
-30< a(i) - a76(ii) <0 式(2)
-30< b(i) - b76(ii) <0 式(3)。
【0044】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが120nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
10<L(i) - L120(ii)<35 式(1)
-10< a(i) - a120(ii) <5 式(2)
0< b(i) - b120(ii) <25 式(3)。
【0045】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが129nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
10<L(i) - L129(ii)<35 式(1)
-10< a(i) - a129(ii) <5 式(2)
0< b(i) - b129(ii) <25 式(3)。
【0046】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが174nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
0<L(i) - L174(ii)<10 式(1)
0< a(i) - a174(ii) <10 式(2)
0< b(i) - b174(ii) <15 式(3)。
【0047】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが217nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
0<L(i) - L217(ii)<10 式(1)
0< a(i) - a217(ii) <10 式(2)
-30< b(i) - b217(ii) <0 式(3)。
【0048】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが260nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
0<L(i) - L260(ii)<20 式(1)
-20< a(i) - a260(ii) <0 式(2)
-40< b(i) - b260(ii) <0 式(3)。
【0049】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが307nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
0<L(i) - L307(ii)<25 式(1)
-30< a(i) - a307(ii) <0 式(2)
10< b(i) - b307(ii) <40 式(3)。
【0050】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが326nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
10<L(i) - L326(ii)<25 式(1)
-20< a(i) - a326(ii) <0 式(2)
10< b(i) - b326(ii) <40 式(3)。
【0051】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが379nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
0<L(i) - L379(ii)<10 式(1)
10< a(i) - a379(ii) <30 式(2)
-30< b(i) - b379(ii) <0 式(3)。
【0052】
一実施形態において、光干渉層の厚さtが431nmである場合、
以下の式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たす
0<L(i) - L431(ii)<10 式(1)
-10< a(i) - a431(ii) <10 式(2)
-30< b(i) - b431(ii) <0 式(3)。
【0053】
例えば、光干渉層が、厚さ76nmと、厚さ431nmの厚さを有する場合、各厚さに応じた範囲内で、それぞれ、式(1)~式(3)の少なくとも1つを満たすことができる。
【0054】
一実施形態において、本開示のコーティング部材は、
基層における色相のL値、a値及びb値を、L(i) 、a(i)及びb(i)とし、
光干渉層における、厚さt(nm)での色相のL値、a値及びb値を、Lt(ii)、at(ii)及びbt(ii)とし、
ここで、tは0 nmより大きく以上600nm以下であり、
基層における色相と、光干渉層における、厚さt(nm)での色相の差ΔEが
1<ΔE<50
の関係を示す。
【0055】
ここで、色差ΔEは、JIS Z8730:2009に準拠して導くことができる。例えば、基層に対し、分光測色機(日本電色工業製、品番SD3000)及びD65光源を用いて、基層における色相L(i) 、a(i)及びb(i)を測定し、同様に、光干渉層における任意の厚さt(nm)における色相Lt(ii)、at(ii)及びbt(ii)の値から算出できる。
【0056】
例えば、本実施の形態に係る色差ΔEの計算式は、下記式で表される。
ΔE=[(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2]1/2
なお、基層における色相のL値、a値及びb値を、L(i) 、a(i)及びb(i)とし、
光干渉層における、厚さt(nm)での色相のL値、a値及びb値を、Lt(ii)、at(ii)及びbt(ii)とし、
ΔL=L(i) - Lt(ii)
Δa=a(i)- at(ii)
Δb=b(i)- bt(ii)
とする。
【0057】
一実施形態において、色差ΔEは、2以上50以下であり、例えば、5以上45以下である。
【0058】
このような関係を有することにより、光の干渉をより効果的に調整でき、更に意匠性にも優れた外観を導くことができる。例えば、光干渉層は、パターニング、グラデーションを呈することができる。また、光の干渉を調整でき、反射率も調整できるので、例えば、金属調の外観を有するコーティング部材を提供することができる。別の形態においては、光干渉層は、見る角度、光の当たり方等により、様々な色を呈することができる。更に、光干渉層のムラ、基層と光干渉層の境界領域におけるムラを抑制でき、優れた意匠性を有するコーティング部材を得ることができる。
一実施形態において、本開示のコーティング部材は、上記式(1)~(3)を全て満たしてもよく、これらのうち少なくとも2つを満たしてもよい。
【0059】
一実施形態において、基層の反射率は、380nm~780nmの領域において、0.1~20%であり例えば3%~11%であり、別の実施形態では8%~11%である。
【0060】
一実施形態において、光干渉層の厚さが76nmである位置で測定した、本開示のコーティング部材(即ち、基層と光干渉層を有する部材)の反射率は、380nm~780nmの領域において、0.1~10%であり、例えば1%~5%である。
反射率がこのような範囲内であることにより、コーティング部材表面の反射率及び透過率を任意に可変でき、例えば、光干渉技術による反射防止と、金属調等の意匠性を共に備えることができる。
【0061】
一実施形態において、光干渉層の厚さが260nmである位置で測定した、本開示のコーティング部材(即ち、基層と光干渉層を有する部材)の反射率は、380nm~780nmの領域において、0%~11%である。
反射率がこのような範囲内であることにより、コーティング部材表面の反射率及び透過率を任意に可変でき、例えば、光干渉技術による反射防止と、金属調等の意匠性を共に備えることができる。
【0062】
ここで、本開示において、光干渉層は、本開示の範囲に含まれる範囲で任意の膜厚を有する。例えば、光干渉層の任意の位置における厚さが76nmであり、別の任意の位置における厚さが260nmであってもよい。この形態において、本開示のコーティング部材は、各膜厚において上記した反射率等の光学特性を示すことができ、光干渉層の各種物性を測定した位置に応じて、様々な物性、例えば、光学特性を示すことができる。
したがって、光の干渉をより効果的に調整でき、更に意匠性にも優れた外観を導くことができる。
【0063】
以下、本開示に係るコーティング部材を構成する、基層と、光干渉層形成組成物から形成された光干渉層について、説明する。
【0064】
(光干渉層)
本開示の光干渉層は、光干渉層形成組成物から形成された層である。例えば、光干渉層形成組成物は、光干渉層形成樹脂成分を含み、光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物である。
光干渉層形成組成物は、インクジェット塗装用の組成物であるため、膜厚制御及び、塗り分け(パターニング)を極めて高い精度で行うことができる。また、ムラの発生を低減又は抑制できる。
【0065】
一実施形態において、光干渉層形成組成物は、樹脂固形分100質量部に対し、300質量部以上9900質量部以下の有機溶媒を含む。別の実施形態において、光干渉層形成組成物は、樹脂固形分100質量部に対し、100質量部以上8000質量部以下、例えば、100質量部以上4000質量部以下の有機溶媒を含む。
なお、光干渉層形成組成物が光干渉層形成樹脂成分を含む形態において、樹脂固形分100質量部は、光干渉層形成樹脂成分における、樹脂成分の固形分の合計が100質量部であることを意味する。
【0066】
このような範囲内で有機溶媒を含むことにより、光干渉層形成組成物を、インクジェット法で好適に塗装することができ、設計されたデザインにあわせ、最適な組成物量で塗装ができる。
本開示の光干渉層は、本開示にかかる特定の光干渉層形成組成物を、インクジェット塗装を用いて施すことにより形成された層であるので、光干渉層の膜厚を、より細かく、様々な範囲で設計できる。例えば、光干渉層は、より複雑なパターニング、グラデーションを呈することができる。また、光の干渉をさらに細かく調整でき、反射率もより細かく調整できるので、例えば、金属調の外観を有するコーティング部材を提供することができる。
別の形態においては、光干渉層は、見る角度、光の当たり方等により、様々な色を呈することができる。更に、光干渉層のムラ、基層と光干渉層の境界領域におけるムラを抑制でき、優れた意匠性を有するコーティング部材を得ることができる。
【0067】
一実施形態において、光干渉層形成樹脂成分は、不飽和二重結合を有し、活性エネルギー線硬化型の樹脂成分である。
また、光干渉層形成組成物は、多官能アクリレート及びフッ素樹脂を含んでもよく、多官能アクリレート、シリコーン変性アクリレート及びフッ素樹脂を含んでもよい。
活性エネルギー線硬化型の樹脂成分は、活性エネルギー線(例えば紫外線)により架橋し、硬化させることができる、モノマー、オリゴマー、あるいはポリマー(樹脂ともいう)である。
このような活性エネルギー線硬化型の樹脂成分の具体例として、不飽和二重結合基を少なくとも1つ有するモノマー、オリゴマーまたはポリマー、より具体的には、不飽和二重結合基を少なくとも1つ有する、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートポリマー、シリコーン(メタ)アクリレートおよびこれらの変性モノマー、オリゴマー、ポリマーなど、が挙げられる。これらのモノマー、オリゴマー、ポリマーなどを組合せて用いてもよい。
なお「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを表わす。ある形態において、光干渉層形成組成物は、不飽和二重結合含有アクリル樹脂(不飽和二重結合含有アクリルポリマーともいう)を含む。
ある形態において、光干渉層形成組成物は、非反応性のアクリル樹脂を含んでもよい。また、光干渉層形成組成物は、不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂を含み得る。
光干渉層形成組成物は、例えば、不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂を複数種含んでもよい。
【0068】
例えば、光干渉層形成組成物は、重量平均分子量(Mw)が5000~100000である不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂を含む。ある形態において、不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が5000以上100000以下であってよく、例えば、重量平均分子量(Mw)が6000以上95000以下であってよい。重量平均分子量(Mw)は、既知の方法により算出できる。
【0069】
別の形態において、活性エネルギー線硬化型の樹脂成分が、複数種のポリマーを含む場合、一のポリマーは、重量平均分子量(Mw)が5000以上100000以下であってよく、別の種類のポリマーは、重量平均分子量(Mw)が10000以上80000以下であってよい。更に、異なる範囲の重量平均分子量(Mw)を有するポリマーを含んでもよい。様々な重量平均分子量範囲を有するポリマーを併用することで、光干渉層は、高い平滑性・作業性を示すことができる。
【0070】
このような不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂を含むことにより、複雑な形状でも成形可能であり、更に、成形時における不具合品の発生をより低くでき、その上、得られる成形体は、より高い硬度、耐摩耗性、耐薬品性等を有することができる。
【0071】
ある形態において、光干渉層形成組成物は、不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂と、多官能ウレタン(メタ)アクリレートとを含む。例えば、光干渉層形成組成物は、重量平均分子量(Mw)5000~100000の不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂と、アクリレート当量100~200の多官能ウレタン(メタ)アクリレートとを含む。
なお、本明細書において、非反応性のアクリル樹脂とは、活性エネルギー線を照射しても反応しない、又は、ほとんど反応性を示さないアクリル樹脂であり、例えば、紫外線照射をしても反応しない、又は、ほとんど反応性を示さないアクリル樹脂である。
【0072】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートのアクリレート当量は、例えば100以上200以下であり、例えば、アクリレート当量は110以上180以下であり、別の形態において、アクリレート当量115以上160以下である。
このような多官能ウレタン(メタ)アクリレートと、上述したようなアクリル樹脂とを含むことにより、複雑な形状であっても、クラック等の欠陥が生じること無く、優れた外観を有する成形品を得ることができる。
加えて、優れた耐摩耗性及び耐薬品性を有し、その上、高い硬度を有する成形品を得ることができる。
【0073】
ある形態において、光干渉層形成組成物は、不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂と、多官能シリコーン(メタ)アクリレートと、フッ素樹脂と、無機酸化微粒子とを含む。
例えば、光干渉層形成組成物は、不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂と、重量平均分子量(Mw)が700~100000である多官能シリコーン(メタ)アクリレートと、フッ素樹脂と、無機酸化微粒子とを含む。
特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、多官能シリコーン(メタ)アクリレートを含むことにより、低表面張力化、優れたレベリング性及びタックの低減が可能となる。一方、フッ素樹脂を含むことにより、コーティング層(塗膜)に滑り性を付与できる。更に、無機酸化微粒子を含むことにより、優れた耐摩耗性を付与でき、タックの低減が可能となる。
【0074】
多官能シリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量(Mw)は、例えば、700以上100000以下であり、ある形態において、800以上90000以下であり、別の形態において、800以上85000以下である。
【0075】
ある形態において、フッ素樹脂のフッ素含有量は0.1重量%以上80重量%以下、例えば、5以上75重量%以下である。
【0076】
例えば、光干渉層形成組成物は、組成物に含まれる固形分100質量部に対して、不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂を0.1質量部超80質量部以下、例えば、3.0質量部以上60質量部以下、ある形態において、5.0質量部以上60質量部以下で含む。光干渉層形成組成物は、複数種の不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂を含む場合、複数種の不飽和二重結合含有アクリル樹脂及び/または非反応性のアクリル樹脂の合計量が上記範囲内となることが好ましい。
【0077】
ある形態において、光干渉層形成組成物は、組成物に含まれる樹脂固形分100質量部に対して、多官能ウレタン(メタ)アクリレートを3.0質量部以上100質量以下、例えば、5.0質量部以上95質量部以下、別の形態において、13質量部以上68質量部以下で含む。
【0078】
ある形態において、光干渉層形成組成物は、組成物に含まれる固形分100質量部に対して、多官能シリコーン(メタ)アクリレートを、0.1質量部以上100質量以下、例えば、0.1質量部以上95質量部以下、別の形態において、0.3質量部以上50質量部以下で含む。
【0079】
ある形態において、光干渉層形成組成物は、組成物に含まれる固形分100質量部に対して、フッ素樹脂を0.01質量部以上100質量以下、例えば、0.1質量部以上95質量部以下、別の形態において、0.5質量部以上50質量部以下で含む。
【0080】
本開示に係る光干渉層形成組成物は、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーまたは多官能(メタ)アクリレートポリマーなどの多官能(メタ)アクリレート化合物;多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートポリマーなどの多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物;多官能シリコーン(メタ)アクリレートモノマー、多官能シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能シリコーン(メタ)アクリレートポリマーなどの多官能シリコーン(メタ)アクリレート化合物;などの、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物および多官能シリコーン(メタ)アクリレート化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0081】
不飽和二重結合基を1つ有する(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとして、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸イソステアリル、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0082】
多官能(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとして、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、DPHA(ダイセル オルネクス社製)、PETRA(ダイセル オルネクス社製:ペンタエリスリトールトリアクリレート)、PETIA(ダイセル オルネクス社製)、アロニックスM-403(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート)、アロニックスM-402(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート)、アロニックスM-400(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート)、SR-399(アルケマ社製:ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート)、KAYARAD DPHA(日本化薬社製)、KAYARAD DPHA-2C(日本化薬社製)、M-404、M-405、M-406、M-450、M-305、M-309、M-310、M-315、M-320、TO-1200、TO-1231、TO-595、TO-756(以上、東亞合成社製)、KAYARD D-310、D-330、DPHA、DPHA-2C(以上、日本化薬社製)などを用いることができる。
【0083】
単官能あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマーとしては、上記単官能あるいは多官能(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーの高分子量化合物などが挙げられる。
【0084】
なお、本明細書において、上記種々のポリマーを、単に不飽和二重結合含有アクリルポリマー又は不飽和二重結合含有アクリル樹脂と称する場合がある。
【0085】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとして、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、2官能ウレタン(メタ)アクリレート(日本化薬社製の「UX-2201」、「UX-8101」、「UX-6101」、共栄社化学社製の「UF-8001」、「UF-8003」、ダイセル オルネクス社製の「Ebecryl244」、「Ebecryl284」、「Ebecryl2002」、「Ebecryl4835」、「Ebecryl4883」、「Ebecryl8807」、「Ebecryl6700」)、3官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル オルネクス社製の「Ebecryl254」、「Ebecryl264」、「Ebecryl265」)、4官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル オルネクス社製の「Ebecryl8210」)、6官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル オルネクス社製の「Ebecryl1290k」、「Ebecryl5129」、「Ebecryl220」、「KRM8200」、「Ebecryl1290N」)、9官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル オルネクス社製の「KRM7804」)、10官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル オルネクス社製の「KRM8452」、「KRM8509」)、15官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル オルネクス社製の「KRM8655」)などを用いることができる。
【0086】
単官能あるいは多官能のウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーはまた、例えばポリカーボネートジオールと、分子中に水酸基と不飽和二重結合基とを含有する(メタ)アクリレート化合物と、ポリイソシアネートとを反応させることによって調製することもできる。
【0087】
単官能あるいは多官能ウレタン(メタ)アクリレートポリマーとしては、上記単官能あるいは多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーの高分子量化合物などが挙げられる。
【0088】
多官能シリコーン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーは、シリコーン骨格を有する化合物である。例えば、シリコーン骨格を有する化合物がフッ素原子含有基を有してもよく、フッ素樹脂がシリコーン骨格を有してもよい。
多官能シリコーン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとして、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、以下のものを挙げられる。
メタクリロイル基及びアクリロイル基を有する化合物
BYK社製 : BYK-UV3500、BYK-UV3570
信越化学工業社製 : 信越シリコーン X-22-164、信越シリコーン X-22-164AS、信越シリコーン X-22-164A、信越シリコーン X-22-164B、信越シリコーン X-22-164C、信越シリコーン X-22-164E、信越シリコーン X-22-174DX、信越シリコーン X-22-2426、信越シリコーン X-22-2475、KER-4000-UV、KER-4700-UV、KER-4710-UV、KER-4800-UV、
JNC社製 : FM-0711、FM-0721、FM-0725、TM-0701、FM-7711、FM-7721、FM-7725
エボニックジャパン :
TEGO(登録商標) Rad 2010、TEGO(登録商標) Rad 2011、TEGO(登録商標) Rad 2100、TEGO(登録商標) Rad 2200、TEGO(登録商標) Rad 2300、TEGO(登録商標) Rad 2400、TEGO(登録商標) Rad 2500等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基含有のフッ素原子含有基を有する材料とフッ素樹脂がシリコーン骨格の化合物を有する材料
日本合成化学工業社製 : 紫光 UV-AF305
T&K TOKA : ZX-212、ZX-214-A
信越化学工業社製 : KY-1203等が挙げられる。
【0089】
光干渉層形成組成物は、上述した樹脂に加えて、例えば、フッ素系樹脂を含んでもよい。組成物がフッ素系樹脂を含むことにより、成形品の耐摩耗性を更に向上できる。
本開示において、フッ素系樹脂は、シリコーン骨格の化合物を含まないフッ素含有樹脂を意味する。例えば、パーフロロオクチルアクリレート、アクリル変性パーフロロポリエーテル等があげられる。フッ素含有樹脂は、メタクリロイル基、アクリロイル基の官能基が変性されてもよい。
フッ素系樹脂は、例えば、以下の市販品であってよい。
DIC社製 : メガファックRS-72-K、メガファックRS-75、メガファックRS-76-E、メガファックRS-76-NS、メガファックRS-77
ダイキン工業社製 : オプツール DAC-HP
ソルベイソレクシス社製 : FLUOROLINK MD700、FLUOROLINK AD1700
ネオス社製 : フタージェント601ADH2等。
【0090】
光干渉層形成組成物は、有機微粒子及び/又は無機酸化微粒子を含んでよい。
無機酸化微粒子として、例えば、シリカ(SiO2)粒子、中空シリカ粒子、フッ化マクネシウム粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称;ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等が挙げられる。さらに、官能基が修飾されたものであってもよい。官能基は、(メタ)アクリロイル基が望ましい。有機微粒子としては、アクリル微粒子、中空アクリル微粒子、ポリスチレン微粒子、メラミン微粒子などがあげられる。有機微粒子および無機酸化微粒子、例えば、有機微粒子および無機酸化微粒子の1次粒径は、透明性と塗料安定性の観点より 5nm~100nmである。なお、本明細書における粒状物の平均粒子径は、断面電子顕微鏡の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定される値である。
例えば、無機酸化微粒子を配合することにより、未硬化塗膜に対して、体積収縮を緩和できる。更に、例えば、無機酸化微粒子を配合することで、前記効果に加え、塗膜に剛性を付与することができる。
また、無機酸化微粒子を配合することにより、硬化塗膜に対して、硬化収縮によるカールの発生等を抑制でき、例えば、無機酸化微粒子を配合することにより、前記効果に加えて、耐摩耗性を付与できる。
【0091】
(光重合開始剤)
本発明の光干渉層形成組成物は、光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤が存在することによって、活性エネルギー線、例えば紫外線により樹脂成分が良好に重合することになる。光重合開始剤の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0092】
上記光重合開始剤のうち、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどがより好ましく用いられる。
【0093】
光重合開始剤の好ましい量は、光干渉層形成組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.01~10質量部であり、例えば、1~10質量部である。光重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上の光重合開始剤を組合せて用いてもよい。
【0094】
(溶媒)
光干渉層形成組成物は、溶媒を含んでもよい。
溶媒は、特に限定されるものではなく、組成物中に含まれる成分、塗布される基材の種類および組成物の塗布方法などを考慮して適時選択することができる。用いることができる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0095】
一実施形態において、光干渉層形成組成物は、0.5~50cP、例えば、1~40cPの粘度を有する。これにより、成膜時の均一性、インクジェット吐出時の安定性、組成物の貯蔵安定性をより良好に示すことができる。
【0096】
一実施形態において、光干渉層形成組成物は、10~40mN/mの表面張力、例えば、15~35mN/mの表面張力を有する。別の実施形態において、表面張力は、20~30mN/mである。これにより、成膜時の均一性、インクジェット吐出時の安定性、組成物の貯蔵安定性をより良好に示すことができる。
【0097】
光干渉層形成組成物は、本開示のコーティング部材が奏する効果を損なわない範囲で、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、例えば、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、レベリング剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0098】
光干渉層形成組成物は、当業者において通常行われる手法によって調製することができる。例えば、ペイントシェーカー、ミキサーなどの通常用いられる混合装置を用いて、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0099】
(基層)
本開示に係る基層は、本開示における特定の条件を満たす限り、適宜選択できる。例えば、基層は単層であってよく、複層であってよい。一実施形態において、基層は、本開示に係る光干渉層と隣接する側、即ち、視認側から順に、高屈折率層、中屈折率層、ベース層(例えば、ハードコート層)を有する構造であってもよい。更に、ベース層における中屈折率層とは反対側の面に、基材を有してもよい。
一実施形態において、基層は、本開示に係る光干渉層と隣接する側、即ち、視認側から順に、少なくともベース層及び基材を有する。
【0100】
一実施形態において、高屈折率層は、厚さが10nm以上300nm以下であり、例えば、10nm以上200nm以下である。高屈折率層の屈折率は、本開示に係る光干渉層の屈折率に応じて適宜選択でき、例えば、1.45以上2.00以下の範囲内である。
【0101】
一実施形態において、中屈折率層は、厚さが10nm以上300nm以下であり、例えば、10nm以上200nm以下である。中屈折率層の屈折率は、本開示に係る光干渉層の屈折率に応じて適宜選択でき、1.45以上1.70以下の範囲内で設定できる。例えば、高屈折率層を含む形態において、中屈折率層は、高屈折率層が示す屈折率より低く、本開示に係る光干渉層が有する屈折率よりも高い値を採ることができる。
【0102】
一実施形態において、ベース層の厚さは、0.1~100μmの範囲であり、例えば、1~30μmの範囲であり、別の実施形態において、1.5~15μmの範囲である。ベース層の厚さがこの範囲にあれば、基材との密着性、基層の表面硬度が高くなる。また、ベース層の屈折率は、1.45以上1.70以下の範囲内で設定できる。一実施形態において、ベース層の屈折率は、高屈折率層の屈折率及び/又は中屈折率層の屈折率よりも小さい。
【0103】
基層が有し得る、高屈折率層、中屈折率層、ベース層を形成する樹脂として、例えば、エポキシ系樹脂、フェノ-ル系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、イソシアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂及びシロキサン樹脂等を挙げることができる。これら樹脂は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの樹脂に、高屈折率の無機微粒子を配合してもよい。
【0104】
高屈折率層、中屈折率層を形成する組成物は、無機酸化微粒子を含んでよい。無機酸化微粒子は、不飽和二重結合で微粒子表面を修飾した無機酸化微粒子であってよい。
無機酸化微粒子として、例えば、シリカ(SiO2)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化ジルコニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称;ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等が挙げられる。例えば、官能基が修飾されたものが望ましい。官能基は、(メタ)アクリロイル基が望ましい。無機酸化微粒子、例えば、無機酸化微粒子の1次粒径は、透明性と塗料安定性の観点より 5nm~100nmである。なお、本明細書における粒状物の平均粒子径は、断面電子顕微鏡の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定される値である。
例えば、無機酸化微粒子を配合することにより、未硬化塗膜に対して、体積収縮を緩和できる。更に、例えば、無機酸化微粒子を配合することで、前記効果に加え、塗膜に剛性を付与することができる。
また、無機酸化微粒子を配合することにより、硬化塗膜に対して、硬化収縮によるカールの発生等を抑制でき、例えば、無機酸化微粒子を配合することにより、前記効果に加えて、耐摩耗性を付与できる。
【0105】
例えば、市販の無機酸化微粒子を用いてもよく、アルミナ粒子として、
住友大阪セメント社製 :AS-15 0 I 、AS-150T
ビックケミー ジャパン 社製 : NANOBYK-3601、NANOBYK -3602 、NANOBYK -3610等が挙げられる。
酸化ジルコニア粒子としては
堺化学工業製:SZR-K、SZR-KM
CIKナノテック製:ZRANB15WT%-P02、ZRMIBK15WT%-P01、ZRMIBK15WT%-F85
ソーラー製:NANON5ZR-010、NANON5ZR-020等が挙げられる。
【0106】
本開示の基層に含まれ得る基材として、例えば、ポリカーボネート系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系フィルム;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルムのような、樹脂基材が挙げられる。これらの樹脂基材は透明樹脂基材であってもよい。
また、本開示に係る樹脂基材は、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体等のスチレン系フィルム;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体等のオレフィン系フィルム;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系フィルム等の、樹脂基材が挙げられる。これらの樹脂基材は透明樹脂基材であってもよい。
さらに、本開示に係る樹脂基材は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリオキシメチレン、エポキシ樹脂、および上記ポリマーのブレンド物等の、樹脂基材が挙げられる。これらの樹脂基材は透明樹脂基材であってもよい。
さらに、本開示に係る樹脂基材は、複数の樹脂基材が積層されたものであってもよい。例えば、アクリル系樹脂からなるフィルムおよびポリカーボネート系樹脂からなるフィルムの積層部材またはシートの積層部材であってもよい。これらの積層部材は、透明な積層部材であってもよい。
【0107】
本開示に係る樹脂基材は、これら樹脂基材のうち、光学的に複屈折の少ないもの、あるいは位相差を波長(例えば550nm)の1/4(λ/4)または波長の1/2(λ/2)に制御したもの、さらには複屈折をまったく制御していないものを、用途に応じて適宜選択することができる。
フィルム基材の厚さは、例えば0.01mm以上5mm以下であってよい。
【0108】
(コーティング部材の製造方法)
別の実施形態において、本開示は、基層の視認側の面における少なくとも一部に、本開示に係る光干渉層形成組成物をインクジェット法により塗装すること、及び、
活性エネルギー線を照射し、光干渉層を形成することを含むコーティング部材の製造方法を提供する。この方法を用いて、本開示に係るコーティング部材を製造できる。
【0109】
本開示において、光干渉層形成組成物は、インクジェット法を用いて、基層に塗装できる。インクジェット法の方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変換し、光干渉層形成組成物に照射し、放射圧を利用して光干渉層形成組成物を吐出させる音響インクジェット方式、及び光干渉層形成組成物を加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等を用いることができる。
【0110】
基層に塗装された光干渉層形成組成物を硬化させることによって、光干渉層が形成される。この硬化は、必要に応じた波長の活性エネルギー線を発する光源を用いて照射することによって行うことができる。照射する一例として、紫外線を挙げられ、例えば、積算光量1~5000mJ/cm2の光を照射することができる。例えば、積算光量100mJ/cm2超1000mJ/cm2以下の光を照射することにより、光干渉層の特性を十分に発揮でき、その上、より効率的に光干渉層を形成できる。
またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば380nm以下の波長を有する紫外光などを用いることができる。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。
【0111】
(加飾層)
本開示のコーティング部材は、必要に応じて更に加飾層を有してもよく、例えば、基層の光干渉層とは反対側に加飾層を有してもよい。
【0112】
加飾層は、本開示に係る加飾用積層部材に模様、文字または金属光沢などの加飾を施す層である。このような加飾層として、例えば印刷層または蒸着層などが挙げられる。印刷層および蒸着層はいずれも、加飾を施すことを主な目的とする層である。
【0113】
本開示において、加飾層として印刷層または蒸着層の何れかのみを設けてもよく、あるいは印刷層および蒸着層の両方を設けてもよい。また印刷層は複数の層から構成される層であってもよい。例えば、加飾層は印刷層である。
【0114】
印刷層は、成形体表面に模様および/または文字などの加飾を施すものである。印刷層として、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。印刷層の材料としては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。
印刷層に用いられるインキの顔料としては、例えば、次のものが使用できる。通常、顔料として、黄色顔料としてはポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料またはチタンニッケルアンチモン酸化物等の無機顔料、赤色顔料としてはポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料または弁柄等の無機顔料、青色顔料としてはフタロシアニンブルー等の有機顔料またはコバルトブルー等の無機顔料、黒色顔料としてはアニリンブラック等の有機顔料、白色顔料としては二酸化チタン等の無機顔料が使用できる。
【0115】
印刷層に用いられるインキの染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。また、インキの印刷方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法またはロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法を用いるのがよい。
【0116】
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等の群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはこれらの合金もしくは化合物を使用して、真空蒸着法またはスパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法等の方法により形成することができる。
【0117】
これら加飾のための印刷層または蒸着層は、所望の成形体の表面外観が得られるよう、成形時の延伸度合いに応じて、通常用いられる方法により適宜その厚みを選択することができる。
【0118】
本開示のコーティング部材は、タッチパネル又はディスプレイ部に配置される部材及びその周辺に配置されるセンサ部材として好適に用いることができる。
一実施形態において、ディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどが挙げられる。たとえば、本発明の加飾成形体を、タッチパネル、ディスプレイ部に配置する場合は、タッチパネル、ディスプレイ部の表示面に、基層の光干渉層とは反対側の面が積層される。
【0119】
本発明のコーティング部材は、例えば、自動車構成部品、携帯情報端末、家庭用電気製品、家具、室内調度品などに適用でき、例えば、車両の室内に用いる加飾用部材として適用できる。
【実施例】
【0120】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0121】
(製造例1)
ベース塗膜形成組成物の調製
光重合開始剤としてイルガキュア184(IGM Resins社製)を7重量部、紫外線硬化型樹脂としてアロニックスM-305(東亜合成社製)を100重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が35%となるように調整し、ベース塗膜形成組成物を調製した。なお、塗膜形成後の屈折率は1.51であった。
【0122】
(製造例2)
中屈折率層形成組成物の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.18重量部、紫外線硬化型樹脂としてアロニックスM-402(東亜合成)を2.65重量部、屈折率調整用の金属酸化物微粒子としてZR-010(ソーラー)を6.58重量部、溶媒として、ジアセトンアルコール(DAA)を90重量部用い、中屈折率層形成組成物を調整した。なお、塗膜形成後の屈折率は1.59であった。
【0123】
(製造例3)
高屈折率層形成組成物の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.17重量部、紫外線硬化型樹脂としてアロニックスM-402(東亜合成)を0.72重量部、屈折率調整用の金属酸化物微粒子としてZR-010(ソーラー)を12.43重量部、溶媒として、ジアセトンアルコール(DAA)を90重量部用い、高屈折率層形成組成物を調整した。なお、塗膜形成後の屈折率は1.76であった。
【0124】
(製造例A1)
基層1の製造
厚さ2.0mmである、PMMA(ポリメチルメタクリレート)およびPC(ポリカーボネート)からなる3層(PMMA/PC/PMMA)シート(商品名:MT3LTR、クラレ株式会社製)の一方の面に、ベース塗膜形成組成物をバーコーターにより乾燥膜厚が3.5μmになるよう塗布し、65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させ、ハードコーティング組成物側から、積算光量250mJ/cm2の紫外線照射処理により硬化させ、ベース層を形成した(屈折率1.51)。
次いで、ベース層上に、中屈折率層形成組成物をバーコーターにより乾燥膜厚が80nmになるよう塗布し、65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させ、中屈折率層形成組成物側から、積算光量250mJ/cm2の紫外線照射処理により硬化させ、中屈折率層を形成した(屈折率1.59)。
更に、中屈折率層上に、高屈折率層形成組成物をバーコーターにより乾燥膜厚が60nmになるよう塗布し、65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させ、高屈折率層形成組成物側から、積算光量250mJ/cm2の紫外線照射処理により硬化させ、高屈折率層を形成した(屈折率1.76)。
このようにして、基層1を製造した。
【0125】
(参考例1:基層に関する評価)
得られた基層の高屈折率層とは反対側の面に、スクリーン印刷を用いて、HF-HSDコンク710ブラック(セイコーアドバンス社製)により全面黒色の印刷を実施した。この試験片について、JIS Z8781-4、JIS Z8781-5等に記載の方法に従い、日本電色工業製(品番SD3000)の装置を用い、基層における色相のL値、a値及びb値であるL(i)、a(i)及びb(i)を測定した。結果を表1に示す。その他の評価項目については、後述する実施例1に記載の各種評価基準と同様にして評価を行った。
【0126】
(製造例A2)
基層2の製造
厚さ2.0mmである、PMMA(ポリメチルメタクリレート)およびPC(ポリカーボネート)からなる3層(PMMA/PC/PMMA)シート(商品名:MT3LTR、クラレ株式会社製)の一方の面に、ベース塗膜形成組成物をバーコーターにより乾燥膜厚が3.5μmになるよう塗布し、65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させ、ハードコーティング組成物側から、積算光量250mJ/cm2の紫外線照射処理により硬化させ、ベース層を形成した(屈折率1.51)。
このようにして、基層2を製造した。
【0127】
(調製例B1)
光干渉層形成組成物1の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.63重量部、光重合開始剤としてアロニックスM-402(東亜合成)を7.46重量部、屈折率調整用の微粒子として、スルーリア4320(日揮触媒化成社製)を33.72重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が30%となるように調整し、光干渉層形成組成物1を調製した。
【0128】
(実施例1)
得られた基層の、高屈折率層を形成した面に、調製例B1で得られた光干渉層形成組成物1を、インクジェット装置を用い、乾燥後の光干渉層の最大厚さtmが76nmとなるよう塗装した。65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させ、光干渉層形成組成物側から、積算光量250mJ/cm2の紫外線照射処理により硬化させ、光干渉層を形成した。
このようにして、基層と、光干渉層形成組成物から形成された光干渉層とを有するコーティング部材を形成した。
【0129】
(厚みの測定)
試験サンプルを10mm×10mmに切り出し、ミクロト-ム(LEICA RM2265)にて光干渉層の断面を析出させた。析出させた断面をFE-SEM(S-4800 日立ハイテクノロジー製)にて観察し、10点の光干渉層の厚みを測定し、その最大値及び最小値の平均値を算出することにより、最小厚さ(tmin)と、最大厚さ(tmax)とを算出した。
【0130】
(屈折率の測定)
各層に関する屈折率は、JIS K0062に準拠した方法により、アッベ屈折率計によって測定した。なお、光干渉層の屈折率は、コーティング部材の形態で測定した。
【0131】
(光干渉層に関する色相の評価)
実施例1で得たコーティング部材の光干渉層とは反対側の面に、スクリーン印刷を用いて、HF-HSDコンク710ブラック(セイコーアドバンス社製)により全面黒色の印刷を実施した。この試験片について、JIS Z8781-4、JIS Z8781-5等に記載の方法に従い、日本電色工業製(品番SD3000)を用い、色相L76(ii)、a76(ii)及びb76(ii)を測定した。
得られた数値に基づき、「L(i) - L76(ii)」、「a(i) - a76(ii)」及び「b(i) - b76(ii)」を算出した。結果を表1に示す。
ここで、参考例1で測定したL値、a値及びb値を、それぞれ、L(i)、a(i)及びb(i)とした。
【0132】
(色差ΔEの算出)
色差ΔEは、JIS Z8730:2009に準拠して導いた。上述のようにして得られた基層における色相L(i)、a(i)及びb(i)を測定し、同様に、光干渉層の厚さ76nmにおける領域の色相L76(ii)、a76(ii)及びb76(ii)の値から算出した。
結果を表1に示す。
【0133】
(塗分け可否に関する評価)
150×250mmの基層上に、インクジェット装置を用い、調製例B1で調製した光干渉層形成組成物1を50mm角の正方形を3か所にパターニング塗布した。塗布面について、以下の評価基準に従い評価を行った。
(評価基準)
○:49mm角の正方形~51mm角の正方形に塗布面が収まっている。
△:48mm角~49mm角未満の正方形、または51mm角超~52mm角の正方形に塗布面が収まっている。
×:48mm角の正方形~52mm角の正方形に塗布面が収まっていない。
【0134】
(ムラ・仕上がりに関する評価)
150×250mmの基層上に、インクジェット装置を用い、調製例B1で調製した光干渉層形成組成物1を50mm角の正方形を3か所にパターニング塗布した。印刷した塗布面の色相3ヶ所に対し、その色差(ΔE)の最大値を測定した。この色差(ΔE)の最大値を以下の基準に従い評価した。
(評価基準)
○:1以下
△:1超、1.5以下
×:1.5超
【0135】
鉛筆硬度の評価
実施例1で得られたコーティング部材における、光干渉層について、硬度の評価を行った。測定は、JIS K5600-5-4(1999)、ひっかき硬度(鉛筆法)に従って鉛筆硬度を測定した。
【0136】
(反射率の測定)
参考例1で作成した基層については、高屈折率層(屈折率1.76)側における波長380~780nmの光線反射率の測定を行った。結果を
図1Aに示す。
実施例1で得られたコーティング部材における、光干渉層について、波長380~780nmの光線反射率の測定を行った。具体的には、光干渉層の厚さ76nmの領域を、分光色彩計(日本電色工業製SD3000)を用い、5nm毎に、反射する光線の強度(反射率を測定した。結果を
図1Bに示す。
ここで、各図において「光学干渉」と示される曲線が、光干渉層に関する測定結果である。また、「通常」と示される曲線は、参考として、基材とベース層を有する塗装物に関する反射率である。
【0137】
(実施例2~実施例9)
光干渉層の最大厚さを変化させたこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング部材を形成した。また、実施例1と同様にして、各種評価を行った。結果を表1及び
図2~
図9に示す。
【0138】
(実施例10)
(調製例B2)
光干渉層形成組成物2の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.63重量部、光重合開始剤としてアロニックスM-402(東亜合成)を7.46重量部、屈折率調整用の微粒子として、スルーリア4320(日揮触媒)を39.46重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が30%となるように調整し、光干渉層形成組成物2を調製した。
【0139】
得られた光干渉層形成組成物2を用い、厚さ120nmの光干渉層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、コーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。光干渉層の屈折率は1.37であった。実施例10に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図10に示す。
【0140】
(実施例11)
(調製例B3)
光干渉層形成組成物3の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.63重量部、光重合開始剤としてアロニックスM-402(東亜合成)を7.46重量部、屈折率調整用の微粒子として、スルーリア4320(日揮触媒)を6.42重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が30%となるように調整し、光干渉層形成組成物3を調製した。
【0141】
得られた光干渉層形成組成物3を用い、厚さ120nmの光干渉層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、コーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。光干渉層の屈折率は1.48であった。実施例11に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図11に示す。
【0142】
(実施例12)
(調製例B4)
光干渉層形成組成物4の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.63重量部、光重合開始剤としてアロニックスM-402(東亜合成)を5.60重量部、及びアロニックスM-211B(東亜合成)を1.86重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が30%となるように調整し、光干渉層形成組成物4を調製した。
【0143】
得られた光干渉層形成組成物4を用い、厚さ120nmの光干渉層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、コーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。光干渉層の屈折率は1.52であった。実施例12に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図12に示す。
【0144】
(実施例13)
基層2を用い、光干渉層の厚さを120nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。実施例13に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図13に示す。
【0145】
(実施例14)
(調製例B5)
光干渉層形成組成物5の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.63重量部、光重合開始剤としてアロニックスM-402(東亜合成)を6.93重量部、屈折率調整用の微粒子として、スルーリア4320(日揮触媒)を19.41重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が30%となるように調整し、光干渉層形成組成物5を調製した。
【0146】
得られた光干渉層形成組成物5を用い、厚さ120nmの光干渉層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、コーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。光干渉層の屈折率は1.42であった。実施例14に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図14に示す。
【0147】
(実施例15)
調製例B1で作成した光干渉層形成組成物1において、樹脂固形分100質量部に対し、900質量部の有機溶媒(PGM)が含まれるように光干渉層形成組成物を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。実施例14に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図15に示す。
【0148】
(実施例16)
調製例B1で作成した光干渉層形成組成物1において、樹脂固形分100質量部に対し、8000質量部の有機溶媒(PGM)が含まれるように光干渉層形成組成物を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。実施例14に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図16に示す。
【0149】
(実施例17)
(調製例B6)
光干渉層形成組成物6の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.63重量部、光重合開始剤としてアロニックスM-402(東亜合成)を6.93重量部、フッ素系添加剤として、DAC-HP(ダイキン)を2.67重量部、屈折率調整用の微粒子として、スルーリア4320(日揮触媒)を33.72重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が30%となるように調整し、光干渉層形成組成物6を調製した。
【0150】
得られた光干渉層形成組成物6を用い、厚さ120nmの光干渉層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、コーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。光干渉層の屈折率は1.38であった。実施例14に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図17に示す。
【0151】
(実施例18)
(調製例B7)
光干渉層形成組成物7の調製
光重合開始剤としてイルガキュア127(IGM)を0.63重量部、光重合開始剤としてアロニックスM-402(東亜合成)を4.16重量部、シリコーン変性ウレタンアクリレートであるUN-906S(根上工業)を2.77重量部、フッ素系添加剤として、DAC-HP(ダイキン)を2.67重量部、屈折率調整用の微粒子として、スルーリア4320(日揮触媒)を33.72重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が30%となるように調整し、光干渉層形成組成物7を調製した。
【0152】
得られた光干渉層形成組成物7を用い、厚さ120nmの光干渉層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、コーティング部材を形成した。更に、実施例1と同様に各種物性等を評価した。光干渉層の屈折率は1.38であった。実施例14に関する詳細な物性などを表2に示す。また、反射率に関する結果を
図18に示す。
【0153】
(比較例1~比較例4)
比較例1~比較例3は、インクジェット塗装用の組成物である、調製例1で調製した本開示に係る光干渉層形成組成物を、インクジェット法以外の塗装方法を用いて塗装を行った比較例である。詳細な結果を表3に示す。この結果から理解できるように、インクジェット塗装用の組成物をその他の方法で塗装すると、反射特性及び意匠性に優れた塗膜を得ることができなかった。
比較例4は、光干渉層の膜厚が、本開示の範囲外である比較例である。詳細な結果を表3に示す。この結果から理解できるように、光干渉層が特定の膜厚を超過すると、塗膜の塗り分けを行うことができず、例えば、グラデーションなど、意匠性に優れた塗膜を形成できなかった。
【0154】
(比較例5)
(調製例8)
水酸基含有アクリル樹脂(1)の製造
攪拌機、温度制御装置、還流冷却器を備えた容器に、酢酸ブチル30gを仕込み、120℃に昇温させた。次に下記組成の単量体混合物(スチレン20部、アクリル酸n-ブチル15.3部、メタクリル酸-n-ブチル27.9部、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル36部、アクリル酸0.8部)、そして、カヤエステルO 12部および酢酸ブチル6部を3時間かけて同時に滴下させた後30分間放置し、カヤエステルO 0.5部、酢酸ブチル4部の溶液を30分間かけて滴下し、反応溶液を1時間攪拌し樹脂への変化率を上昇させた後、反応を終了させ、固形分70%、数平均分子量3800、水酸基価140mg/KOH、酸価6.2mg/KOH、SP値10.6である、水酸基含有アクリル樹脂(1)を得た。
クリヤー塗料組成物の調製
上記調製例8の水酸基含有アクリル樹脂(1)を樹脂固形分で60.0部、メチルアミルケトン57.0部およびDBE(昭栄ケミカル社製)22.0部を順次添加し、ディスパーにて十分撹拌し、2液型クリヤー塗料組成物の主剤を得た。
別の金属製容器に、住友バイエルウレタン社製「ディスモジュールN-3300」(NCO有効成分22%)固形分で40.0部および2-エチルエトキシプロパノールを順次添加し、十分撹拌し、2液型クリヤー塗料組成物の硬化剤を得た。
光干渉層形成組成物8
上記クリヤー塗料組成物と、屈折率調整用の微粒子として、スルーリア4320(日揮触媒)を452.01重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を用い、固形分濃度が30%となるように調整し、光干渉層形成組成物8を調製した。実施例1と同様にして光干渉層を形成した。詳細な結果を表3に示す。
この結果、得られたコーティング部材は、十分な硬度を有することができなかった。
【0155】
(比較例6、比較例7)
比較例8及び9は、基層の屈折率から光干渉層の屈折率を差し引いた値、
(基層の屈折率- 光干渉層の屈折率)が本開示の範囲外である比較例である。
また、基層2を用いたこと以外は、実施例1と同様に各種物性等を評価した。
結果を表3に示す。この結果、色調変化がなく意匠性が悪かった。
【0156】
(参考例2、参考例3)
参考例2及び3は、インクジェット塗装での使用が想定されていない組成物であって、スクリーン印刷など、インクジェット法以外の方法を用いて光干渉層を形成し得る組成物を、インクジェット法で塗装し、塗膜の形成を試みた。例えば、参考例2は、粘度が極めて低く、インクジェット塗装を行ったところ、ムラの発生、仕上がり不良などが生じた。一方、参考例3は、粘度が高く、インクジェット法により、600nm以下の厚さを有する塗膜の形成ができなかった。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
実施例の結果によると、本開示に係るコーティング部材は、反射防止性と意匠性を共に向上させることができるコーティング部材である。また、表示領域と非表示領域の光漏れを抑制でき、更に、反射防止性に優れている。
その上、高い塗り分け性を有しており、デザインの選択性に富むコーティング部材であることが判る。加えて、ムラの無い又は極めて少ないコーティング部材であり、その上、良好な塗膜硬度を有している。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本開示のコーティング部材は、反射防止性と意匠性を共に向上させることができる。更に、高い塗り分け性を有しており、デザインの選択性に富むコーティング部材が提供される。