(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】駆動伝達装置及びそれを備える画像形成装置
(51)【国際特許分類】
F16H 27/04 20060101AFI20240213BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240213BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240213BHJP
F16H 27/08 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
F16H27/04 Z
G03G21/16 147
G03G21/16 180
G03G15/16 103
F16H27/08
(21)【出願番号】P 2019125897
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千野 英人
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 27/04
G03G 21/16
G03G 15/16
F16H 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源より駆動力が入力される駆動ギアと、
前記駆動ギアによって回転可能な従動ギアと、
前記従動ギアによって回転可能な中間ギアと、
前記中間ギアによって回転可能な、被駆動部材に駆動力を伝達する出力ギアと、
前記駆動ギアで前記従動ギアが回転しない状態で前記従動ギアを変位させる付勢部材と、
を有する駆動伝達装置において、
前記従動ギアは、前記出力ギアが前記中間ギアによって回転されず、かつ前記中間ギアが前記従動ギアによって回転されない状態で、前記付勢部材の付勢力によって変位されることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
駆動源より駆動力が入力される駆動ギアと、
前記駆動ギアによって回転可能な従動ギアと、
前記従動ギアによって回転可能な中間ギアと、
前記中間ギアによって回転可能な、被駆動部材に駆動力を伝達する出力ギアと、
前記駆動ギアで前記従動ギアが回転しない状態から回転する状態に、前記従動ギアを変位させる弾性部材と、
を有する駆動伝達装置において、
(i)前記駆動ギアから前記従動ギアに、前記中間ギアから前記出力ギアに駆動力が伝達されない状態とし、
(ii)前記弾性部材の弾性力によって前記従動ギアが前記駆動ギアからの駆動力により回転可能な状態となるように前記従動ギアを変位させた後、
(iii)前記中間ギアが前記出力ギアを回転させることなく前記従動ギアで前記中間ギアが回転させられた後、前記中間ギアが前記出力ギアに駆動伝達可能となる、
ように構成されたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
前記従動ギアが前記駆動ギアに係合して回転するとき、前記従動ギアは前記中間ギアを回転させ、前記中間ギアは前記出力ギアを回転させることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記従動ギア、前記中間ギア、前記出力ギアは、それぞれ互いに噛み合うギアであり、
前記従動ギアが前記中間ギアを回転させない位相にあるとき、前記従動ギアと前記中間ギアとが対向する部分では前記従動ギアの歯と前記中間ギアの歯が噛み合うことなく、
前記中間ギアが前記出力ギアを回転させない位相にあるとき、前記中間ギアと前記出力ギアとが対向する部分では前記中間ギアの歯と前記出力ギアの歯が噛み合うことがないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
前記従動ギアは前記従動ギアの回転中心と同心の第1円弧面を有し、前記中間ギアは第2円弧面と、前記中間ギアの回転中心と同心の第3円弧面とを有し、前記出力ギアは第4円弧面を有し、
前記従動ギアが前記中間ギアを回転させない位相にあるとき、前記第1円弧面は前記従動ギアの前記中間ギアと対向する部分に位置され、かつ前記第2円弧面は、前記第1円弧面に沿うように、前記中間ギアの前記従動ギアと対向する部分に位置され、
前記中間ギアが前記出力ギアを回転させない位相にあるとき、前記第3円弧面は前記中間ギアの前記出力ギアと対向する部分に位置され、かつ前記第4円弧面は、前記第3円弧面に沿うように、前記出力ギアの前記中間ギアと対向する部分に位置されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項6】
前記駆動ギアと前記従動ギアとは、互いに噛み合って係合するギアであり、
前記従動ギアは、前記駆動ギアと噛み合う歯が形成されていない欠歯部を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項7】
前記従動ギアが前記中間ギアを回転させない位相にあるとき、前記第1円弧面には、前記第2円弧面とは接触しない非接触部を備えることを特徴とする請求項5に記載の駆動伝達装置。
【請求項8】
前記駆動ギアと係合可能な係合部材を有し、
前記係合部材は、前記従動ギアと係合し、前記従動ギアに対して移動することで、前記駆動ギアと係合する位置と、前記駆動ギアと係合しない位置との間を移動可能であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項9】
前記係合部材は、前記駆動ギアと係合しない位置から前記駆動ギアと係合する位置に向かう方向に付勢されていることを特徴とする請求項8に記載の駆動伝達装置。
【請求項10】
前記中間ギアは、第1ギア部を有し、
前記出力ギアは、前記第1ギアと噛み合う第2ギア部を有し、
前記第2ギア部の直径は、前記第1ギア部の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項11】
記録材に画像を形成する画像形成装置であって、
請求項1~
10のいずれか1項に記載の駆動伝達装置と、
像担持体と、
前記像担持体に担持されたトナー像が一次転写されるベルトと、
前記ベルトに転写されたトナー像を記録材に二次転写する二次転写ローラと、
前記被駆動部材であって、前記ベルトに対して前記二次転写ローラを当接離間させる当接離間機構と、
を有し、
前記出力ギアが前記当接離間機構に連結されて駆動が伝達されることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置に設けられる駆動伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置には、駆動源からの駆動力を間欠的に伝達する構成がある。例えば、給紙ローラを間欠的に駆動するための駆動伝達装置が知られている(特許文献1)。この駆動伝達装置は、モータにより回転させられた駆動ギアと、駆動ギアに噛合して回転し、給紙ローラへ駆動力を伝達する従動ギアと、一端側に爪を有し、ソレノイドでシーソー状に動く可動片と、を有する。
【0003】
駆動伝達装置では、従動ギアと駆動ギアが噛み合うことで駆動ギアから従動ギアへ駆動伝達されるようにしている。一方で、従動ギアに設けられた係止部に可動片の爪が係合することで、従動ギアに設けられた欠歯部が駆動ギアと対向する位置で従動ギアを停止させ、駆動ギアから従動ギアへの駆動が切断されるようにしている。このような構成により、給紙ローラを間欠的に駆動する。
【0004】
この駆動伝達装置では、従動ギアを停止させるために従動ギアを欠歯部が駆動ギアと対向する位置まで回転させる際や、停止した従動ギアを再び駆動ギアと噛み合う位置まで回転させる際は、従動ギアの欠歯部が駆動ギアと対向している。このため、駆動ギアから回転力を得て従動ギアを回転するのが困難である。そこで、バネの弾性力により従動ギアを回転させている。
【0005】
しかしながら、従動ギアが回転した場合、従動ギアから給紙ローラまでの全ての部材が常に回転する駆動伝達構成となっている。従って、従動ギアを回転させるバネは、従動ギアから被駆動部材までの全ての部材を回転させられるだけの比較的大きな回転力を生じさせることができることが求められる。つまり、駆動伝達先である被駆動部材側の負荷トルクの大きさに比例して弾性部材の弾性力を大きくしなければならない。
【0006】
このように従動ギアに作用するバネの弾性力が大きい場合、高価なバネや大きなバネを使用せねばならず、それだけ装置が大型化、コストアップ、組立性が低下する虞がある。また、従動ギアの引張バネを支持する部分も、バネの大きな弾性力に耐えられるだけの材質、形状にする必要があり、それだけ装置が大型化したりコストアップしたりする虞がある。
【0007】
そこで、被駆動部材の負荷トルクによらずに、従動ギアをホームポジション位置に回転させるためのバネの弾性力を低減させることができることができる構成が提案されている(引用文献2)。この駆動伝達装置では、モータで駆動された駆動ギアに対向し、駆動ギアに噛合して回転する従動ギアを有する。更に、従動ギアと連動して回転する入力ギアと、入力ギアに対向する出力ギアと、出力ギアの逆回転を防止するための、レバーバネにより付勢された逆転防止レバーと、を有している。
【0008】
駆動ギアの駆動は、従動ギアに入力され、従動ギアと連動して回転する入力ギアが出力ギアと噛み合うことにより、駆動が伝達される構成とされている。なお従動ギアは、従動ギアに設けられた被係合部にレバーバネにより付勢された逆転防止レバーが係合することで逆回転することを防止することができるように構成されている。
【0009】
この構成では、従動ギアの欠歯部が駆動ギアと対向するとき、入力ギアと出力ギアが互いに対向する部分において、入力ギアと出力ギアのいずれか一方に互いに接触しない非接触部が設けられ、入力ギアと出力ギアとが非接触状態となるように構成されている。これにより、被駆動部材の負荷トルクによらず、従動ギアをホームポジション位置に回転させることができ、ねじりバネの弾性力を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平06-050406号公報
【文献】特開2017-089729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、レバーバネにより押圧される逆転防止レバーにより出力ギアの逆回転を規制していたため部品点数が増加していた。更に、逆転防止レバーは、回動軸を中心に回動可能とされ、弾性体からなるレバーバネにより出力ギアに押圧された構成とされていたため、逆転防止レバーが出力ギアと当接する際の動作音が発生するといった課題があった。
【0012】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、被駆動部材側からの逆入力トルクを回転方向に関わらず遮断すると共に、部品点数を削減し、動作音の発生を低減する駆動伝達装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための本発明に係る駆動伝達装置の代表的な構成は、駆動源より駆動力が入力される駆動ギアと、前記駆動ギアによって回転可能な従動ギアと、前記従動ギアによって回転可能な中間ギアと、前記中間ギアによって回転可能な、被駆動部材に駆動力を伝達する出力ギアと、前記駆動ギアで前記従動ギアが回転しない状態で前記従動ギアを変位させる付勢部材と、を有する駆動伝達装置において、前記従動ギアは、前記出力ギアが前記中間ギアによって回転されず、かつ前記中間ギアが前記従動ギアによって回転されない状態で、前記付勢部材の付勢力によって変位されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被駆動部材側からの逆入力トルクを回転方向に関わらず遮断すると共に、部品点数を削減し、動作音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】(a)は、ベルトに二次転写ローラを当接した二次転写部の構成を示す斜視図である。(b)は、ベルトから二次転写ローラを離間した二次転写部の構成を示す斜視図である。
【
図3】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を切換駆動ギア側から見た構成を示す斜視図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を切換駆動ギアの反対側から見た構成を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態のクラッチ装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図5】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見た正面図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を裏側から見た背面図である。(c)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見たときのトリガギアの溝部と従動ギアのキー部との遊び量を示す断面図である。
【
図6】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見た正面図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を裏側から見た背面図である。(c)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見たときのトリガギアの溝部と従動ギアのキー部との遊び量を示す断面図である。
【
図7】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見た正面図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を裏側から見た背面図である。(c)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見たときのトリガギアの溝部と従動ギアのキー部との遊び量を示す断面図である。
【
図8】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見た正面図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を裏側から見た背面図である。(c)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見たときのトリガギアの溝部と従動ギアのキー部との遊び量を示す断面図である。
【
図9】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見た正面図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を裏側から見た背面図である。(c)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見たときのトリガギアの溝部と従動ギアのキー部との遊び量を示す断面図である。
【
図10】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見た正面図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を裏側から見た背面図である。(c)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見たときのトリガギアの溝部と従動ギアのキー部との遊び量を示す断面図である。
【
図11】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見た正面図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を裏側から見た背面図である。(c)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見たときのトリガギアの溝部と従動ギアのキー部との遊び量を示す断面図である。
【
図12】(a)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見た正面図である。(b)は、第1実施形態のクラッチ装置を裏側から見た背面図である。(c)は、第1実施形態のクラッチ装置を表側から見たときのトリガギアの溝部と従動ギアのキー部との遊び量を示す断面図である。
【
図13】第1実施形態のクラッチ装置の回転動作タイミングを示す図である。
【
図14】第2実施形態のクラッチ装置の構成を示す斜視図である。
【
図15】第2実施形態のクラッチ装置に設けられる従動ギアの構成を示す斜視図である。
【
図16】第2実施形態のクラッチ装置の動作を説明する正面図である。
【
図17】第2実施形態のクラッチ装置の動作を説明する正面図である。
【
図18】第2実施形態のクラッチ装置の動作を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図により本発明に係る駆動伝達装置及びそれを備える画像形成装置の一実施形態を具体的に説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1~
図13を用いて本発明に係る駆動伝達装置及びそれを備える画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。
【0018】
<画像形成装置>
図1を用いて画像形成装置100の構成について説明する。
図1は、画像形成装置100の構成を示す断面図である。
図1に示す画像形成装置100は、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBの4色のトナー像を形成する画像形成部を備えたフルカラーレーザビームプリンタの一例である。画像形成装置100は、紙等の記録材Sに画像を形成する。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置100は、水平方向に並設された4個のカートリッジ101Y,101M,101C,101Bを備えている。尚、各カートリッジ101Y,101M,101C,101Bは、使用するトナーの色が異なる以外は、同様に構成されるためカートリッジ101を用いて説明する場合もある。他の画像形成プロセス手段についても同様である。
【0020】
各カートリッジ101は、像担持体としての各感光ドラム102が設けられている。各感光ドラム102の周囲には、各感光ドラム102の表面を均一に帯電する帯電手段としての各帯電ローラ103が設けられている。更に、均一に帯電した各感光ドラム102の表面に各色の画像情報に応じたレーザ光112aをそれぞれ照射する露光手段としての各レーザスキャナ112が設けられている。
【0021】
更に、各感光ドラム102の周囲には、現像手段としての各現像装置10が設けられている。各現像装置10は、各レーザスキャナ112によりレーザ光112aが照射されて各感光ドラム102の表面に形成された静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させてトナー像として現像する。各現像装置10には、現像剤担持体としての各現像ローラ104が設けられている。各現像装置10の現像容器内には、各色のトナーが収容されており現像容器内に設けられた各供給ローラ105の回転により各色のトナーが各現像ローラ104の表面に供給される。
【0022】
像担持体としての各感光ドラム102の表面に担持されたトナー像が一次転写されるベルト106は無端状ベルトで構成される。ベルト106は、駆動ローラ106aと、従動ローラ106bと、テンションローラ106cとに掛け回されている。ベルト106は、ベルト106の外周面にトナー像を担持可能な中間転写体としての像担持体である。また、ベルト106は、駆動ローラ106aが
図1の反時計回り方向に回転することにより回転駆動し、ベルト106の外周面を移動させる。
【0023】
ベルト106の内周面側には、各感光ドラム102に対向した位置に、各感光ドラム102の表面のトナー像をベルト106に転写する一次転写手段としての4個の一次転写ローラ106dが設けられている。更に、ベルト106の外周面上に残留した転写残トナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置107が設けられている。
【0024】
<画像形成動作>
次に、
図1を用いて、記録材Sへの画像形成動作について説明する。画像形成装置100は、給送ローラ108を
図1の反時計回り方向に回転させて給送カセット109内に収容された記録材Sを1枚ずつ給送し、レジストレーションローラ110へ搬送する。記録材Sは、レジストレーションローラ110によりベルト106の外周面に形成するトナー像の形成動作と同期して、ベルト106の外周面に対して当接離間可能な二次転写手段としての二次転写ローラ111で構成される二次転写部T2に搬送される。二次転写ローラ111は、ベルト106の外周面上に一次転写されたトナー像を記録材Sに二次転写する。
【0025】
一方、記録材Sが給送される動作と同期して、各感光ドラム102は、
図1に示す時計回り方向に回転しながら帯電手段としての各帯電ローラ103により各感光ドラム102の表面が均一に帯電される。更に、各感光ドラム102は、
図1の時計回り方向に回転しながら、画像信号に応じたレーザ光112aを照射する露光手段としての各レーザスキャナ112により露光され、各感光ドラム102の表面に各色に対応した静電潜像がそれぞれ形成される。
【0026】
各感光ドラム102の表面上に形成された静電潜像は、各現像ローラ104により現像剤としての各色のトナーがそれぞれ供給されてトナー像として現像されて可視化される。各感光ドラム102の表面は、ベルト106の外周面に接触しており、各感光ドラム102の表面上に担持されたトナー像は、各一次転写ローラ106dによりベルト106の外周面上に順次転写される。
【0027】
ベルト106の外周面上に多重に転写されたトナー像は、ベルト106とともにベルト106を介在して駆動ローラ106aと二次転写ローラ111とにより形成される二次転写ニップ部N2まで移動する。その後、二次転写ニップ部N2において、ベルト106の外周面上に担持されたトナー像が記録材S上に二次転写される。
【0028】
記録材Sに二次転写されたトナー像は、定着手段としての定着装置113に搬送され、定着ローラ113aと加圧ローラ113bとにより形成される定着ニップ部N3を搬送される間に加熱及び加圧されてトナー像が記録材Sに定着される。トナー像が定着された記録材Sは、排出ローラ114により画像形成装置100の上部に設けられた排出トレイ115上にトナー像面を下向きにして排出され、画像形成動作が終了する。
【0029】
<二次転写ローラの当接離間機構>
次に、
図2を用いてベルト106に対する二次転写ローラ111の当接離間機構12について説明する。
図2(a)は、ベルト106に二次転写ローラ111を当接した二次転写部T2の構成を示す斜視図である。
図2(b)は、ベルト106から二次転写ローラ111を離間した二次転写部T2の構成を示す斜視図である。
【0030】
図2(a)は、二次転写ローラ111がベルト106に当接している状態を示す。
図2(b)は、二次転写ローラ111がベルト106から離間している状態を示す。二次転写ローラ111は、ホルダ111aに回転可能に支持されている。尚、
図2(a),(b)では、二次転写ローラ111の長手方向の一端部側を示すが、二次転写ローラ111の長手方向の他端側も同様に構成されている。
【0031】
ベルト106に対して二次転写ローラ111を当接離間させる被駆動部材としての当接離間機構12は、モータ11からの回転駆動力がクラッチ装置CL1を介して伝達されるように構成されている。当接離間機構12は、モータ11からクラッチ装置CL1を介して伝達される駆動力が入力される回転軸106iと、回転軸106iに設けられた切換駆動ギア106hとを有する。更に、切換駆動ギア106hに噛合する切換ギア部106gと、切換ギア部106gと一体的に回転する切換カム106fとを有する。
【0032】
更に、当接離間機構12は、切換カム106fのカム面に当接して回転する突き当てコロ111bと二次転写ローラ111とをそれぞれ回転可能に支持するホルダ111aを有する。更に、ホルダ111aを切換カム106fに向かって付勢する加圧バネ111cを有して構成される。加圧バネ111cの一端部は、ホルダ111aに支持され、加圧バネ111cの他端部は、図示しない支持部材に支持されている。
【0033】
モータ11の回転駆動力は、駆動伝達装置としてのクラッチ装置CL1から回転軸106iに伝達される。更に、回転軸106iに設けられた切換駆動ギア106h、切換ギア部106gを介して切換カム106fに伝達される。切換カム106fのカム面に沿って突き当てコロ111bが当接回転し、ホルダ111aが加圧バネ111cの付勢方向に沿って移動する。これによりホルダ111aに回転可能に支持された二次転写ローラ111がベルト106の外周面に対して当接離間移動する。
【0034】
図2(a),(b)に示すように、図示しない支持部材により支持された回転軸106eは、ベルト106を駆動する駆動ローラ106aと切換カム106fとを回転軸106eの回りに回転可能に支持している。切換カム106fは、切換ギア部106gを一体的に備えている。
【0035】
切換ギア部106gは、回転軸106iに設けられた切換駆動ギア106hに対して、歯数比が2:1で噛合されている。駆動源としてのモータ11からの駆動力は、クラッチ装置CL1を介して切換駆動ギア106hを回転させることで、切換駆動ギア106hに噛合する切換ギア部106gを介して切換カム106fが一体的に回転する。
【0036】
切換カム106fは、クラッチ装置CL1により所定のタイミングで1/2回転(180°)毎に回転し、停止するよう構成されている。また、ホルダ111aは、突き当てコロ111bを備えており、ホルダ111aは、加圧バネ111cにより二次転写ローラ111が駆動ローラ106aに向かう方向に付勢(押圧)されている。
【0037】
画像形成装置100がベルト106を回転させながらベルト106の外周面上に各色のトナー像を順次転写する。その間、二次転写ローラ111は、
図2(b)に示すように、突き当てコロ111bが切換カム106fのカム面に突き当たることで位置が規制され、ベルト106から隙間Gだけ離間した位置にある。
【0038】
画像形成装置100は、ベルト106の外周面上に各色のトナー像を転写し終わった後で記録材Sが二次転写ローラ111とベルト106との間に搬送されてくる前に、所定のタイミングでクラッチ装置CL1を動作させる。これにより切換カム106fが1/2回転すると、
図2(a)に示すように、二次転写部T2は、突き当てコロ111bが切換カム106fのカム面から退避して加圧バネ111cの付勢力により二次転写ローラ111がベルト106の外周面に当接する。
【0039】
この状態から更に切換カム106fが1/2回転すると、突き当てコロ111bが切換カム106fのカム面に当接し、加圧バネ111cの付勢力(弾性力)に抗して突き当てコロ111bを移動させる。そして、
図2(b)に示すように、二次転写ローラ111がベルト106から隙間Gだけ離間した状態に戻る。このように、二次転写ローラ111がベルト106の外周面に当接した状態から離間させる際には、切換カム106f及び切換駆動ギア106hに加圧バネ111cの付勢力による回転負荷(駆動トルク)がかかる。
【0040】
<クラッチ装置>
次に、
図3及び
図4を用いて、モータ11から切換カム106fへ駆動力を伝達する駆動伝達機構の中に設けられ、間欠的に駆動力を伝達する駆動伝達装置としてのクラッチ装置CL1の構成について説明する。
図3(a)は、本実施形態のクラッチ装置CL1を切換駆動ギア106h側から見た構成を示す斜視図である。
図3(b)は、本実施形態のクラッチ装置CL1を切換駆動ギア106hの反対側から見た構成を示す斜視図である。
【0041】
図3(a),(b)に示す駆動伝達装置としてのクラッチ装置CL1の出力ギア6は、
図2(a),(b)に示すベルト106に対して二次転写ローラ111を当接離間させる被駆動部材としての当接離間機構12に連結されている。これによりモータ11からの回転駆動力がクラッチ装置CL1を介して被駆動部材としての当接離間機構12に伝達されている。
【0042】
図4は、本実施形態のクラッチ装置CL1の構成を示す分解斜視図である。尚、以下の説明では、クラッチ装置CL1の切換駆動ギア106h側を「クラッチ装置CL1の表側」とし、切換駆動ギア106hの反対側を「クラッチ装置CL1の裏側」とする。
【0043】
クラッチ装置CL1は、駆動源としてのモータ11より駆動力が入力されて回転する駆動ギア1と、駆動ギア1と噛合可能なトリガギア2とを有する。更に、トリガギア2に係合して回転可能な従動ギア3と、トリガギア2に設けられたボス2dと、従動ギア3に設けられたボス3fとに連結されるトリガバネ4とを備えている。従動ギア3は、駆動ギア1によって回転可能とさせられている。
【0044】
従動ギア3の駆動下流側には、従動ギア3と噛合可能な中間ギア5と、中間ギア5と噛合可能な出力ギア6を備えている。更に、トリガギア2の回転を規制する規制手段としてのソレノイド7と、弾性力によりレバー部材8を従動ギア3に当接させる弾性部材としてのホームバネ9とを有する。中間ギア5は従動ギア3によって回転可能とさせられている。
【0045】
従動ギア3と中間ギア5、中間ギア5と出力ギア6は、それぞれ互いに噛み合うギアである。出力ギア6は、中間ギア5によって回転可能とさせられ、当接離間機構12に駆動力を伝達する。弾性部材としてのホームバネ9は、ホームバネ9の弾性力によって従動ギア3が駆動ギア1からの駆動力により回転可能な状態となるように従動ギア3を変位させる。ホームバネ9は、従動ギア3が駆動ギア1に係合していないときに、ホームバネ9の弾性力(伸長力)によりレバー部材8の揺動腕8bを押して揺動軸8aを中心に揺動腕8bを
図12(b)の時計回り方向に回動させる。揺動腕8bは、従動ギア3のカム部3eを押圧して従動ギア3を
図12(b)の時計回り方向に回転させる。
【0046】
駆動ギア1から出力ギア6へ駆動力を伝達する駆動列は、従動ギア3と、係合部材としてのトリガギア2と、中間ギア5とにより構成される。この駆動列中には、従動ギア3によって回転させられ、出力ギア6を回転させる中間ギア5を有する。
【0047】
モータ11からの駆動力は、クラッチ装置CL1の駆動ギア1、従動ギア3、中間ギア5、出力ギア6を介して切換駆動ギア106hへ伝達され、
図2(a),(b)に示す切換ギア部106gを介して切換カム106fを回転させる。
【0048】
トリガギア2は、ソレノイド7の係止爪7aが係止して回転が規制される係止部2aと、駆動ギア1と噛合するギア部2bと、ギア部2bの一部に駆動ギア1と噛合しない欠歯部2cが設けられている。更に、トリガバネ4の一端部が係止されるボス2dを一体的に備えている。ギア部2bは、32歯相当の歯数直径を有し、欠歯部2cはギア部2bの3歯数に相当する欠歯形状を有して構成される。
【0049】
従動ギア3は、駆動ギア1と噛合可能なギア部3aと、中間ギア5と噛合するギア部3cとを有する。更に、レバー部材8の揺動腕8bが当接して従動ギア3にホームバネ9の付勢力を与えて従動ギア3を回転させるカム部3eと、トリガバネ4の他端部が係止されるボス3fと、回転軸3gとを一体的に備える。
【0050】
駆動ギア1と、従動ギア3とは、互いに噛み合って係合するギアである。従動ギア3は、駆動ギア1と噛み合うギア部3aが形成されていない欠歯部3bを有する。ギア部3cの一部には、ギア部3cのピッチ円半径と同じ半径の第1円弧面である凸形状の間欠凸部3dを備える。ギア部3aは、32歯相当の歯数直径を有し、欠歯部3bはギア部3aの3歯数に相当する欠歯形状を有して構成される。ギア部3cは、36歯相当の歯数直径を有し、第1円弧面としての間欠凸部3dは、ギア部3cの5歯数に相当する凸円弧形状を有して構成される。
【0051】
中間ギア5は、従動ギア3のギア部3cと噛合可能なギア部5aと、出力ギア6と噛合するギア部5cとを備えている。ギア部5aの一部には、従動ギア3のギア部3aと噛合せず、第1円弧面としての間欠凸部3dに沿う第2円弧面としての間欠凹部5bが設けられている。
【0052】
図3(a)に示すように、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bが従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dに対向する位置にあるときを考慮する。このとき、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bは、ギア部3cの回転中心と同心の凹形状で第1円弧面としての間欠凸部3dの円弧面に沿う円弧面を有して構成される。この第2円弧面としての間欠凹部5bの円弧面の半径は、従動ギア3のギア部3cのピッチ円半径とほぼ同じである。
【0053】
中間ギア5のギア部5aは、33歯相当の歯数直径を有し、第2円弧面としての間欠凹部5bは、ギア部5aの3歯数に相当する凹円弧形状を有して構成される。従動ギア3のギア部3cの有歯数は31歯であり、ギア部3cに噛合する中間ギア5のギア部5aの有歯数は1歯少ない30歯である。上述したような第2円弧面としての間欠凹部5bが円弧形状であることにより従動ギア3が1回転すると中間ギア5は1回転する。
【0054】
また、従動ギア3と中間ギア5が回転する際には、第1円弧面としての間欠凸部3dと第2円弧面としての間欠凹部5bとが沿うように相対的な回転位相を合わせて組み立てられている。また、ギア部5cの一部には、ギア部5cのピッチ円半径と同じ半径の円弧面である凸形状の第3円弧面としての間欠凸部5dを備える。ギア部5cは、33歯相当の歯数直径を有し、第3円弧面としての間欠凸部5dは、ギア部5cの5歯数に相当する凸円弧形状を有して構成される。
【0055】
出力ギア6は、中間ギア5のギア部5cと噛合可能なギア部6aと、回転軸6cとを備えている。ギア部6aの一部には、中間ギア5のギア部5cと噛合せず、第3円弧面としての間欠凸部5dに沿う第4円弧面としての間欠凹部6bが設けられている。第4円弧面としての間欠凹部6bが第3円弧面としての間欠凸部5dに対向する位置にあるときを考慮する。このとき、第4円弧面としての間欠凹部6bは、ギア部3cの回転中心と同心の凹形状で第3円弧面としての間欠凸部5dの円弧面に沿う円弧面であり、その円弧面の半径は、中間ギア5のギア部5cのピッチ円半径とほぼ同じである。
【0056】
ギア部6aは、30歯相当の歯数直径を有し、第4円弧面としての間欠凹部6bは、ギア部6aの3歯数に相当する凹円弧形状を有して構成される。中間ギア5のギア部5cの有歯数は28歯であり、ギア部5cに噛合する出力ギア6のギア部6aの有歯数は1歯少ない27歯であるが、上述したような円弧形状の第4円弧面としての間欠凹部6bにより中間ギア5が1回転すると出力ギア6は1回転する。
【0057】
また、中間ギア5と出力ギア6が回転する際には、
図3(b)に示すように、中間ギア5の第3円弧面としての間欠凸部5dと出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bとが沿うように相対的な回転位相を合わせて組み立てられている。出力ギア6の回転軸6cは、
図2(a),(b)に示す切換駆動ギア106hの回転軸106iと一体的に連結されている。これにより出力ギア6が回転することにより切換駆動ギア106hが一体的に回転する。
【0058】
ソレノイド7は、係止爪7aと、戻しバネ7bとを備えている。戻しバネ7bは、係止爪7aをトリガギア2に向かう方向に付勢している。ソレノイド7に通電しておらず、トリガギア2の係止部2aが係止爪7aと対向する位置にあるとき、係止爪7aは、係止部2aを係止してトリガギア2の回転を規制することができる。
【0059】
ソレノイド7に通電すると、係止爪7aは、戻しバネ7bの引っ張り力(付勢力)に抗してトリガギア2から退避する。それまで係止爪7aでトリガギア2の係止部2aを係止していた場合は、係止爪7aによるトリガギア2の係止部2aの係止を解除できる。
【0060】
トリガバネ4は、一端部がトリガギア2のボス2dに係止されて固定され、他端部が従動ギア3のボス3fに係止されて固定されている。このためトリガバネ4の引っ張り力で従動ギア3に対してトリガギア2を引き寄せる方向に付勢している。このためソレノイド7に通電して係止爪7aがトリガギア2の係止部2aの係止を解除すると、トリガバネ4の引っ張り力によりトリガギア2に回転力を与え、トリガギア2のギア部2bと駆動ギア1とが噛合するよう構成されている。
【0061】
レバー部材8は、揺動軸8aを回転中心として揺動し、従動ギア3のカム部3eに当接する揺動腕8bと、ボス8cと、を備えている。ボス8cには、ホームバネ9の一端部が嵌装して取り付けられている。ホームバネ9の他端部は、図示しない支持部材により固定位置に支持されている。揺動腕8bは、従動ギア3が所定の回転位相にあるとき、ホームバネ9の弾性力(伸長力)によりカム部3eを押圧する。これにより従動ギア3が回転するよう付勢する。
【0062】
従動ギア3の欠歯部3bが駆動ギア1と対向し、ギア部3aが駆動ギア1から十分な駆動力を得られないときでもホームバネ9の押圧力により揺動腕8bとカム部3eとを介して従動ギア3を回転させることが可能となる。従動ギア3が、ギア部3aと駆動ギア1とが噛合しない駆動伝達待機状態であるホームポジションにある場合には、レバー部材8の揺動腕8bは、従動ギア3のカム部3eを従動ギア3の回転軸3gの回転中心方向へ付勢するようにカム部3eに当接する。このためホームバネ9の押圧力により揺動腕8bとカム部3eとを介して従動ギア3の回転位置が規制される。
【0063】
次に、
図3(a)及び
図4を用いて、トリガギア2と従動ギア3との配置構成について説明する。
図3(a)及び
図4に示すように、トリガギア2は、軸受け部2eと複数の溝部2fとを有しており、軸受け部2eは、従動ギア3の回転軸3gに嵌装される。
【0064】
その際、従動ギア3に設けられた複数のキー部3hは、トリガギア2の溝部2f内に収容される。キー部3hが溝部2f内に収容された状態においては、キー部3hと溝部2fの壁面からなる当接面2f1との間には、遊びがあるように構成されている。これによりトリガギア2は、従動ギア3に対して回転軸3gを中心にキー部3hと溝部2fの壁面からなる当接面2f1との間の遊びの量だけ回転することができる。本実施形態では、トリガギア2は、従動ギア3に対して、3歯分の量だけ回転できるようになっている。
【0065】
即ち、従動ギア3は、駆動ギア1と係合可能な係合部材としてのトリガギア2を有する。トリガギア2は、従動ギア3に対して移動することで、駆動ギア1と係合する位置と、駆動ギア1と係合しない位置との間を移動可能である。トリガギア2のボス2dと、従動ギア3のボス3fとには、付勢手段としてのトリガバネ4が係止されている。トリガバネ4の引っ張り力によりトリガギア2は、駆動ギア1と係合しない位置から駆動ギア1と係合する位置に向かう方向に付勢されている。
【0066】
<クラッチ装置CL1の動作>
次に、
図5~
図13を用いて、クラッチ装置CL1の駆動伝達動作について説明する。
図5~
図12の各図(a)は、それぞれクラッチ装置CL1を表側から見た正面図であり、
図5~
図12の各図(b)は、それぞれクラッチ装置CL1を裏側から見た背面図である。
図5~
図12の各図(c)は、クラッチ装置CL1を表側から見た、トリガギア2の溝部2fと従動ギア3のキー部3hとの遊び量を示す断面図である。
【0067】
また、
図5(a)~(c)は、クラッチ装置CL1の待機状態を示す。
図6(a)~(c)は、クラッチ装置CL1のトリガギア2の回転開始時を示す。
図7(a)~(c)は、クラッチ装置CL1の従動ギア3の回転開始時を示す。
図8(a)~(c)は、クラッチ装置CL1の中間ギア5の回転開始時を示す。
図9(a)~(c)は、クラッチ装置CL1の出力ギア6の回転開始時を示す。
【0068】
図10(a)~(c)は、クラッチ装置CL1のトリガギア2の回転終了直前状態を示す。
図11(a)~(c)は、クラッチ装置CL1の出力ギア6の回転終了状態を示す。
図12(a)~(c)は、クラッチ装置CL1の中間ギア5の回転終了時を示す。
図13は、クラッチ装置CL1を構成する各部材の回転動作タイミングを示す図である。尚、
図5~
図12における各部材の回転方向や動作方向は、各部材の近傍に記載した矢印の示す通りである。
【0069】
図5(a),(b)に示すように、クラッチ装置CL1の待機状態では、駆動ギア1は回転し、レバー部材8の揺動腕8bは、ホームバネ9の弾性力(伸長力)によりカム部3eの平面部に当接する。そして、ホームバネ9は、従動ギア3を従動ギア3の回転軸3gの回転中心方向へ付勢している。この状態においては、従動ギア3は、ホームポジションにあり、
図5(c)に示すように、欠歯部3bが駆動ギア1と対向する。このため駆動ギア1から従動ギア3に駆動力は伝達されない。また、
図5(c)に示すように、溝部2fの壁面からなる当接面2f1とキー部3hとの間には遊びがある状態にある。
【0070】
また、
図5(a)に示すように、トリガギア2はトリガバネ4の引っ張り力により
図5(a)の反時計回り方向に回転するよう付勢されているが、ソレノイド7の係止爪7aによりトリガギア2の係止部2aが係止されてトリガギア2は停止している。この状態においては、トリガギア2は、ホームポジションにあり、欠歯部2cが駆動ギア1と対向する。このため駆動ギア1の駆動力は、トリガギア2には伝達されない。
【0071】
このとき、
図5(b)に示すように、中間ギア5の第3円弧面としての間欠凸部5dと、出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bとが当接している。この状態においては、出力ギア6は、中間ギア5により回転が規制される。中間ギア5の第3円弧面としての間欠凸部5dと、出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bとが当接した状態から出力ギア6側が回転する場合を考慮する。出力ギア6側が回転するためには中間ギア5の回転軸5eの回転中心5e1と出力ギア6の回転軸6cの回転中心6c1との軸心距離L2が大きくなる必要がある。しかし、軸心距離L2は固定されているため出力ギア6側は回転することができない。
【0072】
このため出力ギア6の回転軸6cに駆動接続されている切換駆動ギア106hから回転トルクを受けても出力ギア6は回転することはできない。このときの回転トルクは、
図2(b)に示す付勢手段としての加圧バネ111cにより切換カム106fのカム面が押し回されて切換カム106fが回転しようとする回転トルクである。
【0073】
また、
図5(c)に示すように、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dと中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bも当接している。この状態においては、中間ギア5も従動ギア3により回転が規制される。即ち、駆動ギア1から従動ギア3に、中間ギア5から出力ギア6に駆動力が伝達されない状態とする。
【0074】
従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dと、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとが当接した状態から中間ギア5側が回転する場合を考慮する。中間ギア5側が回転するためには、従動ギア3の回転軸3gの回転中心3g1と中間ギア5の回転軸5eの回転中心5e1との軸心距離L1が大きくなる必要がある。しかし、軸心距離L1は固定されているため中間ギア5側は回転することができない。このような状態の中間ギア5と出力ギア6の位置をホームポジションと称する。
【0075】
このとき、
図5(a),(c)に示すように、従動ギア3が中間ギア5を回転させない位相にあるとき、従動ギア3と中間ギア5とが対向する部分では、従動ギア3のギア部3a(歯)と中間ギア5のギア部5a(歯)が噛み合うことがない。即ち、この位相のとき、従動ギア3の中間ギア5と対向する部分には、ギア部3aが形成されていない。その部分には、ギア部3aの代わりに、従動ギア3の回転中心と同心の第1円弧面としての間欠凸部3dが設けられている。このとき、中間ギア5の従動ギア3と対向する部分には、ギア部5cが形成されていない。その部分には、ギア部5cの代わりに、第1円弧面としての間欠凸部3dに沿う第2円弧面としての間欠凹部5bが設けられている。
【0076】
また、
図5(b)に示すように、中間ギア5が出力ギア6を回転させない位相にあるとき、中間ギア5と出力ギア6とが対向する部分では、中間ギア5のギア部5a(歯)と出力ギア6のギア部6a(歯)が噛み合うことがない。即ち、この位相のとき、中間ギア5の出力ギア6と対向する部分には、ギア部5cが形成されていない。その部分には、ギア部5cの代わりに、中間ギア5の回転中心と同心の第3円弧面としての間欠凸部5dが設けられている。このとき、出力ギア6の中間ギア5と対向する部分には、ギア部6aが形成されていない。その部分には、ギア部6aの代わりに、第3円弧面としての間欠凸部5dに沿う第4円弧面としての間欠凹部6bが設けられている。
【0077】
次に、クラッチ装置CL1による駆動伝達を行うためには、まず、トリガギア2を回転させる必要がある。このため
図6(a)に示すように、ソレノイド7に通電し、係止爪7aをトリガギア2の係止部2aから退避させ、係止爪7aによる係止部2aの係止を解除する。すると、トリガバネ4の引っ張り力(弾性力)によりトリガギア2のボス2dが従動ギア3のボス3fに近づく方向に移動させられ、トリガギア2が
図6(a)の反時計回り方向に回転を開始する。
【0078】
このとき、
図6(b)に示すように、従動ギア3は、ホームバネ9の弾性力(伸長力)によりカム部3eが揺動腕8bにより押圧されることにより従動ギア3の回転が規制されているためトリガバネ4の引っ張り力(弾性力)を受けても回転しない。トリガギア2は、3歯分回転すると、トリガギア2のギア部2bと駆動ギア1とが噛合し、トリガギア2が駆動ギア1から駆動力を受けて回転する。
【0079】
また、
図6(c)に示すように、トリガバネ4の引っ張り力によりトリガギア2が回転するときを考慮する。このとき、トリガギア2の回転により溝部2fの壁面からなる当接面2f1とキー部3hとの間の遊びが無くなるまで、従動ギア3はホームバネ9の押圧力より揺動腕8bとカム部3eとを介してホームポジションに保持される。従って、
図6(c)に示すように、従動ギア3が停止している間は、
図5(c)と同様に、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dと中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとが当接している。このため中間ギア5は回転することなくホームポジションに停止している。
【0080】
トリガギア2と駆動ギア1とが噛合し、トリガギア2が駆動ギア1から駆動力を受けて
図6(a)の反時計回り方向に回転する。すると、
図6(c)に示すように、溝部2fの壁面からなる当接面2f1とキー部3hとの間の遊びが無くなり、溝部2fの壁面からなる当接面2f1がキー部3hを押圧する。これにより従動ギア3が回転を開始する。その後、従動ギア3のギア部3aと駆動ギア1とが噛合し、駆動ギア1から従動ギア3に駆動力が伝達される。即ち、ソレノイド7が駆動し、変形可能となったトリガバネ4の弾性力によって駆動ギア1と噛み合うように回転させられたトリガギア2は、駆動ギア1から駆動を受けて従動ギア3と係合し、従動ギア3が駆動ギア1の駆動力で回転可能とされる。
【0081】
次に、
図7(a),(c)に示すように、従動ギア3が回転し始めると、従動ギア3は、第1円弧面としての間欠凸部3dが中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bに対して摺動することにより中間ギア5を回転させることなく従動ギア3が回転する。これを第1間欠動作と称する。中間ギア5を回転させることなく従動ギア3が所定量だけ回転すると、第1円弧面としての間欠凸部3dの端部隣にあるギア部3cの歯が、第2円弧面としての間欠凹部5bの端部に係合し、中間ギア5の回転を開始させる。これにより従動ギア3のギア部3cと中間ギア5のギア部5aとが噛合して中間ギア5が回転する。
【0082】
尚、ソレノイド7の係止爪7aがトリガギア2の係止部2aの係止を解除してトリガギア2が回転した後は、
図7(a)に示すように、ソレノイド7への通電を止める。このため係止爪7aは、戻しバネ7bの引っ張り力によりトリガギア2に近づく方向へ移動し、係止爪7aが係止部2aを係止可能な位置に係止爪7aを待機させる。
【0083】
次に、
図8(b)に示すように、中間ギア5が回転を開始すると、中間ギア5の第3円弧面としての間欠凸部5dは、出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bに対して摺動することにより出力ギア6を回転させることなく中間ギア5が回転する。これを第2間欠動作と称する。出力ギア6を回転させることなく中間ギア5が所定量だけ回転すると、中間ギア5の第3円弧面としての間欠凸部5dの端部隣にあるギア部5cの歯が、出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bの端部に係合し、出力ギア6の回転を開始させる。即ち、中間ギア5が出力ギア6を回転させることなく従動ギア3で中間ギア5が回転させられた後、中間ギア5が出力ギア6に駆動伝達可能となる。
【0084】
これにより中間ギア5のギア部5cと、出力ギア6のギア部6aとが噛合して出力ギア6が回転する。出力ギア6が回転を開始することで、出力ギア6の回転軸6cに駆動連結された回転軸106iを介して切換駆動ギア106hが回転を開始する。このようにしてモータ11からの駆動力は、切換駆動ギア106hへ駆動が伝達される。
【0085】
図9(a)~(c)は、モータ11からの駆動力が駆動ギア1に伝達された後、駆動ギア1から従動ギア3、中間ギア5、出力ギア6を介して出力ギア6の回転軸6cに駆動連結された回転軸106iを介して切換駆動ギア106hへ伝達されている状態を示す。また、
図9(b)に示すように、従動ギア3が駆動ギア1と噛合して回転している間にカム部3eがホームバネ9の弾性力(伸長力)に抗してレバー部材8の揺動腕8bを押圧し、ホームバネ9を縮ませて弾性力をチャージする。
【0086】
次に、
図10(a)に示すように、トリガギア2が1回転する直前に、欠歯部2cが駆動ギア1と対向する。すると、ギア部2bが駆動ギア1と噛合しなくなる。このためトリガギア2は駆動ギア1から駆動力を受けられなくなる。このとき、
図10(b)に示すように、従動ギア3は駆動ギア1とまだ噛合して回転している。このとき、従動ギア3のボス3fに係合されているトリガバネ4の引っ張り力によりトリガギア2のボス2dを
図10(a)の反時計回りの回転方向に押圧する。これによりトリガギア2が回転する。そして、トリガギア2が1回転した所で、トリガギア2の係止部2aがソレノイド7の係止爪7aに突き当たって係止され、トリガギア2はホームポジションで停止する。
【0087】
図11(a),(b)に示すように、トリガギア2は、トリガギア2の係止部2aがソレノイド7の係止爪7aにより係止され、ホームポジションで停止している。また、
図11(b)に示すように、中間ギア5のギア部5cと、出力ギア6のギア部6aとの噛合が終わり、中間ギア5の第3円弧面としての間欠凸部5dと、出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bとが互いに対向する。
【0088】
このため出力ギア6は、中間ギア5からの駆動力が伝達されずに回転が停止し、再びホームポジションに配置される。このように、出力ギア6は1回転して回転を停止する。出力ギア6の停止により、切換駆動ギア106hも停止し、出力ギア6は、ホームポジションに配置されているため切換駆動ギア106hの回転位置が規制される。
【0089】
また、
図11に示す状態においては、中間ギア5は従動ギア3と噛合している。このため中間ギア5の第3円弧面としての間欠凸部5dが、出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bに対して摺動することにより出力ギア6を回転させることなく中間ギア5が回転する。これを第3間欠動作と称する。尚、
図11(a)に示すように、トリガギア2の係止部2aがソレノイド7の係止爪7aに係止されてトリガギア2が停止した時点で、
図11(c)に示すトリガギア2の溝部2fの壁面からなる当接面2f1とキー部13hとの間には再び遊びがある状態になる。これにより従動ギア3は、トリガギア2が停止した状態から所定量回転可能である。
【0090】
図12(c)に示すように、従動ギア3のギア部3cと、中間ギア5のギア部5aとの噛合が終わり、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dと、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとが互いに対向する。このため中間ギア5は、従動ギア3からの駆動力が伝達されずに回転が停止し、再びホームポジションに配置される。このように、中間ギア5は1回転して回転を停止する。その後、従動ギア3は、駆動ギア1から駆動力を受けて更に回転していく。これにより、従動ギア3は、第1円弧面としての間欠凸部3dが中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bに対して摺動することにより、中間ギア5を回転させることなく従動ギア3が回転する。これを第4間欠動作と称する。
【0091】
やがて、
図12(c)に示すように、従動ギア3の欠歯部3bが駆動ギア1に対向し、従動ギア3のギア部3aが駆動ギア1と噛合しない。このため従動ギア3は、駆動ギア1からの駆動力を受けることができなくなる。このとき、従動ギア3の欠歯部3bが駆動ギア1と対向する位置へ完全に移動する前に従動ギア3の回転が止まってしまうと、回転する駆動ギア1と、回転が止まった従動ギア3のギア部3aの歯先とのわずかな衝突により音が出たりする虞がある。このようなことが起こらないように、駆動ギア1からの駆動力に頼らずに従動ギア3を更に回転させる必要がある。
【0092】
具体的には、
図12(b)に示すように、第4間欠動作中に弾性部材としてのホームバネ9の弾性力(伸長力)によりレバー部材8の揺動腕8bが従動ギア3のカム部3eの平面部に沿って当接するまで押圧される。これにより従動ギア3は、従動ギア3の欠歯部3bが駆動ギア1と対向する、従動ギア3と駆動ギア1との係合が完全に解除された
図5(a),(c)に示すホームポジションの位置まで回転する。これにより従動ギア3の回転方向に関して、駆動ギア1からギア部3aの歯を十分に退避させる。
【0093】
また、
図12(a)に示すように、トリガギア2の回転が停止した状態で、従動ギア3が回転していく。このとき、従動ギア3のキー部3hがトリガギア2の溝部2f内を移動する。その間、トリガバネ4の引っ張り力に抗して従動ギア3のボス3fがトリガギア2のボス2dから離れていく。このためトリガバネ4は、伸びていき弾性力がチャージされる。
【0094】
尚、従動ギア3のギア部3aが駆動ギア1と噛合しなくなるタイミングよりも前に、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dと、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとが互いに対向する。そして、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dは、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bに対して摺動する。また、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dが中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bに対して摺動し始めてから、ホームバネ9の弾性力(伸長力)により従動ギア3を回転させるように動作している。
【0095】
その後、
図6(a)に示すように、ソレノイド7に再び通電して係止爪7aによるトリガギア2の係止部2aの係止を解除すると、トリガギア2が回転し、前述した駆動伝達動作が実行される。このように、クラッチ装置CL1は、従動ギア3がホームポジションにあるときに、所定のタイミングでソレノイド7に通電する。これにより駆動ギア1の駆動力を出力ギア6に伝達して切換駆動ギア106hを1回転させ、
図2に示す切換ギア部106gを介して切換カム106fを1/2回転させることができる。
【0096】
このように、本実施形態によれば、クラッチ装置CL1は、駆動の伝達と切断の切換えを行う過程では、前述した第1間欠動作、第2間欠動作、第3間欠動作、第4間欠動作の4つの間欠動作を行う。また、従動ギア3が駆動ギア1から駆動力を得られず、ホームバネ9の弾性力(伸長力)のみにより従動ギア3が回転させられている間、従動ギア3は、出力ギア6や中間ギア5を回転させることなく回転可能な状態となっている。
【0097】
つまり、従動ギア3と中間ギア5との噛合が終わってから、従動ギア3がホームポジションで停止するまでの第4間欠動作中においては、出力ギア6と中間ギア5とは停止している。このとき、従動ギア3は、それ以降の駆動列に駆動力を伝達して回転させることなく回転可能となっている。このため、従動ギア3が駆動ギア1から駆動力を得られないときに揺動腕8bとカム部3eとを介して従動ギア3を回転させるホームバネ9の弾性力(伸長力)は、トリガバネ4の引っ張り力(弾性力)に抗して従動ギア3を所定量回転させる力を上回る程度で良い。
【0098】
本実施形態では、従動ギア3が弾性部材としてのホームバネ9の弾性力(伸長力)により揺動腕8bとカム部3eとを介して回転する間、従動ギア3は中間ギア5を回転させることなく回転する。このため本実施形態の構成であれば、揺動腕8bとカム部3eとを介して従動ギア3を回転させる弾性部材としてのホームバネ9の弾性力を従動ギアから被駆動部材までの全ての部材が回転する構成とした場合の弾性部材の弾性力と比べて小さくすることができる。
【0099】
また本実施形態では、出力ギアの回転を規制するために駆動列とは別の専用部材として逆転防止レバーとレバーバネを設ける必要がない。また逆転防止レバーを設けた構成では、回動軸を中心に往復運動し、弾性体であるレバーバネで出力ギアに付勢された構成とされ、逆転防止レバーと出力ギアとの間で動作音が発生する。この点、本実施形態では、逆転防止レバーが不要なため、逆転防止レバーと出力ギアとの間で発生する動作音を生じさせることなく、装置を静音化することができる。
【0100】
逆転防止レバーを用いた場合では、出力ギアの上流の間欠動作が終わった後でないと、逆転防止レバーによる出力ギアの逆転防止機能が作用しない他、他の片側方向から発生する逆入力トルクは、逆転防止レバーでは遮断できないとした問題があった。
【0101】
これに対し、本実施形態では、
図12(b)に示すように、回転動作が終了すると同時に第3円弧面としての間欠凸部5dが出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bに当接して中間ギア5が停止している間は、出力ギア6の回転を規制する構成とした。これにより被駆動部材としての二次転写ローラ111の当接離間機構12からの逆入力トルクを回転方向に関わらず遮断することができる。このとき、中間ギア5は、出力ギア6の回転方向において両方向からの逆入力トルクを遮断することができる。
【0102】
すなわち本実施形態では、駆動列内の部材である中間ギア5により当接離間機構12からの逆入力トルクを遮断することができるため逆転防止レバーやレバーバネ等の専用の部材を別途必要とせず、部品点数を低減することができる。また、逆転防止レバーの動作音がないため、その分の動作音の発生が低減できる。また、当接離間機構12からの逆入力トルクを遮断する中間ギア5の動作は回転であり、中間ギア5の回転動作に弾性体を使用していないため動作音が発生し難い。
【0103】
図13に実線で示す矢印の長さは、それぞれのギアが回転している時間を表す。
図13の上部の矢印に沿って
図13の左側に示された欠歯部2c領域は、トリガギア2の欠歯部2cが駆動ギア1に対向している状態では、トリガギア2はトリガバネ4の引っ張り力により回転させられる領域である。この領域は、トリガギア2のギア部2bが駆動ギア1に噛合して駆動ギア1によって回転している領域ではないことを意味する。
【0104】
一方、
図13の上部の矢印に沿って示された
図13の右側に示された欠歯部3b領域を考慮する。従動ギア3の欠歯部3bが駆動ギア1に対向している状態では、従動ギア3がホームポジションに復帰するまでは、従動ギア3のギア部3aが駆動ギア1と噛み合うことができない。このためホームバネ9の弾性力(伸長力)によりレバー部材8の揺動腕8bが従動ギア3のカム部3eを押圧して従動ギア3がホームポジションまで回転させられる領域が
図13の右側に示された欠歯部3b領域である。欠歯部3b領域は、従動ギア3の第4間欠動作において、駆動ギア1により従動ギア3が駆動される動作とは別駆動の動作である。
【0105】
このように、従動ギア3の第4間欠動作は、駆動ギア1による駆動と、ホームバネ9の弾性力(伸長力)によりレバー部材8の揺動腕8bが従動ギア3のカム部3eを押圧して従動ギア3をホームポジションまで回転するときの駆動がある。ここで、従動ギア3の第4間欠動作中におけるホームバネ9の弾性力(伸長力)によりレバー部材8の揺動腕8bが従動ギア3のカム部3eを押圧して従動ギア3をホームポジションまで回転させる。その際の従動ギア3の駆動開始が、駆動ギア1による駆動終了と同時でも良い。
【0106】
図13に示すホームバネ9が揺動腕8bとカム部3eとを介して従動ギア3を回転する際の矢印の始点を考慮する。このときの矢印の始点は、従動ギア3の第4間欠動作中における駆動ギア1による駆動途中からホームバネ9の弾性力(伸長力)によりレバー部材8の揺動腕8bが従動ギア3のカム部3eを押圧して従動ギア3の駆動が開始される場合の一例である。
【0107】
図13に示す範囲R1,R3は、従動ギア3に対して、出力ギア6の駆動下流側のトルクが遮断されている範囲を示す。また、範囲R2は、従動ギア3のトルクが出力ギア6の駆動下流側に伝達される範囲を示す。この範囲R2は、駆動ギア1のトルクが、実際に出力ギア6に伝達されている範囲である。
【0108】
図13に示すように、ホームバネ9の弾性力(伸長力)により揺動腕8bとカム部3eとを介して従動ギア3の欠歯部3bを回転する第4間欠動作中の状態を考慮する。このとき、
図12(b)に示すように、中間ギア5が停止している間は、間欠凸部5dと間欠凹部6bとが当接して出力ギア6の回転が規制されている。このとき、中間ギア5に設けられた第3円弧面としての間欠凸部5dと、出力ギア6に設けられた第4円弧面としての間欠凹部6bとは、中間ギア5の回転中心と同心の円弧面である。そして、中間ギア5が停止している間は、互いの円弧面からなる間欠凸部5dと間欠凹部6bとが当接することで出力ギア6の回転が規制される。
【0109】
このため被駆動部材としての二次転写ローラ111の当接離間機構12から切換駆動ギア106hを介して出力ギア6に伝達された逆入力トルクは、出力ギア6に作用する回転方向に関係なく遮断される。このため逆入力トルクは、出力ギア6から中間ギア5に伝達されることはあっても逆入力トルクが従動ギア3に伝達されることはない。これにより出力ギア6に作用する逆入力トルクは、出力ギア6に作用する回転方向に関係なく従動ギア3に逆流することがなく遮断されている。
【0110】
即ち、
図13に示すように、弾性部材としてのホームバネ9の弾性力(伸長力)によって揺動腕8bがカム部3eを押圧することにより従動ギア3が回転する。このとき、停止している中間ギア5の間欠凹部5bに対して間欠凸部3dが摺動して従動ギア3は、中間ギア5を回転させることなく回転する。更に、中間ギア5を回転させることなく従動ギア3が所定量だけ回転すると、間欠凸部3dの端部隣にあるギア部3cの歯が間欠凹部5bの端部に係合し、中間ギア5の回転を開始させる。その後、従動ギア3のギア部3cと中間ギア5のギア部5aとが噛合して中間ギア5が回転する。
【0111】
停止している出力ギア6の間欠凹部6bに対して間欠凸部5dが摺動して中間ギア5が出力ギア6を回転させることなく回転する。その後に、停止した中間ギア5の間欠凸部5dに間欠凹部6bが当接して出力ギア6の回転が規制される。更に、停止した中間ギア5の間欠凹部5bに対して間欠凸部3dが摺動して従動ギア3は中間ギア5を回転させることなく回転する。
図13では、ホームバネ9の弾性力(伸長力)により揺動腕8bがカム部3eを押圧して従動ギア3が回転するときは、中間ギア5を回転させていない。また、出力ギア6が回転を終了した後、中間ギア5は第3間欠動作により回転を継続し、中間ギア5が回転を終了した後、従動ギア3は第4間欠動作により回転を継続する。
【0112】
図13の範囲R2においては、従動ギア3が駆動ギア1に係合して回転するとき、従動ギア3は、中間ギア5を回転させ、中間ギア5は、出力ギア6を回転させる。これによりホームバネ9の弾性力(伸長力)は、出力ギア6の回転トルクの大小に関係することがないため出力ギア6の回転トルクに応じてホームバネ9の弾性力を変える必要がない。また、出力ギア6から従動ギア3への逆入力トルクなどを遮断する専用の部材を配設する必要がない。
【0113】
その結果、ホームバネ9は弾性力が小さい安価なものを使用でき、その分、装置の大型化、コストアップを避けることができる。また、従動ギア3自体、従動ギア3と連動するトリガギア2を係止する係止爪7a、ホームバネ9を支持する部分も、大きな弾性力に耐えられるだけの材質、形状にする必要がなく、その分、装置の大型化、コストアップを避けることができる。
【0114】
また、ホームバネ9が揺動腕8bを介して従動ギア3のカム部3eを押圧する際に揺動腕8bが従動ギア3のカム部3eに衝突することで発生する音を、ホームバネ9の弾性力が小さい分、小さくすることができる。また、ホームバネ9の弾性力に抗して装置を組み立てる構成であれば、ホームバネ9の弾性力が小さい分、組み立て性や作業性が損なわれ難い。
【0115】
また、駆動ギア1と従動ギア3とが噛合した状態で従動ギア3を回転させる際にホームバネ9の押圧力が揺動腕8bとカム部3eとを介して従動ギア3を回転させるときの回転抵抗となる。しかしながら、ホームバネ9の弾性力が小さい分、ホームバネ9の押圧力により揺動腕8bとカム部3eとを介して従動ギア3を回転させるときの回転抵抗は小さくなる。このためホームバネ9の弾性力が小さい分、従動ギア3を回転させる駆動源としてのモータ11に必要とされる駆動力を下げることができる。従って、低出力の安価で小型の駆動源を用いることができる。
【0116】
また、出力ギア6がホームポジションに位置する際は、出力ギア6の駆動下流側の駆動列が外力等により回転させられそうになっても、切換カム106fは、回転位置が規制される。このため切換カム106fが外力等で回転してしまうことがないようにするといった別部材を配設する必要がない。
【0117】
<変形例>
尚、本実施形態の構成は、以下の変形が可能である。従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dと中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとが対向した状態を考慮する。また、中間ギア5の第3円弧面としての間欠凸部5dと出力ギア6の第4円弧面としての間欠凹部6bとが対向した状態を考慮する。これらの状態で、中間ギア5と出力ギア6の回転が所定量規制されれば、各円弧面同士の間に隙間があっても良い。
【0118】
また、本実施形態では、従動ギア3と、中間ギア5と、出力ギア6とは、別々の軸上で回転する構成であったが、出力ギア6は、従動ギア3と同じ回転軸上にあても良い。つまり、モータ11から切換カム106fまでの駆動列において、第2円弧面としての間欠凹部5bと第3円弧面としての間欠凸部5dとを備える中間ギア5が、従動ギア3の駆動下流側にあり、且つ、出力ギア6の駆動上流側にあれば良い。同様に、切換駆動ギア106hも出力ギア6と同軸上にある必要はなく、出力ギア6よりも駆動下流側に切換駆動ギア106hがあれば良い。
【0119】
また、本実施形態のクラッチ装置CL1は、
図1及び
図2に示すように、ベルト106を介在して二次転写ローラ111の駆動ローラ106aに対する被駆動部材としての当接離間機構12を駆動するために用いられている。出力ギア6の回転によって駆動される被駆動部材としては、これ以外の機構にも適用可能である。例えば、出力ギア6の回転によって駆動される被駆動部材として、
図1に示す給送ローラ108の間欠回転機構や、定着装置113に設けられる定着ローラ113aと加圧ローラ113bとの間の圧解除機構にも適用可能である。
【0120】
また、
図1に示すように、複数の感光ドラム102を有するインライン方式の画像形成装置100であれば、出力ギア6の回転によって駆動される被駆動部材として、各一次転写ローラ106dの当接離間機構にも適用できる。更に、出力ギア6の回転によって駆動される被駆動部材として、各現像装置10に設けられる現像ローラ104と感光ドラム102との当接離間機構にも適用できる。
【0121】
これらの当接離間機構に対して駆動源からの駆動力の伝達のON/OFFを切り換える機構にも適用可能である。本実施形態によれば、従動ギア3をカム部3eと揺動腕8bとを介して回転させるのに必要なホームバネ9の弾性力を、従動ギア3が駆動を伝達する被駆動部材側の駆動トルクの大きさに比例せず低減することができる。
【0122】
〔第2実施形態〕
次に、
図14~
図18を用いて本発明に係る駆動伝達装置を備えた画像形成装置の第2実施形態の構成について説明する。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号、或いは符号が異なっても同一の部材名を付して説明を省略する。
【0123】
<クラッチ装置>
図14及び
図15を用いて、本実施形態の駆動伝達装置としてのクラッチ装置CL2の構成について説明する。
図14は、本実施形態のクラッチ装置CL2の構成を示す斜視図である。
図15は、本実施形態のクラッチ装置CL2に設けられる従動ギア3の構成を示す斜視図である。
図14に示すクラッチ装置CL2は、前述した第1実施形態のクラッチ装置CL1に設けられた従動ギア3の形状が一部異なるのみであり、従動ギア3以外の構成については、前記クラッチ装置CL1と同様に構成されるため重複する説明は省略する。
【0124】
本実施形態のクラッチ装置CL2に設けられる従動ギア3は、
図15に示すように、従動ギア3のギア部3cの一部に、ギア部3cのピッチ円半径と同じ半径の第1円弧面である凸形状の間欠凸部3dを備えている。ギア部3cは、36歯相当の歯数直径を有し、第1円弧面としての間欠凸部3dは、ギア部3cの5歯数に相当する凸円弧形状を有して構成されている。本実施形態の従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dの一部には、第1円弧面よりも凹形状の凹部3iを備えている。凹部3iは、第1円弧面としての間欠凸部3dの一端部3d1に隣接した箇所に設けられている。
【0125】
<クラッチ装置CL2の動作>
次に、
図16~
図18を用いて、本実施形態のクラッチ装置CL2の駆動伝達動作について説明する。
図16~
図18は、本実施形態のクラッチ装置CL2の動作を説明する正面図である。
図16は、クラッチ装置CL2の中間ギア5の回転終了直前状態を示す。
図17は、クラッチ装置CL2における第4間欠動作開始時を示す。
図18は、クラッチ装置CL2の従動ギア3がホームポジションに位置する状態を示す。
【0126】
図16に示すように、従動ギア3のギア部3aは、駆動ギア1と噛合して回転しており、従動ギア3の回転により第1円弧面としての間欠凸部3dの一端部3d1が中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bに当接して中間ギア5を回転させる。従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dは、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bに対して対向しつつあり、中間ギア5は、ホームポジションに位置して回転終了する直前の状態にある。
【0127】
次に、
図17に示すように、従動ギア3が駆動ギア1により更に回転すると、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dが中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bに対して摺動する第4間欠動作になる。この第4間欠動作においては、従動ギア3は、第1円弧面としての間欠凸部3dの一部に設けた凹部3iが中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとは当接せずに従動ギア3が回転する。そして、従動ギア3の回転方向における上流側の第1円弧面としての間欠凸部3d2が中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bと摺動する。これにより中間ギア5は、ホームポジションに配置されて回転が停止する。
【0128】
図18に示す従動ギア3は、欠歯部3bが駆動ギア1と対向するホームポジションまで回転して停止した状態にある。この状態においては、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dの一部に設けた凹部3iは、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bの中間ギア5の回転方向における上流側の片側端部5b1と対向する位置にある。そのため従動ギア3の凹部3iと、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとは接触しない状態にある。
【0129】
即ち、
図18に示すように、従動ギア3が中間ギア5を回転させない位相にあるときを考慮する。このとき、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dには、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとは接触しない非接触部としての凹部3iが設けられている。
【0130】
図18に示すように、従動ギア3がホームポジションに位置する場合を考慮する。この場合には、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dの一部に設けた凹部3iは、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bの中間ギア5の回転方向における上流側の片側端部5b1に対向する位置にある。そして、従動ギア3の凹部3iと、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとは非接触状態となる。
【0131】
このため従動ギア3が図示しないカム部3eと
図14に示す揺動腕8bとを介してホームバネ9の弾性力(伸長力)により回転させられてホームポジションに位置する場合を考慮する。このときには、従動ギア3が中間ギア5を回転するトルクの反力の影響で最も接触し易い箇所がなくなるため摺動抵抗を少なくすることができる。
【0132】
また、
図18に示すように、従動ギア3がホームポジションに位置している際に、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dの一部に設けた凹部3iと、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bとが非接触状態となっている場合を考慮する。この場合でも、
図14に示す出力ギア6は、
図5(b)に示して前述したと同様に停止している中間ギア5により回転が規制されている。
【0133】
中間ギア5も従動ギア3から駆動力が伝達される状態ではなく、従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dが中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bに対向している。このため中間ギア5が勝手に回転することはない。このため従動ギア3の第1円弧面としての間欠凸部3dの一部に設けた凹部3iと、中間ギア5の第2円弧面としての間欠凹部5bの中間ギア5の回転方向における上流側の片側端部5b1とが接触することはない。
【0134】
このような構成により従動ギア3が図示しないカム部3eと
図14に示す揺動腕8bを介してホームバネ9の弾性力(伸長力)により回転させられる際には、中間ギア5との摺動抵抗の影響を低減することができる。このため前述した第1実施形態と比べて、ホームバネ9の付勢力を、更に小さくすることが可能となる。また、従動ギア3と中間ギア5との摺動抵抗が小さくなることで、従動ギア3のホームポジションの位置がばらつくのを低減することができ、従動ギア3のホームポジション位置の精度や信頼性が向上する。他の構成は前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0135】
1…駆動ギア
3…従動ギア
5…中間ギア
6…出力ギア
9…ホームバネ(弾性部材)