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特許7433790内燃機関および内燃機関のためのモジュラーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】内燃機関および内燃機関のためのモジュラーシステム
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20240213BHJP
   F02M 43/04 20060101ALI20240213BHJP
   F02M 53/04 20060101ALI20240213BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
F02M37/00 341D
F02M43/04
F02M53/04 A
F02M55/02 350U
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019130230
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2020012465
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】10 2018 117 123.4
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ゼンゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・レーレ
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10061873(DE,A1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0002588(KR,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0327296(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177901(US,A1)
【文献】特開2009-299592(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011056118(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-71/04
F02D 13/00-28/00
F02B 61/00-79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関、すなわちガスエンジン(10)または二系統燃料エンジン(10’)もしくは液体燃料エンジン(10”)であって、
クランクシャフトが搭載されたシリンダクランクケース(11)を備え、
複数のシリンダ(14)を含んだ少なくとも1つのシリンダ列(12、13)であって、各シリンダ(14)が、吸気のための少なくとも1つの吸気バルブ(27)および排気のための少なくとも1つの排気バルブを備えたシリンダヘッド(15)を備えた、シリンダ列(12、13)を備え、
個々の前記シリンダ(14)の、吸気のための1つまたは各々の吸気バルブ(27)を作動するための、および個々の前記シリンダ(14)の、排気のための1つまたは各々の排気バルブを作動するための、少なくとも1つのカムシャフトを備えたバルブ駆動部を備え、
前記シリンダ(14)に燃料を供給するための燃料供給システム(16、16’、16”)を備え、
前記内燃機関(10)の前記燃料供給システム(16、16’、16”)は、モジュール式デザインにおいて実施されており、各シリンダ(14)には燃料供給モジュール(17、17’、17”)が設けられ、
個々のシリンダ(14)は、個々の燃料供給モジュール(17、17’、17”)を通じて、ガスエンジンの場合には独占的にガス燃料が、二系統燃料エンジンの場合にはガス燃料および液体燃料の両方が、ならびに液体燃料エンジンの場合には、独占的に液体燃料が供給されることが可能であり、
個々の前記燃料供給モジュール(17、17’、17”)は、前記内燃機関に前記燃料供給モジュール(17、17’、17”)を搭載するための同じ搭載フランジ(18)を備えており、
前記シリンダクランクケース(11)に搭載された少なくとも1つのサポート(28)によって特徴付けられ、該サポートに、前記燃料供給モジュール(17、17’、17”)が前記搭載フランジ(18)を介して搭載されている、内燃機関。
【請求項2】
ガスエンジン(10)として設計された内燃機関の場合、および二系統燃料エンジン(10’)として設計された内燃機関の場合、個々の燃料供給モジュール(17、17’)は、ガス燃料のための供給ライン(19)、ソレノイド作動式主ガスバルブ(20)、および個々の前記シリンダ(14)の方向に前記ガス燃料を供給するための供給ランス(21)を、個々の前記シリンダ(14)の吸気のための1つまたは各々の吸気バルブ(27)の上流にさらに備えている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
ガスエンジン(10)として設計された内燃機関の場合、個々の前記燃料供給モジュール(17)は、個々の前記シリンダ(14)の予備チャンバの方向に前記ガス燃料を供給する、予備チャンバパージバルブ(23)をさらに備えている、請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
二系統燃料エンジン(10’)として設計された内燃機関の場合、および液体燃料エンジン(10”)として設計された内燃機関の場合、個々の前記燃料供給モジュール(17’、17”)は、個々の前記シリンダ(14)の少なくとも1つのインジェクタの方向に液体燃料を供給する、少なくとも1つの吸入口(24、30)をさらに備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項5】
二系統燃料エンジン(10’)として設計された内燃機関の場合、および液体燃料エンジン(10”)として設計された内燃機関の場合、個々の前記燃料供給モジュール(17’、17”)は、冷却水のための行き側(31)および冷却水のための戻り側(32)をさらに備え、前記冷却水は、個々の前記シリンダ(14)の1つまたは各々のインジェクタの冷却に寄与している、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
二系統燃料エンジン(10’)および液体燃料エンジン(10”)において、個々の前記燃料供給モジュール(17’、17”)は、個々の前記シリンダ(14)の前記インジェクタのための、パージ行き側(33)、パージ戻り側(34)、およびリーク戻り(35)をさらに備えている、請求項4または5に記載の内燃機関。
【請求項7】
隣り合った燃料供給モジュール(17、17’、17”)の間に延びたパイプモジュール(25、26)によって特徴づけられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項8】
ガスエンジン(10)として設計された内燃機関の場合、および二系統燃料エンジン(10’)として設計された内燃機関の場合、前記パイプモジュール(25)はシリンダ列(12、13)の隣り合ったシリンダ(14)の、隣り合った燃料供給モジュール(17、17’)の、ガス燃料のための供給ライン(19)を互いに接続している、請求項7に記載の内燃機関。
【請求項9】
二系統燃料エンジン(10’)として設計された内燃機関の場合、および液体燃料エンジン(10”)として設計された内燃機関の場合、前記パイプモジュール(26)は、シリンダ列(12、13)の隣り合ったシリンダ(14)の冷却水のための行き側(31)および戻り側(32)、パージ行き側(33)およびパージ戻り側(34)、ならびにリーク戻り(35)を互いに接続している、請求項7または8に記載の内燃機関。
【請求項10】
各シリンダ列(12、13)に関して、少なくとも1つのサポート(28)が前記シリンダクランクケース(11)に搭載されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項11】
個々の前記サポート(28)には、個々の前記シリンダ(14)の前記シリンダヘッド(15)、および/または少なくとも1つのカムシャフト、および/またはシリンダライナ、および/または吸気ライン(29)、および/または排気ラインが搭載されている、請求項10に記載の内燃機関。
【請求項12】
ガスエンジン(10)または二系統燃料エンジン(10’)もしくは液体燃料エンジン(10”)として設計された内燃機関のためのモジュラーシステムであって、前記内燃機関は、
内燃機関のためのシリンダクランクケース(11)であって、個々の前記シリンダクランクケースは、複数のシリンダ(14)を備えた少なくとも1つのシリンダ列(12、13)を備え、個々の前記シリンダクランクケース(11)には、クランクシャフトがガイドされた、シリンダクランクケース(11)を備え、
内燃機関(10)のためのシリンダヘッド(15)であって、個々の前記シリンダ(14)のための個々の前記シリンダヘッド(15)は、吸気のための少なくとも1つの吸気バルブ(27)および排気のための少なくとも1つの排気バルブを備えた、シリンダヘッド(15)を備え、
内燃機関(10)のための少なくとも1つのカムシャフトを備えたバルブ駆動部であって、個々の前記バルブ駆動部は、個々のシリンダ(14)の吸気のための少なくとも1つの吸気バルブ(27)を作動することに、および個々の前記シリンダ(14)の排気のための少なくとも1つの排気バルブを作動することに寄与する、バルブ駆動部を備えており、
内燃機関(10)の前記シリンダ(14)のための、独占的にガス燃料を供給する燃料供給モジュール(17)、ガス燃料および液体燃料の両方を供給する燃料供給モジュール(17’)、および、独占的に液体燃料を供給する燃料供給モジュール(17”)を備え、個々の燃料供給モジュール(17、17’、17”)を通じて、ガス燃料および/または液体燃料は、個々の前記シリンダ(14)に供給されることが可能であ
個々の前記燃料供給モジュール(17、17’、17”)は、前記内燃機関に前記燃料供給モジュール(17、17’、17”)を搭載するための同じ搭載フランジ(18)を備えている、
モジュラーシステム。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の機構によって特徴付けられている、請求項12に記載のモジュラーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。本発明はさらに、内燃機関のためのモジュラーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ここでは特にいわゆる大型エンジンまたは大型内燃機関の分野に関し、そのシリンダは140mmを越える、特に175mmを越える直径を有するピストンを備えている。そのような大型内燃機関は、ガスエンジンまたは二系統燃料エンジン、もしくは液体燃料エンジンのような、例えば海洋ディーゼル内燃機関である。
【0003】
今日まで、大型内燃機関は常に、決まった目的および決まった要求のために個別に設計された内燃機関である。大型内燃機関が新規に開発される場合、その内燃機関のすべてのアセンブリは、一般的に新規の開発を受ける。
【0004】
今日まで、大型内燃機関の新規の開発の際に、可能な限りテストされた部品を変更することなく使用を継続するために、既に存在する大型内燃機関の既存の部品は使用されない。このことは不都合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このことを起点として、本発明は、新しいタイプの内燃機関を創造する目的に基づいている。
【0006】
この目的は、請求項1による内燃機関を通じて解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による内燃機関は、クランクシャフトが搭載されたシリンダクランクケースを備えている。本発明による内燃機関はさらに、複数のシリンダを備えた少なくとも1つのシリンダ列を備え、各シリンダは、吸気のための少なくとも1つの吸気バルブおよび排気のための少なくとも1つの排気バルブを備えたシリンダヘッドを備えている。さらに、本発明による内燃機関は、個々のシリンダの、吸気のための1つまたは各々の吸気バルブを作動するための、および個々のシリンダの、排気のための1つまたは各々の排気バルブを作動するための、少なくとも1つのカムシャフトを備えたバルブ駆動部を備えている。
【0008】
本発明による内燃機関はさらに、シリンダに燃料を供給するための燃料供給システムを備え、内燃機関の燃料供給システムは、モジュール式デザインにおいて実施されており、各シリンダには、いずれの場合においても燃料供給モジュールが設けられ、個々のシリンダは、個々の燃料供給モジュールを通じて、ガスエンジンの場合には独占的にガス燃料が、二系統燃料エンジンの場合には独占的にガス燃料および液体燃料の両方が、ならびに液体燃料エンジンの場合には、独占的に液体燃料が供給されることが可能である。
【0009】
内燃機関の構築または組み立ての際に、燃料供給システムの燃料供給モジュールは、本発明による内燃機関がガスエンジンとして、または二系統燃料エンジンとして、もしくは液体燃料エンジンとしてのいずれとして構成されるかを決定している。本発明による内燃機関の多くのアセンブリ、特にシリンダクランクケース、シリンダ列、およびバルブ駆動部は、採用される燃料供給モジュールとは無関係である。シリンダヘッドの領域において、液体燃料のための少なくとも1つのインジェクタが、二系統燃料エンジンおよび液体燃料エンジンの場合に、準備された状態に維持されている。ガスモードの場合、このインジェクタは、ガス-吸気混合気に点火オイルを供給することにも寄与することが可能である。
【0010】
採用される燃料供給モジュールの数は、内燃機関のシリンダの数に依存している。モジュール構成により、内燃機関の新規の開発の際に、内燃機関のすべての部品を新規に開発することは必要ではなく、標準化された、すでに試作およびテストされた部品が、むしろ使用されることが可能である。
【0011】
個々の燃料供給モジュールは、内燃機関に燃料供給モジュールを搭載するための搭載フランジを備えている。ガスエンジンとして設計された内燃機関の場合、および二系統燃料エンジンとして設計された内燃機関の場合、個々の燃料供給モジュールは、ガス燃料のための供給ライン、ソレノイド作動式主ガスバルブ、および個々のシリンダの方向にガス燃料を供給するための供給ランスを、個々のシリンダの吸気のための1つまたは各々の吸気バルブの上流にさらに備えている。ガスエンジンの場合、個々の燃料供給モジュールは予備チャンバパージバルブをさらに備え、個々のシリンダの予備チャンバの方向にガス燃料を供給する。二系統燃料エンジンの場合、および液体燃料エンジンの場合、個々の燃料供給モジュールは少なくとも1つの吸入口をさらに備え、個々のシリンダの少なくとも1つのインジェクタの方向に液体燃料を供給する。燃料供給モジュールは、少なくとも搭載フランジを提供している。燃料供給モジュールが、ガスエンジンのための、または二系統燃料エンジンのための、もしくは液体燃料エンジンのための燃料供給モジュールとして実施されるかということに依存して、燃料供給モジュールは、さらなるアセンブリを備える。そのような燃料供給モジュールは、標準化された部品を使用して、安価な費用のガスエンジン、または二系統燃料エンジン、もしくは液体燃料エンジンのいずれかを構成することが可能である。ガスエンジンおよび二系統燃料エンジンの場合、燃料供給モジュールはさらに、個々の主ガスバルブおよび個々の供給ランスに直接アクセスすることを可能にしている。個々の燃料供給モジュールからの供給ランスの取り外しに続いて、個々のシリンダは自由にアクセスされること、すなわち燃料供給モジュールを完全に取り外す必要なくアクセスされることが可能である。
【0012】
さらに、本発明による内燃機関は、隣り合った燃料供給モジュールの間に延びたパイプモジュールを備え、ガスエンジンおよび二系統燃料エンジンの場合、パイプモジュールは、シリンダ列の隣り合ったシリンダの、隣り合った燃料供給モジュールの、ガス燃料のための供給ラインを互いに接続している。二系統燃料エンジンおよび液体燃料エンジンの場合、さらなるパイプモジュールが設けられ、それらは隣り合った燃料供給モジュールの間に延びており、シリンダ列の隣り合ったシリンダの、冷却水のための行き側および戻り側、ならびに/またはパージ行き側およびパージ戻り側、およびリーク戻りを互いに接続している。パイプモジュールは、シリンダ列の領域内に搭載された燃料供給モジュールを連結することに寄与している。シリンダ列の領域内に搭載された燃料供給モジュールは、パイプモジュールを通じて互いに接続または連結されることが可能である。このことは特に、標準化された部品を使用する内燃機関の構成を簡素化することを可能にしている。
【0013】
本発明の有利なさらなる発展によれば、本発明による内燃機関は、シリンダクランクケースに搭載された少なくとも1つのサポートを備え、このサポートには、搭載フランジを介して燃料供給モジュールが搭載されている。優先的に、少なくとも1つのサポートは、各シリンダ列に関してシリンダクランクケースに搭載されている。個々のサポートには、燃料供給モジュールだけでなく優先的に個々のシリンダのシリンダヘッド、および/または個々のシリンダのバルブ駆動部の少なくとも1つのカムシャフト、および/または個々のシリンダのシリンダライナ、および/または個々のシリンダの吸気ライン、および/または個々のシリンダの排気ラインが搭載されている。シリンダクランクケースに搭載されたサポートを介しての燃料供給モジュールの搭載は、特に好適である。これにより、燃料供給モジュールおよびパイプモジュールのための高価な振動分離は、不必要となる。
【0014】
本発明による内燃機関のモジュラーシステムは、請求項14に規定されている。
【0015】
本発明の好適なさらなる発展は、従属請求項および以下の記載から得られる。本発明の例示的な実施形態は、図を用いてより詳細に説明されているが、これに制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ガスエンジンとして設計された、本発明による第1内燃機関の斜視による側面を示した図である。
図2図1の内燃機関の詳細を示した図である。
図3】二系統燃料エンジンとして設計された、本発明による第2内燃機関の斜視による側面を示した図である。
図4図3の内燃機関の詳細を示した図である。
図5図4の代替案の詳細を示した図である。
図6】液体燃料エンジンとして設計された、本発明による第3内燃機関の斜視による側面を示した図である。
図7図6の内燃機関の詳細を示した図である。
図8図7の代替案の詳細を示した図である。
図9図1の内燃機関を通じた抽出による断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここに提示された発明は、ガスエンジンとしてまたは二系統燃料エンジンとしてもしくは液体燃料エンジンとして設計されたモジュラー形式の内燃機関に関し、この内燃機関では、内燃機関の具体的な実施形態とは無関係に、複数の部品がモジュラーシステムという意味において無変化、または最小限の適合により使用されることが可能である。
【0018】
本発明はさらに、ガスエンジンとしてまたは二系統燃料エンジンとしてもしくは液体燃料エンジンとして設計されたそのような内燃機関のためのモジュラーシステムに関する。
【0019】
図1は、ガスエンジン10として設計された内燃機関の斜視図を示している。図2および図9は、図1の内燃機関の詳細を示している。図1の内燃機関10はシリンダクランクケース11を備え、その内部には、可視化されていないクランクケースが搭載されている。図示された例示的な実施形態においては、内燃機関10は2つのシリンダ列12、13を備え、各シリンダ列は直線に配列された複数のシリンダ14を備えている。シリンダ14のシリンダヘッド15は、図9に示されている。図示された例示的な実施形態においては、10個のシリンダ14の各々は、各シリンダ列12、13に関して直線に配列されている。2つのシリンダ列12、13は、互いに対してV字状に配置されている。したがって、図1は、V型の20個のシリンダを備えたガスエンジンを示している。
【0020】
各シリンダ14は、個々のシリンダ14の可視化されていないピストンのための、図1では可視化されていないシリンダライナを備え、個々のシリンダ14のピストンは、可視化されていない接続ロッドを介して、同様に可視化されていないクランクシャフトに接続されている。個々のシリンダ14のシリンダヘッド15は、各シリンダ14に関して、各々の吸気のための少なくとも1つの吸気バルブ27(図9参照)、および排気のための少なくとも1つの排気バルブを提供しており、各排気バルブは可視化されていない。吸気のための吸気バルブ27および排気のための排気バルブは、ガス交換バルブとしても参照される。
【0021】
内燃機関10はさらに、図1には可視化されていないバルブ駆動部を備えている。そのようなバルブ駆動部は少なくとも1つのカムシャフトを備え、カムシャフトから生じて、シリンダ14の吸気のための吸気バルブ27およびシリンダ14の排気のための排気バルブを作動させることが可能である。一般的に、いわゆるロッカレバーが個々のカムシャフトと相互作用し、これは個々のカムシャフトおよび個々のロッカレバーを介して個々のシリンダのガス交換バルブを最終的に作動させるためである。
【0022】
図1に示された、ガスエンジンとして設計された内燃機関10は、シリンダ14に燃料を供給するための燃料供給システム16をさらに備えている。内燃機関10の燃料供給システム16はモジュラーデザイン、すなわち内燃機関10の各シリンダ14に関して、各々の燃料供給モジュール17が設けられる様式で実施されている。全体で20個のシリンダを備えた、図1に示されたV型の内燃機関においては、20個のそのような燃料供給モジュール17が設けられ、すなわち10個の燃料供給モジュールが、各々が10個のシリンダを備えた各シリンダ列の領域に設けられている。
【0023】
図1に示された、ガスエンジンとして設計された内燃機関10においては、燃料供給モジュール17は、シリンダ14に独占的にガス燃料を供給することに寄与している。
【0024】
個々の燃料供給モジュール17は、内燃機関に個々の燃料供給モジュール17を搭載するまたは組み付けるための搭載フランジ18、ガス燃料のための供給ライン19、ソレノイド作動式主ガスバルブ20、および供給ランス21を備え、供給ランス21を介して、主ガスバルブ20の作動により、ガス燃料は個々のシリンダの主チャンバの方向に供給されることが可能であり、優先的に主ガスバルブ20の作動により、供給ランス21は、個々のシリンダの吸気バルブ27の上流においてガス燃料を吸入空気と混合する様式である。これはその結果、吸入空気/ガスの混合気を、個々のシリンダ14の個々の吸気バルブ27を通じて、個々のシリンダ14の主チャンバ内へと導入するためである。図2は、主ガスバルブ20の作動に寄与するケーブル22を示している。個々の燃料供給モジュール17から供給ランスを引き抜くことによる、供給ランス21の取り外しに続いて、個々のシリンダ14は、例えば保守の目的のために自由にアクセス可能となり、すなわち燃料供給モジュール17を取り外す必要がない。
【0025】
図1図2、および図9に示された例示的な実施形態、すなわちガスエンジンの場合には、個々の燃料供給モジュール17は、予備チャンバパージバルブ23をさらに備えている。予備チャンバパージバルブ23を用いて、ガス燃料は個々のシリンダ14の予備チャンバに供給されることが可能である。個々のシリンダ14の個々の予備チャンバへと予備チャンバパージバルブ23を通じて供給されたガスは、予備チャンバ内において着火されたガスを介して最終的に着火するために、個々の予備チャンバの領域内において着火され、個々のシリンダ14の主チャンバ内の吸入空気/ガスの混合気は、個々の吸気バルブ27を通じて、個々のシリンダ14の主チャンバに進入する。
【0026】
図3図4、および図5は、二系統燃料エンジンとして設計された内燃機関10’の詳細を示しており、図1および図2の内燃機関10とは、その燃料供給システム16’の実施形態において異なっている。図3図4、および図5の例示的な実施形態においては、同じ参照符号が、図1図2、および図9の例示的な実施形態と同じアセンブリに関して使用されている。不要な反復を避けるために、同じ参照符号を有する同じアセンブリに対して、図1図2、および図9の例示的な実施形態に関する実施形態が参照される。
【0027】
図3図4、および図5の二系統燃料の燃料供給システム16’は、順にモジュール式に実施され、各シリンダ14に関して、各々の燃料供給モジュール17’を備え、この燃料供給モジュールは、図1および図2の内燃機関の燃料供給システム16の燃料供給モジュール17と同様に、搭載フランジ18、供給ライン19、作動ケーブル22を備えたソレノイド作動式主ガスバルブ20、および供給ランス21を備えている。しかしながら、二系統燃料エンジンのための燃料供給モジュール17’は、予備チャンバパージバルブ23ではなく吸入口24を備え、この補助を伴って、液体燃料は個々のシリンダ14のインジェクタに供給されることが可能である。図4においては、液体燃料のための単一の吸入口24が設けられている。図5においては、液体燃料のためのさらなる吸入口30、すなわちパイロットインジェクタが設けられている。
【0028】
二系統燃料エンジンの場合、個々の燃料供給モジュール17’は、個々のシリンダのインジェクタの冷却のための冷却水のための行き側31および戻り側32、液体燃料のためのリーク戻り35、ならびにパージ行き側33およびパージ戻り側34をさらに備え、これは、特に液体燃料モードからガス燃料モードへの変更中もしくは変更後に、またはエンジン停止前に、個々のシリンダの個々のインジェクタを掃気するためである。
【0029】
燃料供給モジュール17を使用した図1図2、および図9の観点のガスエンジン10であるか、または燃料供給モジュール17’ を使用した図3図4、および図5の観点の二系統燃料エンジン10’であるかに関わらず、パイプモジュール25が、隣り合った燃料供給モジュール17および17’の間に延びるように設けられて構成されている。パイプモジュール25を用いて、各シリンダ列12、13の隣り合ったシリンダ14の、隣り合った燃料供給モジュール17、17’のガス燃料のための供給ライン19は、互いに接続されることが可能である。したがって、互いに隣のまたは互いの後の個々のシリンダ列12、13に配置されたシリンダ14の、各シリンダ列12、13の個々の領域内の燃料供給モジュール17および17’は、それによりすべてのシリンダ14にガス燃料を供給するために、互いに連結されることが可能である。
【0030】
図3図4、および図5の、すなわち二系統燃料エンジン10’を提供するための燃料供給モジュール17’を使用した例示的な実施形態においては、各シリンダ列12、13の隣り合ったシリンダ14の燃料供給モジュール17’の、冷却水のための行き側31および戻り側32、パージ行き側33およびパージ戻り側34、ならびにリーク戻り35を互いに接続するために、燃料供給モジュール17’は、さらなるパイプモジュール26を備えている。
【0031】
例えばシリンダ14への保守作業を実行する場合、パイプモジュール25、26は搭載したままとすることが可能である。シリンダ14へのアクセスのために、個々の燃料ランス21を、個々の燃料供給モジュール17からそれを引き抜いて取り外すことで十分である。
【0032】
図6図7、および図8は、液体燃料エンジンとして設計された内燃機関10”の詳細を示しており、図1および図2の内燃機関10とは、その燃料供給システム16”の実施形態において異なっている。図6図7、および図8の例示的な実施形態においては、図1図2、および図9と同じ参照符号が、同じアセンブリに関して再度使用されている。したがって、同じ参照符号を有する同じアセンブリに関して、不要な反復を避けるために、図1図2、および図9の例示的な実施形態に関する説明が、再度参照されている。図6図7、および図8の液体燃料エンジン10”の燃料供給システム16”は、再度モジュール式に実施され、各シリンダ14に関して各々の燃料供給モジュール17”を備え、このモジュールは図1および図2の内燃機関16の燃料供給システム16の燃料供給モジュール17と同様に搭載フランジ18を備えているが、供給ライン19、作動ケーブル22を備えたソレノイド作動式主ガスバルブ20、および供給ランス21を備えていない。液体燃料エンジン10”のための燃料供給モジュール17”は、予備チャンバパージバルブ23をさらに備えていない。液体燃料エンジン10”のための燃料供給モジュール17”は、二系統燃料エンジン10’のための燃料供給モジュール17’同様に、むしろ吸入口24を備えており、この吸入口を用いて、液体燃料は個々のシリンダ14のインジェクタに供給されることが可能である。この液体燃料は、例えばディーゼル燃料、または重油燃料、もしくは同様のものとすることが可能である。図7においては、液体燃料のための単一の吸入口24が設けられており、すなわち主インジェクタのためである。図8においては、液体燃料のためのさらなる吸入口30が設けられており、すなわちパイロットインジェクタのためである。
【0033】
液体燃料エンジン10”のための燃料供給システム16”は、各シリンダ列12、13の隣り合ったシリンダ14の燃料供給モジュール17”の、冷却水のための行き側31および戻り側32、パージ行き側33およびパージ戻り側34、ならびにリーク戻り35を互いに接続するために、単にパイプモジュール26を備えているが、パイプモジュール25を備えていない。
【0034】
本発明の有利なさらなる発展によれば、図1図2、および図9の内燃機関10ならびに図3図4、および図5の内燃機関10’または図6図7、および図8の内燃機関10”が提供され、各々が少なくとも1つのサポート28(図5参照)を備えている。優先的に、そのようなサポート28は、各場合において各シリンダ列12、13の領域内に設けられ、シリンダクランクケース11に搭載されている。優先的に、燃料供給モジュール17、17’、または17”は、それらの搭載フランジ18を通じてサポート28に優先的に取り付けられ、または搭載されている。内燃機関10、10’、または10”の具体的な実施形態によれば、シリンダ14のシリンダヘッド15、図示されていないバルブ駆動部の少なくとも1つのカムシャフト、シリンダ14のシリンダライナ、ならびに吸気ライン29および排気ラインは、このサポート28に搭載されることも可能である。個々のサポート28を用いて、燃料供給モジュール17、17’、および17”を振動に対して鈍感となるように搭載することが可能である。したがって、高価な振動分離手段は省略されることが可能である。
【0035】
燃料供給モジュール17、17’、および17”、ならびに各場合において隣り合った2つのアセンブリの間のインターフェイスは、標準化されている。内燃機関10、10’、および10”ののシリンダの数に関わらず、ガス燃料および/または液体燃料のための搭載フランジ18、供給ライン19のような、均一のインターフェイスを備えた燃料供給モジュール17、17’、および17”が採用されている。ガスエンジンのための燃料供給モジュール17、および二系統燃料エンジンのための燃料供給モジュール17’、ならびに液体燃料エンジンのための燃料供給モジュール17”は、さらなるインターフェイスの意味において互いとはわずかに異なっている。結果的に、ガスエンジンのための燃料供給モジュール17は、特に予備チャンバパージバルブ23を備えている。二系統燃料エンジンのための料供給モジュール17’および液体燃料エンジンのための燃料供給モジュール17”は、特に冷却水のための行き側31および戻り側32、パージおよびリーク接続部33、34、35、ならびに液体燃料のための吸入口24、30を備えている。
【符号の説明】
【0036】
10、10’、10” ・・・内燃機関
11 ・・・シリンダクランクケース
12 ・・・シリンダ列
13 ・・・シリンダ列
14 ・・・シリンダ
15 ・・・シリンダヘッド
16、16’、16” ・・・燃料供給システム
17、17’、17” ・・・燃料供給モジュール
18 ・・・搭載フランジ
19 ・・・供給ライン
20 ・・・主ガスバルブ
21 ・・・供給ランス
22 ・・・ケーブル
23 ・・・予備チャンバパージバルブ
24 ・・・吸入口
25 ・・・パイプモジュール
26 ・・・パイプモジュール
27 ・・・吸気バルブ
28 ・・・サポート
29 ・・・吸気ライン
30 ・・・吸入口
31 ・・・冷却水行き側
32 ・・・冷却水戻り側
33 ・・・パージ行き側
34 ・・・パージ戻り側
35 ・・・リーク戻り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9