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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】放熱体構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20240213BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240213BHJP
   H02B 1/28 20060101ALI20240213BHJP
   H02B 1/56 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K7/20 B
H02B1/28 D
H02B1/56 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019139381
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021022682
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(72)【発明者】
【氏名】木谷 兆博
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216491(JP,A)
【文献】特開2015-220360(JP,A)
【文献】特開2017-085722(JP,A)
【文献】特開2009-133987(JP,A)
【文献】特開平07-015160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H05K 7/20
H02B 1/28
H02B 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱対象物に取り付けられて、複数の鉛直フィンが、互いに略平行に延び、かつ水平方向に並んで配設された放熱体と、
前記放熱体よりも上方に位置する第2放熱体であって、前記放熱体とは別体で構成される第2放熱体と、
前記放熱体の上方かつ前記第2放熱体の下方の間の領域に設けられた樋部材と、を備え、
前記樋部材の上面は、前記複数の鉛直フィンが並んだ方向である並設方向に対して上下方向の傾斜を有している、
放熱体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱体構造において、
前記樋部材は、主領域、およびこの主領域の前記並設方向における両端に位置する2つの端領域からなり、これら2つの端領域は、前記傾斜により一方の端領域の上面が他方の端領域の上面よりも低く、
前記主領域が、前記並設方向において前記放熱体の直上に位置し、
低い方の前記一方の端領域が、前記並設方向において前記放熱体の直上よりも外側に位置する、放熱体構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放熱体構造において、
前記放熱体が、前記放熱対象物寄りに位置して鉛直方向に延びる平板状の基部、およびこの基部から水平方向に延出する前記複数の鉛直フィンを有し、
前記樋部材は、前記複数鉛直のフィンが延出する方向である延出方向において、前記基部の直上で終端している、放熱体構造。
【請求項4】
放熱対象物である電気・電子部品を収納する筐体であって、
請求項1から3のいずれか一項に記載された放熱体構造を備え、
前記放熱体が前記筐体の背面に設けられ、
前記樋部材が前記背面に取り付けられている、筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱体構造、および放熱体構造を備えた筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気・電子部品を収納する筐体には防水カバーが設けられるなどして防水対策が施されている(特許文献1)。ただし、防水カバーが設けられた筐体は構造が複雑になり得る。
【0003】
その一方、防水カバーのようなものを特別に設けていない筐体もある。特に、発熱する電気・電子部品の筐体の背面にはヒートシンク(放熱体)が通常設けられているが、ヒートシンクと筐体の境界には例えばコーキング剤が施されている。これによって防水性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-079295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コーキング剤が施された部分に雨水が頻繁に掛かると、コーキング剤の劣化を招き、筐体内部の電気・電子部品に水が掛かるおそれがある。したがって、さらに防水性を向上させることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構造でありながら、防水性を向上させた放熱体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る放熱体構造は、放熱対象物に取り付けられて、複数の鉛直フィンが、互いに略平行に延び、かつ水平方向に並んで配設された放熱体と、前記放熱体の上方に設けられた樋部材と、を備え、前記樋部材の上面は、前記複数の鉛直フィンが並んだ方向である並設方向に対して上下方向に傾斜している。前記放熱対象物は、例えば電気・電子部品である。
【0008】
この構成によれば、複数の鉛直フィンが配設された放熱体の上方に樋部材が設けられているため、雨水などが樋部材の下方の放熱体に掛かるのを抑制できる。また、樋部材の上面が、複数の鉛直フィンが並んだ方向である並設方向に対して上下方向に傾斜しているため、雨水などはこの傾斜に沿って流れて適切な箇所で排出される。さらに、通常の放熱体に加えて上下方向に傾斜した樋部材が備えられているだけであるため、簡単な構造によって防水性が向上する。
【0009】
前記樋部材は、主領域、およびこの主領域の前記並設方向における両端に位置する2つの端領域からなり、これら2つの端領域は、前記傾斜により一方の端領域の上面が他方の端領域の上面よりも低く、前記主領域が、前記並設方向において前記放熱体の直上に位置し、低い方の前記一方の端領域が、前記並設方向において前記放熱体の直上よりも外側に位置してもよい。
【0010】
この構成によれば、樋部材の主領域が、鉛直フィンの並設方向において放熱体の直上に位置し、上面が低い方の一方の端領域が鉛直フィンの並設方向において放熱体の直上よりも外側に位置するため、つまり並設方向において直上領域外に延出するため、放熱体の直上の主領域では樋部材の傾斜に沿って雨水などが流れ、主領域から流れてきた雨水などが前記一方の端領域で放熱体から離れた箇所に導かれる。これにより、雨水などが放熱体に掛かるのを防止できる。
【0011】
好ましくは、上面が高い方の他方の端領域も、並設方向において放熱体の直上よりも外側に位置する。この構成によれば、放熱体の前記並設方向における全長にわたって直上には樋部材が存在するため、雨水などが放熱体に掛かるのを確実に防止できる。
【0012】
前記放熱体が、前記放熱対象物寄りに位置して鉛直方向に延びる平板状の基部、およびこの基部から水平方向に延出する前記複数の鉛直フィンを有し、前記樋部材は、前記複数の鉛直フィンが延出する方向である延出方向において、前記基部の直上で終端していてもよい。
【0013】
この構成によれば、桶部材が、複数の鉛直フィンが延在する方向において、放熱対象物寄りに位置する基部の直上で終端しているため、鉛直フィンの真上まで延在しているわけではない。このため、複数の鉛直フィンの間を通って上昇する放熱体からの熱流を桶部材が遮ってしまうようなことがない。
【0014】
本発明に係る筐体は、放熱対象物である電気・電子部品を収納する筐体であって、前記放熱体構造を備え、前記放熱体が前記筐体の背面に設けられ、前記樋部材が前記背面に取り付けられている。この構成によれば、筐体が収納する電気・電子部品から発生する熱を放熱する放熱体と筐体の境界における防水性が、簡単な構造によって向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる放熱体構造によれば、簡易な構造でありながら、防水性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る放熱体構造を備えた筐体を後方から見た斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図1の筐体の背面の一部を拡大した一部拡大背面図であって、主に放熱体構造を示す。
図4図3のIV-IV線に沿った横断面図である。
図5】第1の実施形態に係る放熱体構造の平面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る放熱体構造の樋部材の横断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る放熱体構造の樋部材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる放熱体構造を図面に基づいて説明する。
図1に示す筐体1は、例えばパワーコンディショナのような機器の筐体である。ただし、筐体1は発熱する部品を収納するものであれば、いかなる筐体であってもよい。筐体1の後部10には、筐体1の背面11の周縁において保護板12が後方に突出している。保護板12のうちの筐体1の上側で延びている部分、つまり上側保護板12aには、筐体1の縦方向Vに貫通する熱流逃し孔14が形成されている。上側保護板12aの先端は、下方に折曲している。この場合、上側保護板12aのすぐ下の空間にある上側ヒートシンク30(後述)の上部を保護する機能が高まる。なお、熱流逃し孔14は長方形や円形などのいかなる形状からなってもよく、かつ、いかなる数の熱流逃し孔14が設けられてもよい。
【0018】
筐体1は、下側ヒートシンク(放熱体)20と上側ヒートシンク(別の放熱体)30とを備える。具体的には、これら下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30とは、互いに縦方向Vに離間して、筐体1の背面11に設けられている。図示の例では、下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30は、筐体1の幅方向H1において互いにずれている。すなわち、下側ヒートシンク20は紙面左側に寄っているのに対して、紙面右側に上側ヒートシンク30が寄っている。もっとも、これらヒートシンク20,30は、筐体1の幅方向H1において同一位置にあってもよい。
【0019】
下側・上側ヒートシンク20,30は、図2に示すように保護板12に上下左右が囲まれている。上述の熱流逃し孔14は、ヒートシンク20,30から上昇してくる熱流を逃す役目を果たす。本実施形態では、上側ヒートシンク30は上側保護板12aのすぐ下に位置する。そのため、上側保護板12aは上側ヒートシンク30の庇として機能する。熱流逃し孔14は、また、上側保護板12aのつけ根付近には形成されていない。そのため、熱流逃し孔14を通って流れ落ちる雨水などは、上側ヒートシンク30と筐体1の背面11との境界には掛かり難くなっている。
【0020】
下側ヒートシンク20は、電気・電子部品18寄りに位置して筐体1の縦方向Vに延びる平板上の基部21と、この基部21から筐体1の後方に向かってそれぞれ延出する複数の鉛直フィン(以下、単に「フィン」と称する。)22とを有する。これらフィン22の延出方向は、好ましくは筐体1の奥行方向H2である。基部21および複数のフィン22は一体成型されている。複数のフィン22は、それぞれ筐体1のほぼ縦方向Vに沿って延びている。、複数のフィン22は、また、互いに略平行に延び、かつ筐体1の幅方向H1(図1)に並んで配設されている。フィン22が延びる方向は、筐体1の縦方向Vに対して若干傾斜していてもよい。なお、筐体1の縦方向Vは、筐体1が設置された状態においては鉛直方向である。そのため、複数の複数のフィン22は、ほぼ鉛直方向Vに延びている。また、筐体1の幅方向H1(図1)と奥行方向H2とは互いに直交し、筐体1が設置された状態においては、いずれも水平方向である。
【0021】
下側ヒートシンク20の基部21は回路基板のような基板16に対して固定されている。下側ヒートシンク20は、基板16に実装された放熱対象物である電気・電子部品18が発生する熱を放熱するためのものである。このような電気・電子部品18の一例としては、パワー半導体、フィルタ用のコイルや抵抗素子などである。下側ヒートシンク20は鉛直方向Vに延びる複数のフィン22を有するため、電気・電子部品18で発生した熱は下側ヒートシンク20を経由して外気に伝達され、上昇気流が生じてフィン22の壁に沿って上昇する。複数のフィン22は、放熱効果を高めるために、好ましくは電気・電子部品18よりも上方に延びている。特に、発熱素子である電気・電子部品18は基板16の下部に配置されている。これによれば、発生した熱が、フィン22の下部からほぼ全長に沿って上昇する空気に触れることで、効果的に放熱される。
【0022】
下側ヒートシンク20は、筐体1の背面11に設けられた開口11aを介して筐体1に取り付けられている。この取付けにより、基板16は筐体1の背面11よりも内側つまり筐体1内に位置する一方、下側ヒートシンク20の基部21は筐体1の背面11よりも外側つまり筐体1外に位置する。下側ヒートシンク20と筐体1の開口の間、つまり下側ヒートシンク20と筐体1の境界Aには隙間が僅かに形成されるが、この隙間には例えばコーキング剤が施されている。これにより、下側ヒートシンク20と筐体1との間における隙間が封止されて防水性が確保されている。
【0023】
上側ヒートシンク30は容器形状からなり、開口30aを有する。上側ヒートシンク30は、この開口30aが筐体1の背面11に設けられた開口(図示せず)と一致するように筐体1に取り付けられている。上側ヒートシンク30によって構成された空間30bの内部には、発熱する部品(図示せず)、例えばリアクトルが収納されている。上側ヒートシンク30の外面にも、図1に示す筐体1の縦方向Vに沿って延び、互いに略平行に筐体1の幅方向H1に並んで配設された複数のフィン31が設けられている。もっとも、上側ヒートシンク30の複数のフィン31は、下側ヒートシンク20の複数のフィン22に比べて奥行きが短い。上側ヒートシンク30によって構成された図2の空間30b内の部品から発生した熱は、上側ヒートシンク30の外面およびこれらフィン31を経由して外気に伝達され、フィン31の間を通って上昇し、熱流逃し14を通ってから拡散される。
【0024】
上側ヒートシンク30の開口30aの周縁部はフランジ33を有し、このフランジ33が筐体1の背面11に貼り付けられている。フランジ33と背面11の間には適宜形状のパッキンが介在し、これにより、上側ヒートシンク30が筐体1に固定されていると共に防水性が確保されている。なお、上述のように上側保護板12aが上側ヒートシンク30の庇として機能するため、上側ヒートシンク30のフランジ33と筐体1の背面11の間のシート状のパッキンに雨水はかかり難い。つまり、上側ヒートシンク30は、上側保護板12aによって防水性が向上している。
【0025】
下側ヒートシンク20および上側ヒートシンク30は、例えばアルミニウム製である。もっとも、ヒートシンク20,30は熱伝導率が高い材料であれば、いかなる材料から作製されていてもよい。また、下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30は、同一の材料から作製されてもよく、別の材料から作製されてもよい。
【0026】
本実施形態に係る放熱体構造3は、上述の下側ヒートシンク20と、以下に詳述する樋部材40とから構成されている。
【0027】
図3に示すように、樋部材40は筐体1の背面11に取り付けられている。桶部材40は、具体的には、下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30の縦方向Vにおける間の領域に配置され、筐体1が設置された状態では、鉛直方向Vにおいて下側ヒートシンク20の上方に位置する。樋部材40は、板金の折り曲げ材であり、長手方向DLに延びる樋板41と、図4に示すように、この樋板41における背面11に対向する側の長縁部41aにおいて折り曲げられて略直角をなし、同様に長手方向DL(図3)に延びる取付用板44とを有する。樋板41の長手方向DLと直交する幅方向DSは筐体1の奥行方向H2に合致する。樋板41は、例えば平板状である。もっとも、樋板41に関しては、長手方向DL(図3)に延びるものであればいかなる形状であってもよい。樋板41の上面43は好ましくは平面であるが、いかなる形状の面からなってもよい。ただし、後述するように樋として機能を果たすためには、水が溜まる窪みなどを有さないのが好ましい。取付用板44に関しては、その一主面が筐体1の背面11と密接するため、好ましくは平板状である。
【0028】
図3に示すように、取付用板44の長手方向DLの両端部44aは、取付用板の他の部分よりも幅広である。これら両端部44aにはそれぞれ図4の締結用孔48が形成されている。締結用孔48が筐体1の背面11に形成された取付用孔19と位置合わせされ、例えばリベット50で締結されることで、樋部材40が筐体1に固定される。リベット50が貫通した締結用孔48には、さらにコーキング剤が施されてもよい。このようにして、樋部材40の取付に起因して筐体1の防水性が低下するのを防止できる。なお、図3の取付用板44において、その両端部44aに加えて、または代わりに、他の部分を背面11に固定してもよい。また、樋板41の長手方向DLに沿って、筐体1の背面11との境界、つまり樋板41の長縁部41a(図4)と背面11の間にコーキング剤が施されてもよい。これにより、樋部材40と筐体1の背面11との間に形成され得る隙間を完全になくし、樋部材40よりも上方から雨水などが背面11に沿って下側ヒートシンク20に流れ落ちるのを防止できる。
【0029】
樋板41の上面43は、下側ヒートシンク20の複数のフィン22が並んだ方向に対して上下方向に傾斜している。これらフィン22が並んだ方向である並設方向は、好ましくは筐体1の幅方向H1である。本実施形態において、樋板41は均一な厚みを有し、樋部材40の長手方向DLが前記並設方向H1に対して傾斜している。この傾斜角θは、雨水のような液体を樋板41に沿って下方に導くことができる角度であればいかなる角度であってもよい。ただし、本実施形態において、下側ヒートシンク20は上述のように放熱効果を高めるために上方に延びている。そのため、下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30の間隔が限定されており、傾斜角θを大きくするのは難しい。また、傾斜角が大き過ぎてしまうと、雨水などが勢いよく流れ落ちて樋板41の側方に逸れてフィン22の上に流れ落ちる可能性がある。そのため、傾斜角θは大き過ぎないように設定されている。傾斜角θは、例えば0.1°~5°であり、好ましくは0.5°~4°であり、より好ましくは1°~3°である。
【0030】
樋部材40の材料は例えば鋼であるが、これには限定されず、耐久性がある材料であればいかなる材料から作製されてもよい。
【0031】
樋部材40は、上側ヒートシンク30よりも下側ヒートシンク20の近くに位置する。具体的には、樋部材40の高い方である第2の端領域40bbの上側ヒートシンク30bの下端までの鉛直距離L1が、下側ヒートシンク20の上端の延長線上までの鉛直距離L2よりも長い。このように、樋部材40を下側ヒートシンク20にできる限り近づけることで、下側ヒートシンク20の防水性を最大限向上させることができる。
【0032】
図5に示すように、樋部材40は、主領域40a、およびこの主領域40aの前記並設方向(筐体1の幅方向)H1における両端に位置する2つの端領域40b,40bからなる。主領域40aは並設方向H1において下側ヒートシンク20の直上に位置するのに対して、端領域40b,40bは並設方向H1において下側ヒートシンク20の直上よりも外側に位置する。もっとも、2つの端領域40b,40bのうち、高さが低い方である第1の端領域40baのみが並設方向H1において下側ヒートシンク20の直上よりも外側に位置してもよい。ただし、高さが高い方の第2の端領域40bbも並設方向H1において下側ヒートシンク20の直上よりも外側に位置すると、下側ヒートシンク20の並設方向H1における全長にわたって直上に樋部材40が存在するので、雨水などが下側ヒートシンク20に掛かるのを確実に防止できる。このようにして、雨水などがたとえ熱流逃し孔14(図1)を通って流れ落ちてきても、傾斜した樋板41を伝って下側ヒートシンク20から離れた箇所に導かれる。したがって、下側ヒートシンク20と筐体1の境界A(図1)のコーキング剤が雨水などで劣化することが抑制される。
【0033】
樋部材40はまた、上述のように、複数のフィン22が延出する延出方向つまり本実施形態では筐体1の奥行方向H2において、複数のフィン22の直上よりも奥側の基部21の直上で終端している。つまり、樋部材40は複数のフィン22の直上まで延在しているわけではない。このため、フィン22の間を通って上昇する下側ヒートシンク20からの熱流を樋部材40が遮ってしまるようなことがない。
【0034】
次に、本実施形態に係る防水構造3を備えた筐体1の使用形態について説明する。
図1の筐体1が室外に設置されているとする。例えば雨が降ると、雨水が上側保護板12の熱流逃し孔14を通って流れ落ちる。上側ヒートシンク30は上側保護板12aのすぐ下に位置し、かつ、熱流逃し孔14は上側保護板12aのつけ根12aa(図2)付近には形成されていないため、熱流逃し孔14を通って流れ落ちる雨水などは、上側ヒートシンク30と筐体1の背面11との境界には掛かり難い。その一方、下側ヒートシンク20は上側保護板12aから離れているため、上側保護板12の熱流逃し孔14を通って流れ落ちる雨水は、樋部材40がなければ筐体1の背面11に辿り着き下側ヒートシンク20の上端と筐体1の境界Aのコーキング剤が劣化する可能性がある。これに対して、本実施形態では図3に示すように傾斜した樋部材40が設けられているため、雨水は樋板41をその長手方向DLに沿って流れて第1の端領域40baから下方に滴り落ちる。ここで、第1の端領域40bbの下方には下側ヒートシンク20が位置しないため、下側ヒートシンク20と筐体1の境界Aのコーキング剤が雨水などで劣化することが防止される。なお、第1の端領域40baから滴り落ちた雨水などは、筐体1の下部に設けられた排出口(図示せず)を通って筐体1の外部に排出される。
【0035】
次に、第2の実施形態に係る放熱体構造について図6を参照して説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態に関して説明した構成要素と共通する構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0036】
本実施形態では、樋部材40Aのみが第1の実施形態に係る放熱体構造の樋部材40とは異なる。本実施形態において、樋部材40Aは、樋板41Aおよび取付用板44に加えて、突出側に側板46を有する。樋板41は、つけ根側となる奥側の長縁部41aにおいて取付用板44と略直角をなすのに対して、突出側の長縁部41bにおいて側板46と所定の角度をなす。この所定の角度は略直角または鈍角である。このようにして、筐体1の背面11と樋板41Aと側板46とが断面四角形の流路を画定する。これより、雨水などが長手方向DL(図1)から逸れて下側ヒートシンク20上に流れ落ちるのを防止できる。
【0037】
第3の実施形態に係る放熱体構造について図7を参照して説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態に関して説明した構成要素と共通する構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施形態でも、樋部材40Bのみが第1の実施形態に係る放熱体構造の樋部材40とは異なる。本実施形態において、樋部材40Bの樋板41Bは、奥側の長縁部41aにおいて取付用板44と鈍角をなしている。したがって、筐体1の背面11と樋板41Bとが断面三角形の流路を画定する。これより、雨水などが長手方向DL(図1)から逸れて下側ヒートシンク20上に流れ落ちるのを防止できる。
【0039】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。
【符号の説明】
【0040】
3 放熱体構造
18 放熱対象物
20 放熱体
22 フィン
40 樋部材
40a 主領域
40b 端領域
43 上面
H1 並設方向(水平方向)
H2 延出方向(水平方向)
V 鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7