(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ヒューズエレメント、ヒューズ素子および保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 85/08 20060101AFI20240213BHJP
H01H 37/76 20060101ALI20240213BHJP
H01H 85/06 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01H85/08
H01H37/76 F
H01H85/06
H01H37/76 Q
(21)【出願番号】P 2019152939
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-249155(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/08
H01H 37/76
H01H 85/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と第2端子
と、
前記第1端子と前記第2端子との間に配置された貫通孔を有さない平板状の溶断部を有
するヒューズエレメントを備え、
前記
ヒューズエレメントの幅が、前記第1端子および前記第2端子の前記
ヒューズエレメントとの接合部分の幅の100%超200%以下の長さを有
し、
前記ヒューズエレメントは、低融点金属層と、前記低融点金属層の厚み方向の両面に積層された高融点金属層とからなり、
前記ヒューズエレメントは、前記第1端子および前記第2端子と接合される側面が、前記高融点金属層によって被覆され、前記第1端子と前記第2端子とを繋ぐ方向の側面に前記低融点金属層が露出しているヒューズ
素子。
【請求項2】
上記溶断部の幅が、前記接合部分の幅の150%以下の長さである請求項1に記載のヒューズ
素子。
【請求項3】
前記溶断部の溶断温度が140℃~400℃である請求項1または請求項2に記載のヒューズ
素子。
【請求項4】
前記低融点金属層が、SnもしくはSnを主成分とする合金からなり、
前記高融点金属層が、Ag、Cu、Agを主成分とする合金、Cuを主成分とする合金から選ばれるいずれかからなる請求項
1~請求項3の何れか一項に記載のヒューズ
素子。
【請求項5】
前記第1端子および前記第2端子と、前記溶断部とが導電接続部材によって接合されている請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載のヒューズ
素子。
【請求項6】
前記第1端子および前記第2端子が、絶縁基板の表面に配置されている請求項
1~請求項5の何れか一項に記載のヒューズ素子。
【請求項7】
請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載のヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントを加熱し溶断させる発熱体とが備えられ、
前記第1端子および前記第2端子が、絶縁基板上に配置され、
前記ヒューズエレメントが、前記第1端子と前記第2端子との間に跨って配置されている保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズエレメント、ヒューズ素子および保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に定格電流を超える過電流が通電したときに、電流経路を遮断させる電流遮断素子として、ヒューズ素子が知られている。ヒューズ素子は、過電流によってヒューズエレメントが発熱して溶断することにより電流経路を遮断するものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、溶断部の両側に端子部を有するヒューズエレメントと、溶断部を包囲するケーシングとを備え、溶断部に切り欠きや複数の小孔が設けられたヒューズが記載されている。
また、特許文献2には、2つの平板状部間に位置するヒューズが、2つの平板状部と一体に形成されているチップ型ヒューズが記載されている。特許文献2には、ヒューズ本体の両端に連結部が形成され、連結部の長縁がヒューズ本体の幅寸法よりも長いチップ型ヒューズが記載されている。
【0004】
また、回路基板に過電流の発生以外の異常が発生したときに、電流経路を遮断させる電流遮断素子として、発熱体(ヒーター)を用いた保護素子が知られている。保護素子では、発熱体が発熱した熱によってヒューズエレメントが溶断する。発熱体は、過電流の発生以外の異常時に電流が通電されることによって、発熱するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-15715号公報
【文献】特許第5737664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ヒューズ素子および保護素子においては、定格電流を大きくすることが要求されている。
従来の高定格ヒューズ素子において、ヒューズエレメントの材料として、銅(融点1085℃)などの高融点金属が用いられているものがある。銅などの高融点金属からなるヒューズエレメントでは、局所的に発熱する発熱ポイントを溶断部に形成している。このことにより、ヒューズエレメントの溶断部に結合された端子が加熱され過ぎないようにして、ヒューズ素子の取り付けられている電子機器が耐熱温度を超えないようにしている。例えば、ハンダを用いて電気的な接続を形成している電子機器では、耐熱温度は220℃程度である。
【0007】
ヒューズエレメントにおける発熱ポイントは、溶断部に複数の小孔を設けたり、溶断部の幅を細くしたりすることによって形成されている。例えば、特許文献1には、溶断部に切り欠きや複数の小孔が設けられたヒューズエレメントが記載されている。また、特許文献2には、連結部の長縁がヒューズ本体の幅寸法よりも長いチップ型ヒューズが記載されている。
【0008】
また、銅などの高融点金属からなるヒューズエレメントでは、発熱ポイントと溶断部に結合された端子との間の距離を確保して、発熱ポイントからの熱によって端子が加熱され過ぎないようにする必要がある。このことは、以下に示すように、定格電流の大きなヒューズ素子において、小型化を阻害する要因となっている。
【0009】
2つの端子間に配置されたヒューズエレメントでは、ヒューズエレメントの長さ(2つの端子間の長さ)と抵抗値とは比例関係にある。したがって、ヒューズエレメントを長くして、発熱ポイントと端子との距離を離し、端子が加熱され過ぎないようにすると、ヒューズエレメントの抵抗が大きくなる。このため、ヒューズエレメントを備えるヒューズ素子の定格電流を大きくできない。
【0010】
発熱ポイントと溶断部に結合された端子との間の距離を長くし、かつヒューズエレメントの抵抗の増大を抑制するには、溶断部の断面積を大きくすればよい。しかし、溶断部の断面積を大きくしてヒューズエレメントの抵抗を小さくすると、発熱ポイントの発熱量が増大する。その結果、端子の過加熱を抑制するために更に発熱ポイントと端子との間の距離を長くしなければならなくなる。
このことから、高融点金属からなるヒューズエレメントを備えるヒューズ素子では、ヒューズ素子の小型化と、定格電流の大電流化とを両立することは、困難であった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ヒューズ素子および保護素子の定格電流の大電流化および小型化に寄与できるヒューズエレメントを提供することを目的とする。
また、上記ヒューズエレメントを備える定格電流の大電流化および小型化に寄与できるヒューズ素子および保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0013】
(1)第1端子と第2端子との間に配置された貫通孔を有さない平板状の溶断部を有し、
前記溶断部の幅が、前記第1端子および前記第2端子の前記溶断部との接合部分の幅の80%以上の長さを有するヒューズエレメント。
【0014】
(2)上記溶断部の幅が、前記接合部分の幅の95%以上の長さである(1)に記載のヒューズエレメント。
(3)前記溶断部の溶断温度が140℃~400℃である(1)または(2)に記載のヒューズエレメント。
【0015】
(4)前記溶断部は、低融点金属層と、前記低融点金属層よりも融点の高い高融点金属層とが、厚み方向に積層されて形成されている(1)~(3)のいずれかに記載のヒューズエレメント。
(5)前記低融点金属層が、SnもしくはSnを主成分とする合金からなり、
前記高融点金属層が、Ag、Cu、Agを主成分とする合金、Cuを主成分とする合金から選ばれるいずれかからなる(4)に記載のヒューズエレメント。
【0016】
(6)前記溶断部は、前記低融点金属層と、前記低融点金属層の両面に積層された前記高融点金属層とからなる(4)または(5)に記載のヒューズエレメント。
(7)上記溶断部の幅が、前記接合部分の幅の200%以下の長さである(1)~(6)のいずれかに記載のヒューズエレメント。
(8)前記第1端子および前記第2端子と、前記溶断部とが導電接続部材によって接合されている(1)~(7)のいずれかに記載のヒューズエレメント。
【0017】
(9)(1)~(8)のいずれかに記載のヒューズエレメントが備えられているヒューズ素子。
(10)前記第1端子および前記第2端子が、絶縁基板の表面に配置されている(9)に記載のヒューズ素子。
【0018】
(11)(1)~(8)のいずれかに記載のヒューズエレメントが備えられ、
前記ヒューズエレメントを加熱し溶断させる発熱体とが備えられ、
前記第1端子および前記第2端子が、絶縁基板上に配置され、
前記ヒューズエレメントが、前記第1端子と前記第2端子との間に跨って配置されている保護素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明のヒューズエレメントは、これを備えたヒューズ素子および保護素子における定格電流の大電流化および小型化に寄与できる。
本発明のヒューズ素子および保護素子は、本発明のヒューズエレメントを備えているため、定格電流の大電流化および小型化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)は、第1実施形態のヒューズ素子を示した平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すヒューズ素子をA-A´線に沿って切断した断面図である。
【
図2】
図2(a)は、第2実施形態のヒューズ素子を示した平面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示したヒューズ素子を
図2(a)の下側から見た側面図である。
図2(c)は、
図2(a)に示したヒューズ素子を
図2(a)の右側から見た側面図である。
【
図3】
図3(a)は、第3実施形態のヒューズ素子を示した平面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示したヒューズ素子を
図3(a)の下側から見た側面図である。
図3(c)は、
図3(a)に示したヒューズ素子の
図3(a)の右側から見た側面図である。
図3(d)は、
図3(a)に示したヒューズ素子に備えられているヒューズエレメントを示した斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、第4実施形態のヒューズ素子を示した平面図である。
図4(b)は、
図4(a)に示したヒューズ素子を
図4(a)の下側から見た側面図である。
図4(c)は、
図4(a)に示したヒューズ素子を
図4(a)の右側から見た側面図である。
【
図5】
図5(a)は、第5実施形態の保護素子を示した平面図である。
図5(b)は、
図5(a)に示す保護素子をB-B´線に沿って切断した断面図である。
図5(c)は、
図5(a)に示した保護素子を
図5(a)の右側から見た側面図である。
【
図6】
図6(a)は、第6実施形態の保護素子を示した平面図である。
図6(b)は、
図6(a)に示した保護素子を
図6(a)の下側から見た側面図である。
図6(c)は、
図6(a)に示した保護素子を
図6(a)の右側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るヒューズエレメント、ヒューズ素子および保護素子について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施できる。
【0022】
[第1実施形態(ヒューズ素子)]
図1(a)は、第1実施形態のヒューズ素子を示した平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すヒューズ素子をA-A´線に沿って切断した断面図である。
本実施形態のヒューズ素子10は、
図1(a)に示すように、第1端子20aと、第2端子20bと、第1端子20aと第2端子20bとの間に配置された溶断部1eからなる本実施形態のヒューズエレメント1とを有する。
【0023】
(ヒューズエレメント)
本実施形態のヒューズ素子10の備えるヒューズエレメント1は、溶断部1eからなる。ヒューズエレメント1は、第1端子20aと第2端子20bとを電気的に接続している。溶断部1e(ヒューズエレメント1)と、第1端子20aおよび第2端子20bとは、それぞれハンダなどの導電接続部材によって接合されることにより、電気的に接続されている。
【0024】
溶断部1eは、
図1(a)に示すように、貫通孔を有さない厚みが略一定の平板状のものである。
図1(a)に示すように、溶断部1eは、第1端子20aと第2端子20bとを繋ぐ方向を長辺とし、第1端子20aと第2端子20bとを繋ぐ方向と略直交する方向(以下、「幅方向」という場合がある。)を短辺とする平面視略長方形の形状を有している。
【0025】
なお、
図1(a)に示すヒューズ素子10では、溶断部1eが平面視略長方形とされているヒューズエレメント1を備える場合を例に挙げて説明するが、ヒューズエレメントの溶断部の形状は平面視略長方形に限定されない。例えば、溶断部1eの幅および厚みは一定でなくてもよい。
【0026】
溶断部1eの溶断温度は、140℃~400℃であることが好ましい。溶断部1eの溶断温度が140℃以上であると、通常の使用可能温度で溶断しないヒューズ素子10となり、好ましい。溶断部1eの溶断温度が400℃以下であると、溶断時に第1端子20aおよび第2端子20bが高温となって、第1端子20aおよび第2端子20bの接続されている部材に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0027】
本実施形態のヒューズ素子10では、溶断部1e(ヒューズエレメント1)が、
図1(b)に示すように、断面視矩形の平板状の低融点金属層1aと、低融点金属層1aの全面を略一定の厚みで被覆するように積層された高融点金属層1bとによって形成されていることが好ましい。この場合、溶断部1eは、
図1(b)に示すように、低融点金属層1aと、低融点金属層1aの厚み方向両面に積層された高融点金属層1bとからなる3層構造を有し、全ての側面が高融点金属層1bによって被覆されたものとなる。このため、ヒューズ素子10の製造工程におけるリフロー時の加熱によって、溶断部1eから低融点金属層1aが流出したり、ハンダなどの導電接続部材が溶断部1eに流入したりすることが抑制される。その結果、ヒューズ素子10の製造工程におけるリフロー時に、溶断部1e(ヒューズエレメント1)が変形することによる溶断部1eの抵抗値変動が抑制され、溶断特性の安定したヒューズ素子10を容易に製造できる。
【0028】
低融点金属層1aは、SnもしくはSnを主成分とする合金からなるものであることが好ましい。Snを主成分とする合金におけるSn含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。Snを主成分とする合金の例としては、Sn-Bi合金、In-Sn合金、Sn-Ag-Cu合金などが挙げられる。
【0029】
高融点金属層1bは、低融点金属層1aよりも融点の高い層であり、低融点金属層1bの溶融物によって溶解される金属材料からなる層であることが好ましい。
高融点金属層1bの融点は、低融点金属層1aの融点に対して100℃以上高い温度であって900℃高い温度以下の範囲内であることが好ましい。
【0030】
高融点金属層1bは、Ag、Cu、Agを主成分とする合金、Cuを主成分とする合金から選ばれるいずれかからなるものであることが好ましく、AgもしくはAgを主成分とする合金からなるものであることがより好ましい。Agを主成分とする合金におけるAg含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。Agを主成分とする合金の例としては、銀パラジウム合金が挙げられる。Agは、貴金属であり、イオン化傾向が低く、大気中で酸化されにくく、しかも低融点金属層1aの溶融物によって溶解されやすい。このため、AgもしくはAgを主成分とする合金は、高融点金属層1bの材料として好適である。
【0031】
溶断部1e(ヒューズエレメント1)は、例えば、低融点金属層1aがSnを主成分とする合金からなり、高融点金属層1bがAgからなり、低融点金属層1aの厚みと高融点金属層1bの厚み合計との比(低融点金属層1a:高融点金属層1b)が1:1~50:1であるものとすることができる。このような溶断部1eは、溶断温度が140℃~400℃となる。
【0032】
溶断部1e(ヒューズエレメント1)は、低融点金属層1aがSnを主成分とする合金からなり、高融点金属層1bがAgからなり、低融点金属層1aの厚みと高融点金属層1bの厚み合計との比(低融点金属層1a:高融点金属層1b)が10:1である場合、体積抵抗率(比抵抗)が約7.4μΩ・cmとなる。
【0033】
ヒューズエレメント1は、例えば、めっき法を用いて製造できる。具体的には、ヒューズエレメント1の低融点金属層1aに対応する形状の金属箔を用意し、金属箔の表面全面にめっき法を用いて高融点金属層1bを形成する。このことにより、低融点金属層1aの全面が、略一定の厚みを有する高融点金属層1bによって被覆された平板状のヒューズエレメント1が得られる。
【0034】
(第1端子、第2端子)
第1端子20aおよび第2端子20bは、ヒューズ素子10を使用する際に、図示しない電気回路の端子部に接合されることにより、電気回路と電気的に接続される。
図1(a)に示すように、第1端子20aの中心部には、円形の貫通孔からなる取付穴3aが設けられている。第2端子20bの中心部には、第1端子20aと同様に、円形の貫通孔からなる取付穴3bが設けられている。本実施形態のヒューズ素子10は、例えば、ボルトなどの接合部材と取付穴3a、3bとを用いて、所定の位置に着脱自在に取り付けられる。
【0035】
図1(a)に示すように、第1端子20aおよび第2端子20bにおける溶断部1eとの接合部分の幅2dは、同じである。また、第1端子20aおよび第2端子20bの平面形状は、溶断部1eを挟んで略対称であり、かつ溶断部1eの幅1d方向中心に対して略対称である。
【0036】
第1端子20aおよび第2端子20bの平面形状は、
図1(a)に示す例に限定されるものではない。例えば、取付穴3a、3bの平面形状は、円形に限定されるものではなく、楕円形、多角形などであってもよい。また、取付穴3a、3bに代えて、第1端子20aおよび第2端子20bが平面視C字状となるように切り欠きが設けられていてもよい。また、第1端子20aおよび第2端子20bにおける溶断部1eとの接合部分の幅2dが同じであれば、第1端子20aおよび第2端子20bの平面形状は、溶断部1eを挟んで略対称でなくてもよいし、溶断部1eの幅1d方向中心に対して略対称でなくてもよい。
【0037】
第1端子20aおよび第2端子20bは、導電性を有する材料で形成されている。例えば、第1端子20aおよび第2端子20bは、CuまたはCuを主成分とする合金からなるものとすることができる。Cuを主成分とする合金の例としては、Cu-Ni合金が挙げられる。
【0038】
本実施形態のヒューズ素子10では、
図1(a)に示すように、平面視での溶断部1eの幅1dは、第1端子20aおよび第2端子20bの溶断部1eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さ({1d/2d}×100≧80(%))を有し、接合部分の幅2dの95%以上の長さであることが好ましく、100%超であることがより好ましい。
本明細書では、溶断部の幅方向の長さが一定でない場合の溶断部1eの幅1dとは、幅方向の長さが最も短い部分の長さを意味する。また、第1端子20aおよび第2端子20bにおける溶断部1eとの接合部分の幅2dとは、第1端子20aおよび第2端子20bの溶断部1eに最も近い部分における溶断部1eの幅1dと平行な長さを意味する。
【0039】
溶断部1eの幅1dが上記の80%以上の長さであると、溶断部1eの幅1dが広いことによる溶断部1eの抵抗を低くする効果が十分に得られる。
また、溶断部1eの幅1dは、第1端子20aおよび第2端子20bの溶断部1eとの接合部分の幅2dの200%以下であることが好ましく、150%以下であることがより好ましい。溶断部1eの幅1dが上記の200%以下の長さであると、溶断部1eの幅1dが広すぎることによるヒューズ素子10の小型化への影響を抑制できる。
【0040】
図1(a)および
図1(b)に示すヒューズ素子10は、公知の方法により製造できる。例えば、ヒューズエレメント1(溶断部1e)と、第1端子20aおよび第2端子20bとを、それぞれハンダなどの導電接続部材によって接合することにより、電気的に接続する方法により製造できる。
【0041】
本実施形態のヒューズ素子10の溶断部1eは、第1端子20aおよび第2端子20bを介して接合された電気回路に定格電流が流れている間は溶断されない。上記の電気回路に定格電流を超える過電流が通電されると、溶断部1eが溶断されて、第1端子20aと第2端子20bとの間が断線され、電気回路の電流経路が遮断される。
【0042】
溶断部1eが、低融点金属層1aと高融点金属層1bとが厚み方向に積層されて形成されたものである場合、電気回路に定格電流を超える過電流が通電されると、溶断部1eの低融点金属層1aが発熱して溶融し、生成した低融点金属層1aの溶融物によって高融点金属層1bが溶解され、溶断部1が速やかに溶断される。
【0043】
本実施形態のヒューズ素子10は、溶断部1eの幅1dが、第1端子20aおよび第2端子20bの溶断部1eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さであり、幅1dの広い低抵抗の溶断部1eを有しているため、定格電流の大電流化に寄与できる。
【0044】
さらに、本実施形態のヒューズ素子10における溶断部1eの溶断温度が400℃以下である場合、溶断時に第1端子20aおよび第2端子20bが高温となって、第1端子20aおよび第2端子20bの接続されている部材に悪影響を及ぼすことを防止でき、ヒューズ素子10の取り付けられている電子機器が耐熱温度を超えることを防止できる。したがって、溶断部1eの溶断温度が400℃以下である場合、第1端子20aおよび第2端子20bが加熱され過ぎないように、溶断部に複数の小孔を設けたり、溶断部の幅を細くしたりして、局所的な発熱ポイントを形成する必要はない。
【0045】
また、溶断部1eの溶断温度が400℃以下である場合、第1端子20aおよび第2端子20bが加熱され過ぎないように、溶断部1eに発熱ポイントを形成するとともに溶断部1eの長さを長くして、発熱ポイントと第1端子20aおよび第2端子20bとの間の距離を長くする必要はない。よって、溶断部1eの溶断温度が400℃以下である場合、溶断部1eの溶断温度が400℃超である場合と比較して、溶断部1eの長さ(第1端子20aと第2端子20bとの間の距離)を短くできる。
【0046】
溶断部1e(ヒューズエレメント1)は、長さと抵抗値とが比例関係にある。したがって、ヒューズエレメント1の長さを短くするほど、ヒューズエレメント1の抵抗値が低下する。上述したように、溶断部1eの溶断温度が400℃以下である場合、溶断部1eの溶断温度が400℃超である場合と比較して、溶断部1eの長さを短くできるため、小型でより一層低抵抗の溶断部1eとすることができる。その結果、ヒューズ素子10を小型化できるとともに、定格電流をより一層大きくできる。
【0047】
また、溶断部1eの溶断温度が400℃以下である場合、溶断部1eの長さを短くできるため、例えば、融点(1085℃)が高いため溶断部の溶断温度が400℃超となる銅からなるヒューズエレメント(体積抵抗率1.62μΩ・cm)と比較して、体積抵抗率の高い材料で溶断部1eが形成されていても、溶断部1eの抵抗値を低くでき、定格電流を大きくできる。
【0048】
[第2実施形態(ヒューズ素子)]
図2(a)は、第2実施形態のヒューズ素子を示した平面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示したヒューズ素子を
図2(a)の下側から見た側面図である。
図2(c)は、
図2(a)に示したヒューズ素子を
図2(a)の右側から見た側面図である。なお、
図2(a)および
図2(c)は、
図2(b)に示すヒューズ素子20のカバー部材5を外した状態を示している。
【0049】
図2(a)~
図2(c)に示すように、ヒューズ素子20は、ヒューズエレメント11と、絶縁基板4と、絶縁基板4の表面4aに配置された第1電極2aおよび第2電極2bとを備える。第1電極2aおよび第2電極2bは、それぞれヒューズエレメント11に導電接続される端子として機能する。
【0050】
図2(a)~
図2(c)に示す第2実施形態のヒューズ素子20に備えられているヒューズエレメント11と、第1実施形態に備えられているヒューズエレメント1とが異なるところは、
図2(a)~
図2(c)に示すヒューズエレメント11では、第1電極2aと第2電極2bとを繋ぐ方向の側面が高融点金属層1bによって被覆されておらず、側面に低融点金属層1aが露出しているところのみである。したがって、第2実施形態のヒューズ素子20に備えられているヒューズエレメント11は、第1実施形態に備えられているヒューズエレメント1と同様の材料および層構造を有する。このため、第2実施形態に備えられているヒューズエレメント11については、第1実施形態に備えられているヒューズエレメント1と異なるところのみ説明する。
【0051】
本実施形態のヒューズ素子20では、ヒューズエレメント11は、
図2(a)および
図2(b)に示すように、第1電極2aと第2電極2bとの間に配置された溶断部11eと、第1電極2a上にハンダなどの導電接続部材(不図示)によって接合された第1接合部11fと、第2電極2a上にハンダなどの導電接続部材(不図示)よって接合された第2接合部11gとを有している。
図2(b)に示すように、溶断部11eと絶縁基板4の表面4aとの間には、空間が形成されている。
【0052】
第2実施形態のヒューズ素子20に備えられているヒューズエレメント11では、
図2(b)に示すように、第1電極2aまたは第2電極2bと接合される側面は、高融点金属層1bによって被覆されている。このため、ヒューズ素子20の製造工程におけるリフロー時の加熱によって、溶断部11eから低融点金属層1aが流出したり、ハンダなどの導電接続部材が溶断部11eに流入したりすることが抑制される。その結果、ヒューズ素子20の製造工程におけるリフロー時に、溶断部11e(ヒューズエレメント11)が変形することによる溶断部11eの抵抗値変動が抑制され、溶断特性の安定したヒューズ素子20を容易に製造できる。
【0053】
ヒューズエレメント11は、例えば、無電解めっき法を用いて製造できる。具体的には、低融点金属層1aとなる帯状(リボン状)の金属箔を用意する。金属箔としては、第1電極2aと第2電極2bとを繋ぐ方向におけるヒューズエレメント11の低融点金属層1aの長さに対応する幅を有するものを用いる。次に、金属箔の表面に無電解めっき法を用いて高融点金属層1bを形成し、帯状の積層体を得る。その後、帯状の積層体の長さを所定の寸法に切断して平板状とする。このことにより、所定の矩形形状を有し、切断面に低融点金属層1aが露出されたヒューズエレメント11が得られる。この製造方法は、特に小型のヒューズエレメントを製造する場合に好適である。
【0054】
本実施形態のヒューズ素子20においても、第1実施形態と同様に、
図2(c)に示すように、平面視での溶断部11eの幅1dは、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部11eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さ({1d/2d}×100≧80(%))を有し、接合部分の幅2dの95%以上の長さであることが好ましく、100%超であることがより好ましい。
【0055】
本実施形態のヒューズ素子20に備えられているヒューズエレメント11は、第1電極2aと第2電極2bとを繋ぐ方向の側面に低融点金属層1aが露出している。このため、以下に示す理由により、平面視での溶断部11eの幅1dが、第1電極2aまたは第2電極2bの溶断部11eとの接合部分の幅2dの100%超の長さであることがより好ましい。すなわち、ヒューズエレメント11の第1電極2aおよび第2電極2bと接合される側面を被覆する高融点金属層1bによって、ヒューズ素子20の製造工程におけるリフロー時に、ハンダなどの導電接続部材とヒューズエレメント11の低融点金属層1aとが接触することを、より効果的に抑制できる。その結果、リフロー時に溶断部11e(ヒューズエレメント11)が変形することによる溶断部11eの抵抗値変動が抑制され、溶断特性の安定したヒューズ素子20を容易に製造できる。
【0056】
絶縁基板4は、電気絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、樹脂基板、セラミックス基板、樹脂とセラミックスとの複合体基板など、回路基板として用いられている公知の絶縁基板を用いることができる。樹脂基板としては、具体的には、エポキシ樹脂基板、フェール樹脂基板、ポリイミド基板などが挙げられる。セラミックス基板としては、具体的には、アルミナ基板、ガラスセラミックス基板、ムライト基板、ジルコニア基板などが挙げられる。複合体基板としては、具体的には、ガラスエポキシ基板が挙げられる。
【0057】
第1電極2aおよび第2電極2bは、絶縁基板4の対向する一対の両端部に配置されている。第1電極2aおよび第2電極2bは、それぞれAg配線、Cu配線などの導電パターンによって形成されている。
第1電極2aおよび第2電極2bの表面は、それぞれ酸化などによる電極特性の変質を抑制するために、電極保護層で被覆されていてもよい。電極保護層の材料としては、Snめっき膜、Ni/Auめっき膜、Ni/Pdめっき膜、Ni/Pd/Auめっき膜等を用いることができる。
【0058】
第1電極2aおよび第2電極2bは、それぞれキャスタレーション21a、21bを介して絶縁基板4の裏面4bに形成された第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bと電気的に接続されている。第1電極2aと第1外部接続電極42aとの接続、および第2電極2bと第2外部接続電極42bとの接続は、スルーホールを介して行ってもよい。
【0059】
本実施形態のヒューズ素子20では、
図2(b)に示すように、カバー部材5が接着剤を介して取り付けられていることが好ましい。カバー部材5が取り付けられていることによって、ヒューズ素子20の内部が保護されるとともに、ヒューズエレメント11が溶断する際に発生する溶融物の飛散を防止できる。カバー部材5の材料としては、各種エンジニアリングプラスチックおよび/またはセラミックスを用いることができる。
【0060】
本実施形態のヒューズ素子20は、第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bを介して、回路基板(不図示)の電流経路上に実装されて使用される。回路基板の電流経路上に定格電流が流れている間は、ヒューズ素子20に備えられているヒューズエレメント11の溶断部11eは溶断されない。回路基板の電流経路上に定格電流を超える過電流が通電されると、溶断部11eが溶断されることにより、第1電極2aと第2電極2bとの間が断線されて、回路基板の電流経路が遮断される。
【0061】
溶断部11eが、低融点金属層1aと高融点金属層1bとが厚み方向に積層されて形成されたものである場合、回路基板の電流経路上に定格電流を超える過電流が通電されると、溶断部11eの低融点金属層1aが発熱して溶融し、生成した低融点金属層1aの溶融物によって高融点金属層1bが溶解され、溶断部11eが速やかに溶断される。
【0062】
本実施形態のヒューズ素子20は、第1実施形態のヒューズ素子10と同様に、溶断部11eの幅1dが、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部11eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さである幅1dの広い低抵抗の溶断部11eを有するため、定格電流の大電流化に寄与できる。
【0063】
さらに、本実施形態のヒューズ素子20における溶断部11eの溶断温度が400℃以下である場合、溶断時に第1電極2aおよび第2電極2bが高温となって、第1電極2aおよび第2電極2bの接続されている部材、ならびに第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bが接続されている回路基板に悪影響を及ぼすことを防止できる。したがって、溶断部11eの溶断温度が400℃超である場合と比較して、溶断部11eの長さ(第1電極2aと第2電極2bとの間の距離)を短くでき、ヒューズ素子20を小型化できるとともに、定格電流をより一層大きくできる。
【0064】
[第3実施形態(ヒューズ素子)]
図3(a)は、第3実施形態のヒューズ素子を示した平面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示したヒューズ素子を
図3(a)の下側から見た側面図である。
図3(c)は、
図3(a)に示したヒューズ素子を
図3(a)の右側から見た側面図である。なお、
図3(a)および
図3(c)は、
図3(b)に示すヒューズ素子25のカバー部材5を外した状態を示している。
図3(d)は、
図3(a)に示したヒューズ素子に備えられているヒューズエレメントを示した斜視図である。
【0065】
図3(a)~
図3(c)に示すように、ヒューズ素子25は、
図3(d)に示すヒューズエレメント15と、絶縁基板4と、絶縁基板4の表面4aに配置された第1電極2aおよび第2電極2bとを備える。第2実施形態と同様に、第1電極2aおよび第2電極2bは、それぞれヒューズエレメント15に導電接続される端子として機能する。
【0066】
図3(a)~
図3(c)に示す第3実施形態のヒューズ素子25と、第2実施形態に示すヒューズ素子20とが異なるところは、
図3(a)~
図3(c)に示すヒューズ素子25に備えられているヒューズエレメント15の第1接合部15fおよび第2接合部15gにおける高融点金属層1bの厚み(形状)のみである。したがって、第3実施形態においては、第2実施形態と異なるところのみ説明し、第2実施形態と同じ部材については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0067】
第3実施形態のヒューズ素子25に備えられているヒューズエレメント15では、
図3(b)および
図3(d)に示すように、第1接合部15fおよび第2接合部15gの高融点金属層1bの厚みが、溶断部15eよりも厚くなっている。このことにより、
図3(b)および
図3(d)に示すヒューズエレメント15の切断面は、ドッグボーン形状となっている。第1接合部15fは、ハンダなどの導電接続部材(不図示)によって第1電極2aに接合された部分である。また、第2接合部15gは、ハンダなどの導電接続部材(不図示)によって第2電極2bに接合された部分である。このため、第3実施形態のヒューズ素子25では、第1接合部15fおよび第2接合部15gを形成している高融点金属層1bによって、ヒューズ素子25の製造工程におけるリフロー時に、ハンダなどの導電接続部材とヒューズエレメント15の低融点金属層1aとが接触することを、より効果的に抑制できる。その結果、リフロー時に溶断部15e(ヒューズエレメント15)が変形することによる溶断部15eの抵抗値変動がより効果的に抑制され、溶断特性の安定したヒューズ素子25を容易に製造できる。
【0068】
ヒューズエレメント15は、例えば、電解めっき法を用いて製造できる。具体的には、低融点金属層1aとなる帯状(リボン状)の金属箔を用意する。金属箔としては、第1電極2aと第2電極2bとを繋ぐ方向におけるヒューズエレメント15の低融点金属層1aの長さに対応する幅を有するものを用いる。次に、金属箔の表面に電解めっき法を用いて高融点金属層1bを形成し、帯状の積層体を得る。その後、帯状の積層体の長さを所定の寸法に切断して平板状とする。このことにより、所定の矩形形状を有し、切断面に低融点金属層1aが露出されたヒューズエレメント15が得られる。
なお、本実施形態では、電解めっき加工時の電流集中によって、帯状の金属箔の幅方向端部に幅方向中心部よりも厚い高融点金属層1bが形成される。このため、
図3(d)に示すように、ヒューズエレメント15は、第1接合部15fおよび第2接合部15gの高融点金属層1bの厚みが、溶断部15eよりも厚く、ドッグボーン形状の切断面を有するものとなる。この製造方法は、特に小型のヒューズエレメントを製造する場合に好適である。
【0069】
本実施形態のヒューズ素子25においても、第1実施形態および第2実施形態と同様に、
図3(c)に示すように、平面視での溶断部15eの幅1dは、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部15eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さ({1d/2d}×100≧80(%))を有し、接合部分の幅2dの95%以上の長さであることが好ましく、100%超であることがより好ましい。
【0070】
本実施形態のヒューズ素子25に備えられているヒューズエレメント15は、第1電極2aと第2電極2bとを繋ぐ方向の側面に低融点金属層1aが露出している。このため、第2実施形態と同様に、平面視での溶断部15eの幅1dが、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部15eとの接合部分の幅2dの100%超の長さであることがより好ましい。
【0071】
本実施形態のヒューズ素子25は、第1実施形態および第2実施形態のヒューズ素子と同様に、溶断部15eの幅1dが、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部15eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さである幅1dの広い低抵抗の溶断部15eを有するため、定格電流の大電流化に寄与できる。
【0072】
さらに、本実施形態のヒューズ素子25における溶断部11eの溶断温度が400℃以下である場合、溶断時に第1電極2aおよび第2電極2bが高温となって、第1電極2aおよび第2電極2bの接続されている部材、ならびに第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bが接続されている回路基板に悪影響を及ぼすことを防止できる。したがって、溶断部11eの溶断温度が400℃超である場合と比較して、溶断部11eの長さ(第1電極2aと第2電極2bとの間の距離)を短くでき、ヒューズ素子25を小型化できるとともに、定格電流をより一層大きくできる。
【0073】
[第4実施形態(ヒューズ素子)]
図4(a)は、第4実施形態のヒューズ素子を示した平面図である。
図4(b)は、
図4(a)に示したヒューズ素子を
図4(a)の下側から見た側面図である。
図4(c)は、
図4(a)に示したヒューズ素子を
図4(a)の右側から見た側面図である。なお、
図4(a)および
図4(c)は、
図4(b)に示すヒューズ素子40のカバー部材5を外した状態を示している。
【0074】
図4(a)~
図4(c)に示すように、ヒューズ素子40は、ヒューズエレメント50と、絶縁基板4と、絶縁基板4の表面4aに配置された第1電極2aおよび第2電極2bとを備える。
第4実施形態においては、ヒューズエレメント50として、第2実施形態に備えられているヒューズエレメント11と同様のものを備えている。このため、第4実施形態においては、ヒューズエレメント50の溶断温度、材料、層構造についての説明を省略する。
【0075】
本実施形態のヒューズ素子40に備えられているヒューズエレメント50は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、第1電極2aと第2電極2bとの間に配置された溶断部51と、第1電極2a上にハンダなどの導電接続部材(不図示)によって接合された第1接合部52aと、第2電極2b上にハンダなどの導電接続部材(不図示)よって接合された第2接合部52bとを有している。
図4(b)に示すように、溶断部51と絶縁基板4の表面4aとの間には、空間が形成されている。
【0076】
本実施形態では、
図4(b)に示すようにヒューズエレメント50が、第1電極2a上および第2電極2b上から絶縁基板4の側面に亘って連続して覆っている。このことにより、第1電極2aおよび第2電極2bと、絶縁基板4の裏面4bに配置された第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bとが、ヒューズエレメント50を介して電気的に接続されている。
【0077】
本実施形態では、第1接合部52aは、第1外部接続電極42aと電気的に接続されており、ヒューズエレメント50の溶断部51に導電接続される端子として機能する。また、第2接合部52bは、第2外部接続電極42bと電気的に接続されており、ヒューズエレメント50の溶断部51に導電接続される端子として機能する。
本実施形態のヒューズ素子40においては、帯状のヒューズエレメント50の一部からなる第1接合部52aおよび第2接合部52bが端子として機能するため、平面視での溶断部51の幅は、第1接合部52aおよび第2接合部52bの幅と同一である。よって、平面視での溶断部51の幅は、第1接合部52aおよび第2接合部52bの溶断部51との接合部分の幅の100%の長さを有する。
【0078】
本実施形態のヒューズ素子40では、絶縁基板4、第1電極2aおよび第2電極2b、第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bは、第2実施形態のヒューズ素子20と同じものを用いることができる。
また、本実施形態のヒューズ素子40は、第2実施形態のヒューズ素子20と同様に、
図4(b)に示すように、カバー部材5が接着剤を介して取り付けられていることが好ましい。カバー部材5の材料としては、第2実施形態のヒューズ素子20と同様のものを用いることができる。
【0079】
本実施形態のヒューズ素子40は、第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bを介して、回路基板(不図示)の電流経路上に実装されて使用される。回路基板の電流経路上に定格電流を超える過電流が通電されると、溶断部51が溶断されることにより、第1電極2aと第2電極2bとの間が断線されて、回路基板の電流経路が遮断される。
【0080】
溶断部51が、低融点金属層1aと高融点金属層1bとが厚み方向に積層されて形成されたものである場合、回路基板の電流経路上に定格電流を超える過電流が通電されると、溶断部51の低融点金属層1aが発熱して溶融し、生成した低融点金属層1aの溶融物によって高融点金属層1bが溶解され、溶断部51が速やかに溶断される。
【0081】
本実施形態のヒューズ素子40は、溶断部51の幅が、第1接合部52aおよび第2接合部52bの溶断部51との接合部分の幅の100%の長さである幅の広い低抵抗の溶断部51を有するため、定格電流の大電流化に寄与できる。
【0082】
さらに、本実施形態のヒューズ素子40における溶断部51の溶断温度が400℃以下である場合、溶断時に第1電極2aおよび第2電極2bが高温となって、第1電極2aおよび第2電極2bの接続されている部材、ならびに第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bが接続されている回路基板に悪影響を及ぼすことを防止できる。したがって、溶断部51の溶断温度が400℃超である場合と比較して、溶断部51の長さ(第1接合部52aと第2接合部52bとの間の距離)を短くでき、ヒューズ素子40を小型化できるとともに、定格電流をより一層大きくできる。
【0083】
[第5実施形態(保護素子)]
図5(a)は、第5実施形態の保護素子を示した平面図である。
図5(b)は、
図5(a)に示す保護素子をB-B´線に沿って切断した断面図である。
図5(c)は、
図5(a)に示した保護素子を
図5(a)の右側から見た側面図である。なお、
図5(a)および
図5(c)は、
図5(b)に示す保護素子30のカバー部材5を外した状態を示している。
【0084】
図5(a)~
図5(c)に示すように、保護素子30は、ヒューズエレメント11と、ヒューズエレメント11を加熱し溶断させる発熱体7と、絶縁基板4と、絶縁基板4の表面4aに配置された第1電極2aおよび第2電極2bとを備える。本実施形態の保護素子30では、
図5(b)に示すように、ヒューズエレメント11が、第1電極2aと第2電極2bとの間に跨って配置されている。第1電極2aおよび第2電極2bは、それぞれヒューズエレメント11に導電接続される端子として機能する。さらに、本実施形態の保護素子30は、発熱体7に接続する第1発熱体電極9aおよび第2発熱体電極9bと、第2発熱体電極9bに接続する発熱体引出電極9とを有する。
【0085】
第5実施形態の保護素子30は、ヒューズエレメント11と、絶縁基板4と、第1電極2aおよび第2電極2bとして、第2実施形態のヒューズ素子20に備えられているものと同様のものを備えている。このため、第5実施形態においては、ヒューズエレメント11の溶断温度、材料、層構造についての説明を省略する。また、第5実施形態においては、絶縁基板4と、第1電極2aおよび第2電極2bについての説明を省略する。
【0086】
本実施形態の保護素子30では、ヒューズエレメント11は、
図5(a)および
図5(b)に示すように、第1電極2aと第2電極2bとの間に配置された溶断部11eと、第1電極2a上にハンダなどの導電接続部材(不図示)によって接合された第1接合部11fと、第2電極2b上にハンダなどの導電接続部材(不図示)よって接合された第2接合部11gとを有している。
また、本実施形態の保護素子30では、
図5(b)に示すように、溶断部11eの絶縁基板4側の面と、発熱体引出電極9とが、電気的に接続されている。溶断部11eと発熱体引出電極9とは、ハンダなどの導電接続部材(不図示)によって電気的に接続されている。
【0087】
本実施形態の保護素子30では、
図5(b)に示すように、溶断部11eが断面視で絶縁基板4の表面4aと反対側に凸状の形状とされている。そして、溶断部11eと絶縁基板4の表面4aとの間に、絶縁基板4の表面4aに配置された発熱体7と、発熱体7を被覆する絶縁部材8と、絶縁部材8を介して発熱体7上に形成された発熱体引出電極9とが配置されている。
【0088】
発熱体7は、比較的抵抗が高く、通電することにより発熱する高抵抗導電性材料によって形成されている。高抵抗導電性材料としては、例えば、ニクロム、W、Mo、Ruを含む材料などが挙げられる。発熱体7は、例えば、上記の高抵抗導電性材料と樹脂バインダなどとを混合してペースト状にしたものを、絶縁基板4の表面4aにスクリーン印刷技術を用いてパターン形成し、焼成する方法などによって形成できる。
【0089】
絶縁部材8は、ガラスなどの絶縁材料で形成されている。
発熱体引出電極9は、絶縁部材8を介して発熱体7と対向配置されている。これにより、発熱体7は、絶縁部材8および発熱体引出電極9を介してヒューズエレメント11の溶断部11eと重畳される。このような重畳構造とすることによって、発熱体7の発生した熱を効率よく溶断部11eに伝えることができる。
【0090】
本実施形態の保護素子30においても、第2実施形態のヒューズ素子20と同様に、
図5(c)に示すように、平面視での溶断部11eの幅1dは、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部11eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さ({1d/2d}×100≧80(%))を有し、接合部分の幅2dの95%以上の長さであることが好ましく、100%超であることがより好ましい。
【0091】
本実施形態の保護素子30は、第2実施形態のヒューズ素子20と同様に、
図5(b)に示すように、カバー部材5が接着剤を介して取り付けられていることが好ましい。カバー部材5の材料としては、第2実施形態のヒューズ素子20と同様のものを用いることができる。
【0092】
図5(a)に示すように、第1電極2aおよび第2電極2bは、絶縁基板4の表面4aにおける対向する一対の両端部に配置されている。第1発熱体電極9aおよび第2発熱体電極9bは、絶縁基板4の表面4aにおける対向する別の一対の両端部に配置されている。
第1電極2a、第2電極2b、第1発熱体電極9a、第2発熱体電極9b、発熱体引出電極9は、それぞれAg配線、Cu配線などの導電パターンによって形成されている。
また、第1電極2a、第2電極2b、第1発熱体電極9a、第2発熱体電極9b、発熱体引出電極9は、それぞれ酸化などによる電極特性の変質を抑制するために、電極保護層で被覆されていてもよい。電極保護層の材料としては、Snめっき膜、Ni/Auめっき膜、Ni/Pdめっき膜、Ni/Pd/Auめっき膜等を用いることができる。
【0093】
本実施形態の保護素子30では、第1電極2a、第2電極2b、第1発熱体電極9aは、それぞれキャスタレーションを介して絶縁基板4の裏面4bに形成された第1外部接続電極42a、第2外部接続電極42b、発熱体給電電極6と電気的に接続されている。第1電極2aと第1外部接続電極42aとの接続、第2電極2bと第2外部接続電極42bとの接続、第1発熱体電極9aと発熱体給電電極6との接続は、スルーホールで行ってもよい。第2発熱体電極9bと発熱体引出電極9との接続は、スルーホール(不図示)など公知の方法により行うことができる。
【0094】
本実施形態の保護素子30では、発熱体給電電極6、第1発熱体電極9a、発熱体7、第2発熱体電極9b、発熱体引出電極9、ヒューズエレメント11の溶断部11eに至る通電経路と、第1外部接続電極42a、第1電極2a、溶断部11e、第2電極2b、第2外部接続電極42bに至る通電経路とが形成されている。
【0095】
本実施形態の保護素子30は、第1外部接続電極42a、第2外部接続電極42b、発熱体給電電極6を介して、回路基板(不図示)の電流経路上に実装されて使用される。これにより、例えば、保護素子30の溶断部11eは、第1外部接続電極42aと第2外部接続電極42bを介して回路基板の電流経路上に接続され、発熱体7は、発熱体給電電極6を介して回路基板に設けられた電流制御素子と接続される。
【0096】
本実施形態の保護素子30では、回路基板に異常が発生すると、回路基板に備えられた電流制御素子によって、発熱体給電電極6を介して発熱体7が通電される。これにより、発熱体7が発熱し、絶縁部材8および発熱体引出電極9を介して溶断部11eが加熱され、溶断部11eが溶断される。これにより、第1電極2aと第2電極2bとの間が断線されて、回路基板の電流経路が遮断される。
【0097】
溶断部11eが、低融点金属層1aと高融点金属層1bとが厚み方向に積層されて形成されたものである場合、回路基板に備えられた電流制御素子によって発熱体7が通電されると、溶断部11eの低融点金属層1aが加熱されて溶融し、生成した低融点金属層1aの溶融物によって高融点金属層1bが溶解され、溶断部11eが速やかに溶断される。
【0098】
本実施形態の保護素子30は、第2実施形態のヒューズ素子20と同様に、溶断部11eの幅1dが、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部11eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さである幅1dの広い低抵抗の溶断部11eを有するため、定格電流の大電流化に寄与できる。
【0099】
さらに、本実施形態の保護素子30における溶断部11eの溶断温度が400℃以下である場合、溶断時に第1電極2aおよび第2電極2bが高温となって、第1電極2aおよび第2電極2bの接続されている部材、ならびに第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bが接続されている回路基板に悪影響を及ぼすことを防止できる。したがって、溶断部11eの溶断温度が400℃超である場合と比較して、溶断部11eの長さ(第1電極2aと第2電極2bとの間の距離)を短くでき、保護素子30を小型化できるとともに、定格電流をより一層大きくできる。
【0100】
[第6実施形態(保護素子)]
図6(a)は、第6実施形態の保護素子を示した平面図である。
図6(b)は、
図6(a)に示した保護素子を
図6(a)の下側から見た側面図である。
図6(c)は、
図6(a)に示した保護素子を
図6(a)の右側から見た側面図である。なお、
図6(a)および
図6(c)は、
図6(b)に示す保護素子60のカバー部材5を外した状態を示している。
【0101】
図6(a)~
図6(c)に示すように、保護素子60は、ヒューズエレメント11と、ヒューズエレメント11を加熱し溶断させる発熱体17と、絶縁基板4と、絶縁基板4の表面4aに配置された第1電極2aおよび第2電極2bとを備える。本実施形態の保護素子60では、
図6(b)に示すように、ヒューズエレメント11が、第1電極2aと第2電極2bとの間に跨って配置されている。第1電極2aおよび第2電極2bは、それぞれヒューズエレメント11に導電接続される端子として機能する。さらに、本実施形態の保護素子60は、発熱体17に接続する発熱体引出電極19を有する。
【0102】
第6実施形態の保護素子60と、第5実施形態の保護素子30とが異なるところは、溶断部11eの形状、発熱体17および絶縁部材18の配置、発熱体17に接続された配線の配置のみである。したがって、第6実施形態においては、第5実施形態と異なるところのみ説明し、第5実施形態と同じ部材については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0103】
本実施形態の保護素子60では、第5実施形態の保護素子30と異なり、
図6(b)に示すように、溶断部11eの第1電極2aと第2電極2bとを繋ぐ方向の側面が断面視矩形状とされている。そして、溶断部11eと絶縁基板4の表面4aとの間に、発熱体引出電極19が配置されている。また、絶縁基板4の裏面4bに、発熱体17と、発熱体17を被覆する絶縁部材18とが配置されている。
【0104】
発熱体引出電極19は、絶縁基板4を介して発熱体17と対向配置されている。これにより、発熱体17は、絶縁基板4および発熱体引出電極19を介してヒューズエレメント11の溶断部11eと重畳される。このような重畳構造とすることによって、発熱体17の発生した熱を効率よく溶断部11eに伝えることができる。
【0105】
本実施形態の保護素子60においても、第5実施形態の保護素子30と同様に、
図6(c)に示すように、平面視での溶断部11eの幅1dは、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部11eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さ({1d/2d}×100≧80(%))を有し、接合部分の幅2dの95%以上の長さであることが好ましく、100%超であることがより好ましい。
【0106】
本実施形態の保護素子60では、回路基板に異常が発生すると、回路基板に備えられた電流制御素子によって発熱体17が通電される。これにより、発熱体17が発熱し、絶縁基板4および発熱体引出電極19を介して溶断部11eが加熱され、溶断部11eが溶断される。これにより、第1電極2aと第2電極2bとの間が断線されて、回路基板の電流経路が遮断される。
【0107】
溶断部11eが、低融点金属層1aと高融点金属層1bとが厚み方向に積層されて形成されたものである場合、回路基板に備えられた電流制御素子によって発熱体17が通電されると、溶断部11eの低融点金属層1aが加熱されて溶融し、生成した低融点金属層1aの溶融物によって高融点金属層1bが溶解され、溶断部11eが速やかに溶断される。
【0108】
本実施形態の保護素子60は、第5実施形態の保護素子30と同様に、溶断部11eの幅1dが、第1電極2aおよび第2電極2bの溶断部11eとの接合部分の幅2dの80%以上の長さである幅1dの広い低抵抗の溶断部11eを有するため、定格電流の大電流化に寄与できる。
【0109】
さらに、本実施形態の保護素子60における溶断部11eの溶断温度が400℃以下である場合、溶断時に第1電極2aおよび第2電極2bが高温となって、第1電極2aおよび第2電極2bの接続されている部材、ならびに第1外部接続電極42aおよび第2外部接続電極42bが接続されている回路基板に悪影響を及ぼすことを防止できる。したがって、溶断部11eの溶断温度が400℃超である場合と比較して、溶断部11eの長さ(第1電極2aと第2電極2bとの間の距離)を短くでき、保護素子60を小型化できるとともに、定格電流をより一層大きくできる。
【符号の説明】
【0110】
1、11、15、50 ヒューズエレメント
1a 低融点金属層
1b 高融点金属層
1e、11e、15e、51 溶断部
1f、11f、15f、52a 第1接合部
1g、11g、15g、52b 第2接合部
2a 第1電極
2b 第2電極
3a、3b 取付穴
4 絶縁基板
4a 表面
4b 裏面
5 カバー部材
6 発熱体給電電極
7、17 発熱体
8、18 絶縁部材
9、19 発熱体引出電極
9a 第1発熱体電極
9b 第2発熱体電極
10、20、25、40 ヒューズ素子
20a 第1端子
20b 第2端子
21a、21b キャスタレーション
30、60 保護素子
42a 第1外部接続電極
42b 第2外部接続電極