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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】薬液滴下装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20240213BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019172694
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021049483
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】横山 周平
(72)【発明者】
【氏名】楠 竜太郎
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-283123(JP,A)
【文献】特開2005-118672(JP,A)
【文献】特開2004-290961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの動作によって2つ以上のノズルから同時に薬液を吐出する薬液吐出装置が装着される装着部と、
薬液が吐出される検査媒体が載置される載置部と、
薬液の種類を取得するインターフェースと、
前記薬液の種類に基づいて薬液によって前記検査媒体に形成されるドット滴の液体面が前記検査媒体と成す接触角を取得し、同時に薬液を吐出し隣接する前記ノズルの間の距離と、前記接触角とから吐出する薬液の体積を算出し、前記体積の液滴を前記ノズルから吐出させる制御部と、
を備える薬液滴下装置。
【請求項2】
前記薬液吐出装置から識別子を読み取るリーダを備え、
前記制御部は、前記識別子に基づいて前記距離を取得する、
請求項1に記載の薬液滴下装置。
【請求項3】
前記ノズルから吐出される薬液を分注する分注部を備え、
前記制御部は、前記ノズルから前記分注部に薬液を吐出させる、
請求項1又は2に記載の薬液滴下装置。
【請求項4】
前記液滴によって前記検査媒体に形成される検査パターンを撮影する画像撮影部を備え、
前記制御部は、
前記画像撮影部を用いて、前記検査パターンを撮影し、
撮影された画像に基づいて、前記ノズルから薬液が吐出されているか判定する、
請求項1乃至の何れか1項に記載の薬液滴下装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薬液滴下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液滴下装置には、薬液吐出装置をセットして、薬液吐出装置に充填された薬液を吐出させるものがある。薬液滴下装置は、薬液吐出装置が備える複数のノズルから薬液を吐出させる。
【0003】
薬液吐出装置に充填した薬液に、ゴミなどの不純物が混じっていた場合、滴下の途中で、ノズルの一部が不吐出となる可能性がある。そのため、薬液滴下装置は、各ノズルから検査メディアに薬液を吐出し、検査メディア上に形成されるドット滴の有無から各ノズルから薬液が吐出されているか判定する。
【0004】
薬液吐出装置の複数のノズルから薬液を吐出した際、検査メディア上に形成されたドット滴同士が結合することがある。そのため、薬液滴下装置は、各ノズルから薬液が吐出されているか適切に判定できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-015466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の課題を解決するため、薬液吐出装置のノズルから薬液が吐出されているかを効果的に判定することができる薬液滴下装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、薬液滴下装置は、装着部と、載置部と、インターフェースと、制御部と、を備える。装着部は、アクチュエータの動作によって2つ以上のノズルから同時に薬液を吐出する薬液吐出装置が装着される。載置台は、薬液が吐出される検査媒体が載置される。インターフェースは、薬液の種類を取得する。制御部は、薬液の種類に基づいて薬液によって検査媒体に形成されるドット滴の液体面が検査媒体と成す接触角を取得し、同時に薬液を吐出し隣接する前記ノズルの間の距離と薬液によって前記検査媒体に形成されるドット滴の液体面が前記検査媒体と成す接触角とから吐出する薬液の体積を算出し、体積の液滴を前記ノズルから吐出させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る吐出システムの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る薬液吐出装置の上面(薬液保持容器側)図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る薬液吐出装置の下面(薬液吐出側)図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る図2のF4-F4線断面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る図4のF5-F5線断面図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る図5のF6-F6線断面図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る図5のF7-F7線断面図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る吐出システムの制御系を示すブロック図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るドット滴の形状を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係るドット滴の形状を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る検査紙の例を示す図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る薬液滴下装置の動作例を示すフローチャートである。
図13図13は、第2の実施形態に係る吐出システムの概略構成を示す平面図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る吐出システムの概略構成を示す正面図である。
図15図15は、第2の実施形態に係る吐出システムの制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際のものと異なる個所があるが、これらは適宜、設計変更することができる。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
実施形態に係る吐出システムは、ピエゾジェット方式で所定の薬液を吐出する。
【0011】
実施形態の吐出システムの物理的な構成例について図1乃至図7を参照して説明する。図1は、吐出システム500の概略構成を示す斜視図である。図2は、薬液吐出装置2の上面図である。図3は、薬液吐出装置2の液滴を吐出する面である下面図を示す。図4は、図2のF4-F4線の薬液吐出アレイ27の液滴を吐出する側の平面図を示す。図5は、図4のF5-F5線断面図である。図6は、図5のF6-F6線断面図である。図7は、図5のF7-F7線断面図である。
【0012】
図1に示すように、吐出システム500は、薬液滴下装置1及び薬液吐出装置2などから構成される。なお、吐出システム500は、図1に示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、特定の構成を除外したりしてもよい。
【0013】
薬液滴下装置1は、薬液吐出装置2を制御して薬液吐出装置2に充填された薬液を滴下する。実施形態では、薬液滴下装置1は、1536穴のマイクロプレート4(分注部)へ薬液を滴下(分注)するものとする。
【0014】
薬液滴下装置1は、矩形平板状の基台3と、薬液吐出装置2を装着する装着モジュール5(装着部)と、検査紙載置台41とを有する。ここでは、基台3の前後方向をX方向、基台3の左右方向をY方向と称する。X方向とY方向とは直交する。
【0015】
マイクロプレート4は、基台3に固定されている。基台3の上には、マイクロプレート4を着脱可能に取り付ける枠状の取り付け部材4aが設けられている。基台3の上には、マイクロプレート4の取り付け部材4aの両側に、X方向に延設された左右一対のX方向ガイドレール6a及び6bが設けられている。各X方向ガイドレール6a及び6bの両端部は、基台3上に突設された固定台7a及び7bに固定されている。
【0016】
X方向ガイドレール6a及び6b間には、Y方向に延設されたY方向ガイドレール8が架設されている。Y方向ガイドレール8の両端は、X方向ガイドレール6a及び6bに沿ってX方向に摺動可能なX方向移動台9にそれぞれ固定されている。
【0017】
Y方向ガイドレール8には、装着モジュール5がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動可能なY方向移動台10が設けられている。Y方向移動台10には、装着モジュール5が装着されている。装着モジュール5には、薬液吐出装置2が固定されている。
【0018】
Y方向移動台10がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動する動作と、X方向移動台9がX方向ガイドレール6a及び6bに沿ってX方向に移動する動作との組み合わせにより、薬液吐出装置2は、直交するXY方向の任意の位置に移動可能に支持される。
【0019】
装着モジュール5には、薬液吐出装置2を固定するスリット32が形成されている。スリット32の前面開口部側から薬液吐出装置2がスリット32の内部に挿入されると、薬液吐出装置2は、薬液滴下装置1に固定される。
【0020】
装着モジュール5は、駆動回路11、画像撮影部50及びリーダ60など備える。
駆動回路11は、後述するプロセッサ15からの信号に基づいて薬液吐出装置2を駆動させる。たとえば、駆動回路11は、薬液吐出装置2から薬液を吐出させるため電圧などを薬液吐出装置2へ供給する。
【0021】
リーダ60は、薬液吐出装置2の後述するコード29を読み取る読取部である。リーダ60は、コード29を撮影しデコードする。リーダ60は、デコード結果をプロセッサ15に送信する。
【0022】
たとえば、リーダ60は、CCDなどの撮影部などを有する。また、リーダ60は、コード29を照らすライトなどを備えてもよい。
【0023】
リーダ60は、薬液吐出装置2のコード29の位置に対応した位置に設置される。即ち、リーダ60は、薬液吐出装置2が装着モジュール5にセットされた場合に、コード29を読取可能な位置に設置されている。
【0024】
画像撮影部50は、後述する検査紙40の上に薬液吐出装置2から吐出された液滴によって生じた検査パターンを撮影する。画像撮影部50は、撮影した画像をプロセッサ15に送信する。たとえば、画像撮影部50は、CCDカメラ、又は、ズーム調整レンズが搭載された小型マイクロスコープ等である。
【0025】
検査紙載置台41は、検査紙40(検査媒体)を載置する台である。検査紙載置台41は、基台3の上の薬液吐出装置2が移動可能な領域に配置されている。ここでは、検査紙載置台41は、マイクロプレート4からY方向に移動した位置に配置されている。
【0026】
検査紙40は、薬液吐出装置2が有する複数のノズルから吐出された液滴によってドット滴を形成する。
【0027】
検査紙40は、液滴を受容する受容層を有する。たとえば、受容層は、透光性を有する液滴を受容した箇所が着色又は変色する特性を有する。この検査紙40は、一例としてSpraying Systems社の感水紙を用いた。
【0028】
この検査紙40は、通常時(非検査時)は薄黄色であるが、液体が付着した箇所において濃青色に変色する。検査紙40は、水、リン酸緩衝生理食塩水とグリセリン水溶液の水溶液だけでなく、有機溶剤であるジメチルスルホキシドを滴下した際も、滴下した箇所において濃青色に変色する。検査紙40上に付着した液滴は、ほぼドーム(半球)形状を維持する。付着した液滴が揮発しても検査紙40の上の濃青色の検査パターンが維持される。
【0029】
検査媒体の材質や形態については特に限定されない。滴下した液滴を吸収しないガラス板、金属板、合成樹脂シートのような非吸収メディアでもよい。また、滴下直後の液滴は、検査媒体上にドーム形状を形成するが、時間の経過とともに検査媒体に吸収される紙等の吸収メディアでもよく、材質や形状を問わず様々な媒体が対象となる。
【0030】
図1に示すように、検査紙載置台41は、検査紙40を検査紙載置台41に固定するための検査紙保持部材42を有する。たとえば、検査紙保持部材42は、長方形形状の文鎮から構成される。検査紙保持部材42は、検査紙を固定保持する機能を有していればよく、検査紙載置台41に形成されたクリップ等であっても良い。
【0031】
検査紙載置台41の高さは、マイクロプレート4のウエル開口300があるマイクロプレート4の上面部とほぼ同じ高さにすることが好ましい。この場合、薬液吐出装置2がマイクロプレート4のウエル開口300内へ溶液滴を滴下する高さと検査紙載置台41上の検査紙40へ溶液滴を滴下する高さを変更する必要がない。
【0032】
薬液吐出装置2は、薬液滴下装置1の制御に基づいて薬液を吐出する。
薬液吐出装置2は、矩形板状の板体である平板状のベース部材21を有する。図2に示すようにベース部材21の表面側には、複数の薬液保持容器22がY方向に一列に並設される。実施形態では、薬液吐出装置2は、8個の薬液保持容器22を有するが、個数は8個に限らない。薬液保持容器22は、図4に示すように上面が開口された有底円筒形状の容器である。ベース部材21の表面側には、各薬液保持容器22と対応する位置に円筒形状の薬液保持容器用凹陥部21aが形成される。
【0033】
薬液保持容器22の底部は、薬液保持容器用凹陥部21aに接着固定されている。さらに、薬液保持容器22の底部には、中心位置に薬液出口となる下面開口部22aが形成されている。薬液保持容器22の上面開口部22bの開口面積は、薬液出口の下面開口部22aの開口面積よりも大きくなっている。
【0034】
また、図2に示すように、ベース部材21の両端には、装着モジュール5へ装着固定させるための装着固定用切欠き28がそれぞれ形成されている。装着固定用切欠き28は、装着モジュール5に係合する。ベース部材21の2つの切欠き28は、半長円形の切欠き形状に形成されている。なお、装着固定用切欠き28は、半円形、半楕円形又は三角形の切欠き形状等であってもよい。実施形態では2つの切欠き28の形状は、互いに異なる。これにより、ベース部材21の左右の形状が異なり、ベース部材21の姿勢の確認が行いやすくなっている。
【0035】
コード29は、薬液吐出装置2を特定する識別子(識別情報)を示す。たとえば、コード29は、識別子としての文字列、数値又はそれらの組合せをエンコードして生成される。即ち、コード29は、デコードされると薬液吐出装置2を特定する識別子を示すものである。コード29は、一次元コード又は2次元コードなどである。
コード29は、薬液吐出装置2の製造時などにおいて、予め薬液吐出装置2に付与される。
【0036】
図3に示すようにベース部材21の裏面側には、薬液保持容器22と同数の電装基板23がY方向に一列に並設されている。電装基板23は、矩形状の平板部材である。図4に示すように、ベース部材21の裏面側には、電装基板23の装着用の矩形状の電装基板用凹陥部21bと、電装基板用凹陥部21bと連通する薬液吐出アレイ部開口21dとが形成されている。電装基板用凹陥部21bの基端部は、ベース部材21の図3中で上端部近傍位置(図4中で右端部近傍位置)まで延設されている。図4に示すように、電装基板用凹陥部21bの先端部は、薬液保持容器22の一部と重なる位置まで延設されている。電装基板23は、電装基板用凹陥部21bに接着固定されている。
【0037】
電装基板23には、電装基板用凹陥部21bとの接着固定面とは反対側の面に電装基板配線24がパターニング形成されている。電装基板配線24は、配線パターン24a、24b及び24cなどから構成される。配線パターン24a、24b及び24cの一端には、配線ワイヤ12を通じて駆動素子130(第1の駆動素子130a及び第2の駆動素子130b)に接続する電極接続端子26が形成されている。配線パターン24a、24b及び24cは、電極接続端子26を介して、図5に示される第1の上部電極133(第1の導電線)、下部電極131及び第2の上部電極134(第2の導電線)にそれぞれ接続されている。
【0038】
電装基板配線24の一端部には、駆動回路11からの駆動信号を入力するための制御信号入力端子25が形成されていれる。たとえば、制御信号入力端子25は、板バネコネクタなどと接続できる形状である。
【0039】
配線パターン24aと配線パターン24bとには、駆動回路11からの駆動信号が入力される。駆動回路11からの駆動信号は、第1の上部電極133及び下部電極131の間の電位差として入力される。
【0040】
また、配線パターン24bと配線パターン24cとには、駆動回路11からの駆動信号が入力される。即ち、駆動回路11からの駆動信号は、第2の上部電極134及び下部電極131の間の電位差として入力される。ここでは、下部電極131は、一定の電圧に維持されるものとする。
【0041】
第1の上部電極133は、電極部133a、配線部133b及び端子部133cから構成される。端子部133cは、配線部133bの一端と電気的に接続する。配線部133bの他端は、電極部133aに電気的に接続する。
【0042】
第2の上部電極134は、電極部134a、配線部134b及び端子部134cから構成される。端子部134cは、配線部134bの一端と電気的に接続する。配線部134bの他端は、電極部134aに電気的に接続する。
【0043】
第1の上部電極133と第2の上部電極134は、Pt薄膜で形成されている。他の電極材料として、Ni、Cu、Al、Ti、W、Mo、Au、SrRuO3などを利用することも可能である。他の成膜法として、蒸着、鍍金を用いることも可能である。第1の上部電極133と第2の上部電極134は、各種金属を積層して使用することもできる。
【0044】
下部電極131は、電極部131a、配線部131b及び端子部131cから構成される。端子部131cは、配線部131bの一端と電気的に接続する。配線部131bの他端は、電極部131aに電気的に接続する。
【0045】
下部電極131は、例えばスパッタリング法によりTi(チタン)とPt(白金)を積層して厚さ0.5μmに形成されている。下部電極131の膜厚は、概ね0.01~1μmの範囲となる。下部電極131は、Ni、Cu、Al、Ti、W、Mo、Au、SrRuO3等の他の材料を使用できる。下部電極131は、各種金属を積層して使用することもできる。
【0046】
また、ベース部材21には、薬液吐出アレイ部開口21dが設けられている。図3に示すように、薬液吐出アレイ部開口21dは、矩形状の開口部で、ベース部材21の裏面側に薬液保持容器用凹陥部21aと重なる位置に形成されている。
【0047】
薬液保持容器22の下面には、薬液保持容器22の下面開口部22aを覆う状態で薬液吐出アレイ27が接着固定される。薬液吐出アレイ27は、ベース部材21の薬液吐出アレイ部開口21dと対応する位置に配置されている。
【0048】
図5が示すように、薬液吐出アレイ27には、格子状に複数の第1の圧力室210a及び複数の第2の圧力室210bが形成されている。ここでは、第1の圧力室210aと第2の圧力室210bとは、4×4列に配置されている。
【0049】
複数の第1の圧力室210aは、所定の間隔で形成されている。また、複数の第1の圧力室210aは、互いに斜向かいの位置に形成されている。
【0050】
第2の圧力室210bは、第1の圧力室210aに隣接する。図5に示すように、第2の圧力室210bは、X軸方向及びY軸方向において第1の圧力室210aに隣接する。即ち、第1の圧力室210aと第2の圧力室210bとは、X軸方向及びY軸方向において交互に形成されている。
【0051】
図6に示すように薬液吐出アレイ27は、ノズルプレート100と、圧力室構造体200とが積層されて形成されている。ノズルプレート100は、薬液を吐出するノズル110(第1のノズル110a及び第2のノズル110b)と、振動板120と、駆動部である駆動素子130(第1の駆動素子130a及び第2の駆動素子130b)と、下部電極131と第1の上部電極133の配線部133b及び第2の上部電極134の配線部134bを絶縁する絶縁膜140と、保護層である保護膜150と、撥液膜160とを備える。振動板120と駆動素子130とによってアクチュエータ170が構成される。実施形態の複数のノズル110は、薬液保持容器22の薬液出口の下面開口部22aの内側に位置する。
【0052】
振動板120は、面状の駆動素子130の動作により厚み方向に変形する。薬液吐出装置2は、振動板120の変形により圧力室構造体200の圧力室210の容積の変化によって発生する圧力室210内の薬液の圧力変化により、ノズル110に供給された薬液を吐出する。
【0053】
第1の圧力室210aの容積は、第1の駆動素子130aが駆動することによって変化する。また、薬液吐出アレイ27には、第1の圧力室210aに連通する第1のノズル110aが形成されている。第1の圧力室210a内の薬液は、第1のノズル110aを通じて吐出される。第1の駆動素子130aは、電極部133a及び電極部131aに電気的に接続する。
【0054】
第2の圧力室210bの容積は、第2の駆動素子130bが駆動することによって変化する。また、薬液吐出アレイ27には、第2の圧力室210bに連通する第2のノズル110bが形成されている。第2の圧力室210b内の薬液は、第2のノズル110bを通じて吐出される。第2の駆動素子130bは、電極部134a及び電極部131aに電気的に接続する。
【0055】
即ち、第1の駆動素子130aは、第1の上部電極133及び下部電極131により、駆動回路11と電気的に接続する。また、第2の駆動素子130bは、第2の上部電極134及び下部電極131により、駆動回路11と電気的に接続する。
【0056】
複数のノズル110は、1つの1536Wellマイクロプレートのウエル開口300に対して、4×4列に配列されている。たとえば、1536Wellマイクロプレートのウエル開口300の開口サイズは、1辺が約1.7mmの正方形である。4×4列に配列された複数のノズル110の中の隣接するノズル110の中心間距離は0.25mmである。ウエル開口300内に配置された4×4列のノズル110のサイズは、X方向が0.75mm、Y方向が0.75mmであり、1536Wellマイクロプレートのウエル開口300のサイズより小さい。
【0057】
振動板120は、例えば圧力室構造体200と一体に形成されている。圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201を酸素雰囲気で加熱処理すると、シリコンウエハ201の表面にSiO2(酸化シリコン)膜が形成される。振動板120は、酸素雰囲気で加熱処理して形成されるシリコンウエハ201の表面のSiO2(酸化シリコン)膜を用いる。振動板120は、シリコンウエハ201の表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO2(酸化シリコン)膜を成膜して形成してもよい。
【0058】
振動板120の膜厚は、1~30μmの範囲が好ましい。振動板120は、SiO2(酸化シリコン)膜に代えて、SiN(窒化シリコン)等の半導体材料、或いは、Al2O3(酸化アルミニウム)等を用いることもできる。
【0059】
駆動素子130は、各ノズル110に形成されている。駆動素子130は、ノズル110を囲む円環状の形状である。駆動素子130の形状は限定されず、例えば円環の一部を切り欠いたC字状でもよい。
【0060】
図7に示すように、駆動素子130は、圧電体である圧電体膜132を挟んで電極部131aと電極部133a又は電極部134aとを備える。
【0061】
図7において、第1の駆動素子130aでは、圧電体膜132が電極部131aと電極部133aの間に形成されている。また、第2の駆動素子130bでは、圧電体膜132が電極部131aと電極部134aの間に形成されている。
【0062】
電極部131aと、圧電体膜132と、電極部133a又は電極部134aとは、ノズル110と同軸であり、同じ大きさの円形パターンである。
【0063】
圧電体膜132は、例えば厚さ2μmの圧電材料である。圧電体膜132は、PZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。圧電体膜132は、例えばノズル110と同軸であって、電極部131aと同一形状の外径が133μm、内径が42μmの円環状の形状である。圧電体膜132の膜厚は、概ね1~5μmの範囲となる。圧電体膜132は、例えばPTO(PbTiO3:チタン酸鉛)、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3)、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-PbTiO3)、ZnO、AlN等の圧電材料を用いることもできる。
【0064】
圧電体膜132は、厚み方向に分極を発生する。分極と同じ方向の電界を圧電体膜132に印加すると、圧電体膜132は、電界方向と直交する方向に伸縮する。即ち、圧電体膜132は、膜厚に対して直交する方向に収縮又は伸長する。
【0065】
ノズルプレート100は、下部電極131と第1の上部電極133又は第2の上部電極134とを絶縁する絶縁膜140を備える。絶縁膜140は、第1の駆動素子130aの形成領域においては、電極部131a、圧電体膜132及び電極部133aの周縁を覆う。また、絶縁膜140は、第2の駆動素子130bの形成領域においては、電極部131a、圧電体膜132及び電極部134aの周縁を覆う。
【0066】
また、絶縁膜140は、下部電極131の配線部131bを覆う。絶縁膜140は、第1の上部電極133の配線部133bと第2の上部電極134の配線部134bとの一部の領域で振動板120を覆う。また、絶縁膜140は、第1の上部電極133の電極部133aと配線部133bと、又は、第2の上部電極134の電極部134aと配線部134bとを電気的に接続する開口部であるコンタクト部140aを備える。
【0067】
保護膜150は、振動板120のノズル110に連通する円筒状の薬液通過部141を備える。
【0068】
ノズルプレート100は、保護膜150を覆う撥液膜160を備える。撥液膜160は、薬液をはじく特性のある例えばシリコン系樹脂をスピンコーティングして形成される。撥液膜160は、フッ素含有樹脂等の薬液をはじく特性を有する材料で形成することもできる。
【0069】
圧力室構造体200は、振動板120と反対側の面に、反り低減層である反り低減膜220を備える。圧力室構造体200は、反り低減膜220を貫通して振動板120の位置に達し、ノズル110と連通する圧力室210を備える。圧力室210は、例えばノズル110と同軸上に位置する円形に形成されている。
【0070】
圧力室210は、薬液保持容器22の下面開口部22aに連通する開口部(薬液供給口)を備える。圧力室210の開口部の幅方向のサイズDより、深さ方向のサイズLを大きくすることが好ましい。深さ方向のサイズL>幅方向のサイズDとすることにより、ノズルプレート100の振動板120の振動により、圧力室210内の薬液にかかる圧力が、薬液保持容器22へ逃げるのを遅らせる。
【0071】
圧力室210の振動板120が配置される側を第1の面200aとし、反り低減膜220が配置される側を第2の面200bとする。圧力室構造体200の反り低減膜220側には例えばエポキシ系接着剤により薬液保持容器22が接着されている。圧力室構造体200の圧力室210は、反り低減膜220側の開口部で、薬液保持容器22の下面開口部22aに連通する。
【0072】
次に、吐出システム500の制御系について説明する。
図8は、吐出システム500の制御系の構成例を示すブロック図である。図8が示すように、吐出システム500は、薬液滴下装置1、薬液吐出装置2及びホストコンピュータ18などを備える。
【0073】
ホストコンピュータ18は、オペレータからの操作に従って薬液滴下装置1を制御する。ホストコンピュータ18は、操作部18a及び表示部18bなどを備える。また、ホストコンピュータ18は、プロセッサ、RAM、ROM及びNVMなどから構成される。
【0074】
操作部18aは、オペレータの操作の入力を受け付ける。操作部18aは、たとえば、キーボード、マウス又はタッチパネルなどである。
【0075】
表示部18bは、プロセッサ15の制御により種々の情報を表示する。表示部18bは、たとえば、液晶モニタから構成される。操作部18aがタッチパネルなどで構成される場合、表示部18bは、操作部18aと一体的に形成されてもよい。
【0076】
ホストコンピュータ18は、操作部18aを通じて種々の操作を受け付ける。たとえば、ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22に薬液を充填したことを示す操作を受け付ける。また、ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22から薬液を吐出する操作を受け付ける。
【0077】
ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22から薬液を吐出する操作を受け付けると、薬液滴下装置1に薬液を吐出させる吐出信号を送信する。
なお、ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22ごとに操作を受け付けてもよい。たとえば、ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22ごとに薬液を充填したことを示す操作又は薬液を吐出する操作を受け付けてもよい。
【0078】
図8に示すように、薬液滴下装置1は、X方向移動台制御回路9a、X方向移動台モータ9b、Y方向移動台制御回路10a及びY方向移動台モータ10b、駆動回路11、プロセッサ15(制御部)、メモリ16、通信インターフェース17、画像撮影部50、画像撮影部インターフェース51、リーダ60及びリーダインターフェース59などを備える。プロセッサ15と、X方向移動台制御回路9a、Y方向移動台制御回路10a、駆動回路11、メモリ16、通信インターフェース17、画像撮影部インターフェース51及びリーダインターフェース59とは、データバスを介して互いに接続される。
【0079】
X方向移動台制御回路9aは、X方向移動台モータ9bと接続する。Y方向移動台制御回路10aは、Y方向移動台モータ10bと接続する。また、画像撮影部インターフェース51は、画像撮影部50と接続する。リーダインターフェース59は、リーダ60と接続する。
【0080】
なお、薬液滴下装置1は、図8が示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、特定の構成を除外したりしてもよい。
【0081】
プロセッサ15は、薬液滴下装置1全体の動作を制御する機能を有する。プロセッサ15は、内部キャッシュ及び各種のインターフェースなどを備えてもよい。プロセッサ15は、内部キャッシュ又はメモリ16などが予め記憶するプログラムを実行することにより種々の処理を実現する。
【0082】
なお、プロセッサ15がプログラムを実行することにより実現する各種の機能のうちの一部は、ハードウエア回路により実現されるものであってもよい。この場合、プロセッサ15は、ハードウエア回路により実行される機能を制御する。
【0083】
メモリ16は、種々のデータを格納する。たとえば、メモリ16は、制御プログラム及び制御データなどを記憶する。制御プログラム及び制御データは、薬液滴下装置1の仕様に応じて予め組み込まれる。制御プログラムは、薬液滴下装置1で実現する機能をサポートするプログラムなどである。
【0084】
また、メモリ16は、プロセッサ15の処理中のデータなどを一時的に格納する。また、メモリ16は、アプリケーションプログラムの実行に必要なデータ及びアプリケーションプログラムの実行結果などを格納してもよい。
【0085】
通信インターフェース17は、ホストコンピュータ18とデータを送受信するためのインターフェースである。たとえば、通信インターフェース17は、有線又は無線回線を介してホストコンピュータ18と接続する。たとえば、通信インターフェース17は、LAN(Local Area Network)接続などをサポートするものであってもよい。
【0086】
X方向移動台制御回路9aは、プロセッサ15からの信号に基づいてX方向移動台モータ9bを駆動する。X方向移動台制御回路9aは、X方向移動台モータ9bに信号又は電力を供給してX方向移動台モータ9bを駆動する。
【0087】
X方向移動台モータ9bは、X方向移動台9をX方向に移動させる。たとえば、X方向移動台モータ9bは、ギアなどを介してX方向移動台9に接続し、X方向移動台9をX方向に移動させる。
【0088】
Y方向移動台制御回路10aは、プロセッサ15からの信号に基づいてY方向移動台モータ10bを駆動する。Y方向移動台制御回路10aは、Y方向移動台モータ10bに信号又は電力を供給してY方向移動台モータ10bを駆動する。
【0089】
Y方向移動台モータ10bは、Y方向移動台10をY方向に移動させる。たとえば、Y方向移動台モータ10bは、ギアなどを介してY方向移動台10に接続し、Y方向移動台10をY方向に移動させる。
【0090】
画像撮影部インターフェース51は、画像撮影部50とデータを送受信するためのインターフェースである。たとえば、画像撮影部インターフェース51は、プロセッサ15の制御に従って撮影を指示する制御信号を画像撮影部50に送信する。また、画像撮影部インターフェース51は、画像撮影部50が撮影した画像をプロセッサ15に送信する。また、画像撮影部インターフェース51は、画像撮影部50に電力を供給するものであってもよい。
【0091】
リーダインターフェース59は、リーダ60とデータを送受信するためのインターフェースである。たとえば、リーダインターフェース59は、リーダ60からの識別子をプロセッサ15に送信する。また、リーダインターフェース59は、リーダ60に電力を供給するものであってもよい。
【0092】
薬液吐出装置2、駆動回路11及びリーダ60は、前述の通りである。
【0093】
次に、薬液滴下装置1が実現する機能について説明する。薬液滴下装置1が実現する機能は、プロセッサ15がメモリ16などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0094】
まず、プロセッサ15は、同時に薬液を吐出する複数のノズルの中で、隣接するノズル110間の距離Lを取得する機能を有する。
【0095】
ここでは、プロセッサ15は、所定のノズル110の中心から当該ノズル110と同時に薬液を吐出し隣接するノズル110の中心までの距離Lを取得する。
【0096】
プロセッサ15は、複数の第1のノズル110aから同時に薬液を吐出させる。また、プロセッサ15は、複数の第2のノズル110bから同時に薬液を吐出させる。即ち、プロセッサ15は、距離Lとして、隣接する第1のノズル110a間の距離(第1の距離La)及び隣接する第2のノズル110b間の距離(第2の距離Lb)を取得する。
【0097】
プロセッサ15は、ノズル110の検査を行うかを判定する。即ち、プロセッサ15は、ノズル110が不純物などによって詰まっていないかのチェックを行うか判定する。
【0098】
たとえば、プロセッサ15は、各ノズル110から各ウエル開口300に薬液を吐出させる。プロセッサ15は、薬液を吐出した回数が所定の回数に達したかを判定する。プロセッサ15は、薬液を吐出した回数が所定の回数に達したと判定すると、ノズル110の検査を行うと判定する。
【0099】
また、プロセッサ15は、ホストコンピュータ18からの信号に従って、ノズル110の検査を行うと判定してもよい。
【0100】
ノズル110の検査を行うと判定すると、プロセッサ15は、リーダ60を用いて薬液吐出装置2のコード29を読み取る。コード29を読み取ると、プロセッサ15は、コード29をデコードして得られる識別子に基づいて距離Lを取得する。
【0101】
たとえば、メモリ16は、識別子と距離Lとを対応付けたテーブルを格納する。プロセッサ15は、当該テーブルを参照して、識別子に対応する距離Lを取得する。また、プロセッサ15は、ホストコンピュータ18などの外部装置から識別子に対応する距離Lを取得してもよい。
【0102】
なお、プロセッサ15は、RF-ID又はICチップなどの無線タグから識別子を取得してもよい。たとえば、薬液吐出装置2は、無線タグを備える。プロセッサ15は、リーダを通じて無線タグから識別子を取得する。
【0103】
また、プロセッサ15は、ユーザが操作部18aなどに入力した距離Lを示す情報を取得してもよい。
【0104】
プロセッサ15が距離Lを取得する方法は、特定の方法に限定されるものではない。
【0105】
また、プロセッサ15は、薬液吐出装置2から吐出される薬液(薬液保持容器22に投入された薬液)の種類を取得する機能を有する。
【0106】
プロセッサ15は、ユーザが操作部18aなどに入力した薬液の種類を示す情報を取得する。たとえば、ユーザは、ウエル開口300への吐出動作を行う前に、ホストコンピュータ18の操作部18aに薬液の種類を入力する。プロセッサ15は、入力された種類を示す情報をホストコンピュータ18から取得する。
【0107】
また、プロセッサ15は、検査紙40上にノズル110から吐出された薬液によって形成されるドット滴同士が接触しない吐出量Vを算出する機能を有する。
【0108】
まず、プロセッサ15は、取得した薬液の種類に基づいて、ドット滴と検査紙40との接触角を取得する。接触角は、薬液によって形成されるドット滴の液体面が検査紙40と成す角度である。即ち、接触角は、検査紙40に付着したドット滴を横から観察した場合においてドット滴の端点における角度である。
【0109】
図9は、接触角が90度未満であるドット滴の状態を示す。図9では、θは、接触角を示す。また、rは、ドット滴を構成する球の半径を示す。また、図9が示すように、ドット滴の半径(ドット滴を上から見た場合における半径)は、r・sinθとなる。
【0110】
図10は、接触角が90度以上であるドット滴の状態を示す。図10では、θは、接触角を示す。また、rは、ドット滴を構成する球の半径を示す。また、図10が示すように、ドット滴の半径は、rとなる。
【0111】
たとえば、メモリ16は、薬液の種類と接触角とを対応付けたテーブルを格納する。プロセッサ15は、当該テーブルを参照して、薬液の種類に対応する接触角を取得する。また、プロセッサ15は、ホストコンピュータ18などの外部装置から薬液の種類に対応する接触角を取得してもよい。
【0112】
また、プロセッサ15は、薬液の種類及び検査紙40の種類に基づいて接触角を取得してもよい。メモリ16は、薬液の種類及び検査紙40の種類と接触角とを対応付けたテーブルを格納する。プロセッサ15は、当該テーブルを参照して、薬液の種類及び検査紙40の種類に対応する接触角を取得する。また、プロセッサ15は、ホストコンピュータ18などの外部装置から薬液の種類及び検査紙40の種類に対応する接触角を取得してもよい。
【0113】
なお、プロセッサ15は、ユーザが操作部18aなどに入力した接触角を示す情報を取得してもよい。
プロセッサ15が接触角を取得する方法は、特定の方法に限定されるものではない。
【0114】
接触角を取得すると、プロセッサ15は、距離Lと接触角とに基づいて吐出量Vを算出する。
【0115】
まず、接触角が90度未満である場合について説明する。
【0116】
ドット滴の体積は、以下の式(1)で算出される。
【0117】
【数1】
【0118】
ここで、rは、ドット滴を構成する球の半径を示す。
【0119】
式(1)から、rは、以下の式(2)で算出される。
【0120】
【数2】
【0121】
ドット滴同士が接触しないためには、ドット滴の半径の2倍が距離Lより小さければよい。即ち、2r・sinθ<Lであればよい。
【0122】
よって、以下の式(3)を満たせば、ドット滴同士が接触しない。
【0123】
【数3】
【0124】
式(3)をVについて解くと、以下の式(4)となる。
【0125】
【数4】
【0126】
プロセッサ15は、式(4)を満たす吐出量Vを算出する。
【0127】
次に、接触角が90度以上である場合について説明する。
接触角が90度以上であっても、式(1)及び式(2)は、同様である。
【0128】
ドット滴同士が接触しないためには、ドット滴の半径の2倍が距離Lより小さければよい。接触角が90度以上であるため、2r<Lであればよい。
【0129】
よって、以下の式(5)を満たせば、ドット滴同士が接触しない。
【0130】
【数5】
【0131】
式(5)をVについて解くと、以下の式(6)となる。
【0132】
【数6】
【0133】
プロセッサ15は、式(6)を満たす吐出量Vを算出する。
【0134】
ここでは、プロセッサ15は、第1の距離Laに基づいて吐出量V(第1の吐出量Va)を算出する。また、プロセッサ15は、第2の距離Lbに基づいて吐出量V(第2の吐出量Vb)を算出する。
【0135】
また、プロセッサ15は、ノズル110から吐出量Vの液滴を検査紙40に吐出させる機能を有する。
【0136】
プロセッサ15は、検査紙40において第1の領域に薬液を吐出可能な位置に薬液吐出装置2を搬送する。ここでは、プロセッサ15は、第1のノズル110aが第1の領域に吐出可能な位置に薬液吐出装置2を搬送する。
【0137】
薬液吐出装置2を搬送すると、プロセッサ15は、駆動回路11を用いて、各第1のノズル110aから検査紙40へ第1の吐出量Vaの薬液を吐出させる。たとえば、プロセッサ15は、第1のノズル110aの第1の駆動素子130aに印加する電圧を制御して、第1の吐出量Vaの薬液を吐出させる。
【0138】
第1のノズル110aから検査紙40に吐出された薬液は、検査紙40の第1の領域においてドット滴を形成する。検査紙40の第1の領域において形成された複数のドット滴は、第1の検査パターンを形成する。
【0139】
第1のノズル110aから薬液を吐出させると、プロセッサ15は、検査紙40において第2の領域に薬液を吐出可能な位置に薬液吐出装置2を搬送する。ここでは、プロセッサ15は、第2のノズル110bが第2の領域に吐出可能な位置に薬液吐出装置2を搬送する。第2の領域は、第1の領域と重なり合わない領域である。
【0140】
薬液吐出装置2を搬送すると、プロセッサ15は、駆動回路11を用いて、各第2のノズル110bから検査紙40へ第2の吐出量Vbの薬液を吐出させる。たとえば、プロセッサ15は、第2のノズル110bの第2の駆動素子130bに印加する電圧を制御して、第2の吐出量Vbの薬液を吐出させる。
【0141】
第2のノズル110bから検査紙40に吐出された薬液は、検査紙40の第2の領域においてドット滴を形成する。検査紙40の第2の領域において形成された複数のドット滴は、第2の検査パターンを形成する。
【0142】
図11は、検査パターンが形成された検査紙40の例を示す。図11に示すように、検査紙40は、第1の領域300aと第2の領域300bとを備える。
【0143】
第1の領域300aには、第1の検査パターン400aが形成される。第1の検査パターン400aは、各第1のノズル110aの配置と同様の位置に形成されるドット滴から構成される。また、第2の領域300bには、第2の検査パターン400bが形成される。第2の検査パターン400bは、各第2のノズル110bの配置と同様の位置に形成されるドット滴から構成される。
【0144】
また、プロセッサ15は、検査紙40に形成された検査パターンに基づいて各ノズル110を検査する機能を有する。
【0145】
プロセッサ15は、画像撮影部50を用いて検査紙40に形成された検査パターンを撮影する。検査パターンを撮影すると、プロセッサ15は、所定の画像処理アルゴリズムに従って撮影した画像に基づいて各ノズル110を検査する。即ち、プロセッサ15は、各ノズル110が詰まっていないか(薬液を吐出できているか)を検査する。
【0146】
たとえば、プロセッサ15は、画像処理アルゴリズムに従って、検査パターンを構成するドット滴をカウントする。プロセッサ15は、ドット滴の個数が所定の個数(たとえば、ノズル110の個数)より少ない場合、いくつかのノズル110が詰まっていると判定する。
【0147】
プロセッサ15は、ノズル110が詰まっていると判定すると、ホストコンピュータ18などに、ノズル110が詰まっていることを示すエラーを出力する。
【0148】
また、プロセッサ15は、各ノズル110が詰まっていないと判定すると、再びウエル開口300への吐出動作を行ってもよい。また、プロセッサ15は、ホストコンピュータ18などに、各ノズル110が詰まっていないことを示す情報を出力してもよい。
【0149】
次に、薬液滴下装置1の動作例について説明する。
図12は、薬液滴下装置1の動作例について説明するためのフローチャートである。
【0150】
ここでは、薬液滴下装置1に薬液吐出装置2がセットされ、薬液保持容器22には、薬液が充填されているものとする。
【0151】
まず、薬液滴下装置1のプロセッサ15は、ノズル110の検査を行うか判定する(ACT11)。ノズル110の検査を行わないと判定すると(ACT11、NO)、プロセッサ15は、ACT11に戻る。
【0152】
ノズル110の検査を行うと判定すると(ACT11、YES)、プロセッサ15は、同時に吐出し隣接するノズル110間の距離L(第1の距離La及び第2の距離Lb)を取得する(ACT12)。
【0153】
距離Lを取得すると、プロセッサ15は、薬液吐出装置2から吐出される薬液の種類を取得する(ACT13)。薬液の種類を取得すると、プロセッサ15は、種類などに基づいて接触角を取得する(ACT14)。
【0154】
接触角を取得すると、プロセッサ15は、接触角及び距離Lなどに基づいて吐出量V(第1の吐出量Va及び第2の吐出量Vb)を算出する(ACT15)。吐出量Vを算出すると、プロセッサ15は、第1のノズル110aが検査紙40の第1の領域300aに薬液を吐出可能な位置に薬液吐出装置2を搬送する(ACT16)。
【0155】
薬液吐出装置2を搬送すると、プロセッサ15は、第1のノズル110aから検査紙40に第1の吐出量Vaの薬液を吐出させる(ACT17)。第1のノズル110aから検査紙40に第1の吐出量Vaの薬液を吐出させると、プロセッサ15は、第2のノズル110bが検査紙40の第2の領域300bに薬液を吐出可能な位置に薬液吐出装置2を搬送する(ACT18)。
【0156】
薬液吐出装置2を搬送すると、プロセッサ15は、第2のノズル110bから検査紙40に第2の吐出量Vbの薬液を吐出させる(ACT19)。第2のノズル110bから検査紙40に第2の吐出量Vbの薬液を吐出させると、プロセッサ15は、画像撮影部50を用いて検査紙40を撮影する(ACT20)。
【0157】
検査紙40を撮影すると、プロセッサ15は、撮影された画像に基づいて各ノズル110が詰まっていないか判定する(ACT21)。ノズル110が詰まっていると判定すると(ACT22)、プロセッサ15は、ノズル110が詰まっていることを示すエラーを出力する(ACT23)。
【0158】
ノズル110が詰まっていないと判定した場合(ACT22、NO)、又は、ノズル110が詰まっていることを示すエラーを出力した場合(ACT23)、プロセッサ15は、動作を終了する。
【0159】
なお、プロセッサ15は、ACT12、ACT13、ACT14及びACT15をACT11の前に実行してもよい。
【0160】
また、プロセッサ15は、第1のノズル110aと第2のノズル110bとから同時に検査紙40に薬液を吐出させてもよい。この場合、プロセッサ15は、隣接する第1のノズル110a及び第2のノズル110bの間の距離を距離Lとして取得する。また、プロセッサ15は、距離Lに基づく吐出量Vを吐出させる。
【0161】
また、ノズル110は、3つ以上のグループに分割されるものであってもよい。即ち、同時に薬液を吐出するノズル110のグループが3つ以上存在してもよい。
【0162】
また、検査紙40は、取り付け部材4aに載置されてもよい。この場合、ユーザは、ノズル110の検査が開始する前に、マイクロプレート4を検査紙40に付け替える。また、この場合、薬液滴下装置1は、検査紙載置台41を備えなくともよい。すなわち、取り付け部材4aは、マイクロプレート4(分注部)を載置するだけでなく、検査紙40を載置する載置部ともなる。
【0163】
以上のように構成された薬液滴下装置は、薬液の種類などに応じた接触角とノズル間の距離とに基づいて、検査紙に形成されるドット滴が接触しない吐出量の薬液を吐出する。その結果、薬液滴下装置は、1つのノズルに対して1つのドット滴を検査紙に形成することができる。よって、薬液滴下装置は、検査紙に基づいて、薬液吐出装置の各ノズルから薬液が吐出されているかを適切に判定することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態の吐出システム600について、図13乃至図15を参照して説明する。
【0164】
第2の実施形態に係る吐出システム600では、薬液滴下装置71において、マイクロプレート4と検査紙載置台41が移動する点で第1の実施形態に係る吐出システム500と異なる。なお、図13乃至図15中で、図1乃至図8と同一部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0165】
図13は、吐出システム600の概略構成を示す平面図である。図14は、吐出システム600の正面図である。図15は、吐出システム600の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0166】
実施形態では、マイクロプレート4と検査紙載置台41は、平板状のY方向移動ステージ61に固定されている。Y方向移動ステージ61には、マイクロプレート4を着脱可能に取り付ける枠状の取り付け部材4aが設けられている。
【0167】
基台3の上には、両側部に、X方向に延設された左右一対のX方向ガイドレール62a及び62bを有する。各X方向ガイドレール62a及び62bの両端部(図13中で上下の両端部)は、基台3上に突設された、固定台63a及び63bに固定されている。
【0168】
X方向ガイドレール62a及び62b間には、Y方向に延設された2本のY方向ガイドレール64a及び64bが架設されている。2本のY方向ガイドレール64a及び64bは、X方向に間隔を存して平行に配置されている。2本のY方向ガイドレール64a及び64bの両端は、X方向ガイドレール62a及び62bに沿ってX方向に摺動可能なX方向移動台65にそれぞれ固定されている。4個のX方向移動台65は、同時に摺動する。
【0169】
2本のY方向ガイドレール64a及び64bには、Y方向移動ステージ61が固定されている。これにより、Y方向移動ステージ61が2本のY方向ガイドレール64a及び64bに沿ってY方向に移動する動作と、X方向移動台65がX方向ガイドレール62a及び62bに沿ってX方向に移動する動作との組み合わせにより、マイクロプレート4と検査紙載置台41とは、直交するXY方向の任意の位置に移動可能に支持されている。
【0170】
また、基台3の上には、Y方向移動ステージ61の移動範囲と干渉しない位置に薬液吐出装置2を装着する装着モジュール5を固定する固定機構部66が設けられている。固定機構部66は、図14に示すように2本の支柱67a及び67bと、Y方向に延設された1つの横フレーム68を有する。2本の支柱67a及び67bは、基台3のY方向の両端部に鉛直方向に立設されている。横フレーム68は、2本の支柱67a及び67bの上端部間に架設されている。横フレーム68のほぼ中央位置には、装着モジュール5が固定されている。装着モジュール5には、薬液吐出装置2が固定されている。さらに、装着モジュール5には、薬液吐出装置2の取付け部である装着モジュール5の一部に画像撮影部50が装着されている。
【0171】
また、図15が示すように、薬液滴下装置71は、Y方向移動台制御回路10a及びY方向移動台モータ10bの代わりにY方向ステージ制御回路69a及びY方向ステージモータ69bを備える。プロセッサ15と、Y方向ステージ制御回路69aとは、データバスを介して互いに接続される。また、Y方向ステージ制御回路69aは、Y方向ステージモータ69bと接続する。
【0172】
Y方向ステージ制御回路69aは、プロセッサ15からの信号に基づいてY方向ステージモータ69bを駆動する。Y方向ステージ制御回路69aは、Y方向ステージモータ69bに信号又は電力を供給してY方向ステージモータ69bを駆動する。
【0173】
Y方向ステージモータ69bは、Y方向移動ステージ61をY方向に移動させる。たとえば、Y方向ステージモータ69bは、ギアなどを介してY方向移動ステージ61に接続し、Y方向移動ステージ61をY方向に移動させる。
【0174】
また、第2の実施形態では、X方向移動台モータ9bは、X方向移動台65をX方向に移動させる。たとえば、X方向移動台モータ9bは、ギアなどを介してX方向移動台9に接続し、X方向移動台65をX方向に移動させる。
【0175】
薬液滴下装置71の機能及び動作例については、第1の実施形態に係る薬液滴下装置1と同様であるため説明を省略する。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
なお、以下に本願の出願当初の特許請求の範囲の記載を付記する。
[C1]
アクチュエータの動作によって2つ以上のノズルから同時に薬液を吐出する薬液吐出装置が装着される装着部と、
薬液が吐出される検査媒体が載置される載置部と、
同時に薬液を吐出し隣接する前記ノズルの間の距離と薬液によって前記検査媒体に形成されるドット滴の液体面が前記検査媒体と成す接触角とに基づく体積の液滴を前記ノズルから吐出させる制御部と、
を備える薬液滴下装置。
[C2]
薬液の種類を取得するインターフェースを備え、
前記制御部は、薬液の種類に基づいて前記接触角を取得する、
請求項1に記載の薬液滴下装置。
[C3]
前記薬液吐出装置から識別子を読み取るリーダを備え、
前記制御部は、前記識別子に基づいて前記距離を取得する、
請求項1又は2に記載の薬液滴下装置。
[C4]
前記ノズルから吐出される薬液を分注する分注部を備え、
前記制御部は、前記ノズルから前記分注部に薬液を吐出させる、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の薬液滴下装置。
[C5]
前記液滴によって前記検査媒体に形成される検査パターンを撮影する画像撮影部を備え、
前記制御部は、
前記画像撮影部を用いて、前記検査パターンを撮影し、
撮影された画像に基づいて、前記ノズルから薬液が吐出されているか判定する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の薬液滴下装置。
【符号の説明】
【0177】
1、71…薬液滴下装置、2…薬液吐出装置、3…基台、4…マイクロプレート、4a…取り付け部材、5…装着モジュール、11…駆動回路、12…配線ワイヤ、15…プロセッサ、16…メモリ、17…通信インターフェース、18…ホストコンピュータ、22…薬液保持容器、22a…下面開口部、22b…上面開口部、23…電装基板、24…電装基板配線、24a…配線パターン、24b…配線パターン、24c…配線パターン、25…制御信号入力端子、26…電極接続端子、27…薬液吐出アレイ、28…装着固定用切欠き、29…コード、32…スリット、40…検査紙、41…検査紙載置台、42…検査紙保持部材、50…画像撮影部、60…リーダ、100…ノズルプレート、110…ノズル、110a…第1のノズル、110b…第2のノズル、120…振動板、130…駆動素子、130a…第1の駆動素子、130b…第2の駆動素子、131…下部電極、132…圧電体膜、133…第1の上部電極、134…第2の上部電極、140…絶縁膜、140a…コンタクト部、141…薬液通過部、150…保護膜、160…撥液膜、170…アクチュエータ、200…圧力室構造体、210…圧力室、210a…第1の圧力室、210b…第2の圧力室、300…ウエル開口、300a…第1の領域、300b…第2の領域、400a…第1の検査パターン、400b…第2の検査パターン、500、600…吐出システム。
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
図10
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図15