(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ウルトラファインバブル含有液の作製装置、及びウルトラファインバブル含有液の作製方法
(51)【国際特許分類】
B01B 1/00 20060101AFI20240213BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20240213BHJP
B01F 23/20 20220101ALI20240213BHJP
B01F 23/2375 20220101ALI20240213BHJP
B01F 25/50 20220101ALI20240213BHJP
B01F 35/90 20220101ALI20240213BHJP
【FI】
B01B1/00
B01F21/00
B01F23/20
B01F23/2375
B01F25/50
B01F35/90
(21)【出願番号】P 2019199116
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 顕季
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 輝
(72)【発明者】
【氏名】今仲 良行
(72)【発明者】
【氏名】柳内 由美
(72)【発明者】
【氏名】石永 博之
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 照夫
(72)【発明者】
【氏名】樫野 俊雄
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204395795(CN,U)
【文献】特開2007-021392(JP,A)
【文献】特開2019-042732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0032233(US,A1)
【文献】特開昭60-019004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-1/78
B01B1/00-1/08
B01D1/00-8/00
B01D19/00-19/04
B01F21/00-25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体入力部から供給された液体を用いてウルトラファインバブルを含有するウルトラファインバブル含有液を作製し、当該作製したウルトラファインバブル含有液を液体出力部に出力する作製部
と、
前記作製部の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記作製部は、
独立して動作可能な複数のウルトラファインバブル生成部
と、
前記液体入力部から供給された液体に気体を溶解させて前記ウルトラファインバブル生成部に供給する少なくとも1つの気体溶解部と、
前記ウルトラファインバブル生成部によって作製されたウルトラファインバブル含有液を前記気体溶解部に戻して循環させる、独立して動作可能な少なくとも1つの循環ポンプと、を含み、
前記複数のウルトラファインバブル生成部のそれぞれは、前記液体入力部及び前記液体出力部に対し、独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられており、
前記気体溶解部は、前記液体入力部及び前記液体出力部に対して連通、遮断の切換えが可能に設けられており、
前記循環ポンプは、前記液体入力部及び前記液体出力部に対して連通、遮断の切換えが可能に設けられていることを特徴とするウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項2】
前記作製部は、独立して動作可能な複数の前記気体溶解部を含み、
複数の前記気体溶解部のそれぞれは、前記液体入力部及び前記液体出力部に対し、独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられていることを特徴とする
請求項1に記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項3】
前記作製部は、独立して動作可能な複数の前記循環ポンプを含み、
複数の前記循環ポンプのそれぞれは、前記液体入力部及び前記液体出力部に対し、独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられていることを特徴とする
請求項1に記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項4】
前記制御手段は、複数の前記気体溶解部の一部に動作不良が生じている場合、動作不良が生じていない他の前記気体溶解部の動作率を増加させることを特徴とする
請求項1または2に記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項5】
前記制御手段は、複数の前記循環ポンプの一部に動作不良が生じている場合、動作不良が生じていない他の前記
循環ポンプの動作率を増加させることを特徴とする
請求項1または3に記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項6】
前記制御手段は、複数の前記気体溶解部それぞれの稼動開始タイミングを異ならせることを特徴とする
請求項1、2または4のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項7】
前記制御手段は、複数の前記循環ポンプそれぞれの稼動開始タイミングを異ならせることを特徴とする
請求項1、3または5のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項8】
前記制御手段は、複数のウルトラファインバブル生成部、複数の前記気体溶解部、複数の前記循環ポンプそれぞれの寿命に基づく交換時期が重ならないように、複数のウルトラファインバブル生成部、複数の前記気体溶解部、複数の循環ポンプの動作を制御することを特徴とする
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項9】
液体入力部から供給された液体を用いてウルトラファインバブルを含有するウルトラファインバブル含有液を作製し、当該作製したウルトラファインバブル含有液を液体出力部に出力する作製部と、
前記作製部の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記作製部は、独立して動作可能な複数のウルトラファインバブル生成部を含み、前記複数のウルトラファインバブル生成部のそれぞれは、前記液体入力部及び前記液体出力部に対し、独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられており、
前記制御手段は、複数の前記ウルトラファインバブル生成部の一部に動作不良が生じている場合、動作不良が生じていない他の前記ウルトラファインバブル生成部の動作率を増加させることを特徴とす
るウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項10】
液体入力部から供給された液体を用いてウルトラファインバブルを含有するウルトラファインバブル含有液を作製し、当該作製したウルトラファインバブル含有液を液体出力部に出力する作製部と、
前記作製部の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記作製部は、独立して動作可能な複数のウルトラファインバブル生成部を含み、前記複数のウルトラファインバブル生成部のそれぞれは、前記液体入力部及び前記液体出力部に対し、独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられており、
前記制御手段は、前記複数のウルトラファインバブル生成部それぞれの稼動開始タイミングを異ならせることを特徴とす
るウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項11】
前記ウルトラファインバブル生成部から出力されたウルトラファインバブル含有液を貯蔵し、当該貯蔵した液体を前記液体出力部に出力するバッファ槽をさらに設けたこと特徴とする
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項12】
前記ウルトラファインバブル生成部は、前記液体に膜沸騰を生じさせる発熱素子によって液体にウルトラファインバブルを生成することを特徴とする
請求項1ないし11のいずれか記載のウルトラファインバブル含有液の作製装置。
【請求項13】
液体入力部及び液体出力部に対し独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられた
少なくとも1つの気体溶解部によって、前記液体入力部から供給された液体に気体を溶解させる溶解工程と、
前記液体入力部及び前記液体出力部に対して連通、遮断の切換えが可能に設けられ、独立して動作可能な複数のウルトラファインバブル生成部
によって、前記気体溶解部から供給された液体中にウルトラファインバブルを生成する工程と、
前記液体入力部及び前記液体出力部に対して連通、遮断の切換えが可能に設けられ、独立して動作可能な少なくとも1つのポンプによって、前記ウルトラファインバブル生成部から前記気体溶解部に液体を戻して循環させる循環工程と、
前記ウルトラファインバブル生成部によって作製されたウルトラファインバブル含有液を前記液体出力部に出力する工程と、
を備えることを特徴とするウルトラファインバブル含有液の作製方法。
【請求項14】
液体入力部及び液体出力部に対し独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられた複数のウルトラファインバブル生成部のそれぞれに液体を供給する工程と、
前記液体入力部から供給された液体を用いて、前記複数のウルトラファインバブル生成部のそれぞれが独立してウルトラファインバブル含有液を作製する工程と、
前記ウルトラファインバブル生成部によって作製されたウルトラファインバブル含有液を前記液体出力部に出力する工程と、
を備え、
複数の前記ウルトラファインバブル生成部の一部に動作不良が生じている場合、動作不良が生じていない他の前記ウルトラファインバブル生成部の動作率を増加させることを特徴とするウルトラファインバブル含有液の作製方法。
【請求項15】
液体入力部及び液体出力部に対し独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられた複数のウルトラファインバブル生成部のそれぞれに液体を供給する工程と、
前記液体入力部から供給された液体を用いて、前記複数のウルトラファインバブル生成部のそれぞれが独立してウルトラファインバブル含有液を作製する工程と、
前記ウルトラファインバブル生成部によって作製されたウルトラファインバブル含有液を前記液体出力部に出力する工程と、
を備え、
前記複数のウルトラファインバブル生成部それぞれの稼動開始タイミングを異ならせることを特徴とするウルトラファインバブル含有液の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直径が1.0μm未満のウルトラファインバブルを含有したウルトラファインバブル含有液を作製するウルトラファインバブル含有液作製装置、及びウルトラファインバブル含有液作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直径がマイクロメートルサイズのマイクロバブル、及び直径がナノメートルサイズのナノバブル等の微細なバブルの特性を応用する技術が開発されてきている。特に、直径が1.0μm未満のウルトラファインバブル(Ultra Fine Bubble;以下、「UFB」ともいう)については、その有用性が様々な分野において確認されている。
【0003】
特許文献1には、液体入力槽から供給された液体にUFB生成手段でUFBを発生させた後、UFB含有液を液体出力槽に出力するという経路を備える。さらに、液体出力槽に出力された液体を再び液体入力槽へと還流させる循環経路を形成し、UFB生成手段に慰してUFB含有液を繰り返し通過させることにより、UFBの含有濃度を高めることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の装置では、UFB含有液の作製中に、UFB生成手段やポンプ等の構成要素が故障した場合、故障部分の交換や修理等を行なう際にUFBの生成が中断してしまい、UFB含有液を供給できない状態に陥る可能性がある。現在、UFB含有液は、様々な装置への供給に利用されており、UFBの供給が遮断されることにより、それらの装置の機能も停止せざるを得ないこととなる。特に、UFB含有液を用いる医療機器や洗浄装置等においてはUFB含有液が継続して供給されることが望まれる。
【0006】
よって本発明は、UFB含有液の供給が停止する可能性を低減することが可能なウルトラファインバブル含有液作製装置及びウルトラファインバブル含有液作製方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体入力部から供給された液体を用いてウルトラファインバブルを含有するウルトラファインバブル含有液を作製し、当該作製したウルトラファインバブル含有液を液体出力部に出力する作製部と、前記作製部の動作を制御する制御手段と、を備え、前記作製部は、独立して動作可能な複数のウルトラファインバブル生成部と、前記液体入力部から供給された液体に気体を溶解させて前記ウルトラファインバブル生成部に供給する少なくとも1つの気体溶解部と、前記ウルトラファインバブル生成部によって作製されたウルトラファインバブル含有液を前記気体溶解部に戻して循環させる、独立して動作可能な少なくとも1つの循環ポンプと、を含み、前記複数のウルトラファインバブル生成部のそれぞれは、前記液体入力部及び前記液体出力部に対し、独立して連通、遮断の切換えが可能に設けられており、前記気体溶解部は、前記液体入力部及び前記液体出力部に対して連通、遮断の切換えが可能に設けられており、前記循環ポンプは、前記液体入力部及び前記液体出力部に対して連通、遮断の切換えが可能に設けられていることを特徴とするウルトラファインバブル含有液の作製装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、UFB含有液の供給が停止する可能性を低減することが可能なウルトラファインバブル含有液作製装置及びウルトラファインバブル含有液作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】溶解ユニットの概略構成図及び液体の溶解状態を説明するための図である。
【
図4】T-UFB生成ユニットの概略構成図である。
【
図6】発熱素子における膜沸騰の様子を説明するための図である。
【
図7】膜沸騰泡の膨張に伴ってUFBが生成される様子を示す図である。
【
図8】膜沸騰泡の収縮に伴ってUFBが生成される様子を示す図である。
【
図9】液体の再加熱によってUFBが生成される様子を示す図である。
【
図10】膜沸騰で生成される泡の消泡時の衝撃波によってUFBが生成される様子を示す図である。
【
図12】本実施形態におけるUFB液作製装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図13】
図12に示すUFB液作製装置の構成をより詳細に示すブロック図である。
【
図14】第1実施形態の変形例の構成を示すブロック図である。
【
図15】第1実施形態により実行される制御を示すタイミングチャートである。
【
図16】本実施形態における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【
図17】第1実施形態の制御動作を示すフローチャートであり、メインフローを示す。
【
図18】第1実施形態の制御動作を示すフローチャートであり、サブフローを示す。
【
図19】第2実施形態により実行される制御を示すタイミングチャートである。
【
図20】第2実施形態により実行される制御を示すタイミングチャートである。
【
図21】第2実施形態の変形例により実行される制御のタイミングチャートである。
【
図22】第2実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
【
図23】第3実施形態により実行される制御を示すタイミングチャートである。
【
図24】第3実施形態の制御動作を示すフローチャートである。
【
図25】S1018及びS1004の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図26】第4実施形態により実行される制御を示すタイミングチャートである。
【
図27】第5実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図28】第6実施形態におけるUFB液作製装置の構成を示すブロック図である。
【
図29】第6実施形態により実行される制御を示すタイミングチャートを示す。
【
図30】第6実施形態の制御動作を示すフローチャートである。
【
図31】S1616で行う処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図32】第7実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図33】他の実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図34】従来のUFB液作製装置の構成を示すブロック図である。
【
図35】従来のUFB液作製装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(UFB液作製装置の基本構成)
図1は、本発明に適用可能なUFB液作製装置1の基本構成の一例を示す図である。UFB液作製装置1は、前処理ユニット100、溶解ユニット200、T-UFB生成ユニット300、後処理ユニット400、及び回収ユニット500を含む。前処理ユニット100に供給された液体道液体などの液体Wは、上記の順番で各ユニット固有の処理が施され、T-UFB含有液として回収ユニット500で回収される。以下、各ユニットの機能及び構成について説明する。
【0012】
図2は、前処理ユニット100の概略構成図である。本実施形態の前処理ユニット100は、供給された液体Wに対し脱気処理を行う。前処理ユニット100は、主に、脱気容器101、シャワーヘッド102、減圧ポンプ103、液体導入路104、液体循環路105、液体導出路106を有する。例えば液体道液体のような液体Wは、開閉バルブ109を介して、液体導入路104から脱気容器101に供給される。この際、脱気容器101に設けられたシャワーヘッド102が、液体Wを霧状にして脱気容器101内に噴霧する。シャワーヘッド102は、液体Wの気化を促すためのものであるが、気化促進効果を生み出す機構としては、遠心分離器なども代替可能である。
【0013】
ある程度の液体Wが脱気容器101に貯留された後、全ての開閉バルブを閉じた状態で減圧ポンプ103を作動させると、既に気化している気体成分が排出されるとともに、液体Wに溶解している気体成分の気化と排出も促される。この際、脱気容器101の内圧は、圧力計108を確認しながら数百~数千Pa(1.0Torr~10.0Torr)程度に減圧されればよい。脱気ユニット100によって脱気される気体としては、例えば窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素などが含まれる。
【0014】
以上説明した脱気処理は、液体循環路105を利用することにより、同じ液体Wに対して繰り返し行うことができる。具体的には、液体導入路104の開閉バルブ109と液体導出路106の開閉バルブ110を閉塞し、液体循環路106の開閉バルブ106、107を開放した状態で、シャワーヘッド102を作動させる。これにより、脱気容器101に貯留され、脱気処理が一度行われた液体Wは、再びシャワーヘッド102を介して脱気容器101に噴霧される。更に、減圧ポンプ103を作動させることにより、シャワーヘッド102による気化処理と減圧ポンプ103による脱気処理が、同じ液体Wに対し重ねて行われることになる。そして、液体循環路105を利用した上記繰り返し処理を行う度に、液体Wに含まれる気体成分を段階的に減少させていくことができる。所望の純度に脱気された液体Wが得られると、開閉バルブ110を開放することにより、液体Wは液体導出路106を経て溶解ユニット200に送液される。
【0015】
なお、
図2では、気体部を低圧にして溶解物を気化させる脱気ユニット100を示したが、溶解した液体を脱気させる方法はこれに限らない。例えば、液体Wを煮沸して溶解物を気化させる加熱煮沸法を採用してもよいし、中空糸を用いて液体と気体の界面を増大させる膜脱気方法を採用してもよい。中空糸を用いた脱気モジュールとしては、SEPARELシリーズ(大日本インキ社製)が市販されている。これは、中空糸膜の原料にポリ4-メチルペンテン-1(PMP)を用いて、主にピエゾヘッド向けに供給するインクなどから気泡を脱気する目的で使用されている。更に、真空脱気法、加熱煮沸法、及び膜脱気方法の2つ以上を併用してもよい。
【0016】
図3(a)及び(b)は、溶解ユニット200の概略構成図及び液体の溶解状態を説明するための図である。溶解ユニット200は、前処理ユニット100より供給された液体Wに対し所望の気体を溶解させるユニットである。本実施形態の溶解ユニット200は、主に、溶解容器
21、回転板
22が取り付けられた回転シャフト
23、液体導入路
24、気体導入路
25、液体導出路
26、及び加圧ポンプ
27を有する。
【0017】
前処理ユニット100より供給された液体Wは、液体導入路24より、液体導入開閉バルブ211を介して溶解容器21に供給され貯留される。一方、気体Gは気体導入路25より気体導入開閉バルブを介して溶解容器21に供給される。
【0018】
所定量の液体Wと気体Gが溶解容器21に貯留されると、加圧ポンプ27を作動し溶解容器21の内圧を0.5Mpa程度まで上昇させる。加圧ポンプ27と溶解容器21の間には安全弁28が配されている。また、回転シャフト23を介して液中の回転板22を回転させることにより、溶解容器21に供給された気体Gを気泡化し、液体Wとの接触面積を大きくし、液体W中への溶解を促進する。そしてこのような作業を、気体Gの溶解度がほぼ最大飽和溶解度に達するまで継続する。この際、可能な限り多くの気体を溶解させるために、液体の温度を低下させる手段を配してもよい。また、難溶解性の気体の場合は、溶解容器21の内圧を0.5MPa以上に上げる事も可能である。その場合は、安全面から容器の材料などを最適にする必要がある。
【0019】
気体Gの成分が所望の濃度で溶解された液体Wが得られると、液体Wは液体導出路206を経由して排出され、T-UFB生成ユニット300に供給される。この際、背圧弁209は、供給時の圧力が必要以上に高くならないように液体Wの流圧を調整する。
【0020】
図3(b)は、溶解容器201で混入された気体Gが溶解していく様子を模式的に示す図である。液体W中に混入された気体Gの成分を含む気泡2は、液体Wに接触している部分から溶解する。このため、気泡2は徐々に収縮し、気泡2の周囲には気体溶解液3が存在する状態となる。気泡2には浮力が作用するため、気泡2は気体溶解液3の中心から外れた位置に移動したり、気体溶解液3から分離して残存気泡4となったりする。すなわち、液体導出路206を介してT-UFB生成ユニット300に供給される液体Wには、気体溶解液3が気泡2を囲った状態のものや、気体溶解液3と気泡2が互いに分離した状態のものが混在している。
【0021】
なお、図において気体溶解液3とは、「液体W中において、混入された気体Gの溶解濃度が比較的高い領域」を意味している。実際に液体Wに溶解している気体成分においては、気泡2の周囲や、気泡2と分離した状態であっても領域の中心で濃度が最も高く、その位置から離れるほど気体成分の濃度は連続的に低くなる。すなわち、
図3(b)では説明のために気体溶解液3の領域を破線で囲っているが、実際にはこのような明確な境界が存在するわけではない。また、本発明においては、完全に溶解しない気体が、気泡の状態で液体中に存在しても許容される。
【0022】
図4は、T-UFB生成ユニット300の概略構成図である。T-UFB生成ユニット300は、主に、チャンバー301、液体導入路302、液体導出路303を備え、液体導入路302からチャンバー301内を経て液体導出路303に向かう流れが、不図示の流動ポンプによって形成されている。流動ポンプとしては、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、スクリューポンプなど各種ポンプを採用することができる。液体導入路302から導入される液体Wには、溶解ユニット200によって混入された気体Gの気体溶解液3が混在している。
【0023】
チャンバー301の底面には発熱素子10が設けられた素子基板12が配されている。発熱素子10に所定の駆動パルス(電圧パルス)が印加されることにより、発熱素子10に接触する領域に膜沸騰により生じる泡13(以下、膜沸騰泡13ともいう)が発生し、膜沸騰泡13の膨張や収縮に伴って気体Gを含有するウルトラファインバブル(UFB11)が生成される。その結果、液体導出路303からは多数のUFB11が含まれたUFB含有液Wが導出される。
【0024】
図5(a)及び(b)は、発熱素子10の詳細構造を示す図である。
図5(a)は発熱素子10の近傍、同図(b)は発熱素子10を含むより広い領域の素子基板12の断面図をそれぞれ示している。
【0025】
図5(a)に示すように、本実施形態の素子基板12は、シリコン基板304の表面に、蓄熱層としての熱酸化膜305と、蓄熱層を兼ねる層間膜306と、が積層されている。層間膜306としては、SiO2膜、または、SiN膜を用いることができる。層間膜306の表面には抵抗層307が形成され、その抵抗層307の表面に、配線308が部分的に形成されている。配線308としては、Al、Al-Si、またはAl-CuなどのAl合金配線を用いることができる。これらの配線308、抵抗層307、及び、層間膜306の表面には、SiO
2膜、またはSi
3N
4膜から成る保護層309が形成されている。
【0026】
保護層309の表面において、結果的に発熱素子10となる熱作用部311に対応する部分、及び、その周囲には、抵抗層307の発熱に伴う化学的、及び物理的な衝撃から保護層309を保護するための耐キャビテーション膜310が形成されている。抵抗層307の表面において、配線308が形成されていない領域は、抵抗層307が発熱する熱作用部311である。配線308が形成されていない抵抗層307の発熱部分は、発熱素子(ヒータ)10として機能する。このように素子基板12における層は、半導体の製造技術によってシリコン基板304の表面に順次に形成され、これにより、シリコン基板304に熱作用部311が備えられる。
【0027】
なお、図に示す構成は一例であり、その他の各種構成が適用可能である。例えば、抵抗層307と配線308との積層順が逆の構成、及び抵抗層307の下面に電極を接続させる構成(所謂プラグ電極構成)が適用可能である。つまり、後述するように、熱作用部311により液体を加熱して、液体中に膜沸騰を生じさせることができる構成であればよい。
【0028】
図5(b)は、素子基板12において、配線308に接続される回路を含む領域の断面図の一例である。P型導電体であるシリコン基板304の表層には、N型ウェル領域322、及び、P型ウェル領域323が部分的に備えられている。一般的なMOSプロセスによるイオンインプランテーションなどの不純物の導入、及び拡散によって、N型ウェル領域322にP-MOS320が形成され、P型ウェル領域323にN-MOS321が形成される。
【0029】
P-MOS320は、N型ウェル領域322の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域325及びドレイン領域326と、ゲート配線335などから構成されている。ゲート配線335は、ソース領域325及びドレイン領域326を除くN型ウェル領域322の部分の表面に、厚さ数百Åのゲート絶縁膜328を介して堆積されている。
【0030】
N-MOS321は、P型ウェル領域323の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域325及びドレイン領域326と、ゲート配線335などから構成されている。ゲート配線335は、ソース領域325及びドレイン領域326を除くP型ウェル領域323の部分の表面に、厚さ数百Åのゲート絶縁膜328を介して堆積されている。ゲート配線335は、CVD法により堆積された厚さ3000Å~5000Åのポリシリコンからなる。これらのP-MOS320及びN-MOS321によって、C-MOSロジックが構成される。
【0031】
P型ウェル領域323において、N-MOS321と異なる部分には、電気熱変換素子(発熱抵抗素子)の駆動用のN-MOSトランジスタ330が形成されている。N-MOSトランジスタ330は、不純物の導入及び拡散などの工程によりP型ウェル領域323の表層に部分的に形成されたソース領域332及びドレイン領域331と、ゲート配線333などから構成されている。ゲート配線333は、P型ウェル領域323におけるソース領域332及びドレイン領域331を除く部分の表面に、ゲート絶縁膜328を介して堆積されている。
【0032】
本例においては、電気熱変換素子の駆動用トランジスタとして、N-MOSトランジスタ330を用いた。しかし、その駆動用トランジスタは、複数の電気熱変換素子を個別に駆動する能力を持ち、かつ、上述したような微細な構造を得ることができるトランジスタであればよく、N-MOSトランジスタ430には限定されない。また本例においては、電気熱変換素子と、その駆動用トランジスタと、が同一基板上に形成されているが、これらは、別々の基板に形成してもよい。
【0033】
P-MOS320とN-MOS321との間、及びN-MOS321とN-MOSトランジスタ330との間等の各素子間には、5000Å~10000Åの厚さのフィールド酸化により酸化膜分離領域324が形成されている。この酸化膜分離領域324によって各素子が分離されている。酸化膜分離領域324において、熱作用部311に対応する部分は、シリコン基板304上の一層目の蓄熱層334として機能する。
【0034】
P-MOS320、N-MOS321、及びN-MOSトランジスタ330の各素子の表面には、CVD法により、厚さ約7000ÅのPSG膜、またはBPSG膜などから成る層間絶縁膜336が形成されている。層間絶縁膜336を熱処理により平坦にした後に、層間絶縁膜336及びゲート絶縁膜428を貫通するコンタクトホールを介して、第1の配線層となるAl電極337が形成される。層間絶縁膜336及びAl電極337の表面には、プラズマCVD法により、厚さ10000Å~15000ÅのSiO2膜から成る層間絶縁膜338が形成される。層間絶縁膜338の表面において、熱作用部311及びN-MOSトランジスタ330に対応する部分には、コスパッタ法により、厚さ約500ÅのTaSiN膜から成る抵抗層307が形成される。抵抗層307は、層間絶縁膜338に形成されたスルーホールを介して、ドレイン領域331の近傍のAl電極337と電気的に接続される。抵抗層307の表面には、各電気熱変換素子への配線となる第2の配線層としてのAlの配線308が形成される。配線308、抵抗層307、及び層間絶縁膜338の表面の保護層309は、プラズマCVD法により形成された厚さ3000ÅのSiN膜から成る。保護層309の表面に堆積された耐キャビテーション膜310は、Ta、Fe,Ni,Cr,Ge,Ru,Zr,Ir等から選択される少なくとも1つ以上の金属であり、厚さ約2000Åの薄膜から成る。抵抗層307としては、上述したTaSiN以外のTaN0.8、CrSiN、TaAl、WSiN等、液体中に膜沸騰を生じさせることができるものであれば各種材料が適用可能である。
【0035】
図6(a)及び(b)は、発熱素子10に所定の電圧パルスを印加した場合の膜沸騰の様子を示す図である。ここでは、大気圧のもとでの膜沸騰を生じさせた場合を示している。
図6(a)において、横軸は時間を示す。また、下段のグラフの縦軸は発熱素子10に印加される電圧を示し、上段のグラフの縦軸は膜沸騰により発生した膜沸騰泡13の体積と内圧を示す。一方、
図6(b)は、膜沸騰泡13の様子を、
図6(a)に示すタイミング1~3に対応づけて示している。以下、時間に沿って各状態を説明する。
【0036】
発熱素子10に電圧が印加される前、チャンバー301内はほぼ大気圧が保たれている。発熱素子10に電圧が印加されると、発熱素子10に接する液体に膜沸騰が生じ、発生した気泡(以下、膜沸騰泡13と称す)は内側から作用する高い圧力によって膨張する(タイミング1)。このときの発泡圧力は約8~10MPaとみなされ、これは液体の飽和蒸気圧に近い値である。
【0037】
電圧の印加時間(パルス幅)は0.5uSec~10.0uSec程度であるが、電圧が印加されなくなった後も、膜沸騰泡13はタイミング1で得られた圧力の慣性によって膨張する。但し、膜沸騰泡13の内部では膨張に伴って発生した負圧力が徐々に大きくなり、膜沸騰泡13を収縮する方向に作用する。やがて慣性力と負圧力が釣り合ったタイミング2で膜沸騰泡13の体積は最大となり、その後は負圧力によって急速に収縮する。
【0038】
膜沸騰泡13が消滅する際、膜沸騰泡13は発熱素子10の全面ではなく、1箇所以上の極めて小さな領域で消滅する。このため、発熱素子10においては、膜沸騰泡13が消滅する極めて小さな領域に、タイミング1で示す発泡時よりも更に大きな力が発生する(タイミング3)。
【0039】
以上説明したような膜沸騰泡13の発生、膨張、収縮及び消滅は、発熱素子10に電圧パルスが印加されるたびに繰り返され、そのたびに新たなUFB11が生成される。
【0040】
次に、膜沸騰泡13の発生、膨張、収縮及び消滅の各過程において、UFB11が生成される様子を更に詳しく説明する。
【0041】
図7(a)~(d)は、膜沸騰泡13の発生及び膨張に伴ってUFB11が生成される様子を示す図である。
図7(a)は、発熱素子10に電圧パルスが印加される前の状態を示している。チャンバー301の内部には、気体溶解液3が混在した液体Wが流れている。
【0042】
図7(b)は、発熱素子10に電圧が印加され、液体Wに接している発熱素子10のほぼ全域で膜沸騰泡13が一様に発生した様子を示している。電圧が印加されたとき、発熱素子10の表面温度は10℃/μSec以上の速度で急激に上昇し、ほぼ300℃に達した時点で膜沸騰が起こり、膜沸騰泡13が生成される。
【0043】
発熱素子10の表面温度は、その後もパルスの印加中に600~800℃程度まで上昇し、膜沸騰泡13の周辺の液体も急激に加熱される。図では、膜沸騰泡13の周辺に位置し、急激に加熱される液体の領域を未発泡高温領域14として示している。未発泡高温領域14に含まれる気体溶解液3は熱的溶解限界を超えて析出しUFBとなる。析出した気泡の直径は10nm~100nm程度であり、高い気液界面エネルギを有している。そのため、短時間で消滅することもなく液体W内で独立を保ながら浮遊する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13の膨張時に熱的作用によって生成される気泡を第1のUFB11Aと称す。
【0044】
図7(c)は、膜沸騰泡13が膨張する過程を示している。発熱素子10への電圧パルスの印加が終了しても、膜沸騰泡13は発生したときに得た力の慣性によって膨張を続け、未発泡高温領域14も慣性によって移動及び拡散する。すなわち、膜沸騰泡13が膨張する過程において、未発泡高温領域14に含まれた気体溶解液3が新たに気泡となって析出し、第1のUFB11Aとなる。
【0045】
図7(d)は、膜沸騰泡13が最大体積となった状態を示している。膜沸騰泡13は慣性によって膨張するが、膨張に伴って膜沸騰泡13の内部の負圧は徐々に高まり、膜沸騰泡13を収縮しようとする負圧力として作用する。そして、この負圧力が慣性力と釣り合った時点で、膜沸騰泡13の体積は最大となり、以後収縮に転じる。
【0046】
図8(a)~(c)は、膜沸騰泡13の収縮に伴ってUFB11が生成される様子を示す図である。
図8(a)は、膜沸騰泡13が収縮を開始した状態を示している。膜沸騰泡13が収縮を開始しても、周囲の液体Wには膨張する方向の慣性力が残っている。よって、膜沸騰泡13の極周囲には、発熱素子10から離れる方向に作用する慣性力と、膜沸騰泡13の収縮に伴って発熱素子10に向かう力とが作用し、減圧された領域となる。図では、そのような領域を未発泡負圧領域15として示している。
【0047】
未発泡負圧領域15に含まれる気体溶解液3は、圧的溶解限界を超え、気泡として析出する。析出した気泡の直径は100nm程度であり、その後短時間で消滅することもなく液体W内で独立を保ながら浮遊する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13が収縮する際の圧力的作用によって析出する気泡を、第2のUFB11Bと称す。
【0048】
図8(b)は、膜沸騰泡13が収縮する過程を示している。膜沸騰泡13が収縮する速度は負圧力によって加速し、未発泡負圧領域15も膜沸騰泡13の収縮に伴って移動する。すなわち、膜沸騰泡13が収縮する過程において、未発泡負圧領域15が通過する箇所の気体溶解液3が次々に析出し、第2のUFB11Bとなる。
【0049】
図8(c)は、膜沸騰泡13が消滅する直前の様子を示している。膜沸騰泡13の加速度的な収縮により、周囲の液体Wの移動速度も増大するが、チャンバー301内の流路抵抗によって圧力損失が生じる。その結果、未発泡負圧領域15が占める領域は更に大きくなり、多数の第2のUFB11Bが生成される。
【0050】
図9(a)~(c)は、膜沸騰泡13の収縮時において、液体Wの再加熱によってUFBが生成される様子を示す図である。
図9(a)は、発熱素子10の表面が収縮する膜沸騰泡13に被覆されている状態を示している。
【0051】
図9(b)は、膜沸騰泡13の収縮が進み、発熱素子10の表面の一部が液体Wに接触した状態を示している。このとき発熱素子10の表面には、液体Wが接しても膜沸騰には到らないほどの熱が残っている。図では、発熱素子10の表面に接することにより加熱される液体の領域を未発泡再加熱領域16として示している。膜沸騰には到らないものの、未発泡再加熱領域16に含まれる気体溶解液3は、熱的溶解限界を超えて析出する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13が収縮する際の液体Wの再加熱によって生成される気泡を第3のUFB11Cと称す。
【0052】
図9(c)は、膜沸騰泡13の収縮が更に進んだ状態を示している。膜沸騰泡13が小さくなるほど、液体Wに接する発熱素子10の領域が大きくなるため、第3のUFB11Cは、膜沸騰泡13が消滅するまで生成される。
【0053】
図10(a)及び(b)は、膜沸騰で生成された膜沸騰泡13の消泡時の衝撃(所謂、キャビテーションの一種)によって、UFBが生成される様子を示す図である。
図10(a)は、膜沸騰泡13が消滅する直前の様子を示している。膜沸騰泡13は内部の負圧力によって急激に収縮し、その周囲を未発泡負圧領域15が覆う状態となっている。
【0054】
図10(b)は、膜沸騰泡13が点Pで消滅した直後の様子を示している。膜沸騰泡13が消泡するとき、その衝撃により音響波が点Pを起点として同心円状に広がる。音響波とは、気体、液体、固体を問わず伝播する弾性波の総称であり、本実施形態においては、液体Wの粗密、すなわち液体Wの高圧面17Aと低圧面17B、とが交互に伝播される。
【0055】
この場合、未発泡負圧領域15に含まれる気体溶解液3は、膜沸騰泡13の消泡時の衝撃波によって共振され、低圧面17Bが通過するタイミングで圧的溶解限界を超えて相転移する。すなわち、膜沸騰泡13の消滅と同時に、未発泡負圧領域15内には多数の気泡が析出する。本実施形態ではこのような膜沸騰泡13が消泡する時の衝撃波によって生成される気泡を第4のUFB11Dと称す。
【0056】
膜沸騰泡13の消泡時の衝撃波よって生成される第4のUFB11Bは、極めて狭い薄膜的領域に極めて短時間(1μS以下)で突発的に出現する。直径は第1~第3のUFBよりも十分小さく、第1~第3のUFBよりも気液界面エネルギが高い。このため、第4のUFB11Dは、第1~第3のUFB11A~11Cとは異なる性質を有し異なる効果を生み出すものと考えられる。
【0057】
また、第4のUFB11Dは、衝撃波が伝播する同心球状の領域のいたる所で一様に発生するため、生成された時点からチャンバー301内に一様に存在することになる。第4のUFB11Dが生成されるタイミングでは、第1~第3のUFBが既に多数存在しているが、これら第1~第3のUFBの存在が第4のUFB11Dの生成に大きく影響することはない。また、第4のUFB11Dの発生によって第1~第3のUFBが消滅することもない。
【0058】
以上説明したように発熱素子10の発熱により膜沸騰泡13が発生し消泡するまでの複数の段階においてUFB11が発生する。上述した例では膜沸騰泡10が消泡するまでの例を示したがUFBを発生させるためにはこれに限られない。例えば、発生した膜沸騰泡10が消泡する前に大気と連通することで、膜沸騰泡10が消耗まで至らない場合においてもUFBの生成が可能である。
【0059】
次にUFBの残存特性について説明する。液体の温度が高いほど気体成分の溶解特性は低くなり、温度が低いほど気体成分の溶解特性は高くなる。すなわち、液体の温度が高いほど、溶解している気体成分の相転移が促され、UFBが生成されやすくなる。液体の温度と気体の溶解度は反比例の関係にあり、液体の温度上昇により、飽和溶解度を超えた気体が気泡になって液体中に析出される。
【0060】
このため、液体の温度が常温から急激に上昇すると溶解特性が一気に下がり、UFBが生成され始める。そして、温度が上がるほど熱的溶解特性は下がり、多くのUFBが生成される状況となる。
【0061】
反対に液体の温度が常温から下降すると、気体の溶解特性は上昇し、生成されたUFBは液化しやすくなる。しかしながら、このような温度は、常温よりも十分に低い。更に、液体の温度が下がっても、一度発生したUFBは高い内圧と高い気液界面エネルギを有するため、この気液界面を破壊するほどの高い圧力が作用する可能性は極めて低い。すなわち、一度生成されたUFBは、液体を常温常圧で保存する限り、簡単に消滅することはない。
【0062】
本実施形態において、
図7(a)~(c)で説明した第1のUFB11A、及び
図9(a)~(c)で説明した第3のUFB11Cは、このような気体の熱的溶解特性を利用して生成されたUFBと言える。
【0063】
一方、液体の圧力が高いほど気体の溶解特性は高くなり、圧力が低いほど溶解特性は低くなる。すなわち液体の圧力が低いほど、液体に溶解している気体溶解液の気体への相転移が促され、UFBが生成されやすくなる。
【0064】
液体の圧力が常圧RPから下がると、溶解特性が一気に下がり、UFBが生成され始める。そして、圧力が下がるほど圧的溶解特性は下がり、多くのUFBが生成される状況となる。
【0065】
反対に液体の圧力が常圧から上昇ると、気体の溶解特性は上昇し、生成されたUFBは液化しやすくなる。しかしながら、このような圧力は、大気圧よりも十分に高い。更に、液体の圧力が上がっても、一度発生したUFBは高い内圧と高い気液界面エネルギを有するため、この気液界面を破壊するほどの高い圧力が作用する可能性は極めて低い。すなわち、一度生成されたUFBは、液体を常温常圧で保存する限り、簡単に消滅することはない。
【0066】
本実施形態において、
図8(a)~(c)で説明した第2のUFB11B、及び
図10(a)~(b)で説明した第4のUFB11Dは、このような気体の圧力的溶解特性を利用して生成されたUFBと言える。
【0067】
以上では、生成される要因の異なる第1~第4のUFBを個別に説明してきたが、上述した生成要因は、膜沸騰という事象に伴って同時多発的に起こるものである。このため、第1~第4のUFBのうち少なくとも2種類以上のUFBが同時に生成されることもあり、これら生成要因が互いに協働してUFBを生成することもある。但し、いずれの生成要因も、膜沸騰現象によって招致されることは共通している。以下、本明細書では、このように急激な発熱に伴う膜沸騰を利用してUFBを生成する方法を、T-UFB(Thermal-Ultra Fine Bubble)生成方法と称す。また、T-UFB生成方法によって生成したUFBをT-UFB、T-UFB生成方法によって生成されたT-UFBを含有する液体をT-UFB含有液と称す。
【0068】
T-UFB生成方法によって生成される気泡はその殆どが1.0um以下であり、ミリバブルやマイクロバブルは生成され難い。すなわち、T-UFB生成方法によれば、UFBのみが効率的に生成されることになる。また、T-UFB生成方法によって生成されたT-UFBは、従来法によって生成されたUFBよりも高い気液界面エネルギを有し、常温常圧で保存する限り簡単に消滅することはない。更に、新たな膜沸騰によって新たなT-UFBが生成されても、先行して生成されていたT-UFBがその衝撃によって消滅することもない。つまり、T-UFB含有液に含まれるT-UFBの数や濃度は、T-UFB含有液における膜沸騰の発生回数に対しヒステリシス特性を有すると言える。言い替えると、T-UFB生成ユニット300に配する発熱素子の数や発熱素子に対する電圧パルスの印加回数を制御することにより、T-UFB含有液に含まれるT-UFBの濃度を調整することができる。
【0069】
再び
図1を参照する。T-UFB生成ユニット300において、所望のUFB濃度を有するT-UFB含有液Wが生成されると、当該UFB含有液Wは、後処理ユニット400に供給される。
【0070】
図11(a)~(c)は、本実施形態の後処理ユニット400の構成例を示す図である。本実施形態の後処理ユニット400は、UFB含有液Wに含まれる不純物を、無機物イオン、有機物、不溶固形物、の順に段階に除去する。
【0071】
図11(a)は、無機物イオンを除去するための第1の後処理機構410を示す。第1の後処理機構410は、交換容器411、陽イオン交換樹脂412、液体導入路413、集液体管414及び液体導出路415を備えている。交換容器411には、陽イオン交換樹脂412が収容されている。T-UFB生成ユニット300で生成されたUFB含有液Wは、液体導入路413を経由して交換容器411に注入され、陽イオン交換樹脂412に吸収され、ここで不純物としての陽イオンが除去される。このような不純物には、T-UFB生成ユニット300の素子基板12より剥離した金属材料などが含まれ、例えばSiO
2、SiN、SiC、Ta、Al
2O
3、Ta
2O
5、Irが挙げられる。
【0072】
陽イオン交換樹脂412は、三次元的な網目構造を持った高分子母体に官能基(イオン交換基)を導入した合成樹脂であり、合成樹脂は0.4~0.7mm程度の球状粒子を呈している。高分子母体としては、スチレン-ジビニルベンゼンの共重合体が一般的であり、官能基としては例えばメタクリル酸系とアクリル酸系のものを用いることができる。但し、上記材料は一例である。所望の無機イオンを効果的に除去することができれば、上記材料は様々に変更可能である。陽イオン交換樹脂412に吸収され、無機イオンが除去されたUFB含有液Wは、集液体管414によって集液体され、液体導出路415を介して次の工程に送液される。
【0073】
図11(b)は、有機物を除去するための第2の後処理機構420を示す。第2の後処理機構420は、収容容器421、ろ過フィルタ422、真空ポンプ423、開閉バルブ424、液体導入路425、液体導出路426、及びエア吸引路427を備えている。収容容器421の内部は、ろ過フィルタ422によって上下2つの領域に分割されている。液体導入路425は、上下2つの領域のうち上方の領域に接続し、エア吸引路427及び液体導出路426は下方の領域に接続する。開閉バルブ424を閉じた状態で真空ポンプ423を駆動すると、収容容器421内の空気がエア吸引路427を介して排出され、収容容器422の内部が負圧になり、液体導入路425よりUFB含有液Wが導入される。そして、ろ過フィルタ422によって不純物が除去された状態のUFB含有液Wが収容容器421に貯留される。
【0074】
ろ過フィルタ422によって除去される不純物には、チューブや各ユニットで混合され得る有機材料が含まれ、例えばシリコンを含む有機化合物、シロキサン、エポキシなどが挙げられる。ろ過フィルタ422に使用可能なフィルタ膜としては、細菌系まで除去できるサブμmメッシュのフィルタや、ウィルスまで除去できるnmメッシュのフィルタが挙げられる。
【0075】
収容容器421にUFB含有液Wがある程度貯留された後、真空ポンプ423を停止して開閉バルブ424を開放すると、収容容器421のT-UFB含有液は液体導出路426を介して次の工程に送液される。なお、ここでは、有機物の不純物を除去する方法として真空ろ過法を採用したが、フィルタを用いたろ過方法としては、例えば重力ろ過法や加圧ろ過を採用することもできる。
【0076】
図11(c)は、不溶の固形物を除去するための第3の後処理機構430を示す。第3の後処理機構430は、沈殿容器431、液体導入路432、導出側開閉バルブ433及び液体導出路434を備えている。
【0077】
まず、開閉バルブ433を閉じた状態で沈殿容器431に所定量のUFB含有液Wを液体導入路442より貯留し、しばらく放置する。この間、UFB含有液Wに含まれている固形物は、重力によって沈殿容器431の底部に沈降する。また、UFB含有液に含まれるバブルのうち、マイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルも浮力によって液面に浮上し、UFB含有液から除去される。十分な時間が経過した後開閉バルブ433を開放すると、固形物や大きなサイズのバブルが除去されたUFB含有液Wが液体導出路434を介して、回収ユニット500に送液される。
【0078】
再度
図1を参照する。後処理ユニット400で不純物が除去されたT-UFB含有液Wは、そのまま回収ユニット500に送液してもよいが、再び溶解ユニット200に戻すこともできる。後者の場合、T-UFBの生成によって低下したT-UFB含有液Wの気体溶解濃度を、溶解ユニット200において再び飽和状態まで補填することができる。その上で新たなT-UFBをT-UFB生成ユニット300で生成すれば、上述した特性のもと、T-UFB含有液のUFB含有濃度を更に上昇させることができる。すなわち、溶解ユニット200、T-UFB生成ユニット300、後処理ユニット400を巡る循環回数の分だけ、UFB含有濃度を高めることができ、所望のUFB含有濃度が得られた後に、当該UFB含有液Wを回収ユニット500に送液することができる。
【0079】
回収ユニット500は、後処理ユニット400より送液されて来たUFB含有液Wを回収及び保存する。回収ユニット500で回収されたT-UFB含有液は、様々な不純物が除去された純度の高いUFB含有液となる。
【0080】
回収ユニット500においては、何段階かのフィルタリング処理を行い、UFB含有液WをT-UFBのサイズごと分類してもよい。また、T-UFB方式により得られるT-UFB含有液Wは、常温よりも高温であることが予想されるため、回収ユニット500には冷却手段を設けてもよい。なお、このような冷却手段は、後処理ユニット400の一部に設けられていてもよい。
【0081】
以上が、UFB液作製装置1の概略であるが、図示したような複数のユニットは無論変更可能であり、全てを用意する必要は無い。使用する液体Wや気体Gの種類、また生成するT-UFB含有液の使用目的に応じて、上述したユニットの一部を省略してもよいし、上述したユニット以外に更に別のユニットを追加してもよい。
【0082】
例えば、UFBに含有させる気体が大気である場合は、脱気ユニット100や溶解ユニット200を省略することができる。反対に、UFBに複数種類の気体を含ませたい場合は、溶解ユニット200を更に追加してもよい。
【0083】
また、
図11(a)~(c)で示すような不純物を除去するためのユニットは、T-UFB生成ユニット300よりも上流に設けてもよいし、上流と下流の両方に設けてもよい。UFB液作製装置に供給される液体が液体道液体や雨液体、また汚染液体などの場合は、液体中に有機系や無機系の不純物が含まれている事がある。そのような不純物を含んだ液体WをT-UFB生成ユニット300に供給すると、発熱素子10を変質させたり、塩析現象を招致したりするおそれが生じる。
図11(a)~(c)で示すような機構をT-UFB生成ユニット300よりも上流に設けておくことにより、上記のような不純物を事前に除去することができる。
【0084】
なお、以上の説明では、上述の各ユニットの開閉バルブ、ポンプ等を含むアクチュエータ部分を制御する制御装置が含まれ、制御装置を用いてユーザの設定に応じたUFB生成制御が行われる。この制御装置によるUFB生成制御については、以下に述べる実施形態において説明する。
【0085】
<T-UFB含有液に使用可能な液体及び気体>
ここで、T-UFB含有液を作製するために使用可能な液体Wについて説明する。本実施形態で使用可能な液体Wとしては、例えば、純液体、イオン交換液体、蒸留液体、生理活性液体、磁気活性液体、化粧液体、液体道液体、海液体、川液体、上下液体、湖液体、地下液体、雨液体などが挙げられる。また、これらの液体等を含む混合液体も使用可能である。また、液体と液体溶性有機溶剤との混合溶媒も使用できる。液体と混合して使用される液体溶性有機溶剤としては特に限定されないが、具体例として、以下のものを挙げることができる。メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、Sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類。エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール。1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコールなどのグリコール類。エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンなどのトリオール類。これらの液体溶性有機溶剤は、単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0086】
溶解ユニット200で導入可能な気体成分としては、例えば、液体素、ヘリウム、酸素、窒素、メタン、フッ素、ネオン、二酸化炭素、オゾン、アルゴン、塩素、エタン、プロパン、空気、などが挙げられる。また、上記のいくつかを含む混合気体であってもよい。さらに、溶解ユニット200では必ずしも気体状態にある物質を溶解させなくてもよく、所望の成分で構成される液体や固を液体Wに融解させてもよい。この場合の溶解としては、自然溶解のほか、圧力付与による溶解であってもよいし、電離による液体和、イオン化、化学反応を伴う溶解であってもよい。
【0087】
<T-UFB生成方法の効果>
次に、以上説明したT-UFB生成方法の特徴と効果を、従来のUFB生成方法と比較して説明する。例えばベンチュリー方式に代表される従来の気泡生成装置においては、流路の一部に減圧ノズルのようなメカ的な減圧構造を設け、この減圧構造を通過するように所定の圧力で液体を流すことにより、減圧構造の下流の領域に様々なサイズの気泡を生成している。
【0088】
この場合、生成された気泡のうち、ミリバブルやマイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルには浮力が作用するため、やがて液面に浮上して消滅してしまう。また、浮力が作用しないUFBについても、然程大きな気液界面エネルギを有していないので、ミリバブルやマイクロバブルとともに消滅してしまう。加えて、上記減圧構造を直列に配置し、同じ液体を繰り返し減圧構造に流したとしても、その繰り返し回数に応じた数のUFBを、長期間保存することはできない。すなわち、従来のUFB生成方法によって生成されたUFB含有液では、UFB含有濃度を所定の値で長期間維持することは困難であった。
【0089】
これに対し、膜沸騰を利用する本実施形態のT-UFB生成方法では、常温から300℃程度への急激な温度変化や、常圧から数メガパスカル程度への急激な圧力変化を、発熱素子の極近傍に局所的に生じさせている。当該発熱素子は、一辺が数十μm~数百μm程度の四辺形をしている。従来のUFB発生器の大きさに比べると、1/10~1/1000程度である。且つ、膜沸騰泡表面の極薄い膜領域に存在する気体溶解液が、熱的溶解限界または圧力的溶解限界を瞬間的に(マイクロ秒以下の超短時間で)超えることにより、相転移が起こりUFBとなって析出する。この場合、ミリバブルやマイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルは殆ど発生せず、液体には直径が100nm程度のUFBが極めて高い純度で含有される。更に、このように生成されたT-UFBは、十分に高い気液界面エネルギを有しているため、通常の環境下において破壊されにくく、長期間の保存が可能である。
【0090】
特に、液体に対し局所的に気体界面を形成できる膜沸騰現象を用いた本発明であれば、液体領域全体に影響を与えることなく、液体の一部に界面形成し、それに伴う熱的、圧力的に作用する領域を極めて局所的な範囲とすることができる。その結果、安定的に所望のUFBを生成することができる。また、液体を循環して生成液体に対し更にUFBの生成条件を付与することで、既存のUFBへの影響を少なく新たなUFBを追加生成することができる。その結果、比較的容易に、所望のサイズ、濃度のUFB液を製造することができる。
【0091】
更に、T-UFB生成方法においては、上述したヒステリシス特性を有するため、高い純度のまま所望の濃度まで含有濃度を高めていくことができる。すなわち、T-UFB生成方法よれば、高純度、高濃度で且つ長期間保存可能なUFB含有液を、効率的に生成することができる。
【0092】
<<T-UFB含有液の具体的用途>>
一般に、ウルトラファインバブル含有液は、内包される気体の種類によって用途が区別される。なお、液体にPPM~BPM程度の量を液体中に溶解できる気体であれば、いずれの気体においてもUFB化させることが可能である。1例としては、下記のような用途に応用する事ができる。
【0093】
・空気を内包させたUFB含有液は、工業的・農液体産業・医療用などの洗浄や、植物・農液体産物の育成にも好適に用いることができる。
【0094】
・オゾンを内包したUFB含有液は、工業的・農液体産業・医療用などの洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途や、排液体や汚染土壌の環境浄化などにも好適に用いることができる。
【0095】
・窒素を内包したUFB含有液は、工業的・農液体産業・医療用など洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途や、排液体や汚染土壌の環境浄化などにも好適に用いることができる。
【0096】
・酸素を内包したUFB含有液は、工業的・農液体産業・医療用など洗浄用途に加え、植物・農液体産物の育成にも好適に用いることができる。
【0097】
・二酸化炭素を内包したUFB含有液は、工業的・農液体産業・医療用などの洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途などに好適に用いることができる。
【0098】
・医療用ガスであるパーフロロカーボンを内包したUFB含有液は、超音波診断や治療に好適に用いることができる。このように、UFB含有液は、医療・薬品・歯科・食品・工業・農液体産業などの多岐に亘って、効果を発揮することができる。
【0099】
そして、それぞれの用途において、UFB含有液の効果を迅速に且つ確実に発揮するためには、UFB含有液に含まれるUFBの純度と濃度が重要となる。すなわち、高純度で所望の濃度のUFB含有液を作製することが可能な本実施形態のT-UFB生成方法を利用すれば、様々な分野でこれまで以上の効果を期待することができる。以下、T-UFB生成方法及びT-UFB含有液を好適に適用可能と想定される用途を列挙する。
【0100】
(A)液体の精製的用途
・浄液体器に対し、T-UFB生成ユニットを配することにより、浄液体効果やPH調製液の精製効果を高めることが期待できる。また、炭酸液体サーバなどにT-UFB生成ユニットを配することもできる。
【0101】
・加湿器、アロマディヒューザー、コーヒーメーカー等にT-UFB生成ユニットを配することにより、室内の加湿効果や消臭効果及び香りの拡散効果を向上させることが期待できる。
【0102】
・溶解ユニットにおいてオゾンガスを溶解させたUFB含有液を作製し、これを歯科治療、火傷の治療、内視鏡使用時の傷の手当てなどで用いることにより、医療的な洗浄効果や消毒効果を向上させることが期待できる。
【0103】
・集合住宅の貯液体槽にT-UFB生成ユニットを配することにより、長期間保存される飲料液体の浄液体効果や塩素の除去効果を向上させることが期待できる。
【0104】
・日本酒、焼酎、ワインなど、高温の殺菌処理を行うことができない酒造工程において、オゾンや二酸化炭素を含有するT-UFB含有液を用いることにより、従来よりも効率的に低温殺菌処理を行うことが期待できる。
【0105】
・特定保健食品や機能表示食品の製造過程で、原料にUFB含有液を混合させることで低温殺菌処理が可能になり、風味を落とさずに、安心かつ機能性を有する食品を提供することができる。
【0106】
・魚や真珠などの魚介類の養殖場所において、養殖用の海液体や淡液体の供給経路にT-UFB生成ユニットを配することにより、魚介類の産卵や発育を促進させることが期待できる。
【0107】
・食材保存液体の精製工程にT-UFB生成ユニットを配することにより、食材の保存状態を向上させることが期待できる。
【0108】
・プール用液体や地下液体などを脱色するための脱色器にT-UFB生成ユニットを配することにより、より高い脱色効果を期待することができる。
【0109】
・コンクリート部材のひび割れ修復のためにT-UFB含有液を用いることにより、ひび割れ修復の効果向上を期待することができる。
【0110】
・液体燃料を用いる機器(自動車、船舶、飛行機)等の液体燃料に、T-UFBを含有させることにより、燃料のエネルギ効率を向上させることが期待できる。
【0111】
(B)洗浄的用途
近年、衣類に付着した汚れなどを除去するための洗浄液体として、UFB含有液が注目されている。上記実施形態で説明したT-UFB生成ユニットを洗濯機に配し、従来よりも純度が高く浸透性に優れたUFB含有液を洗濯層に供給することにより、更に洗浄力を向上させることが期待できる。
【0112】
・浴用シャワーや便器洗浄機にT-UFB生成ユニットを配することにより、人体等、生物全般の洗浄効果のほか、浴室又は便器の液体垢やカビなどの汚染除去を促す効果を期待できる。
【0113】
・自動車などのウィンドウォッシャー、壁材などを洗浄するための高圧洗浄機、洗車機、食器洗浄機、食材洗浄機等においてT-UFB生成ユニットを配することにより、それぞれの洗浄効果を更に向上させることが期待できる。
【0114】
・プレス加工後のバリ取り工程など工場で製造した部品を洗浄・整備する際に、T-UFB含有液を用いることにより、洗浄効果を向上させることが期待できる。
【0115】
・半導体素子製造時、ウェハの研磨液体としてT-UFB含有液を用いることにより、研磨効果を向上させることが期待できる。また、レジスト除去工程においては、T-UFB含有液を用いることにより、剥離が困難なレジストの剥離を促すことが期待できる。
【0116】
・医療ロボット、歯科治療器、臓器の保存容器などの医療機器の、洗浄や消毒を行うための器機に、T-UFB生成ユニットを配することにより、これら器機の洗浄効果や消毒効果の向上を期待することができる。また、生物の治療などにも適用可能である。
【0117】
(C)医薬品用途
・化粧品などにT-UFB含有液を含有させることで、皮下細胞への浸透を促進するとともに防腐剤や界面活性剤などの皮膚に悪影響を与える添加剤を大幅に低下させることができる。その結果、より安心で、且つ、機能性のある化粧品を提供する事ができる。
【0118】
・CTやMRIなどの医療検査装置の造影剤に、T-UFBを含有する高濃度ナノバブル製剤を活用することで、X線や超音波による反射光を効率的に活用でき、より詳細な撮影画像を得る事ができ、悪性腫瘍の初期診断などに活用できる。
【0119】
・HIFU(High Intensity Focused Ultrasound)と呼ばれている超音波治療器で、T-UFBを含有する高濃度ナノバブル含有液体を用いることで、超音波の照射パワーを低下でき、より非侵襲的に治療をすることができる。特に、正常な組織へのダメージを低減することが可能になる。
【0120】
・T-UFBを含有する高濃度ナノバブルを種にして、気泡周囲のマイナス電荷領域にリポソームを形成するリン脂質を修飾させ、そのリン脂質を介して、各種医療性物質(DNAや、RNAなど)を付与したナノバブル製剤を作成することができる。
【0121】
・歯髄や象牙質再生治療として、T-UFB生成による高濃度ナノバブル含有液体を含む薬剤を歯管内に送液すると、ナノバブル含有液体の浸透作用により薬剤が象牙細管内に深く入り込み除菌効果を促進し、歯髄の感染根管治療を短時間かつ安全に行う事が可能である。
【0122】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態におけるUFB液作製装置は、その一部の構成要素が正常に機能しない状態となった場合にも、継続してUFB含有液を供給することが可能な構成を有する。このため、故障部品の交換処理などに起因してUFB含有液の供給が中断するという従来の装置の課題を解消することが可能となる。以下、本実施形態の有効性を明確にするため、まず、従来の装置の概略構成を説明し、その後、本実施形態の構成、作用を説明する。
【0123】
図34は従来のUFB液作製装置の概略構成を示す図である。液体入力部111はUFBを生成する対象の液体(例えば、水)を、開閉バルブV111を介して液体入力槽112に供給する。液体入力槽112は液体入力部101から供給されるUFB生成前の液体と、循環ポンプ116から供給されるUFB生成後のUFB含有液とが供給され、両液体が混合された液体を気体溶解部113に供給する。
【0124】
気体溶解部113は液体入力槽112から供給された液体に気体を溶解させて気体溶解液を作製し、気体溶解液出力槽114に供給する。気体の溶解方法としては、加圧溶解法やバブリング等の手法を用いる。気体溶解液出力槽114は気体溶解部113から供給された気体溶解液を受け、UFB生成部115に供給する役割を果たす。
【0125】
UFB生成部115は、気体溶解液出力槽114から供給された気体溶解液内にUFBを発生させてUFB含有液を作製し、作製したUFB含有液をUFB液出力槽117に供給する。UFB液出力槽117は、UFB生成手段115から供給されたUFB含有液を受容し、循環ポンプ116またはUFB含液出力部119にUFB含有液を供給する役割を果す。
【0126】
循環ポンプ116は、UFB液出力槽117からUFB含有液の吸引し、液体入力槽112に供給する役割を果たす。本循環ポンプ116が、液体入力槽112→気体溶解部113→気体溶解液出力槽114→UFB生成手段105→UFB液出力槽117→循環ポンプ116→液体入力槽112、という循環経路において液体の循環を実現する。このように液体の循環を行うことにより、所望の密度のUFBが存在するUFB含有液を作製することができる。作製されたUFB含有液は開閉バルブV117を介してUFB含有液出力部119へと出力される。UFB含液出力部119は、洗浄装置や医療機器などの種々のUFB利用機器に対してUFB含有液を供給する。
【0127】
循環経路を循環する間に、液体は、以下のように変化する。
【0128】
・気体溶解部113で溶解された気体がUFB生成部115でUFB化されることにより、液体中の溶存気体量が低下する(但し、気体の総量である溶存気体+UFB内気体量はほぼ変わらない)。
【0129】
・溶存気体量が低下した液体は、循環経路を通って再び気体溶解部113に流入し、溶存気体量が増加する。これにより、気体の総量(溶存気体量+UFB内気体量)が増加する)。
【0130】
・溶存気体量は温度と気体種別によって定まる一定値で飽和するが、気体の総量(溶存気体+UFB内気体量)が飽和溶存気体量よりも大きい安定した気体内包液体が作製される。
【0131】
また、液体入力部111と液体入力槽112との間に開閉バルブV111が設けられ、UFB液出力槽117とUFB液体出力部119との間に開閉バルブV117が設けられている。開閉バブルV111,V117は、いずれもUFB液体を作製する際には開状態(連通状態)にあり、気体溶解部113、UFB生成部115、循環ポンプ116のいずれかを交換する場合には、開閉バルブV111及び開閉バルブV117を閉状態(遮断状態)として交換処理を行う。交換処理が完了すると、開閉バルブV111及び開閉バルブV117を開状態としてUFB含有液の作製を再開する。
【0132】
上記のように、従来のUFB液作製装置には、1つの循環経路が構成されている。循環経路には、気体溶解部113、UFB生成手段115、循環ポンプ116などの構成要素が含まれており、これらに動作不良が発生する可能性がある。循環経路の一部の構成要素に動作不良が発生した場合、構成要素の交換・修理などの処理を行うことが必要となる。この場合、処理が完了するまでは、UFB含有液の作製が停止し、UFB含有液出力部119へのUFB含有液の供給が遮断されることとなる。
【0133】
このため、UFB含有液出力部119に接続されている不図示のUFB利用機器が、常時一定のUFB液体の供給を受ける必要が有るものである場合、UFB液作製装置の停止に伴ってUFB利用機器の稼動も停止せざるを得ない状況に陥る可能性がある。従って、医療機器やプラント等の連続稼動を必要とする状況で用いられるUFB利用機器では、UFB液作製装置の停止が極めて大きな影響を及ぼすこととなる。本実施形態は、このような従来の装置の課題を解決し得るものであり、装置内の一部に動作不良が生じた場合にも、継続してUFB含有液の供給を行うことが可能な構成を有している。
【0134】
図12は、本実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。ここに示すUFB液作製装置1Aは、液体入力部1010と、第1UFB液作製部1020と、第2UFB液作製部1030と、UFB液出力部(液体出力部)1040とを有する。
【0135】
第1UFB液作製部1020及び第2UFB液作製部1030は、同一の構成を備え、それぞれ開閉バルブV10を介して液体入力部1010に接続されている。さらに、第1UFB液作製部1020及び第2UFB液作製部1030は、開閉バルブV50を介してUFB液出力部1040に接続されている。
【0136】
第1UFB液作製部1020と第2UFB液作製部1030は、いずれも液体入力部1010から供給された液体を循環させつつ所望の濃度のUFB含有液を作製することが可能な構成を有している。第1UFB液作製部1020及び第2UFB液作製部1030で作製したUFB含有液は、開閉バルブV20を介してUFB液出力部1040へと供給され、UFB液出力部1040に供給されたUFB含有液は、不図示のUFB利用機器に供給される。UFB利用機器としては、先の基本構成において説明したように、洗浄装置や医療機器等をはじめとする種々の装置を挙げることができる。なお、第1UFB液作製部1020と第2UFB液作製部1030とにより、本発明の作製部が構成されている。
【0137】
図13は、
図12に示すUFB液作製装置1Aの構成をより詳細に示すブロック図である。UFB液作製装置1Aには、前述のように、液体入力部1010と、UFB液出力部1040と、第1UFB液作製部1020と、第2UFB液作製部1030とが設けられている。
【0138】
第1UFB液作製部1020は、液体入力槽202、第1気体溶解部2031、気体溶解液出力槽204、第1UFB生成部(第1ウルトラファインバブル生成部)2051、UFB液出力槽207、第1循環ポンプ2061等の構成要素を含み構成されている。さらに、第1UFB液作製部1020の各構成要素の間には、開閉バルブVin31,Vout31,Vin51,Vout51,Vin61,Vout62が設けられている。
【0139】
また、第2UFB液作製部1030は、液体入力槽202、第2気体溶解部2032、気体溶解液出力槽204、第2UFB生成部(第2ウルトラファインバブル生成部)2052、UFB液出力槽207、第2循環ポンプ2062等の構成要素を含み構成されている。さらに、第2UFB液作製部1020の各構成要素の間には、開閉バルブVin32,Vout32,Vin52、開閉バルブVout52,Vin62、開閉バルブVout62が設けられている。
【0140】
第1、第2UFB液作製部1020,1030のそれぞれに設けられている各構成要素には、前述の基本構成に示した各部の構成を適用することができる。すなわち、液体入力槽202には、基本構成に示した前処理ユニット100の構成を適用することができる。第1,第2気体溶解部2031,2032及び気体溶解液出力槽204には、基本構成に示した溶解ユニット200の構成を適用することができる。第1,第2UFB生成部2051,2052には、基本構成に示したT-UFB生成ユニット300の構成を適用することができる。UFB液出力槽207には、基本構成に示した後処理ユニット400を適用することができる。さらに、UFB液出力部1040には、基本構成に示した回収ユニット500の構成を適用することができる。
【0141】
以上のように、本実施形態においては、液体入力部1010とUFB液出力部1040との間に設けられた第1,第2UFB液作製部1020,1030によって、UFB含有液を作製するための2つの液体供給部が構成されている。なお、液体入力槽202、気体溶解液出力槽204、及びUFB液出力槽207は、第1UFB液作製部1020と第2UFB液作製部1030とにおける共通の構成要素となっている。但し、その他の構成要素は、互いに独立した構成を有している。
【0142】
ここで、上記の各構成要素の機能について説明する。液体入力部1010は、UFBを生成する対象の液体(例えば、水)を、第1UFB液作製部1020と第2UFB液作製部1030の共通の構成要素である液体入力槽202に、開閉バルブV10を介して供給する。
【0143】
液体入力槽202は液体入力部1010から供給される液体と、第1,第2循環ポンプ2061,2062から供給されるUFB含有液を受容する。また、液体入力槽202は、液体入力部1010から供給される液体と第1,第2循環ポンプ2061,2062から供給されるUFB含有液との混合液を、開閉バルブVin31,Vin32を介して、第1,第2気体溶解部2031、2032に、供給する役割を果たす。
【0144】
第1気体溶解部2031及び第2気体溶解部2032は、それぞれ独立して動作可能な構成を有する。各気体溶解部2031,2032は、液体入力槽202から供給される液体に気体を溶解させて気体溶解液を作製し、作製した気体溶解液を開閉バルブVout31,Vout32を介して気体溶解液体出力槽204に供給する。液体に対して気体を溶解させる方法としては、加圧溶解法やバブリング等の手法を用いる。
【0145】
第1UFB液作製部1020と第2UFB液作製部1030との共通の構成要素である気体溶解液出力槽204は、第1,第2気体溶解部2031,2032のそれぞれから供給される気体溶解液を受容する。そして、気体溶解液出力槽204は、受容した気体溶解液を、開閉バルブVin51,Vin52を介して、第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052とに供給する。
【0146】
第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052のそれぞれは独立して動作可能な構成を有する。各UFB生成部2051,2052は、気体溶解液出力槽204から供給された気体溶解液に対しUFBを生成する。本実施形態では、前述の基本構成と同様に、ヒータを用いたT-UFB方法によって、供給された気体溶解液中にUFBを生成する。両UFB生成部2051,2052で作製したUFB含有液は、それぞれ、第1UFB液作製部1020と第2UFB液作製部1030の共通の構成要素であるUFB液出力槽207に移送される。
【0147】
UFB液出力槽207は、第1UFB生成部2051及び第2UFB生成部2052からUFB含有液の供給を受け、第1循環ポンプ2061、第2循環ポンプ2062、及びUFB液出力部1040に供給する役割を果たす。
【0148】
第1循環ポンプ2061及び第2循環ポンプ2062は、UFB液出力槽207からUFB含有液の供給を受け、液体入力槽202に供給する役割を果たす。第1循環ポンプ2061と第2循環ポンプ2062は、後述の制御部1000によって互いに独立して動作可能となっている。
【0149】
また、液体入力部1010と液体入力槽202との間に設けられた開閉バルブV10、及びUFB液出力槽207とUFB液出力部1040との間に設けられた開閉バルブV50は、それぞれUFB液体を作製する際には開状態、すなわち液体が流通可能な状態とする。また、第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2UFB生成部2051,2052、及び第1,第2循環ポンプ2061,2062を着荷時等に設置する場合には、開閉バルブV10,V30を閉じ、液体の流通が遮断された状態とする。そして、着荷後の設置処理が完了した状態で、開閉バルブV10及び開閉バルブV53を開状態としてUFB液の作製を開始する。
【0150】
液体入力槽202と第1気体溶解部2031との間に設けた開閉バルブVin31及び第1気体溶解部2031と気体溶解液出力槽204との間に設けた開閉バルブVout31は第1気体溶解部2031を稼動させる際には接続状態にある。また、第1気体溶解部2031の交換時には開閉バルブVin31を閉状態として交換処理を行う。交換処理が終了した後、開閉バルブVin31及び開閉バルブVout31を開状態として気体溶解部を再稼動させる。同様に、液体入力槽202と第2気体溶解部2032との間に設けた開閉バルブVin32及び第2気体溶解部2032と気体溶解液出力槽204との間に設けた開閉バルブVout32は、第2気体溶解部2032の稼動・交換に応じて開状態と閉状態とを切換える。
【0151】
このように開閉バルブの切換えを行うことにより、第1気体溶解部2031を交換する場合にも、第2気体溶解部2032を用いて気体溶解液を作製し続けることができる。このため、UFB液の作製を中断せずに、UFB含有液の作製と気体溶解部の交換とを並行して行うことができる。
【0152】
また、気体溶解液出力槽204と第1UFB生成部2051との間には開閉バルブVin51が設けられ、第1UFB生成部2051とUFB液出力槽207との間には開閉バルブVout51が設けられている。同様に、気体溶解液出力槽204と第2UFB生成部2052との間には開閉バルブVin52が設けられ、第2UFB生成部2052とUFB液出力槽207と間には開閉バルブVout52が設けられている。従って、これらの開閉バルブを適宜切り換えることにより、上述の気体溶解部を交換する場合と同様に、UFB含有液の作製とUFB生成部の交換とを並行して行うことができる。
【0153】
さらに、UFB液体出力槽207と第1循環ポンプ2061との間には開閉バルブVin61が設けられ、第1循環ポンプ2061と液体入力槽202との間には開閉バルブVout61が設けられている。また、UFB液体出力槽207と第2循環ポンプ2062間には開閉バルブVin62が設けられ、第1循環ポンプ2062と液体入力槽202との間には開閉バルブVout62が設けられている。従って、これらの開閉バルブを適宜切り換えることにより、上述の気体溶解部を交換する場合と同様に、UFB含有液の作製と循環ポンプの交換とを並行して行うことができる。
【0154】
図14は、UFB含有液の作製とUFB生成部の交換とを並行して行うことができる本実施形態fにおける変形例を示すブロック図である。なお、
図14において、
図13と同一部分には同一符号を付し、それらに関する説明の詳細は省略する。
【0155】
図14において、切換バルブSin03は、第1気体溶解部2031と第2気体溶解部2032のいずれを稼動させるかを選択することができる。切換バルブSout03は、上記切換バルブSin03によって選択された気体溶解部(第1気体溶解部2031または第2気体溶解部2032)から供給された気体溶解液を気体溶解液出力槽204に出力する。
【0156】
また、切換バルブSin05は、第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052のいずれのUFB生成部を稼動させるかを選択することができる。切換バルブSout05は切換バルブSin05によって選択されたUFB生成部(第1UFB生成部2051または第2UFB生成部2052)で作製されたUFB含有液をUFB液出力槽207に出力する。
【0157】
切換バルブSin06は、第1循環ポンプ2061と第2循環ポンプ2062のいずれを稼動させるかを選択することができる。切換バルブSout06は上記の切換バルブSin06の切り換えに連動して、選択された循環ポンプ(第1循環ポンプ2061または第2循環ポンプ2062)のUFB液体を液体入力槽202に出力する。
【0158】
このように、
図14に示す構成では単一の切換バルブを用いることによって、2つずつ設けられている気体溶解部、UFB生成部、循環ポンプを、それぞれ切り換えて稼動させることができる。このような切換方式では、必ず1つの気体溶解部、UFB生成部、循環ポンプが駆動状態となるため、動作が安定する利点がある。但し、気体溶解部、UFB生成部、循環ポンプ等の構成要素のいずれかを2つ同時に稼動させる稼動形態を採ることが望ましい場合もある。この場合には、気体溶解部、UFB生成部、循環ポンプのうち、2つ同時に稼動すべき構成要素の前後(上流側及び下流側)に、
図13に示すような開閉バルブを用い、残りの構成要素に対して切換バルブを用いるようにする。すなわち、切換バルブと開閉バルブを適宜組み合わせて使用するようにする。
【0159】
上記構成によれば、同一の機能を有する2つの構成要素のうち、一方の構成要素に動作不良が発生し、当該構成要素を交換または修理する場合にも、他方の構成要素によってUFB含有液の作製を継続して行うことが可能になる。例えば、第1UFB生成部2051に動作不良が生じた場合にも、第2UFB生成部2052によって液体の作製を継続しながら、第1UFB生成部2051の交換作業を行うことが可能になる。同様に、第1,第2気体溶解部2031,2032のいずれか一方、あるいは第1,第2循環ポンプ2061,2062のいずれか一方に動作不良が生じた場合にも、他方の気体溶解部、あるいは他方の循環ポンプを用いてUFB含有液の作製を継続することが可能になる。但し、一方の構成要素に動作不良が発生し、他方の正常な構成要素のみを稼動させる場合、一方の構成要素が正常に稼動動作している場合と同様に他方の構成要素を稼動させると、UFB含有液の作製能力が低下する。すなわち、UFB含有液の濃度の低下、作製量の低下、または作製時間の増大などが発生する。
【0160】
そこで本実施形態では、一部の構成要素に動作不良が発生した場合にも、UFB液作製装置としての作製能力を低下させずに、構成要素の交換を並行実施することが可能な制御を行う。
【0161】
図15は本実施形態における制御動作を示すタイミングチャートであり、各構成要素を駆動する駆動タイミングを示している。
図15の縦軸は、第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2UFB生成部2051,2052、第1,第2循環ポンプ2061,2062の動作率を示している。また、
図15の横軸は、時間の経過を表している。また、T1~T9のそれぞれは、UFB生成部の駆動時間の基準となるタイミングを示しており、隣接する2つのタイミングの間の時間、例えばタイミングT1~T2の間の時間を1単位時間としている。
【0162】
本実施形態において、構成要素の交換が行われていない期間(T0~T1,T2~T3,T4~T5,T6~T7,T8~T9)での各構成要素の動作率を100%とすると、構成要素の交換の行われる期間における交換対象の構成要素の動作率は0%としている。また、交換対象の構成要素と同一の機能を果す構成要素の動作率は200%としている。例えば、T1~T2の期間では、第1気体溶解部2031の交換を行うので、第1気体溶解部2031の動作率は0%、第2気体溶解部2032の動作率は200%としている。逆に、T7~T8の期間では、第2気体溶解部2032の交換を行うので、第1気体溶解部2031の動作率は200%、第2気体溶解部2032の動作率は0%としている。
【0163】
同様に、T3~T4の期間では、第1UFB生成部2051の交換を行うため、第1UFB生成部2051の動作率は0%、第2UFB生成部2052の動作率は200%としている。T5~T6の期間では、第1循環ポンプ2061の交換を行うので、第1循環ポンプ2061の動作率は0%、第2循環ポンプ2062の動作率は200%としている。
【0164】
このように、交換対象となる一方の構成要素と同じ機能を有する他方の構成要素を動作率200%で動作させることによって、作製されるUFB含有液のUFB濃度を低下させずに、UFB含有液の作製と構成要素の交換とを並行して実施することができる。
【0165】
ここで、上記のような制御を実施するための制御系の概略構成を、
図16のブロック図に基づき説明する。
図16において、制御部1000は、例えば、CPU1001、ROM1002、RAM1003などを含み構成されている。CPU1001は、UFB液作製装置1A全体を統括的に制御する制御手段としての機能を果たす。ROM1002はCPU1001によって実行される制御プログラムや所定のテーブルその他の固定データを格納している。RAM1003は、種々の入力データを一時的に格納する領域や、CPU1001によって処理を実行する際の作業領域等を有する。操作表示部6000は、ユーザによってUFB含有液のUFB濃度やUFB作製時間等を含む種々の設定操作を行う設定部6001と、UFB含有液の作製所要時間や装置の状態表示などを行う表示手段としての表示部6002とを備える。
【0166】
制御部1000は、素子基板12に設けられた複数の発熱素子10を有する発熱部10Gの各発熱素子10の駆動を制御する発熱素子駆動部(駆動手段)2000を有する。発熱素子駆動部2000は、CPU1001からの制御信号に応じた駆動パルスを発熱部10Gに含まれる複数の発熱素子10のそれぞれに印加する。各発熱素子10は、印加された駆動パルスの電圧、周波数、パルス幅などに応じた熱を発する。
【0167】
制御部1000は、UFB液作製装置1Aに設けられた開閉バルブ及び切換バルブ等からなるバルブ群3000の制御を行う。さらに、制御部1000は、UFB発生装置1A内に設けられた各種ポンプからなるポンプ群4000や不図示のモータなどの制御も行う。また、UFB液作製装置1Aには、種々の計測を行う計測部5000が設けられている。この計測部5000には、例えば作製されているUFB含有液のUFB濃度や流量の計測を行う計測器、及びバッファ槽1039におけるUFB含有液の蓄積量を計測する計測器などが含まれる。この計測部5000から出力された計測値は制御部1000に入力される。
【0168】
図17及び
図18は、制御部1000によって実行されるUFB含有液作製時の制御動作を示すフローチャートであり、
図17はメインフローを、
図18はサブフローを示している。前述のように本実施形態では、UFB液作製装置の構成要素の一部が動作不良となった場合にも、UFB濃度を低下させずに、構成要素の交換とUFB含有液の作製とが並行して実行されるような制御を行う。なお、本明細書の説明において参照する
図17、
図18、
図22、
図24、
図25、
図31、
図32のフローチャートの各工程番号に付されているSはステップを意味している。
【0169】
図17において、S401では液体の充填を行う。これは、
図13に示す開閉バルブV10、及び各構成要素の入口及び出口に接続された12個の開閉バルブを開状態とし、開閉バルブV50だけを閉状態とする。各構成要素への液体の充填が完了すると、開閉バルブV50を開状態として液体の充填が完了する。次に、S402でUFB含有液の作製を開始する。ここでは、第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2UFB生成部2051,2052、第1,第2循環ポンプ2061,2062を全て動作させる。
【0170】
次に、S403~S414において、構成要素の交換処理の要否を判断し、その判断結果に基づいて動作不良が発生している構成要素に対する交換処理を行う。具体的には、以下の処理を実行する。
【0171】
まず、S403では、第1UFB生成部2051の交換が必要になったかを判定し、判定結果がYESの場合(交換を必要とする場合)には、S404に進む。また、判定結果がNOの場合(交換を必要としない場合)にはS405に進む。なお、本実施形態では、第1,第2UFB生成部2051,2052のUFB生成方法として、基本構成で説明したT-UFB方法を採用している。このため、第1,第2UFB生成部2051,2052の交換を必要とするか否かの判定方法としては、
・各UFB生成部に設けられた所定の割合のヒータが経時劣化によって加熱できなくなった状況を検出する方法
・実際の生成部の累積ヒート回数が、予め設定されているヒート回数に達した状況を検出する方法
・UFB濃度計によってUFB生成部で作製したUFB含有液のUFB濃度を取得することで、UFB作製性能の劣化を取得する方法
等がある。
【0172】
このような判定方法により、S403において第1UFB生成部2051の交換が必要となったと判定された場合、S404では、第1UFB生成部2051の交換処理を行う。この交換処理の詳細を
図18(a)に示す。なお、
図18(a)、(b)は、
図13に示す構成を想定した処理を示している。
【0173】
図18(a)において、S4041では、第1UFB生成部2051の交換が必要である旨を表示し、ユーザに通知する。次に、S4042では、交換対象である第1UFB生成部2051に設けられたヒータの駆動を停止し、交換対象でない第2UFB生成部2052に設けられたヒータの駆動周波数を増大させる。本実施形態では、第2UFB生成部2052のヒータの駆動周波数を2倍に増大させる。
【0174】
次に、S4043では、第1UFB生成部2051の入口と出口に設けられた開閉バルブVin501,Vout501を閉状態とする。これにより、第1UFB生成部2051は、UFB含有液の作製経路から隔離された状態となる。この後、開閉バルブVin51から開閉バルブVout51に至る経路内に存在する液体を、不図示の排液体開閉バルブを介して外部に排出することにより、交換作業時に作業者が液体に濡れるリスクを低減することができる。なお、液体排出時において、第1UFB生成部2051の上流側に設けた不図示の大気開放開閉バルブを開くようにすれば、液体を速やかに排出することができる。また、開閉バルブVin51を最初に遮断し、液体を開閉バルブVout52を介してUFB液体出力槽207に流し、その後、開閉バルブVout152を遮断すれば、同様に作業者が液体に濡れるリスクを低減することができる。
【0175】
次に、S4044では、隔離された第1UFB生成部2051が交換可能な状態となった旨を表示部6002に表示し、ユーザに通知する。この時点で、UFB含有液の作製経路を覆っている不図示のカバーのロック機構を解除する。この後、作業者はカバーを開けて、UFB含有液の作製経路から隔離された第1UFB生成部2051の交換作業を行う(S4045)。
【0176】
第1UFB生成部2051の交換が終了すると、S4046へ進み、第1UFB生成部2051の入口及び出口に接続された開閉バルブVin51,Vout51を開状態とする。これにより、第1UFB生成部2051は、UFB含有液の作製経路に接続される。このとき、開閉バルブVin51を最初に開状態として、液体を十分に注入した後、開閉バルブVout51を開状態とすることで、UFB含有液の作製経路への不要な空気の混入を低減することができる。この際、前述の不図示の大気開放開閉バルブを開状態とすることで、液体の注入を速やかに行うことができる。また、交換後、UFB含有液の作製経路を覆う前述のカバーが閉じられると、カバーのロック機構を作動させ、カバーを閉じた状態に保つ。
【0177】
次に、S4047で交換済の第1UFB生成部2051に設けられているヒータの駆動を開始し、交換対象でない第2UFB生成部2052に設けられているヒータの駆動周波数を低減させる。本実施形態では、第1UFB生成部2051、及び第2UFB生成部2052の駆動周波数は、交換前の駆動周波数と同一にする。最後に、S4048で、第1UFB生成部2051の交換が完了した旨、及び第1UFB生成部2051のUFBの生成が再開された旨を、表示部6002を介してユーザに通知し、
図17のS405に進む。
【0178】
図17において、S405では、第2UFB生成部2052の交換が必要となったかを判定し、判定結果がYESの場合(交換を必要とする場合)には、S406へと進む。また、判定結果がNOの場合(交換を必要としない場合)にはS407へと進む。S406では、第2UFB生成部2052の交換処理を行う。この交換処理の詳細を
図18(b)に示す。
【0179】
図18(b)において、S4061~S4068は、
図18(
a)におけるS4041~S4048に対応し、交換対象の構成要素が第2UFB生成部2052となり、交換対象でない構成要素が第1UFB生成部2051となる。対象となる構成要素は
図18(a)に示す例と入れ替わっているが、処理の内容自体は同様であるため、説明を省略する。
【0180】
S4086までの処理が完了すると、
図17中のS407に進む。S407では、第1気体溶解部2031の交換が必要となったかを判定し、判定結果がYESの場合(交換を必要とする場合)には、S408に進む。また、判定結果がNOの場合(交換を必要としない場合)にはS409へと進む。S408では、第1気体溶解部2031の交換処理を行う。この第1気体溶解部2031の交換処理は、内容としては
図18(a)と同様であるため、詳細説明は省略する。但し、第1気体溶解部2031の交換を必要とするか否かの判定方法としては、第1気体溶解部2031の稼動時間が予め設定されている稼動寿命時間に達したか否かを判定する方法を用いる。
【0181】
また、第1気体溶解部2031の交換作業中には、交換対象でない第2気体溶解部2031に対し、第2気体溶解部2031への気体の流入量を上げる制御、または第2気体溶解部2031内の圧力を高める制御などを行う。そして、交換処理が完了すると、S409に進む。
【0182】
S409では、第2気体溶解部2032の交換が必要となったかを判定し、判定結果がYESの場合(交換を必要とする場合)にはS410に進む。判定結果がNOの場合(交換を必要としない場合)にはS411に進む。S410では、第2気体溶解部2032の交換処理を行う。交換処理の内容はS408と同様であるため、説明を省略する。但し、交換の必要があるか否かの判定方法としては、UFB生成部とは異なり、気体溶解部の稼動時間が予め設定されている稼動寿命時間に達したか否かを検出する方法等がある。
【0183】
S411では、第1循環ポンプ2061の交換が必要となったか否かを判定し、判定結果がYESの場合(交換を必要とする場合)には、S412に進む。判定結果がNOの場合(交換を必要としない場合)にはS413に進む。
【0184】
S412では、第1循環ポンプ2061の交換処理を行う。交換処理の内容は
図18(a)と同様であるため、説明を省略する。但し、交換の必要があるか否かの
判定方法としては、不図示の流量
計等で循環ポンプの性能の劣化状況を取得する方法や、実際の循環ポンプの稼動時間が予め設定されている稼動寿命時間に達したか否かを判定する方法等がある。
【0185】
また、第1循環ポンプ2061の交換作業中には、交換対象でない第2循環ポンプ2062に対し、ポンプの回転数を増加させて流速を上げる制御を行う。そして、処理が完了すると、S413に進む。
【0186】
S413では、第2循環ポンプ2062の交換が必要となったかを判定し、判定結果がYESの場合には、S414へと進む。判定結果がNOの場合にはS415へと進む。S414では、第2循環ポンプ2062の交換処理を行う。内容としてはS412と同様であるため、説明を省略する。処理が完了すると、S415に進む。
【0187】
次に、S415では、所望のUFB濃度を有するUFB含有液が所望量作製されたかを判定する。判定結果がNOの場合には、S403に進み、UFB含有液の作製を継続する。判定結果がYESの場合には、S416に進む。
【0188】
S416では、UFB含有液の作製を終了する。ここでは、開閉バルブV10を閉状態とした後、第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2UFB生成部2051,2052、及び第1,第2循環ポンプ2061,2062の稼動を停止させる。また、開閉バルブV10以外の開閉バルブは全て開状態とする。
【0189】
次に、S416では、作製したUFB含有液をUFB液出力部1040へ移送する。全てのUFB含有液がUFB液出力部1040に移送された後、開閉バルブV50を閉状態とする。以上により、UFB含有液の作製処理が完了する。この時点で全ての開閉バルブを閉状態にする。また、UFB液出力部1040に設けた不図示の大気開放開閉バルブを開状態とすることにより、UFB液出力部1040から、これに接続されたUFB液利用機器へのUFB液体の出力を円滑に行うことができる。
【0190】
以上のように本実施形態では、気体溶解部、UFB生成部、循環ポンプの3種類の構成要素をそれぞれ2つずつ設けると共に、交換対象となる構成要素をUFB含有液の作製経路から隔離可能としている。さらに、一方の構成要素が動作不良となった場合には、同一の機能を有する正常な構成要素の動作を、適切に制御するように構成している。このため、UFB含有液の濃度、作製量、及び作製時間等の作製能力を低下させることなく、継続してUFB含有液の作製を行いながら、動作不良が発生した構成要素の交換を行うことができる。以上、
図13に示す構成を有するUFB液作製装置の処理について説明したが、
図14に示す変形例においても、
図17に示すフローチャートに示す処理と略同様の処理を実行することが可能である。すなわち、
図14に示す構成では、各構成要素の入口と出口に接続された切換バルブの開閉を制御することによって、
図13に示す構成と同様にUFB含有液の作製処理を継続的かつ適正に行うことができる。
【0191】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第1,第2UFB液作製部1020,1030のうち、一方のUFB液作製部の構成要素に動作不良が生じた場合、他方のUFB液作製部の構成要素を制御してUFB含有液の作製能力の低下を抑えつつ、UFB含有液の作製を継続する例を示した。しかし、交換対象となる一方の構成要素の交換中に、交換対象ではない他方の構成要素にも動作不良が生じ、その交換が必要になる可能性もある。このように、同一の機能を有する2つの構成要素に同時に動作不良が発生した場合には、UFB含有液の作製が停止することとなる。このため、第2実施形態では、同一の機能を有する構成要素の交換が同時に発生しないような制御を行う。
【0192】
以下、
図19を参照しつつ、本実施形態により実行される制御、及び当該制御によって解決される課題を具体的に説明する。なお、本実施形態においても
図13に示す構成を備えるものとする。
【0193】
図19(a)は本実施形態が解決しようする課題を示すタイミングチャートであり、
図19(b)は本実施形態によって実行される制御を示すタイミングチャートである。
図19(a),(b)において横軸は時間を示し、縦軸は第1,第2UFB生成部2051,2052の駆動率を示している。また、T1~T9のそれぞれは、UFB生成部の駆動時間の基準となるタイミングを示しており、隣接する2つのタイミングの間の時間、例えばタイミングT1~T2の間の時間を1単位時間としている。
【0194】
図19(a)に示す例は、製品着荷時に装着した第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052の稼動を、同時に開始した場合を示している。この場合、稼動開始タイミングT0から6単位時間が経過したタイミングT6で第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052が共に寿命に達し、両方のUFB生成部の交換が必要となる。従って、交換作業が行われている時間(図では、T6~T7の期間)は、UFB含有液の作製が停止されることとなる。
【0195】
一方、
図19(b)は、本実施形態で実行される制御の例を示している。本例では、着荷後の初期設置を行った後、第1UFB生成部2051の稼動と第2UFB生成部2052の稼動を異なるタイミングで開始させる。具体的には、第2UFB生成部2051の稼動をタイミングT0で開始し、第1UF
B生成部2051の稼動をタイミングT0より1単位時間遅いタイミングT1で開始させる。このように稼動開始タイミングを異ならせる制御は、両方のUFB生成部がUFB液作製装置1Aの本体部に設置された状態で行うことも可能であるが、本体部への設置が完了したUFB生成部から順次稼動を開始させることによっても実現できる。例えば、第1UFB生成部2051に先行して第2UFB生成部2052を本体部に設置する場合、第2UFB生成部2052の設置が完了した段階で第2UFB生成部2052の稼動を開始させてUFBの生成を行う。その後、第1UFB生成部2051の設置が完了した段階で第1UFB生成部2051の稼動を開始させ、両方のUFB生成部によってUFB含有液の作製を行う。このような制御を行うことにより、第1,第2UFB生成部2051,2052の稼動開始タイミングを異ならせることが可能になる。
【0196】
上記のように第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052の稼動開始タイミングを異ならせる場合、単に、一方のUFB生成部を先行して稼動させるだけでは、先行して稼動させたUFB生成部によるUFB含有液の濃度、作製量が不足する場合もある。このため本実施形態では、第2UFB生成部2052のみが稼動している時間(例えば、T0~T1)は、第1UFB生成部2051の稼動分を補うべく、両方のUFB生成部が稼動する場合の2倍の動作率(200%の動作率)で第2UFB生成部2052を稼動させる。また、タイミングT1~T3の時間では、第1,第2UFB生成部2051,2052の両方を稼動させる。このため、両方のUFB生成部の動作率は100%とする。
【0197】
タイミングT3~T4の時間では、第
2UFB生成部205
2の交換を行う。この時点までの第
2UF
B生成部205
2の動作実績(タイミングT0~T4の動作実績)は、動作率200%が1単位時間、動作率100%が2単位時間であるため、これらを合計した4単位時間となる。
図19(a)において説明したように、第1,第2UFB生成部2051,2052の寿命は6単位時間である。しかし、本実施形態では、寿命時間未満の時間(4単位時間)が経過した時点で各UFB生成部の交換を行う。タイミングT3~T4で第2UFB生成部2052を交換する場合、第1UFB生成部2051は動作率200%で動作している。
【0198】
タイミングT4~T6の期間は、タイミングT1~T3の期間と同様に、第1,第2UFB生成部2051,2052をそれぞれ100%の動作率で動作させる。その後、タイミングT6~T7の期間では、第1UFB生成部2051の交換を行う。この時点までで、第1UFB生成部2051の動作実績は、動作率200%が1単位時間(T3~T4)、動作率100%が4単位時間(T1~T3、T4~T6)の合計6単位時間動作となる。このように、第1UFB生成部2051については、丁度寿命時間が経過したタイミングで交換を行う。この第1UFB生成部2051の交換作業中、第2UFB生成部2052は動作率200%で動作させる。この後、タイミングT7~T9の期間は、第1、第2UFB生成部2051,2052をそれぞれ100%で動作させる。
【0199】
タイミングT9以降の動作については、不図示であるが、タイミングT9に達した時点で第2UFB生成部2052を交換する。
【0200】
以上のように、本実施形態では、第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052の稼動開始タイミングを異ならせると共に、第2UFB生成部2052の最初の交換タイミングをT3,第1UFB生成部2051の最初の交換タイミングをT6としている。
【0201】
その結果、第2回目以降の交換タイミングは、表1に示すようになる。
【0202】
【0203】
表1及び
図19に示すように、本実施形態では、第1,第2UFB生成部2051,2052の交換タイミングが等間隔で発生するようになっている。これにより、第1,第2UFB生成部2051,2052が同時に交換を必要とする虞はなくなる。従って、UFB含有液の濃度、作製量、作製時間などを低下させることなく、寿命に達したUFB生成部の交換作業を行うことが可能になる。
【0204】
また、本実施形態では、第2UFB生成部2051は寿命時間より短い時間(タイミングT0~T3の4単位時間)で交換した。従ってここで交換した第2UFB生成部2052には2単位時間分の寿命が残されている。このため、第2UFB生成部2052を保存しておき、UFB含有液の作製終了直前の交換時において、保存しておいた第2UFB生成部2052を再度利用することも可能である。例えばタイミングT18でUFB含有液の作製を終了することが予め判っている場合には、交換タイミングT15で第2UFB生成部2052を交換する際に、タイミングT3の交換で取り外した第2UFB生成部2052を再度装着する。これによれば、UFB含有液の作製終了タイミングT18で第1,第2UFB生成部2051,2052が共に寿命に達することとなり、UFB生成部を無駄なく有効に利用が可能になる。
【0205】
また、第1,第2UFB生成部2051,2052だけでなく、第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2循環ポンプ2061,2062を同時に交換する必要が生じた場合にも、UFB含有液の作製を中断せざるを得ない状況に陥ることがある。従って、本実施形態では、第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2循環ポンプ2061,2062についても、
図19(b)に示すような、稼動開始タイミングと交換タイミングを異ならせる制御を実施する。
【0206】
図20は、第1,第2UFB生成部2051,2052、第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2循環ポンプ2061,2062等の構成要素に対し、
図19(b)に示す制御と同様の制御を実施した場合のタイミングチャートを示す。
【0207】
図20に示す例では、各構成要素の交換を以下のようなタイミングで行う。
・T0~T1で、第1UFB生成部、第1気体溶解部、及び第1循環ポンプの交換を行う。
・T3~T4で、第2UFB生成部、第2気体溶解部、及び第2循環ポンプの交換を行う。
・T6~T7で、第1UFB生成部、第1気体溶解部、及び第1循環ポンプの交換を行う。
・T9~T10で、第2UFB生成部、第2気体溶解部、及び第2循環ポンプの交換を行う。
【0208】
図20に示す例では、T
0、T3、T6、T9のそれぞれのタイミングで3種類の構成要素を交換することを想定した制御を行う。つまり、1単位時間内で3種類の構成要素の全ての交換を実施することができれば、UFB含有液の作製を中断させることなく継続的に実施することが可能な制御となっている。
【0209】
しかし、作業者が1人しか居ない場合等、全ての交換を単位時間内で実施できない場合には、UFB液体の作製を中断せざるを得なくなることが予想される。このような状況を想定して、第1,第2UFB生成部2051,2052、
第1、第2気体溶解部2031,2032、第1,第2循環ポンプ2061,2062のそれぞれの交換が同時に発生しないように制御した第2の実施形態の変形例を
図21のタイミングチャートに示す。
・T0~T1で、第2循環ポンプを交換し、第1循環ポンプを動作率200%で動作させる。
・T1~T2で、第1気体溶解部を交換し、第2気体溶解部を動作率200%で動作させる。
・T2~T3で、第1UFB生成部を交換し、第2UFB生成部を動作率200%で動作させる。
・T3~T4で、第1循環ポンプを交換し、第2循環ポンプを動作率200%で動作させる。
・T4~T5で、第2気体溶解部を交換し、第1気体溶解部を動作率200%で動作させる。
・T5~T6で、第2UFB生成部を交換し、第1UFB生成部を動作率200%で動作させる。
・T6~T7で、第2循環ポンプを交換し、第1循環ポンプを動作率200%で動作させる。
・T7~T8で、第1
気体溶解部を交換し、第2
気体溶解部を動作率200%で動作させる。
・T8~T9で、第1UFB生成部を交換し、第2UFB生成部を動作率200%で動作させる。
【0210】
このように、各構成要素の交換タイミングが異なるように制御することにより、UFB含有液の作製速度及び生成UFB濃度などの低下を抑制することができる。
【0211】
図22に本実施形態で実行される制御動作のフローチャートを示す。制御動作を開始すると、まず、S600において交換時期の設定を行う。
図21に示す制御を実施する場合、第1回目の交換時期及び第2回目以降の交換周期は、以下の表2に示す通りとなる。
【0212】
【0213】
ここで設定した第1回目の交換時期及び第2回目以降の交換周期は、S803、S805、S807、S809、S811、S813の処理で用いられる。S801及びS802は、
図17におけるS401及びS402の処理と同様であるため説明を省略する。また、S803~S814では、各構成要素が交換時期にあるかの判断処理、及び当該判断処理の判断結果に基づいて各構成要素の交換作業を行うための交換処理を行う。各構成要素が交換時期にあるか否かの判断処理は、S800で設定した設定値と、不図示のタイマーによる経時時間に基づいて行われる。以下、S803~S814の処理をより詳細に説明する。
【0214】
S803では、第1UFB生成部2051が交換時期に達したかを判断する。ここでは、第1UFB生成部2051の交換が着荷後の初めての交換であるか、2回目以降の交換であるかによって異なる判断を行う。すなわち、着荷後の第1回目の交換が行われるまでは、
第1回目の交換時期≦現在の経時時間
である場合に、S803の判断結果がYESとなる。すなわち、第1UFB生成部2051が交換時期に達したと判断する。この場合、S804へ進み、第1回目の第1UFB生成部の交換処理を行う。そして、第2回目の交換時期を、
第2回目の交換時期=第1回目の交換時期+第2回目以降の交換周期
と設定する。このように設定することで、
図21に示すようにUFB含有液の作製処理と交換処理とを並行して行うことが可能になる。S804において交換処理及び次回の交換時期の設定が終了するとS805に進む。
【0215】
また、第1回目の交換までに
第1回交換時期>現在の経過時間
と判断された場合には、S803の判定結果がNOとなる。すなわち、第1UFB生成部2051が交換時期に達していないと判断する。この場合は、S805に進む。
【0216】
一方、第N回目(Nは2以上の整数)以降の交換時期に関するS803の判断において、
第N回目の交換時期≦現在の経時時間
であると判断された場合には、判断結果がYESとなる。すなわち、第1UFB生成部2051が第N回目の交換時期に達していると判断する。この場合、S804へ進み、第N回目の第1UFB生成部2051の交換処理を行う。そして、第N+1回目の交換時期を、
第N+1回目の交換時期=第N回の交換時期+第2回目以降の交換周期
と設定する。このように設定することで、
図21に示すようにUFB含有液の作製処理と交換処理とを並行して行うことが可能になる。S804において交換処理及び次回交換時期の設定が終了するとS805に進む。
【0217】
また、第N回目(Nは2以上の整数)以降の交換時期に関するS803判断において、
第N回交換時期>現在の経過時間
であると判断された場合には、判断結果がNOとなる。すなわち、第1UFB生成部2051が第N回目の交換時期に達していないと判断する。この場合、S805に進む。
【0218】
S805~S806では、第2UFB生成部2052に対して、同様に交換時期の判断、交換処理及び交換時期の更新を行う。処理内容はS803~S804と同様であるため説明を省略する。
【0219】
S807~S810では、第1,第2気体溶解部2031,2032に対して、同様に交換時期の判断及び交換処理、交換時期の更新を行う。処理内容はS803~S806と同様であるため説明を省略する。
【0220】
S811~S814では、第1,第2循環ポンプ2061,2062に対して、同様に交換時期の判断、交換処理及び交換時期の更新を行う。処理内容はS803~S806と同様であるため説明を省略する。また、S815~S817の処理は
図17における中のS415~S417と同様であるため説明を省略する。
【0221】
以上のように、
図21及び
図22に示す制御では、各構成要素の初期の交換時期と交換時期の更新間隔の設定を行い、交換時に次回の更新時期を設定することで、同時に複数の交換処理が発生することを抑制する。これにより、UFB含有液の作製処理と交換処理を並行して行うことが可能となり、1人の作業者であっても、UFB液体の作製を継続させることが可能になる。
【0222】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態を説明する。なお、本実施形態においても、
図13または
図14に示す構成を備えるものとする。
【0223】
第2の実施形態では、複数の構成要素の交換時期が重なることでUFB含有液の作製が中断されることを防止するために、初期の交換時期と交換時期の更新間隔の設定を行う例を示した。しかし、例えば第1UFB生成部2051を先に交換し、第2UFB生成部2052を後に交換するようにした場合、先に交換する第1UFB生成部2051については寿命に達する前に交換する必要があった。このため、交換された第1UFB生成部2051をそのまま捨ててしまう場合には、部品コストが高くなり、作製するUFB含有液のコスト高を招くこととなる。また、寿命に達する前に交換された第1UFB生成部2051を保管しておき、それをUFB含有液の作製の最後の時期に再利用するようにしたとしても、構成要素の品質を維持するための保管にコストが発生してしまう。
【0224】
そこで、本実施形態では、全ての構成要素がほぼ寿命に達したときに交換を行うようにして無駄を低減しつつ、交換タイミングが重ならないような制御を行う。
【0225】
図23に本実施形態により実行される制御のタイミングチャートを示す。
【0226】
本実施形態では、T0より前の段階で第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2UFB生成部2051,2052、第1,第2循環ポンプ2061,2062の設置が完了していることとする。
【0227】
本実施形態では、T0のタイミングでの各部の動作率を以下のように設定する。
第1気体溶解部 120%
第2気体溶解部 80%
第1UFB生成部 150%
第2UFB生成部 50%
第1循環ポンプ 200%
第2循環ポンプ 0%
【0228】
このように動作率を設定することで、動作率が100%を超える3種類の構成要素の交換時期は以下のように設定することができる。
第1気体溶解部 T5~T6
第1UFB生成部 T4~T5
第1循環ポンプ T3~T4
【0229】
本実施形態ではいずれの構成要素も交換時期は6単位時間動作した時期である。最初に交換タイミングが来る第1循環ポンプ2061は、T3~T4の時期で交換を行う。この際、交換対象となっていない第2循環ポンプ2061の動作率は200%となる。
【0230】
交換が終了した後は、第1,第2循環ポンプ2061,2062の動作率は、いずれも100%となる。この結果、第2循環ポンプの交換時期は表3に示すようにT8~T9となる。
【0231】
【0232】
以降は、第1,第2UFB生成部2051,2052は、いずれも平均して100%の動作率で動作するため、各UFB生成部は、6単位時間毎に交換が発生する。従って、交換時期は
第1UFB生成部 T4~5 T10~11 T16~17 T4~5+6N(N=0,1,2)
第2UFB生成部 T7~8 T13~14 T19~20 T7~8+6N(N=0,1,2)
となる。
【0233】
第1UFB生成部2051の次に交換タイミングが来るのは第1気体溶解部2031であり、T5~T6で交換を行う。この際、交換対象となっていない第2気体溶解部2032の動作率は200%となる。交換が終了した後は、第1,第2気体溶解部2031,2032はいずれも動作率100%で動作する。その結果、第2気体溶解部の交換時期は、表4に示すように、T6~T7となる。
【0234】
【0235】
以降は、いずれのUFB生成部も平均して100%の動作率で動作するため、6単位時間毎に交換が発生する。このため、各UFB生成部の交換時期は、
第1UFB生成部 T5~6 T11~12 T17~18 T5~6+6N(N=0,1,2)
第2UFB生成部 T6~7 T12~13 T18~19 T6~7+6N(N=0,1,2)
となる。
【0236】
これまで説明した交換タイミングを列挙すると、
第1循環ポンプ T3~4 T9~10 T15~16 T3~4+6N(N=0,1,2)
第2循環ポンプ T8~9 T14~15 T20~21 T8~9+6N(N=0,1,2)
第1UFB生成部 T4~5 T10~11 T16~17 T4~5+6N(N=0,1,2)
第2UFB生成部 T7~8 T13~14 T19~20 T7~8+6N(N=0,1,2)
第1UFB生成部 T5~6 T11~12 T17~18 T5~6+6N(N=0,1,2)
第2UFB生成部 T6~7 T12~13 T18~19 T6~7+6N(N=0,1,2)
となり、いずれの交換時期も重ならないように制御できていることが理解されよう。
【0237】
図24、及び
図25(a),(b)は、本実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
図24において、S1000では、UFB液作製装置が着荷時の状態、すなわち稼動前の状態であるかを判定する。判定結果がYESの揚合、すなわちUFB液作製装置が稼動前の状態である場合にはS1018に進む。また、判定結果がNOの場合、すなわちUFB液作製装置が既に稼動された状態である場合にはS1001に進む。
【0238】
S1018では、着荷時特有の処理を行う。
図25(a)にS1018の処理の詳細を示す。
図25(a)において、S10181では、第1UFB生成部2051のUFB生成速度(第1UFB生成速度)と第2UFB生成部2052のUFB生成速度(第2UFB生成速度)との関係が、
第1UFB生成速度>第2UFB生成速度
となるように、各UFB生成部の着荷時の生成速度を設定する。また、第1,第2UFB生成部2051,2052それぞれの交換時期を設定する。
【0239】
S10182では、第1気体溶解部2053の気体溶解速度(第1気体溶解速度)と第2気体溶解部202の気体溶解速度(第2気体溶解速度)との関係が、
第1気体溶解速度>第2気体溶解速度
となるように、着荷時の各気体溶解部の溶解速度を設定する。また、第1,第2気体溶解部2031,2032の交換時期を設定する。
【0240】
S10183では、第1循環ポンプ2061による液体の流動速度(第1流動速度)と第2循環ポンプ2062による液体の流動速度(第2流動速度)との関係が、
第1流動速度>第2流動速度
となるように、着荷時の各循環ポンプによる流動速度を設定する。また、第1,第2循環ポンプ2061,2062の交換時期を設定する。
【0241】
このような設定を行うことによって、
図23に示すように、
・第1,第2UFB生成部2051,2052の交換タイミング
・第1,第2気体溶解部2031,2032の交換タイミング
・第1,第2循環ポンプ2061,2062の交換タイミング
が互いに異なるタイミングとなるように制御することが可能になる。
この際、
・第1,第2UFB生成部の交換タイミングの差>UFB生成部の交換所要時間
・第1,第2気体溶解部の交換タイミングの差>気体溶解部の交換所要時間
・第1,第2循環ポンプの交換タイミングの差>循環ポンプの交換所要時間
となるように制御することで、各構成要素の交換とUFB含有液の作製とを並行して行うことが可能になる。
【0242】
以上の処理を行った後、
図24のS1001に進む。S1001~S1003の処理は、
図22のS801~S803の処理と同様であるため、説明を省略する。また、S1003において第1UFB生成部2051が交換時期に達したと判定された場合(YESと判定された場合)には、S1004において第1UFB生成部2051の交換処理を行う。この交換処理の内容の詳細を
図25(b)におけるS10041~10046に示す。S10041~10046の処理は、
図18(a)のS4041~S4046の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0243】
S10047では、
第1UFB生成部の生成速度≒第2UFB生成部の生成速度
となる定常生成速度に設定する。その後、交換した第1UFB生成部2051の次回の交換時期を設定し、S10048の処理に進む。なお、S10048の処理は、
図18(a)のS4048の処理と同様であり、説明を省略する。
【0244】
以上の処理を完了すると、
図24のS1005に進む。S1005では、
図17のS405と同様の処理を行う。
【0245】
次に、S1006において、第2UFB生成部2052の交換処理を行う。この第2UFB生成部2052の交換処理は、
図25(b)に示した第1UFB生成部2051の交換処理と同様に行なう。
【0246】
次に、S1007及びS1009の処理を行う。S1007及びS1009の処理は、
図17のS407及びS409の処理と同様であるため、説明を省略する。また、S1008及びS1010では、第1,第2気体溶解部2031,2032の交換処理を行う。この第1,第2気体溶解部2031,2032の交換処理は、S1004及びS1006における第1,第2UFB生成部2051,2052の交換処理と同様に行なう。
【0247】
次に、S1011及びS1013の処理は、
図17のS411及びS413の処理と同様であるため、説第1,第2循環ポンプ2061,2062の交換を行う。この第1,第2循環ポンプ2061,2062交換処理は、S1004及びS1006におけるUFB生成部2051,2052の交換処理と同様に行なう。さらに、S1
015~S1017では、
図17のS415~S417と同様の処理を行う。
【0248】
以上のように、この第3実施形態では、同一機能を有する2つの構成要素を互いに異なる動作率で動作させるように制御することにより、同一機能を有する構成要素が寿命に達するタイミングをずらすことが可能になる。このため、同一機能を有する2つの構成要素の交換が同時に必要となるのを抑制しつつ、両構成要素を同じ位の累積動作率で交換することが可能になる。また、異なる種類の構成要素の間においても動作率を異ならせるように制御することによって、異なる構成要素の交換が同時に必要になるのを抑制しつつ、いずれの部品も同じ位の累積動作率で交換することが可能になる。
【0249】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を説明する。上記実施形態では、同一機能を有する構成要素を2つ並列して動作させる構成を示したが、同一機能を有する構成要素を3つ以上並列して動作させる構成を採る場合にも、同一機能を有する構成要素が同時に交換が必要となる状態の発生を抑制することができる。本実施形態では、同一の機能を有する構成要素を6個用いることで、交換対象となっていない構成要素の動作率の上昇を2割に抑えた例を示している。
【0250】
図26では、6個のUFB生成部(第1~第6UFB生成部)を並列動作させる場合において、各UFB生成部が順番に交換を要する状態となるように、以下のような制御を行う。
【0251】
・T0~T1において、全てのUFB生成部をそれぞれ動作率100%で動作させる。本例では、第1UFB生成部がタイミングT1で交換を要する状態となり、T0~T1において、第1UFB生成部の交換を行う。このT1~T0の間で、第1UFB生成部はUFB含有液の作製を停止し、動作率が0%となっている。このため、第1UFB生成部が停止したことによって生じたUFB生成能力低下を、残りの5つのUFB生成部で分担することとなる。よって、T1~T2において、第2~第6UFB生成部の動作率は120%となる。
【0252】
同様に、
・T2~T3において、第6UFB生成部を交換し、他のUFB生成部の動作率を120%とする。
・T3~T4において、第4UFB生成部を交換し、他のUFB生成部の動作率を120%とする。
・T4~T5において、第2UFB生成部を交換し、他のUFB生成部の動作率を120%とする。
・T5~T6において、第5UFB生成部を交換し、他のUFB生成部の動作率を120%とする。
・T6~T7において、第3UFB生成部を交換し、他のUFB生成部の動作率を120%とする。
・T7~T8において、第1UFB生成部を交換し、他のUFB生成部の動作率120%とする。
【0253】
この様に、並行動作させる同一種類の構成要素数を増加させることにより、交換対象となっていない構成要素の動作率の増加を抑制することが可能となる。図26に示す例では、6個の構成要素を同時に動作させる場合の通常の動作率(100%)に対し、交換対象となっていない構成要素の動作率を20%上昇させるだけで済む。このため、各UFB生成部を性能限界近くの生成速度で安定して連続稼動と交換を並行して行うことが可能となる。
【0254】
(第5実施形態)
上記の実施形態では、循環ポンプを設けてUFB含有液を循環させる構成を示した。しかし、本発明は、循環ポンプを設けず、気体溶解部とUFB生成部を用いてUFB含有液を循環させない構成にも適用可能である。以下、第5実施形態として、UFB含有液の作製を、循環ポンプを用いずに行う例を説明する。なお、本実施形態の特徴構成を明確にするため、本実施形態の説明に先立ち、循環経路を設けない従来のUFB液作製装置の基本的な構成を説明し、その後、本実施形態の構成、作用を説明する。
【0255】
図35に、従来のUFB液作製装置の構成を示す。
図35に示す装置においては、前述の
図34に示した構成から循環ポンプ106を取り除いた構成となっており、図中、同一部分には同一符号を付し、詳細説明は省略する。
【0256】
図35に示す従来のUFB液作製装置では、液体入力部1
11から、UFB液出力部
119に至る間に1つのUFB液作製部が形成されている。このため、UFB液作製部に設けられている気体溶解部
113あるいはUFB生成部1
15等の構成要素に動作不良が発生した場合、その構成要素の交換のためにUFB含有液の作製を停止させると共に、不図示のUFB利用機器の稼動も停止させる必要が生じる。これは、医療機器やプラント等の連続稼動を必要とする機器のへの利用において大きな課題となる。
【0257】
そこで、本実施形態におけるUFB液作製装置は、
図27に示すような構成を備える。
図27に示すUFB液作製装置は、
図13に示すUFB液作製装置から第1,第2循環ポンプ2061,2062を除いた構成を有し、その他の構成は
図13に示す構成と同様である。
図27において、
図13に示す構成と同一部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省略する。
【0258】
図27に示すように、本実施形態では、液体入力部1010とUFB液出力部1040との間に、2つのUFB液作製部が設けられている。従って、一方のUFB液作製部における気体溶解部またはUFB生成部に動作不良が生じた場合にも、他方の
UFB液部の気体溶解部またはUFB生成部を用いて、UFB含有液の作製と、気体溶解部またはUFB生成部の交換とを並行して行うことができる。
【0259】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態を説明する。本実施形態では、上記実施形態における構成に加えて、UFB液出力部の前段にバッファ槽を設け、UFB液作製装置に設けられている構成要素の交換とUFB含有液の作製の並行作業を、より効率よく実現し得るものとなっている。
【0260】
図28に第6実施形態におけるUFB液作製装置の構成を示す。本実施形態におけるUFB液作製装置は、
図13に示す構成と同様の構成を備えると共に、バルブV50とUFB液出力部1040との間に、バッファ槽1039とバルブV51を追加した構成を有する。なお、
図13に示した構成と同一部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省く。
【0261】
UFB液体出力槽207は、第1,第2UFB生成部2051,2052から供給されるUFB含有液を受容し、受容したUFB含有液を、第1循環ポンプ2061と第2循環ポンプ2062、及びバッファ槽1039に供給する役割を果たす。
【0262】
バッファ槽1039は、UFB液体出力槽207から供給されたUFB含有液を一旦貯蔵し、貯蔵したUFB含有液を適宜、UFB液体出力部1040に供給する役割を果たす。具体的には、バッファ槽1039は、UFB液出力槽207からのUFB含有液の供給量が、UFB液出力部1040への出力量を上回っていた場合には、その剰余分を貯蔵する。また、UFB液出力槽207からの供給量が、UFB液出力部1040への出力量を下回った場合には貯蔵分をUFB液出力部1040へ提供する。このようにしてバッファ槽1039は、UFB液出力部1040に対する出力量を一定にする役割を果たす。
【0263】
なお、UFB含有液を作製する際には、UFB液体出力槽207とバッファ槽1039との間に設けた開閉バルブV50と、バッファ槽1039とUFB液体出力部1040との間に設けた開閉バルブV51を開状態とする。また、着荷時等において、第1,第2気体溶解部2031,2032、第1,第2UFB生成部2051,2052、循環ポンプ2061,2062等の構成要素を設置する場合には、開閉バルブV10、V50、V51を閉状態とする。そして、設置処理が完了した段階で、開閉バルブV10、V50、V51を開状態とし、UFB含有液の作製を開始する。
【0264】
以上の構成を有する本実施形態におけるUFB液作製装置では、装置内の構成要素が交換を要する状態となる前に、UFB含有液の作製量を出力量よりも多く設定することで、UFB含有液をバッファ槽1039に貯蔵しておくことが可能になる。従って、交換時期には、貯蔵したUFB含有液を提供することで、UFB含有液の作製と構成要素の交換作業とを並行して行うことが可能になる。
【0265】
図29に本実施形態により実行される制御のタイミングチャートを示す。
図29の上側の2段には、第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052の駆動・交換のタイミングが示され、下側の2段には、バッファ槽1039におけるUFB含有液の貯蔵量と出力量とが示されている。
【0266】
図29に示すように、本例では、第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052とが、異なるタイミングで交換を要する状態となるように制御を行う。また、UFB含有液の作製をT0から開始させ、バッファ槽UFB含有液の出力をT1から開始させる。
【0267】
T0~T1の期間において、第1UFB生成部2051は動作率120%で動作させ、第2UFB生成部2052は動作率0%で動作させる。また、このT0~T1の期間ではUFB液体出力バッファ槽1039からのUFB含有液の出力は行わず、供給されるUFB含有液を全て貯蔵する。この結果、T1の時点で、UFB液体出力バッファ槽には120%分のUFB含有液が貯蔵される。
【0268】
この後、T1~T2の期間において、第1UFB生成部2051及び第2UFB生成部2052はいずれも120%の動作率で動作させる。またこの間に、バッファ槽1039からは、200%分のUFB含有液が出力される。その結果、T2の時点では、バッファ槽には160%分のUFB液体が貯蔵される。T2~T3の期間においてもT1~T2の期間と同様にUFB含有液の貯蔵が行われ、T3の時点における累積貯蔵量は200%となる。
【0269】
T3のタイミングで第1UFB生成部2051が交換タイミングに達し、T3~T4の期間で第1UFB生成部2051の交換を行う。この間、第2UFB生成部2052は動作率120%で動作させる。よって、T4の時点におけるバッファ槽1039の累積貯蔵量は120%となる。
【0270】
T4~T5及びT5~T6の期間は、T1~T2及びT2~T3の期間と同様の制御を行う。その結果、T5の累積貯蔵量は160%、T6の累積貯蔵量は200%となる。
【0271】
T6のタイミングで第2UFB生成部2052が交換タイミングに達し、T6~T7の期間で第2UFB生成部2051の交換を行う。この間に、第1UFB生成部2052は動作率120%で動作させる。よって、T7の時点における累積貯蔵量は120%となる。
【0272】
このように、
UFB液体出力バッファ槽1039を用いることで、UFB生成部の交換とUFB含有液の作製とを並行して行いながら、UFB生成部の最大動作率を抑えることが可能になる。すなわち、第1実施形態では、
図15に示すように、UFB生成部の最大動作率が200%であるのに対し、本実施形態ではUFB生成部の
最大動作率を120%に抑えることが可能になる。これは、UFB生成部の寿命が長ければ長い程、最大動作率を100%に近づけることが可能であることを意味する。換言すれば、前述の第4実施形態と同様に、UFB生成部の性能限界近くの生成速度で安定した連続稼動を行いつつ、交換作業を並行して行うことが可能になることを意味する。
【0273】
図30及び
図31は、本実施形態により実行されるUFB
含有液生成時の制御動作を示すフローチャートである。
図30において、S1601及びS1612の処理は、
図17のS401
~S412の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0274】
S1613では、第2循環ポンプ
2062の交換が必要になったかを判定し、判定結果がYESの場合(交換を必要とする場合)には、S1614に進む。判定結果がNOの場合(交換を必要としない場合)にはS1615に進む。S1614では、第2気体溶解部20
62の交換処理を行う。この交換処理の内容は、
図17のS41
4の処理と同様であるため、説明を省略する。処理が完了すると、S1615に進む。
【0275】
S1615では、バッファ槽1039へのUFB含有液の出力が必要であるかを判定する。
図29に示す例では、FB含有液の作製速度(バッファ槽への供給速度)とUFB含有液の出力速度(バッファ槽への出力速度)との関係が、
UFB含有液の作製速度≒UFB含有液の出力速度
であるため、T1から継続してUFB含有液の出力が必要となっている。
【0276】
これに対し、
UFB含有液の作製速度>UFB含有液の出力速度
の場合には、適宜一定の時間的な割合でバルブV50の開閉を行うことによって、バッファ槽1039へのUFB含有液の出力を制御する。あるいはバルブV50の開度を制御することによって、バッファ槽1039へのUFB含有液の出力速度を制御する。
【0277】
S1615における判定結果がYESの場合(UFB含有液の出力が必要である場合)にはS1616に進み、判定結果がNOの場合(UFB含有液の出力が必要でない場合)にはS1617に進む。S1616では、バッファ槽1039へのUFB含有液の出力を行う。
図31のフローチャートにS1616で行う処理の詳細を示す。
【0278】
S16191では、開閉バルブV50を開状態とし、UFB液出力槽207とバッファ槽1039とを連通した状態とする。次に、S16192では、UFB液出力槽207からバッファ槽1039へのUFB含有液の供給を開始する。次に、S16193では、必要な量のUFB含有液がバッファ槽1039に供給されたかを判定する。判定結果がYESの場合(供給が終了した場合)には、S16194に進む。また、判定結果がNOの場合(供給が終了していない場合)には、S16192に戻り、UFB含有液の供給を継続する。
【0279】
S16194では、開閉バルブV50を閉状態とし、UFB液出力槽207とバッファ槽1039との連通を遮断した後、
図30のS1617に進む。S1617~S1619の処理は、
図17のS415~S417の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0280】
本実施形態では、S1616において開閉バルブV50を開状態としてUFB出力液槽207とバッファ槽1039とを連通させるようにしたが、S1615における判定結果がNOであった場合には、UFB出力槽207とバッファ槽1039との連通を遮断しても良い。
【0281】
このように、本実施形態では、液体出力バッファ槽1039を設け、
図30のフローチャートに示す制御を行うことにより、UFB含有液の作製と構成要素の交換とを並行して行うことが可能になる。
【0282】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態を説明する。本実施形態では、気体溶解部とUFB液出力槽との間に循環流路を形成すると共に、UFB生成部とUFB液出力槽との間に循環流路を形成した例を説明する。
【0283】
UFB液作製装置1Bは、
図32に示すように、液体供給部10、気体供給部20、溶解ユニット30、第1の貯蔵室40、第1UFB生成部601、第2UFB生成部602等の構成要素を含み構成される。これらの構成要素が、液体や気体を移動可能なように配管で接続されている。図中の矢印の実線は液体の流れ、破線は気体の流れを示している。液体供給部10は本発明の液体入力部に相当し、第1の貯蔵室40は、本発明のUFB液出力部に相当する。また、第1UFB生成部601、第2UFB生成部602及び溶解ユニット30によって本発明の作製部を構成している。
【0284】
液体供給部10には液体11が貯蔵されている。この液体11は、ポンプ233によって、配管231と配管23とで形成される経路を通じて第1の貯蔵室40に供給される。また配管232の途中には脱気部234が配置され、液体11に溶存している気体が除去されるようになっている。脱気部234の内部には、気体のみが通過できる不図示の膜が内蔵されており、気体が膜を通過することで気体と液体とに分離される。溶存気体はポンプ235によって吸引され、排気部236から排気される。このように供給する液体11の溶存気体を除去しておくことで、後述する所望の気体を最大限に溶かし込むことが可能である。
【0285】
気体供給部20は液体11に溶かし込むための所望の気体を供給する機能を有する。気体供給部20は、所望気体を包括するボンベの他、所望気体を連続的に発生することができる装置などでも良い。例えば、所望気体が酸素の場合、大気を取り込み、不要となる窒素を除去することで、連続的に酸素を生成し、内蔵されるポンプで送り込むようにすることも可能である。
【0286】
溶解ユニット30は気体供給部20から供給される気体を、第1の貯蔵室40から供給される液体41に溶解させる機能を有する。なお、この溶解ユニット30には、不図示の溶解度センサが内蔵されている。気体供給部20から供給される気体は前処理部32で放電等の処理がなされ、供給管31を通り、溶解部33へと送り込まれる。また、溶解部33には、第1の貯蔵室40内の液体41が配管211を通って供給される。この液体の供給はポンプ213によって行われる。溶解部33では供給された液体41に気体を溶解させる。溶解部33の先には気液分離室34が配設され、溶解部33で溶解できなかった気体が排気部35から排出される。気体溶解液は配管212を通って第1の貯蔵室40に回収される。
【0287】
第1の貯蔵室40は液体41を貯蔵し、後述する第1の循環経路Aと第2の循環経路Bを中継する役割を果たす。ここで、液体41とは、より詳細には、溶解ユニット30で気体を溶解させた気体溶解液と、後述する第1UFB生成部601及び第2UFB生成部602で作製されたUFB含有液の混合液である。
【0288】
第1の貯蔵室40の外周の全域または一部には冷却部44が配置されている。この冷却部44によって第1の貯蔵室40内の液体41が冷却されるようになっている。液体の温度が低いほど気体の溶解度を高めることができるため、液温は低い方が好ましく、不図示の温度センサで10℃以下程度に制御されている。
【0289】
冷却部44の構成は、液体41を所望の温度にすることができればどのようなものであっても良く、例えば、ペルチェ素子などの冷却装置の他、不図示のチラーによって低温にされた冷却液を循環させるような方式を採ることも可能である。この場合、冷却液が循環できる管が外周を取り巻くように取り付けられているか、あるいは、第1の貯蔵室40の全体が2層構造になっていて、その間を冷却液が通るようにする構成であっても良い。また、冷却管を液体41の中に通す構成であっても良い。このようにして液体41が低温に管理され、気体が溶け込みやすい状態とすることで、溶解部33において、効率良く気体を溶解させることが可能である。
【0290】
また、第1の貯蔵室40に接続されている弁45には、UFB含有液を取り出すための取り出し口46aが形成された出力管46が接続されている。液体41のUFB濃度が不図示の濃度センサなどで管理され、所定値に達した場合には、弁45を開き、UFB含有液を取り出し口46aから取り出すことができる。なお、UFB含有液の取り出し口は第1の貯蔵室40以外の任意の場所に配置されていても良い。なお、第1の貯蔵室40には、液体41の温度や溶解度のムラを少なくするための撹拌機などを設けても良い。
【0291】
第1UFB生成部601及び第2UFB生成部602は第1の貯蔵室40から供給される液体41に溶存している気体からUFBを生成する(気相析出させる)機能を有する。UFBを生成する手段としては、ベンチュリー方式等、UFBを生成できるものであればどのようなものでも良く、本実施形態においては、高精細なUFBを効率良く生成するために、膜沸騰現象を応用してUFBを生成する方式(T-UFB方式)を適用している。具体的な構成としては、前述の基本構成で説明したようなものを適用することが好ましい。
【0292】
第1UFB生成部601には、ポンプ223によって、第1の貯蔵室40から配管221及び開閉バルブVin601を通って液体41が供給される。また、第2UFB生成部602には、ポンプ223によって、第1の貯蔵室40から配管221及び開閉バルブVin602を通って液体41が供給される。
【0293】
第1UFB生成部601及び第2UFB生成部602の上流には不純物やごみなどを捕集するフィルタ224が配設されており、UFB生成部によるUFBの生成が不純物やごみなどによって損なわれるのを抑制している。
【0294】
第1UFB生成部601で作製されたUFB含有液は、開閉バルブVout601及び配管222を通って第1の貯蔵室40へと回収される。また、第2UFB生成部602で作製されたUFBを含むUFB含有液は、開閉バルブVout602及び配管222を通って第1の貯蔵室40へと回収される。
【0295】
なお、本例では、第1UFB生成部601及び第2UFB生成部602の上流にポンプ223を配置しているが、ポンプの配置はこれに限定されるものではなく、効率良くUFB含有液を作製できる位置であれば、他の位置に設けることも可能である。例えば、UFB生成部601,602の下流に配置しても良い。さらに、UFB生成部601,602の上流と下流の両方に配置しても良い。
【0296】
以上説明した上記装置構成において、気体や液体の種類は特に制限されるものではなく、自由に選択することが可能である。また、気体または気体溶解液と接する部分(配管31、211、212、221、222、ポンプ213、223、フィルタ224、第1の貯蔵室40、第1UFB生成部ト601及び第2UFB生成部602の接気液部等)は、耐腐食性の強い材料で形成されていることが好ましい。例えば、接気液説部には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)などのフッ素系樹脂、SUS316Lなどの金属やその他の無機材料が適用されていることが好ましい。これにより、腐食性の強い気体や液体であっても好適にUFBを生成することが可能である。
【0297】
また、第1,第2UFB生成部601,602におけるUFB含有液を流動させるポンプ223は、UFB生成効率を損なわないよう、脈動や流量ばらつきの小さいポンプを適用することが望ましい。これにより、UFB濃度のばらつきの小さいUFB含有液を効率的に作製することができる。
【0298】
上記のように、本実施形態のUFB液作製装置は、気体を溶解するための第1の循環経路A(第1の貯蔵室40→溶解ユニット30→第1の貯蔵室40)と、UFBを生成するための第2の循環経路B(第1の貯蔵室40→UFB生成部601及び602→第1の貯蔵室40)の二つの循環経路を有する。これらの循環経路にはそれぞれポンプ213、223が配置されており、異なる条件で任意に循環させることが可能である。ここで、条件とは、循環流速や循環経路内の圧力、循環タイミングなどである。例えば、UFB液作製装置の稼動開始直後は、液体41が所定温度まで下がったら、所定の溶解度達するまで第1の循環経路Aのみを循環させることができる。本実施形態では、第1の循環経路Aの循環条件は、効率良く気体を加圧溶解させるため、流速を約500~3000mL/min程度、圧力を0.2~0.6MPa程度とした。
【0299】
次に、第2の循環経路Bを循環し、UFB生成部601及び602を動作させてFBを生成する。本実施形態では、第2の循環経路Bの循環条件は、流速を約30~150mL/min程度、圧力を0.1~0.2MPa程度とした。T-UFB方法は膜沸騰による発泡~消泡の過程で発生する圧力差や熱を利用してUFBを生成するため、循環条件としては比較的低速、低圧(大気圧)で良い。
【0300】
また、UFB生成中、すなわち第2の循環経路Bの循環中において、第1の循環経路Aの循環も行うことができる。その利点は次の通りである。液体41に溶存していた気体がUFB生成部601及び602でUFBとして析出すると、その体積分だけ、新たに気体が溶解できる領域が液体中に生まれる。従って、その液体を溶解ユニット30へと供給して気体を溶解させ、再度、UFB生成部601及び602でUFBを生成することで、さらに濃度の高いUFB含有液を作ることが可能になる。この時の第1の循環経路Bの循環は必ずしも連続的である必要はなく、気体の溶解速度が高い場合には断続的に循環すれば良い。
【0301】
このように第1の循環経路Aと第2の循環経路Bをそれぞれ異なる条件で循環可能な構成とすることで、気体溶解とUFB生成をそれぞれ同時に最適な条件で循環させることができ、効率良く高濃度なUFB含有液を作製することができる。
【0302】
上述した循環方法はあくまで一例であり、これに限ることなく、任意に循環方法を設定することができる。
【0303】
さらに、本実施形態のUFB液作製装置においては、前述の通りT-UFB方式を採用しているため、UFB生成部における圧力は大気圧程度で良い。従って、装置内で比較的高い圧力となる領域は、溶解ユニット30に連通する配管211のポンプ213の下流から気液分離室34までで良い。このため、安価かつ小型なUFB液作製装置を実現することが可能であり、メンテナンスも容易であるといった利点もある。
【0304】
また、第1,第2UFB生成部601,602におけるUFB含有液を流動させるポンプ223は、UFB生成効率を損なわないよう、脈動や流量ばらつきの小さいポンプを適用することが望ましい。これにより、UFB濃度のばらつきの小さいUFB含有液を効率的に作製することができる。
【0305】
また、本実施形態では、液体供給部から供給された液体と気体とを溶解させた気体溶解液を、第1,第2UFB生成部601,602に供給することによってUFB含有液を作製し、作製した液体を液体出力部としての第1の貯蔵室40から出力させる構成を有する。このため、第1,第2UFB生成部のうち、一方のUFB生成部に動作不良が生じた場合にも、他方のUFB生成部でUFB含有液の作製を継続しつつ、動作不良が生じたUFB生成部の交換を並行して行うことが可能になる。
【0306】
具体的には、上記の開閉バルブVin601、Vout601、Vin602、Vout602の開閉を制御することによって、動作不良の発生したUFB含有液の作製経路から第1UFB生成部601または第2UFB生成部602を隔離させる。また、動作不良が発生していないUFB生成部はUFB含有液の作製経路との接続を保ち、当該UFB生成部によってUFB含有液の作製を継続しながら、他方のUFB生成部の交換処理を行うことができる。
【0307】
また、UFB生成部以外の構成要素、例えば、溶解ユニット30、ポンプ213、ポンプ223などをそれぞれ複数備え、各構成要素の上流と下流に開閉バルブや切換バルブ等を配置するようにしても良い。これによれば、複数の溶解ユニットや複数のポンプにおいて、1つの溶解ユニットや1つのポンプに動作不良が発生した場合にも、他の正常な溶解ユニットやポンプを用いてUFB含有液の作製を継続することが可能になる。
【0308】
また、UFB含有液の作製速度を維持するように気体溶解部としての溶解ユニット、ポンプを制御することで、UFB濃度やUFB含有液の作製速度などの生成能力を大きく低下させることなく、UFB含有液の作製を継続することが可能となる。
【0309】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、気体溶解部、UFB生成部、循環ポンプ等の構成要素をそれぞれ2つずつ設けた例を示した。しかし、これら3種類の構成要素の中の1つまたは2つを、単一の構成要素によって構成することも可能である。例えば、
図33に示すように、単一の気体溶解部2031と、単一の循環ポンプ2061とを備える構成とすることも可能である。但し、この場合にも、UFB生成部については、第1,第2UFB生成部2051,2052を設ける。なお、
図33では、第1UFB生成部2051と第2UFB生成部
2052とを切換弁Sin2061,Sout2061により選択的に使用する例を示しているが、
図13に示す例と同様に、開閉バルブを用いることも可能である。
【0310】
また、上記第1実施形態では、液体入力部1010とUFB液出力部1040との間に設けられる第1UFB液作製部1020と第2UFB液作製部1030とが、互いに連通した構成を有している。すなわち、第1気体溶解部2031と第2気体溶解部2032とが液体入力槽と気体溶解液出力槽とによって互いに連通し、第1UFB生成部2051と第2UFB生成部2052とが、気体溶解液出力槽とUFB液出力槽とによって互いに連通している。さらに、第1循環ポンプと第2循環ポンプとがUFB液出力槽と液体入力槽とによって互いに連通している。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、第1UFB液作製部と第2UFB液作製部とを、互いに連通しない独立した構成とすることも可能である。この場合、各UFB液作製部によって生成されたUFB含有液が1つの液体出力部に回収されるようにする。これによれば、いずれか一方のUFB液作製部に設けられる構成要素の一部に動作不良が発生した場合にも、他方のUFB液作製部によって生成動作を継続することが可能であり、UFB含有液の作製と交換処理とを並行して実行することが可能になる。
【0311】
また、液体入力部1010とUFB液出力部1040との間に3つ以上のUFB液作製部を設けることも可能である。前述の第3実施形態では、6個のUFB生成部を設ける例を示したが、気体溶解部、循環ポンプなどの構成要素を3個以上設けることも可能である。
【符号の説明】
【0312】
1A ウルトラファインバブル含有液作製装置
1010 液体入力部
1040 UFB液出力部
1020 第1UFB液作製部
1030 第2UFB液作製部
2051 第1UFB生成部
2052 第2UFB生成部