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特許7433861インプリント装置、インプリント方法、物品の製造方法、基板、および、型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、物品の製造方法、基板、および、型
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240213BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019214456
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021086908
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】縄田 亮
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219333(JP,A)
【文献】特開2013-197107(JP,A)
【文献】特表2012-507882(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213133(WO,A1)
【文献】特開2015-037122(JP,A)
【文献】特開2008-257060(JP,A)
【文献】特開2008-306030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の各ショット領域に設けた複数のマークと型の複数のマークとを用いて、前記基板の各ショット領域と前記型との位置合わせを行い、前記基板のショット領域上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
各ショット領域において、少なくとも前記基板の複数のマークを検出する検出部と、
各ショット領域において、前記基板の中心に最も近い第1マークと、前記第1マークに対して前記ショット領域の一辺に沿う第1軸の方向に配置された第2マークと、前記第1マークに対して前記第1軸と垂直な第2軸の方向に配置された第3マークと、を前記位置合わせのために用いる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記ショット領域が前記基板の外周を含む外周部に位置しない場合と比較して、前記ショット領域の前記基板の中心に近い位置に配置されたマークを前記第2マークとして用い、
前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記ショット領域が前記基板の外周を含む外周部に位置しない場合と比較して、前記ショット領域の前記基板の中心に近い位置に配置されたマークを前記第3マークとして用いることを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記第1マークと前記第2マークとの距離が、前記第1マークと前記第3マークとの距離より短いようにしたことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記第1マークと前記第3マークの距離が、前記第1マークと前記第2マークの距離より短いようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記ショット領域の中心を通る前記第1軸上に配置されたマークを前記第2マークとして用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記ショット領域の中心を通る前記第2軸上に配置されたマークを前記第3マークとして用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記第2マークに対して前記第2軸の方向に配置されたマークを第4マークとして更に用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記第3マークに対して前記第1軸の方向に配置されたマークを第4マークとして更に用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記第2マークに対して前記第2軸の方向、且つ、前記第3マークに対して前記第1軸の方向に位置するマークを前記第4マークとして用いることを特徴とする請求項6または7に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記基板の複数のマークからユーザによって選択されたマークが、前記制御部が前記基板の外周を含む外周部に位置する前記ショット領域の前記位置合わせを行う場合に用いるマークと異なる場合に、前記ユーザに警告することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記制御部が用いるマークを表示画面に表示させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
基板の各ショット領域に設けた複数のマークと型の複数のマークとを用いて、前記基板の各ショット領域と前記型との位置合わせを行い、前記基板のショット領域上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
各ショット領域において、少なくとも前記基板の複数のマークを検出する検出部と、
各ショット領域において、前記基板の中心に最も近い第1マークと、前記第1マークに対して前記ショット領域の一辺に沿う第1軸の方向に配置された複数の第2マークの内の少なくとも1つと、前記第1マークに対して前記第1軸と垂直な第2軸の方向に配置された複数の第3マークの内の少なくとも1つを、前記位置合わせのために用いる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う際に、前記ショット領域の前記基板の中心から最も遠い位置に配置された前記第2マークの重みを他の第2マークの重みより下げ、
前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う際に、前記ショット領域の前記基板の中心から最も遠い位置に配置された前記第3マークの重みを他の第3マークの重みより下げることを特徴とするインプリント装置。
【請求項12】
前記制御部は、重みを下げた前記第2マークまたは重みを下げた前記第3マークを、前記位置合わせに用いないことを特徴とする請求項11に記載のインプリント装置。
【請求項13】
基板の各ショット領域に設けた複数のマークと型の複数のマークとを用いて、前記基板の各ショット領域と前記型との位置合わせを行い、前記基板のショット領域上にインプリント材のパターンを形成するインプリント方法であって、
各ショット領域において、少なくとも前記基板の複数のマークを検出する検出工程と、
各ショット領域において、前記基板の中心に最も近い第1マークと、前記第1マークに対して前記ショット領域の一辺に沿う第1軸の方向に配置された第2マークと、前記第1マークに対して前記第1軸と垂直な第2軸の方向に配置された第3マークと、を前記位置合わせのために用いる位置合わせ工程と、を有し、
前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせ工程を行う場合に、前記ショット領域が前記基板の外周を含む外周部に位置しない場合と比較して、前記ショット領域の前記基板の中心に近い位置に配置されたマークを前記第2マークとして用い、
前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせ工程を行う場合に、選択工程において、前記ショット領域が前記基板の外周を含む外周部に位置しない場合と比較して、前記基板の中心に近い位置に配置されたマークを前記第3マークとして用いることを特徴とするインプリント方法。
【請求項14】
基板の各ショット領域に設けた複数のマークと型の複数のマークとを用いて、前記基板の各ショット領域と前記型との位置合わせを行い、前記基板のショット領域上にインプリント材のパターンを形成するインプリント方法であって、
各ショット領域において、少なくとも前記基板の複数のマークを検出する検出工程と、
各ショット領域において、前記基板の中心に最も近い第1マークと、前記第1マークに対して前記ショット領域の一辺に沿う第1軸の方向に配置された複数の第2マークの内の少なくとも1つと、前記第1マークに対して前記第1軸と垂直な第2軸の方向に配置された複数の第3マークの内の少なくとも1つを、用いて前記位置合わせをする位置合わせ工程と、を有し、
前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせ工程を行う場合に、前記ショット領域の前記基板の中心から最も遠い位置に配置された前記第2マークの重みを他の第2マークの重みより下げ、
前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記ショット領域の前記基板の中心から最も遠い位置に配置された前記第3マークの重みを他の第3マークの重みより下げることを特徴とするインプリント方法。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてパターンを前記基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインプリント装置に用いられ、複数のショット領域と、型との位置合わせに用いられる複数のマークが各ショット領域に設けられた基板であって、
それぞれのショット領域に、前記基板の中心に最も近い第1マークと、前記第1マークに対して前記ショット領域の一辺に沿う第1軸の方向に配置された第2マークと、前記第1マークに対して前記第1軸と垂直な第2軸の方向に配置された第3マークと、を有し、
前記第2マークは、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域において、前記基板の外周を含む外周部に位置しないショット領域と比較して、前記ショット領域の前記基板の中心に近い位置に配置され、
前記第3マークは、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域において、前記基板の外周を含む外周部に位置しないショット領域と比較して、前記ショット領域の前記基板の中心に近い位置に配置されることを特徴とする基板。
【請求項17】
請求項16に記載の基板に含まれる前記第1~第3のマークと対応する位置に設けられた複数のマークを有する型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、物品の製造方法、基板、および、型に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの物品を製造する方法として、型(モールド)を用いて基板上のインプリント材を成形するインプリント方法が知られている。インプリント方法は、基板上にインプリント材を供給し、供給されたインプリント材と型を接触させる(押印)。そして、インプリント材と型を接触させた状態でインプリント材を硬化させた後、硬化したインプリント材から型を引き離す(離型)ことにより、基板上にインプリント材のパターンが形成される。
【0003】
インプリント技術において、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法は、基板上のショット領域に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態で光を照射(以下、本露光)してインプリント材を硬化させる。そして、硬化したインプリント材から型を引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する方法である。
【0004】
半導体デバイスの製造工程においては、複数のパターンが重ね合わされる。従って、基板に形成されているショット領域(パターン)の位置と、型に形成されているパターンの位置とを合わせる必要がある。型と基板との位置合わせの精度は、オーバーレイ精度と呼ばれ、インプリント装置では、オーバーレイ精度を向上させるための技術が従来から提案されている。このような技術として、特許文献1では、基板上のアライメントマークと型上のアライメントマークのずれを、アライメントスコープを用いて計測し、そのずれを低減するように基板ステージを駆動することで、オーバーレイ精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-281072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インプリント工程には、インプリント材を硬化させるために光を照射する工程(本露光)が含まれる。また、オーバーレイ精度を向上させるために、基板に光を照射することによって加熱して熱変形させ、基板の形状を型の形状に高次の形状成分まで一致させる工程(加熱露光)など、光を照射することにより基板に熱を加える工程が存在する。このような工程により基板に熱が加えられた場合、基板の外周領域(エッジ領域)を含まないショット領域では、基板チャックによる拘束条件が概ね一様であるため、基板のショット領域全体が、ショットの外側に向かった概ね均等に伸びる。しかし、基板の外周領域を含むショット領域では、基板の外周領域を境として基板の拘束条件が大きく異なるため、ショットの基板の中心側と基板の外周領域側とで、基板の伸びる量が異なる。特許文献1のインプリント装置では、基板の外周領域を含むショットにおけるアライメントマークの配置及びアライメントマークの選定方法については何も述べられていない。
【0007】
そこで、本発明は、例えば、基板の外周に位置するショットにおいてオーバーレイ精度を向上する点で有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、基板の各ショット領域に設けた複数のマークと型の複数のマークとを用いて、前記基板の各ショット領域と前記型との位置合わせを行い、前記基板のショット領域上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、各ショット領域において、少なくとも前記基板の複数のマークを検出する検出部と、各ショット領域において、前記基板の中心に最も近い第1マークと、前記第1マークに対して前記ショット領域の一辺に沿う第1軸の方向に配置された第2マークと、前記第1マークに対して前記第1軸と垂直な第2軸の方向に配置された第3マークと、を前記位置合わせのために用いる制御部と、を有し、前記制御部は、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第1軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記ショット領域が前記基板の外周を含む外周部に位置しない場合と比較して、前記ショット領域の前記基板の中心に近い位置に配置されたマークを前記第2マークとして用い、前記基板の外周を含む外周部に位置し、且つ、中心が前記第2軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う場合に、前記ショット領域が前記基板の外周を含む外周部に位置しない場合と比較して、前記ショット領域の前記基板の中心に近い位置に配置されたマークを前記第3マークとして用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、基板の外周に位置するショットにおいてオーバーレイ精度を向上する点で有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態におけるインプリント装置の構成を示す概略図である。
図2】第1実施形態に係るインプリント処理を示すフローチャートである。
図3】ショット領域の全面に加熱露光を行う場合の一例を示す図である。
図4】基板の外周部に位置しないショットのアライメントマークの一例を示す図である。
図5】外周部に位置しないショットの露光熱による膨張を説明する図である。
図6】基板の外周部に位置するショットのアライメントマークの一例を示す図である。
図7】外周部に位置するショットの露光熱による膨張を説明する図である。
図8】基板の外周部に位置するショットのアライメントマークの一例を示す図である。
図9】外周部に位置するショットの露光熱による膨張を説明する図である。
図10】第2実施形態に係る基板の外周部に位置するショットのアライメントマークの一例を示す図である。
図11】第2実施形態に係る基板の外周部に位置するショットのアライメントマークの一例を示す図である。
図12】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態におけるインプリント装置100の構成を示す概略図である。図1を用いてインプリント装置100の構成について説明する。図1(A)は、型10と基板1上のインプリント材60とが接触する前の状態を示し、図1(B)は、型10と基板1上のインプリント材60とが接触した状態を示している。以下の図において、基板表面に平行な面内に互いに直交するX軸及びY軸をとり、X軸及びY軸に垂直な方向をZ軸として説明する。
【0013】
インプリント装置100は、基板1を保持する基板保持部23と、インプリント材60を供給する供給部18と、型10を保持する型保持部24と、第1光源16と、第2光源30と、第3光源40と、アライメントスコープ21と、制御部35と、を備える。インプリント装置100は、基板1上に供給されたインプリント材60を型10と接触させ、インプリント材60に硬化用のエネルギーを与えることにより、型10の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。図1のインプリント装置100は、物品としての半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用される。ここでは光硬化法を採用したインプリント装置100について説明する。
【0014】
基板保持部23は、基板チャック2と、θステージ3(回転駆動機構)と、XYステージ4(XY駆動機構)と、を備える。基板チャック2は、例えば、真空吸着力や静電吸着力によって基板1を保持する。図1において、基板1は、基板チャック2に保持されている。θステージ3は、基板1のθ方向(Z軸回りの回転方向)の位置を補正し、基板1のX方向とY方向の位置決めするためのXYステージ4上に配置される。XYステージ4は、リニアモータ19によりX方向及びY方向駆動される。θステージ3及びXYステージ4は、基板チャック2を保持し、基板チャック2に保持された基板1を移動させる。XYステージ4は、ベース5上に載置される。さらに、基板保持部23は、基板1のZ軸方向の位置調整のための駆動系や、基板1の傾きを補正するためのチルト機能などを有していても良い。リニアエンコーダ6は、ベース5上に、X方向及びY方向に取り付けられ、XYステージ4の位置を計測する。支柱8は、ベース5上に屹立し、天板9を支えている。
【0015】
基板1は、例えば、単結晶シリコン基板やSOI(Silicon On Insulator)基板などが用いられる。また、基板1には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。具体的には、基板1は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。基板1は、複数のショット領域が形成されており、ショット領域上には供給部18によってインプリント材60が供給(塗布)される。インプリント装置100は、ショット領域毎にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を繰り返すことで、基板1の全面にパターンを形成することができる。また、基板1の各ショット領域には、型10との位置合わせに用いられる複数のアライメントマークが設けられる。
【0016】
インプリント材60としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、紫外線等でありうる。硬化性組成物は、光の照射により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。本実施形態では、一例として、紫外線によって硬化する性質を持つ光硬化性組成物をインプリント材60として用いる。インプリント材60は、供給部18により、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状または膜状となって基板1上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。また、インプリント材60は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。
【0017】
供給部18(ディスペンサ)は、基板1上にインプリント材60を供給する。供給部18は、例えば、吐出ノズル(不図示)を有しており、吐出ノズルから基板1上にインプリント材60を供給する。なお、本実施形態において、供給部18は、一例として基板1の表面に液状のインプリント材60を滴下することにより基板1上にインプリント材を供給する。供給部18によって供給されるインプリント材の量は、必要となるインプリント材の厚さや形成するパターン密度などによって決められても良い。また、供給部18はインプリント装置100に必ずしも設けられていなくてもよく、インプリント装置100外に設けられた供給部によってインプリント材を基板1上に供給してもよい。
【0018】
型10は、基板上のインプリント材を成形するための型である。型は、(モールド)、テンプレートまたは原版とも呼ばれうる。型10は、例えば、外周部が矩形で、基板1に対向する面に基板1上に供給されたインプリント材60に転写される凹凸状のパターンが3次元形状に形成されたパターン領域Pを備える。パターン領域Pは、メサ部とも呼ばれる。パターン領域Pは、型10のパターン領域P以外(パターン領域Pを囲む領域)が基板1に接触しないように数十μm~数百μmの凸部に形成されている。型10は、基板上のインプリント材を硬化させるための光(紫外線)を透過する材料、例えば、石英などで構成されている。また、型10は、基板1との位置合わせに用いられ、基板1に含まれるアライメントマークに対応する複数のアライメントマークを有する。
【0019】
型保持部24は、型チャック11と、型ステージ22と、リニアアクチュエータ15(型駆動機構)と、を含む。型チャック11は、真空吸着力や静電吸着力などによって型10を保持する。型チャック11は、型ステージ22によって保持される。型ステージ22は、型10のZ位置の調整機能、及び、型10の傾きを補正するためのチルト機能を有する。リニアアクチュエータ15は、型チャック11に保持された型10をZ軸方向に駆動して、型10を基板1上のインプリント材60に接触させ、引き離す。リニアアクチュエータ15は、例えばエアシリンダまたはリニアモータである。なお、型ステージ22は、X軸方向やY軸方向、または各軸のθ方向の位置調整機能を有していてもよい。型チャック11及び型ステージ22は、第1光源16から照射される光を型10へと通過させる開口(不図示)をそれぞれ有する。
【0020】
第1光源16は、基板1上のインプリント材60を硬化させる処理において、インプリント材60を硬化させる光(紫外線)を、コリメータレンズ17aを介して基板1に照射する。ここでは第1光源16としてi線(365nm)を用いる。ビームスプリッタ20は、第1光源16の光路中にあり、アライメントスコープ21により型10の接触状態を観察するために使用される光とインプリント材60を硬化させる光とを分ける。アライメントスコープ21は、ビームスプリッタ20を介して型10のパターン領域Pを撮像する。また、アライメントスコープ21は、型10及び基板1に形成されたアライメントマークAMを検出する検出部としても機能する。
【0021】
第2光源30は、基板1上のインプリント材60を硬化させる処理において、インプリント材60の粘弾性を高める光(紫外線)を、コリメータレンズ17bを介して基板1に照射する。第2光源30は、インプリント材60を硬化させる光(紫外線)の照度、照射領域、照射時間を変化させることができる。ここでは第2光源30として波長405nmの光源を用いる。
【0022】
第3光源40は、型10と基板1の位置合わせ処理において、基板1を熱変形させる光を、コリメータレンズ17cを介して基板1に照射する。第3光源40は、基板1を熱変形させることを目的としているので、インプリント材60の粘弾性を高めることを目的としている第2光源30とは、波長帯域が異なる。ここでは第3光源40として波長465nmの光源を用いる。
【0023】
制御部35は、インプリント装置100を構成する各部の動作、及び調整等を制御する。制御部35は、例えば、コンピュータなどで構成され、インプリント装置100を構成する各部に回線を介して接続され、プログラムなどにしたがって各部の制御を実行しうる。制御部35は、インプリント装置100内に設けてもよいし、インプリント装置100とは別の場所に設置し遠隔で制御しても良い。
【0024】
次に、上記のように構成されたインプリント装置100によるインプリント処理について説明する。図2は、第1実施形態に係るインプリント処理を示すフローチャートである。各ステップは、制御部35によるインプリント装置100の各部の制御により実行されうる。まず、インプリントに必要な各種パラメータの設定を行う(ステップS0)。その後、インプリント装置100のXYステージ4を駆動し、基板1が載置された基板チャック2をX方向及びY方向に移動させ、インプリント処理の対象となるショット領域(以下、対象ショット領域)を供給部18の下に配置する(ステップS1)。そして、所定量の未硬化のインプリント材60を基板1上に供給する(ステップS2)。
【0025】
次に、対象ショット領域が型10のパターン領域Pと対向する位置に配置されるように、再び、XYステージ4を駆動して基板チャック2を移動させ、θステージ3を駆動して基板1のθ方向位置を補正する(ステップS3)。続いて、リニアアクチュエータ15を駆動することにより、型ステージ22を-Z方向に移動させ、型10を基板1上の未硬化のインプリント材60と接触させる(接触工程、ステップS4)。ステップS4では、型ステージ22を移動させる代わりに基板保持部23をZ方向に移動させてもよいし、型ステージ22と基板保持部23をそれぞれ移動させてもよい。型チャック11または型ステージ22には、複数のロードセル(不図示)が備えられうる。制御部35は、複数のロードセルの出力から、型10と基板1上の未硬化のインプリント材60とを接触させた際に生じる接触力が最適であるか判断する(ステップS5)。
【0026】
接触力が最適でない場合(ステップS5、NO)、型ステージ22は、型10のインプリント材60との接触力が所定値となるように、複数のロードセルの出力に応じて、型チャック11の傾きを変化させる。また、リニアアクチュエータ15により押し付け量を変えることにより、型10をインプリント材に押し付ける力が調整される(ステップS6)。
【0027】
接触力が最適である場合(ステップS5、YES)、第2光源30から基板1上のインプリント材60に光(紫外線)の照射(予備露光)を行い、インプリント材60の粘弾性を増加させる(ステップS7)。その後、基板1を熱変形させるために、第3光源40から基板1上に光の照射(以下、加熱露光)を行っている(ステップS8)。加熱露光では、光をショット領域の一部に照射してもよいし、全面に照射してもよい。図3は、ショット領域の全面に加熱露光を行う場合の一例を示す図である。ショット領域の全面に光を照射する場合には、図3に示すように照度に分布を持たせてもよい。これにより、基板1を所望の形状に熱変形させることができ、型10のパターン領域Pと基板1のショット領域の位置合わせをより高次な形状まで行うことができる。ただし、加熱露光(ステップS8)で加えられた熱は、基板1を伝導し、拡散してしまうので、加熱露光(ステップS8)は、本露光(ステップS10)の直前に行われることが望ましい。
【0028】
その後、型10及び基板1に形成されたアライメントマークAMをアライメントスコープ21で検出し、検出された計測結果を基に位置合わせを行う。計測結果から型10と基板1の相対的なずれを求め、XYステージ4及びθステージ3を駆動し、型10と基板1との位置合わせを行う(ステップS9)。ここでは、予備露光(ステップS7)、加熱露光(ステップS8)、XYステージ4及びθステージ3を駆動(ステップS9)の順番で行っているが、これらを同時に行っても良い。
【0029】
型10と基板1の位置合わせを行った後、第1光源16により基板1上のインプリント材60に光(紫外線)の照射(本露光)を行い、インプリント材60を硬化させる(ステップS10)。本露光の照射領域は、ショット領域の全面である。所定時間の光(紫外線)の照射が終わると、リニアアクチュエータ15を駆動することにより、型ステージ22を+Z方向に上昇させ、基板1上の硬化したインプリント材60から型10を引き離す離型工程(ステップS11)が行われる。ステップS11では、型ステージ22を移動させる代わりに基板保持部23をZ方向に移動させてもよいし、型ステージ22と基板保持部23をそれぞれ移動させてもよい。
【0030】
その後、基板1上の全てのショット領域へのパターン形成が終了したか判断する(ステップS12)。インプリント材のパターンを形成するショット領域が残っている場合には、次の対象ショット領域へのインプリント材60の供給を行うために、XYステージ4を駆動し、基板1を移動させる(ステップS1)。これら一連の処理を、基板1上の全てのショット領域へのパターン形成が終了するまで繰り返す。全てのショット領域へのパターン形成が終了すると、XYステージ4を駆動して基板1を所定の位置に移動させ(ステップS13)、1枚の基板1に対するインプリント処理を終了する。
【0031】
次に、型10と基板1との位置合わせ(ステップS9)に用いるアライメントマークAMについて説明する。図4は、基板1の外周部に位置しないショットのアライメントマークAMの一例を示す図である。ここでは、基板1の中心までの距離が一番短いアライメントマーク、換言すると、ショット領域において、基板1の中心に最も近いアライメントマークを第1アライメントマークAM1と呼ぶ。第1アライメントマークAM1のX軸上に位置するアライメントマークを第2アライメントマークAM2、第1アライメントマークAM1のY軸上に位置するアライメントマークを第3アライメントマークAM3と呼ぶ。なお、ここで、第1アライメントマークAM1のX軸上に位置するとは、第1アライメントマークAM1の一部を通るX軸上に、第2アライメントマークAM2の一部が配置されている場合を含む。即ち、第2アライメントマークAM2は、第1アライメントマークAM1に対してX軸の方向に配置されているともいえる。また、第1アライメントマークAM1のY軸上に位置するとは、第1アライメントマークAM1の一部を通るY軸上に、第3アライメントマークAM3の一部が配置されている場合を含む。即ち、第3アライメントマークAM3は、第1アライメントマークAM1に対してY軸の方向に配置されているともいえる。更に、第2アライメントマークのY軸上且つ、第3アライメントマークのX軸上に位置するアライメントマークを第4アライメントマークAM4と呼ぶ。なお、本明細書において、X軸は、ショットの一辺に沿う軸であり、Y軸はX軸に垂直な軸である。
【0032】
アライメントスコープ21は、基板1上のショット領域のアライメントマークAMと、それに対応する型10上のアライメントマーク(不図示)のX軸方向とY軸方向のずれ量を計測する。各アライメントマークのX軸方向とY軸方向のずれ量を、それぞれ(dX1、dY1)、(dX2、dY2)、(dX3、dY3)、(dX4、dY4)とする。基板1上のショット領域に対する型10のX軸方向のずれ量(ShX4)は、近似的に式1で表され、Y軸方向のずれ量(ShY4)は、近似的に式2で表される。
(式1)ShX4=(dX1+dX2+dX3+dX4)/4
(式2)ShY4=(dY1+dY2+dY3+dY4)/4
【0033】
インプリント工程には、加熱露光、予備露光、本露光などがあり、その露光熱により、基板1が熱膨張する。図5は、外周部に位置しないショットの露光熱による膨張を説明する図である。基板1の外周領域を含まないショット、言い換えると、外周部に位置しないショットは、基板1がショット領域外の全方向に連続であり、基板チャック2による拘束力もショット領域外の全方向に関して連続である。このため、露光熱によるショット領域の膨張は、図5に示すようにショット中心(CS)からほぼ放射状になる。よって、露光熱により基板が熱膨張しても、基板1上のショット領域に対する型10のX軸方向、Y軸方向のずれ量(ShX4、ShY4)の計測精度に与える影響は小さい。
【0034】
図6は、基板1の外周部に位置するショットのアライメントマークAMの一例を示す図である。本図では、基板1の外周部に位置し、ショット中心(CS)が基板1のX軸から±45°の範囲内にあるショットのアライメントマークAMの一例を示している。なお、ここで、外周部に位置するショットとは、基板1の外周1R付近に配置され、基板1の外周1Rを含むショット領域、および、外周1Rに接するショット領域を含む。外周部に位置するショットは、外周領域を含むショットということもできる。図6(A)の、第1アライメントマークAM1a、第2アライメントマークAM2a、第3アライメントマークAM3aは、図4に示す基板の外周部に位置しないショットのアライメントマークとショット域内の位置が同じものを用いている。図6に示すようにアライメントマークが3個の場合は、基板1上のショット領域に対する型10のX軸方向のずれ量(ShX3)は、近似的に式3で表され、Y軸方向のずれ量(ShY3)は、近似的に式4で表される。
(式3)ShX3=(dX1+dX2×2+dX3)/4
(式4)Sh3=(dY1+dY2+dY3×2)/4
【0035】
インプリント工程には、加熱露光、予備露光、本露光などがあり、その露光熱により、基板1が熱膨張する。図7は、外周部に位置するショットの露光熱による膨張を説明する図である。基板1の外周部に位置し、ショット中心(CS)が基板1のX軸から±45°の範囲内にあるショットは、幾何学的な関係からX軸方向に伸び易い。そして、基板1がショット領域外のX軸方向に不連続であり、基板チャック2による拘束力もX軸方向に関して不連続である。そのため、露光熱による基板1の外周領域側の第2アライメントマークAM2aのX軸方向の移動量は、図7(A)に示すように基板1の中心領域側の第1アライメントマークAM1aの移動量に比べて大きくなる。更に、第2アライメントマークAM2aのX軸方向の移動量は、基板1と基板チャック2との摩擦の影響を受けるので、再現性が悪い。そのため、露光熱により基板1が熱膨張すると、基板1上のショット領域に対する型10のX軸方向のずれ量(ShX3)の計測精度を悪化させる。
【0036】
そこで、本実施形態では、制御部35は、図6(B)に示す第2アライメントマークAM2bをアライメントに用いる。図6(B)に示す第2アライメントマークAM2bは、図6(A)に示す第2アライメントマークAM2aと比較して基板1の中心に近い位置に配置されている。これより、第2アライメントマークAM2bは、図7(B)に示すように基板1の外周部の影響を受けにくくなり、基板1上のショット領域に対する型10のX軸方向のずれ量(ShX3)の計測精度を向上することができる。図6(B)のように、第1アライメントマークAM1bと第3アライメントマークAM3b間の距離に比べて、第1アライメントマークAM1bと第2アライメントマークAM2b間の距離が短くなるように第2アライメントマークAM2bを配置しても良い。また、第2アライメントマークAM2bをショットのX軸の中線上に配置しても良い。これにより、第2アライメントマークAM2bは、X軸に関して露光熱による基板1の熱膨張の中央部になるので、熱膨張の影響を受けにくくなる。
【0037】
図8は、基板の外周部に位置するショットのアライメントマークの一例を示す図である。本図は、基板1の外周部に位置し、ショット中心(CS)が基板1のY軸から±45°の範囲内にあるショットのアライメントマークAMを示している。図8(A)では、第1アライメントマークAM1a、第2アライメントマークAM2a、第3アライメントマークAM3aとして、図4に示す基板の外周部に位置しないショットとショット領域内の位置関係が同じものを用いている。
【0038】
インプリント工程には、加熱露光、予備露光、本露光などがあり、その露光熱により、基板1が熱膨張する。図9は、外周部に位置するショットの露光熱による膨張を説明する図である。基板1の外周部に位置し、ショット中心(CS)が基板1のY軸から±45°の範囲内にあるショットは、幾何学的な関係からY軸方向に伸び易い。そして、基板1がショット領域外のY軸方向に不連続であり、基板チャック2による拘束力もY軸方向に関して不連続である。そのため、露光熱による基板1の外周領域側の第3アライメントマークAM3aのY軸方向の移動量は、図9(A)に示すように基板1の中心領域側の第1アライメントマークAM1aの移動量に比べて大きくなる。更に、第3アライメントマークAM3aのY軸方向の移動量は、基板1と基板チャック2との摩擦の影響を受けるので、再現性が悪い。そのため、露光熱により基板1が熱膨張すると、基板1上のショット領域に対する型10のY軸方向のずれ量(ShY3)の計測精度を悪化させる。
【0039】
そこで、本実施形態では、図8(B)に示す第3アライメントマークAM3cをアライメントに用いる。図8(B)に示す第3アライメントマークAM3cは、図8(A)に示す第3アライメントマークAM3aと比較して基板1の中心に近い位置に配置されている。これより、第3アライメントマークAM3cは、図9(B)に示すように基板1の外周部の影響を受けにくくなり、基板1上のショット領域に対する型10のY軸方向のずれ量(ShY3)の計測精度を向上することができる。図9(B)のように、第1アライメントマークAM1cと第2アライメントマークAM2c間の距離に比べて、第1アライメントマークAM1cと第3アライメントマークAM3c間の距離が短くなるように第3アライメントマークAM3cを配置しても良い。また、第3アライメントマークAM3cをショットのY軸の中線上に配置しても良い。これにより、第3アライメントマークAM3cは、Y軸に関して露光熱による基板1の熱膨張の中央部になるので、熱膨張の影響を受けにくくなる。
【0040】
ここで、ショット中心(CS)が基板1のX軸から45°、換言すると、Y軸から45°に位置するショットのアライメントマークAMについて説明する。ショットのX軸に沿う一辺の長さが、ショットのY軸に沿う一辺の長さよりも短い場合には、基板1の外周部に位置し、ショット中心(CS)が基板1のY軸から±45°の範囲内にあるショットと同様に処理を行う。一方、ショットのX軸に沿う一辺の長さが、ショットのY軸に沿う一辺の長さよりも長い場合には、基板1の外周部に位置し、ショット中心(CS)が基板1のX軸から±45°の範囲内にあるショットと同様に処理を行う。
【0041】
本実施形態によれば、基板の外周に位置するショットにおいてオーバーレイ精度を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施形態の図面において、外周部に位置するショットに含まれるアライメントマークは、説明を簡単にするため、第1~第3アライメントマークのみを示したが、これに限られるものではない。外周部に位置するショットに4以上のアライメントマークが配置されている場合、制御部35は、複数のアライメントマークから、アライメントに用いるマークを選択することもできる。
【0043】
また、複数のアライメントマークから、アライメントに用いるマークを選択する場合に、位置合わせをする際に、選択されなかったアライメントマークの重みを選択されたアライメントマークの重みよりも下げるようにしても良い。更には、選択されなかったアライメントマークの重みをゼロにしても良い。即ち、位置合わせに使わないようにしても良い。その場合には、各ショット領域において、基板1の中心に最も近い第1アライメントマークと、第1アライメントマークに対してX軸の方向に配置された複数の第2アライメントマークの内の少なくとも1つを位置合わせのために用いる。また、第1アライメントマークに対してY軸の方向に配置された複数の第3アライメントマークの内の少なくとも1つを、位置合わせのために用いる。そして、基板1の外周部に位置し、且つ、中心がX軸から±45°の範囲に位置するショット領域の位置合わせを行う際に、前記ショット領域の基板1の中心から最も遠い位置に配置された第2アライメントマークの重みを他の第2マークの重みより下げる。また、基板1の外周部に位置し、且つ、中心がY軸から±45°の範囲に位置するショット領域の前記位置合わせを行う際に、前記ショット領域の基板1の中心から最も遠い位置に配置された第3アライメントマークの重みを他の第3マークの重みより下げる。以上のようにしてもオーバーレイ精度を向上することができる。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態では、基板1の外周部に位置するショットのアライメントマークとして、4個のアライメントマークを用いる。4個のアライメントマークを用いることにより、基板1に対する型10のずれ量をより高次の形状まで計測できるようになり、このずれ量を補正することにより、オーバーレイ精度をさらに向上することができる。
【0045】
図10は、第2実施形態に係る基板1の外周部に位置するショットのアライメントマークの一例を示す図である。本図は、基板1の外周部に位置し、ショット中心(CS)が基板1のX軸から±45°の範囲内にあるショットのアライメントマークAMを示している。図10(A)の第1アライメントマークAM1d、第2アライメントマークAM2d、第3アライメントマークAM3dは、図6(B)に示すアライメントマークAMとショット領域内における位置が同じものを用いている。図10(A)の第4アライメントマークAM4dは、第2アライメントマークAM2dのY軸上に配置されている。なお、ここで、第2アライメントマークAM2dのY軸上に配置とは、第2アライメントマークAM2dの一部を通るY軸上に、第4アライメントマークAM4dの一部が配置されている場合を含む。このようなアライメントマークをアライメントに用いることにより、オーバーレイ精度をさらに向上することができる。
【0046】
また、図10(B)に示すように、第4アライメントマークAM4eを、第2アライメントマークAM2eのY軸上且つ第3アライメントマークAM3eのX軸上に配置しても良い。なお、ここで、第2アライメントマークAM2eのY軸上に配置とは、第2アライメントマークAM2eの一部を通るY軸上に、第4アライメントマークAM4eの一部が配置されている場合を含む。また、第3アライメントマークAM3eのX軸上に配置とは、第3アライメントマークAM3eの一部を通るX軸上に、第4アライメントマークAM4eの一部が配置されている場合を含む。これにより、基板1に対する型10のずれ量を求める演算を簡略化することができる。
【0047】
図11は、第2実施形態に係る基板1の外周部に位置するショットのアライメントマークの一例を示す図である。本図は、基板1の外周部に位置し、ショット中心(CS)が基板1のY軸から±45°の範囲内にあるショットのアライメントマークAMを示している。図11(A)の第1アライメントマークAM1f、第2アライメントマークAM2f、第3アライメントマークAM3fは、図8(B)に示すアライメントマークAMとショット領域内における位置が同じものを用いている。図11(A)の第4アライメントマークAM4fは、第3アライメントマークAM3fのX軸上に配置されている。第3アライメントマークAM3fのX軸上に配置とは、第3アライメントマークAM3fの一部を通るX軸上に、第4アライメントマークAM4fの一部が配置されている場合を含む。このようなアライメントマークをアライメントに用いることにより、オーバーレイ精度をさらに向上することができる。
【0048】
また、図11(B)に示すように、第4アライメントマークAM4gを、第3アライメントマークAM3gのX軸上且つ第2アライメントマークAM2gのY軸上に配置しても良い。なお、ここで、第2アライメントマークAM2gのY軸上に配置とは、第2アライメントマークAM2gの一部を通るY軸上に、第4アライメントマークAM4gの一部が配置されている場合を含む。また、第3アライメントマークAM3gのX軸上に配置とは、第3アライメントマークAM3gの一部を通るX軸上に、第4アライメントマークAM4gの一部が配置されている場合を含む。これにより、基板1に対する型10のずれ量を求める演算を簡略化することができる。
【0049】
<第3実施形態>
図2に示すフローチャートのステップS0では、インプリントに必要な各種パラメータの設定を行う。パラメータには、基板1上のショットレイアウトや使用するアライメントマークの情報も含まれており、ユーザが、ショットレイアウトに応じて、ショット毎に適切なアライメントマークを選択する必要がある。しかし、ユーザが、第1実施形態や第2実施形態に示すようなショットの位置に応じた適切なアライメントマーク(以下、推奨されるアライメントマークという)を選択しない事態が考えられる。そこで、インプリント装置100は、そのような事態を防ぐためにユーザに警告を出す機能を有している。
【0050】
具体的には、ユーザが、例えば、キーボードや、マウスなどの入力部によって、アライメントに用いるアライメントマークを選択する。制御部35は、ユーザによって選択されたアライメントマークが、第1実施形態や第2実施形態に示すようなショットの位置に応じたアライメントマークと異なる場合に、ユーザに対して警告を行う。ここで、警告とは、例えば、操作画面上に警告画像を表示させたり、警告音を発音させたりすることを含む。このようにすることにより、ユーザが推奨されるアライメントマークと異なるアライメントマークを選択した場合に、その事実に容易に気づくことが可能となる。
【0051】
更に、ユーザが、第1実施形態や第2実施形態に示すようなショットの位置に応じた適切なアライメントマークを選択できるように、インプリント装置100がショット毎に適切なアライメントマークを選択するナビゲーション機能を有していても良い。
【0052】
具体的には、例えば、アライメントに用いるアライメントマークを選択する表示画面において、推奨されるアライメントマークを目立つように表示させたり、文字によって推奨されるアライメントマークを表示させたりする。このようにすることにより、ユーザが推奨されるアライメントマークを容易に選択することが可能となる。
【0053】
(物品製造方法の実施形態)
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0054】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0055】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図12(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0056】
図12(B)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図12(C)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0057】
図12(D)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、モールドの凹部が硬化物の凸部に、モールドの部が硬化物の部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0058】
図12(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図12(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0059】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 基板
1R 外周部
60 インプリント材
10 型
23 基板保持部
24 型保持部
35 制御部
100 インプリント装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12