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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/097 365
G03G9/097 374
G03G9/097 375
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019221428
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2020109501
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2018246999
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】堀田 洋二朗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康弘
(72)【発明者】
【氏名】古井 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】野村 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】長島 裕二郎
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194835(JP,A)
【文献】特開2017-122873(JP,A)
【文献】特開2018-194833(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003749(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/107961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該トナー粒子の表面には、微粒子Aおよび微粒子Bが存在しており、
該微粒子Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、
該トナー中の該微粒子Aの含有量が、0.5質量%~6.0質量%であり、
該有機ケイ素重合体は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、下記式(1)で表されるT3単位構造を有しており、
-SiO3/2 ・・・(1)
式(1)中、Rは、炭素数が1~6のアルキル基またはフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子を用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50~1.00であり、
該微粒子Bは、体積抵抗率が、5.0×10Ωm~1.0×10Ωmであり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Aの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子A1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子A2としたとき、
該トナー粒子表面における、微粒子A1および微粒子A2による合計の被覆率が、10%~70%であり、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子A1が占める面積と該微粒子A2が占める面積の合計を基準として、該微粒子A2が占める面積の割合が、70面積%以上であり、
該トナー中の該微粒子Bの含有量が、0.1質量%~3.0質量%であり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Bの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子B1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子B2としたとき、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子B1が占める面積と該微粒子B2が占める面積の合計を基準として、該微粒子B2が占める面積の割合が、50面積%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が、30nm~300nmである、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記微粒子Aの形状係数SF‐1が、114以下である、請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径が、5nm~50nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記トナーはワックスを含有し、該ワックスがエステルワックスであり、
該エステルワックスの示差走査熱量(DSC)測定における該エステルワックスの融点が60℃~90℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記微粒子Aの該トナー表面における分散度評価指数が、0.5~2.0であり、
前記微粒子Bの該トナー表面における分散度評価指数が、0.4以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナー粒子の表面には、さらに微粒子Cが存在し、
該微粒子Cは、一次粒子の個数平均粒径が、5nm~50nmのシリカ微粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記トナー粒子の表面に存在している前記微粒子Cの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子C1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子C2としたとき、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子C1が占める面積と該微粒子C2が占める面積の合計を基準として、該微粒子C2が占める面積の割合が、70面積%以上である、請求項7に記載のトナー。
【請求項9】
前記微粒子Bは、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムおよびアルミナ微粒子からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項10】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該トナー粒子の表面には、微粒子Aおよび微粒子Bが存在しており、
該微粒子Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、
該トナー中の該微粒子Aの含有量が、0.5質量%~6.0質量%であり、
該有機ケイ素重合体は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、下記式(1)で表されるT3単位構造を有しており、
-SiO3/2 ・・・(1)
式(1)中、Rは、炭素数が1~6のアルキル基またはフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子を用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50~1.00であり、
該微粒子Bは、酸化チタンおよびチタン酸ストロンチウムの少なくとも一方を含み、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Aの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子A1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子A2としたとき、
該トナー粒子表面における、微粒子A1および微粒子A2による合計の被覆率が、10%~70%であり、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子A1が占める面積と該微粒子A2が占める面積の合計を基準として、該微粒子A2が占める面積の割合が、70面積%以上であり、
該トナー中の該微粒子Bの含有量が、0.1質量%~3.0質量%であり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Bの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子B1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子B2としたとき、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子B1が占める面積と該微粒子B2が占める面積の合計を基準として、該微粒子B2が占める面積の割合が、50面積%以下であることを特徴とするトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法のような画像形成方法に使用されるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置には、より長寿命化、小型化が求められており、これらに対応する為に、トナーに対しても種々の性能のより一層の向上が求められている。特にトナーに対しては、長寿命化の観点からはより一層の品質安定性、つまり長期耐久性の向上が要求され、小型化の観点からは各ユニットの体積をできるだけ小さくすることが要求されている。
従来、小型化の観点から様々なユニットの省スペース化が試みられてきた。特にトナーの転写性を向上させれば、感光体ドラム上の転写残トナーを回収する廃トナー容器を小型化できるため、様々な転写性改良の試みがなされてきた。
転写工程では、感光体ドラム上のトナーが紙などのメディアに転写されるが、感光体ドラムからトナーを剥がすためには、感光体ドラムとトナー間の付着力を下げることが重要である。これまでトナー表層近傍の材料設計により、付着力を下げて転写性を上げる試みがなされてきた。例えば、離形性や潤滑性に優れる材料をトナー表層に添加することで付着力を下げる効果が認められている。しかし長期使用を通じてとなると、その低付着力を維持することは容易ではなかった。そのために、長寿命化と小型化を両立するのは難しいのが現状であった。
【0003】
特許文献1では、トナー粒子に潤滑性粒子を外添することで、感光体ドラム汚染を改善できる提案がなされている。
特許文献2では、トナー粒子の表面を樹脂粒子で覆い付着力を制御することで、転写性を改善できる提案がなされている。
特許文献3では、トナー粒子にシリコーン粒子系の粒子を外添することで、トナーの滑り性を改善できる提案がなされている。
これらの技術によれば、トナーの潤滑性や付着性を改善することで転写性に対して一定の効果が確認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-219823号公報
【文献】特開2018-004804号公報
【文献】特開2018-004949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、長期耐久性と低付着力の維持の両立という点においては、さらなる検討の余地がある。
本発明は、上記問題点を解消したトナーを提供するものである。具体的には、表層に体積抵抗率を制御した微粒子を存在させたトナー粒子に、有機ケイ素重合体粒子を添加することで、耐久性や転写性に厳しい高温高湿下で長期耐久使用した場合においても、転写性が低下しにくいトナーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該トナー粒子の表面には、微粒子Aおよび微粒子Bが存在しており、
該微粒子Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、
該トナー中の該微粒子Aの含有量が、0.5質量%~6.0質量%であり、
該有機ケイ素重合体は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、下記式(1)で表されるT3単位構造を有しており、
-SiO3/2 ・・・(1)
式(1)中、Rは、炭素数が1~6のアルキル基またはフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子を用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50~1.00であり、
該微粒子Bは、体積抵抗率が、5.0×10Ωm~1.0×10Ωmであり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Aの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子A1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子A2としたとき、
該トナー粒子表面における、微粒子A1および微粒子A2による合計の被覆率が、10%~70%であり、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子A1が占める面積と該微粒子A2が占める面積の合計を基準として、該微粒子A2が占める面積の割合が、70面積%以上であり、
該トナー中の該微粒子Bの含有量が、0.1質量%~3.0質量%であり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Bの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子B1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子B2としたとき、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子B1が占める面積と該微粒子B2が占める面積の合計を基準として、該微粒子B2が占める面積の割合が、50面積%以下であることを特徴とするトナー
が提供される。
また、本発明の第二の態様によれば、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該トナー粒子の表面には、微粒子Aおよび微粒子Bが存在しており、
該微粒子Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、
該トナー中の該微粒子Aの含有量が、0.5質量%~6.0質量%であり、
該有機ケイ素重合体は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、下記式(1)で表されるT3単位構造を有しており、
-SiO3/2 ・・・(1)
式(1)中、Rは、炭素数が1~6のアルキル基またはフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子を用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50~1.00であり、
該微粒子Bは、酸化チタンおよびチタン酸ストロンチウムの少なくとも一方を含み、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Aの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子A1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子A2としたとき、
該トナー粒子表面における、微粒子A1および微粒子A2による合計の被覆率が、10%~70%であり、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー
粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子A1が占める面積と該微粒子A2が占める面積の合計を基準として、該微粒子A2が占める面積の割合が、70面積%以上であり、
該トナー中の該微粒子Bの含有量が、0.1質量%~3.0質量%であり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Bの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子B1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子B2としたとき、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子B1が占める面積と該微粒子B2が占める面積の合計を基準として、該微粒子B2が占める面積の割合が、50面積%以下であることを特徴とするトナー
が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐久性や転写性に厳しい高温高湿下で長期耐久使用した場合においても、転写性が低下しにくいトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0009】
先に述べたように、感光体ドラムからメディアへのトナーの転写性を向上させるためには、感光体ドラムとトナー間の付着力を下げることが重要である。一般的に付着力は、静電付着力と非静電付着力に分けられる。そこで本発明者らは、トナーの静電付着力と非静電付着力それぞれを下げてトナーとしての付着力を下げて、さらに長期使用を通じて低付着力を維持できる手法を検討した。
【0010】
まず、トナーの静電付着力を下げる手法について考えた。静電付着力はトナーの帯電性に相関することが知られている。トナーは最適な帯電量を有することが必要であるが、長期使用でトナーがチャージアップした時は静電付着力が高くなり、転写性が低下する場合があった。そこで、長期使用を通じて、最適な帯電量を維持してチャージアップを抑えるためには、過剰な帯電をリークさせる構造を持たせることが重要だと考えた。そのためには体積抵抗値を制御した微粒子を活用することを考えた。
しかし外添剤のようにトナー最表面に体積抵抗値を制御した微粒子を配置させると、帯電のリークが起こりやすくなり、最適な帯電量を維持することが難しい場合があった。そこで、トナー粒子の表層近傍に体積抵抗値を制御した微粒子を配置させることで、最適な帯電量を維持しながらチャージアップを抑えることができるようになった。
【0011】
続いて、トナーの非静電付着力を下げる手法について考えた。非静電付着力を決める因子の一つとして材料の種類が挙げられる。そのため非静電付着力が小さくなる材料をトナー表面に配置させれば効果が得られるのではないかと考えて検討を重ねた結果、非静電付着力を下げる材料として、有機ケイ素重合体粒子が優れることを見出した。一般的に有機ケイ素重合体粒子は離形性に優れる性質を有しているため、非静電付着力を下げる効果があると考えられる。また、有機ケイ素重合体粒子は帯電性にも優れている特徴を持っているので、トナー表面に配置させる材料として帯電性の観点でも優れている。
【0012】
このように、表層近傍に体積抵抗値を制御した微粒子を配置させたトナー粒子に対して、さらに有機ケイ素重合体粒子を添加することで、トナーの静電付着力と非静電付着力それぞれを下げてトナーとしての付着力を下げることができるようになった。
【0013】
また、このようなトナーの構造は、長期使用において低付着力を維持するためにも効果的であることを見出した。有機ケイ素重合体粒子は弾性を有するために、トナーが長期使用で現像器などから負荷を受け続けても、有機ケイ素重合体粒子自身がその負荷を吸収することでトナー粒子に埋め込まれにくくなる。そのため、長期使用においてトナーの低付着力を維持できると考えている。
有機ケイ素重合体粒子以外の材料として、離形性に優れるが硬い微粒子を使用した場合でも、初期性能としてトナー付着力を下げられる。しかし長期使用でトナーが現像器などから負荷を受け続けた場合に、硬い微粒子だとトナー粒子表面に埋没しやすくなり、トナー粒子表層近傍に配置させた体積抵抗値を制御した微粒子の構造を乱す場合があった。その結果、長期使用でチャージアップした場合に帯電をリークさせる機能が低下しやすくなり、低付着力を維持するのが難しい場合があった。
【0014】
以上の観点から本発明者らは検討を重ねた。その結果、表層近傍に体積抵抗値を制御した微粒子を配置させたトナー粒子に対して、さらに有機ケイ素重合体粒子を添加することで、転写性に厳しい高温高湿下で長期耐久使用した場合においても、転写性が低下しにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
具体的には、本発明者らは、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該トナー粒子の表面には、微粒子Aおよび微粒子Bが存在しており、
該微粒子Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、
該トナー中の該微粒子Aの含有量が、0.5質量%~6.0質量%であり、
該有機ケイ素重合体は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、下記式(1)で表されるT3単位構造を有しており、
-SiO3/2 ・・・(1)
式(1)中、Rは、炭素数が1~6のアルキル基またはフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子を用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50~1.00であり、
該微粒子Bは、体積抵抗率が、5.0×10Ωm~1.0×10Ωmであり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Aの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子A1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子A2としたとき、
該トナー粒子表面における、微粒子A1および微粒子A2による合計の被覆率が、10%~70%であり、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子A1が占める面積と該微粒子A2が占める面積の合計を基準として、該微粒子A2が占める面積の割合が、70面積%以上であり、
該トナー中の該微粒子Bの含有量が、0.1質量%~3.0質量%であり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Bの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子B1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子B2としたとき、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子B1が占める面積と該微粒子B2が占める面積の合計を基準として、該微粒子B2が占める面積の割合が、50面積%以下であることを特徴とするトナー
を完成するに至った。
また、本発明者らは、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該トナー粒子の表面には、微粒子Aおよび微粒子Bが存在しており、
該微粒子Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、
該トナー中の該微粒子Aの含有量が、0.5質量%~6.0質量%であり、
該有機ケイ素重合体は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、下記式(1)で表されるT3単位構造を有しており、
-SiO3/2 ・・・(1)
式(1)中、Rは、炭素数が1~6のアルキル基またはフェニル基を表し、
該有機ケイ素重合体粒子を用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50~1.00であり、
該微粒子Bは、酸化チタンおよびチタン酸ストロンチウムの少なくとも一方を含み、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Aの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子A1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子A2としたとき、
該トナー粒子表面における、微粒子A1および微粒子A2による合計の被覆率が、10%~70%であり、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子A1が占める面積と該微粒子A2が占める面積の合計を基準として、該微粒子A2が占める面積の割合が、70面積%以上であり、
該トナー中の該微粒子Bの含有量が、0.1質量%~3.0質量%であり、
該トナー粒子の表面に存在している微粒子Bの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子B1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子B2としたとき、
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、該トナー粒子表面から30nm内側の部分から該トナーの最表面までの表面近傍領域における該微粒子B1が占める面積と該微粒子B2が占める面積の合計を基準として、該微粒子B2が占める面積の割合が、50面積%以下であることを特徴とするトナー
を完成するに至った。
【0016】
本発明の第一の態様に用いられる微粒子Bの体積抵抗率は、5.0×10Ωm~1.0×10Ωmである。体積抵抗率が5.0×10Ωm未満の場合、トナーが適切な帯電力を維持することが難しく、画像濃度の低下を招きやすくなる。体積抵抗率が1.0×10Ωmより大きい場合、チャージアップ時に帯電をリークしにくくなり転写性が低下しやすい。
微粒子Bの体積抵抗率は、好ましくは1.0×10Ωm~5.0×10Ωmであり、より好ましくは1.0×10Ωm~5.0×10Ωmである。
本発明の第一の態様に用いられる微粒子Bは、体積抵抗率が5.0×10Ωm~1.0×10Ωmであれば、特に制限なく用いることができる。なかでも、酸化チタン微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子およびアルミナ微粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、酸化チタン微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子またはアルミナ微粒子であることが特に好ましい。また、2種類以上の金属を用いた複合酸化物微粒子を用いることもできるし、1種単独またはこれらの微粒子群の中から任意の組み合わせで選択される2種以上を用いることもできる。
【0017】
本発明の第二の態様に用いられる微粒子Bについて説明する。本発明の第二の態様に用いられる微粒子Bは、酸化チタン微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子の少なくとも一方を含む。また、2種類以上の金属を用いた複合酸化物微粒子を用いることもできる
し、1種単独またはこれらの微粒子群の中から任意の組み合わせで選択される2種以上を用いることもできる。なかでも、酸化チタン微粒子またはチタン酸ストロンチウム微粒子であることが好ましい。
本発明の第二の態様に用いられる微粒子Bは、酸化チタン微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子の少なくとも一方を含むものであれば、特に制限なく用いることができる。なかでも、微粒子Bの体積抵抗率が、5.0×10Ωm~1.0×10Ωm、より好ましくは1.0×10Ωm~5.0×10Ωmであり、さらに好ましくは1.0×10Ωm~5.0×10Ωmであると、画像濃度や転写性の低下をより抑制することができる。
【0018】
トナー中の微粒子Bの含有量が0.1質量%~3.0質量%であることが、長期使用を通じて転写性を良好に維持するために重要である。含有量が0.1質量%未満であると、チャージアップ時に帯電をリークしにくくなり転写性が低下しやすくなり、3.0質量%を超えるとトナーが適切な帯電力を維持することが難しく、画像濃度の低下を招きやすくなる。
トナー中の微粒子Bの含有量は、好ましくは0.3質量%~2.5質量%であり、より好ましくは0.5質量%~2.5質量%である。
【0019】
トナー粒子の表面に存在している微粒子Bの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子B1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子B2としたとき、
透過型電子顕微鏡(以下、単に「TEM」とも称する)を用いてトナー100粒子の断面を観察した際、トナー粒子表面から30nm内側の部分からトナーの最表面までの表面近傍領域における微粒子B1が占める面積と微粒子B2が占める面積の合計を基準として、微粒子B2が占める面積の割合は、50面積%以下である。
つまり微粒子Bの大部分はトナー粒子に埋め込まれていて、さらにトナー粒子表面近傍に存在していることを示している。このような構造であると、長期使用でも帯電をリークして最適な帯電を維持することができるため、転写性を維持しやすくなる。微粒子B2が占める面積の割合は、好ましくは35面積%以下、より好ましくは30面積%以下である。また、微粒子B2が占める面積の割合は、好ましくは0面積%以上である。
【0020】
微粒子B2が占める面積の割合が50面積%を超える場合は、トナー粒子に埋め込まれていない微粒子Bが多く存在している。そのため長期使用において、微粒子Bがトナーから脱離する場合があり、チャージアップにより付着力が上がり、転写性が低下する場合がある。
微粒子B2が占める面積の割合は、微粒子Bをトナー粒子に添加するときの製造条件、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)、微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径を変更することにより制御することができる。
【0021】
本発明に用いられる微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径は、5nm~50nm(より好ましくは5nm~25nm)であることが、チャージアップ時のリークサイトとして機能するうえで好ましい。
【0022】
トナー中の微粒子Aの含有量は0.5質量%~6.0質量%である。含有量が0.5質量%未満の場合は、トナーの離形効果や耐久性が不十分になりやすく、長期使用で転写性や画像濃度の低下を招きやすい。含有量が6.0質量%より多い場合、トナー粒子に埋め込まれた微粒子Bによるチャージアップ時の帯電リークの効果が得られにくくなり、転写性が低下しやすい。
トナー中の微粒子Aの含有量は、好ましくは0.5質量%~5.0質量%、より好ましくは0.5質量%~3.0質量%である。
【0023】
トナー粒子の表面に存在している微粒子Aの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子A1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子A2としたとき、
TEMを用いてトナー100粒子の断面を観察した際、トナー粒子表面から30nm内側の部分からトナーの最表面までの表面近傍領域における微粒子A1が占める面積と微粒子A2が占める面積の合計を基準として、微粒子A2が占める面積の割合は、70面積%以上である。
つまり微粒子Aの大部分は、トナー粒子に埋め込まれていないことを示している。このような構造であると、トナーの離形性や耐久性に対して効果的であり、長期使用で良好な転写性を維持しやすい。微粒子A2が占める面積の割合は、好ましくは80面積%以上であり、より好ましくは90面積%以上である。微粒子A2が占める面積の割合は、好ましくは100面積%以下である。
【0024】
微粒子A2が占める面積の割合が70面積%未満の場合は、長期使用で良好な転写性を維持することが難しい場合がある。
微粒子A2が占める面積の割合は、微粒子Aをトナー粒子に添加するときの製造条件、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)、微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径を変更することにより制御することができる。
【0025】
トナー粒子表面における微粒子A1および微粒子A2による合計の被覆率は、10%~70%である。被覆率が10%未満の場合、トナーの離形効果や耐久性が不十分になりやすく、長期使用で転写性や画像濃度の低下を招きやすい。被覆率が70%より高い場合、トナー粒子に埋め込まれた微粒子Bによるチャージアップ時の帯電リークの効果が得られにくくなり、転写性が低下しやすい。
該被覆率は、好ましくは10%~60%、より好ましくは10%~50%である。また、該被覆率は、微粒子Aをトナー粒子に添加するときの製造条件、微粒子Aの形状、一次粒子の個数平均粒径、添加量を変更することにより制御することができる。
【0026】
本発明に用いられる微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径は、30nm~300nm(より好ましくは40nm~240nm)であることが、トナーの付着力低減や長期使用時の耐久性の観点で好ましい。
【0027】
本発明に用いられる微粒子Aの形状係数SF‐1は、114以下(より好ましくは110以下)であることが好ましい。形状係数SF‐1が114以下であると、より微粒子Aが球形に近くなるためにトナーと感光体ドラムとの接触面積を少なくすることができ、付着力を下げて転写性が良化しやすい。
形状係数SF‐1は、好ましくは100以上である。また、形状係数SF‐1は、微粒子Aの製造条件を変更することにより制御することができる。
【0028】
本発明に用いられる微粒子Aのトナー表面における分散度評価指数は、好ましくは0.5~2.0、より好ましくは0.5~1.8である。さらに本発明に用いられる微粒子Bのトナー表面における分散度評価指数は、0.4以下(より好ましくは0.3以下)であることが好ましい。微粒子Bのトナー表面における分散度評価指数は、0.0以上であることが好ましい。
分散度評価指数は数値が小さい方が分散性が良いことを示している。微粒子Bはトナー上で均一に分散しているために、長期使用を通じてトナーの帯電を適切な値に維持しやすくなる。一方で、微粒子Aはトナー上である程度の密度分布があった方が好ましい。感光体ドラムと転写ローラー間のニップ部において、トナー表面の微粒子Aの個数が多い部分があると、有機ケイ素重合体粒子の離形性の効果が大きく発揮されて付着力を下げること
ができ、転写性を改善しやすい。
微粒子Aのトナー表面における分散度評価指数は、トナー上である程度の密度分布を作り出せる外添条件を設定することで制御することできる。例えば、機械的衝撃力を抑えた条件で外添時間を延ばすことで、微粒子Aがトナー表面上で転がりやすくなり、所望の密度分布を作りやすくなる。
微粒子Bのトナー表面における分散度評価指数は、微粒子Bの分散性が向上するように外添条件を設定することで制御することできる。例えば、機械的衝撃力を高めた条件で外添時間を延ばすことで、微粒子Bを解砕及び分散しやすくなり、所望の分散度評価指数を得やすくなる。
【0029】
トナー粒子の表面には、さらに微粒子Cが存在し、微粒子Cは、一次粒子の個数平均粒径が、5nm~50nm(より好ましくは5nm~30nm)のシリカ微粒子であることが好ましい。5nm~50nmのシリカ微粒子は静電凝集しやすく、解砕するのが難しい。しかしトナー粒子表層に微粒子Bが存在していると、シリカ微粒子の静電凝集を緩和させて、トナー表面でのシリカ微粒子の分散性を向上させやすい。そのため、微粒子Cを外添することで、トナー表面の帯電分布を均一にしやすく、転写時のムラをさらに良くすることができる。その結果、画像濃度の均一性がより向上する。
【0030】
トナー粒子の表面に存在している微粒子Cの内、トナー粒子に埋め込まれて存在する微粒子を微粒子C1、トナー粒子に埋め込まれることなく存在する微粒子を微粒子C2としたとき、
TEMを用いてトナー100粒子の断面を観察した際、トナー粒子表面から30nm内側からトナーの最表面までの表面近傍領域における微粒子C1が占める面積と微粒子C2が占める面積の合計を基準として、微粒子C2が占める面積の割合が、70面積%以上(より好ましくは72面積%以上)であることが好ましい。
つまり微粒子Cの大部分は、トナー粒子に埋め込まれていないことを示している。これにより、トナー粒子表層の微粒子Bと微粒子Cが相互作用して、トナー表面でのシリカ微粒子の分散性が向上し、画像濃度の均一性がより向上する。微粒子C2が占める面積の割合は、好ましくは100面積%以下である。また、微粒子C2が占める面積の割合は、微粒子Cをトナー粒子に添加するときの製造条件、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)、微粒子Cの一次粒子の個数平均粒径を変更することにより制御することができる。
【0031】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子について説明する。有機ケイ素重合体粒子とは、有機基をもつケイ素原子と、酸素原子と、の間で交互に結合してできた主鎖より構成される樹脂粒子である。
【0032】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子は、製法は特に限定されず、例えば水にシラン化合物を滴下し、触媒により加水分解、縮合反応させた後、得られた懸濁液を濾過、乾燥することで得ることができる。触媒の種類、配合比、反応開始温度、滴下時間などにより、有機ケイ素重合体粒子の一次粒子の個数平均粒径をコントロールすることができる。
【0033】
触媒として酸性触媒は塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、塩基性触媒はアンモニア水、水酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0034】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子は有機ケイ素重合体を有し、該有機ケイ素重合体はケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、該有機ケイ素重合体中のケイ素原子の一部が、下記式(1)で表されるT3単位構造を有している。
-SiO3/2 ・・・(1)
式(1)中、Rは炭素数が1~6(好ましくは1~4)のアルキル基またはフェニル
基を表す。
該有機ケイ素重合体粒子中の該有機ケイ素重合体の含有量は、好ましくは90質量%以上である。該含有量は、好ましくは100質量%以下である。
該有機ケイ素重合体粒子を用いた29Si-NMR測定において、全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50~1.00である。これにより、有機ケイ素重合体粒子に適切な弾性を持たせることができるため、本発明の効果が得られる。T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が0.50未満であると、有機ケイ素重合体粒子の弾性が不足しやすくなり、好ましくない。
T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合は、好ましくは0.70~1.00であり、より好ましくは0.80~1.00である。また、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合は、有機ケイ素重合体粒子の重合に使用する有機ケイ素化合物、特に三官能性シランの種類および割合の少なくとも一方を変更することにより制御することができる。
【0035】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子は、下記式(2)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を重合させて得られることが好ましい。

式(2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6(より好ましくは1~4)のアルキル基、フェニル基、または反応基(例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基)を表す。
【0036】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子を得るには、
式(2)の一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、
式(2)中のRがアルキル基またはフェニル基であり、3つの反応基(R、R、R)を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、
式(2)中のR、Rがアルキル基またはフェニル基であり、2つの反応基(R、R)を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)、
式(2)中のR、R、Rがアルキル基またはフェニル基であり、1つの反応基(R)を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)
を用いることができるが、T3単位構造に由来するピークの面積の割合を0.50~1.00とするためには、有機ケイ素化合物として三官能性シランを50モル%以上使用することが好ましい。
【0037】
これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮合重合させて架橋構造を形成し、有機ケイ素重合体粒子を得ることができる。R、R及びRの加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
【0038】
四官能性シランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソシアネートシランなどが挙げられる。
【0039】
三官能性シランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシ
ラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシラン、ペンチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0040】
二官能性シランとしては、
ジ-tert-ブチルジクロロシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジブチルジクロロシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジクロロデシルメチルシラン、ジメトキシデシルメチルシラン、ジエトキシデシルメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0041】
一官能性シランとしては、
t-ブチルジメチルクロロシラン、t-ブチルジメチルメトキシシラン、t-ブチルジメチルエトキシシラン、t-ブチルジフェニルクロロシラン、t-ブチルジフェニルメトキシシラン、t-ブチルジフェニルエトキシシラン、クロロジメチルフェニルシラン、メトキシジメチルフェニルシラン、エトキシジメチルフェニルシラン、クロロトリメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリペンチルメトキシシラン、トリフェニルクロロシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0042】
本発明に用いられる微粒子Bは、疎水性を付与する目的で、表面処理をしていてもよい。
疎水化処理剤としては、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどのクロロシラン類;
イソブチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザンなどのシラザン類;
ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、及び、末端反応性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル;
ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン類;
脂肪酸及びその金属塩として、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸、前記脂肪酸と亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩が挙げられる。
これらの中でも、アルコキシシラン類、シラザン類、シリコーンオイルは、疎水化処理を実施しやすいため、好ましく用いられる。これらの疎水化処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
本発明に用いられる微粒子Cについて説明する。本発明に用いられる微粒子Cはシリカ微粒子であり、ヒュームドシリカのように乾式法で得られたものを用いてもよく、ゾルゲル法のような湿式法で得られたものを用いることもできる。帯電性の観点から、乾式法で得られたものを用いる方が好ましい。
【0044】
さらに微粒子Cは、疎水性、流動性を付与する目的で、表面処理をしていてもよい。疎水化方法としては、シリカ微粒子と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカを有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物としては、以下のものが挙げられる。
ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン。
また、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α-クロルエチルトリクロルシラン、β-クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレートが挙げられる。
さらに、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1-ヘキサメチルジシロキサンが挙げられる。
さらにまた、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサンが例示できる。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0045】
シリコーンオイル処理シリカを微粒子Cとして用いることもできる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30mm/s~1000mm/sのものが用いられる。
具体的には、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルがある。
シリコーンオイル処理の方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
ベースとなるシリカにシリコーンオイルを噴霧する方法。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカを加え混合し溶剤を除去する方法。
シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で温度200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し表面のコートを安定化させることがより好ましい。
【0046】
本発明のトナーは、トナーの性能を向上させるために、さらに他の外添剤を含んでいても良い。
【0047】
微粒子A、微粒子B、微粒子Cを添加するための好ましい製造方法について説明する。
トナー粒子表層に微粒子Bを埋め込み、一方で微粒子Aの埋め込みを抑えた構造を作り出すためには、微粒子Bと微粒子Aを添加する工程を2段階に分けることが好ましい。微粒子Bと微粒子Aをトナー粒子に添加する工程は、乾式法で添加してもよいし、湿式法で添加してもよいし、2段階でそれぞれ異なる方法を用いても構わない。特に微粒子Bと微粒子Aの存在状態の制御性から、2段階の外添工程で作成するのがより好ましい。
トナー粒子表層に微粒子Bを埋め込むためには、外添工程(トナー粒子と微粒子Bを混合する工程)で外添装置を温めて、熱により微粒子Bを埋め込むことが好ましい。熱によりわずかに軟らかくなったトナー粒子表面に、機械的衝撃力を加えることで、微粒子Bを埋め込むことができる。また、外添工程でトナー粒子と微粒子Bを混合させて、その後に別の装置で加温工程を設けて、微粒子Bを埋め込むこむ方法で作成しても構わない。
所望の微粒子Bの埋め込みを達成するには、外添工程の温度を、トナー粒子のガラス転移温度Tg近傍に設定することが好ましい。
具体的には、微粒子Bの外添工程の温度T(℃)は、トナー粒子のガラス転移温度をTg(℃)とした場合、Tg-10(℃)≦T≦Tg+5(℃)の条件が好ましく、Tg-10(℃)≦T≦Tgの条件がより好ましい。
また、トナー粒子のガラス転移温度Tgは保存性の観点から、40℃~70℃が好ましく、より好ましくは50℃~65℃である。
【0048】
微粒子Bの外添工程に用いる装置としては、混合機能と機械的衝撃力を与える機能を有している装置が好ましく、公知の混合処理装置を用いることができる。例えば、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、及びハイブリダイザー(奈良機械社製)などの公知の混合機を温めて使用することで、トナー粒子に微粒子Bを埋め込むことができる。
【0049】
続いて、微粒子Bが埋め込まれたトナー粒子に、微粒子Aを添加する好ましい方法について説明する。微粒子Aの大部分がトナー粒子に埋め込まれていないような構造を達成するためには、微粒子Bの外添工程に用いる装置と同様のものを使用することができる。微粒子Aを外添する場合は、混合機を温めて使用する必要はなく、微粒子Aの外添工程の温度T(℃)は、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)に対して、T≦Tg-15(℃)の条件が好ましく、Tg-40(℃)≦T≦Tg-25(℃)の条件がより好ましい。
【0050】
続いて、微粒子Bが埋め込まれたトナー粒子に、微粒子Cを添加する好ましい方法について説明する。微粒子Cは乾式で外添工程で添加するのが好ましく、微粒子Bの外添工程に用いる装置と同様のものを使用することができる。微粒子Cを外添する場合は、混合機を温めて使用する必要はなく、微粒子Cの外添工程の温度T(℃)は、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)に対して、T≦Tg-15(℃)の条件が好ましく、Tg-40(℃)≦T≦Tg-25(℃)の条件がより好ましい。
微粒子Cを添加するタイミングは、微粒子Bが埋め込まれたトナー粒子に、微粒子Aと微粒子Cを同時に外添してもよいし、微粒子Bが埋め込まれたトナー粒子に微粒子Aが添加された後に、微粒子Cを外添してもよい。
【0051】
トナー粒子の製造方法について説明する。トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。更に湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができ、乳化凝集法を好ましく用いることができる。
【0052】
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子や着色剤などの材料を、水系媒体中で分散混合する。水系媒体中には、分散安定剤や界面活性剤が添加されていてもよい。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後または凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。更に必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。ここで、結着樹脂の微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、またはいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子に内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子を樹脂微粒子を凝集させる際に共に凝集させてもよい。また、凝集時に組成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることにより組成の異なる層構成のトナー粒子を作ることもできる。
【0053】
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
【0054】
界面活性剤として、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテ
ル硫酸ナトリウムなどが挙げることができる。
【0055】
トナー粒子を構成する結着樹脂について説明する。
結着樹脂はビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などを好ましく例示できる。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これら結着樹脂は一種単独または二種以上を混合して使用できる。
【0056】
結着樹脂はカルボキシ基を含有することが好ましく、カルボキシ基を含む重合性単量体を用いて製造された樹脂であることが好ましい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸などのビニル性カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノメタクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノメタクリロイルオキシエチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステル誘導体など。
ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂としては末端などのカルボキシ基はキャップしないことが好ましい。
【0057】
トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジ
プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
架橋剤の添加量としては、重合性単量体に対して0.001質量%~15.000質量%であることが好ましい。
【0058】
トナー粒子を構成する材料の1つとして、離型剤を含有することが好ましい。特に60℃~90℃(より好ましくは60℃~80℃)に融点を有するエステルワックスを離型剤として用いると、結着樹脂に対する相溶性に優れるため可塑効果が得られやすく、微粒子Bをトナー粒子表面に効率的に埋め込むことができる。
【0059】
本発明で使用されるエステルワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナウバワックスなどの脂肪酸エステル類から酸成分の一部又は全部を脱酸したもの;植物性油脂の水素添加等によって得られる、ヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸モノエステル類;セバシン酸ジベヘニル、ドデカン二酸ジステアリル、オクタデカン二酸ジステアリル等の飽和脂肪族ジカルボン酸と飽和脂肪族アルコールとのジエステル化物;ノナンジオールジベヘネート、ドデカンジオールジステアレート等の飽和脂肪族ジオールと飽和脂肪族モノカルボン酸とのジエステル化物が挙げられる。
【0060】
なお、これらのワックスの中でも、分子構造中に2つのエステル結合を有する2官能エステルワックス(ジエステル)を含有していることが好ましい。
2官能のエステルワックスは、2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、又は、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル化合物である。
上記脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、べへン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
上記脂肪族モノアルコールの具体例としては、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、べへニルアルコール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノールなどが挙げられる。
2価のカルボン酸の具体例としては、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
2価のアルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-へキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、1,30-トリアコンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、1,4-フェニレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0061】
他に使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キ
ャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその化合物が挙げられる。なお、離型剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して5.0質量部~20.0質量部であることが好ましい。
【0062】
トナー粒子に着色剤を含有させる場合には、以下に示す公知のものを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラックが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して3.0質量部~15.0質量部であることが好ましい。
【0063】
トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩のようなによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イ
ミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
これら荷電制御剤は一種単独で又は二種類以上組み合わせて含有することができる。これらの荷電制御剤の添加量としては、重合性単量体100.00質量部に対して、0.01質量部~10.00質量部であることが好ましい。
【0064】
本発明のトナーの各種物性の測定方法について以下に説明する。
<有機ケイ素重合体粒子(微粒子A)の同定>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の組成と比率の同定は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下、「熱分解GC/MS」とも称する)及びNMRを用いる。なお、有機ケイ素重合体粒子を単独で入手できる場合は、有機ケイ素重合体粒子を単独で測定することもできる。
【0065】
有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の種類の分析には熱分解GC/MSが用いられる。
トナーを550℃~700℃で熱分解させた際に生じる、有機ケイ素重合体粒子由来の分解物の成分のマススペクトルを分析する事で、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の種類を同定する。具体的な測定条件は以下の通りである。
[熱分解GC/MSの測定条件]
熱分解装置:JPS-700(日本分析工業)
分解温度:590℃
GC/MS装置:Focus GC/ISQ (Thermo Fisher)
カラム:HP-5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:200℃
フロー圧:100kPa
スプリット:50mL/min
MSイオン化:EI
イオン源温度:200℃ Mass Range 45-650
【0066】
続いて同定した有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の存在量比を、固体29Si-NMRで測定・算出する。
固体29Si-NMRでは、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物のSiに結合する官能基の構造によって、異なるシフト領域にピークが検出される。
各ピーク位置は標準サンプルを用いて特定することでSiに結合する構造を特定する。また得られたピーク面積から各構成化合物の存在量比を算出する。全ピーク面積に対してT3単位構造のピーク面積の割合を計算によって求める。
固体29Si-NMRの測定条件は、下記の通りである。
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DDMAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay:180s
Scan:2000
【0067】
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、トナーをクロロホルムなどの溶媒に分散させ、その後に遠心分離等で比重の差で有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去する。その方法は以下の通りである。
【0068】
まずトナー1gをバイアル瓶に入れたクロロホルム31gに添加して分散し、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物をトナーから分離させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。処理条件は以下の通りである。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
【0069】
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内では、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物と、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が除かれた残渣が分離している。トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が除かれた残渣を抽出して、真空条件下(40℃/24時間)で乾燥し、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去したサンプルを得る。上記と同様の手順により、トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の組成と比率を同定することができる。
【0070】
<トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の定量方法>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子の含有量は、蛍光X線を用いて測定する。
蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.5.0L」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mmとする。測定は、Omnianのメソッドを用いて元素FからUまでの範囲を測定し、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。また、X線発生装置の加速電圧、電流値は、出力2.4kWとなるように設定する。測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
前述条件で成形したペレットにX線を照射して、発生する特性X線(蛍光X線)を分光素子にて分光する。次に、サンプルに含まれる各元素固有の波長に対応する角度に分光された蛍光X線の強度を、FP法(ファンダメンタルパラメータ法)により分析し、トナーに含まれる各元素の含有比率を分析結果として得て、トナー中のケイ素原子の含有量を求める。
蛍光X線で求めたトナー中のケイ素の含有量と、固体29SiNMR及び熱分解GC/MSなどを用いて構造を特定した有機ケイ素重合体粒子の構成化合物中のケイ素の含有量比の関係から、計算によってトナー中の有機ケイ素重合体粒子の含有量を求めることができる。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、上記と同様の方法で、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去したサンプルを得て、トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子を定量することができる。
【0071】
<有機ケイ素重合体粒子中のT3単位構造の有無およびT3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合の測定方法>
有機ケイ素重合体粒子中のT3単位構造の有無およびT3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合は、「有機ケイ素重合体粒子(微粒子A)の同定」で測定された固体29Si-NMRの結果を用いる。固体29Si-NMRで、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物のSiに結合する官能基の構造によって、異なるシフト領域にピークが検出される。全てのピーク面積の合計に対する、T3構造に帰属されるピーク面積の割合を、T3単位構造の割合とする。
【0072】
<微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行う。微粒子Aが添加されたトナーを観察して、最大5万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の微粒子Aの一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、微粒子Aの大きさによって適宜調整する。
なお、微粒子Aを単独で入手できる場合は、微粒子Aを単独で測定することもできる。
【0073】
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析した粒子が有機ケイ素重合体粒子であるか否かを判断する。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子とシリカ微粒子の両方が含まれている場合には、Si、Oの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで有機ケイ素重合体粒子の同定を行う。有機ケイ素重合体粒子、シリカ微粒子それぞれの標品に対して、同条件でEDS分析を行い、Si、Oそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。有機ケイ素重合体粒子のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A,Bそれぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。
判別対象の微粒子のSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に当該微粒子を有機ケイ素重合体粒子と判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
【0074】
<微粒子Aの形状係数SF-1の測定方法>
微粒子Aの形状係数SF-1の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行う。微粒子Aが添加されたトナーを観察し以下のように算出する。観察倍率は微粒子Aの大きさによって適宜調整する。最大20万倍に拡大した視野において、画像処理ソフト「Image-Pro Plus5.1J」(MediaCybernetics社製)を使用し、ランダムに100個の微粒子Aの一次粒子の周囲長および面積を算出する。SF-1は下記の式にて算出し、その平均値をSF-1とする。
SF-1=(粒子の最大長)/粒子の面積×π/4×100
なお、微粒子Aを単独で入手できる場合は、微粒子Aを単独で測定することもできる。
【0075】
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合は、「微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径の測定方法」記載の方法で有機ケイ素重合体粒子であるか否かを判断し、該有機ケイ素重合体粒子のSF-1を算出する。
【0076】
<微粒子Bの体積抵抗率の測定方法>
微粒子Bの体積抵抗率は電位計(ケースレー製6430型サブフェムトアンペア・リモート・ソースメータ)を用いて測定した電流値より算出する。上下電極挟み込み方式のサ
ンプルホルダ(東陽テクニカ製SH2-Z型)に微粒子Bを1.0g充填し、2.0N・mのトルクを加えることで微粒子Bを圧縮する。電極には、上電極直径25mm、下電極直径2.5mmのものを使用する。サンプルホルダを通して外添剤に10.0Vの電圧を印可し、充電電流を含まない飽和時の電流値から抵抗値を算出し、下記の式にて体積抵抗率を算出する。
トナーから微粒子Bを単離する方法は、トナーをクロロホルムなどの溶媒に分散させ、その後に遠心分離等で比重の差で微粒子Bを単離することができる。なお、微粒子Bを単独で入手できる場合は、微粒子Bを単独で測定することもできる。
体積抵抗率(Ωm)=抵抗値(Ω)・電極面積(m)/サンプル厚さ(m)
【0077】
<微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行う。微粒子Bが添加されたトナーを観察して、最大5万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の微粒子Bの一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、微粒子Bの大きさによって適宜調整する。
なお、微粒子Bを単独で入手できる場合は、微粒子Bを単独で測定することもできる。
【0078】
本発明の第二の態様のトナー観察において、微粒子Aおよび微粒子B以外の微粒子が含まれる場合、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、分析した粒子が酸化チタンおよびチタン酸ストロンチウムの少なくとも一方であるか否かを判断する。
【0079】
本発明の第一の態様のトナー中に、微粒子Aおよび微粒子B以外の微粒子が含まれる場合、以下の方法により、該トナーの構成成分から微粒子Bを分離する。
トナー1gをバイアル瓶に入れたクロロホルム31gに添加して分散させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。処理条件は以下の通りである。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内では、トナーを構成していた材料毎に分離される。各材料を抽出して、真空条件下(40℃/24時間)で乾燥する。各材料の体積抵抗率を測定した後、本発明に必要な要件を満たしている微粒子Bを選別して、一次粒子の個数平均粒径を測定する。
【0080】
<微粒子Bのトナーに対する含有量の測定方法>
「微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の測定方法」で抽出した微粒子Bの量を測定して、トナーに対する含有量を算出する。
【0081】
<微粒子A2が占める面積の割合の測定方法>
微粒子A2が占める面積の割合の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子製JEM-2100)を用いて行う。
試料作製は、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべきトナーを十分に分散させる。その後温度35℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、そのまま、あるいは凍結してダイヤモンド刃を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察する。
TEMにて観察するトナーは、透過型顕微鏡写真での断面積から円相当径を求め、その
値がコールターカウンターを用いる後述の方法により求めた重量平均粒径の±10%の幅に含まれるものを該当粒子とする。その該当粒子100個について以下のトナー断面画像解析を行う。
画像解析には、画像処理ソフト「Image-Pro Plus5.1J」(MediaCybernetics社製)を使用する。
【0082】
微粒子A1と微粒子A2の判別について説明する。微粒子Aの一部だけがトナー粒子に埋め込まれている場合は、微粒子Aとトナー粒子の接触している部分の長さが、その微粒子Aの周囲長の50%以上であるときに、その微粒子Aは埋め込まれているとして、微粒子A1とする。微粒子Aとトナー粒子の接触している部分の長さが、その微粒子Aの周囲長の50%未満であるときに、その微粒子Aは埋め込まれていないとして、微粒子A2とする。
【0083】
トナー断面において、画像解析に用いる領域について説明する。トナーの内部方向はトナー粒子表面から30nm内側の部分までとする。トナーの外側方向は、トナーの最表面とする。トナー1粒子において、微粒子Aが最表面となる部分もあれば、トナー粒子が最表面となる部分もある。トナー粒子表面から30nm内側の部分からトナーの最表面までの領域を、表面近傍領域とする。トナー粒子に埋め込まれた微粒子Aの一部あるいは全部が、表面近傍領域よりもトナー内部側に含まれた場合は、その部分の面積はA1の面積に含めない。
表面近傍領域に存在する微粒子A1と微粒子A2が占める面積の合計を基準として、微粒子A2が占める面積の割合を算出する。面積割合は該当粒子100個の平均値を用いる。
トナー中に、微粒子A以外の外添剤が含まれる場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用すること以外は「微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径の測定方法」に記載の方法と同様にして分析する。トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析した粒子が微粒子Aであるか否かを判断する。
【0084】
<微粒子B2が占める面積の割合の測定方法>
微粒子A2が占める面積の割合の測定方法と同様にして、微粒子B2が占める面積の割合を算出する。
トナー中に、微粒子B以外の外添剤が含まれる場合、トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Ti、Oの元素含有量(atomic%)の比(Ti/O比)、またはSr、Ti、Oの元素含有量(atomic%)の比(Sr/Ti/O比)を標品と比較することで微粒子Cの同定を行う。酸化チタンの標品は、富士フイルム和光純薬株式会社(CAS.No:1317-80-2)より、チタン酸ストロンチウムの標品は、富士フイルム和光純薬株式会社(CAS.No:12060-59-2)よりそれぞれ入手する。
【0085】
<微粒子C2が占める面積の割合の測定方法>
微粒子A2が占める面積の割合の測定方法と同様にして、微粒子C2が占める面積の割合を算出する。
トナー中に、微粒子C以外の外添剤が含まれる場合、トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si、Oの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで微粒子Cの同定を行う。シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
【0086】
<微粒子Cの種類および微粒子Cの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
微粒子Cの一次粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行う。微粒子Cが添加されたトナーを観察して、最大5万
倍に拡大した視野において、ランダムに100個の微粒子Cの一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、微粒子Cの大きさによって適宜調整する。
なお、微粒子Cを単独で入手できる場合は、微粒子Cを単独で測定することもできる。
トナー中に、微粒子C以外の外添剤が含まれる場合、トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si、Oの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで微粒子Cの同定を行う。シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
【0087】
<微粒子A1および微粒子A2による合計の被覆率の測定方法>
トナー粒子への微粒子A1および微粒子A2(本項においては「有機ケイ素重合体粒子」と総称する。)による合計の被覆率(単位:面積%)は、走査型電子顕微鏡による観察と画像計測を用いて測定する。走査型電子顕微鏡としては、上記の日立超高分解能電界放出走査電子顕微鏡S-4800(商品名)を用いる。
画像撮影条件は以下の通りである。
【0088】
なお、トナー中に、有機ケイ素重合体粒子とシリカ微粒子の両方が含まれている場合には、Si、Oの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで有機ケイ素重合体粒子の同定を行う。有機ケイ素重合体粒子、シリカ微粒子それぞれの標品に対して、同条件でEDS分析を行い、Si、Oそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。有機ケイ素重合体粒子のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A,Bそれぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。
判別対象の微粒子のSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に当該微粒子を有機ケイ素重合体粒子と判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
【0089】
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S-4800観察条件設定
有機ケイ素重合体粒子の被覆率の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は2次電子像と比べてチャージアップが少ないため、有機ケイ素重合体粒子の被覆率を精度良く測定することができる。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し実行する。フラッシングによるエミッション電流が20μA~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。
同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)焦点調整
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、視野内全体にある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。
次に対象のトナーについて、最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー一つに対して写真を1枚撮影し、少なくともトナー100粒子以上について画像を得る。
観察した画像を、画像解析ソフトウェアであるImage J(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能)を用いて二値化する。二値化した後、[Analayze]―[Analyze Particles]より該当する有機ケイ素重合体粒子の粒径と円形度を設定し、有機ケイ素重合体粒子のみを抽出し、トナー粒子上における、有機ケイ素重合体粒子の被覆率(単位:面積%)を求める。
上記測定を二値化した画像100枚について行い、有機ケイ素重合体粒子の被覆率(単位:面積%)の平均値を有機ケイ素重合体粒子の被覆率とする。
【0090】
<微粒子Aの分散度評価指数の測定方法>
トナー表面における微粒子Aの分散度評価指数の算出は走査型電子顕微鏡「S-4800」を用いて行う。1万倍に拡大した視野で、微粒子Aが外添されたトナーを、同一視野で加速電圧1.0kVで観察する。観察した画像から、画像処理ソフト「Image-Pro Plus5.1J」(MediaCybernetics社製)を使用し、以下のように算出する。
微粒子Aのみが抽出されるように2値化し、微粒子Aの個数n、全微粒子Aに対し重心座標を算出し、各微粒子Aに対する最近接の微粒子Aとの距離dn minを算出する。画像内の微粒子A間の最近接距離の平均値をdaveとすると、分散度は下記式で示され
る。

ランダムに観察した50個のトナーについて上記の手順にて分散度を求め、その平均値を分散度評価指数とした。分散度評価指数の小さい方が分散性が良いことを示す。
【0091】
<微粒子Bの分散度評価指数の測定方法>
微粒子Aの分散度評価指数の測定方法と同様にして、微粒子Bの分散度評価指数を測定する。
【0092】
<ワックスの融点、トナー粒子のガラス転移温度Tgの測定方法>
ワックスの融点、トナー粒子のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料(ワックス、トナー)3mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。これらを、測定温度範囲30℃~200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温速度10℃/minで昇温させ、続いて30℃まで降温速度10℃/minで降温し、その後に再度、昇温速度10℃/minで昇温を行う。この2度目の昇温過程において得られたDSC曲線を用いて、本発明で規定する物性を求める。このDSC曲線において、温度30℃~200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを示す温度を、試料の融点とする。このDSC曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線とDSC曲線との交点を、ガラス転移温度Tg(℃)とする。
【0093】
<トナーの平均円形度の測定>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を0.2mL加える。
さらに測定試料を0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃~40℃となる様に適宜冷却する。
超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを2mL添加する。
測定には、対物レンズとして「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40)を搭載したフロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用する。前記手順に従い調製した分散液をフロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて2000個のトナーを計測する。
そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.977μm以上39.54μm未満に限定し、トナーの平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scien
tific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5100A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0094】
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0095】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃~40℃となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)
を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例
【0096】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。実施例中で使用する部は特に断りのない限り質量基準である。
【0097】
<トナー粒子1の製造例>
トナー粒子1の製造例について説明する。
【0098】
(結着樹脂粒子分散液の調製)
スチレン89.5部、アクリル酸ブチル9.2部、アクリル酸1.3部、n-ラウリルメルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液に、ネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部をイオン交換水150部に溶解した水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
【0099】
(離型剤分散液の調製)
離型剤(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃)100部、ネオゲンRK 15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて約1時間分散して離型剤分散液を得た。離型剤分散液の濃度は20質量%であった。
【0100】
(着色剤分散液の調製)
着色剤としてカーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)」100部、ネオゲンRK 15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液を得た。
【0101】
(トナー粒子の調製)
樹脂粒子分散液265部、離型剤分散液10部、着色剤分散液10部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。撹拌しながら容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの塩酸を加えてpH=5.0に調整した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定した。重量平均粒径が6.2μmになった時点で、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整して粒子成長を停止させた。
その後、95℃まで昇温して会合粒子の融着と球形化を行った。平均円形度が0.980に到達した時点で降温を開始し、30℃まで降温してトナー粒子分散液1を得た。
【0102】
得られたトナー粒子分散液1を加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットし、トナー粒子1を得た。トナー粒子1の重量平均粒径(D4)は6.3μm、平均円形度は0.980、Tgは57℃であった。
【0103】
<トナー粒子2の製造例>
トナー粒子1の製造例の離型剤分散液の調製において、ベヘン酸ベヘニル(融点:72.1℃)の代わりに、パラフィンワックス(融点:75.4℃)を使用した以外は、トナー粒子1の製造例と同様にしてトナー粒子2を得た。トナー粒子2の重量平均粒径(D4)は6.4μm、平均円形度は0.981、Tgは58℃であった。
【0104】
<微粒子A-1の製造例>
(第一工程)
温度計、攪拌機を備えた反応容器に、水:360部を入れ、濃度5.0質量%の塩酸:15部を添加して均一溶液とした。これを温度25℃で撹拌しながらメチルトリメトキシシラン136.0部を添加し、5時間撹拌した後、濾過してシラノール化合物またはその部分縮合物を含む透明な反応液を得た。
(第二工程)
温度計、攪拌機、滴下装置を備えた反応容器に、水:440部を入れ、濃度10.0質量%のアンモニア水:17部を添加して均一溶液とした。これを温度35℃で撹拌しながら、第一工程で得られた反応液100部を0.50時間かけて滴下し、6時間撹拌し懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離器にかけて微粒子を沈降させ取り出し、温度200℃の乾燥機で24時間乾燥させて微粒子A-1を得た。
得られた微粒子A-1は、透過型走査電子顕微鏡より一次粒子の個数平均粒径が100nm、形状係数SF-1が105であった。
【0105】
<微粒子A-2~A-10の製造例>
シラン化合物、反応開始温度、触媒添加量、滴下時間などを表1に記載のように変更した以外は、微粒子A-1の製造例と同様にして、微粒子A-2~A-10を得た。得られた微粒子A-2~A-10の物性を表1に示す。
【0106】
【表1】

※T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合
【0107】
<微粒子B-1の製造例>
TiO相当分を50質量%含有しているイルメナイト鉱石を、150℃で3時間乾燥した後、硫酸を添加して溶解させ、TiOSOの水溶液を得た。得られた水溶液を濃縮した後、ルチル結晶を有するチタニアゾルをシードとして10部添加した後、170℃で加水分解を行い、不純物を含有するTiO(OH)のスラリーを得た。このスラリーをpH5~6で繰り返し洗浄を行い、硫酸、FeSO及び不純物を十分に除去することで、高純度のメタチタン酸〔TiO(OH)〕のスラリーを得た。
このスラリーを濾過した後、炭酸リチウム(LiCO)を0.5部添加し、250℃で3時間焼成した後、ジェットミルによる解砕処理を繰り返し行い、ルチル型結晶を有する酸化チタン微粒子を得た。得られた酸化チタン微粒子をエタノール中に分散させて撹拌しながら、酸化チタン微粒子100部に対して、表面処理剤としてイソブチルトリメトキシシランを5部滴下混合して反応させた。乾燥した後、170℃で3時間加熱処理し、酸化チタンの凝集体が無くなるまでジェットミルで繰り返し解砕処理を行い、酸化チタン
微粒子として微粒子B-1を得た。微粒子B-1の物性を表2に示す。
【0108】
<微粒子B-2の製造例>
微粒子B-1の製造例において、焼成温度を240℃として、表面処理剤のイソブチルトリメトキシシランを15部に変更した以外は、微粒子B-1と同様にして酸化チタン微粒子として微粒子B-2を得た。微粒子B-2の物性を表2に示す。
【0109】
<微粒子B-3の製造例>
微粒子B-1の製造例において、焼成温度を260℃に変更した以外は、微粒子B-1と同様にして酸化チタン微粒子として微粒子B-3を得た。微粒子B-3の物性を表2に示す。
【0110】
<微粒子B-4の製造例>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiOとして1.85モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0とし解膠処理を行った。
脱硫・解膠を行ったメタチタン酸をTiOとして1.88モルを採取し、3Lの反応容器に投入した。該解膠メタチタン酸スラリーに、塩化ストロンチウム水溶液を、Sr/Ti(モル比)で1.15となるよう2.16モル添加した後、TiO濃度1.039モル/Lに調整した。
次に、撹拌混合しながら90℃に加温した後、10モル/L水酸化ナトリウム水溶液440mLを45分間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
当該反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した。
当該沈殿を含むスラリーを40℃に調整し、塩酸を加えpH2.5に調整した後、固形分に対して4.0質量%のn-オクチルトリエトキシシランを添加し10時間撹拌保持を続けた。5モル/L水酸化ナトリウム溶液を加えpH6.5に調整し1時間撹拌を続けた後、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し、チタン酸ストロンチウム微粒子として微粒子B-4を得た。微粒子B-4の物性を表2に示す。
【0111】
<微粒子B-5の製造例>
燃焼器に酸素を50Nm/h、アルゴンガスを2Nm/hで供給し、アルミニウム粉末の着火用の場を形成した。次いでアルミニウム粉末(平均粒径約45μm、供給量20kg/h)をアルミニウム粉末供給装置から窒素ガス(供給量3.5Nm/h)と共に燃焼器を通過させて反応炉へ供給した。反応炉内にて、アルミニウム粉末を酸化させることにより、アルミナ粒子とした。反応炉内を通過後に得られたアルミナ粒子を分級して微粗粉を除去し、アルミナ微粒子として微粒子B-5を得た。微粒子B-5の物性を表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
<微粒子C-1の製造例>
乾式法により得られたヒュームドシリカ(BET:200m/g)100部を原体とし、ヘキサメチルジシラザン15部で処理した後、25℃における粘度が100mm/sのジメチルシリコーンオイル13部でオイル処理したのち、解砕、篩分級処理を施し、シリカ微粒子1として微粒子C-1を得た。微粒子C-1の物性を表3に示す。
【0114】
<微粒子C-2の製造例>
乾式法により得られたヒュームドシリカ(BET:75m/g)100部を原体とし、ヘキサメチルジシラザン10部で処理した後、25℃における粘度が100mm/sのジメチルシリコーンオイル10部でオイル処理したのち、解砕、篩分級処理を施し、シリカ微粒子として微粒子C-2を得た。微粒子C-2の物性を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
<トナー1の製造例>
まず第1工程として、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)を使用して、トナー粒子1と微粒子B-1を混合した。
FMミキサのジャケット内の水温が50℃±1℃で安定した状態で、トナー粒子1:100部、微粒子B-1:1.0部を投入した。回転羽根の周速38m/secで混合を開始し、槽内温度が50℃±1℃で安定するように、ジャケット内の水温と流量を制御しながら、7分間混合して、トナー粒子1と微粒子B-1の混合物を得た。
【0117】
続いて、第2工程として、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)を使用して、トナー粒子1と微粒子B-1の混合物に、微粒子A-1と微粒子C-1を添加した。FMミキサのジャケット内の水温が25℃±1℃で安定した状態で、トナー粒子1:100部に対して、微粒子A-1:2.0部、微粒子C-1:0.8部を投入した。回転羽根の周速28m/secで混合を開始し、槽内温度が25℃±1℃で安定するように、ジャケット内の水温と流量を制御しながら4分間混合した後、目開き75μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。トナー1の製造条件を表4に、トナー1の諸物性を表5に示
す。
【0118】
【表4】

※シリカ:(一次粒子の個数平均粒径:105nm、SF-1:101、T3単位構造を有するケイ素に由来するピーク面積の割合:0%)
【0119】
【表5】
【0120】
<トナー2~23、比較トナー1~9の製造例>
トナー1の製造例において、表4に示すトナー粒子、第1工程と第2工程で添加する微粒子A~Cと添加部数、混合条件にすること以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2~23、比較トナー1~9を得た。トナー2~23、比較トナー1~9の物性は表5に示す。
【0121】
<実施例1>
キヤノン製レーザービームプリンタLBP652C用カートリッジにトナー1を充填し、下記評価を実施した。評価結果を表6に示す。
【0122】
<画像濃度の評価>
画像濃度の評価は、高温高湿環境(温度30.0℃、相対湿度80%)で評価を行った。長期耐久試験を想定して、印字率1%となる横線パターンを1枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、計12000枚の画出し試験を実施した。1枚目、12000枚目での画像濃度を測定した。A4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、80g/m)を用いた。画像濃度は、5mm×5mmのベタ黒パッチ画像を出力して、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度を測定することにより測定した。数値が大きい方が現像性が良いことを示す。
A:画像濃度が1.45以上である。
B:画像濃度が1.40以上1.44以下である。
C:画像濃度が1.35以上1.39以下である。
D:画像濃度が1.34以下である。
【0123】
<画像濃度均一性の評価>
画像濃度均一性の評価は、転写性の影響を大きく受けるため、転写性に対してより厳しいと想定される高温高湿環境(温度30.0℃、相対湿度80%)で行った。評価にはラフ紙であるFOX RIVER BOND紙(110g/m)を用いた。
画像濃度の評価において、長期耐久試験の1枚目、12000枚目で画像濃度を測定した後に、先端余白5mm、左右余白5mmで、左、右、中央の3箇所、さらにこれを長手方向に30mm間隔で3箇所、合計で9箇所に5mm×5mmのベタ黒パッチ画像を有する画像を出力した。画像の9箇所のベタ黒パッチ画像部分の画像濃度を測定し、すべての濃度の最大値と最小値の差を求めた。画像濃度は反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して測定した。最大値と最小値の数値差が小さい方が画像濃度均一性が良いことを示す。
A:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.05以下である。
B:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.06以上0.10以下である。
C:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.11以上である。
【0124】
<転写性の評価>
転写性の評価は、転写性に対してより厳しいと想定される高温高湿環境(温度30.0℃、相対湿度85%)で行った。評価紙は、ラフ紙であるFOX RIVER BOND紙(110g/m)を用いた。転写性は、ベタ黒画像転写後の感光体上の転写残トナーをポリエステル粘着テープ(No.31B、幅15mm)(日東電工社製)によりテーピングしてはぎ取った。このとき、紙上に貼ったそのテープのマクベス反射濃度の値をC、転写後定着前のトナーの載った紙上に上記テープを貼ったもののマクベス濃度をD、未使用の紙上に貼った上記テープのマクベス濃度をEとした。そして、近似的に以下の式で計算した。数値が大きい方が転写性が良いことを示す。
転写性(%)={(D-C)/(D-E)}×100
A:転写性が95%以上である。
B:転写性が90%以上95%未満である。
C:転写性が85%以上90%未満である。
D:転写性が80%以上85%未満である。
E:転写性が80%未満である。
【0125】
【表6】
【0126】
<実施例2~23、比較例1~9>
実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表6に示す。