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特許7433877画像形成システム、情報引継方法、サーバ装置、プログラム、画像形成装置及び画像処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】画像形成システム、情報引継方法、サーバ装置、プログラム、画像形成装置及び画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20240213BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240213BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H04N1/00 127A
G03G21/00 370
G03G21/00 388
G03G21/00 386
B41J29/38 202
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019227701
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021097330
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大輔
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-162456(JP,A)
【文献】特開2019-055568(JP,A)
【文献】特開2013-131168(JP,A)
【文献】特開2009-003561(JP,A)
【文献】特開2016-167742(JP,A)
【文献】特開2019-70868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03G 21/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の画像形成装置を含む画像形成システムであって、
前記第1の画像形成装置は、第1の画像形成手段と、前記第1の画像形成手段の動作に関連する動作関連情報を取得する取得手段と、を備え、
前記画像形成システムは、
前記画像形成システムにおいて第2の画像形成装置が新たに使用され、第1ユーザが前記第2の画像形成装置にログインした場合に、前記第1の画像形成装置により取得された前記動作関連情報のうち、前記第2の画像形成装置の第2の画像形成手段の動作に関連する、前記第1ユーザのユーザ識別情報に関連付けられている前記動作関連情報を、前記第2の画像形成装置へ引継ぐ引継手段、
をさらに含む、画像形成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成システムであって、前記動作関連情報は、画像形成動作を調整し又は設定するために使用される情報である、画像形成システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成システムであって、前記動作関連情報は、画像形成動作の1つ以上の性能指標に関連するユーザの嗜好を表すユーザ嗜好情報を含む、画像形成システム。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成システムであって、前記1つ以上の性能指標は、画質、静音性、生産性、装置寿命、省エネルギー性能及び最先出力時間のうちの少なくとも1つを含む、画像形成システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成システムであって、前記動作関連情報は、前記第1の画像形成手段の過去の動作の動作履歴情報を含む、画像形成システム。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成システムであって、前記動作履歴情報は、前記過去の動作における用紙サイズ、用紙タイプ、印刷枚数及び平均印刷率のうちの少なくとも1つに関連する、画像形成システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成システムであって、前記動作関連情報は、前記第1の画像形成装置の動作環境における過去の温度及び湿度のうちの少なくとも一方に関連する環境条件情報を含む、画像形成システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成システムであって、前記動作関連情報は、前記第1の画像形成手段の動作履歴情報及び前記第1の画像形成装置の動作環境の環境条件情報のうちの一方又は双方を分析することにより生成される分析結果情報を含む、画像形成システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成システムであって、前記引継手段は、前記第1の画像形成装置の機能、構成又は用途に関連付けられる装置情報と、前記第2の画像形成装置の機能、構成又は用途に関連付けられる装置情報とを比較することにより、前記動作関連情報のうち前記第2の画像形成装置へ引継ぐべき前記動作関連情報を選択する、画像形成システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成システムであって、前記引継手段は、前記動作関連情報の情報項目ごとに予め定義される基準に従って、前記動作関連情報のうち前記第2の画像形成装置へ引継ぐべき前記動作関連情報を選択する、画像形成システム。
【請求項11】
請求項3又は4に記載の画像形成システムであって、
前記第1の画像形成装置は、ユーザインタフェースを介してユーザから取得される前記ユーザ嗜好情報を、前記第1の画像形成手段の動作を調整し又は設定するために使用し、
前記第2の画像形成装置は、前記引継手段により引継がれる前記ユーザ嗜好情報を、前記第2の画像形成手段の動作を調整し又は設定するために使用する、
画像形成システム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成システムであって、前記引継手段は、前記第2の画像形成装置の前記使用の前に前記画像形成システムに存在した前記第1の画像形成装置を含む1つ以上の画像形成装置により取得された動作関連情報のうち、前記第2の画像形成装置の前記第2の画像形成手段の動作を調整し又は設定するために使用される情報を、前記第2の画像形成装置へ引継ぐ、画像形成システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成システムであって、前記引継手段を備えるサーバ装置を含む、画像形成システム。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像形成システムであって、前記第1の画像形成装置又は他の画像形成装置が前記引継手段を備える、画像形成システム。
【請求項15】
画像形成システム内の第1の画像形成装置により、前記第1の画像形成装置の第1の画像形成手段の動作に関連する動作関連情報を取得することと、
前記画像形成システムにおいて第2の画像形成装置が新たに使用され、第1ユーザが前記第2の画像形成装置にログインした場合に、前記画像形成システムの引継手段により、前記第1の画像形成装置により取得された前記動作関連情報のうち、前記第2の画像形成装置の第2の画像形成手段の動作に関連する、前記第1ユーザのユーザ識別情報に関連付けられている前記動作関連情報を、前記第2の画像形成装置へ引継ぐことと、
を含む、情報引継方法。
【請求項16】
少なくとも第1の画像形成装置を含む画像形成システム内のサーバ装置であって、
前記第1の画像形成装置の第1の画像形成手段の動作に関連する動作関連情報を保持する保持手段と、
前記画像形成システムにおいて第2の画像形成装置が新たに使用され、第1ユーザが前記第2の画像形成装置にログインした場合に、前記動作関連情報のうち、前記第2の画像形成装置の第2の画像形成手段の動作に関連する、前記第1ユーザのユーザ識別情報に関連付けられている前記動作関連情報を、前記第2の画像形成装置へ引継ぐ引継手段と、
を備えるサーバ装置。
【請求項17】
少なくとも第1の画像形成装置を含む画像形成システム内のサーバ装置のプロセッサを、
前記第1の画像形成装置の第1の画像形成手段の動作に関連する動作関連情報を保持する保持部と、
前記画像形成システムにおいて第2の画像形成装置が新たに使用され、第1ユーザが前記第2の画像形成装置にログインした場合に、前記動作関連情報のうち、前記第2の画像形成装置の第2の画像形成手段の動作に関連する、前記第1ユーザのユーザ識別情報に関連付けられている前記動作関連情報を、前記第2の画像形成装置へ引継ぐ引継部と、
として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項18】
画像形成システム内の画像形成装置であって、
画像形成手段と、
前記画像形成手段の動作に関連する動作関連情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記動作関連情報を保持する保持手段と、
を備え、
前記保持手段は、前記画像形成システムにおいて前記画像形成装置が新たに使用され、第1ユーザが前記画像形成装置にログインした場合に、前記画像形成システムに存在した他の画像形成装置により取得された動作関連情報のうち、前記画像形成手段の動作に関連する、前記第1ユーザのユーザ識別情報に関連付けられている前記動作関連情報を、前記画像形成システムの引継手段から引継いで保持する、
画像形成装置。
【請求項19】
少なくとも第1の画像処理装置を含む画像処理システムであって、
前記第1の画像処理装置は、第1の画像処理手段と、前記第1の画像処理手段の動作に関連する動作関連情報を取得する取得手段と、を備え、
前記画像処理システムは、
前記画像処理システムにおいて第2の画像処理装置が新たに使用され、第1ユーザが前記第2の画像処理装置にログインした場合に、前記第1の画像処理装置により取得された前記動作関連情報のうち、前記第2の画像処理装置の第2の画像処理手段の動作に関連する、前記第1ユーザのユーザ識別情報に関連付けられている前記動作関連情報を、前記第2の画像処理装置へ引継ぐ引継手段、
をさらに含む、画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成システム、情報引継方法、サーバ装置、プログラム、画像形成装置及び画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ及び複合機といった画像形成装置において、装置の動作の履歴又はユーザの嗜好に合わせて画像形成の動作を調整する技術が知られている。例えば、特許文献1は、過去の動作履歴に基づいて、用紙を搬送する搬送ローラ対の間隔及び回転速度を調整する画像形成装置を開示している。特許文献2は、ユーザによる画像の閲覧及び調整といった作業の履歴からユーザが高い関心を示す評価項目を把握し、把握した評価項目について基準を設定して、色補正などの調整処理を実行する画像形成装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4784122号公報
【文献】特開2015-95776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、装置の動作を適切に調整し又は設定するために十分な量の履歴情報が蓄積されるまでには、ある程度長い時間を要する。例えば、ある環境にプリンタが導入される場合に、新たなプリンタが動作調整用の情報を一から収集しなければならないとすれば、十分な量の情報が蓄積されるまで新たなプリンタの動作は最適なものとならない。しかし、環境内に既存のプリンタが存在する場合には、既存のプリンタによって収集済みの情報は、新たなプリンタにとっても有効な情報を含むはずである。こうした事情は、プリンタに代表される画像形成装置に限らず、スキャナ等の画像処理装置一般に当てはまる。
【0005】
そこで、本開示は、過去に収集済みの情報を再度収集する時間の無駄を排除して、可能な限り適切な画像処理動作を提供できる仕組みを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある観点によれば、少なくとも第1の画像形成装置を含む画像形成システムであって、前記第1の画像形成装置は、第1の画像形成手段と、前記第1の画像形成手段の動作に関連する動作関連情報を取得する取得手段と、を備え、前記画像形成システムは、前記画像形成システムにおいて第2の画像形成装置が新たに使用され、第1ユーザが前記第2の画像形成装置にログインした場合に、前記第1の画像形成装置により取得された前記動作関連情報のうち、前記第2の画像形成装置の第2の画像形成手段の動作に関連する、前記第1ユーザのユーザ識別情報に関連付けられている前記動作関連情報を、前記第2の画像形成装置へ引継ぐ引継手段、をさらに含む、画像形成システムが提供される。対応する方法、サーバ装置、プログラム、画像形成装置及び画像処理システムもまた提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、過去に収集済みの情報を再度収集する時間の無駄を排除して、可能な限り適切な画像処理動作を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プリンタデバイスの構成の一例を示す模式図。
図2】一実施形態に係る画像形成システムの構成の一例を示す模式図。
図3図2に示した画像形成装置及びサーバ装置の機能面の構成の一例を示すブロック図。
図4】ユーザ嗜好情報の入力を受付けるためのGUI(Graphical User Interface)の第1の例を示す説明図。
図5】ユーザ嗜好情報の入力を受付けるためのGUIの第2の例を示す説明図。
図6】情報の引継元の装置を指定するためのGUIの一例を示す説明図。
図7】ユーザ嗜好情報の追加的な入力を受付けるためのGUIの一例を示す説明図。
図8】画像形成装置により実行される基本的な処理の流れの一例を示すフローチャート。
図9】サーバ装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
図10】画像形成装置により実行される引継情報取得処理の流れの一例を示すフローチャート。
図11】一変形例に係る画像形成システムの構成の一例を示す模式図。
図12図11に示した画像形成装置の機能面の構成の一例を示すブロック図。
図13】一変形例においてセンタマシンにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
図14】一変形例において画像形成装置により実行される引継情報取得処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<<1.概要>>
本節では、本開示に係る技術がプリンタを含む画像形成システムに適用される例を主に説明する。しかしながら、本開示に係る技術は、プリンタに限定されない画像処理装置(例えば、複写機、複合機又はスキャナ)を含む画像処理システムへ広く適用可能である。特に説明の無い限り、以下に説明する装置、デバイス、モジュール及びチップといった構成要素の各々は、単一のエンティティで構成されてもよく、又は物理的に異なる複数のエンティティから構成されてもよい。
【0011】
<1-1.画像形成ユニットの構成例>
図1は、一実施形態に係る画像形成装置の画像形成手段であるプリンタデバイス100の構成の一例を示す模式図である。ここでは、プリンタデバイス100は、一例として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)という4色で電子写真方式を用いて印刷を行うカラーレーザプリンタであるものとする。
【0012】
図1を参照すると、プリンタデバイス100は、4色のステーションの各々について、一次転写ローラ4Y、4M、4C、4K、感光ドラム5Y、5M、5C、5K、帯電ユニット7Y、7M、7C、7K、及び現像ユニット8Y、8M、8C、8Kを有する。感光ドラム5Y、5M、5C、5K、帯電ユニット7Y、7M、7C、7K、及び現像ユニット8Y、8M、8C、8Kは、プリンタデバイス100の本体(筐体ともいう)に着脱可能なカートリッジ22Y、22M、22C、22Kに搭載される。
【0013】
感光ドラム5Y、5M、5C、5Kは、アルミシリンダと、アルミシリンダの外周に塗布された有機光導伝層からなり、駆動モータ(図示せず)の駆動力の伝達を受けて、時計周りの方向に回転する。帯電ユニット7Y、7M、7C、7Kはそれぞれ帯電ローラ7YR、7MR、7CR、7KRを有し、帯電ローラ7YR、7MR、7CR、7KRは感光ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面をそれぞれ均一に帯電させる。そして、スキャナユニット10が感光ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面に選択的に光を照射し、それにより感光ドラム5Y、5M、5C、5Kに静電潜像が形成される。現像ユニット8Y、8M、8C、8Kはそれぞれ現像ローラ8YR、8MR、8CR、8KRを有し、現像ローラ8YR、8MR、8CR、8KRは感光ドラム5Y、5M、5C、5Kに形成された静電潜像をそれぞれトナーで可視化する。
【0014】
画像形成時に、中間転写ベルト12は、感光ドラム5Y、5M、5C、5Kに当接しながら、図中で反時計周りの方向に回転する。一次転写ローラ4Y、4M、4C、4Kは一次転写バイアスを印加され、一次転写バイアスが感光ドラム5Y、5M、5C、5Kの可視画像を中間転写ベルト12へそれぞれ一次転写する。中間転写ベルト12に転写されたカラー可視画像は、二次転写ローラ9と中間転写ベルト12との間のニップ部(二次転写位置)において、用紙2へ二次転写される。一次転写ローラ4Y、4M、4C、4K及び二次転写ローラ9は、中間転写ベルト12の回転に伴って回転する。
【0015】
可視画像の一部は、二次転写位置で用紙2へ転写されず中間転写ベルト12上に残存する。この残存可視画像は、クリーニング動作によって除去される。クリーニング動作では、残存可視画像は、中間転写ベルト12によってクリーニングブレード12aまで搬送され、クリーニングブレード12aにより掻き取られ、廃トナー容器12bへ回収される。
【0016】
カセットトレイ101は、複数の用紙(記録材ともいう)2を収容する容器である。給紙ローラ102は、給紙モータ(図示せず)の回転中に給紙ソレノイド(図示せず)が吸引されることで回転する。給紙ローラ102は、用紙2をカセットトレイ101から搬送路25へ供給し、レジストレーションローラ(レジローラともいう)3へ搬送する。搬送路25の途中にはレジストレーションセンサ(レジセンサともいう)16が配置され、レジセンサ16は用紙2の先端を検知する。レジローラ3は、レジセンサ16によって用紙2の先端が検知されたタイミングに応じて、用紙2を二次転写位置まで搬送する。
【0017】
定着ユニット13は、用紙2を加熱する定着ローラ14と用紙2を定着ローラ14に圧接させる加圧ローラ15とを備え、用紙2を搬送しながら用紙2へ転写されたカラー可視画像を定着させる。定着ローラ14及び加圧ローラ15は中空状に形成され、定着ローラ14の内部にはヒータが内蔵される。カラー可視画像が形成された用紙2は、定着ローラ14及び加圧ローラ15により搬送されながら加熱及び加圧され、それにより用紙2の表面に可視画像のトナーが定着する。可視画像の定着後の用紙2は、排紙ローラ52によって排紙トレイ27へ排出される。なお、定着ユニット13の下流側に配置される定着排紙センサ17は、用紙2の存在を検知する。
【0018】
<1-2.課題の説明>
上で説明したプリンタデバイス100の画像形成動作を、デバイスの動作履歴又はユーザの嗜好に合わせて調整することを考える。例えば、過去の用紙サイズ若しくは用紙タイプごとの使用頻度、又は平均印刷率は、待機時にローラをどの程度予熱しておくべきかの指標になり得る。デバイスの動作環境の温度又は湿度が高ければカールが発生し易くなることから、環境温度又は環境湿度を考慮して動作速度を引下げ又は定着温度を引下げることで、カールの発生を防止することも有益である。環境条件の変化が大きいタイミング、又は多数の印刷が行われる前のタイミングでデバイスの校正を自動的に実行することで、改善された画質をユーザに提供することも可能である。但し、デバイスの動作をどのように調整するかは、例えば画質、静音性及び生産性といった性能指標に影響し、これら性能指標は互いにトレードオフの関係にある。そのため、ユーザが重視する性能指標を把握した上で、その性能指標を向上させるように又は劣化させないように動作を調整することが望ましい。
【0019】
装置が環境に導入されてから、装置の動作を適切に調整し又は設定するために十分な量の情報が蓄積されるまでには、ある程度長い時間を要する。新たな装置が環境に導入される場合、その新たな装置が動作調整用の情報を一から収集しなければならないとすれば、十分な量の情報が蓄積されるまで、装置の動作は最適なものとならない。また、新たな装置にユーザの嗜好を入力する作業は、ユーザにとっての負担となる。環境内に既存の装置が存在する場合には、既存の装置によって収集済みの情報は、新たな装置にとっても有効な情報を含むはずである。
【0020】
そこで、本実施形態では、次節以降で詳細に説明するように、ある装置が過去に収集した情報を他の装置へ引継ぐことを可能とする仕組みを取り入れる。それにより、収集済みの情報を再度収集する時間の無駄が排除され、可能な限り適切な動作が提供されることになる。
【0021】
<<2.画像形成システムの構成>>
<2-1.全体的な構成>
図2は、本実施形態に係る画像形成システム1の構成の一例を示す模式図である。図2を参照すると、画像形成システム1は、ユーザ端末200、画像形成装置230及びサーバ装置260を含む。
【0022】
ユーザ端末200は、画像形成システム1のユーザにより使用される端末装置である。ユーザ端末200は、例えばPC(Personal Computer)若しくはスマートフォンのような汎用的な情報端末であってもよく、又は特定の業務目的に特化した専用端末であってもよい。ユーザ端末200は、操作/表示部201及び通信I/F202を備える。操作/表示部201は、画像及び情報を表示するディスプレイと、ユーザによる操作を受付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、キーパッド又はタッチセンサ)とを含む。通信インタフェース(I/F)202は、ユーザ端末200による他の装置との間の通信のためのインタフェースである。通信I/F202は、操作/表示部201を介してユーザにより印刷が指示された場合に、印刷ジョブを画像形成装置230へ送信する。
【0023】
画像形成装置230は、図1を用いて説明したプリンタデバイス100、ビデオコントローラ240、及びプリンタエンジン250を備える。ビデオコントローラ240は、操作/表示部241、CPU242、ROM243、RAM244、HDD245及び通信I/F246を有する。操作/表示部241は、例えば操作パネル及び操作ボタンを含む。CPU(Central Processing Unit)242は、画像形成装置230の機能の全般を制御するプロセッサである。ROM(Read-Only Memory)243は、不揮発性メモリであり、CPU242の起動の当初に実行されるブートプログラムを記憶する。RAM(Random Access Memory)244は、所謂メインメモリであり、CPU242のための一時的な記憶領域を提供する。HDD(Hard Disk Drive)245は、補助記憶デバイスであり、画像形成装置230の動作のためのコンピュータプログラム、印刷画像データ及び後述する動作関連情報を記憶する。通信I/F246は、画像形成装置230による他の装置との間の通信のためのインタフェースである。画像形成装置230により実行される印刷ジョブは、例えばユーザ端末200から通信I/F246を介して受信され、又は操作/表示部241を介して受付けられる。通信I/F246は、画像形成装置230により収集される動作関連情報をネットワークを介してサーバ装置260へ送信する。
【0024】
プリンタエンジン250は、プリンタデバイス100の制御に専用の画像処理エンジンである。プリンタエンジン250は、CPU251、ROM252、RAM253、I/Oポート254及びシステムバス255を有する。CPU251は、プリンタデバイス100の画像形成動作を制御するプロセッサである。ROM252は、不揮発性メモリであり、CPU251により実行されるプログラムを記憶する。RAM253は、CPU251のための一時的な記憶領域を提供する。I/Oポート254は、上述したプリンタデバイス100の様々なアクチュエータ及びセンサと接続され、アクチュエータへの制御出力を送出し、及びセンサ入力を受付ける。システムバス255は、CPU251、ROM252、RAM253及びI/Oポート254の間の双方向の信号のやり取りを仲介する。
【0025】
図1には1つの画像形成装置230が示されているが、画像形成システム1は、複数の画像形成装置を含んでもよい。同様に、画像形成システム1は、複数のユーザ端末を含んでもよい。
【0026】
サーバ装置260は、画像形成装置230により収集される動作関連情報を一元的に管理する装置である。サーバ装置260は、例えば企業内のLAN(Local Area Network)、ホームネットワーク若しくはクラウドネットワークへ接続される、データサーバ又はストレージサーバであってよい。本実施形態において、サーバ装置260は、画像形成装置230を識別する識別情報に関連付けて、画像形成装置230から受信される動作関連情報を記憶する。画像形成装置230から受信される動作関連情報は、例えば、ユーザ嗜好情報、動作履歴情報及び環境条件情報を含み得る。後に説明するように、サーバ装置260は、画像形成システム1において新たな画像形成装置の使用が開始される場合、画像形成装置230により取得された動作関連情報のうち、新たな画像形成装置の動作に関連する情報を、新たな画像形成装置へ引継ぐ。
【0027】
<2-2.画像形成装置の機能>
図3は、図2に示した画像形成装置230及びサーバ装置260の機能面の構成の一例を示すブロック図である。図3を参照すると、画像形成装置230は、ユーザ嗜好取得部310、履歴取得部315、環境条件取得部320、情報保持部325、動作調整部330、ジョブ制御部335及び通信部340を備える。
【0028】
ユーザ嗜好取得部310は、画像形成装置230の動作関連情報の一部として、画像形成動作の1つ以上の性能指標に関連するユーザの嗜好を表すユーザ嗜好情報を取得する。画像形成動作の性能指標は、例えば次のうちの少なくとも1つを含み得る:
・画質 … 印刷される画像の品質
・静音性 … 印刷動作時に発生する騒音が小さいこと
・生産性 … 一定の時間内により多くの画像を印刷できること
・装置寿命 … 装置の耐用期間の長さ
・省エネルギー性能 … 電力消費が少ないこと
・最先出力時間 … 印刷動作開始から1枚目の印刷終了までの時間が短いこと
なお、プリンタにとっての最先出力時間を最先印刷出力時間(FPOT)ともいう。これら性能指標に関連するユーザの嗜好とは、典型的には、各性能指標をどの程度(他の性能指標に対して相対的に)ユーザが重視するか、を意味し得る。
【0029】
ユーザ嗜好取得部310は、例えば、操作/表示部241の画面上に、ユーザに嗜好を問合せるためのGUIを表示させ、当該GUIを介して問合せに対する回答を受付けることによりユーザ嗜好情報を取得してもよい。図4は、ユーザ嗜好情報の入力を受付けるためのGUIの第1の例を示す説明図である。図4に示した入力ウィンドウ400は、いわゆるアンケート形式の問合せを行うGUIである。入力ウィンドウ400は、画像形成動作の性能指標に関連する6つの質問を、各質問について複数の選択肢と共に表示している。ユーザは、自らの嗜好及び傾向に一致する選択肢を選択(例えば、タッチ)することにより、各質問に対する回答を入力することができる。入力ウィンドウ400は、画像形成装置230の初期セットアップの期間中、及びユーザがユーザ嗜好情報を変更したいと望む任意の時点で表示されてよい。入力ウィンドウ400は、ユーザ端末200の操作/表示部201の画面上に表示されてもよい。なお、ここでのユーザとは、画像形成装置230を利用する人物であってもよく、又は画像形成装置230の運用を管理するマネージャ若しくはエンジニアであってもよい。
【0030】
ユーザ嗜好取得部310は、例えば、入力ウィンドウ400に対するユーザの回答に基づいて、ユーザの嗜好を数値で表現するユーザ嗜好情報を取得し得る。例えば、入力ウィンドウ400の各選択肢には、次表に示す嗜好スコアが予め割当てられる。なお、ここでは、最先出力時間は性能指標として扱われないものとする。
【0031】
【表1】
【0032】
そして、ユーザ嗜好取得部310は、6つの質問に対する回答として選択された選択肢を通じて、各性能指標に割当てられた嗜好スコアを合計することにより、各性能指標の嗜好スコアを算出する。例えば、質問Q1に対し選択肢a11、質問Q2に対し選択肢a22、質問Q3に対し選択肢a33、質問Q4に対し選択肢a42、質問Q5に対し選択肢a51、質問Q6に対し選択肢a62が選択された場合、嗜好スコアは次のように算出される:
{画質,静音性,生産性,寿命,省エネ}={1.3,2.3,8.8,3.5,3.6}
この嗜好スコアの例は、ユーザが画質及び静音性は低くとも生産性が高いことを好んでいることを表す。性能指標の数をNとした場合、ユーザ嗜好情報は、このような嗜好スコアの値を示すN次元ベクトルであり得る。
【0033】
ユーザ嗜好取得部310は、図4の例のようにアンケート形式でユーザ嗜好情報を取得する代わりに、性能指標ごとの嗜好スコアの値を直接的にユーザに入力させてもよい。図5は、ユーザ嗜好情報の入力を受付けるためのGUIの第2の例を示す説明図である。図5に示した入力ウィンドウ500は、画質、静音性、生産性、寿命及び省エネという5つの性能指標について、嗜好スコア(例えば、ユーザにとっての重要度)を10段階でそれぞれ指定可能とする5つのスライダ501~505を有する。ユーザは、より重要だと考える性能指標についてより大きいスコアを指定してOKボタンを選択することで、嗜好スコアを入力することができる。図5の例では、例えば次のような嗜好スコアが取得され得る。
{画質,静音性,生産性,寿命,省エネ}={7.0,2.0,3.0,6.0,3.0}
この嗜好スコアの例は、ユーザが画質及び装置寿命を他の指標に対して相対的に重視していることを表す。ユーザ嗜好取得部310は、このように取得されるユーザ嗜好情報を情報保持部325へ出力する。
【0034】
履歴取得部315は、画像形成装置230のプリンタデバイス100により印刷ジョブが実行された場合に、画像形成動作の履歴となる動作履歴情報を、画像形成装置230の動作関連情報の一部として取得する。ここでの動作の履歴は、例えば次のうちの少なくとも1つを含み得る:
・用紙サイズ … 消費された用紙のサイズ(A4、A3、レターなど)
・用紙タイプ … 消費された用紙のタイプ(普通紙、グロス紙など)
・印刷枚数 … 消費された用紙の枚数
・平均印刷率 … 用紙単位又はジョブ単位の印刷率の平均値
なお、平均印刷率は、例えば、画素それぞれの色別のパーセント濃度の印刷画像にわたる平均値を、4色について合計した値である。一例として、用紙の印刷領域の半分をマゼンタ100%及びシアン100%からなる色が一様に占める画像が印刷されるケースでは、平均印刷率は(100+100)・1/2=100%となる。履歴取得部315は、動作履歴情報を情報保持部325へ出力する。
【0035】
環境条件取得部320は、画像形成装置230の動作環境における環境条件を示す環境条件情報を、例えば周期的に取得する。ここでの環境条件は、例えば次のうちの少なくとも1つを含み得る:
・環境温度 … 動作環境の温度
・環境湿度 … 動作環境の湿度
環境条件情報の取得の周期は、例えば数分、1時間又は数時間など、いかなる長さを有していてもよい。環境条件取得部320は、例えば、温度センサ及び湿度センサ(共に図示せず)を用いて、周期的に到来する測定タイミングで環境温度及び環境湿度を測定してもよい。また、環境条件取得部320は、複数回の測定の結果から測定値の平均を算出してもよい。環境条件取得部320は、環境条件情報を情報保持部325へ出力する。
【0036】
情報保持部325は、プリンタデバイス100の画像形成動作に関連する動作関連情報を、例えばHDD245に記憶させることにより保持する。動作関連情報は、典型的には、画像形成動作を調整し又は設定するために使用される情報であってよい。動作関連情報は、ユーザ嗜好取得部310から入力されるユーザ嗜好情報、履歴取得部315から入力される動作履歴情報、及び環境条件取得部320から入力される環境条件情報を含み得る。ユーザ嗜好情報は、上述したように、装置の初期セットアップの期間中に取得され得る。一方、動作履歴情報は、プリンタデバイス100が印刷ジョブを実行する都度取得され、時間の経過に沿って蓄積される。環境条件情報は、周期的に取得され、やはり時間の経過に沿って蓄積される。
【0037】
情報保持部325は、ジョブ単位で取得される動作履歴情報の各情報項目の値をある期間(例えば、1日)を通じて集計し、その集計結果を保持してもよい。例えば、用紙サイズ及び印刷枚数から、用紙サイズ別の印刷枚数が集計され得る。また、用紙タイプ及び印刷枚数から、用紙タイプ別の印刷枚数が集計され得る。また、平均印刷率及び印刷枚数から、次表のような平均印刷率レンジ別の印刷枚数が集計され得る。
【0038】
【表2】
【0039】
また、情報保持部325は、周期的に取得される環境条件情報を、時刻又は時間帯と関連付けて保持し得る。例えば、環境条件情報は、午前0時(又は0時~1時)における温度及び湿度、午前1時(又は1時~2時)における温度及び湿度、…、午後23時(又は23時~24時)における温度及び湿度といった形で記憶され得る。
【0040】
さらに、情報保持部325は、過去の動作履歴情報及び過去の環境条件情報のうちの一方又は双方を分析して分析結果情報を生成し、生成した分析結果情報を動作関連情報として保持してもよい。一例として、情報保持部325は、通算の印刷枚数に基づいて、画像形成装置230の残存寿命を(例えば、パーセント形式で)推定してもよい。残存寿命の推定は、(動作履歴として取得され得る)定着ローラの通算回転数などの他のパラメータから推定されてもよい。他の分析結果情報の例は、次のうちの少なくとも1つを含み得る:
・カールの発生し易さ … 高/低
・高印刷率でのグロス紙への印刷の頻度 … 高/低
・環境変動小且つ主として印刷率低 … 該当/非該当
こうした分析結果情報もまた、動作関連情報の一部としてHDD245に記憶され得る。
【0041】
動作調整部330は、情報保持部325により保持されている動作関連情報を用いて、プリンタデバイス100の画像形成動作を調整し又は設定する。例えば、動作調整部330は、ユーザ嗜好情報に基づき、ユーザが各性能指標をどの程度重視しているかに依存して、プリンタデバイスの様々な動作パラメータを調整し又は設定してもよい。また、動作調整部330は、上述した動作履歴情報、環境条件情報及び分析結果情報のうちの1つ以上に基づいて、プリンタデバイス100の様々な動作パラメータを調整し又は設定してもよい。ここで調整され又は設定され得るプリンタデバイス100の動作パラメータは、例えば次のうちの少なくとも1つを含み得る:
・ローラの予熱の度合い又はタイミング
・用紙の搬送の速度(搬送ローラの回転速度)
・搬送ローラ対の間隔
・スリープモードへの遷移前の待ち時間
・色補正のプロファイル
・クリーニングの頻度
【0042】
1つの具体的な例を説明すると、あるプリンタは、省エネルギー性能を高めるために、待機モードにおいて定着ローラ14の内部のヒータを停止する(即ち、予熱を停止する)機能を有する。定着ローラ14の予熱は、サイズの大きい用紙への印刷が頻繁に行われる場合には、画質向上のために特に有益である。一方、サイズの大きい用紙への印刷があまり行われない場合には、予熱による画質向上の効果よりも、エネルギーの浪費というデメリットが上回る可能性がある。そこで、動作調整部330は、省エネルギー性能を重視すべき場合、又はサイズの大きい用紙への印刷があまり行われないことを動作履歴が示す場合に、定着ローラ14のヒータを稼働させる時間を短縮し、又は予熱の目標温度を引下げ得る。
【0043】
動作調整部330は、情報保持部325により保持されている動作関連情報から判定されるタイミングで、プリンタデバイスの動作パラメータを調整するためのキャリブレーションを実行してもよい。キャリブレーションのタイミングは、例えば、環境温度及び環境湿度といった環境条件が大きく変化すると予測されるタイミング、又は多数の印刷が行われると予測されるタイミングであってもよい。
【0044】
ジョブ制御部335は、画像形成装置230における印刷ジョブの実行を制御する。例えば、ジョブ制御部335は、通信部340を介してユーザ端末200から印刷ジョブが受信された場合に、印刷ジョブに従って用紙へ画像を形成するように、プリンタエンジン250を介してプリンタデバイス100を制御する。また、ジョブ制御部335は、印刷ジョブの実行が終了すると、履歴取得部315に実行済みのジョブについての動作履歴情報を取得させる。
【0045】
通信部340は、通信I/F246を用いて、ユーザ端末200から印刷ジョブを受信する。また、通信部340は、印刷ジョブの進行状況及び実行結果をユーザ端末200へ送信する。また、本実施形態において、通信部340は、通信I/F246を用いて、情報保持部325により保持されている画像形成装置230の動作関連情報をサーバ装置260へ送信する。動作関連情報のサーバ装置260への送信は、(例えば、1日に1回のように)周期的に行われてもよく、又は情報に更新が生じた都度行われてもよい。通信部340は、動作関連情報と共に、画像形成装置230を識別する識別情報(例えば、シリアル番号)をサーバ装置260へ送信してもよい。また、通信部340は、動作関連情報と共に、画像形成装置230の機能、構成又は用途に関連付けられる装置情報(例えば、モデル番号)をサーバ装置260へ送信してもよい。
【0046】
さらに、本実施形態において、通信部340は、画像形成装置230がシステム内で新たに使用開始される際、既存の装置により収集済みの動作関連情報をサーバ装置260から受信し得る。これ以降の説明では、このようにサーバ装置260から受信される動作関連情報を、引継情報という。通信部340は、サーバ装置260から引継情報を受信すると、受信した引継情報を情報保持部325へ出力する。情報保持部325は、引継情報を動作関連情報としてHDD245に記憶させる。動作調整部330は、使用開始の当初であっても、既存の装置から提供され情報保持部325により保持される引継情報を用いて、プリンタデバイス100の画像形成動作を上で例示した手法で調整することができる。
【0047】
<2-3.サーバ装置の機能>
図3を参照すると、サーバ装置260は、通信部360、情報保持部370及び引継部380を備える。
【0048】
通信部360は、画像形成装置230の上述した動作関連情報を、画像形成装置230の通信部340から受信する。通信部360は、受信した動作関連情報を情報保持部370へ出力する。また、通信部360は、画像形成システム1において新たな装置が使用開始される際に、既存の装置により過去に収集済みの動作関連情報から後述する引継部380により選択される引継情報を、新たな装置へ送信する。新たな装置への引継情報の提供は、例えば、新たな装置から受信され得る情報引継要求に応じて行われ得る。
【0049】
情報保持部370は、画像形成システム1内の画像形成装置230により収集される上述した動作関連情報を通信部360を介して取得し、取得した動作関連情報を一元的に保持する。例えば、情報保持部370は、画像形成装置230から受信した動作関連情報を、画像形成装置230の識別情報及び装置情報に関連付けてストレージ(例えば、HDDに記憶する。識別情報及び装置情報は、例えば次のうちの少なくとも1つを含み得る:
・シリアル番号 … 送信元の装置を一意に識別する番号
・サポート用紙サイズ … 当該装置により印刷可能な用紙サイズ(例:A4/A3)
・サポート用紙タイプ … 当該装置により印刷可能な用紙タイプ
・機能タイプ … 単機能機(SFP)か又は複合機(MFP)か
・モデル番号 … 装置の機能及び構成に関連する番号
・製造年月日 … 装置が製造された年月日
・用途タイプ … 当該装置の用途(例:個人用、共用)を識別する情報
画像形成装置230の識別情報(例えば、シリアル番号)は、動作関連情報と共に受信されてもよく、又は受信したパケットのホスト名若しくはIPアドレスから判別されてもよい。その他の装置情報は、動作関連情報と共に受信されてもよく、又は識別情報と装置情報とをマッピングするデータベースから取得されてもよい。
【0050】
上述したように、ユーザ嗜好情報は、画像形成装置230の初期セットアップの期間中に取得され、画像形成装置230からサーバ装置260へ送信される。一方、動作履歴情報及び環境条件情報は、画像形成装置230が稼働している間、反復的に(例えば、周期的に)画像形成装置230からサーバ装置260へ送信される。情報保持部370は、装置別に、動作履歴情報の各情報項目の値を集計し、その集計結果を保持してもよい。次の表3は情報保持部370により保持されるユーザ嗜好情報の例を、表4は情報保持部370により保持される動作履歴情報の例を示している。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
表3の例では、複数の性能指標に関連するユーザの嗜好を表すユーザ嗜好情報が、情報の送信元である装置のシリアル番号に関連付けて保持されている。表4の例では、画像形成動作の履歴から集計される動作履歴情報が、情報の送信元である装置のシリアル番号に関連付けて保持されている。情報保持部370は、画像形成装置230から新たに動作履歴情報が受信された場合には、新たに受信した情報を反映するように、動作履歴情報を更新し得る。環境条件情報及び分析結果情報もまた同様に保持されてよい。なお、情報保持部370は、装置情報、ユーザ嗜好情報、動作履歴情報、環境条件情報及び分析結果情報を別々のテーブルで保持してもよく、又はそれらの全て若しくはいくつかを統合されたテーブルで保持してもよい。
【0054】
引継部380は、画像形成システム1において画像形成装置が新たに使用されるケースで、既存の装置により取得された動作関連情報のうち新たな画像形成装置の画像形成手段の動作に関連する情報を、当該新たな画像形成装置へ引継ぐ。ここでの画像形成装置が新たに使用されるケースとは、既存の装置が新たな装置に置き換えられるケース、及び既存の装置に加えて新たな装置が導入されるケースの双方を含むものとする。
【0055】
ここでは、説明の便宜上、画像形成システム1の画像形成装置230Aが新たに導入される画像形成装置230Bに置き換えられるものとする。画像形成システム1のユーザは、ユーザ端末200又は画像形成装置230Bの画面上で、情報の引継元の画像形成装置230Aを指定して、動作関連情報の引継ぎをサーバ装置260へ要求し得る。図7は、情報の引継元の装置を指定するためのGUIの一例を示す説明図である。図7に示した引継要求ウィンドウ600は、動作関連情報の引継ぎを要求するか否かを指定するためのチェックボックス601、引継元の装置の識別情報を入力するための入力欄602、及びパスワードを入力するための入力欄603を有する。ユーザは、チェックボックス601において「はい」をオンにし、入力欄602へ画像形成装置230Aのシリアル番号を入力し、及び入力欄603へ所定のパスワードを入力することで、画像形成装置230Aの動作関連情報の引継ぎを要求することができる。なお、ユーザ端末200の画面上で入力が行われる場合には、情報の引継先の識別番号(例えば、画像形成装置230Bのシリアル番号)が追加的に入力され得る。引継部380は、このように生成される情報引継要求の受信に応じて、指定された装置間の動作関連情報の引継ぎを開始する。
【0056】
画像形成装置230A及び画像形成装置230Bの機能、構成及び用途が実質的に同等である場合には、情報保持部370が保持していた画像形成装置230Aの動作関連情報は、そのままで画像形成装置230Bへ引継可能であり得る。一方、これら装置の機能、構成又は用途に相違がある場合には、画像形成装置230Aの動作関連情報は、必ずしもそのまま画像形成装置230Bへ引継可能ではないかもしれない。そこで、引継部380は、画像形成装置230Aの装置情報と画像形成装置230Bの装置情報とを比較することにより、画像形成装置230Aの動作関連情報のうち画像形成装置230Bへ引継ぐべき情報を選択する。ここでの装置情報は、対応する装置の機能、構成又は用途に関連付けられる情報であり、上で例示したサポート用紙サイズ、機能タイプ、モデル番号、製造年月日及び用途タイプのうちの少なくとも1つを含み得る。例えば、引継部380は、画像形成装置230Aは印刷速度を調整する機能を有するものの画像形成装置230Bはそうでない場合、印刷速度の調整のために使用される情報項目を、引継情報から除外してもよい。
【0057】
ユーザ嗜好情報に関して言うと、画像形成装置230Aは、図4に例示したようなGUIを介してユーザから取得されるユーザ嗜好情報を画像形成装置230Aの画像形成手段の動作を調整し又は設定するために使用する。画像形成装置230Bは、引継部380を介して画像形成装置230Aから引継がれるユーザ嗜好情報を、画像形成装置230Bの画像形成手段の動作を調整し又は設定するために使用する。それにより、嗜好情報の入力に要するユーザの負担が軽減される。
【0058】
画像形成装置230Bは、引継情報に含まれるユーザ嗜好情報の情報項目が、自装置の動作の調整のために使用し得る情報項目よりも少ない場合、ユーザ嗜好情報の追加的な入力をUIを介してユーザに求めてもよい。図7は、ユーザ嗜好情報の追加的な入力を受付けるためのGUIの一例を示す説明図である。図7の入力ウィンドウ700を図4の入力ウィンドウ400と比較すると、引継情報から把握されるユーザの嗜好に関する質問は無効化され、新たな質問Q7に対する回答の選択肢のみが選択可能とされている。これは、例えば、画像形成装置230AがFPOTに関する動作の調整をサポートしていないのに対し、画像形成装置230BがFPOTに関する動作の調整をサポートしていることに起因する。例えば、ユーザが質問Q7に対し選択肢a71を選択すると、画像形成装置230Bは、最先出力時間の嗜好スコアに選択肢a72が選択された場合と比較してより高い値を付与し得る。画質、静音性、生産性、装置寿命及び省エネルギー性能の嗜好スコアは、ユーザとのインタラクションを介することなく、引継部380により画像形成装置230Aから引継がれ得る。
【0059】
引継部380は、動作関連情報の情報項目ごとに予め定義される基準に従って、動作関連情報のうち画像形成装置230Bへ引継ぐべき引継情報を選択してもよい。具体的には、サーバ装置260により保持される動作関連情報のうちのいくつかの情報項目は、引継ぎの対象から除外されるように予め定義され得る。例えば、上で分析結果情報の一例として説明した装置の残存寿命は、新たな装置においては初期化されるべきであるため、引継ぎの対象から除外される。いくつかの情報項目は常に引継ぎの対象に含められるように予め定義されてもよい。例えば、環境条件情報は、動作環境が共通しているならば、装置の機能、構成及び用途に関わらず引継ぎの対象に含められてよい。その他の情報項目は、装置情報の比較に基づいて、条件付きで引継ぎの対象とされ得る。例えば、用紙サイズ関連の情報項目(例えば、用紙サイズ別の印刷枚数)は、A4機同士及びA3機同士において引継ぎの対象とされ、A4機とA3機との間では引継ぎの対象から除外され得る。用紙サイズ関連の情報項目及び用紙タイプ関連の情報項目は、SFP同士及びMFP同士において引継ぎの対象とされ、SFPとMFPとの間では引継ぎの対象から除外されてもよい。平均印刷率関連の情報項目も同様である。印刷枚数関連の情報項目は、例えば個人用の装置同士及び共用の装置同士において引継ぎの対象とされ、個人用と共用との間では引継ぎの対象から除外されてもよい。
【0060】
<2-4.処理の流れ>
(1)画像形成装置の基本的な処理
図8は、本実施形態に係る画像形成装置230により実行される基本的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示した処理は、例えば、HDD245からRAM244へロードされるコンピュータプログラムをCPU242が実行することにより実現され得る。なお、以下の説明では、処理ステップをS(ステップ)と略記する。
【0061】
ここでは、画像形成装置230Aが画像形成システム1へ導入されるが、既存の他の装置が存在しないために、動作関連情報の引継ぎは行われないものとする。まず、装置の初期セットアップの期間中に、S801で、ユーザ嗜好取得部310は、画像形成動作の1つ以上の性能指標に関連するユーザの嗜好を表すユーザ嗜好情報を、UIを介して取得する。ここで取得されたユーザ嗜好情報は、動作関連情報の一部として、情報保持部325により保持される(例えば、情報はHDD245に記憶される)。次いで、S802で、通信部340は、画像形成装置230Aのユーザ嗜好情報を、画像形成装置230Aの識別情報(例えば、シリアル番号)と共にサーバ装置260へ送信する。その後、初期セットアップが完了すると、画像形成装置230Aは、印刷ジョブを待受ける待機状態へ入る。
【0062】
S803で、環境条件取得部320は、画像形成装置230の動作環境における環境条件を例えば温度センサ及び湿度センサといったセンサを用いて測定して、環境条件情報を取得する。環境条件情報の取得は、典型的には、周期的に行われ得る。ここで取得された環境条件情報は、動作関連情報の一部として、情報保持部325により保持される。情報保持部325は、環境条件取得部320により取得された環境条件情報をそのまま保持してもよく、又は何らかの集計処理若しくは統計処理を行った後にその結果を保持してもよい。例えば、環境条件情報は、HDD245に記憶される。
【0063】
S804で、ジョブ制御部335は、印刷ジョブが受信されたかを判定する。印刷ジョブが受信された場合、処理はS805へ進む。一方、印刷ジョブが受信されない場合、処理はS808へ進む。
【0064】
S805で、動作調整部330は、情報保持部325により保持されている動作関連情報に基づいて、プリンタデバイス100の画像形成動作を調整し又は設定する。装置の導入後間もない期間においては、引継情報が無ければ、十分な量の動作関連情報が蓄積されていないため、ここでの調整又は設定の結果として必ずしも最適な動作は達成されない。動作の最適化は、ある程度の時間が経過し、十分な量の動作関連情報が蓄積された後に可能となり得る。なお、図8には印刷ジョブの受信に応じて画像形成動作の調整又は設定が行われる例を示しているが、画像形成動作の調整又は設定は、他のタイミングで行われてもよい。
【0065】
次いで、S806で、ジョブ制御部335は、受信した印刷ジョブを実行する。例えば、ジョブ制御部335は、ジョブにおいて指定された枚数の指定されたサイズ及びタイプの用紙に印刷用の画像を形成するように、プリンタエンジン250を介してプリンタデバイス100を制御する。次いで、履歴取得部315は、実行されたジョブについての動作履歴情報を生成する。ここで生成された動作履歴情報は、動作関連情報の一部として、情報保持部325により保持される。情報保持部325は、履歴取得部315により生成された動作履歴情報をそのまま保持してもよく、又は何らかの集計処理若しくは統計処理を行った後にその結果を保持してもよい。例えば、動作履歴情報は、HDD245に記憶される。
【0066】
次いで、S808で、通信部340は、サーバ装置260へ動作関連情報を送信すべきタイミングが到来したか否かを判定する。情報送信のタイミングが到来していない場合には、処理はS803へ戻る。情報送信のタイミングが到来したと判定される場合、通信部340は、S809で、情報保持部325により保持されている動作関連情報のうち送信済みの部分を除く差分を、画像形成装置230Aの識別情報と共にサーバ装置260へ送信する。その後、処理はS803へ戻る。S803~S809は、画像形成装置230Aが稼働している限り、反復的に行われ得る。
【0067】
(2)サーバ装置の処理
図9は、本実施形態に係るサーバ装置260により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9に示した処理は、例えば、サーバ装置260のHDDからRAMへロードされるコンピュータプログラムをCPUが実行することにより実現され得る。
【0068】
まず、S901で、通信部360は、システム内の装置からの動作関連情報の受信を待受ける。動作関連情報が受信されると、処理はS902へ進む。動作関連情報が受信されない場合、処理はS903へ進む。
【0069】
例えば、S901で画像形成装置230Aから動作関連情報が受信された場合、S902で、情報保持部370は、画像形成装置230Aの動作関連情報を、画像形成装置230Aの識別情報及び装置情報に関連付けてストレージに記憶する。情報保持部370は、受信された動作関連情報をそのまま記憶してもよく、又は何らかの集計処理若しくは統計処理を行った後にその結果を記憶してもよい。
【0070】
S903で、通信部360は、新たに使用開始される装置からの情報引継要求を待受ける。情報引継要求が受信されると、処理はS904へ進む。S901での動作関連情報の待受け及びS903での情報引継要求の待受けは実質的に並列的であってよい。
【0071】
例えば、S903で画像形成装置230Bから画像形成装置230Aを引継元の装置として指定する情報引継要求が受信された場合、S904で、引継部380は、画像形成装置230Aの動作関連情報をストレージから読出す。次いで、S905で、引継部380は、画像形成装置230Aの装置情報と画像形成装置230Bの装置情報との比較に基づいて、読出した動作関連情報から画像形成装置230Bへ引継ぐべき引継情報を選択する。次いで、S906で、通信部360は、引継部380により選択された引継情報を画像形成装置230Bへ送信する。
【0072】
S905における引継情報の選択において、いくつかの情報項目は、装置情報の比較に関わらず、引継情報に含められてもよい。例えば、同一の動作環境における装置の置換えのケースでは、環境条件情報及び環境条件情報に基づく分析結果情報は、必ず引継情報に含められ得る。いくつかの情報項目は、装置情報の比較に関わらず、引継情報から除外されてもよい。例えば、装置の残存寿命は、必ず引継情報から除外され得る。他の動作関連情報は、装置情報の比較に基づいて、引継情報に含められ又は引継情報から除外され得る。次の表5は、画像形成装置230Bが画像形成装置230Aの後継機である場合の装置情報の比較の例を示している。なお、ここでは、画像形成装置230Aのシリアル番号は“1234567”であり、画像形成装置230Bのシリアル番号は“1234568”である。
【0073】
【表5】
【0074】
表5の例のような後継機への置換えのケースでは、例えば、動作履歴情報のうちの用紙サイズ関連及び平均印刷率関連の情報項目が引継情報に含められ得る。但し、2つの装置の装置情報がどういった関係にある場合にどういった情報項目が引継がれるかは、上の例に限定されずどのように定義されてもよい。
【0075】
(3)引継情報の取得
図10は、初期セットアップの際に本実施形態に係る画像形成装置230により実行される、動作関連情報の引継ぎのための処理の流れの一例を示すフローチャートである。図10に示した処理は、例えば、HDD245からRAM244へロードされるコンピュータプログラムをCPU242が実行することにより実現され得る。
【0076】
ここでは、画像形成装置230Aの動作関連情報が、サーバ装置260から画像形成装置230Bへ引継がれるものとする。
【0077】
まず、装置の初期セットアップの期間中に、S1001で、情報保持部325は、図6に例示したような引継要求ウィンドウ600を画面に表示させ、動作関連情報の引継ぎを要求するか否かをユーザ入力に基づいて判定する。ここで、動作関連情報の引継ぎを要求しないことをユーザ入力が示す場合には、図8を用いて説明したS801及びS802が実行される。動作関連情報の引継ぎを要求することをユーザ入力が示す場合、処理はS1002へ進む。
【0078】
S1002で、通信部340は、情報引継要求をサーバ装置260へ送信する。ここで送信される情報引継要求は、引継元の装置である画像形成装置230Aの識別情報と、要求元(引継先)の装置である画像形成装置230Bの識別情報とを含み得る。情報引継要求は、パスワードを含む認証情報をさらに含み得る。次いで、S1003で、通信部340は、情報引継要求に応じてサーバ装置260から提供される引継情報を受信する。次いで、S1004で、情報保持部325は、サーバ装置260から受信された引継情報を、画像形成装置230Bのプリンタデバイス100の動作を調整し又は設定するために使用される動作関連情報としてHDD245に記憶させる。
【0079】
次いで、S1005で、情報保持部325は、引継情報に含まれていたユーザ嗜好情報の情報項目が、自装置の動作の調整のために使用し得る情報項目に対し不足しているか否かを判定する。情報項目が不足している場合、S1006で、ユーザ嗜好取得部310は、図7に例示した入力ウィンドウ700のようなUIを介して、追加的なユーザ嗜好情報を取得する。例えば、画像形成装置230Aが最先出力時間に関する嗜好スコアを収集せず、一方で画像形成装置230Bにおいて最先出力時間に関する嗜好スコアに基づく動作の調整が可能である場合、最先出力時間に関するユーザ嗜好情報が追加的に取得され得る。次いで、S1007で、通信部340は、取得したユーザ嗜好情報を画像形成装置230Bの識別情報と共にサーバ装置260へ送信する。
【0080】
その後、画像形成装置230Bは、初期セットアップを完了して待機状態へ入る。初期セットアップ完了後に画像形成装置230Bにより実行される処理は、図8のS803~S809に関連して説明した処理と同様であってよい。
【0081】
<<3.変形例>>
上述した実施形態では、画像形成システム1内に1人のユーザしか存在せず、又は、複数存在し得るユーザ間の相違をシステムが意識しないものとした。これに対し、本節で説明する変形例では、ユーザが個々に識別され、動作関連情報がユーザ別に引継可能とされる。また、本変形例では、複数の装置により収集された動作関連情報の単一の装置への包括的な引継ぎが可能とされる。
【0082】
<3-1.全体的な構成>
図11は、本変形例に係る画像形成システム1101の構成の一例を示す模式図である。図11を参照すると、画像形成システム1101は、ユーザ端末200、複数の画像形成装置1230及び画像形成装置1260を含む。
【0083】
画像形成装置1230及び画像形成装置1260の各々は、上述した画像形成装置230と同様に、画像形成手段としてのプリンタデバイス100を有する。但し、本変形例にでは、これら装置の各々のビデオコントローラ1240が認証部1247を追加的に含む。認証部1247は、ユーザを認証するデバイスであり、例えばICカードリーダ若しくはRFタグリーダ、又はID/パスワード認証モジュールであってよい。例えば、画像形成装置1230を利用するユーザが自ら所有するICカードを認証部1247に近接させると、画像形成装置1230の認証部1247は、ICカードに予め記録されているユーザの識別情報(例えば、ユーザID)を読取る。
【0084】
本変形例において、画像形成装置1260は、上述したサーバ装置260と同様に、画像形成システム1101内の複数の装置により収集される動作関連情報を一元的に管理するサーバ機能を有する。この目的のために、画像形成装置1260のHDD1245は、画像形成装置1230のHDD245と比較して大規模な記憶容量を有する。画像形成装置1260を、センタマシンともいう。画像形成装置1260のサーバ機能以外の機能は、画像形成装置1230と同様であってよい。
【0085】
<3-2.画像形成装置の構成>
図12は、図11に示した画像形成装置1230及び画像形成装置1260の機能面の構成の一例を示すブロック図である。図12を参照すると、画像形成装置1230は、ユーザ識別部1305、ユーザ嗜好取得部310、履歴取得部315、環境条件取得部320、情報保持部1325、動作調整部1330、ジョブ制御部335及び通信部1340を備える。
【0086】
ユーザ識別部1305は、画像形成装置1230を利用するユーザを、認証部1247を用いて識別する。そして、ユーザ識別部1305は、情報保持部1325により収集される動作関連情報に、識別したユーザのユーザ識別情報を関連付ける。
【0087】
情報保持部1325は、上述した情報保持部325と同様に、プリンタデバイス100の動作に関連する動作関連情報を、例えばHDD245に記憶させることにより保持する。動作関連情報は、ユーザ嗜好取得部310から入力されるユーザ嗜好情報、履歴取得部315から入力される動作履歴情報、及び環境条件取得部320から入力される環境条件情報を含み得る。本変形例において、情報保持部1325は、例えば、ユーザ嗜好情報を、当該情報を入力したユーザのユーザ識別情報に関連付けて保持し得る。また、情報保持部1325は、動作履歴情報を、実行された印刷ジョブを発行したユーザのユーザ識別情報に関連付けて保持し得る。環境条件情報は、複数のユーザにとって共通の情報として保持されてよい。
【0088】
動作調整部1330は、情報保持部1325により保持されている動作関連情報を用いて、プリンタデバイス100の画像形成動作を調整し又は設定する。例えば、本変形例において、ユーザ識別部1305は、現時点で装置を利用しようとしているユーザのユーザ識別情報を動作調整部1330へ出力する。動作調整部1330は、ユーザ識別部1305から入力されたユーザ識別情報に関連付けられている動作関連情報を情報保持部1325から取得する。そして、動作調整部1330は、取得した動作関連情報を、プリンタデバイスの様々な動作パラメータを調整し又は設定するために使用し得る。動作調整部1330による個々の動作パラメータの調整又は設定の手法は、上で動作調整部330に関連して説明した手法と同様であってよい。
【0089】
本変形例において、通信部1340は、上述した通信部340と同様に、ユーザ端末200から印刷ジョブを受信し、並びに印刷ジョブの進行状況及び実行結果をユーザ端末200へ送信する。また、通信部1340は、情報保持部1325により保持されている画像形成装置1230の動作関連情報を画像形成装置1260へ送信する。動作関連情報の画像形成装置1260への送信は、(例えば、1日に1回のように)周期的に行われてもよく、又は情報に更新が生じた都度行われてもよい。とりわけ、通信部1340は、動作関連情報を当該情報に関連付けられているユーザ識別情報と共に画像形成装置1260へ送信する。送信される情報には、画像形成装置1230を識別する識別情報及び装置情報の一方又は双方がさらに付加されてもよい。
【0090】
通信部1340は、画像形成装置1230が新たに使用開始される際に、既存の装置により収集済みの動作関連情報のうちで画像形成装置1260により選択された引継情報を、画像形成装置1260から受信し得る。通信部1340は、引継情報を受信すると、受信した引継情報を情報保持部1325へ出力する。情報保持部1325は、引継情報を動作関連情報としてHDD245に記憶させる。本変形例において、このように引継がれる動作関連情報は、特定のユーザ識別情報に関連付けられた情報であり得る。動作調整部1330は、新たな使用開始の直後であっても、既存の装置から提供され情報保持部1325により保持される引継情報を用いて、プリンタデバイス100の画像形成動作を特定のユーザ向けに調整することができる。
【0091】
<3-3.センタマシンの機能>
図12を参照すると、画像形成装置1260は、ユーザ識別部1305、ユーザ嗜好取得部310、履歴取得部315、環境条件取得部320、動作調整部1330、ジョブ制御部335、通信部1360、情報保持部1370及び引継部1380を備える。
【0092】
通信部1360は、上述したようにユーザ識別情報に関連付けられた動作関連情報を、画像形成装置1230の通信部1340から受信する。通信部1360は、受信した動作関連情報を情報保持部1370へ出力する。また、通信部1360は、画像形成システム1101において装置が新たに使用開始される際に、既存の装置により過去に収集済みの動作関連情報から後述する引継部1380により選択される引継情報を、新たな装置へ送信する。新たな装置への引継情報の提供は、例えば、新たな装置から受信され得る情報引継要求に応じて行われ得る。
【0093】
情報保持部1370は、画像形成装置1230及び自装置により収集される動作関連情報を一元的に保持する。とりわけ、本変形例において、情報保持部1370は、動作関連情報をユーザ識別情報に関連付けて保持する。動作関連情報は、情報を取得した装置の識別情報及び装置情報にさらに関連付けられてもよい。
【0094】
本変形例において、情報保持部1370は、画像形成システム1101を利用するユーザのユーサ識別情報を管理し得る。ここでは、ユーザ識別情報は、ユーザIDであるものとする。ユーザIDは、個々のユーザにより個別に登録されてもよく、又はシステムの運用を管理するマネージャ若しくはエンジニアにより予めまとめて登録されてもよい。ユーザIDは、ユーザ端末200、画像形成装置1230若しくは画像形成装置1260の画面上に表示されるUIを介して登録されてもよく、又はUIを介することなくストレージ若しくはデータベースへ予め記録されてもよい。
【0095】
各ユーザは、いずれかの画像形成装置の認証部1247を用いて認証を試行し、認証の成功に応じて画像形成システム1101へログインし得る。情報保持部1370は、ログインしたユーザのユーザ嗜好情報が未取得である場合には、認証が行われた装置の画面上に図4に例示した入力ウィンドウ400のようなUIを表示させ、当該装置のユーザ嗜好取得部310にユーザ嗜好情報を取得させてもよい。このようにして取得されるユーザ嗜好情報は、ログインしたユーザのユーザIDと共に情報保持部1370へ転送され、情報保持部1370によりユーザIDに関連付けて保持される。表6は、情報保持部1370により保持されるユーザ嗜好情報の例を示している。
【0096】
【表6】
【0097】
情報保持部1370は、動作履歴情報も同様に、ユーザIDに関連付けて保持し得る。動作履歴情報を取得する手法は、印刷ジョブを発行したユーザのユーザIDと共に情報が取得されることを除いて、上で説明した例と同様であってよい。表7は、情報保持部1370により保持される動作履歴情報の例を示している。
【0098】
【表7】
【0099】
表8は、装置識別情報及びユーザ識別情報に関連付けて保持される動作履歴情報の例を示している。ここでは、装置識別情報はシリアル番号であり、ユーザ識別情報はユーザIDである。
【0100】
【表8】
【0101】
なお、ジョブ単位の動作履歴の情報項目の値(例えば、用紙サイズ及び印刷枚数)を複合的な値(例えば、用紙サイズ別印刷枚数)へ集計する処理は、個々の画像形成装置1230及びセンタマシンである画像形成装置1260のいずれで行われてもよい。
【0102】
引継部1380は、ある画像形成装置1230により過去に取得された動作関連情報のうち、他の画像形成装置1230の画像形成手段の動作に関連する情報を、当該他の画像形成装置1230へ引継ぐ。このような引継ぎは、既存の装置が新たな装置に置換えられるケース、既存の装置に加えて新たな装置がシステムへ追加されるケース、及び、ユーザが特定の装置を初めて使用するケースで行われてよい。
【0103】
ここでは、説明の便宜上、画像形成システム1101において画像形成装置1230Cが新たに使用され、その使用の前に1つ以上の画像形成装置1230が既に存在していたものとする。本変形例において、引継部1380は、既存の1つ以上の画像形成装置により取得された動作関連情報のうち、画像形成装置1230Cの画像形成動作を調整し又は設定するために使用される情報を、画像形成装置1230Cへ引継ぐ。より具体的には、引継部1380は、情報保持部1370により一元的に保持されている動作関連情報のうち画像形成装置1230Cを利用するユーザのユーザ識別情報に関連付けられている情報を、画像形成装置1230Cへの引継情報として選択し得る。
【0104】
例えば、表8に示した動作履歴情報が既に蓄積されている状況で、シリアル番号“1234569”で識別される画像形成装置1230CにユーザID“ABC1000”で識別されるユーザがログインしたものとする。この場合、引継部1380は、次の表9に示すように、ユーザID“ABC1000”に関連付けられている動作履歴情報の2つのレコードを情報保持部1370から抽出し、抽出した情報を引継情報に含め得る。なお、引継部1380は、2つのレコードが示す各情報項目の値を合計した上で、その結果を引継情報に含めてもよい。また、そうした計算は、センタマシンの代わりに、引継情報を受信する画像形成装置1230Cにより行われてもよい。
【0105】
【表9】
【0106】
なお、本変形例においても、ユーザは、ユーザ端末200又は画像形成装置1230Cの画面上で、情報の引継元の1つ以上の装置を指定して動作関連情報の引継ぎを画像形成装置1260へ要求してもよい。この場合には、指定された装置により過去に収集済みの動作関連情報のみが、引継情報に含められ得る。
【0107】
上で引継部380に関連して説明したように、本変形例においても、引継元及び引継先の装置の機能、構成及び用途が実質的に同等である場合には、動作関連情報は、そのままで引継可能であり得る。一方、これら装置の機能、構成又は用途に相違がある場合には、引継情報には、装置情報の比較に基づいて選択される一部の情報項目のみが含められ得る。引継情報において不足するユーザ嗜好情報の情報項目が、図7の入力ウィンドウ700のようなUIを介して追加的に取得されてもよい。本変形例においても、動作関連情報の情報項目ごとに予め定義される基準に従って、動作関連情報のうちどの情報を引継ぎの対象とするかが判定されてもよい。
【0108】
定着ローラ14の予熱に関する上で説明した調整の例に着目すると、画質及び省エネルギー性能のどちらを重視するかは、ユーザによって相違し得る。また、サイズの大きい用紙への印刷をどの程度の頻度で行うかも、ユーザによって相違し得る。そのため、画像形成装置1230Cにどのユーザがログインしたかを識別した上で、識別したユーザに関連付けられている動作関連情報を画像形成装置1230Cへ引継ぐことで、画像形成装置1230Cの画像形成動作が、ユーザにとって最適なものとなり得る。表9の例では、ユーザID“ABC1000”のユーザの用紙サイズ別印刷枚数においてA3サイズの用紙の印刷枚数が他のサイズと比較して突出している。この場合には、定着ローラ14の予熱時間を相対的に長く、又は予熱の目標温度を相対的に高く調整することで、このユーザにとって最適な画質での印刷結果が提供され得る。そして、本変形例では、ユーザのこうした嗜好又は傾向が装置間で引継がれることから、過去に収集済みの情報の再収集を待つことなく、ユーザに適した画像形成動作を提供することができる。
【0109】
画像形成装置1230からセンタマシンへの情報引継要求は、ユーザによるログインの際に行われてもよく、又は周期的に行われてもよい。例えば、1日に1回又は半日に1回といった予め決定されるタイミングで、各画像形成装置1230からセンタマシンへ情報引継要求が送信されてもよい。この場合の情報引継要求は、対応する期間に装置へログインしたユーザのユーザIDのリストを含み得る。引継部1380は、情報引継要求において列挙されたユーザIDにそれぞれ関連付けて保持されている動作関連情報を、引継情報として返送し得る。こうした周期的な要求及び情報の交換によって、システム内の通信トラフィックの量を低減することができる。
【0110】
<3-3.処理の流れ>
本変形例において画像形成装置1230により実行される基本的な処理の流れは、図8を用いて説明した例と同様であってよい。但し、図8のS802及びS809でセンタマシンである画像形成装置1260へ送信される動作関連情報は、ユーザ別の情報であり、例えば動作関連情報の各レコードにユーザ識別情報が付加された形で送信され得る。
【0111】
図13は、本実施形態に係る画像形成装置1260により実行される、センタマシンとしての処理の流れの一例を示すフローチャートである。図13に示した処理は、例えば、画像形成装置1260のHDD1245からRAM244へロードされるコンピュータプログラムをCPU242が実行することにより実現され得る。
【0112】
まず、S1301で、通信部1360は、システム内の装置からの動作関連情報の受信を待受ける。動作関連情報が受信されると、処理はS1302へ進む。動作関連情報が受信されない場合、処理はS1303へ進む。
【0113】
システム内の装置から動作関連情報が受信された場合、S1302で、情報保持部1370は、受信された動作関連情報を、併せて受信されるユーザ識別情報(及び、必要に応じて送信元の装置の識別情報)に関連付けてストレージに記憶する。情報保持部1370は、受信された動作関連情報をそのまま記憶してもよく、又は何らかの集計処理若しくは統計処理を行った後にその結果を記憶してもよい。
【0114】
S1303で、通信部1360は、情報引継要求を待受ける。ここでの情報引継要求は、引継ぎの対象のユーザのユーザ識別情報を含み得る。情報引継要求が受信されると、処理はS1304へ進む。S1301での動作関連情報の待受け及びS1303での情報引継要求の待受けは、実質的に並列的であってよい。
【0115】
情報引継要求が受信された場合、S1304で、引継部1380は、対象ユーザのユーザ識別情報に関連付けられている動作関連情報をストレージから読出す。次いで、S1305で、引継部1380は、引継元及び引継先の装置の装置情報の比較に基づいて、読出した動作関連情報から引継情報を選択する。次いで、S1306で、通信部1360は、引継部1380により選択された引継情報を要求元(即ち、引継先)の装置へ送信する。
【0116】
図14は、本変形例において画像形成装置1230により実行される、動作関連情報の引継ぎのための処理の流れの一例を示すフローチャートである。図14に示した処理は、例えば、HDD245からRAM244へロードされるコンピュータプログラムをCPU242が実行することにより実現され得る。
【0117】
まず、S1400で、ユーザ識別部1305は、ユーザのログインを受付け、ログインしたユーザのユーザ識別情報を取得する。次いで、S1401で、情報保持部1325は、識別されたユーザの動作関連情報の引継ぎを要求するか否かを判定する。例えば、情報保持部1325は、識別されたユーザの動作関連情報を既にローカルに保持している場合には、動作関連情報の引継ぎを要求しないと判定し得る。この場合、図14に示した処理は終了する。情報保持部1325は、識別されたユーザの動作関連情報を保持していない場合には、動作関連情報の引継ぎを要求すると判定し、処理はS1402へ進む。なお、
情報保持部1325は、識別されたユーザの動作関連情報をローカルに保持している場合であっても、他の装置により収集された情報を追加的に引継ぐために、動作関連情報の引継ぎを要求すると判定してもよい。また、情報保持部1325は、図6に例示したような引継要求ウィンドウ600を画面に表示させ、動作関連情報の引継ぎを要求するか否かをユーザ入力に基づいて判定してもよい。
【0118】
S1402で、通信部1340は、情報引継要求を画像形成装置1260へ送信する。ここで送信される情報引継要求は、S1400で識別されたユーザのユーザ識別情報を含み得る。情報引継要求は、認証情報をさらに含んでもよい。次いで、S1403で、通信部1340は、情報引継要求に応じて画像形成装置1260から提供される引継情報を受信する。ここで受信される引継情報は、S1400で識別されたユーザのための動作関連情報を含む。次いで、S1404で、情報保持部1325は、画像形成装置1260から受信された引継情報を、画像形成装置1230のプリンタデバイス100の動作を調整し又は設定するために使用される動作関連情報としてHDD245に記憶させる。
【0119】
次いで、S1405で、情報保持部1325は、引継情報に含まれていたユーザ嗜好情報の情報項目が、自装置の動作の調整又は設定のために使用し得る情報項目に対し不足しているか否かを判定する。情報項目が不足している場合、図10のS1006及びS1007と同様に、S1406で追加的なユーザ嗜好情報が取得され及び記憶され、S1407で追加的なユーザ嗜好情報がユーザ識別情報と共に画像形成装置1260へ送信される。
【0120】
その後、画像形成装置1230は、待機状態へ入る。待機状態において画像形成装置1230により実行される処理は、既に説明済みであるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0121】
なお、センタマシンである画像形成装置1260もログインユーザについての動作関連情報を有しない場合には、S1403において引継情報が受信される代わりに、引継情報が存在しないことが画像形成装置1260から画像形成装置1230へ通知され得る。この場合、画像形成装置1230のユーザ嗜好取得部310は、図8のS801と同様に、ユーザインタフェースを介してユーザ嗜好情報を取得し得る。
【0122】
本変形例では、上述したように、複数の装置により収集される動作関連情報から、特定のユーザに関連付けられる動作関連情報が選択され、選択された情報が個々の装置へ引継がれる。こうした構成によれば、動作の調整のために十分な量の情報が蓄積されるまでの時間を短縮し、より早期に個々のユーザ向けの動作の最適化を実現することが可能となる。このような引継ぎが行われないとすれば、例えば、新たに導入されたプリンタがユーザの嗜好又は傾向に合わせて動作を調整する機能を有していたとしても、そのプリンタは、導入の当初ユーザの嗜好又は傾向を把握できず、平均的な印刷動作しか行わない。動作の個人化又は最適化は、ある程度長い時間が経過した後、十分な動作関連情報が蓄積されて初めて可能となるはずである。一方、本変形例では、ユーザ別に収集済みの動作関連情報からユーザ単位で情報が引継がれるため、複数のユーザがシステムを利用する環境において、個々のユーザに特化した個人化又は最適化を、ユーザによる装置の使用開始の当初から提供することができる。
【0123】
なお、ここではユーザ識別情報の例として、個々のユーザを識別するユーザIDを使用する例を説明したが、本変形例はかかる例には限定されない。例えば、ユーザIDの代わりに、1人以上のユーザが所属するグループに割当てられるグループIDが使用されてもよい。
【0124】
<<4.まとめ>>
ここまで、図1図14を用いて、本開示の実施形態について詳細に説明した。上述した実施形態では、画像形成システム内の第1の画像形成装置の画像形成手段の動作に関連する動作関連情報が、上記画像形成システムにおいて第2の画像形成装置が新たに使用される場合に、上記第2の画像形成装置へ引継がれる。そして、引継がれた動作関連情報が、上記第2の画像形成装置の画像形成手段の動作のために使用される。かかる構成によれば、新たに使用される装置において、他の装置で一旦収集された情報を再度収集する時間の無駄を排除して、早期に適切な画像処理動作を提供することが可能となる。とりわけ、上述した実施形態では、上記動作関連情報は、画像形成動作を調整し又は設定するために使用される情報である。したがって、上記第2の画像形成装置は、引継がれた動作関連情報を使用して、画像形成手段の動作を適切に調整し又は設定することができる。
【0125】
また、上述した実施形態では、上記動作関連情報は、画像形成動作の1つ以上の性能指標に関連するユーザの嗜好を表すユーザ嗜好情報を含み得る。この場合、例えばどういった性能指標をユーザが重視するかというユーザの嗜好に合わせて画像形成動作を調整することができ、ユーザ嗜好情報の再入力が無くとも、新たな装置の使用開始の当初から、画像形成動作の個人化を実現することができる。ユーザにとっては、ユーザ嗜好情報の再入力が不要となることで、入力作業の負担が軽減される。
【0126】
また、上述した実施形態では、上記動作関連情報は、上記第1の画像形成手段の過去の動作の動作履歴情報を含み得る。この場合、動作履歴から把握される傾向に合わせて画像形成動作を調整することができ、新たな装置の使用開始の当初から、例えば使用頻度の高い用紙サイズ又は平均印刷率といった傾向に基づく画像形成動作の最適化を図ることができる。
【0127】
また、上述した実施形態では、上記動作関連情報は、上記第1の画像形成装置の動作環境における過去の温度及び湿度のうちの少なくとも一方に関連する環境条件情報を含み得る。この場合、過去に蓄積された環境条件情報を再利用して、新たな装置の使用開始の当初から、装置の動作環境に適した画像形成動作を提供することができる。
【0128】
また、上述した実施形態では、上記第1の画像形成装置の機能、構成又は用途に関連付けられる装置情報と、上記第2の画像形成装置の機能、構成又は用途に関連付けられる装置情報との比較に基づいて、引継情報が選択され得る。この場合、機能、構成又は用途における相違に起因して引継ぐことが適当ではない情報、及び上記第2の画像形成装置にとって実用性の無い情報を引継情報から除外することができ、引継ぎ後の上記第2の画像形成装置の適切な動作を確実化することができる。上記動作関連情報の情報項目ごとに予め定義される基準に従って引継情報が選択される場合には、例えば単一の装置に限って有用であり、装置間で再利用することが情報の性質上ふさわしくない情報を、引継情報から除外することができる。
【0129】
上述した実施形態では、本開示に係る技術が画像形成動作を行う装置を含む画像形成システムに適用される例を説明した。しかしながら、あらためて言うと、上述した動作関連情報の引継ぎの仕組みは、例えば原稿読取装置などの画像処理装置を含む画像処理システムへ広く適用可能である。
【0130】
<<5.その他の実施形態>>
上記実施形態は、1つ以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理の形式でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0131】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0132】
1:画像形成システム、100:プリンタデバイス(画像形成手段/画像処理手段)、230:画像形成装置(画像処理装置)、310:ユーザ嗜好取得部(取得手段)、315:履歴取得部(取得手段)、320:環境条件取得部(取得手段)、325:情報保持部、330:動作調整部、260:サーバ装置、370:情報保持部(保持手段)、380:引継部(引継手段)、1230:画像形成装置(画像処理装置)、1325:情報保持部、1330:動作調整部、1260:画像形成装置(画像処理装置)、1370:情報保持部(保持手段)、1380:引継部(引継手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14