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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】搬送装置および搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 21/00 20060101AFI20240213BHJP
   B65G 15/08 20060101ALI20240213BHJP
   B65G 69/18 20060101ALI20240213BHJP
   B65G 47/16 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B65G21/00 B
B65G15/08 A
B65G69/18
B65G47/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019229317
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095273
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川添 敦之
(72)【発明者】
【氏名】三岳 秀太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋口 伸彦
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209758574(CN,U)
【文献】特開2011-195260(JP,A)
【文献】特開平08-258941(JP,A)
【文献】特開2004-051338(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0306063(KR,Y1)
【文献】米国特許第05816388(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 21/00
B65G 15/08
B65G 69/18
B65G 47/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に沿って固体燃料を搬送するための搬送ベルトと、
前記搬送方向に沿って前記搬送ベルトを搬送させる搬送力を前記搬送ベルトに付与する搬送部と、
前記搬送ベルトの前記搬送方向に直交する幅方向の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに、前記固体燃料を収容する収容空間を形成する一対の壁部と、
前記搬送ベルトの前記幅方向の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記搬送ベルトの搬送面に接触する先端部が前記幅方向の中央に向けて弾性変形して折り曲げられた一対のシール部と、
前記搬送方向の上流側の前記搬送面に向けて前記固体燃料を鉛直上方側から投入する筒状の燃料投入部と、を備え、
前記燃料投入部は、前記搬送面に近接して配置される下端部において前記搬送方向に第1長さを有し、
一対の前記壁部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投入部の前記搬送方向の中心位置から第2長さだけ離れた位置に配置されており、
一対の前記シール部の前記先端部は前記搬送ベルトに接触した状態であり、一対の前記シール部の基端部は一対の前記壁部の鉛直方向下端に取り付け支持されており、
一対の前記シール部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記中心位置から第3長さだけ離れた位置に配置されており、
前記第2長さおよび前記第3長さは、前記第1長さの2倍以上であり、
前記シール部は、それぞれ前記搬送方向に沿って延びる弾性材料により形成され、前記シール部の前記基端部からの長さの異なる複数の弾性シートを重ねて形成されている搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトの前記搬送方向の下流側の端部から落下する前記固体燃料を鉛直下方側に導く燃料投下部を備え、
一対の前記壁部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投下部の前記搬送方向の上流側端部の近傍に配置され、
一対の前記シール部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投下部の前記搬送方向の上流側端部の近傍に配置される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトの少なくとも前記燃料投入部の鉛直下方側の位置において、前記搬送ベルトの前記搬送面の前記幅方向の両端側には、一対の前記シール部の前記先端部が接触するとともに水平方向に対して所定の傾斜角度で傾斜する一対の傾斜搬送面を形成し、
前記所定の傾斜角度は、0度以上でかつ90度より小さい請求項1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトは、一対の前記傾斜搬送面に挟まれて水平方向に沿って配置される水平搬送面を有する請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記収容空間に隣接して配置される前記弾性シートの前記先端部は、前記搬送ベルトの変位の振幅が所定値未満の場合には前記搬送ベルトに接触せず、前記振幅が前記所定値以上の場合に前記搬送ベルトに接触する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトで前記搬送方向に沿って搬送する前記固体燃料は、少なくとも一部がバイオマス燃料である請求項1から請求項のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
搬送方向に沿って固体燃料を搬送する搬送装置による搬送方法であって、
前記搬送装置は、
前記搬送方向に沿って前記固体燃料を搬送するための搬送ベルトと、
前記搬送方向に沿って延びるとともに前記搬送ベルトの幅方向の中央部を挟むように配置され、前記固体燃料を収容する収容空間を形成する一対の壁部と、
前記搬送方向に沿って延びるとともに先端部が前記中央部に向けて弾性変形して折り曲げられ、前記搬送ベルトに接触した状態で一対の前記壁部の下端に取り付けられる一対のシール部と、
前記搬送ベルトの前記搬送方向の上流側の搬送面に向けて前記固体燃料を上方から投入する筒状の燃料投入部と、を備え、
前記燃料投入部は、前記搬送面に近接して配置される下端部において前記搬送方向に第1長さを有し、
一対の前記壁部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投入部の前記搬送方向の中心位置から第2長さだけ離れた位置に配置されており、
一対の前記シール部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記中心位置から第3長さだけ離れた位置に配置されており、
一対の前記シール部の前記先端部は前記搬送ベルトに接触した状態であり、一対の前記シール部の基端部は一対の前記壁部の鉛直方向下端に取り付け支持されており、
前記第2長さおよび前記第3長さは、前記第1長さの2倍以上であり、
前記シール部は、それぞれ前記搬送方向に沿って延びる弾性材料により形成され、前記シール部の前記基端部からの長さの異なる複数の弾性シートを重ねて形成されており、
前記燃料投入部から前記搬送面に向けて前記固体燃料を投入する燃料投入工程と、
前記搬送方向に沿って前記搬送ベルトを搬送させる搬送力を前記搬送ベルトに付与し、
前記燃料投入工程により前記搬送面に投入された前記固体燃料を搬送する搬送工程と、を備える搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体燃料を搬送する搬送装置および搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭等の搬送物をコンベヤベルトに積載して搬送するベルトコンベヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されるベルトコンベヤは、上流側コンベヤから搬送物を投下するシュートからコンベヤベルトの幅方向の両端側に、コンベヤベルトの長手方向に沿って鉛直に垂下されて形成される一対のスカート部材を、下端がコンベヤベルトの表面に近接するように設けている。一対のスカート部材は、シュートから投下された搬送物がコンベヤベルトから落下しないように、搬送物がコンベヤベルト上に安定するまでの長さに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3389729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、コンベヤベルトの搬送物が石炭である場合、シュートから投入された搬送物がコンベヤベルト上に安定すれば、搬送物がコンベヤベルトから落下する恐れが少ない。そのため、コンベヤベルトの幅方向両端側に長手方向に沿って設けたスカート部材は、搬送物がコンベヤベルト上に安定するまでの長さだけ設ければ良いとされている。
【0005】
しかしながら、搬送物に、例えばバイオマス燃料等の木質系固体燃料など表面が崩れやすい固体燃料が含まれる場合、搬送物同士の接触や搬送物がコンベヤベルトに投入される際の相互衝突等により搬送物の表面が崩れて粉塵が発生する。発生した粉塵は、例えば搬送物を投入時に発生する気流等で搬送物から舞い上がり粉塵の飛散が発生する場合がある。このとき、搬送物がコンベヤベルト上に安定した後でも、搬送物から発生した粉塵がコンベヤベルトの周囲に飛散してしまう可能性がある。例えば、特許文献1のベルトコンベヤを用いて木質系固体燃料を搬送させると、一対のスカート部材の下流側端部よりもさらに搬送方向の下流側において、木質系固体燃料から発生した粉塵が周囲に飛散してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、搬送物に粉塵を発生し易い固体燃料が含まれる場合であっても、搬送物から発生する粉塵の周囲への飛散を抑制することができる搬送装置および搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る搬送装置は、搬送方向に沿って固体燃料を搬送するための搬送ベルトと、前記搬送方向に沿って前記搬送ベルトを搬送させる搬送力を前記搬送ベルトに付与する搬送部と、前記搬送ベルトの前記搬送方向に直交する幅方向の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記固体燃料を収容する収容空間を形成する一対の壁部と、前記搬送ベルトの前記幅方向の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記搬送ベルトの搬送面に接触する先端部が前記幅方向の中央に向けて弾性変形して折り曲げられた一対のシール部と、前記搬送方向の上流側の前記搬送面に向けて前記固体燃料を鉛直上方側から投入する筒状の燃料投入部と、を備え、前記燃料投入部は、前記搬送面に近接して配置される下端部において前記搬送方向に第1長さを有し、一対の前記壁部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投入部の前記搬送方向の中心位置から第2長さだけ離れた位置に配置されており、一対の前記シール部の前記先端部は前記搬送ベルトに接触した状態であり、一対の前記シール部の基端部は一対の前記壁部の鉛直方向下端に取り付け支持されており、一対の前記シール部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記中心位置から第3長さだけ離れた位置に配置されており、前記第2長さおよび前記第3長さは、前記第1長さの2倍以上である。
【0008】
本開示の一態様に係る搬送方法は、搬送方向に沿って固体燃料を搬送する搬送装置による搬送方法であって、前記搬送装置は、前記搬送方向に沿って前記固体燃料を搬送するための搬送ベルトと、前記搬送ベルトの前記搬送方向に直交する幅方向の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記固体燃料を収容する収容空間を形成する一対の壁部と、前記搬送ベルトの前記幅方向の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記搬送ベルトの搬送面に接触する先端部が前記幅方向の中央に向けて弾性変形して折り曲げられた一対のシール部と、前記搬送方向の上流側の前記搬送面に向けて前記固体燃料を鉛直上方側から投入する筒状の燃料投入部と、を備え、前記燃料投入部は、前記搬送面に近接して配置される下端部において前記搬送方向に第1長さを有し、一対の前記壁部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投入部の前記搬送方向の中心位置から第2長さだけ離れた位置に配置されており、一対の前記シール部の前記先端部は前記搬送ベルトに接触した状態であり、一対の前記シール部の基端部は一対の前記壁部の鉛直方向下端に取り付け支持されており、一対の前記シール部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記中心位置から第3長さだけ離れた位置に配置されており、前記第2長さおよび前記第3長さは、前記第1長さの2倍以上であり、前記燃料投入部から前記搬送面に向けて前記固体燃料を投入する燃料投入工程と、前記搬送方向に沿って前記搬送ベルトを搬送させる搬送力を前記搬送ベルトに付与し、前記燃料投入工程により前記搬送面に投入された前記固体燃料を搬送する搬送工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、搬送物に粉塵を発生し易い固体燃料が含まれる場合であっても、搬送物から発生する粉塵の周囲への飛散を抑制することができる搬送装置および搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係るベルトコンベヤの縦断面図である。
図2図1に示すベルトコンベヤのA-A矢視断面図である。
図3図1に示すベルトコンベヤのB-B矢視断面図である。
図4図1に示すベルトコンベヤの変形例を示す縦断面図である。
図5図3に示すシール部の部分拡大図である。
図6図5に示すシール部を上方からみた図である。
図7図6に示すシール部の変形例を示す図である。
図8図1に示すベルトコンベヤの搬送方向における下部ケーシングへの固体燃料の堆積量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係るベルトコンベヤ(搬送装置)100およびベルトコンベヤ100を用いた搬送方法について、図面を参照して説明する。図1は、本開示の一実施形態に係るベルトコンベヤ100の縦断面図である。図2は、図1に示すベルトコンベヤのA-A矢視断面図である。図3は、図1に示すベルトコンベヤ100のB-B矢視断面図である。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものである。
【0012】
本実施形態のベルトコンベヤ100は、粉塵を発生し易い固体燃料として、例えば木質系固体燃料などのバイオマス燃料を含む搬送物を搬送する装置である。ここで、木質系固体燃料とは、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類等の木質系バイオマス燃料である。木質系固体燃料は、例えば、ペレット状,チップ状に形成される。本実施形態のベルトコンベヤ100は、木質系固体燃料などのバイオマス燃料のみを搬送すること、木質系固体燃料などのバイオマス燃料と非木質系固体燃料(石炭等)を混合させて搬送すること、非木質系固体燃料のみを搬送することのそれぞれが可能である。以下、本実施形態のベルトコンベヤ100が搬送する粉塵を発生し易い固体燃料を含めて、各種の燃料を、固体燃料SFと呼ぶ。
【0013】
図1に示すように、ベルトコンベヤ100は、コンベヤベルト(搬送ベルト)10と、ヘッドプーリ(搬送部)20と、テールプーリ(搬送部)20aと、複数のコンベヤローラ(搬送ローラ)30と、スカート板(壁部)40と、シール部50と、投入シュート(燃料投入部)60と、ヘッドシュート(燃料投下部)70と、上部ケーシング80と、下部ケーシング90と、を備える。
【0014】
コンベヤベルト10は、本実施形態では、図1に示すように紙面左側となる搬送方向TDに沿って、例えば水平方向へと移動するベルトの上面に固体燃料SFを積載して搬送するための長尺帯状のベルトである。コンベヤベルト10は、搬送方向TDの両端である搬送の下流側の終端点と上流側である始端点に配置されるヘッドプーリ20およびテールプーリ20aに掛けまわされている。コンベヤベルト10は、例えば、天然ゴムや合成ゴムにより形成されている。また、本実施形態ではコンベヤベルト10の上面である搬送面は、例えば水平方向に沿っているが、水平方向に限定されるものではなく、水平方向から傾斜して斜め下方方向もしくは、斜め上方方向へ沿っていてもよい。
【0015】
図2および図3に示すように、コンベヤベルト10は、少なくとも搬送方向TDの上流側にある投入シュート60が設置される直下付近においては、水平搬送面11と、搬送方向TDに直交する幅方向WDにおいて水平搬送面11を挟むように水平搬送面11の幅方向両端側に略対称になるように配置される一対の傾斜搬送面12,13と、を形成する。水平搬送面11は、コンベヤベルト10の幅方向WDの中央部を形成するものであり、一対の傾斜搬送面12,13に挟まれて水平方向に沿って配置される搬送面である。水平搬送面11の下方をコンベヤローラ30により支持することにより、水平搬送面11が水平方向に沿って配置される状態となる。
【0016】
傾斜搬送面12,13は、シール部50が接触するとともに水平方向に対して所定の傾斜角度θで傾斜して配置される面である。傾斜搬送面12の下方を水平方向に対して所定の傾斜角度θで傾斜したコンベヤローラ30aにより支持し、傾斜搬送面13の下方を水平方向に対して所定の傾斜角度θで傾斜したコンベヤローラ30bにより支持することにより、傾斜搬送面12,13が水平方向に対して略対称に所定の傾斜角度θで傾斜して配置される状態となる。また、傾斜角度θは、搬送方向TDに沿って変化させてもよい。すなわち、傾斜角度θを搬送方向TDの上流側から下流側に向けて減少、または増加させてもよく、傾斜角度θを搬送方向TDの中央部を小さく、両端部を大きく設定してもよい。
【0017】
ここで、所定の傾斜角度θは、0度以上でかつ90度より小さい角度に設定するのが望ましい。所定の傾斜角度θは、20度より大きくかつ60度より小さい範囲に設定するのが更に望ましい。図2および図3に示すように、コンベヤベルト10の傾斜搬送面12,13のシール部50の下端部分側の先端部が接触するように弾性変形して折り曲げられて設置されている。シール部50の折り曲げ角度αは、90度+θとなる。そのため、所定の傾斜角度θを0度より大きくかつ90度より小さい鋭角に設定した場合、折り曲げ角度αは90度より大きくかつ180度より小さい鈍角となる。
【0018】
ヘッドプーリ20およびテールプーリ20aは、搬送方向TDの両端である搬送の終端点と始端点のそれぞれに配置されており、搬送方向TDに沿ってコンベヤベルト10を搬送させる搬送力をコンベヤベルト10に付与する。図1において、搬送方向下流側(紙面左側)に配置されるヘッドプーリ20は、駆動モータ(図示略)により駆動軸21を中心に紙面の反時計回りに回転する駆動力が付与され、コンベヤベルト10の上面(搬送面)を搬送方向TDに沿って移動させる。搬送方向上流側(紙面右側)に配置されるテールプーリ20aは、コンベヤベルト10の移動に伴い、従動軸21aを中心に紙面の反時計回りに同伴して回転する。
【0019】
コンベヤローラ30は、ヘッドプーリ20、テールプーリ20aに掛けまわされるコンベヤベルト10の上面である搬送面に積載された固体燃料SFの荷重で、コンベヤベルト10が撓まないように一定の位置に保持するローラである。図2および図3に示すように、コンベヤローラ30は、コンベヤベルト10と接触しながら回転軸31を中心にヘッドプーリ20と同じ方向に回転する。図1に示すように、投入シュート60の下方には、他の箇所よりも搬送方向の配置間隔を短くして複数のコンベヤローラが配置されていてもよい。これは、投入シュート60から投入される固体燃料SFがコンベヤベルト10上面に落下して衝突した際に発生する荷重を支持するとともに、固体燃料SFの衝突によるコンベヤベルト10の振幅を小さくするためである。
【0020】
スナブプーリ35は、ヘッドプーリ20およびテールプーリ20aに掛けまわされるコンベヤベルト10に所定の張力を付与するための回転体である。図1に示すように、スナブプーリ35は、後述するヘッドシュート70で下方に固体燃料SFを投下した後にヘッドプーリ20の下方に導かれるコンベヤベルト10に接触することで、コンベヤベルト10に所定の張力を付与する。
【0021】
スカート板40は、搬送方向TDに沿って延びるとともにコンベヤベルト10の搬送方向TDに直交する幅方向WDの両端側において相互が間隔を空けて配置され、固体燃料SFを収容する収容空間S1を形成するものである。図2および図3に示すように、コンベヤベルト10の幅方向WDの中央部である水平搬送面11に対して対称になるように、一対のスカート板40が配置される。図3に示すように、一対のスカート板40の上方を閉塞するように板状に形成される蓋部45が配置されている。蓋部45は、投入シュート60が配置される位置を除くスカート板40の搬送方向TDの略全領域に設けられている。
【0022】
図2および図3に示すように、スカート板40には、押圧ブラケット41と、押圧ブラケット41に形成された貫通穴41aを貫通して配置される支持ブラケット42とが、取り付けられている。スカート板40と支持ブラケット42は、溶接により接合されている。支持ブラケット42には、支持ピン43を挿入するための挿入穴42aが形成されている。作業者は、スカート板40と押圧ブラケット41の間にシール部50を挟んだ状態で、挿入穴42aに支持ピン43を挿入することにより、押圧ブラケット41にスカート板40に向けた押圧力を付与し、スカート板40にシール部50の上端部分(基端部)側を支持し固定する。
【0023】
シール部50は、搬送方向TDに沿って延びるとともに収容空間S1から外部空間S2へ固体燃料SFの粉塵が飛散しないようにコンベヤベルト10との間にシール領域を形成する部材である。図2および図3に示すように、一対のシール部50は、下端部分側がコンベヤベルト10の上面の搬送面に接触した状態で一対のスカート板40の下端にシール部50の上端部分が押圧ブラケット41により支持固定されて取り付けられる。一対のシール部50はそれぞれ、下端部がコンベヤベルト10の上面のうち傾斜搬送面12,13に接触している。また、シール部50の下端部分側は、鉛直方向に対して先端部が、水平搬送面11が配置される幅方向WDの中央部に向けて弾性変形して折り曲げられた状態となっている。
【0024】
本実施形態のシール部50は、搬送方向TDに沿って長い距離に延在して配置されるとともに、シール部50の下端部分側は、コンベヤベルト10の傾斜搬送面12,13に接触している。このため、コンベヤベルト10が移動される際に、シール部50の下端部分とコンベヤベルト10の傾斜搬送面12,13との間で接触抵抗が発生することになる。しかしながら、固体燃料SFとして、木質系固体燃料などのバイオマス燃料を搬送する場合、固体燃料の粉塵が収容空間S1に存在する。
【0025】
コンベヤベルト10の上面の表面に付着した固体燃料SFの粉塵粒子が存在することで、傾斜搬送面12,13とシール部50の下端部分側の先端部との間の接触部分で固体潤滑剤の働きをし、コンベヤベルト10の傾斜搬送面12,13とシール部50の下端部分側との間の接触抵抗が減少して滑らかに滑ることができる。これにより粉塵の潤滑作用によりコンベヤベルト10の傾斜搬送面12,13とシール部50の下端部分側の先端部との間に隙間が発生することを抑制するため、コンベヤベルト10の傾斜搬送面12,13とシール部50の下端部分側の先端部との間から、粉塵が漏れ出ることが抑制される。
【0026】
投入シュート60は、コンベヤベルト10の搬送方向TDの上流側において、コンベヤベルト10の上面である搬送面に向けて固体燃料SFを上方から投入するものである。投入シュート60は、断面視が例えば矩形状となる筒状に形成されていてもよい。図1に示すように、投入シュート60は、コンベヤベルト10の上面の搬送面に近接して配置される下端部があり、投入シュート60の下端部は、搬送方向TDに第1長さL1を有する。
【0027】
ヘッドシュート70は、コンベヤベルト10の搬送方向TDの下流側の終端部から落下する固体燃料SFを下方へ導き、例えば図示しないホッパへと投入するものである。ヘッドシュート70は、鉛直方向に沿って下方に延びるように形成されている。
【0028】
上部ケーシング80は、コンベヤベルト10と、ヘッドプーリ20と、テールプーリ20aと、複数のコンベヤローラ30と、スナブプーリ35と、スカート板40と、シール部50とを内部に収容するケーシングの一部であり、コンベヤベルト10の上面である搬送面より離れて上方側に配置されている。
【0029】
下部ケーシング90は、コンベヤベルト10と、ヘッドプーリ20と、テールプーリ20aと、複数のコンベヤローラ30と、スナブプーリ35と、スカート板40と、シール部50とを内部に収容するケーシングの一部であり、コンベヤベルト10と離れて下方側に配置され、コンベヤベルト10の下面となった搬送面の下方側に配置されている。
【0030】
次に、スカート板40およびシール部50が配置される搬送方向TDの領域について説明する。本実施形態では、搬送物である固体燃料SFに木質系固体燃料などのバイオマス燃料が含まれる場合であっても、バイオマス燃料から発生する粉塵の周囲への飛散を抑制するように、スカート板40およびシール部50が配置される搬送方向TDの領域を設定している。
【0031】
図1に示すように、コンベヤベルト10上の位置(第1位置)P1は、投入シュート60の搬送方向TDの中心位置と一致している。コンベヤベルト10上の位置P2は、一対のスカート板40の搬送方向TDの下流側の端部40aが配置される位置と一致している。コンベヤベルト10上の位置P3は、一対のシール部50の搬送方向TDの下流側の端部50aが配置される位置と一致している。また、本実施形態では、位置P2と位置P3は同じ位置となっており、位置P2および位置P3は、ヘッドシュート70の搬送方向TDの上流側端部70aの位置と一致している。
【0032】
図1に示すように、一対のスカート板40の搬送方向TDの下流側の端部40aが配置される位置P2は、位置P1から第2長さL2だけ離れた位置となっている。また、一対のシール部50の搬送方向TDの下流側の端部50aが配置される位置P3は、位置P1から第3長さL3だけ離れた位置となっている。本実施形態では、第2長さL2と第3長さL3が一致している。
【0033】
一対のスカート板40は、搬送方向TDの下流側の端部40aが、ヘッドシュート70の搬送方向TDの上流側端部70aと一致する位置に配置されている。また、一対のシール部50は、搬送方向TDの下流側の端部50aが、ヘッドシュート70の搬送方向TDの上流側端部70aと一致する位置に配置されている。
【0034】
第2位置P2および第3位置P3を、ヘッドシュート70の上流側端部70aの位置と一致させているのは、以下の理由である。すなわち、ヘッドシュート70の上流側端部70aよりも搬送方向TDの下流側にスカート板40およびシール部50を配置せず、コンベヤベルト10から固体燃料SFの粉塵が飛散したとしても、飛散した粉塵が重力により下方に落下してヘッドシュート70に導かれるからである。
【0035】
なお、以上の説明では、第2位置P2および第3位置P3を、ヘッドシュート70の上流側端部70aの位置と一致させることとしたが、他の態様であってもよい。例えば、スカート板40の端部40aおよびシール部50の端部50aを、ヘッドシュート70の上流側端部70aの近傍に配置してもよい。
【0036】
第2位置P2および第3位置P3をヘッドシュート70の上流側端部70aの位置よりも搬送方向TDの更に下流側に配置することで、固体燃料SFの粉塵が飛散して下部ケーシング90に堆積することを更に抑制することができる。また、第2位置P2および第3位置P3をヘッドシュート70の上流側端部70aの位置よりも搬送方向TDの上流側に配置しても、固体燃料SFの粉塵が飛散して下部ケーシング90に堆積する堆積量を低減することができる。
【0037】
また、以上の説明では、第2位置P2および第3位置P3を、ヘッドシュート70の上流側端部70aの位置と一致させるかその近傍にすることとしたが、他の態様であってもよい。例えば、図4に示す変形例のベルトコンベヤ100Aのように第2位置P2および第3位置P3を設定してもよい。図4は、図1に示しベルトコンベヤの変形例を示す縦断面図である。
【0038】
図4に示す変形例に係るベルトコンベヤ100Aは、スカート板40の端部40aの位置P2およびシール部50の端部50aの位置P3を、図1に示す例よりも搬送方向TDの上流側に配置したものである。図4に示す例において、第2長さL2および第3長さL3は、第1長さL1の2倍以上とするのが望ましい。
【0039】
また、図4に示す例において、第2長さL2および第3長さL3は、第1長さL1の10倍以上とするのが更に望ましい。また、第2長さL2および第3長さL3は、搬送方向TDの下流側の端部となるヘッドシュート70の搬送方向TDの上流側端部70aが配置される位置と、投入シュート60の搬送方向TDの中心位置となる位置P1との間の長さ以下となる
【0040】
図8は、図1に示すベルトコンベヤ100の搬送方向TDにおける下部ケーシング90への固体燃料SFの堆積量の一例を示す図である。図8は、位置P1からヘッドシュート70の上流側端部70aの位置の間で、コンベヤベルト10とスカート板40との間から下部ケーシング90へ落下し堆積した固体燃料SFの量を示している。
【0041】
図8において、横軸は搬送方向TDにおける位置P1からの距離であり、左側の縦軸は各位置における固体燃料SFの堆積量を示し、右側の縦軸は各位置における固体燃料SFの堆積量を位置P1から積算した累積堆積量を示す。堆積量は、位置P1からの距離が第1長さL1の10倍である位置における堆積量を基準(1.0)とした比を示している。累積堆積量は、位置P1からの距離が第1長さL1の15倍である位置における累積堆積量を基準(1.0)とした比を示している。
【0042】
図8に実線で示すように、位置P1からヘッドシュート70の上流側端部70aの位置に向かうに従い、下部ケーシング90に堆積する固体燃料SFの堆積量が減少していることがわかる。これは、投入シュート60での粉塵の発生が最も多くなる位置であるP1から離れるに従って、粉塵の舞い上がり飛散する量が低減してコンベヤベルト10の搬送面に堆積するためであり、また、コンベヤベルト10の移動とともに搬送面の粉塵が少しずつ飛散し続けるため、ゼロにはならないと推察できる。
【0043】
図8に基づき、位置P1から第1長さL1の2倍までの間における、下部ケーシング90上の固体燃料SFの堆積量は、下部ケーシング90上の固体燃料SFの全堆積量のおよそ60%にあたり、多くを占める。そのため、位置P1からの第2長さL2および第3長さL3は少なくとも第1長さL1の2倍以上設けることで固体燃料SFの粉塵が飛散して下部ケーシング90に堆積する堆積量を低減できる。
【0044】
また、位置P1から第1長さL1の10倍までの間における、下部ケーシング90上の固体燃料SFの堆積量は、下部ケーシング90上の固体燃料SFの全堆積量のおよそ90%にあたり、大部分を占めることになる。このため、さらに好ましくは、位置P1からの第2長さL2および第3長さL3を第1長さL1の10倍以上設けることにより、固体燃料SFの粉塵が飛散して下部ケーシング90に堆積する堆積量をさらに低減することができる。
【0045】
次に、シール部50について、図面を参照して詳細に説明する。図5は、図3に示すシール部50の部分拡大図である。図5に示すように、シール部50は、それぞれ搬送方向TDに沿って延びる弾性材料により形成された複数の弾性シート51,52,53を幅方向WDに重ねて形成されている。ここで、弾性材料は、例えば、ゴム系材料,樹脂系材料などである。
【0046】
図5に示すように、複数の弾性シート51,52,53の厚さは、それぞれth1,th2,th3となっている。厚さth1,th2,th3は、例えば、同じ厚さに設定されてもよい。また、例えば、弾性シート51の厚さth1,弾性シート52の厚さth2,弾性シート53の厚さth3は、th3≦th1≦th2としてコンベヤベルト10の搬送面の上側になるほど薄くするようにして低振動数で大振幅の変位等での密着性を重視してもよい。
【0047】
また、例えば、中央に配置される弾性シート51の厚さth1よりも弾性シート52の厚さth2,弾性シート53の厚さth3を薄くして、コンベヤベルト10の大小様々な振動の変位等に対する追従性を向上させるようにしてもよい。また、例えば、弾性シート53の厚さth3よりも弾性シート51の厚さth1,弾性シート52の厚さth2を薄くして、傾斜搬送面12への密着性を向上させてコンベヤベルト10の高振動数で低振幅の変位等に対する追従性を向上させるようにしてもよい。また、ベルトコンベヤ100の運用状態に応じて適切になるよう、それぞれ任意の厚さに設定してもよい。
【0048】
図5に示すように、弾性シート53は収容空間S1に隣接して配置され、弾性シート52は外部空間S2に隣接して配置される。弾性シート51は、弾性シート52と弾性シート53との間に挟まれた状態で配置される。複数の弾性シート51,52,53は、上端部分からの長さの異なる複数の弾性シート51,52,53を重ねて形成されて、上端部分側がスカート板40と押圧ブラケット41に挟まれた状態で支持固定される。複数の弾性シート51,52,53は、下方に傾斜搬送面12が存在しない場合には、自重および弾性力により鉛直方向に沿って下端部分側が直線状に延びるように配置される柔軟性を有している。
【0049】
図5に示すように、シール部50は上端部分からの長さの異なる複数の弾性シート51,52,53を重ねて形成されている。弾性シート52は、鉛直方向に延びるように略直線状に配置され、下端部分の先端部が傾斜搬送面12に接触する。また、弾性シート52は下端部分の先端部が水平搬送面11に向けて若干量の弾性変形をして小量が折り曲げられた状態で配置されて傾斜搬送面12に接触してもよい。
【0050】
コンベヤベルト10の幅方向WDにおいて、外部空間S2側の先端部の傾斜搬送面12上の位置は位置P11となっている。弾性シート51は、下端部分の先端部が傾斜搬送面12に面接触した状態で水平搬送面11に向けて弾性変形して折り曲げられた状態で配置される。コンベヤベルト10の幅方向WDにおいて、収容空間S1側の先端部の傾斜搬送面12上の位置は位置P12となっている。
【0051】
図5に示すように、弾性シート53は、下端部分の先端部が傾斜搬送面12に非接触の状態、もしくは若干量が接触した状態で水平搬送面11に向けて弾性変形して折り曲げられた状態で配置される。コンベヤベルト10の幅方向WDにおいて、収容空間S1側の先端部の傾斜搬送面12上の位置は位置P13となっている。図5に示すように、位置P11から位置P12までは第4長さL4を有し、位置P11から位置P13までは第4長さL4よりも長い第5長さL5を有する。
【0052】
第5長さL5が第4長さL4よりも長いため、弾性シート53の先端部が弾性シート51の先端部よりも、コンベヤベルト10の中央部である水平搬送面11に近接した位置に配置される。また、弾性シート53が弾性シート51よりも収容空間S1側に近接して配置されるため、弾性シート53の先端部が傾斜搬送面12から弾性シート51の厚さth1の分だけ離れた位置に配置される。
【0053】
図5に実線で示す傾斜搬送面12は、コンベヤベルト10の振動による振動数と振幅が小さい状態を模擬して示している。弾性シート51,52,53ともに安定してコンベヤベルト10の傾斜搬送面12との接触状態を維持している。弾性シート53の先端部は、コンベヤベルト10の振動数と振幅が小さいため、傾斜搬送面12に接触せずに離間した状態となっている。
【0054】
一方、図5に破線で示す傾斜搬送面12Aは、コンベヤベルト10の振動が大きくなることにより傾斜搬送面12が鉛直方向の上方側に変位して弾性シート53の先端部に接触した状態を示している。このとき、弾性シート51の先端部は傾斜搬送面12との接触面積が少なくなる場合があっても、弾性シート53の先端部が傾斜搬送面12に接触する。
【0055】
図5に鎖線で示す傾斜搬送面12Bは、コンベヤベルト10の振動が大きくなることにより傾斜搬送面12が鉛直方向の下方側に変位した状態を示している。コンベヤベルト10の傾斜搬送面12が鉛直方向の下方側に変位して弾性シート51の先端部は傾斜搬送面12との接触面積が少なくなるが、弾性シート53の先端部も下方側に変位して傾斜搬送面12に接触した状態になる。このとき、弾性シート51の先端部は傾斜搬送面12との接触状態が低下しても弾性シート53の先端部が傾斜搬送面12に接触する。
【0056】
また、図5で破線および鎖線で示す傾斜搬送面12Aと傾斜搬送面12Bとの間の傾斜搬送面12の法線方向の距離は、所定の振幅AMとなっている。本実施形態のベルトコンベヤ100において、振動数は低い状態で、振幅の変化がある場合は、弾性シート53の先端部は、コンベヤベルト10の変位の振幅が所定の振幅(所定値)AM未満の場合にはコンベヤベルト10に接触していなく、振幅が所定の振幅AM以上の場合にコンベヤベルト10に接触するようになる。
【0057】
このように、シール部50は、コンベヤベルト10の変位の振幅が所定の振幅AM未満の場合は、弾性シート51および弾性シート52が傾斜搬送面12に確実に接触しており、弾性シート53は傾斜搬送面12に接触していない。したがって、収容空間S1の固体燃料SFの粉塵が外部空間S2へ飛散することを抑制することができる。また、弾性シート51,52,53の全てが傾斜搬送面12に接触する場合に比べ、シール部50と傾斜搬送面12との接触抵抗を低減することができる。
【0058】
また、シール部50は、コンベヤベルト10の変位の振幅が所定の振幅AM以上の場合は、弾性シート51の傾斜搬送面12への接触が低減するが弾性シート52が傾斜搬送面12に接触し、更に弾性シート53も傾斜搬送面12に接触する。したがって、コンベヤベルト10の変位の振幅が所定の振幅AM以上となっても、振幅が所定の振幅AM未満での弾性シート53が傾斜搬送面12に接触しない場合に比べ、シール部50と傾斜搬送面12との接触面積を維持または増加し、収容空間S1の固体燃料SFの粉塵が外部空間S2へ飛散することを抑制する効果が高まる。
【0059】
シール部50は、搬送方向TDに沿って継ぎ目なく第3長さL3を有するように形成するのが望ましい。ただし、シール部50は、全体として第3長さL3を有するように搬送方向TDに沿って複数に分割してもよい。図6に示すように、シール部50を分割する際には、弾性シート51,52,53の搬送方向TDの分割位置を異ならせて、収容空間S1から外部空間S2へ貫通する隙間が生じないようにするのが望ましい。
【0060】
図6に示すシール部50は、弾性シート51が弾性シート51aと弾性シート51bに分割され、弾性シート52が弾性シート52aと弾性シート52bに分割され、弾性シート53が弾性シート53aと弾性シート53bに分割されている。図6に示すように、弾性シート51aと弾性シート51bの分割位置と、弾性シート52aと弾性シート52bの分割位置と、弾性シート53aと弾性シート53bの分割位置とが、搬送方向TDの異なる位置となっている。分割位置を異ならせることで、これらの分割位置が搬送方向TDの同一位置に形成されている場合に比べ、収容空間S1から外部空間S2へ向けて固体燃料SFの粉塵が飛散することが抑制される。
【0061】
図6に示すシール部50に替えて、図7に示すシール部50を採用してもよい。図7に示すシール部50は、弾性シート52aと弾性シート52bの分割位置と、弾性シート53aと弾性シート53bの分割位置とが、搬送方向TDの同一位置となっている。一方、図7に示すシール部50は、弾性シート51aと弾性シート51bの分割位置が、弾性シート52,53の分割位置と異なっている。隣接する弾性シートの搬送方向TDの分割位置が異なっているため、図6に示すシール部50と同様に、各分割位置が搬送方向TDの同一位置に形成されている場合に比べ、収容空間S1から外部空間S2へ向けて固体燃料SFの粉塵が飛散することが抑制される。
【0062】
次に、本実施形態のベルトコンベヤ100が搬送方向TDに沿って固体燃料SFを搬送する搬送方法について説明する。
第1に、投入シュート60からコンベヤベルト10の搬送面に向けて固体燃料SFを投入する(燃料投入工程)。
第2に、ヘッドプーリ20およびテールプーリ20aによりコンベヤベルト10に搬送方向TDに沿った搬送力を付与し、コンベヤベルト10の搬送面に投入された固体燃料SFを搬送方向TDに沿って搬送する(搬送工程)。
【0063】
第3に、コンベヤベルト10の搬送面に投入された固体燃料SFを搬送方向TDの下流側に配置されるヘッドプーリ20の位置まで搬送させ、コンベヤベルト10からヘッドシュート70に向けて固体燃料SFを投下する。
以上の工程を繰り返すことにより、投入シュート60からコンベヤベルト10の搬送面に向けて投下された固体燃料SFを搬送し、ヘッドシュート70に向けて投下することができる。
【0064】
以上説明した本実施形態に記載の搬送装置は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る搬送装置(100)は、搬送方向(TD)に沿って固体燃料を搬送するための搬送ベルト(10)と、前記搬送方向に沿って前記搬送ベルトを搬送させる搬送力を前記搬送ベルトに付与する搬送部(20)と、前記搬送ベルトの前記搬送方向に直交する幅方向(WD)の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記固体燃料を収容する収容空間(S1)を形成する一対の壁部(40)と、前記搬送ベルトの前記幅方向の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記搬送ベルトの搬送面(11,12,13)に接触する先端部が前記幅方向の中央に向けて弾性変形して折り曲げられた一対のシール部(50)と、前記搬送方向の上流側の前記搬送面に向けて固体燃料を鉛直上方側から投入する筒状の燃料投入部(60)と、を備え、前記燃料投入部は、前記搬送面に近接して配置される下端部において前記搬送方向に第1長さ(L1)を有し、一対の前記壁部の前記搬送方向の下流側の端部(40a)は、前記燃料投入部の前記搬送方向の中心位置から第2長さ(L2)だけ離れた位置に配置されており、一対の前記シール部の前記搬送方向の下流側の端部(50a)は、前記中心位置から第3長さ(L3)だけ離れた位置に配置されており、一対の前記シール部の前記先端部は前記搬送ベルトに接触した状態であり、一対の前記シール部の基端部は一対の前記壁部の鉛直方向下端に取り付け支持されており、前記第2長さ(L2)および前記第3長さ(L3)は、前記第1長さ(L1)の2倍以上である。
【0065】
本開示に係る搬送装置によれば、燃料投入部の搬送方向の中心位置から壁部の下流側の端部が配置される位置までの第2長さと、燃料投入部の搬送方向の中心位置からシール部の下流側の端部が配置される位置までの第3長さのそれぞれが、燃料投入部の搬送方向の第1長さの2倍以上となっている。そのため、搬送物に粉塵を発生し易い木質系固体燃料などのバイオマス燃料が含まれる場合であっても、燃料投入部の搬送方向の中心位置から燃料投入部の搬送方向の第1長さの2倍以上の長さの範囲において、壁部およびシール部によって搬送ベルトからバイオマス燃料の粉塵が周囲に飛散することを抑制することができる。
【0066】
本開示に係る搬送装置は、前記搬送ベルトの前記搬送方向の下流側の端部から落下する固体燃料を鉛直下方側に導く燃料投下部(70)を備え、一対の前記壁部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投下部の前記搬送方向の上流側端部の近傍に配置され、一対の前記シール部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投下部の前記搬送方向の上流側端部の近傍に配置される。
【0067】
本開示に係る搬送装置によれば、搬送物に粉塵を発生し易い木質系固体燃料などのバイオマス燃料が含まれる場合であっても、燃料投入部の搬送方向の中心位置から燃料投下部の搬送方向の上流側端部の近傍までの範囲において、壁部およびシール部によって搬送ベルトからバイオマス燃料の粉塵が周囲に飛散することを抑制することができる。燃料投下部の搬送方向の上流側端部よりも下流側においては、バイオマス燃料の粉塵が周囲に飛散したとしても、燃料投下部により粉塵を下方へと導くことができる。
【0068】
本開示に係る搬送装置において、前記搬送ベルトの少なくとも前記燃料投入部の鉛直下方側の位置において、前記搬送ベルトの前記搬送面の前記幅方向の両端側には、一対の前記シール部の前記先端部が接触するとともに水平方向に対して所定の傾斜角度(θ)で傾斜する一対の傾斜搬送面(12,13)を形成し、前記所定の傾斜角度は、0度以上かつ90度より小さい。
本開示に係る搬送装置によれば、シール部が接触する搬送面の水平面に対する傾斜角度が0度以上で90度より大きい。そのため、シール部が弾性変形して折り曲げられる角度が90度以上で180度より小さい鈍角となる。シール部が弾性変形して折り曲げられる角度を鈍角とすることで、シール部の弾性変形量を比較的少なくないものとし、シール部と搬送面との接触抵抗を低減することができる。
【0069】
本開示に係る搬送装置において、前記搬送ベルトは、一対の前記傾斜搬送面に挟まれて水平方向に沿って配置される水平搬送面(11)を有する。
本開示に係る搬送装置によれば、搬送ベルトの幅方向の両端側にある一対の傾斜搬送面において収容空間から外部に粉塵が飛散することを抑制しつつ、傾斜搬送面に存在する固体燃料および粉塵を水平搬送面に向けて案内することで搬送ベルトからの落下を抑制し、水平搬送面に案内された固体燃料および粉塵を搬送方向に沿って搬送することができる。
【0070】
本開示に係る搬送装置は、前記シール部は、それぞれ前記搬送方向に沿って延びる弾性材料により形成され、前記シール部の前記基端部からの長さの異なる複数の弾性シートを重ねて形成されている。
本開示に係る搬送装置によれば、シール部が基端部からの長さの異なる数の弾性シートを重ねて形成されているため、搬送ベルトが振動をしても各弾性シートが搬送ベルトの搬送面に接触する状態は、少なくとも1つ以上のシール領域が搬送方向に沿って搬送面との間に形成されるため、固体燃料から発生した粉塵が周囲に飛散することを確実に抑制することができる。
【0071】
本開示に係る搬送装置は、前記収容空間に隣接して配置される前記弾性シートの前記先端部は、前記搬送ベルトの変位の振幅が所定値未満の場合には前記搬送ベルトに接触せず、前記振幅が前記所定値以上の場合に前記搬送ベルトに接触する。
本開示に係る搬送装置によれば、搬送ベルトの変位の振幅がある場合でも、変位の振幅が所定値未満の場合には収容空間に隣接して配置される弾性シートの先端部が搬送ベルトの搬送面に接触しない状態で、他の弾性シートが搬送面に接触するため、固体燃料から発生した粉塵が周囲に飛散することを確実に抑制しながら、シール部と搬送ベルトとの接触抵抗を低減することができる。また、搬送ベルトの変位の振幅が所定値以上の場合には収容空間に隣接して配置される弾性シートの先端部が搬送ベルトに接触するため、他の弾性シートが搬送面に接触する面積が低減しても、固体燃料から発生した粉塵が周囲に飛散することを確実に抑制することができる。
【0072】
本開示に係る搬送装置は、前記搬送ベルトで前記搬送方向に沿って搬送する前記固体燃料は、少なくとも一部がバイオマス燃料である。
本開示に係る搬送装置によれば、一対の壁部と一対のシール部とを、搬送方向に十分な長さで設置することにより、粉塵を発生し易い木質系固体燃料などのバイオマス燃料を搬送する際に発生する粉塵の周囲への飛散を抑制することができる。
【0073】
以上説明した実施形態に記載の搬送装置による搬送方法は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る搬送装置による搬送方法は、搬送方向に沿って固体燃料を搬送する搬送装置による搬送方法であって、前記搬送装置は、前記搬送方向に沿って固体燃料を搬送するための搬送ベルトと、前記搬送ベルトの前記搬送方向に直交する幅方向の両端側に設置され、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記固体燃料を収容する収容空間を形成する一対の壁部と、前記搬送ベルトの前記幅方向の両端側に設置され前記搬送方向に沿って延びるとともに前記搬送ベルトの搬送面に接触する先端部が前記幅方向の中央に向けて弾性変形して折り曲げられた一対のシール部と、前記搬送方向の上流側の前記搬送面に向けて固体燃料を鉛直上方側から投入する筒状の燃料投入部と、を備え、前記燃料投入部は、前記搬送面に近接して配置される下端部において前記搬送方向に第1長さを有し、一対の前記壁部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記燃料投入部の前記搬送方向の中心位置から第2長さだけ離れた位置に配置されており、一対の前記シール部の前記先端部は前記搬送ベルトに接触した状態であり、一対の前記シール部の基端部は一対の前記壁部の鉛直方向下端に取り付け支持されており、一対の前記シール部の前記搬送方向の下流側の端部は、前記中心位置から第3長さだけ離れた位置に配置されており、前記第2長さおよび前記第3長さは、前記第1長さの2倍以上であり、前記燃料投入部から前記搬送面に向けて固体燃料を投入する燃料投入工程と、前記搬送方向に沿って前記搬送ベルトを搬送させる搬送力を前記搬送ベルトに付与し、前記燃料投入工程により前記搬送面に投入された固体燃料を搬送する搬送工程と、を備える。
【0074】
本開示に係る搬送方法によれば、燃料投入部の搬送方向の中心位置から壁部の下流側の端部が配置される位置までの第2長さと、燃料投入部の搬送方向の中心位置からシール部の下流側の端部が配置される位置までの第3長さのそれぞれが、燃料投入部の搬送方向の第1長さの2倍以上となっている。そのため、搬送物に粉塵を発生し易い木質系固体燃料などのバイオマス燃料が含まれる場合であっても、燃料投入部の搬送方向の中心位置から燃料投入部の搬送方向の第1長さの2倍以上の長さの範囲において、壁部およびシール部によって搬送ベルトからバイオマス燃料の粉塵が周囲に飛散することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 コンベヤベルト(搬送ベルト)
11 水平搬送面
12 傾斜搬送面
13 傾斜搬送面
20 ヘッドプーリ(搬送方向下流側プーリ、搬送部)
20a テールプーリ(搬送方向上流側プーリ、搬送部)
21 駆動軸
21a 従動軸
30 コンベヤローラ(搬送ローラ)
35 スナブプーリ
40 スカート板(壁部)
40a 端部
50 シール部
51,52,53 弾性シート
60 投入シュート(燃料投入部)
70 ヘッドシュート(燃料投下部)
70a 上流側端部
100 ベルトコンベヤ(搬送装置)
AM 振幅
S1 収容空間
S2 外部空間
SF 固体燃料
TD 搬送方向
WD 幅方向
α 折り曲げ角度
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8