(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】成膜装置およびそれを用いた成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20240213BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C23C14/56 G
C23C14/34 C
C23C14/34 B
(21)【出願番号】P 2019230521
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】出村 和哉
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-091905(JP,A)
【文献】特開平05-152215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、鉛直方向に昇降が可能な基材支持部と、ターゲットが設置される複数のカソード部と、を備える成膜装置であって、
前記チャンバは、開口を有する隔壁によって複数の空間に仕切られており、
前記基材支持部
が昇降
することによって、前記チャンバを複数の空間に仕切り、
前記複数のカソード部は、前記複数の空間に分けて配置されている、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
チャンバと、鉛直方向に昇降が可能な基材支持部と、ターゲットが設置される複数のカソード部と、を備える成膜装置であって、
前記チャンバは、開口を有する隔壁によって複数の空間に仕切られており、
前記基材支持部は、前記開口を通って前記複数の空間の間を移動可能であり、
前記複数のカソード部は、前記複数の空間に分けて配置されており、
前記基材支持部には、支持軸を介して板が取り付けられており、
前記支持軸の長さおよび前記板の形状は、鉛直方向で互いに隣接する空間の上側で成膜を行う際に、前記板が前記隔壁の開口にはまり込むように決められている、
ことを特徴とす
る成膜装置。
【請求項3】
前記基材支持部が鉛直方向に延びる第1の軸を中心として回転可能となっており、
さらに、底部と、該底部から鉛直方向に立ち上がり、前記基材支持部が鉛直方向に可動する範囲を囲む円筒を鉛直方向に一部切り欠いた形状
の遮蔽部と、を有するシャッターを備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記遮蔽部を鉛直方向からみると、前記遮蔽部は円弧状をしており、その弦の長さは前記カソード部に設置が可能なターゲットの長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記シャッターと前記基材支持部との間にできる隙間の最大寸法は、スパッタ粒子の平均自由工程未満である、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記開口および前記板が円形状を有することを特徴とする請求項
2に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記開口において前記板と前記隔壁との間にできる隙間の最大寸法は、スパッタ粒子の平均自由工程未満である、
ことを特徴とする請求項
2または6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記チャンバの前記隔壁によって仕切られた複数の空間のそれぞれには、カソード部が1つずつ設けられている、
ことを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記チャンバの前記隔壁によって仕切られた複数の空間のそれぞれには、カソード部が2つずつ設けられている、
ことを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記チャンバが、鉛直方向に2つの空間に仕切られており、
鉛直方向において上側の空間には、第2の軸を中心に回転可能な第1のカソード部と、第3の軸を中心に回転可能な第2のカソード部と、が設けられ、
鉛直方向において下側の空間には、第4の軸を中心に回転可能な第3のカソード部と、第5の軸を中心に回転可能な第4のカソード部と、が設けられ、
前記第2の軸と前記第3の軸は互いに平行であり、前記第4の軸と前記第5の軸は互いに平行となるように配置され、前記第2の軸と前記第4の軸は、それぞれ第1の軸に対してねじれの位置に配置されている、
ことを特徴とする、請求項3から
5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記基材支持部が前記上側の空間における成膜位置にある状態において、鉛直方向における、
前記第2の軸と前記基材支持部の基材支持面との距離Maと、
前記第3の軸と前記基材支持面との距離Mbとが、Ma<Mbの関係を満たし、水平方向における、前記第2の軸と前記第1の軸との距離Laと、前記第3の軸と前記第1の軸との距離Lbとが、La>Lbの関係を満たすことを特徴とする請求項
10に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記基材支持部が前記下側の空間における成膜位置にある状態において、鉛直方向における、
前記第4の軸と前記基材支持部の基材支持面との距離Mcと、
前記第5の軸と前記基材支持面との距離Mdとが、Mc<Mdの関係を満たし、水平方向における、前記第4の軸と前記第1の軸との距離Lcと、前記第5の軸と前記第1の軸との距離Ldとが、Lc>Ldの関係を満たすことを特徴とする請求項
10または
11に記載の成膜装置。
【請求項13】
鉛直方向における前記遮蔽部の長さが、鉛直方向における前記第2の軸と前記第5の軸との距離と、前記第2の軸に設置されるターゲットの半径と、前記第5の軸に設置されるターゲットの半径との和より長い、
ことを特徴とする請求項
10から
12のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記チャンバが、鉛直方向に2つの空間に仕切られており、
鉛直方向において上側の空間には、前記第1のカソード部および前記第2のカソード部の組と、前記シャッターを挟んで、第6の軸を中心に回転可能な第5のカソード部と第7の軸を中心に回転可能な第6のカソード部の組とが設けられ、
鉛直方向において下側の空間には、前記第3のカソード部および前記第4のカソード部の組と、前記シャッターを挟んで、第8の軸を中心に回転可能な第7のカソード部と第9の軸を中心に回転可能な第8のカソード部の組とが設けられ、
前記第6の軸と前記第7の軸、前記第8の軸と前記第9の軸は、それぞれ互いに平行であり、
前記第6の軸と前記第8の軸は、それぞれ第1の軸に対してねじれの位置に配置されている、
ことを特徴とする、請求項
10から
13のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記基材支持部が前記上側の空間における成膜位置にある状態において、鉛直方向における、第6の軸と前記基材支持部の基材支持面との距離Mcと、第7の軸と前記基材支持面との距離Mdとが、Mc<Mdの関係を満たし、水平方向における、前記第6の軸と前記第1の軸との距離Lcと、前記第7の軸と前記第1の軸との距離Ldとが、Lc>Ldの関係を満たすことを特徴とする請求項
14に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記基材支持部が前記下側の空間における成膜位置にある状態において、鉛直方向における、第8の軸と前記基材支持部の基材支持面との距離Meと、第9の軸と前記基材支持面との距離Mfとが、Me<Mfの関係を満たし、水平方向における、前記第8の軸と前記第1の軸との距離Leと、前記第9の軸と前記第1の軸との距離Lfとが、Le>Lfの関係を満たすことを特徴とする請求項
14または
15に記載の成膜装置。
【請求項17】
前記カソード部が、ロータリーカソードであることを特徴とする請求項1から
16のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項18】
チャンバと、鉛直方向に昇降が可能な基材支持部と、ターゲットが設置される複数のカソード部と、を備え、前記チャンバが開口を有する隔壁によって複数の空間に仕切られており、前記基材支持部が昇降
することによって、前記チャンバを複数の空間に仕切り、前記複数のカソード部が前記複数の空間に分けて配置されている成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記基材支持部に基材を設置する工程と、
前記複数の空間のうち第1の空間に前記基材を設置して成膜を行う工程と、
前記複数の空間のうち前記第1の空間とは別の空間に前記基材を移動させて成膜を行う工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に複数の材料からなる多層膜を、スパッタ法を用いて形成するための成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面に、互いに屈折率が異なる複数の層からなる多層膜を形成して光の反射を抑制する技術は、様々な分野で広く用いられている。例えば、撮像装置では、光学系での反射光に起因して生じるゴーストやフレアを低減するため、光学系を構成する光学素子の表面に多層膜が形成される。
【0003】
特許文献1には、同一真空内を水平方向に仕切り、仕切られた空間ごとに互いに材質が異なるターゲットが設置されるスパッタリング装置が開示されている。被成膜基材は水平方向に搬送され、それぞれのターゲットにて順に成膜がおこなわれ、多層膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の成膜装置では、水平方向に層数に応じて複数のターゲットが配置される。そのため、多層膜を構成する材質の種類、あるいは層数に応じた数の分だけ大型化してしまう。装置が大型化するとフットプリント(床面積)が増え、建物の建築面積も増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる成膜装置は、チャンバと、鉛直方向に昇降可能な基材支持部と、ターゲットが設置される複数のカソード部と、を備える成膜装置であって、前記チャンバは、開口を有する隔壁によって複数の空間に仕切られており、前記基材支持部は、前記仕切りを通って前記複数の空間の間を移動可能であり、前記複数のカソード部は、前記複数の空間に分けて配置されている、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる成膜方法は、チャンバと、鉛直方向に昇降可能な基材支持部と、ターゲットが設置される複数のカソード部と、を備え、前記チャンバが開口を有する隔壁によって複数の空間に仕切られており、前記基材支持部が前記仕切りを通って前記複数の空間の間を移動可能であり、前記複数のカソード部が前記複数の空間に分けて配置されている成膜装置を用いた成膜方法であって、前記基材支持部に基材を設置する工程と、前記複数の空間のうち第1の空間に前記基材を設置して成膜を行う工程と、前記複数の空間のうち前記第1の空間とは別の空間に前記基材を移動させて成膜を行う工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の成膜装置を用いることによって、多層膜を形成する成膜装置の小型化を実現し、それを納める建物の建築面積の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態にかかる成膜装置の概略を示す図であって、チャッキングが上空間の成膜位置にある状態を示す図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる成膜装置の概略を示す図であって、チャッキングが下空間の成膜位置にある状態を示す図である。
【
図3】(a)はシャッターの斜視図、(b)はシャッターを軸Pに沿った方向からみたときのレイアウトを示す図である。
【
図5】第2の実施形態にかかる成膜装置の概略を示す図である。
【
図6】第3の実施形態にかかる成膜装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。実施形態に記載されている各部材の寸法、材質、形状、配置、各種制御の手順、制御パラメータ、目標値などは、限定的な記載がない限りは、目的に応じて適宜変更することができる。
【0011】
(第1の実施形態)
図1および
図2は、成膜装置100の概略構成の鉛直方向の断面を示す図である。成膜装置100は、チャンバ1内を鉛直方向に複数の空間に仕切り、各空間にターゲットを設置することで、小さな床面積で多層膜を形成することを可能とする。
【0012】
まず、成膜装置100について説明した後、多層膜の成膜手順について説明する。
【0013】
図1、2では、成膜装置100が備えるチャンバ1の内部が円形状の開口を有する隔壁12によって鉛直方向に2つに仕切られており、隔壁12で仕切られたそれぞれの空間にカソード部2a、2bを有している。さらに、被成膜基材(以下、基材と記述する)4を支持するチャッキング(基材支持部)5と、チャッキング5の回転および鉛直方向の位置を制御する回転昇降機構10を有している。チャッキング5は、鉛直方向に延びる軸Pを中心とする回転が可能となっている。以下、鉛直方向において、チャンバの隔壁12より上側の空間を上空間、隔壁12より下側を下空間と呼ぶ。
【0014】
チャッキング5には、板13が支持軸14を介して取り付けられており、支持軸14の中心軸はチャッキング5の軸Pと一致している。板13の中心は、軸Pの延長上にあることが好ましい。板13および支持軸14は、チャッキング5の昇降と連動して位置が上下するが、チャッキング5の回転駆動とは切り離されており、回転しない構造となっている。
【0015】
チャッキング5の直径は、隔壁12の開口径(開口の直径)よりも小さく設計されており、開口を通って隔壁12で仕切られた空間のどちらにも移動可能となっている。
図1は、チャッキング5が上空間の成膜位置にある場合、
図2は、チャッキング5が下空間の成膜位置にある場合を示している。
図1に示されるように、チャッキング5を上空間の成膜位置に固定されると、板13が隔壁12の開口にはまり込むように、支持軸14の長さおよび板13の形状が設定されている。つまり、鉛直方向で互いに隣接する空間の上側で成膜を行う際に、板13が隔壁12の開口にはまり込むため、隣接する空間と分離することができる。そして、
図2に示されるように、チャッキング5を下空間の成膜位置に固定されると、チャッキング5自体が隔壁12の開口をほぼ塞ぐように設計されている。従って、上空間と下空間を独立した成膜空間として利用することが可能となる。
【0016】
チャンバ1の内部には、さらに、シャッター回転機構15によって、チャッキング5と同じ軸(軸P)を中心とする回転操作が可能なシャッター11が設けられている。
図3(a)にシャッター11の斜視図、
図3(b)にシャッター11を軸Pの方向からみた図を示す。
【0017】
図3(a)に示すように、シャッターは、底部111と、底部111から鉛直方向に立ち上がった遮蔽部112とを有している。遮蔽部112は、鉛直方向にチャッキング5が可動できる範囲を囲む円筒を、鉛直方向に一部切り欠いた形状となっており、
図3(b)に示すように、軸Pに沿う方向からみると円弧状になっている。シャッター11の外径(底部111の直径)R
2は、隔壁12の開口径R
1よりも小さく、シャッターの内径(遮蔽部112を含む円筒の内径)R
3は、チャッキング5の直径R
4よりも大きくなっている。そして、遮蔽部112の弦Sは、ターゲット21aおよび21bの回転軸方向の長さよりも長い。なお、チャッキング5、板13、シャッターの底部111、および開口は、円形状が好ましいが、円に近い多角形であってもよい。
【0018】
シャッター11とチャッキング5との間にできる隙間の最大寸法(R3-R4)/2、および開口において板13と隔壁12との間にできる隙間の最大寸法(R1-R2)/2は、いずれもスパッタ粒子の平均自由工程未満とすることが好ましい。このような構成とすることで、上空間と下空間との間でスパッタ粒子が行き来するのを抑制することができ、ターゲット21a(21b)による成膜の際にスパッタ粒子がターゲット21b(21a)の表面に付着するのを防ぐことができる。また、軸Pに沿う方向における遮蔽面112の鉛直方向の長さを、軸O2aと軸O2bとの鉛直方向における距離とターゲット21aの半径と21bの半径との和より長くすると、カソード部と対向するチャンバ1の内壁への着膜を低減することができる。
【0019】
カソード部2a、2bは、不図示の駆動機構に接続されており、軸Pと空間的にねじれの位置にある軸を中心に回転可能なロータリーカソードである。具体的には、上空間に設けられたカソード部(第1のカソード部)2aは、軸O
2a(第2の軸)を中心に回転することができ、下空間に設けられたカソード部(第2カソード部)2bは、軸O
2b(第3の軸)を中心に回転可能となっている。軸O
2aと、軸O
2bそれぞれと軸P(第1の軸)とのなす角は、90°が好ましい。
図1(a)では軸O
2aと軸O
2bとが平行に設けられているが、これに限定されるものではない。
【0020】
カソード部2a、2bには、ターゲット21aまたは21bが表面にボンディングされた円筒状のバッキングチューブ22aまたは22bが設置される。ターゲット21a、21bは、軸O2a、軸O2bを中心に個別に回転を制御することができる。1つのチャンバ内で複数種類の層を形成する場合は、カソード部2a、2bに互いに異なる材質からなるターゲット21a、21bが設置される。
【0021】
カソード部2a、2bは、設置したバッキングチューブ22a、22bによって覆われる範囲内に、軸O2a、O2bそれぞれを中心に、バッキングチューブとは独立して回転可能なマグネットケースシャフト23a、23bが設けられている。マグネットケースシャフト23a、23bの内部には、マグネット24a、24bが設けられており、マグネットケースシャフト23a、23bによってマグネット24a、24bの位置を変更することができる。マグネット24a、24bは、極性の異なるマグネット対を含んでおり、マグネット24a、24bによって、ターゲット21a、21bの表面に磁場が生成される。この磁場によって、プラズマがターゲット21a、21bの表面に引き付けられ、効率よく成膜を行うことが可能となっている。
【0022】
カソード部2a、2bには、切替え器16を介してAC電源6が接続されており、プラズマ放電を生起させるための電力を供給することができる。なお、電力を供給する電源は、AC電源に限定されるものではなく、例えばDCパルス電源をカソード部ごとに備える構成であってもよい。
【0023】
チャンバ1は密閉することができ、排気装置8a、8bにより内部の気体を排気することによって、チャンバ1内を負圧状態に維持することが可能である。チャンバ1内の圧力は、ガス供給部7aもしくは7bから供給するガスの供給量の制御と排気装置8a、8bの排気口の開閉度によって、調整することができる。排気装置8aとガス供給部7aはチャンバの上空間に接続されており、排気装置8bとガス供給部7bはチャンバの下空間に接続されているが、チャンバ1内の圧力が制御できれば、このような構成に限定されるものではない。
【0024】
図1および
図2では、ガス供給部7a、7bが、プロセスガス供給ライン72a、72bと反応性ガス供給ライン74a、74bとを備えている。プロセスガスは、スパッタリングに必要なイオンを供給することができれば、どのようなガス種であってもよいが、Arガスが広く用いられる。反応性ガスは、反応性モードもしくは遷移モードで、スパッタリングを行う場合に供給される。例えば、金属のターゲットの材料表面を酸化させながら成膜を行う場合は、反応性ガスとしてO
2ガスが供給される。反応性スパッタリングを行わない装置では、反応性ガス供給ライン74a、74bを省略することもできる。あるいは、基材4に膜を形成し、後にから膜を反応させる場合、反応が酸化反応の場合は、反応性ガス供給ライン74a、74bの供給口を基材4近傍に配置して酸素ラジカルを含むガスを供給することもできる。それぞれのガスの供給量は、ガス供給部7が備えるバルブ71a、73a、71b、73bを制御して調整される。
【0025】
反応性スパッタリングを行う装置の場合は、ターゲット21a、21bの表面で生じるプラズマの発光輝度を検出してバルブ71a、73a、71b、73bを制御する、プラズマエミッションモニター(PEM)を設けると良い。
【0026】
続いて、材質Aと材質Bの2種類の膜からなる多層膜を成膜する例について説明する。従って、カソード部2aには材質Aのターゲット21a、カソード部2bには材質Bのターゲット21bが設置されているとする。
【0027】
<基材の設置>
装置外であらかじめ基材ホルダ3に基材4がセッティングされ、チャンバ1が備える搬入口から、基材ホルダ3ごと装置内に搬入される。
図4(a)に、基材ホルダ3をチャッキング5に設置する際の、天板側からチャンバ1内を見たときのターゲット21a、チャッキング5、シャッター11、隔壁12の開口の配置を示す。破線で示した円が隔壁12の開口を示し、矢印で示す部分が搬入口Eである。シャッター11は、遮蔽部112が搬入口Eとは反対側に移動し、基材ホルダ3をチャッキング5に設置する動作を妨げない状態(状態1)に制御される。
【0028】
チャッキング5は、チャンバ1の天板に設置されており、基材を所定の位置で支持することが可能な構造を有している。
図1、2に示すチャッキング5は、基材4が設置される基材ホルダ3を支持することができる。このような構造を採用することにより、外部であらかじめ基材ホルダ3に基材4を設置してから、基材ホルダ3ごと搬送口(不図示)からチャンバ1内に搬入し成膜位置に設置することができ、作業性に優れる。ただし、基材4を支持する機構は、図に示したチャッキング5に限定されるものではなく、基材4を直接支持する構成であってもよいし、基材を斜めに支持するものであってもよい。また、
図1(a)では複数の基材4を支持しているが、1枚の基材4を支持する構成であってもよい。
【0029】
チャッキング5は、回転昇降機構10に接続されており、軸P(第1の軸)を中心とした回転動作と、軸Pに沿った方向における昇降動作を行うことができる。チャッキング5に基材ホルダ3を支持させる動作を補助するため、回転昇降機構10にチャッキング5を揺動させる機構を追加しても良い。
【0030】
チャッキング5で支持された基材が上空間での成膜位置となる位置に制御されたときに、板13によって隔壁12の開口をほぼ塞げるように、支持軸14の長さが決められている。そのため、基材が上空間の成膜位置にあるときは、板13によって上空間と下空間とはほぼ分離された状態となる。
【0031】
<上空間での成膜>
基材ホルダ3をチャッキング5に設置し終えると、搬入口Eが閉じられ、排気装置8a、8bによりチャンバ1内が排気される。膜厚ばらつきを低減するために、成膜を開始するまでの適当なタイミングで、チャッキング5の回転が開始される。また、カソード部2aに電力を供給する前に、遮蔽部112をターゲット21a側に移動させ、ターゲット21aから基材4に向かうスパッタ粒子を遮る状態(状態2)となるようにシャッター11が制御される。この時の遮蔽部112の状態を
図4(b)に示す。
【0032】
チャンバ1内が所定の圧力まで減圧されると、ガス供給部7a、7bからプロセスガスと反応性ガスが供給され、圧力が調整される。所定の圧力に到達すると、ターゲット21aを回転させるとともにAC電源から電力が供給されてターゲット21aの表面にプラズマが生起し、プリスパッタリングが行われる。
図4(b)に示すように、シャッター11の遮蔽部112をターゲット21a側に移動さているため、プリスパッタ時のスパッタ粒子は遮蔽部112によって遮られ、基材4に質の低い膜が形成されるのを抑制することができる。
【0033】
所定の時間プリスパッタリングを行うと、プラズマを生成させたままの状態で、遮蔽部112が、スパッタ粒子が基材4に到達するのを邪魔しない
図4(c)の状態(状態3)となるように移動され、材質Aからなる膜の成膜が開始される。遮蔽部112の移動がターゲット21aの表面に生起したプラズマや成膜に影響を与えないようにするため、シャッター11の電位はフローティングとなっている。
【0034】
材質Aからなる膜の膜厚が所定の厚さに到達すると、シャッター11が状態2となるように制御されて成膜が終了し、ターゲット21aへの電力供給も停止される。
【0035】
<下空間での成膜>
次に、チャッキング5を下空間における成膜位置まで降下させる。チャッキング5が所定の位置に固定され、ターゲット21bのプリスパッタリングが完了したタイミングで、シャッター11が状態3に制御され、材質Bからなる膜の成膜が開始される。
【0036】
材質Bの膜の膜厚が所定の厚さに達すると、シャッター11が状態2となるように制御され、ターゲット21aへの電力供給が停止されてターゲット21bによる成膜が終了する。
【0037】
材質Aと材質Bの膜を複数堆積させる場合は、層数に応じてチャッキング5を上空間と下空間との間を移動させ、それぞれの空間で成膜が行われる。
【0038】
必要な層数の成膜が完了すると、反応ガスおよびプロセスガスの供給が停止され、チャンバ1のパージが行われる。チャンバ1内が大気圧に戻るとシャッター11が状態1に制御され、基材ホルダ3ごと基材4が搬入口Eから取り出される。
【0039】
以上説明したように、本発明にかかる成膜装置によれば、チャンバ内を鉛直方向に複数に仕切り、それぞれにターゲットを配置することによって、従来の装置よりもフットプリントの小さな装置で、複数種類の膜からなる積層膜を形成することが可能となる。
【0040】
ただし、本発明の成膜装置は、ターゲット設置部2a、2bに同じ材質のターゲットを設置して用いることもできる。その場合、多層膜を形成することはできないが、一方のターゲットが消耗したり、異常放電などの不具合が生じた場合に、ターゲット交換をすることなく他方のターゲットを用いて成膜を続けることができる。
【0041】
また、ロータリーカソードを設ける装置構成について説明したが、平板カソードを設ける構成であってもかまわない。
【0042】
また、チャンバを鉛直方向に2つに仕切る構成について説明したが、同様の考え方で、2つ以上に仕切る構成も可能である。
【0043】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、上空間と下空間にターゲットを1つずつ設置する構成を説明したが、本実施例ではそれぞれの空間にターゲットを2つ設置する場合について説明する。
【0044】
図5に本実施形態にかかる成膜装置の概略図を示す。
図5では、チャッキング5が上空間の成膜位置にある状態を実線、チャッキング5が下空間の成膜位置にある状態を点線で示している。
図5に示す装置は、半開角(レンズの光軸と、有効径におけるレンズ凹面または凸面の法線とがなす角)の大きなレンズ表面への成膜に好適である。基本的な構成は
図1と同様であるため、異なる点を中心に説明し、
図1と共通する構成やレイアウトなどについては、説明を省略する場合がある。
【0045】
図5の装置は、隔壁12により鉛直方向に仕切られた上空間にカソード部62a、62b、下空間に62c、62dが設けられている。カソード部62a~62dは、不図示の駆動機構に接続されており、それぞれチャッキング5の回転中心である軸P(第1の軸)と空間的にねじれの位置にある軸O
62a~O
62dを中心に回転させることができる。軸O
62a(第2の軸)と軸O
62b(第3の軸)は互いに平行であり、軸O
62c(第4の軸)と軸O
62d(第5の軸)は互いに平行になっている。
図5では、軸O
62aと軸O
62aとが互いに平行になるように設けているが、これに限定されるものではない。
【0046】
また、カソード部62a~62dの配置も、これに限定されるものではない。上空間にチャッキング5をはさんでカソード部62aとカソード部62bを配置し、下空間にチャッキング5をはさんでカソード部62cとカソード部62dを配置する構成であってもよい。
【0047】
第1の実施形態のカソード部と同様に、カソード部62a~62dには、それぞれバッキングチューブ622a~622dが設置される。バッキングチューブ622a~622dには、ターゲット621a~621dがボンディングされている。また、カソード部62a~62dは、それぞれマグネットケースシャフト623a~623dを備えており、マグネットケースシャフトの内部には、マグネット624a~624dが設けられている。バッキングチューブ622a~622dおよびマグネットケースシャフト623a~623dは、それぞれ軸O62a~O62dを中心に独立して回転が可能な構造となっている。
【0048】
カソード部62aと62bには同じ材質のターゲット621a、621bが設置され、カソード部62cと62dには同じ材質のターゲット621c、621dが設置される。異なる種類の成膜材料からなる膜を重ねて多層を形成する際には、ターゲット621aおよび621bと、621cおよび621dとを、互いに異なる材質にするとよい。
【0049】
半開角の大きな基材に対して、面内の膜厚均一性が高い膜を形成するためには、カソード部62a~62dを、所定の条件を満たすように設計および配置することが好ましい。具体的な条件は以下の通りである。チャッキング5と基材ホルダ3が上空間の成膜位置にある状態において、鉛直方向における、軸O
62aと基材ホルダ3の基材支持面との距離Maと、軸O
62bと基材支持面との距離Mbとが、Ma<Mbを満たす。そして、水平方向における、軸O
62aとチャッキング5の回転中心である軸Pとの距離Laと、軸O
62bと軸Pとの距離Lbとが、La>Lbの関係を満たす。また、チャッキング5と基材ホルダ3が下空間の成膜位置(
図5の点線で示す位置)にある状態において、鉛直方向における、軸O
62cと基材ホルダ3の基材支持面との距離Mcと、軸O
62dと基材支持面との距離Mdとが、Mc<Mdの関係を満たす。そして、水平方向における、軸O
62cと軸Pとの距離Lcと、軸O
62dと軸Pとの距離Ldとが、Lc>Ldの関係を満たす。
【0050】
さらに、Laの距離は、チャッキング5の半径と、ターゲット621aの半径との和以上、Lbの距離は、チャッキング5の半径と、ターゲット621bの半径との和以上、であることが好ましい。LcおよびLdも、La、Lbと同様の条件を満足することが好ましい。
【0051】
カソード部62a~62dには、AC電源6が、切替え器16を介して接続されており、プラズマを生起させるための電力をターゲット621aと621bの組、もしくは621cと621dの組のどちらか一方に供給することができる。なお、電力を供給するAC電源6は、切替え器16を介した構成に限定されるものではなく、またAC電源以外を採用することも可能である。例えば、DCパルス電源を採用する場合は、切替え器16を介さず、ターゲット21a、21b、21c、21dのそれぞれに電力を供給できるように、4台の電源を設けると良い。
【0052】
シャッター11の遮蔽部112の弦を、ターゲット621a~621dの軸O62a~O62dに沿った方向の長さのいずれよりも長くしておくとよい。また、遮蔽部112の鉛直方向の長さを、軸O62aと軸O62dとの距離とターゲット621aの半径とターゲット621dの半径との和より長くすると、カソード部と対向するチャンバ1の内壁への着膜を低減することができる。
【0053】
以下、
図5の装置を用いて、半開角の大きなレンズに成膜を行う手順について説明する。カソード部62a、62bには、材質Aのターゲット621a、621bが設置され、カソード部62c、62dには、材質Bのターゲット621c、621dが設置されているとする。
【0054】
<基材の設置>
基材の設置は、第1の実施形態と同様に行うことができる。
【0055】
<上空間での成膜>
成膜開始前に、予め作成しておいたデータベースに基づいて、基材4に均一な膜を形成するのに最適なマグネット624a、624bの位置を算出し、算出結果に基づいてマグネット624a、624bの位置が調整される。マグネット624a、624bの位置の調整も、この時同時に行っておくとよい。
【0056】
基材4の設置が完了すると、チャッキング5の回転が開始され、シャッター11が状態2となるように制御される。搬入口が閉じられ、チャンバ1内が排気される。
【0057】
チャンバ1内が所定の圧力まで減圧されると、プロセスガスと反応性ガスが供給され、所定の圧力に到達すると、カソード部62aおよび62bにAC電源6から交互に電力が供給され、プリスパッタリングが行われる。
【0058】
プリスパッタリングが終了すると、シャッター11が状態3となるように制御され、材質Aからなる膜の成膜が開始される。
【0059】
基材4上に形成された膜が所定の厚さに到達すると、状態2となるようにシャッター11が制御され、ターゲット621a、621bへの電力供給が停止されて成膜が終了する。
【0060】
<下空間での成膜>
チャッキング5を下空間での成膜位置まで降下させる。チャッキング5が所定の位置で固定され、ターゲット621c、621dのプリスパッタリングが終了したタイミングで、シャッター11が状態3となるように制御され、材質Bからなる膜の成膜が開始される。
【0061】
材質Bの膜が所定の厚さに達すると、シャッター11が状態2となるよう制御され、ターゲット621c、621dへの電力供給が停止されて成膜が終了する。
【0062】
材質Aと材質Bの膜を複数堆積させる場合は、層数に応じてチャッキング5を上空間と下空間との間を移動させ、それぞれの空間で成膜を行うとよい。
【0063】
本実施例にかかる装置を用いれば、フットプリントの小さな装置で、半開角の大きな基材に、面内の膜厚が均一な多層膜を形成することが可能となる。
【0064】
(第3の実施形態)
図6は、本実施形態にかかる成膜装置の鉛直方向の断面を示す図である。第2の実施形態にかかる成膜装置がカソード部を2組(4基)備えていたのに対し、本実施形態にかかる成膜装置は、カソード部72a~72hを4組(8基)備えている。カソード部72aおよび72bと、72eおよび72fとの間、または、カソード部72cおよび72dと、72gおよび72hとの間に、隔壁を追加すれば、最大で3種類の膜の成膜が可能となる。また、カソード部72aおよび72bと、72eおよび72fとの間、および、カソード部72cおよび72dと、72gおよび72hとの間に、隔壁を追加すれば、最大で4種類の膜の成膜が可能となる。
【0065】
基本的な構成は
図5と同様であるため、異なる点を中心に説明し、
図5と共通する構成やレイアウトなどについては、説明を省略する場合がある。
【0066】
図6の装置は、隔壁12により鉛直方向に仕切られた上空間にカソード部72a、72b、72e、72fが設けられ、下空間にカソード部72c、72d、72g、72hが設けられている。カソード部72a~72hは、不図示の駆動機構に接続されており、それぞれはチャッキング5の回転中心である軸P(第1の軸)と空間的にねじれの位置にある軸O
72a~O
72hを中心に回転させることができる。軸O
72a(第2の軸)と軸O
72b(第3の軸)、軸O
72c(第4の軸)と軸O
72d(第5の軸)、軸O
72e(第6の軸)と軸O
72f(第7の軸)、軸O
72g(第8の軸)と軸O
72h(第9の軸)は、それぞれ互いに平行に設けられている。
図6では、軸O
72a、軸O
72c、軸O
72e、軸O
72gが互いに平行になっているが、これに限定されるものではない。
【0067】
第一の実施形態のカソード部と同様に、カソード部72a~72hには、それぞれバッキングチューブ722a~722hが設置される。バッキングチューブ722a~722hには、ターゲット721a~721hがそれぞれボンディングされている。また、カソード部72a~72hは、それぞれマグネットケースシャフト723a~723hを備えており、各マグネットケースシャフトの内部には、マグネット724a~724hが設けられている。バッキングチューブ722a~722hおよびマグネットケースシャフト723a~723hは、それぞれ軸O72a~O72hを中心に独立して回転が可能な構造となっている。
【0068】
各カソード部には、第1の実施形態と同様に、切替え器16を介してAC電源6が接続されている。電力の供給は、切替え器16により、ターゲット721aと721bの組、721cと721dの組、721eと721fの組、721gと721hの組のいずれか一つの組に行うことができる。
【0069】
カソード部72aと72bの組、72cと72dの組、72eと72fの組、72gと72hの組には、それぞれ同じ材質のターゲットが設置される。異なる材質の膜を重ねて多層を形成する場合には、カソード設置組ごとに互いに異なる材質のターゲットを設置すると良い。
【0070】
本実施形態の装置も、半開角の大きなレンズへの成膜に適しており、半開角の大きなレンズに、面内の膜厚均一性が高い膜を形成するためには、カソード部72a~72hを、所定の条件を満たすように設計および配置することが好ましい。具体的には、以下の通りである。チャッキング5と基材ホルダ3が上空間の成膜位置にある状態において、鉛直方向における、軸O72aと基材ホルダ3の基材支持面との距離Maと、軸O72bと基材支持面との距離Mbとが、Ma<Mbを満たすように配置される。そして、水平方向における、軸O72aとチャッキング5の回転中心である軸Pとの距離Laと、軸O72bと軸Pとの距離Lbとが、La>Lbの関係を満たすように配置される。さらに、鉛直方向における、軸O72eと基材支持面との距離Me、軸O72fと基材支持面との距離MfとがMe<Mfの関係を満たすように配置される。さらに、水平方向における、軸O72eと軸Pとの距離Le、軸O72fと軸Pとの距離LfとがLe>Lfの関係を満たすように配置される。
【0071】
また、チャッキング5と基材ホルダ3が下空間の成膜位置にある状態において、鉛直方向における、軸O72cと基材ホルダ3の基材支持面との距離Mcと、軸O72dと基材支持面との距離Mdとが、Mc<Mdの関係を満たすように配置される。そして、水平方向における、軸O72cと軸Pとの距離Lcと、軸O72dと軸Pとの距離Ldとが、Lc>Ldの関係を満たすように配置される。さらに、鉛直方向における、軸O72gと基材支持面との距離Mg、軸O72hと基材支持面との距離MhとがMg<Mhの関係を満たすように配置される。さらに、水平方向における、軸O72gと軸Pとの距離Lg、軸O72hと軸Pとの距離LhとがLg>Lhの関係を満たすように配置される。
【0072】
また、水平方向における、軸Pと各カソード部の軸との距離La~Lfは、いずれもチャッキング5の半径と、それぞれ各ターゲットの半径との和以上であることが好ましい。
【0073】
膜厚均一性が高い膜を形成するためには、各マグネット724a~724hの位置は、第2の実施形態と同様の手順で決めればよい。
【0074】
基材4の設置、および上空間と下空間で順に成膜を行う手順は、第2の実施形態と同様であるため、説明は省略し、ここでは上空間に設けられた、ターゲット722aと722bの組と、ターゲット722eと722fの組とを用いて成膜する手順について説明する。ここでは、ターゲット722a、722b、722e、722fは同じ材質であると仮定する。そして、基材に形成される膜の膜厚均一性をより高めるため、チャッキング5に対するカソード部72aと72bの配置と、チャッキング5に対するカソード部72eと72fの配置は、互いに異なっているとする。
【0075】
基材4をチャンバ1内に設置した後、チャンバ1は密閉され、排気装置78a、78bによって排気される。チャンバ1内が所定の圧力まで減圧されると、ガス供給部772a、774aからプロセスガスが導入され、第2の実施形態と同様の手順にて、ターゲット722aと722bの組のプリスパッタリングの後に成膜が行われる。基材4上の膜が所定の厚さに到達すると、遮蔽部112が状態2となるようにシャッター11が制御され、ターゲット721a、721bへの電力供給が停止されて成膜が終了する。
【0076】
ターゲット721a、721bによる成膜が終了すると、ガス供給部772a、774aからのガス導入を停止させる。そして、チャッキング5を、ターゲット21eと21fによる成膜に適した位置に移動させる。このとき、チャッキング5は回転したそのままで移動させる。次に、ガス供給部772a、774aからプロセスガスを再び導入させてから、カソード部2eと2fに電力を供給してプラズマを生起させ、ターゲット721e、721fのプリスパッタリングを行う。プリスパッタリングで、ターゲット721e、721fの表面の洗浄が完了したら、プラズマを生成させたままの状態で、シャッター11が状態2となるように制御し、基材4の表面に所定の膜厚になるまで成膜を行う。
【0077】
このようなスパッタリングをカソード部72aと72bの組と、72eと72fの組で交互に行うことにより、より膜厚が均一な膜を基材4上に形成することができる。
【0078】
膜の形成方法は、これに限定される訳ではなく、4組のカソード部を適宜組み合わせて成膜を行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
1 チャンバ
2a、2b、62a~62d、72a~72h カソード部
3 基材ホルダ
4 基材
5 チャッキング
6 電源
7a、7b、67a、67b、77a、77b ガス供給部
8a、8b 排気装置
9 制御装置
10 回転昇降機構
11 シャッター
12 隔壁
13 板
14 支持体
15 回転機構
16 切替え器
21a、21b、621a~621d、721a~721h ターゲット
24a、24b、624a~624d、724a~724h マグネット