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  • 特許-熱交換器コアのサポート構造 図1
  • 特許-熱交換器コアのサポート構造 図2
  • 特許-熱交換器コアのサポート構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】熱交換器コアのサポート構造
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/013 20060101AFI20240213BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
F28F9/013 F
F28D1/053 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019230531
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021099179
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】信川 英一
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122545(WO,A1)
【文献】特表2005-524043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00-9/26
F28D 1/00-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平チューブ(1)とコルゲートフィン(2)とが交互に配置され、各偏平チューブ(1)の両端部が一対のヘッダープレート(5)に挿通された熱交換器のコア(3)と、コア(3)の両側に配置された一対のサポート材(6)とを具備し、それら各部品が一体にろう付された熱交換器コアのサポート構造において、
前記サポート材(6)は、長手方向の端部の幅が縮小して括れたノッチ部(7)を有し、ノッチ部(7)より先端側が前記ヘッダープレート(5)の長手方向の端部にろう付されたろう付部(10)を有し、
前記ノッチ部(7)に対して、前記ろう付部(10)の反対側で且つ、前記ノッチ部(7)に近接して、補強リブ(8)が前記サポート材(6)に形成された熱交換器コアのサポート構造。
【請求項2】
請求項に記載の熱交換器コアのサポート構造において、
前記サポート材(6)は、長手方向の両端部がコア(3)の外側に段付に折れ曲がる段付部(9)を有し、その段付部(9)の根元に、サポート材(6)の長手方向へ筋交状の前記補強リブ(8)が一体に形成された熱交換器コアのサポート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージエアクーラやエンジン冷却水冷却用のラジエータとして最適な熱交換器のコアのサポート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に熱交換器のサイドメンバーが提案されている。
これは、コアの両側に配置したサイドメンバーを溝形に形成すると共に、その溝底を長手方向の中間部において長手方向に分断し、その分断位置でサイドメンバーの両側を内側にV字状に曲折して脆弱部を形成したものである。そして、熱交換器の使用時にサイドメンバーに生じる熱応力によって脆弱部が破断し、それによるコアの拘束が緩和されることにより、それ以後、コアに大きな熱応力が加わることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6328098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱交換器コアのサポート構造においては、そのサポート材(特許文献1に記載のサイドメンバーと同義。)の製造時、曲げ加工によって脆弱部を成型する必要があり、加工費用が増加していた。また、サポート材の組み付け作業中に、サポート材が脆弱部から折れ曲がることがあり、サポート材の取扱いに難があった。
そこで、本発明は、熱交換器の使用開始後には熱応力によって早期に破断するサポート材であって、加工費用が低額で、且つ、熱交換器への組み付けが作業性の良いサポート材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、偏平チューブ1とコルゲートフィン2とが交互に配置され、各偏平チューブ1の両端部が一対のヘッダープレート5に挿通された熱交換器のコア3と、コア3の両側に配置された一対のサポート材6とを具備し、それら各部品が一体にろう付された熱交換器コアのサポート構造において、
前記サポート材6は、長手方向の端部の幅が縮小して括れたノッチ部7を有し、ノッチ部7より先端側が前記ヘッダープレート5の長手方向の端部にろう付されたろう付部10を有する熱交換器コアのサポート構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の熱交換器コアのサポート構造において、
前記ノッチ部7に対して、前記ろう付部10の反対側で且つ、ノッチ部7に近接して、補強リブ8がサポート材6に形成された熱交換器コアのサポート構造である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の熱交換器コアのサポート構造において、
前記サポート材6は、長手方向の両端部がコア3の外側に段付に折れ曲がる段付部9を有し、その段付部9の根元に、サポート材6の長手方向へ筋交状の前記補強リブ8が一体に形成された熱交換器コアのサポート構造である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、サポート材6の長手方向の端部の幅が縮小して括れたノッチ部7を有し、その先端側がヘッダープレート5の長手方向の端部にろう付されたろう付部10を有するものである。
この発明によれば、偏平チューブ1に高温流体が流通したとき、サポート材6に生じる熱応力により、括れて脆弱であるノッチ部7が早期に破断することによって、熱交換器の使用時にコアに生じる熱応力が緩和される。
ここで、ノッチ部7の形成には追加の曲げ加工等を要しないので、追加の加工費用は不要である。
また、ヘッダープレート5とのろう付部10の近傍、すなわちサポート材6の端部の近傍にノッチ部7を設けたことにより、組み付け作業時等に自重等によってノッチ部7に作用する荷重が低減され、サポート材6がノッチ部7から折れ曲がることが防止されるので、サポート材6の熱交換器コアへの組み付けの作業性が向上する。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、上記構成において、ノッチ部7に対して、ろう付部10の反対側で且つ、ノッチ部7に近接して、補強リブ8がサポート材6に形成されたものである。
この補強リブ8の剛性により、ノッチ部7近傍の高剛性部分が増え、よりいっそうノッチ部7への応力集中が強まるので、熱交換器の使用開始後にはサポート材6はより早期に破断する。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、上記構成において、サポート材6の段付部9の根元に補強リブ8が一体に形成されたものである。
この補強リブ8の剛性により、ノッチ部7の破断を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の熱交換器コアのサポート構造であって、(A)は要部正面図、(B)は同側面図。
図2】同サポート構造の斜視図。
図3】ノッチ部7の破断部11の位置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
下記実施形態は、本願の発明を実施するための一例である。したがって、本願の発明は下記実施形態に限定されるものではない。
この例の熱交換器は、インタークーラやエンジン冷却水冷却用のラジエータとして有効である。
この熱交換器は、図1及び図2に示す如く、偏平チューブ1とコルゲートフィン2とが交互に配置され、各偏平チューブ1の両端部が一対のヘッダープレート5に挿通されてコア3を形成する。そしてコア3の両側に一対のサポート材6が配置され、それら各部品が一体にろう付固定されたものである。
【0013】
なお、図1及び図2では上部側のヘッダーの一方の隅部のみを記載したが、その下部側に上部と同様のヘッダーが配置されると共に、左側に同様のコア、ヘッダーが形成されている。
図1及び図2において、ヘッダープレート5には偏平チューブ1が挿通するチューブ挿通孔が並列され、そこに各偏平チューブ1の端部が挿通される。そして、各偏平チューブ1間にはコルゲートフィン2が配置されてコア3を構成する。コア3の両側には、サポート材6が配置されている。
【0014】
この実施形態の熱交換器コアのサポート構造のサポート材6は、図1に示す如く、サポート材6の長手方向の中間部に位置する本体部と、サポート材6の長手方向の両端部に位置するノッチ部7と、ろう付部10を有する。
ろう付部10は、サポート材6の長手方向の両方の先端部に位置し、ヘッダープレート5の長手方向の端部に位置する周壁の外面にろう付固定されている。
ノッチ部7は、サポート材6の本体部とろう付部10の間に位置し、ノッチ部7の幅Nは本体部の幅より縮小して括れている。そのノッチ部7より先端側に、ろう付部10が形成されている。ノッチ部7を括れた形状にすることにより、ノッチ部7に熱応力を集中させることができ、熱交換器の使用開始後に、早期にノッチ部7を破断させることができる。ノッチ部7の幅Nは、一例として、サポート材6の本体部の幅の1/4程度または、それ以下である。
ろう付部10の幅Wは、ノッチ部7の幅Nよりも大きく形成しておくと良い。一例として、図1図2に示すように、ろう付部10の下端に位置するろう付下縁10aから徐々に括れるようにノッチ部7を形成することができる。ろう付部10の幅を大きく形成しておくと、ろう付部10とヘッダープレート5との接触面積が大きくなるため、それらの間のろう付が強固になる。その結果、ノッチ部7へ熱応力を集中させることができる。
【0015】
また、サポート材6には、図1図2に記載のように、ノッチ部7に対して、ろう付部10の反対側で且つ、ノッチ部7に近接して、補強リブ8を形成し、ノッチ部7近傍の高剛性部分を増やすことが好ましい。
さらに、サポート材6の本体部の長手方向の両端部にコア3の外側に段付に折れ曲がる段付部9を形成しておき、その段付部9の根元に、筋交状の補強リブ8を一体に形成してもよい。
【0016】
図1(A)(B)、図2に示すように、ヘッダープレート5の周壁の端縁に爪部を設けることができ、その爪部をろう付部10側に折り返して、カシメることにより、ろう付部10をヘッダープレート5の周壁の外面に仮組みすることができる。
サポート材6の本体部には側壁を設け、図2に示すように、その全体を溝形に形成することができる。この例では、ノッチ部7とろう付部10には、側壁は設けられていない。
【0017】
組立てられた各部品は、一例として、高温の炉内で一体にろう付固定される。
次いで、そのヘッダープレート5の図示しない環状溝にタンク本体4の開口縁に形成された図示しない小フランジ部が、シール材を介して嵌着し、ヘッダープレート5の縁部の爪部がカシメられて熱交換器を完成する。
【0018】
〔作用〕
熱交換器の使用において、各偏平チューブ1内に高温の流体を流通させると、各偏平チューブ1は熱膨張する。この熱膨張をサポート材6によって拘束すると、偏平チューブ1に熱応力が生じる。
本発明においては、図3に示す如く、サポート材6がそれ自身に作用した熱応力によって使用開始初期に破断し、破断部11が形成されることにより、コア、特に偏平チューブ1の拘束が弱まり、それらに生じる熱応力が緩和される。
【符号の説明】
【0019】
1 偏平チューブ
2 コルゲートフィン
3 コア
4 タンク本体
5 ヘッダープレート
6 サポート材
7 ノッチ部
8 補強リブ
9 段付部
10 ろう付部
10a ろう付下縁
11 破断部
N 幅
W 幅
図1
図2
図3