(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】電子線硬化型組成物を使用する塗装材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/06 20060101AFI20240213BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240213BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20240213BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240213BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B05D3/06 101A
B05D7/24 302P
B05D7/24 301T
C09D4/00
C09D4/02
C09D133/06
(21)【出願番号】P 2019232926
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 栄一
(72)【発明者】
【氏名】大房 一樹
(72)【発明者】
【氏名】望月 克信
(72)【発明者】
【氏名】神戸 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】小池 信明
(72)【発明者】
【氏名】安保 啓司
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 淳男
(72)【発明者】
【氏名】光崎 守
(72)【発明者】
【氏名】四方 周二
(72)【発明者】
【氏名】森 寛爾
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-010246(JP,A)
【文献】特公昭46-003672(JP,B1)
【文献】特開昭60-040170(JP,A)
【文献】特開2014-196410(JP,A)
【文献】特開2015-025123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、塗料を塗工する方法であって、
前記塗料は、エチレン性不飽和基含有化合物、及び揮発成分を含む電子線硬化型組成物から成り、
前記エチレン性不飽和基含有化合物は、(i)芳香環と1個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物と、(ii)(メタ)アクリロイル基を有するポリマーとを含み、
前記(i)化合物は、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール誘導体のアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる少なくとも1種の芳香族(メタ)アクリレートであり、
前記(ii)ポリマーは、官能基含有ポリマーと当該官能基と反応性を有する官能基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物との反応物であって、前記官能基含有ポリマーの官能基は、エポキシ基、酸性基、水酸基、及び/又はイソシアネート基であり、
前記電子線硬化型組成物は、組成物中に、前記揮発成分を1質量%~90質量%含有し、前記揮発成分は、水を含み、
前記電子線硬化型組成物は、せん断速度0.1/sで測定した粘度が1Pa・s~300Pa・sであり、せん断速度1,000/sで測定した粘度が0.01Pa・s~0.3Pa・sであり、
下記工程(1)~工程(3)
:
工程(1):
基材に、
前記塗料を塗工し、電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値が1Pa・s~300Pa・sとなる塗膜を形成する工程
、
工程(2):
前記工程(1)で得られる塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成する工程
、及び
工程(3):
前記工程(2)で得られる乾燥塗膜を有する基材に、不活性ガス雰囲気下で電子線を照射し、硬化膜を形成する工
程
を含
む方法。
【請求項2】
前記工程(3)の後に得られる前記硬化膜の破断伸びは、5%以上である、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記電子線硬化型組成物は、水分散液であり、
前記工程(1)は、
前記基材に、
前記電子線硬化型組成物
から成る塗料をスプレー塗工し、塗膜を形成する工程であり、
前記工程(2)は、前記塗膜の前記電子線硬化型組成物に含まれる
前記揮発成分を蒸発させて、乾燥塗膜を形成する工程である、
請求項1
又は2に記載
の方法。
【請求項4】
前記基材に、前記塗料を塗工して、2層以上の硬化膜を形成す
る方法であって、
前記硬化膜を形成するための
前記電子線硬化型組成物を2種以上使用し、
前記工程(1)及び
前記工程(2)を2回以上実施した後、
前記工程(3)を実施する
、
請求項1~
3のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項5】
前記基材に、前記塗料を塗工して、2層以上の硬化膜を形成す
る方法であって、
前記硬化膜を形成するための
前記電子線硬化型組成物を2種以上使用し、
前記工程(1)である、
前記基材に、第1の硬化膜を形成する
前記電子線硬化型組成物
から成る塗料を塗工し、塗膜を形成する工程を実施し、
次いで、前記工程(2)である、
前記塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成する工程を実施し、
次いで、前記工程(1)である、
前記工程(2)得られる
前記乾燥塗膜上に、第2の硬化膜を形成する
前記電子線硬化型組成物
から成る塗料を塗工し、電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値が1Pa・s~300Pa・sとなる塗膜を形成する工程を実施し、
次いで、前記工程(2)である、
前記塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成し、
必要に応じて、さらに前記工程(1)及び
前記(2)を繰り返して、
前記基材に、2種以上の
前記塗膜又は乾燥塗膜を形成させ、
次いで、前記工程(3)である、
少なくとも2種以上の
前記塗膜又は乾燥塗膜を有する基材に、前記電子線を照射し、硬化膜を形成する
、
請求項
4に記載
の方法。
【請求項6】
前
記不活性ガスは、窒素ガスが主成分であり、酸素濃度が0.1容量%以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項7】
前
記電子線は、加速電圧が80kV~300kVであり、吸収線量が10kGy~1,000kGyである、請求項1~
6のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項8】
前
記基材は、金属又はプラスチックである、請求項1~
7のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項9】
前
記基材は、プラスチックであり、且つ、当該基材の表面自由エネルギーが38dyn/cm以上ある、請求項1~
7のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項10】
前
記基材は、プラスチックであり、且つ、当該基材が表面処理されたものである、請求項
1~7のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項11】
前
記基材は、凹凸部、湾曲部、及び/又は、屈曲部を有する、請求項1~
10のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載
の方法により得られ、
前記基材に形成された硬化膜の膜厚は5μm~500μmである、
自動車用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子線硬化型組成物を使用する塗装材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車向け塗料は、現状、中塗り、ベース、及びクリアが用いられており、各工程において焼付工程が必須である。一方、当該焼付工程で発生するCO2及び加熱によるエネルギーコストが問題となっている。又、自動車の構成部材は複雑な形状をしており、塗料の塗工の際には、スプレー塗工することが好ましい。
例えば、スプレー塗工が可能な特定の粘度を有する塗料が知られているが(特許文献1)、当該塗料は焼付工程が必要であり、焼付工程におけるCO2削減やエネルギーコスト低減には大幅な工程改良が必要となっている。
一方、当該問題を解決し得る、焼付工程が不要であるか、又は焼付温度を低減でき、しかも短時間で硬化できる自動車向け塗料として、活性エネルギー線硬化型塗料組成物が検討されている。
しかし、従来の活性エネルギー線硬化型塗料は、自動車の複雑な形状での硬化は難しく、十分に実現していない状況である。又、活性エネルギー線硬化型塗料をスプレー塗工するためには低粘度化が要求されるが、その様な塗料はスプレー塗工後に垂れが発生するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、スプレー塗工可能であり、塗工後に塗液が垂れない、つまりレオロジーコントロールが可能な塗装材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、追加で、電子線により短時間で硬化することが可能な塗装材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、追加で、複雑な形状の被照射物(例えば自動車のボディ)に対し、適切に硬化することが可能な塗装材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、追加で、塗膜が2層以上の層を有する場合でも、同時に硬化することが可能な塗装材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、特定の製造工程を有する塗装材料の製造方法が上記目的を達成できることを見出した。
即ち、本発明は、下記の塗装材料の製造方法である。
【0006】
項1.
下記工程(1)及び工程(3)、又は、下記工程(1)~工程(3):
工程(1):
基材に、エチレン性不飽和基含有化合物を含む電子線硬化型組成物を塗工し、電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値が1Pa・s~300Pa・sとなる塗膜を形成する工程、
工程(2):
前記電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、前記工程(1)で得られる塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成する工程、及び、
工程(3):
前記工程(1)で得られる塗膜、又は、前記工程(2)で得られる乾燥塗膜を有する基材に、不活性ガス雰囲気下で電子線を照射し、硬化膜を形成する工程、
を含む塗装材料の製造方法。
【0007】
項2.
前記工程(3)の後に得られる前記硬化膜の破断伸びは、5%以上である、前記項1に記載の塗装材料の製造方法。
【0008】
項3.
前記工程(1)の前記電子線硬化型組成物は、せん断速度0.1/sで測定した粘度が1Pa・s~300Pa・sである、前記項1又は2に記載の塗装材料の製造方法。
【0009】
項4.
前記工程(1)の前記電子線硬化型組成物は、せん断速度0.1/sで測定した粘度が1Pa・s~300Pa・sであり、せん断速度1,000/sで測定した粘度が0.01Pa・s~0.3Pa・sである、前記項1~3のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0010】
項5.
前記工程(1)は、前記電子線硬化型組成物として水分散液を使用し、前記基材に、当該電子線硬化型組成物をスプレー塗工し、塗膜を形成する工程であり、
前記工程(2)は、前記塗膜の前記電子線硬化型組成物に含まれる揮発成分を蒸発させて、乾燥塗膜を形成する工程である、
前記項1~3のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0011】
項6.
2層以上の硬化膜を形成する塗装材料の製造方法であって、
硬化膜を形成するためのエチレン性不飽和基含有化合物を含む電子線硬化型組成物を2種以上使用し、
前記工程(1)及び工程(2)を2回以上実施した後、工程(3)を実施する
前記項1~5のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0012】
項7.
2層以上の硬化膜を形成する塗装材料の製造方法であって、
硬化膜を形成するためのエチレン性不飽和基含有化合物を含む電子線硬化型組成物を2種以上使用し、
前記工程(1)である、
前記基材に、第1の硬化膜を形成する電子線硬化型組成物を塗工し、塗膜を形成する工程を実施し、
次いで、前記工程(2)である、
前記第1の硬化膜を形成する電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、前記塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成する工程を実施し、
次いで、前記工程(1)である、
前記工程(1)で得られる塗膜、又は前記工程(2)得られる乾燥塗膜上に、第2の硬化膜を形成する電子線硬化型組成物を塗工し、電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値が1Pa・s~300Pa・sとなる塗膜を形成する工程を実施し、
次いで、前記工程(2)である、
前記第2の硬化膜を形成する電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、前記塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成し、
必要に応じて、さらに前記工程(1)及び(2)を繰り返して、
前記基材に、2種以上の電子線硬化型組成物の塗膜又は乾燥塗膜を形成させ、
次いで、前記工程(3)である、
前記で得られる、少なくとも2種以上の塗膜又は乾燥塗膜を有する基材に、前記電子線を照射し、硬化膜を形成する工程である、
前記項6に記載の塗装材料の製造方法。
【0013】
項8.
前記工程(3)の前記不活性ガスは、窒素ガスが主成分であり、酸素濃度が0.1容量%以下である、前記項1~7のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0014】
項9.
前記工程(3)の前記電子線は、加速電圧が80kV~300kVであり、吸収線量が10kGy~1,000kGyである、前記項1~8のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0015】
項10.
前記工程(1)の前記基材は、金属又はプラスチックである、前記項1~9のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0016】
項11.
前記工程(1)の前記基材は、プラスチックであり、且つ、当該基材の表面自由エネルギーが38dyn/cm以上ある、前記項1~10のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0017】
項12.
前記工程(1)の前記基材は、プラスチックであり、且つ、当該基材が表面処理されたものである、前記項11記載の塗装材料の製造方法。
【0018】
項13.
前記工程(1)の前記基材は、凹凸部、湾曲部、及び/又は、屈曲部を有する、前記項1~12のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0019】
項14.
前記工程(1)の前記電子線硬化型組成物は、エチレン性不飽和基含有化合物として、(i)芳香環と1個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物と、(ii)(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー又はポリマーとを含む、前記項1~13のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法。
【0020】
項15.
前記項1~14のいずれか1項に記載の塗装材料の製造方法により得られ、硬化膜の膜厚は5μm~500μmであり、自動車用基材である、塗装材料。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、スプレー塗工可能であり、塗工後に塗液が垂れない、つまりレオロジーコントロールが可能な塗装材料を製造することができる。
本発明により、好ましくは、電子線により短時間で硬化することが可能な塗装材料を製造することができる。
本発明により、好ましくは、複雑な形状の被照射物(例えば自動車のボディ)に対し、適切に硬化することが可能な塗装材料を製造することができる。
本発明により、好ましくは、塗膜が2層以上の層を有する場合でも、同時に硬化することが可能な塗装材料を製造することができる。
本発明により、好ましくは、電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、例えば、水分散型組成物を用いる場合でも、良好に硬化することが可能な塗装材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】電場ピックアップ法の原理を概念的に示す概念図である。
【
図2】本発明の塗装材料の製造方法の一態様(実施例14)を示す図である。実施例14では、乾燥塗膜を有する基材の配置を変え、夫々、電子線照射窓面に対して、0°(1)、45°(2)及び75°(3)の角度で、乾燥塗膜を有する基材を配置した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の塗装材料の製造方法、及び自動車用基材である塗装材料を詳細に説明する。
本明細書では、「塗膜」は、電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれない場合、基材に当該電子線硬化型組成物を塗工して形成する塗膜を意味する。
本明細書では、「乾燥塗膜」は、電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、基材に当該電子線硬化型組成物を塗工して塗膜を形成し、更に、当該塗膜を乾燥し、揮発成分を蒸発させて形成する塗膜を意味する。
本明細書では、「硬化膜」は、前記塗膜又は乾燥塗膜に電子線を照射し、組成物中のエチレン性不飽和基含有化合物が硬化して形成する塗膜を意味する。
又、本明細書においては、「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を「(メタ)アクリロイル基」と、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を「(メタ)アクリレート」と、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を「(メタ)アクリル酸」と表す。
又、本明細書では、「電子線硬化型組成物」を単に「組成物」ということもある。
【0024】
[1]塗装材料の製造方法
本発明の塗装材料の製造方法は、下記工程(1)及び工程(3)、又は、下記工程(1)~工程(3)を含む塗装材料の製造方法に関する。
工程(1):
基材に、エチレン性不飽和基含有化合物を含む電子線硬化型組成物を塗工し、電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値が1Pa・s~300Pa・sとなる塗膜を形成する工程。
工程(2):
前記電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、前記工程1で得られる塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成する工程。
工程(3):
前記工程1で得られる塗膜、又は、前記工程2で得られる乾燥塗膜を有する基材に、不活性ガス雰囲気下で電子線を照射し、硬化膜を形成する工程。
以下、工程(1)~工程(3)について説明する。
【0025】
(1)工程(1)
本発明の塗装材料の製造方法では、工程(1)は、基材に、エチレン性不飽和基含有化合物を含む電子線硬化型組成物を塗工し、電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値が1Pa・s~300Pa・sとなる塗膜を形成する工程である。
以下、「エチレン性不飽和基含有化合物」を、「不飽和化合物」とも記す。
【0026】
(1-1)基材
工程(1)で、電子線硬化型組成物を塗工する基材は、金属又はプラスチックであることが好ましい。
【0027】
基材として、金属を好ましく用いることができる。
金属としては、鋼板、アルミ及びクロム等の金属、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物等が挙げられる。
前記基材は、金属として、好ましくは、防錆処理等の表面処理された金属、表面に塗料により塗装された金属等を使用することができる。前記基材は、金属として、好ましくは、防錆処理等の表面処理された表面に電着塗料により塗装されたものを使用することができる。
【0028】
基材として、プラスチックを好ましく用いることができる。
プラスチックの具体例としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0029】
本発明で使用する基材としては、プラスチックであり、且つ、当該基材の表面自由エネルギーが38dyn/cm以上あることが好ましい。
【0030】
前記基材は、硬化膜との密着性を向上させることができる点で、プラスチックであり、且つ、当該基材が表面処理されたものであることが好ましい。前記基材に対する表面処理として、物理的な処理方法が好ましい。
プラスチック基材に対する表面処理方法として、例えば、サンドブラスト等を用い粗面化処理する方法、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、及びプライマー処理等が挙げられ、火炎処理、プラズマ処理等を施すことがより好ましい。
プラスチック基材の表面を粗面化することにより、プラスチック基材の樹脂によるアンカー効果が発揮され、シート間の密着性を向上させることができる。
コロナ処理(コロナ放電処理)は、コロナ処理機から発生する高周波によって、空気をイオン化し電荷のある粒子を発生させ、このような粒子が処理対象物の表面に衝突することによってその表面に酸化が起き、表面を改質することができる。コロナ処理は、例えば、空気又は酸素雰囲気下、常圧でコロナ放電照射を行うことによって行うことができる。プラスチック基材の表面に、コロナ処理を行うことにより、カルボニル、ヒドロキシル、過酸化物、アルデヒド、エーテル、カルボン酸等の官能基を生成することができる。これら官能基により、プラスチック基材間の接着強度が向上する。
プラズマ放電処理は、大気圧下等で発生させたプラズマを処理対象物の表面に接触させることで表面を活性化するものである。プラズマを発生させるためのガスとしては、ヘリウム、アルゴン等の希ガス、窒素ガス、空気などが挙げられる。大気圧下でプラズマ放電処理する方法としては、少なくとも一方を誘電体で被覆した平行平板電極間に高周波数の高電圧を印加することで発生させたプラズマ中に処理対象物を保持するかプラズマ中を移動させる方法、少なくとも一方の電極表面を誘電体で被覆した一対の電極を対向させ放電空間を形成し、そこに高周波数の高電圧を印加してプラズマガスを圧送することで発生したプラズマを放電空間外に噴出させ、処理対象物に接触させる方法などが挙げられる。プラスチック基材の表面を、アルゴン、ヘリウム、窒素、酸素等の公知のガスを用いて、プラズマ処理を行うことにより、その表面を改質することができる。これにより、プラスチック基材の表面に、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基等の官能基を生成することができる。プラスチック基材の表面エネルギーを高めることができ、接着剤に対する濡れ性を高めて、接着性を向上させることができる。
火炎処理は、例えば、都市ガスやプロパンガス等の酸化炎(温度1,000~2,700℃)で処理することで行うことができ、数秒間あぶると表面が酸化されて極性基を導入することができる。プラスチック基材の表面を、火炎処理を行うことにより、短時間でプラスチック基材の表面に、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基等の官能基を生成することができる。プラスチック基材の表面エネルギーを高めることができ、接着剤に対する濡れ性を高めて、接着性を向上させることができる。
プラスチック基材の表面に、プライマー処理を行うことにより、プライマーの活性種が、プラスチック基材の表面に残存し、かかる活性種が有する多官能性反応基によって、接着剤等との接着性を向上させることができる。
【0031】
前記基材は、形状として、種々の形状を有するものを使用することができる。
前記基材は、平面を有する基材の他、凹凸部、湾曲部、及び/又は、屈曲部を有する基材が好ましい。前記凹凸部、湾曲部、及び/又は、屈曲部を有する基材としては、好ましくは、湾曲部又は屈曲部の角度が、照射窓面に対して45°以上傾斜した部分を有するものを好適に用いることができる。
【0032】
(1-2)電子線硬化型組成物
工程(1)で、基材に塗工する電子線硬化型組成物は、不飽和化合物(エチレン性不飽和基含有化合物)を含む。
以下、不飽和化合物について説明する。
【0033】
(1-2-1)不飽和化合物
不飽和化合物は、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物である。
不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びビニルエーテル基が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、具体的には、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
ビニル基を有する化合物としては、具体的には、スチレン及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド並びにN-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
前記エチレン性不飽和基として、(メタ)アクリロイル基が好ましく、具体的には、(メタ)アクリレートが挙げられる。以下、(メタ)アクリレートについて説明する。
【0034】
(メタ)アクリレート
(メタ)アクリレートとしては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕及び分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕が挙げられる。
【0035】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のヘテロ原子含有(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール誘導体のアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートの芳香族(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;
N-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド及びN-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のマレイミド(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のポリカプロラクトン変性物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトン変性物;
3-トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3-トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3-トリイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3-メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3-メチルジエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3-メチルジイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3-ジメチルメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3-ジメチルエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3-ジメチルイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、8-トリメトキシシリルオクチル(メタ)アクリレート等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート類;並びに
オキサゾリジノンエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-ノナンジオールジアクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのアルキレンオキサイド〔エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等〕付加物のポリ(メタ)アクリレート;
これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのカプロラクトン変性物のポリ(メタ)アクリレート;
エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限らない。
【0037】
多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマー又はポリマーを使用することができる。
オリゴマーとしては、具体的にはウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
オリゴマー又はポリマーの分子量は、500~50,000を有する化合物が好ましい。「分子量」は、質量分析で測定可能な絶対分子量を意味し、高分子量体の分子量は、重量平均分子量(以下、「Mw」という)を意味する。「Mw」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算のMwを意味する。
【0038】
ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有し2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物、並びに有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物(ウレタンアダクト)が挙げられる。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレートの原料であるポリオールとしては、ジオールが好ましく、低分子量ジオール、ポリエステル骨格を有するジオール、ポリエーテル骨格を有するジオール及びポリカーボネート骨格を有するジオールが好ましく用いられる。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエステル骨格を有するジオールとしては、前記低分子量ジオール又はポリカプロラクトンジオール等のジオール成分と、ジカルボン酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。
ジカルボン酸又はその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
ポリエーテル骨格を有するジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリカーボネート骨格を有するジオールとしては、前記低分子量ジオール及びビスフェノールA等のビスフェノールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールと、エチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
【0040】
有機ポリイソシアネートとしては、脂環式基を有しない脂肪族ポリイソシアネート(脂肪族ポリイソシアネート)、脂環式基を有する脂肪族ポリイソシアネート(脂環式ポリイソシアネート)、複素環を有するポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、水素化トリレンジイソシアネート、水素化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
複素環を有するポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体及びイソホロンジイソシアネート3量体等を挙げることができる。
芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート及び1,5-ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
本発明において好適に使用される有機ポリイソシアネートは、硬化物の物理特性に優れ黄変が少ないという理由で、脂肪族ポリイソシアネート及び複素環を有するポリイソシアネートである。
【0041】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有モノ(メタ)アクリレートが好ましい。水酸基含有モノ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
ウレタンアダクト
ウレタンアダクトは、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物である。ウレタンアダクトを使用することにより、架橋密度が高くなり、耐熱性が向上し、強靭性も向上するため好ましい。
ウレタンアダクトにおいて、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、前記した化合物が挙げられる。
【0043】
ウレタンアダクトにおいては、水酸基含有(メタ)アクリレートとして、水酸基及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「水酸基含有多官能(メタ)アクリレート」という)を使用することもできる。
ウレタンアダクトとしては、有機ポリイソシアネートと水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの反応物を使用すると、架橋密度が高くなり、耐熱性、耐摩耗性及び耐擦傷性にも優れるものとなるため好ましい。
水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとしては、種々の化合物が使用でき、具体的には、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
ウレタンアダクトの好ましい化合物としては、3個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートと水酸基含有モノ(メタ)アクリレートの反応物が挙げられる。 ウレタンアダクトにおける水酸基含有モノ(メタ)アクリレートとしては、前記した化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0045】
ポリエステル(メタ)アクリレート
ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との反応物である。
ポリエステルポリオールは、多価アルコールと多塩基酸又はその無水物との反応によって得られる。
多価アルコールとしては、前記した低分子量ジオールの他、トリシクロデカンジメチロール及びビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂環式基を有するジオール、並びにトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
多塩基酸又はその無水物としては、前記と同様の化合物等が挙げられる。
【0046】
エポキシ(メタ)アクリレート
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応物である。
エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、及びポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリロイル基を有するポリマー
(メタ)アクリロイル基を有するポリマーとしては、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する種々のポリマーを挙げることができる。
【0048】
(メタ)アクリロイル基を有するポリマーとしては、官能基含有ポリマーと当該官能基と反応性を有する官能基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物〔以下、「反応性(メタ)アクリロイル基含有化合物」という〕の反応物等が挙げられる。
官能基含有ポリマーの官能基としては、エポキシ基、酸性基、水酸基、及びイソシアネート基等が挙げられる。
【0049】
この場合、官能基含有ポリマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートと官能基含有単量体の共重合体が好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート及びn-テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
官能基含有単量体としては、エポキシ基含有単量体、酸性基含有単量体、水酸基含有単量体及びイソシアネート基含有単量体が挙げられる。
エポキシ基含有単量体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸性基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸及びスチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体、並びにリン酸基含有単量体等が挙げられる。
水酸基含有単量体の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基含有単量体の例としては、(メタ)アクリロキシエチルイソシアネート等の(メタ)アクリロキシアルキルイソシアネート等が挙げられる。
官能基含有ポリマーとしては、前記以外にもさらにその他単量体を共重合したものであっても良い。
その他単量体の具体例としては、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;ビニルエステル;スチレン及びα-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;酸無水物基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体;アミノ基含有単量体;イミド基含有単量体;(メタ)アクリロイルモルホリン;並びにビニルエーテル等が挙げられる。
【0050】
官能基含有ポリマーとして、エポキシ基又は水酸基を有するポリマーを使用する場合、反応性(メタ)アクリロイル基含有化合物として(メタ)アクリル酸や酸性基含有(メタ)アクリレートと反応させて(メタ)アクリロイル基を有するポリマーを製造する。
官能基含有ポリマーとして、酸性基又はイソシアネート基を有するポリマーを使用する場合、反応性(メタ)アクリロイル基含有化合物として水酸基含有(メタ)アクリレートと反応させて(メタ)アクリロイル基を有するポリマーを製造する。
【0051】
これらの、単官能または多官能(メタ)アクリレートは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
電子線硬化型組成物は、不飽和化合物として、(i)芳香環と1個の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物〔以下、「化合物(i)」という〕と、(ii)(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー又はポリマー〔以下、「化合物(ii)」という〕とを含む(併用する)ことが好ましい。
化合物(i)としては、前記単官能(メタ)アクリレートで例示した、芳香族(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
化合物(ii)において、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー又はポリマーとしては、前記で例示した化合物を挙げることができる。
【0053】
不飽和化合物として、化合物(i)と化合物(ii)とを含む場合、当該化合物の含有割合は、硬化膜の伸び及び密着性に優れる点から、好ましくは化合物(i)と化合物(ii)の合計量100質量%中に、化合物(i)1~50質量%及び化合物(ii)99~50質量%であり、より好ましくは、化合物(i)1~30質量%及び化合物(ii)99~70質量%であり、特に好ましくは化合物(i)1~20質量%及び化合物(ii)99~80質量%である。
【0054】
(1-2-2)その他の成分
電子線硬化型組成物は、塗装材料(塗料)で、一般に配合されるその他の成分を配合することができる。
その他の成分として、水及び有機溶剤等の揮発成分、顔料及び染料等の着色剤、分散剤、レオロジーコントロール剤、並びに紫外線吸収剤等を好ましく配合することができる。
以下、揮発成分、着色剤、分散剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤、及び表面調整剤について説明する。
以下の「組成物中の全樹脂固形分」とは、不飽和化合物を意味し、その他の成分としてポリマーを含む場合は、不飽和化合物及びポリマーの合計を意味する。
【0055】
揮発成分
本発明で使用する組成物としては、不飽和化合物のみを含む非水系組成物又は無溶剤系組成物を使用することができるが、粘度を低減させ、塗工性等を改良する目的で揮発成分を含むことができる。
【0056】
揮発成分としては、水及び有機溶剤を挙げることができる。
有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテル化合物;ダイアセトンアルコール等のアセトンアルコール;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン化合物;ジブチルエーテル等のエーテル化合物;並びにN-メチルピロリドン等が挙げられる。
本発明で使用する組成物としては、スプレー塗工により適したものとなるため、揮発成分として水を含むものが好ましい。
【0057】
組成物が揮発成分を含む場合、揮発成分の含有割合としては、塗装材料の製造方法において、スプレー塗装性に優れ、乾燥エネルギーを低減し及び乾燥時間を短縮できる点から、組成物中に、好ましくは1質量%~90質量%であり、より好ましくは1質量%~80質量%であり、特に好ましくは1質量%~50質量%である。
【0058】
着色剤
得られる硬化膜に色彩等を付与する場合は、組成物に着色剤を配合することができる。
着色剤としては、顔料及び染料等が挙げられ、顔料を使用することが好ましい。
顔料として、好ましくは光輝性顔料を用いる。前記光輝性顔料として、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ等の金属、又は合金等の無着色、或は着色された金属製光輝剤等を挙げることができ、又、金属蒸着フィルムフレーク等も好ましく用いることができる。前記光輝性顔料として、又、雲母、金属酸化物で表面被覆した雲母、雲母状酸化鉄、グラファイト顔料、ホログラム顔料等も挙げることができる。
顔料は、単独で又は2種以上を使用することができる。
顔料は、その形状は特に限定されず、更に着色されていても、各種表面処理剤や分散剤等で処理されたものも包含することができる。前記顔料は、例えば、体積平均粒径(D50)が2μm~50μm(長径)程度であり、且つ厚さが0.1μm~5μm程度である顔料を好ましく用いることかできる。前記顔料は、中でも、体積平均粒径(D50)が10μm~35μm(長径)程度の顔料は、光輝感に優れるので、特に好適に用いられる。
顔料は、好ましくは、適宜、分散剤(顔料分散剤)、分散樹脂と混合して分散し、ペースト化して塗料組成物に配合する。
【0059】
組成物が顔料を含む場合、その含有割合は、目的に応じて適宜設定すれば良いが、組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部~30質量部であり、より好ましくは1質量部~20質量部である。顔料分散剤は、前記顔料100質量部に対して、好ましくは10質量部~90質量部であり、より好ましくは20質量部~80質量部の割合で使用する。
【0060】
分散剤
電子線硬化型組成物は、着色剤として顔料を使用する場合に、分散剤(顔料分散剤)を配合することが好ましい。
顔料分散剤は特に限定されず、種々の顔料分散剤を用いることができる。
使用可能な顔料分散剤として具体例には、ノナノアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N-ドデシルヘキサアミド、N-オクタデシルプロピオアミド、N,N-ジメチルドデカンアミド及びN,N-ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’-(テトラヒドロキシエチル)-1,2-ジアミノエタン、N,N,N’-トリ(ヒドロキシエチル)-1,2-ジアミノエタン、N,N,N’,N’-テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)-1,2-ジアミノエタン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン等のヒドロキシ基を有するアミン等を例示することができ、その他にニペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物を挙げることができる。
更に、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類を挙げることができる。
【0061】
分散剤の市販品として、シゲノックス-105(商品名、ハッコ-ルケミカル社製)、Disperbyk-101、Disperbyk-130、Disperbyk-140、Disperbyk-170、Disperbyk-171、Disperbyk-182、Disperbyk-2001〔以上、ビックケミー・ジャパン(株)製〕、EFKA-49、EFKA-4010、EFKA-9009(以上、EFKA CHEMICALS社製)、ソルスパース12000、ソルスパース13240、ソルスパース13940、ソルスパース17000、ソルスパース20000、ソルスパース24000GR、ソルスパース24000SC、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース33500〔以上、ゼネカ(株)製〕、PB821、PB822〔以上、味の素ファインテクノ(株)製〕等を挙げることができる。
【0062】
レオロジーコントロール剤
電子線硬化型組成物は、必要に応じて、レオロジーコントロール剤を含有することが好ましい。
前記レオロジーコントロール剤は、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、酸化ポリエチレンや脂肪酸アマイドワックス等の増粘剤や、沈降防止剤として公知の添加剤等を挙げることができる。前記レオロジーコントロール剤として、アルコキシシリル化合物、又はその縮合物や、ポリウレア化合物、更には非水分散型樹脂等の有機微粒子や、無機微粒子等が挙げることができる。
組成物は、前記レオロジーコントロール剤を配合すると、チクソトロピー性を有し、剪断力がかからなくなった時に粘性を発現するものを用いることができる。従って、組成物が顔料を含む時、顔料の配向不良を抑制する作用をより強く働かせ、メタリック外観を向上させることができる。
レオロジーコントロール剤として、有機微粒子は、好ましくは、それ自体既知のポリマービーズ等の樹脂粒子や、モノマー類の重合物を微細に粉砕したものゲル化重合体微粒子(例えば特開平3-66770号公報、特公平6-70110号公報参照)等を使用することができる。
有機微粒子の具体例として、特公平6-70110号公報に開示されているような、ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)の分子鎖を有し、且つ重合性不飽和二重結合を1分子あたり平均約1個以上有するマクロモノマー(a)と、1分子あたり平均して約1.0~約1.5個の重合性不飽和二重結合を有するマクロモノマー(b)との混合物の存在下に、相互に反応して結合することができる相補的官能基を夫々有する少なくとも2種のビニル系単量体を少なくとも0.5質量%含有するビニル系単量体混合物を、マクロモノマー(a)、マクロモノマー(b)及び該ビニル系単量体は溶解するが、該ビニル単量体の重合体は実質的に溶解しない有機溶媒中で共重合及び架橋反応させてなるゲル重合体微粒子の非水分散液などを用いることができる。この様な有機微粒子は、架橋密度が高く、トルエンや酢酸エチル等のポリマー溶解力の大きい有機溶剤中においても、実質的に非膨潤性且つ非融着性である。
組成物が揮発成分を含む時、当該組成物に、前記有機微粒子を添加すると、組成物の粘度を殆ど上昇させることなく、樹脂含有率の高い、つまり高固形分の溶液(分散液)を好ましく調製することができる。
前記有機微粒子の体積平均粒径(D50)は、一般に0.01μm~2μm程度であり、特に0.05μm~0.5μm程度の範囲が好ましい。前記有機微粒子の体積平均粒径が前記範囲内にある微粒子は、タレ防止効果及び仕上り外観(メタリック外観)に優れた塗膜を得ることができる。
【0063】
前記レオロジーコントロール剤として、無機微粒子は、好ましくは、コロイド状、非晶質の形態のシリカやアルミナ等の無機酸化物粒子を使用することができる。
前記レオロジーコントロール剤は、添加剤として既知の市販品を用いてもよく、好ましくは、セルニーHPC-H、HPC-M、HPC-L、HPC-SL、HPC-SSL(日本曹達(株)社製)、ダイヤナールBRシリーズ(三菱レイヨン(株)社製)、ディスパロン#6900-10X,ディスパロン#6900-20X、ディスパロン#4200、ディスパロンKS-873N、ディスパロン#1850(楠本化成(株)社製)、BYK-405、及びBYK-410(ビックケミー・ジャパン(株)製)、プライマルRW-12W(ローム・アンド・ハース社製)、A-S-AT-20S、A-S-AT-350F、A-S-AD-10A、A-S-AD-160(伊藤製油(株)製)、SetaluxC-7176VB-60(アクゾノーベル社製)等を用いることができる。
【0064】
組成物にレオロジーコントロール剤を含有させる場合、その含有割合は、粘性発現作用及び仕上り性の点から、組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは40質量部以下であり、より好ましくは2質量部~20質量部である。レオロジーコントロール剤として、有機微粒子を用いる場合は、仕上り性及び高固形分化の点から、組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましく40質量部以下であり、より好ましくは2質量部~20質量部である。
【0065】
紫外線吸収剤
組成物は、必要に応じて、更に、通常の塗料用添加剤として用いることができる紫外線吸収剤(例えばベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等)を、単独で、若しくは2種以上組合せて含有することができる。
前記紫外線吸収剤は、好ましくは、市販品の、例えば、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN348-2、TINUVIN479、TINUVIN405(BASF社製、商品名、TINUVIN\チヌビンは登録商標)、RUVA93(大塚化学社製、商品名)等を用いることができる。
【0066】
組成物に紫外線吸収剤を含有させる場合、その含有量は、特に限定されるものではないが、被塗物との付着性及び耐候性の点から、組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、0.1質量部~15質量部、好ましくは0.3質量部~10質量部の範囲内が適当である。
【0067】
光安定剤
組成物は、必要に応じて、更に、通常の塗料用添加剤として用いることができる光安定剤(例えば、ヒンダードピペリジン類等)を、単独で、若しくは2種以上組合せて含有することができる。
前記光安定剤は、好ましくは、市販品の、例えば、TINUVIN123、TINUVIN152、TINUVIN292(BASF社製、商品名、TINUVIN\チヌビンは登録商標)、HOSTAVIN3058(クラリアント社製、商品名、Hostavinは登録商標)、アデカスタブLA-82(ADEKA株式会社製、商品名、アデカスタブ\ADKSTAB、アデカスタブは登録商標)等を用いることができる。
【0068】
組成物に光安定剤を含有させる場合、その含有量は、特に限定されるものではないが、耐候性の点から、組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~10質量部であり、より好ましくは0.2質量部~5質量部である。
【0069】
表面調整剤
組成物は、必要に応じて、更に、通常の塗料用添加剤として用いることができる表面調整剤(アクリル系、シリコン系、フッ素系、ビニル系等)を、単独で、若しくは2種以上組合せて含有することができる。
【0070】
前記表面調整剤は、シリコン系表面調整剤として、好ましくは、市販品の、例えば、BYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-310、BYK-315、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-344、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-UV3500、BYK-UV3510、BYK-UV3570(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名)、1711、1751N、1761、LS-001、LS-050(以上、楠本化成株式会社製、DISPARLONシリーズ)、グラノール100、グラノール115、グラノール200、グラノール400、グラノール410、グラノール440、グラノール435、グラノール450、グラノール482グラノールB-1484、ポリフローATF-2(以上、TEGO社製商品名)等を用いることができる。
前記表面調整剤は、アクリル系表面調整剤として、好ましくは、市販品の、BYK-350、BYK-352、BYK-354、BYK-355、BYK-358N、BYK-361N、BYK-392(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名)、OX-880EF、OX-881、OX-883、OX-883HF、OX-70、OX-77EF、OX-60、OX-710、OX-720、OX-720EF、OX-750HF、LAP-10、LAP-20、LAP-30、1970、230、LF-1980、LF-1982、LF-1983、LF-1984、LF-1985、LHP-95、LHP-96(以上、楠本化成株式会社製、DISPARLONシリーズ)、ポリフローNo.3、ポリフローNo.7、ポリフローNo.50E,ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.55、ポリフローNo.64、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.S、ポリフローNo.90、ポリフローNo.90D-50、ポリフローNo.95、ポリフローNo.300、ポリフローNo.460、ポリフローWS、ポリフローWS-30、ポリフローWS-314(以上、共栄社化学社製商品名)等を用いることができる。
前記表面調整剤は、ビニル系表面調整剤として、好ましくは、市販品の、LHP-90、LHP-91、(以上、楠本化成株式会社、DISPARLONシリーズ)等を用いることができる。
その他の表面調整剤として、好ましくは、市販品の、フッ素変性ポリマーであるBYK-340、シリコン変性ポリマーであるBYK-SILCLEAN3700(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名)等を用いることができる。
表面調整剤の中でも、シリコン系表面調整剤を用いることで、表面張力差を最小限に抑え、表面張力の均一化効果を高めることができる。
表面調整剤の中でも、アクリル系表面調整剤を用いることで、相溶性と仕上り性とを高めることができる。
前記表面調整剤は、1種を単独で使用してもよく又は2種以上を併用してもよい。
組成物は、必要に応じて、更に、通常の塗料用添加剤として用いることができる希釈剤、着色顔料(例えば、酸化チタン、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、アゾ系、キナクリドン系等)、体質顔料(例えば、シリカ、バリタ、タルク等)、消泡剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤等を、夫々単独で、若しくは2種以上組合せて含有することができる。
【0071】
組成物に表面調整剤を含有させる場合、その含有割合は、特に限定されるものではないが、塗膜の平滑性の点から、組成物中の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~10質量部であり、より好ましくは0.2質量部~6質量部である。
【0072】
(1-2-3)組成物の粘度
電子線硬化型組成物の粘度としては、せん断速度0.1/sで測定した粘度が1Pa・s~300Pa・sであるものが好ましく、さらに10Pa・s~100Pa・sであるものがより好ましい。
当該粘度範囲にある組成物は、組成物が垂直面から垂れないうえ、表面平滑性(レベリング性)を有するため好ましい。
さらに又、組成物の粘度としては、せん断速度0.1/sで測定した粘度が1Pa・s~300Pa・sであり、かつ、せん断速度1,000/sで測定した粘度が0.01Pa・s~0.3Pa・sであることが好ましい。
さらに、電子線硬化型組成物は、せん断速度0.1/sで測定した粘度が10Pa・s~100Pa・sであり、せん断速度1,000/sで測定した粘度が0.03Pa・s~0.1Pa・sであることがより好ましい。
ここで、前記「粘度」は、回転式粘度計による計測法で測定した値であり、25.0±1.0℃での回転式粘度計による粘度を、せん断速度0.01/sから1,000/sまで連続的に変化させながら測定した値を意味する。
【0073】
電子線硬化型組成物の好ましい形態
本発明の塗装材料の製造方法では、スプレー塗装化が可能となるため、組成物として、揮発成分を含むことが好ましい。
さらに、当該組成物においては、揮発成分として水を使用し、不飽和化合物を水中に分散させた水分散液であることか好ましい。組成物が水分散液である場合、不飽和化合物を乳化剤を使用する分散液とすることが好ましい。
【0074】
(1-3)塗工方法
前記工程(1)では、基材に、不飽和化合物を含む電子線硬化型組成物を塗工する。
塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、スプレー、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ディップコーター、ロールコーター、スピンコーター、フローコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、インクジェット等で塗工する方法が挙げられる。
前記工程(1)では、基材に、不飽和化合物を含む電子線硬化型組成物をスプレー塗工することが好ましい。
本発明の組成物の塗工量としては、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、有機溶剤等の揮発成分を乾燥した後の膜厚が、通常、1μm~200μm程度であり、好ましくは、1μm~100μmであり、より好ましくは、5μm~50μmである。
【0075】
(1-4)塗膜の粘度
前記工程(1)では、基材に、電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値が1Pa・s~300Pa・s(ミリパスカル秒)となる塗膜を形成する。
電場ピックアップ法とは、背景技術に記載した特許文献1(特開2011-84699号公報)に開示されている通り、以下の原理を用いて液体の粘度を測定する方法である。
図1は、電場ピックアップ法の原理を概念的に示す概念図である。
図1中のP1は、塗料であり、その上部は気層(空気層)である。
図1中のNは電極針である。電極針Nは、液面に垂直に設置され、電極針Nの針先と塗料P1の液面との間の距離は、例えば10μmである。
図1の左側は電極針Nに電圧が印加されていない状態、右側は電圧が印加されている状態を示す。
電極針Nに所定の電圧を印加すると、電極針Nの針先に電荷が蓄積され、これによって塗料の液面近傍に電極針Nから、液面で略垂直となる電気力線を描く電場が発生し、マクスウェル応力が液体である塗料P1の内外に働く。このとき、液体である塗料P1と気層とでは誘電率が異なるので、表面に力が発生して変形が起こる。液体である塗料P1の方が、誘電率が大きいから、
図1の右側に示すように、液面が引き上げられるように盛り上がる。このときの液面の盛り上がりの形状は、マクスウェル応力と表面張力との釣り合いにより決定され、変形の速度と粘性とが相関する。このことから、変形形状を観測し、変形速度を測定することにより表面張力と粘度とを得ることができる。
電場ピックアップ法とは、塗布膜近傍に、気層と液層(塗料)との界面を略垂直に通るような電場を発生させたときの気層と液層との間の誘電率の差により生じるマクスウェル応力に起因する塗布膜表面の形状変化を観測することにより得られる情報から粘度を測定する方法を広く意味する言葉であって、狭義に解釈されるものではない。
【0076】
本発明で使用する組成物は、次の工程3における電子線照射による硬化までに塗膜が垂れないものとする点で、乾燥後の電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値は、20℃において、1Pa・s~300Pa・sとなる塗膜となるものを使用し、好ましくは10Pa・s~300Pa・sとなる塗膜を使用する。
前記粘度が1Pa・sに満たない場合は、塗工膜にタレが発生する傾向がある。前記粘度が300Pa・sを超過する場合は、レベリング性が不良となり、最終的に得られる硬化膜の表面平滑性が悪化する傾向がある。
【0077】
(2)工程(2)
本発明の塗装材料の製造方法では、工程(2)は、前記電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、前記工程(1)で得られる塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成する工程である。
工程(2)においては、揮発成分の種類に応じて、乾燥条件を適宜設定すれば良い。
【0078】
前記工程(1)で、前記電子線硬化型組成物として水分散液を使用して塗膜を形成する工程である時、前記工程(2)は、前記塗膜の前記電子線硬化型組成物に含まれる揮発成分を蒸発させて、乾燥塗膜を形成する工程であることが好ましい。
前記乾燥方法としては、電子線硬化型組成物の種類に応じて適宜選択すれば良い。前記電子線硬化型組成物に、例えば揮発成分として水を用いる場合、水分散液となり、40℃~80℃程度の温度で乾燥することが好ましい。
【0079】
(3)工程(3)
本発明の塗装材料の製造方法では、工程(3)は、前記工程(1)で得られる塗膜、又は、前記工程(2)で得られる乾燥塗膜を有する基材に、不活性ガス雰囲気下で電子線を照射し、硬化膜を形成する工程である。
【0080】
不活性ガス
前記工程(3)で硬化膜を形成する時は、不活性ガス雰囲気下で電子線照射することにより、基材の影部でも、又、基材が凹凸部、湾曲部、及び/又は、屈曲部を有する場合においても、塗膜又は乾燥塗膜の硬化を良好に進行させることができる。
前記不活性ガスとしては、窒素ガス、並びにヘリウム及びアルゴン等の希ガス等が挙げられる。前記不活性ガスとしては、酸素濃度が0.1容量%以下であることが好ましい。さらに、窒素ガスが主成分であり、酸素濃度が0.1容量%以下であることが好ましい。
【0081】
電子線
前記工程(3)で硬化膜を形成する時の電子線照射条件は、使用する前記電子線硬化型組成物の種類及び目的に応じて適宜選択すれば良い。
前記前記電子線は、加速電圧が80kV~300kVであり、吸収線量が10kGy~1,000kGyとなるよう照射することが好ましい。前記電子線照射後の重合率を上昇させることができる。加速電圧及び吸収線量が上記の下限値未満では硬度改良効果が不足し、上限値を超えると硬化膜が脆くなるので各々好ましくない。加速電圧、吸収線量以外の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
電子線照射時の温度としては、10℃~50℃が好ましい。
電子線を照射する装置としては、通常の装置を使用することができ、好ましくは、電子線照射部と、照射対象物の乾燥塗膜を有する基材を移動させる搬送部を備えるものが使用できる。
【0082】
硬化膜
前記工程(3)で、不活性ガス雰囲気下で電子線を照射して得られる前記硬化膜の破断伸びは、5%以上であることが好ましい。
尚、本発明において破断伸びとは、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、測定した値を意味する。
【0083】
(4)2層以上の硬化膜
本発明の塗装材料の製造方法は、2層以上の硬化膜を有する塗装材料の製造にも使用することもできる。
即ち、2層以上の硬化膜を形成する塗装材料の製造方法であって、
硬化膜を形成するためのエチレン性不飽和基含有化合物を含む電子線硬化型組成物を2種以上使用し、
前記工程(1)及び工程(2)を2回以上実施した後、工程(3)を実施する
塗装材料の製造方法にも関する。
【0084】
この場合、まず工程(1)である、基材に、第1の硬化膜を形成する電子線硬化型組成物を塗工し、塗膜を形成する工程を実施する。
次いで、工程(2)である、前記第1の硬化膜を形成する記電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、前記塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成する工程を実施する。
【0085】
次いで、工程(1)である、前記工程(1)で得られる塗膜、又は工程(2)得られる乾燥塗膜上に、第2の硬化膜を形成する電子線硬化型組成物を塗工し、電場ピックアップ法に基づく表層粘度測定値が1Pa・s~300Pa・sとなる塗膜を形成する工程を実施する。
次いで、前記工程(2)である、前記第2の硬化膜を形成する電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、前記塗膜を乾燥し、乾燥塗膜を形成する工程を実施する。
【0086】
3層以上の硬化膜を形成する塗装材料の場合は必要に応じて、さらに前記工程(1)及び(2)を繰り返し、基材に、2種以上の電子線硬化型組成物の塗膜、又は乾燥塗膜を形成する。
【0087】
この後、工程(3)である、少なくとも2種以上の塗膜、又は乾燥塗膜を有する基材に、前記電子線を照射し、少なくとも2種以上の硬化膜を形成する工程を実施する。
【0088】
複層硬化膜としては、例えば、基材に対して中塗用組成物、ベース用組成物及びクリア用組成物から形成される3層からなる硬化膜が挙げられる。
【0089】
[2]塗装材料及び自動車用基材
本発明の塗装材料の製造方法は、種々の用途の塗装材料の製造に使用可能である。
本発明の塗装材料は、自動車用基材として用いることが好ましい。
本発明の塗装材料の製造方法により、好ましくは、膜厚が5μm~500μmの硬化膜を製造することができ、特に自動車用基材を製造する時は。より好ましくは、膜厚が10μm~150μmの硬化膜を製造することができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例の塗装材料の製造方法を例にして、本発明を説明する。
尚、下記において「部」とは、質量部を意味する。
【0091】
1.測定方法
(1)電子線硬化型組成物の粘度測定方法
回転式粘度計として、TAインストルメント社製のARES-G2レオメータを使用した。回転式粘度計を使用して、電子線硬化型組成物の粘度を、25.0±1.0℃で、による粘度を、せん断速度0.01/sから1,000/sまで連続的に変化させながら測定した。
【0092】
(2)塗膜の表層粘度測定方法
基材に、電子線硬化型組成物を塗工した後の塗膜について、電場ピックアップ粘度計〔京都電子工業(株)製、製品名:RM-01T〕を使用して、表層粘度を測定した。
【0093】
(3)硬化膜の評価
破断伸び(%):
硬化膜を、3号ダンベル型で打ち抜き、試験片とした。JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、この試験片の引張降伏強度、引張破断強度及び引張破断伸びを測定した。測定は、23℃、60%RH環境下で行い、引張速度は、5mm/分、つかみ間距離50mm、サンプル幅10mmとした。
【0094】
硬化状態
硬化膜を目視により観察し、濁りなく、透明な硬化膜を得られた場合を〇とした。
【0095】
2.製造例
(1)製造例1~8
下表1及び2に示す不飽和化合物を撹拌及び混合して、無溶剤系電子線硬化型組成物を得た。得られた電子線硬化型組成物の粘度を測定した。それらの結果を以下の表1及び2に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
表1及び2における略号
M-7100:ポリエステルアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM-7100
M-5700:2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM-5700
M-327:イソシアヌル酸エチレンオキサイド3モル付加物に対するε-カプロラクトン3モル付加物のトリアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM-327
M-305:ペンタエリスリトールのトリアクリレート及びテトラアクリレート混合物、東亞合成(株)製アロニックスM-305
【0099】
(2)製造例9~11
下表3に示す不飽和化合物及び揮発成分を撹拌及び混合した後、乳化剤〔ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、日本乳化剤(株)製ニューコール740〕を配合した後、ホモジナイザーにより分散させ、さらにその他成分を撹拌及び混合して、水系電子線硬化型組成物を得た。
尚、製造例9で使用したM-1200は高粘度のため、予め酢酸エチルで希釈し粘度を低減させた。水分散後、室温・減圧下にて酢酸エチルを除去した。
得られた組成物について粘度を測定した。それらの結果を以下の表3に示す。
【0100】
【0101】
表3における略号
前記で定義したもの以外は、下記を意味する。
M-1200:ウレタンアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM-1200
ニューコール740:乳化剤(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)、日本乳化剤(株)製ニューコール740
BYK-346:シリコン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン(株)製BYK-346
ボンコートHV-E:増粘剤、DIC(株)製ボンコートHV-E
DMAE:ジメチルアミノエタノール
【0102】
(3)製造例12
下記表4に示す成分を表4に示す割合で使用し、製造例9~11と同様の方法に従い組成物を調整し、クリア塗料(水性エマルション)である組成物C-1を作製した。
得られた組成物について粘度を測定した。その結果を以下の表4に示す。
【0103】
【0104】
(4)製造例13
下記表5に示す成分を表5に示す割合で使用し、製造例9~11と同様の方法に従い組成物を調整し、アルミ顔料入りのベース塗料である組成物B-1を作製した。
得られた組成物について粘度を測定した。その結果を以下の表5に示す。
【0105】
【0106】
表5における略号
前記で定義したもの以外は、下記を意味する。
アルペーストWXM5660:水性アルペースト、東洋アルミ(株)製アルペーストWXM5660
【0107】
(5)製造例14
下記表6に示す成分を表6に示す割合で使用し、製造例9~11と同様の方法に従い組成物を調整し、チタン顔料入り中塗り塗料である組成物P-1を作製した。
得られた組成物について粘度を測定した。その結果を以下の表6に示す。
【0108】
【0109】
表6における略号
前記で定義したもの以外は、下記を意味する。
タイペークCR-97:酸化チタン、石原産業(株)製タイペークCR-97
MA-100:カーボンブラック、三菱ケミカル(株)製 MA-100
DISPERBYK-180:分散剤、ビックケミー・ジャパン(株)製DISPERBYK-180
【0110】
3.実施例
(1)実施例1~8
(1-1)工程1
前記製造例1~8で得られた電子線硬化型組成物を使用し、ガラス板へ50μmに塗工した。基材に組成物を塗工した後の塗膜について、表層粘度を測定した。
(1-2)工程3
得られた塗膜を有する基材に対して、(株)NHVコーポレーション製電子線照射装置により、加速電圧150kV、線量30kGy(ビーム電流及び搬送速度により調整)、酸素濃度300ppm以下、及び室温(23℃)の条件で電子線照射を行い、硬化膜を得た。これを試験体という。
得られた試験体について、破断伸び及び硬化状態を評価した。それらの結果を下記表7に示す。
【0111】
【0112】
(2)実施例9~11
(2-1)工程1
前記製造例9~11で得られた電子線硬化型組成物を使用し、それぞれガラス板へ80℃で3分乾燥した後の膜厚が40μmとなるよう塗工した。基材に組成物を塗工した後の塗膜について、表層粘度を測定した。
(2-2)工程2
塗工後、熱風式乾燥炉を使用して80℃で3分間加熱し、組成物中の揮発成分を蒸発させて乾燥塗膜を得た。
(2-3)工程3
得られた乾燥塗膜を有する基材に、前記実施例と同様の装置を使用し、同様の照射条件で電子線照射を行い、硬化膜を得た。これを試験体という。
得られた試験体について、破断伸び及び硬化状態を評価した。それらの結果を下記表8に示す。
【0113】
【0114】
(3)実施例12
製造例12~14で得られた水性エマルション塗料である電子線硬化型組成物P-1、B-1、及びC-1を使用した。
製造例12:クリア塗料(水性エマルション)である組成物C-1
製造例13:アルミ顔料入りのベース塗料である組成物B-1
製造例14:チタン顔料入り中塗り塗料ある組成物P-1
基材に対して、中塗用組成物、ベース用組成物及びクリア用組成物の3層からなる塗膜(複層硬化膜)を作製した。
【0115】
(3-1)工程1
先ず、中塗り塗料P-1を使用し、下記(3-2)工程2の後の膜厚が40μmとなるよう、電着塗装鋼板(基材)に塗工した。基材に組成物を塗工した後の塗膜について表層粘度を測定し、23.6Pa・sであった。
【0116】
(3-2)工程2
塗工後、熱風式乾燥炉を使用して80℃で3分間加熱し、組成物中の揮発成分を蒸発させて乾燥塗膜を得た。
【0117】
(3-3)工程1
上記で得られた中塗り塗料P-1の乾燥塗膜上に、上記と同様の方法に従い、ベース塗料B-1を、下記(3-4)工程2の後の膜厚が40μmとなるよう塗工した。組成物を塗工した後の塗膜について表層粘度を測定し、14.9Pa・sであった。
【0118】
(3-4)工程2
塗工後、前記と同様の方法で加熱し、組成物中の揮発成分を蒸発させて乾燥塗膜を得た。
【0119】
(3-5)工程1
上記で得られたベース塗料B-1の乾燥塗膜上に、上記と同様の方法に従い、クリア塗料C-1を、下記(3-6)工程2の後の膜厚が40μmとなるよう塗工した。
組成物を塗工した後の塗膜について表層粘度を測定し、13.5Pa・sであった。
【0120】
(3-6)工程2
塗工後、前記と同様の方法で加熱し、組成物中の揮発成分を蒸発させて乾燥塗膜を得た。
【0121】
(3-7)工程3
得られた3層の乾燥塗膜を有する試験体を、前記実施例と同様の装置を使用し、同様の照射条件で電子線照射を行い、硬化膜(3層で120μm)を得た。
基材から順に、基材/中塗り塗料P-1/ベース塗料B-1/クリア塗料C-1の複層硬化膜を作製した。得られた硬化膜について、破断伸び及び硬化状態を評価した。夫々の硬化膜の硬化状態は、いずれも「○」であった。
【0122】
(4)実施例13
基材として、ポリプロピレン(日本テストパネル(株)製)及び表9に示す表面処理したポリプロピレンを使用した。ポリプロピレン及び表面処理したポリプロピレンについて、ダインペン評価を行った。
Vetaphone社(商品名:VETAPHONE PRO DYN)を使用し、32~56dyn/cm2、使用ペン42Dynにより評価した。
尚、表9におけるダインペン評価の「○」及び「×」は、下記を意味する
○:ぬれ良好
×:ぬれ不良
【0123】
(4-1)工程1
前記製造例1で得られた電子線硬化型組成物を使用し、ポリプロピレンへ膜厚50μmで塗工した。基材に組成物を塗工した後の塗膜について、表層粘度を測定し、5.9Pa・sであった。
又、ポリプロピレンとして、下記表9に示す表面処理を行ったものについても同様に電子線硬化型組成物を塗工した。
【0124】
(4-2)工程2
塗工後、熱風式乾燥炉を使用して80℃で3分間加熱し、組成物中の揮発成分を蒸発させて乾燥塗膜を得た。
【0125】
(4-3)工程3
得られた乾燥塗膜を有する基材に、前記実施例と同様の装置を使用し、同様の照射条件で電子線照射を行い、硬化膜を得た。これを試験体という。得られた試験体について、簡易密着性試験を実施した。即ち、セロファンテープを強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、硬化膜の剥がれを評価した。
尚、表9における簡易密着性試験の「○」及び「×」は、下記を意味する
○:剥がれなし
×:剥がれあり
【0126】
【0127】
(5)実施例14
(5-1)工程1及び2
前記製造例1で得られた電子線硬化型組成物を使用し、実施例1と同様の条件でアクリル板(三菱ケミカル(株)製、アクリライト)に、膜厚50μmで塗工し、組成物を乾燥させた。
(5-2)工程3
得られた乾燥塗膜を有する基材に、前記実施例と同様の装置を使用し、
図2に示す0°、45°及び75°の3つの角度で乾燥塗膜を有するアクリル板を配置する以外は同様の照射条件で電子線照射を行い、硬化膜を得た。いずれの角度で照射した場合も、硬化状態に優れる硬化膜を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明により、スプレー塗工可能であり、塗工後に塗液が垂れない、つまりレオロジーコントロールが可能な塗装材料を製造することができる。本発明により、好ましくは、電子線により短時間で硬化することが可能な塗装材料を製造することができる。本発明により、好ましくは、複雑な形状の被照射物(例えば自動車のボディ)に対し、適切に硬化することが可能な塗装材料を製造することができる。本発明により、好ましくは、塗膜が2層以上の層を有する場合でも、同時に硬化することが可能な塗装材料を製造することができる。本発明により、好ましくは、電子線硬化型組成物に揮発成分が含まれる場合、例えば、水分散型組成物を用いる場合でも、良好に硬化することが可能な塗装材料を製造することができる。