(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】液体吐出装置と廃液収容体の着脱方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/17 207
(21)【出願番号】P 2020004208
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】玉森 研爾
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲史
(72)【発明者】
【氏名】菅原 崇
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 啓治
(72)【発明者】
【氏名】森末 将文
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 誠一郎
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030087(JP,A)
【文献】特開2006-142575(JP,A)
【文献】特開2007-021758(JP,A)
【文献】特開2009-119675(JP,A)
【文献】特開平11-334110(JP,A)
【文献】米国特許第05742303(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0020128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの廃液を排出する排出部と、前記排出部が設けられるとともに前記排出部から排出された前記廃液を収容可能な廃液収容体が装着される装着部と、を備えている液体吐出装置であって、
前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部を遮蔽する遮蔽部材を有
し、
前記遮蔽部材は、前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部に対向して該排出部を覆う板状の部材であり、前記排出部から前記廃液を排出する方向に直交する面内で水平移動することにより、前記排出部を覆う位置と前記排出部を覆わない位置との間で移動可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材の水平移動を案内するガイドを有する、請求項
1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記排出部に対向可能な面に凹部を有する、請求項
1または
2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材の前記凹部に配置されている、前記排出部から排出された前記廃液を吸収する廃液吸収体を有する、請求項
3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記廃液収容体の、前記装着部に対する着脱動作に連動して前記遮蔽部材を水平移動させる駆動機構を有する、請求項
1から
4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記駆動機構はばねからなる、請求項
5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの廃液を排出する排出部と、前記排出部が設けられるとともに前記排出部から排出された前記廃液を収容可能な廃液収容体が装着される装着部と、を備えている液体吐出装置であって、
前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部を遮蔽する遮蔽部材を有し、
前記遮蔽部材は、前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部に対向して該排出部を覆う、複数の板片からなるシャッター状の部材であり、複数の前記板片がそれぞれ、前記排出部から前記廃液を排出する方向に直交する面内で水平移動することにより、前記排出部と対向する位置を開放する開放状態と、前記排出部を覆う遮蔽状態と、をとることができる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材の前記板片の水平移動を案内するガイドを有する、請求項
7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの廃液を排出する排出部と、前記排出部が設けられるとともに前記排出部から排出された前記廃液を収容可能な廃液収容体が装着される装着部と、を備えている液体吐出装置であって、
前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部を遮蔽する遮蔽部材を有し、
前記遮蔽部材は、前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部に対向して該排出部を覆う、前記排出部の周囲に位置する複数の板片からなるシャッター状の部材であり、複数の前記板片がそれぞれ、前記排出部から前記廃液を排出する方向に直交する面内で、互いに近接する方向と互いに離れる方向とに回動することにより、前記排出部と対向する位置を開放する開放状態と、前記排出部を覆う遮蔽状態と、をとることができる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの廃液を排出する排出部と、前記排出部が設けられるとともに前記排出部から排出された前記廃液を収容可能な廃液収容体が装着される装着部と、を備えている液体吐出装置であって、
前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部を遮蔽する遮蔽部材を有し、
前記遮蔽部材は、前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部を取り囲む
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
前記遮蔽部材は筒状の部材であり、前記排出部から前記廃液を排出する方向と一致する方向に移動することにより、前記排出部を取り囲む位置と前記排出部を取り囲まない位置との間で移動可能である、請求項
10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記廃液収容体の前記装着部に対する着脱動作に連動して、前記遮蔽部材を、前記排出部から前記廃液を排出する方向と一致する方向に移動させる駆動機構を有する、請求項
11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記駆動機構はばねからなる、請求項
12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
液体吐出ヘッドからの廃液を収容可能な廃液収容体の、前記廃液を排出する排出部が設けられている装着部に対する着脱方法であって、
前記廃液収容体が前記装着部に装着された状態では、前記排出部と前記廃液収容体とが対向しており、
前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、遮蔽部材を、
前記排出部に対向して該排出部を覆う位置に水平移動させて前記排出部を遮蔽するように駆動することを特徴とする、廃液収容体の着脱方法。
【請求項15】
前記廃液収容体の前記装着部への装着動作に連動して、遮蔽部材を、前記排出部を覆う位置から前記排出部を覆わない位置へ水平移動させて、前記排出部と前記廃液収容体とを互いに対向させる、請求項
14に記載の廃液収容体の着脱方法。
【請求項16】
液体吐出ヘッドからの廃液を収容可能な廃液収容体の、前記廃液を排出する排出部が設けられている装着部に対する着脱方法であって、
前記廃液収容体が前記装着部に装着された状態では、前記排出部と前記廃液収容体とが対向しており、
前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して
、遮蔽部材を、前記排出部を取り囲む位置に移動させ
て前記排出部を遮蔽するように駆動することを特徴とする、廃液収容体の着脱方法。
【請求項17】
前記廃液収容体の前記装着部への装着動作に連動して、遮蔽部材を、前記排出部を取り囲む位置から前記排出部を取り囲まない位置へ移動させる、請求項
16に記載の廃液収容体の着脱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置と廃液収容体の着脱方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置は、液体吐出ヘッドから記録媒体に向けて液体インクを吐出して記録を行うが、記録のためではなくメンテナンス等のために液体吐出ヘッドから液体インクを排出することもある。特許文献1には、液体吐出ヘッドから排出された廃液を収容するための廃液収容体が開示されている。廃液収容体が装着される装着部には、液体吐出ヘッドから排出された廃液を廃液収容体に向けて排出する排出部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された液体噴射装置では、廃液収容体を取り外した際に排出部が露出するため、排出部にユーザーが触れると、排出部に付着している廃液で手や衣服等が汚れてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、廃液収容体を取り外した際に、排出部に付着した廃液で手や衣服等が汚れるのを抑えることができる液体吐出装置と廃液収容体の着脱方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドからの廃液を排出する排出部と、排出部が設けられるとともに排出部から排出された廃液を収容可能な廃液収容体が装着される装着部と、を備えている液体吐出装置であって、廃液収容体の装着部からの取り外し動作に連動して、装着部内において排出部を遮蔽する遮蔽部材を有し、前記遮蔽部材は、前記廃液収容体の前記装着部からの取り外し動作に連動して、前記装着部内において前記排出部に対向して該排出部を覆う板状の部材であり、前記排出部から前記廃液を排出する方向に直交する面内で水平移動することにより、前記排出部を覆う位置と前記排出部を覆わない位置との間で移動可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、廃液収容体を取り外した際に、排出部に付着した廃液で手や衣服等が汚れるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る液体吐出装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示す液体吐出装置の装着部の模式的な部分断面図と、下方から見た部分斜視図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る液体吐出装置の装着部の模式的な底面図と断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る液体吐出装置の遮蔽部材の斜視図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態に係る液体吐出装置の遮蔽部材の斜視図である。
【
図6】本発明の第5の実施形態に係る液体吐出装置の装着部の底面図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態の変形例の液体吐出装置の装着部の底面図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態の他の変形例の液体吐出装置の装着部の底面図である。
【
図9】本発明の第6の実施形態に係る液体吐出装置の装着部の模式的な部分断面図と、下方から見た部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る液体吐出装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液体吐出装置1の斜視図である。液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド2から記録媒体3に向けて液体を吐出して記録を行う。液体吐出ヘッド2から吐出する液体は、液体タンク4から液体輸送管(不図示)を介して液体吐出ヘッド2に供給される。また、液体吐出ヘッド2はメンテナンスのために、記録とは無関係に液体を排出することがある。メンテナンス時に液体吐出ヘッド2から排出される液体(「廃液」という)は、キャップ(不図示)に受けられ、キャップから廃液輸送管(不図示)を介して廃液収容体5に収容される。
【0010】
この液体吐出装置1の廃液収容体5とその装着部6を
図2に示している。
図2(a)は、液体吐出装置1の装着部6に廃液収容体5が装着されている状態の模式的な部分断面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示す状態において廃液収容体5を省略して下方から見た部分斜視図である。
図2(c)は、液体吐出装置1の装着部6から廃液収容体5を取り外している状態の模式的な部分断面図である。
図2(d)は、
図2(c)に示す状態を下方から見た部分斜視図である。
図2(a)~2(d)に示すように、液体吐出装置1の装着部6には、
図1に示す液体吐出ヘッド2からの廃液を図示しないキャップおよび廃液輸送管を介してさらに排出する排出部7が設けられている。そして、
図2(a),2(c)~2(d)に示すように、装着部6には、装着部6の内部に向けて開口している穴部8が設けられている。排出部7は、装着部6の天面に位置しており、穴部8は装着部6の側面の上部に位置している。すなわち、装着部6内において、排出部7と穴部8は鉛直方向上方で互いに近接して位置している。穴部8内には遮蔽部材9が収容されており、遮蔽部材9はばね10によって装着部6の内部に向かって付勢されている。遮蔽部材9は、装着部内において、排出部7からの廃液の排出方向に直交する面内で水平移動可能である。
【0011】
図1,2(a)に示すように廃液収容体5が装着部6に装着された状態では、廃液収容体5が排出部7に対向するように位置するため、排出部7から排出された廃液は廃液収容体5に収容される。ばね10によって付勢されている遮蔽部材9は、廃液収容体5の側面に当接した状態で穴部8内に保持されている。なお、各図面において、排出部7に連通する廃液輸送管は省略している。
【0012】
例えば廃液収容体5に収容された廃液を除去したり、廃液収容体5を交換したりするために、
図2(c)~2(d)に示すように液体吐出装置1の装着部6から廃液収容体5が取り外されることがある。廃液収容体5が装着部6から取り外されると、装着部6の内部が開放される。遮蔽部材9は廃液収容体5の側面に当接せず、規制されなくなる。従って、ばね10に付勢された遮蔽部材9は、穴部8から飛び出して装着部内の上部において突出する。遮蔽部材9は排出部7に対向する位置に到達し、排出部7は遮蔽部材9によって覆われる。すなわち、本実施形態の液体吐出装置1では、廃液収容体5の装着部6からの取り外しに連動して、遮蔽部材9が装着部内の排出部7に対向する位置に水平移動する。それにより、この液体吐出装置1では、廃液収容体5が装着部6から取り外された状態であっても、排出部7が遮蔽部材9に覆われて露出しない。従って、ユーザーが誤って排出部7に触れて手や衣服等が汚れることが抑えられる。
【0013】
廃液収容体5が装着部6に再び装着される際には、廃液収容体5の装着動作において、廃液収容体5の側面が遮蔽部材9に当接する。廃液収容体5が、ばね10の付勢力に抗してばね10を縮めて遮蔽部材9を穴部8内に押し込みながら、排出部7と対向する所定の装着位置に水平移動する。遮蔽部材9は排出部7と対向する位置から後退して穴部8内に入り込む。廃液収容体5が排出部7と直接対向し、排出部7から排出される廃液を収容可能な状態に復帰する。
【0014】
このように、液体吐出装置1の廃液収容体5が装着部6から取り外された際に、排出部7の廃液で手や衣服等が汚れることが抑えられる。特に、本実施形態では、ばね10を用いることにより、廃液収容体5の着脱動作と連動して遮蔽部材9が排出部7に対向する位置に対して進退するため、低コストで確実に遮蔽部材9が排出部7に対向してこの排出部7を覆うことができる。ただし、ばね10に代えて歯車を有する輪列機構を設けて、廃液収容体5の着脱動作と、遮蔽部材9の排出部7に対向する位置への進退動作とが連動する構成にすることもできる。また、電動モーターを用いた機構で、廃液収容体5の着脱動作と遮蔽部材9の進退動作とが連動する構成にすることもできる。このように、様々な駆動機構を用いることができ、さらに、これらの構成を組み合わせた駆動機構を設けることもできる。
なお、廃液収容体5が装着部6に対して着脱可能である構成は、液体吐出装置1に設けられた液体タンク4に対してボトルなどの補充容器から液体を補充可能である液体連続供給システムを搭載した液体吐出装置1において特に有効である。なぜなら、このような液体吐出装置1では従来よりも液体の使用量が多くなる傾向にあり、これに伴い廃液の排出量も多くなるが、廃液収容体5を着脱可能な構成とすることで、廃液収容体5の交換によって多くの廃液の排出が可能となるためである。
【0015】
[第2の実施形態]
次に、本発明の液体吐出装置の第2の実施形態について説明する。
図3(a)は、本実施形態に係る液体吐出装置1の、装着部6に廃液収容体5が装着されている状態において廃液収容体5を省略し、装着部6の内部を下方から見て模式的に示す底面図である。
図3(b)は
図3(a)のA-A線断面図である。
図3(c)は、液体吐出装置1の装着部6から廃液収容体5が取り外された状態において廃液収容体5を省略し、装着部6の内部を下方から見て模式的に示す底面図である。
図3(d)は
図3(c)のB-B線断面図である。以下、本実施形態の液体吐出装置1の、第1の実施形態との相違点について主に説明し、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0016】
本実施形態の遮蔽部材9は、第1の実施形態と同様に、廃液収容体5の着脱動作に連動して、ばね10等の駆動機構によって、排出部7に対向する位置に対して進退可能である。本実施形態では、遮蔽部材9の進退(水平移動)を案内するためのガイド11が設けられている。このガイド11によって、廃液収容体5の取り外しと連動して水平移動する遮蔽部材9が、排出部7と対向する位置に確実に移動する。そのため、遮蔽部材9が排出部7を覆ってユーザーの手や衣服等が汚れることを抑える効果の信頼性が高い。廃液収容体5が取り外された状態で、排出部7に付着した廃液が不意に滴下した場合においても、遮蔽部材9が廃液を受け止め、遮蔽部材9から液滴がこぼれ落ちることが抑えられる。
本実施形態では、
図3(b),3(d)に2点鎖線で示すように、廃液収容体5の側面が、遮蔽部材9には当接するがガイド11には当接しない大きさに形成されている。
【0017】
[第3の実施形態]
本発明の液体吐出装置の第3の実施形態について説明する。
図4は、本実施形態に係る液体吐出装置1の遮蔽部材12の斜視図である。以下、本実施形態の液体吐出装置1の、第1~2の実施形態との相違点について主に説明し、第1~2の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0018】
本実施形態の遮蔽部材12は、第1の実施形態と同様に、廃液収容体5の着脱動作に連動して、ばね10等の駆動機構によって排出部7に対向する位置に対して進退可能である。本実施形態の遮蔽部材12は、
図4に示すように、排出部7と対向可能な面に凹部12aを有している。遮蔽部材12の凹部12aの深さは、例えば5mm以内であるが、これに限定されるものではない。この構成によると、廃液収容体5が取り外された状態で、排出部7に付着した廃液が不意に滴下した場合においても、遮蔽部材12の凹部12aが廃液を受け止めて貯留する。凹部12aが設けられているため、遮蔽部材12が貯留可能な廃液の量が多く、遮蔽部材12から廃液がこぼれ落ちることを抑制し、ユーザーの手や衣服等が汚れることを抑える効果の信頼性が高い。
【0019】
[第4の実施形態]
本発明の液体吐出装置の第4の実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る液体吐出装置1の遮蔽部材12の斜視図である。以下、本実施形態の液体吐出装置1の、第1~3の実施形態との相違点について主に説明し、第1~3の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0020】
本実施形態の遮蔽部材12は、第1の実施形態と同様に、廃液収容体5の着脱動作に連動して、ばね10等の駆動機構によって、排出部7に対向する位置に対して進退可能である。本実施形態の遮蔽部材12は、
図5に示すように、第3の実施形態と同様に排出部7と対向可能な面に凹部12aを有している。本実施形態では、遮蔽部材12の凹部12a内に廃液吸収体13が配置されている。廃液吸収体13は、例えば繊維材料からなるフェルトの成形体である。廃液吸収体13は、凹部12aとほぼ同じ平面形状を有しており、凹部12aのほぼ全体に亘って存在する。廃液吸収体13の厚さは、廃液吸収体13が排出部7からの廃液を吸収して膨潤したとしても、排出部7が設けられている装着部6の天面に接触して汚すことがないように、凹部12aの深さよりも薄いことが好ましい。例えば、遮蔽部材の凹部12aの深さが5mmの場合、廃液吸収体13の厚さは例えば2mmである。ただし、これらの構成に限定されるものではない。廃液吸収体13はフェルト以外の材料から形成されていてもよいが、液体を吸収する性質を持つものであることが好ましい。廃液吸収体13は、凹部12a内の全体ではなく部分的にのみ配置されていてもよい。また、凹部12aの深さは5mmに限定されず任意に変更可能である。そして、廃液吸収体13の高さも任意に変更可能であり、凹部12aの深さに応じて適宜に設定される。
【0021】
この構成によると、廃液収容体5が取り外された状態で、排出部7に付着した廃液が不意に滴下した場合においても、遮蔽部材12の凹部12a内の廃液吸収体13が廃液を受け止めて保持する。廃液吸収体13が廃液を保持するため、遮蔽部材12が振動や衝撃を受けても廃液がこぼれ落ちることが抑えられ、ユーザーの手や衣服等が汚れることを抑える効果の信頼性が高い。廃液吸収体13は、凹部12aに固着されず、廃液の吸収によって汚れがひどくなったら取り替えることが可能な構成であることが好ましい。
【0022】
[第5の実施形態]
本発明の液体吐出装置の第5の実施形態について説明する。
図6~8は、本実施形態に係る液体吐出装置1の装着部6の内部を下方から見て模式的に示す底面図である。以下、本実施形態の液体吐出装置1の、第1~4の実施形態との相違点について主に説明し、第1~4の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0023】
第1~4の実施形態の遮蔽部材9,12は平板状の部材であり、廃液収容体5の着脱動作に連動して、ばね10等の駆動機構によって、排出部7に対向する位置に対して進退可能である。これに対し、本実施形態の遮蔽部材14は、複数の板片14aが連結されたシャッター状の部材である。このシャッター状の遮蔽部材14は、
図6(a)に示す開放状態と、
図6(b)に示す遮蔽状態とをとることができる。
図6(a)に示す開放状態では、複数の板片14aが重なり合って、排出部7に対向する位置を開放している。
図6(b)に示す遮蔽状態では、複数の板片14aが、装着部6内においてガイド11に案内されながら、排出部7からの廃液の排出方向に直交する面内で水平移動する。それにより、複数の板片14aがほぼ重なり合わずに順番に並んで広がって位置し、排出部7を覆っている。廃液収容体5を装着部6から取り外す際には、取り外し動作に連動して、図示しない駆動機構がシャッター状の遮蔽部材14の各板片14aを拡げて、開放状態から遮蔽状態に移行させる。それにより、廃液収容体5が装着部6から取り外されても、排出部7が遮蔽部材14に覆われて露出しないため、ユーザーが誤って排出部7に触れて手や衣服等が汚れることが抑えられる。そして、廃液収容体5を装着部6に装着する際には、装着動作に連動して、図示しない駆動機構がシャッター状の遮蔽部材14の各板片14aを重ね合わせて、遮蔽状態から開放状態に移行させる。それにより、排出部7から排出した廃液を廃液収容体5で受け取ることができる。このように複数の板片14aからなるシャッター状の遮蔽部材14の場合、排出部7を覆わない時に収容するためのスペースが小さくて済む。
【0024】
図7には本実施形態の変形例の遮蔽部材15を示している。
図6に示すシャッター状の遮蔽部材14は直線的に移動する複数の板片14aからなるものであった。これに対し、
図7に示す本変形例の遮蔽部材15は、装着部内において、排出部7の周囲にそれぞれ位置し、排出部7からの廃液の排出方向に直交する面内で回動する複数の板片15aからなるシャッター状の部材である。このシャッター状の遮蔽部材15は、
図7(a)に示す開放状態と、
図7(b)に示す遮蔽状態とをとることができる。
図7(a)に示す開放状態では、平面図において、複数の板片15aがそれぞれ円形の排出部7の外側に位置して、排出部7に対向する位置を開放している。
図7(b)に示す遮蔽状態では、複数の板片15aがそれぞれ円形の排出部7の内側に向かって回動して、排出部7を覆っている。本変形例でも、廃液収容体5の装着部6への着脱動作に連動して、図示しない駆動機構がシャッター状の遮蔽部材15の各板片15aを内側(互いに近接する方向)または外側(互いに離れる方向)に向かって回動させて、開放状態と遮蔽状態との間を移行させる。
【0025】
図8には本実施形態の他の変形例の遮蔽部材16を示している。
図7に示すシャッター状の遮蔽部材15は回動する複数の板片15aからなるものである。これに対し、
図8に示す本変形例の遮蔽部材16は、装着部内において、排出部7からの廃液の排出方向に直交する面内で回動する1つの板片からなるシャッター状の部材である。このシャッター状の遮蔽部材16は、
図8(a)に示す開放状態と、
図8(b)に示す遮蔽状態とをとることができる。
図8(a)に示す開放状態では、1つの板片からなる遮蔽部材16が排出部7に対向する位置の外側に位置して、排出部7に対向する位置を開放している。
図8(b)に示す遮蔽状態では、遮蔽部材16が回動して排出部7を覆っている。本変形例でも、廃液収容体5の装着部6への着脱動作に連動して、図示しない駆動機構が遮蔽部材16を回動させて、開放状態と遮蔽状態との間を移行させる。
【0026】
このように、
図6~8に示す遮蔽部材14~16のいずれにおいても、廃液収容体5が装着部6から取り外された時に、排出部7が遮蔽部材14~16に覆われて露出せず、ユーザーが誤って排出部7に触れて手や衣服等が汚れることが抑えられる。廃液収容体5を装着部6に装着した時には、遮蔽部材14~16を、排出部7を覆う位置から水平移動または回動させて、排出部7を廃液収容体5に直接対向させる。それにより、排出部7から排出した廃液を廃液収容体5で受けることができる。なお、廃液収容体5の装着部6への着脱動作に連動して遮蔽部材14~16を水平移動または回動させる駆動機構は、ばねや歯車や電動モーターなど、公知の様々な機構を用いて形成すればよい。
【0027】
[第6の実施形態]
本発明の液体吐出装置の第6の実施形態について説明する。本実施形態の液体吐出装置1の、第1~5の実施形態との相違点について主に説明し、第1~5の実施形態と同様の部分については説明を省略する。本実施形態の廃液収容体5とその装着部6を
図9に示している。
図9(a)は、液体吐出装置1の装着部6に廃液収容体5が装着されている状態の模式的な部分断面図である。
図9(b)は、
図9(a)に示す状態において廃液収容体5を省略して下方から見た部分斜視図である。
図9(c)は装着部6から廃液収容体5を取り外している状態の模式的な部分断面図である。
図9(d)は、
図9(c)に示す状態を下方から見た部分斜視図である。
【0028】
図9(a)~9(d)に示すように、装着部6の天面には、排出部7を中心とする円形状のスリット17が設けられており、このスリット17を通って上下方向に進退可能な筒状(フード状)の遮蔽部材18が設けられている。筒状の遮蔽部材18はばね19によって下方に向かって付勢されている。遮蔽部材18の移動方向およびばね19による遮蔽部材18の付勢方向は、排出部7からの廃液の排出方向と実質的に一致している。
【0029】
図9(a)に示すように廃液収容体5が装着部6に装着された状態では、廃液収容体5が排出部7に対向するように位置するため、排出部7から排出された廃液は廃液収容体5に収容される。ばね19によって付勢されている遮蔽部材18は、廃液収容体5の上面に当接した状態で保持されている。
図9(c)~9(d)に示すように廃液収容体5が装着部6から取り外されると、遮蔽部材18は廃液収容体5の上面に当接せず、規制されなくなる。従って、ばね19に付勢された遮蔽部材18は、スリット17から飛び出して排出部7の周囲を取り囲んだ状態で、排出部7から廃液を排出する方向と一致する方向の下方へ突出する。この状態で、排出部7の周りが筒状(フード状)の遮蔽部材18で取り囲まれている。排出部7は覆われてはいないが、ユーザーの手や衣服は遮蔽部材18に遮られて排出部7に接することはない。従って、廃液収容体5が装着部6から取り外された状態であっても、ユーザーが誤って排出部7に触れて手や衣服等が汚れることが抑えられる。
【0030】
廃液収容体5が装着部6に再び装着される際には、ばね19の付勢力に抗してばね19を縮めて遮蔽部材18をスリット17内に押し込んで、廃液収容体5を排出部7と対向する所定の装着位置に移動させる。これにより、廃液収容体5が排出部7と直接対向し、排出部7から排出される廃液を収容可能な状態に復帰する。ばね19の付勢力に抗して遮蔽部材18をスリット17内に押し込む作業は、例えば、廃液収容体5に設けられた傾斜面(不図示)を遮蔽部材18の先端に当接させて摺動させることにより行ってもよい。また、ばね19の付勢力に抗して遮蔽部材18をスリット17内に押し込むための他の機構(不図示)を設けてもよいし、手動で遮蔽部材18をスリット17内に押し込んでもよい。
【0031】
本実施形態でも、液体吐出装置1の廃液収容体5が装着部6から取り外された際に、排出部7の廃液で手や衣服等が汚れることが抑えられる。そして、本実施形態では、排出部7からの廃液の排出方向に直交する面内において、遮蔽部材が水平移動や回動を行うスペースを必要としないので、液体吐出装置1の小型化に寄与する。
【符号の説明】
【0032】
1 液体吐出装置
2 液体吐出ヘッド
5 廃液収容体
6 装着部
7 排出部
9,12,14,15,16,18 遮蔽部材