(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】プロセスカートリッジ、画像形成装置及びクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240213BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G9/097 372
(21)【出願番号】P 2020005444
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019094056
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和則
(72)【発明者】
【氏名】小島 勝広
(72)【発明者】
【氏名】竹内 俊陽
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖数
(72)【発明者】
【氏名】三井 良浩
(72)【発明者】
【氏名】平田 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】新藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 聡伸
(72)【発明者】
【氏名】井加田 洸輔
(72)【発明者】
【氏名】照井 雄平
(72)【発明者】
【氏名】梅田 宜良
(72)【発明者】
【氏名】松永 智教
(72)【発明者】
【氏名】琴谷 昇平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正道
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-156880(JP,A)
【文献】特開2016-200815(JP,A)
【文献】特開2015-138256(JP,A)
【文献】特開2002-365994(JP,A)
【文献】特開2001-083863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって、
潜像が形成される周面を有する回転可能な像担持体と、
前記潜像を現像するために前記像担持体へ現像剤を供給する現像装置と、
前記周面に当接し、前記周面から現像剤を除去するためのクリーニング部材と、
前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回転方向の上流側において前記周面に当接するシール部材であって、現像剤が、シール部材の前記周面との当接部よりも前記回転方向の上流側から前記当接部よりも下流側へ移動することを許容しつつ、前記下流側から前記当接部よりも上流側へ移動することを規制するシール部材と、
を備え、
前記現像剤は、トナー母粒子及び該トナー母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該トナー母粒子表面に凸部を形成することを特徴とするトナーであり、
前記シール部材の仕事関数は、前記現像剤の仕事関数に対して、
(i)前記現像剤の帯電極性が負極性の場合には大きい値を有し、前記現像剤の帯電極性が正極性の場合には小さい値を有する、
若しくは、
(ii)前記現像剤の前記シール部材の仕事関数と前記現像剤の仕事関数との差の絶対値の大きさが
0.15eVよりも小さい、
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項2】
前記シール部材は、(i)PETからなるシート状部材に、PTFEからなるテープを接着したもの、若しくは、(ii)PETからなるシート状部材であることを特徴とする請求項
1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記クリーニング部材が固定される枠体をさらに備え、
前記クリーニング部材は、弾性体と、前記弾性体を支持する支持体と、を有し、
前記弾性体は、一端が前記支持体に固定され、自由端である他端が前記周面に当接し、前記支持体は、一端が前記枠体に固定され、自由端である他端に前記弾性体が固定され、
前記支持体の前記一端から前記弾性体の前記他端へ延びる方向が、前記他端が前記周面と当接する部分における前記像担持体の回転方向とは逆方向であることを特徴とする請求項1
または2に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
前記弾性体は、前記弾性体の前記他端における先端面と、前記先端面と稜線部を挟んで隣接して前記周面に対向する下面と、を有し、
プロセスカートリッジが画像形成装置の装置本体に装着された状態において、
前記先端面の少なくとも一部は、水平、若しくは、前記周面から離れるほど水平面からの高さが高くなるように水平面に対して仰角であることを特徴とする請求項
3に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項5】
前記先端面の少なくとも一部は、水平面に対する角度が前記現像剤の安息角よりも大きいことを特徴とした請求項
4に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項6】
装置本体と、
前記装置本体に対して着脱可能な、請求項1~
5のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジと、
備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
記録材に画像を形成する画像形成装置であって、
潜像が形成される周面を有する回転可能な像担持体と、
前記潜像を現像するために前記像担持体へ現像剤を供給する現像装置と、
前記周面に当接し、前記周面から現像剤を除去するためのクリーニング部材と、
前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回転方向の上流側において前記周面に当接するシール部材であって、現像剤が、シール部材の前記周面との当接部よりも前記回転方向の上流側から前記当接部よりも下流側へ移動することを許容しつつ、前記下流側から前記当接部よりも上流側へ移動することを規制するシール部材と、
前記シール部材に電圧を印加するための電圧印加手段と、
を備え、
前記現像剤は、トナー母粒子及び該トナー母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該トナー母粒子表面に凸部を形成することを特徴とするトナーであり、
前記シール部材は、導電性を有する部材であり、
前記電圧印加手段は、前記現像剤の正規の帯電極性とは逆極性の電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項8】
前記クリーニング部材が固定される枠体をさらに備え、
前記クリーニング部材は、弾性体と、前記弾性体を支持する支持体と、を有し、
前記弾性体は、一端が前記支持体に固定され、自由端である他端が前記周面に当接し、
前記支持体は、一端が前記枠体に固定され、自由端である他端に前記弾性体が固定され、
前記支持体の前記一端から前記弾性体の前記他端へ延びる方向が、前記他端が前記周面と当接する部分における前記像担持体の回転方向とは逆方向であることを特徴とする請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記弾性体は、前記弾性体の前記他端における先端面と、前記先端面と稜線部を挟んで隣接して前記周面に対向する下面と、を有し、
前記先端面の少なくとも一部は、水平、若しくは、前記周面から離れるほど水平面からの高さが高くなるように水平面に対してプラスの仰角であることを特徴とする請求項
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記先端面の少なくとも一部は、水平面に対する角度が前記現像剤の安息角よりも大きいことを特徴とした請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
枠体と、
前記枠体に回転可能に支持され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、
前記枠体に設けられ、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に該像担持体の表面に残留する現像剤をクリーニングするクリーニング部材であって、前記像担持体の表面と当接可能な当接部を備えるクリーニング部材と、
を有し、
使用時において、前記当接部と前記像担持体が当接する当接領域の、前記像担持体の回転方向における上流側に位置すると共に、該当接領域に隣接する隣接領域に、介在粒子が存在するクリーニング装置であって、
前記介在粒子は、
母粒子及び該母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子であって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該複合粒子の断面観察によって、母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとしたとき、
該凸高さhが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
前記凸部は、前記像担持体の回転にともない、前記母粒子の表面から前記当接領域に移動される、ことを特徴とするクリーニング装置。
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項12】
走査透過型電子顕微鏡STEMによる前記複合粒子の断面観察において、
前記水平画像の幅を周囲長Lとし、
前記水平画像に存在する前記有機ケイ素重合体の前記凸部のうち、凸高さhが40nm以上300nm以下となる凸部の前記凸幅wの合計をΣwとしたとき、
Σw/Lが、0.30以上0.90以下である請求項1
1に記載のクリーニング装置。
【請求項13】
前記複合粒子の前記有機ケイ素重合体の固着率が、80質量%以上である請求項1
1又
は1
2に記載のクリーニング装置。
【請求項14】
前記介在粒子は前記像担持体の周面に予め塗布されており、前記像担持体が回転することで前記介在粒子が前記隣接領域に搬送されることを特徴とする請求項1
1~1
3のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項15】
前記介在粒子は前記枠体の内部に収容されており、前記像担持体が回転することで前記介在粒子が前記隣接領域に搬送されることを特徴とする請求項1
1~1
3のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項16】
前記介在粒子は、前記現像剤像の現像に用いられる現像剤と同等以上の粘弾性を有していることを特徴とする請求項1
1~1
5のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項17】
前記介在粒子は、現像剤からなり、
該現像剤は、トナー母粒子及び該トナー母粒子表面の前記有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有することを特徴とする請求項1
1~1
6のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項18】
前記凸高さhが40nm以上300nm以下である前記凸部において、前記凸高さhの累積分布をとり、前記凸高さhの小さい方から積算して80個数%にあたる前記凸高さをh80としたとき、該h80が65nm以上である請求項1
1~1
7のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項19】
前記Rが、炭素数1以上6以下のアルキル基である請求項1
1~1
8のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項20】
枠体と、
前記枠体に回転可能に支持され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に形成された潜像を現像して前記現像剤像とすべく現像剤を前記像担持体に供給する現像剤担持体と、
前記枠体に設けられ、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に該像担持体の表面に残留する現像剤をクリーニングするクリーニング部材であって、前記像担持体の表面と当接可能な当接部を備えるクリーニング部材と、
を有し、
使用時において、前記当接部と前記像担持体が当接する当接領域の、前記像担持体の回転方向における上流側に位置すると共に、該当接領域に隣接する隣接領域に、介在粒子が存在するプロセスカートリッジであって、
前記介在粒子は、
母粒子及び該母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子であって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該複合粒子の断面観察によって、母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとしたとき、
該凸高さhが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
前記凸部は、前記像担持体の回転にともない、前記母粒子の表面から前記当接領域に移動される、ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項21】
走査透過型電子顕微鏡STEMによる前記複合粒子の断面観察において、
前記水平画像の幅を周囲長Lとし、
前記水平画像に存在する前記有機ケイ素重合体の前記凸部のうち、凸高さhが40nm以上300nm以下となる凸部の前記凸幅wの合計をΣwとしたとき、
Σw/Lが、0.30以上0.90以下である請求項2
0に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項22】
前記複合粒子の前記有機ケイ素重合体の固着率が、80質量%以上である請求項2
0又は2
1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項23】
前記介在粒子は、前記像担持体の周面に予め塗布されており、前記像担持体が回転することで前記介在粒子が前記隣接領域に搬送されることを特徴とする請求項2
0~2
2のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項24】
前記介在粒子は前記枠体の内部に収容されており、前記像担持体が回転することで前記介在粒子が前記隣接領域に搬送されることを特徴とする請求項2
0~2
2のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項25】
前記介在粒子は、前記現像剤像の現像に用いられる現像剤と同等以上の粘弾性を有していることを特徴とする請求項2
0~2
4のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項26】
前記介在粒子は、現像剤からなり、
該現像剤は、トナー母粒子及び該トナー母粒子表面の前記有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有することを特徴とする請求項2
0~2
5のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項27】
前記凸高さhが40nm以上300nm以下である前記凸部において、前記凸高さhの累積分布をとり、前記凸高さhの小さい方から積算して80個数%にあたる前記凸高さをh80としたとき、該h80が65nm以上である請求項2
0~2
6のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項28】
前記Rが、炭素数1以上6以下のアルキル基である請求項2
0~2
7のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項29】
枠体と、
前記枠体に回転可能に支持され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、
前記枠体に設けられ、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に該像担持体の表面に残留する現像剤をクリーニングするクリーニング部材であって、前記像担持体の表面と当接可能な当接部を備えるクリーニング部材と、
を有し、
使用時において、前記当接部と前記像担持体が当接する当接領域の、前記像担持体の回転方向における上流側に位置すると共に、該当接領域に隣接する隣接領域に、介在粒子が存在する画像形成装置であって、
前記介在粒子は、
母粒子及び該母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子であって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該複合粒子の断面観察によって、母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとしたとき、
該凸高さhが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
前記凸部は、前記像担持体の回転にともない、前記母粒子の表面から前記当接領域に移動される、ことを特徴とする画像形成装置。
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項30】
枠体と、
前記枠体に回転可能に支持され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に形成された潜像を現像して前記現像剤像とすべく現像剤を前記像担持体に供給する現像剤担持体と、
前記枠体に設けられ、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に該像担持体の表面に残留する現像剤をクリーニングするクリーニング部材であって、前記像担持体の表面と当接可能な当接部を備えるクリーニング部材と、
を有し、
使用時において、前記当接部と前記像担持体が当接する当接領域の、前記像担持体の回転方向における上流側に位置すると共に、該当接領域に隣接する隣接領域に、介在粒子が存在する画像形成装置であって、
前記介在粒子は、
母粒子及び該母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子であって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該複合粒子の断面観察によって、母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとしたとき、
該凸高さhが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
前記凸部は、前記像担持体の回転にともない、前記母粒子の表面から前記当接領域に移動される、ことを特徴とする画像形成装置。
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
【請求項31】
走査透過型電子顕微鏡STEMによる前記複合粒子の断面観察において、
前記水平画像の幅を周囲長Lとし、
前記水平画像に存在する前記有機ケイ素重合体の前記凸部のうち、凸高さhが40nm以上300nm以下となる凸部の前記凸幅wの合計をΣwとしたとき、
Σw/Lが、0.30以上0.90以下である請求項3
0に記載の画像形成装置。
【請求項32】
前記複合粒子の前記有機ケイ素重合体の固着率が、80質量%以上である請求項3
0又は3
1に記載の画像形成装置。
【請求項33】
前記介在粒子は、前記像担持体の周面に予め塗布されており、前記像担持体が回転することで前記介在粒子が前記隣接領域に搬送されることを特徴とする請求項3
0~3
2のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項34】
前記介在粒子は前記枠体の内部に収容されており、前記像担持体が回転することで前記介在粒子が前記隣接領域に搬送されることを特徴とする請求項3
0~3
2のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項35】
前記介在粒子は、前記現像剤像の現像に用いられる現像剤と同等以上の粘弾性を有していることを特徴とする請求項3
0~3
4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項36】
前記介在粒子は、現像剤からなり、
該現像剤は、トナー母粒子及び該トナー母粒子表面の前記有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有することを特徴とする請求項3
0~3
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項37】
前記凸高さhが40nm以上300nm以下である前記凸部において、前記凸高さhの累積分布をとり、前記凸高さhの小さい方から積算して80個数%にあたる前記凸高さをh80としたとき、該h80が65nm以上である請求項3
0~3
6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項38】
前記Rが、炭素数1以上6以下のアルキル基である請求項3
0~3
7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体から記録メディア若しくは中間転写体に現像剤像を転写した後に、該電子写真感光体に残留した現像剤を除去するクリーニング部材を有するプロセスカートリッジ、画像形成装置およびクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、画像形成装置の像担持体としての電子写真感光体ドラム(以下、感光ドラム)上の現像剤をクリーニングする装置に好適なシール部材として、熱可塑性ウレタンからなるシールシートが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、画像形成装置は、小型化、高速化、省エネルギー化、高画質化される傾向にある。画像形成装置の小型化によって、感光ドラムの大きさは小さくなる。また、高速化によって、感光ドラムが速く回転することになる。即ち、感光ドラム表面に当接しているクリーニング部材としてのクリーニングブレードは、感光ドラムが高速で繰り返し感光ドラム表面と摺動することになる。そして、クリーニングブレード自身の温度が上昇し、クリーニングブレードの硬度が柔らかくなり、その結果、クリーニングブレードと感光ドラムの接触面積が増えることで、感光ドラム表面とクリーニングブレードの摩擦力が上昇する。それによって、感光ドラムを駆動させるための駆動トルクが増加することになる。これは消費電力の増加に繋がり、省エネルギー化の妨げとなる。
【0005】
本発明の目的は、像担持体を駆動する際の駆動トルクの増加を抑えることが可能なプロセスカートリッジ、画像形成装置およびクリーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のプロセスカートリッジは、
画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって、
潜像が形成される周面を有する回転可能な像担持体と、
前記潜像を現像するために前記像担持体へ現像剤を供給する現像装置と、
前記周面に当接し、前記周面から現像剤を除去するためのクリーニング部材と、
前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回転方向の上流側において前記周面に当接するシール部材であって、現像剤が、シール部材の前記周面との当接部よりも前記回転方向の上流側から前記当接部よりも下流側へ移動することを許容しつつ、前記下流側から前記当接部よりも上流側へ移動することを規制するシール部材と、
を備え、
前記現像剤は、トナー母粒子及び該トナー母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該トナー母粒子表面に凸部を形成することを特徴とするトナーであり、
前記シール部材の仕事関数は、前記現像剤の仕事関数に対して、
(i)前記現像剤の帯電極性が負極性の場合には大きい値を有し、前記現像剤の帯電極性が正極性の場合には小さい値を有する、
若しくは、
(ii)前記現像剤の前記シール部材の仕事関数と前記現像剤の仕事関数との差の絶対値の大きさが
0.15eVよりも小さい、
ことを特徴とする。
【化1】
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
装置本体と、
前記装置本体に対して着脱可能な、本発明のプロセスカートリッジと、
備えることを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
記録材に画像を形成する画像形成装置であって、
潜像が形成される周面を有する回転可能な像担持体と、
前記潜像を現像するために前記像担持体へ現像剤を供給する現像装置と、
前記周面に当接し、前記周面から現像剤を除去するためのクリーニング部材と、
前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回転方向の上流側において前記周面に当接するシール部材であって、現像剤が、シール部材の前記周面との当接部よりも前記回転方向の上流側から前記当接部よりも下流側へ移動することを許容しつつ、前記下流側から前記当接部よりも上流側へ移動することを規制するシール部材と、
前記シール部材に電圧を印加するための電圧印加手段と、
を備え、
前記現像剤は、トナー母粒子及び該トナー母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該トナー母粒子表面に凸部を形成することを特徴とするトナーであり、
前記シール部材は、導電性を有する部材であり、
前記電圧印加手段は、前記現像剤の正規の帯電極性とは逆極性の電圧を印加することを特徴とする。
【化2】
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
上記目的を達成するため、本発明のクリーニング装置は、
枠体と、
前記枠体に回転可能に支持され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、
前記枠体に設けられ、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に該像担持体の表面に残留する現像剤をクリーニングするクリーニング部材であって、前記像担持体の表面
と当接可能な当接部を備えるクリーニング部材と、
を有し、
使用時において、前記当接部と前記像担持体が当接する当接領域の、前記像担持体の回転方向における上流側に位置すると共に、該当接領域に隣接する隣接領域に、介在粒子が存在するクリーニング装置であって、
前記介在粒子は、
母粒子及び該母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子であって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該複合粒子の断面観察によって、母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとしたとき、
該凸高さhが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
前記凸部は、前記像担持体の回転にともない、前記母粒子の表面から前記当接領域に移動される、ことを特徴とするクリーニング装置。
【化3】
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
上記目的を達成するため、本発明のプロセスカートリッジは、
枠体と、
前記枠体に回転可能に支持され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に形成された潜像を現像して前記現像剤像とすべく現像剤を前記像担持体に供給する現像剤担持体と、
前記枠体に設けられ、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に該像担持体の表面に残留する現像剤をクリーニングするクリーニング部材であって、前記像担持体の表面と当接可能な当接部を備えるクリーニング部材と、
を有し、
使用時において、前記当接部と前記像担持体が当接する当接領域の、前記像担持体の回転方向における上流側に位置すると共に、該当接領域に隣接する隣接領域に、介在粒子が存在するプロセスカートリッジであって、
前記介在粒子は、
母粒子及び該母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子であって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該複合粒子の断面観察によって、母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとしたとき、
該凸高さhが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
前記凸部は、前記像担持体の回転にともない、前記母粒子の表面から前記当接領域に移動される、ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【化4】
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
枠体と、
前記枠体に回転可能に支持され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、
前記枠体に設けられ、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に該像担持体の表面に残留する現像剤をクリーニングするクリーニング部材であって、前記像担持体の表面と当接可能な当接部を備えるクリーニング部材と、
を有し、
使用時において、前記当接部と前記像担持体が当接する当接領域の、前記像担持体の回転方向における上流側に位置すると共に、該当接領域に隣接する隣接領域に、介在粒子が存在する画像形成装置であって、
前記介在粒子は、
母粒子及び該母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子であって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該複合粒子の断面観察によって、母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとしたとき、
該凸高さhが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
前記凸部は、前記像担持体の回転にともない、前記母粒子の表面から前記当接領域に移動される、ことを特徴とする画像形成装置。
【化5】
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
枠体と、
前記枠体に回転可能に支持され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体に形成された潜像を現像して前記現像剤像とすべく現像剤を前記像担持体に供給する現像剤担持体と、
前記枠体に設けられ、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に該像担持体の表面に残留する現像剤をクリーニングするクリーニング部材であって、前記像担持体の表面と当接可能な当接部を備えるクリーニング部材と、
を有し、
使用時において、前記当接部と前記像担持体が当接する当接領域の、前記像担持体の回転方向における上流側に位置すると共に、該当接領域に隣接する隣接領域に、介在粒子が存在する画像形成装置であって、
前記介在粒子は、
母粒子及び該母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子であって、
該有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される構造を有し、
該有機ケイ素重合体は、該母粒子表面に凸部を形成し、
走査透過型電子顕微鏡STEMによる該複合粒子の断面観察によって、母粒子表面の周に沿った線を描き、該周に沿った線を基準に変換した水平画像において、
該凸部と該母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとし、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとしたとき、
該凸高さhが40nm以上300nm以下である該凸部において、
該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが0.33以上0.80以下となる該凸部の個数割合P(D/w)が、70個数%以上であり、
前記凸部は、前記像担持体の回転にともない、前記母粒子の表面から前記当接領域に移動される、ことを特徴とする画像形成装置。
【化6】
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、像担持体を駆動する際の駆動トルクの増加を抑えることが可能なプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1に係るプロセスカートリッジの模式的断面図
【
図3】実施例1におけるクリーニング装置の模式的断面図
【
図8】実施例1における感光ドラムとクリーニング部材との当接部拡大図
【
図10】実施例3における現像手段の当接離間機構の説明図
【
図11】実施例3における感光ドラムとクリーニング部材との当接部拡大図
【
図12】実施例3におけるクリーニングニップN1近傍の状態の模式図
【
図13】第2の実施形態における潤滑剤配置方法模式図
【
図14】第3の実施形態における潤滑剤配置方法模式図
【
図15】第4の実施形態における潤滑剤配置方法模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0010】
<第1の実施形態>
<実施例1>
(画像形成装置)
図1は、本発明の第1の実施形態の実施例1に係るプロセスカートリッジ100の構成を説明する模式的断面図であり、
図2は、当該プロセスカートリッジ100を用いる本発明の実施例1に係る画像形成装置200の構成を説明する模式的断面図である。なお、図
1、
図2を含む、以下の説明で用いる各断面図は、像担持体としての感光ドラム1の回転軸線方向に見た(該回転軸線に垂直に切った)断面を示している。本実施例では、プロセスカートリッジ100を画像形成装置本体に装着することによって画像形成装置200は構成される。すなわち、画像形成装置200の構成のうちプロセスカートリッジ100を除いた構成部分が装置本体となる。プロセスカートリッジ100は、感光ドラム1と、帯電ローラ6と、現像装置7と、クリーニング装置2で構成されたものであり、これらが一体化されたものとなっている。
【0011】
画像形成装置200は、以下の様に構成されている。中央部には、表面に静電潜像を形成するための電子写真感光体である感光ドラム1が配置されている。そして、その感光ドラム1の周囲に各種のプロセス手段が配設される。即ち、感光ドラム1の表面を一様に負極性に帯電させるための帯電手段である帯電ローラ6が配設され、帯電された感光ドラム1に印字情報及び画像情報に対応した静電潜像をレーザー露光により形成させるための露光装置17が配設される。そして、形成された静電潜像に負極性に帯電したトナーを反転現像させることにより可視像化するための現像手段である現像装置7が配設される。そして、可視像化されたトナー像(現像剤像)を被転写材である記録メディアとしての記録材12に転写するための転写手段である転写ローラ11が配設される。そして、転写された記録材12上のトナー像を永久定着させるための定着装置13が配設される。また、記録材12を供給する給送装置として、給紙カセット14と、給送ローラ15と、レジストローラ16が備えつけられている。また、転写工程時に記録材12に転写されずに感光ドラム1上に残った転写残トナーなどを除去するためのクリーニング装置2が配設される。
【0012】
本実施例の帯電ローラ6は、感光ドラム1に接触して感光ドラム1の回転と共に従動回転するように設置されている。本実施例では画像形成に際して帯電ローラ6に帯電バイアス電源(不図示)により、約-1000Vの直流電圧を印加し、感光ドラム1上の表面電位を暗部電位(VD)=-500Vに帯電させる。
【0013】
感光ドラム1は、帯電ローラ6によってその表面が暗部電位に帯電された後、露光装置17により印字情報及び画像情報等に対応する露光を受け、静電潜像が形成される。露光された部分の電位は、明部電位(VL)=-100Vとなる。
【0014】
現像装置7には、現像ローラ8と、供給ローラ9と、現像ブレード10が配設されている。現像剤担持体としての本実施例の現像ローラ8は、芯金の上にシリコンゴムを基層とし、アクリル・ウレタン系ゴムを表面にコートした二層構成を備えており、感光ドラム1の静電潜像に対して現像を行う。また、現像ローラ8にトナーを供給するための供給ローラ9は、芯金の上にウレタンスポンジを備えている。金属製の現像ブレード10は、現像ローラ8上のトナー層厚を規制し、トナーをネガ極性に帯電させる。現像ローラ8は、感光ドラム1に接触して現像を行うように設置されている。画像形成に際しては、現像バイアス電源(不図示)により、現像ローラ8に約-300Vの直流電圧が印加され、感光ドラム1上に形成された静電潜像に対して反転現像を行い、静電潜像をトナー像に可視像化させる。
【0015】
本実施例の転写手段としては、EPDMスポンジからなる転写ローラ11と、この転写ローラ11に電圧を印加する転写バイアス電源(不図示)とを備えている。転写ローラ11に印加される電圧は、画像形成時に定電圧制御される。転写ローラ11と、感光ドラム1とが対向する転写位置である転写ニップN3において、感光ドラム1上のトナー像は記録材12に転写される。
【0016】
給紙カセット14内に収納された記録材12は、給送ローラ15によって感光ドラム1上の可視像の形成と同期してレジストローラ16まで供給される。そして、この記録材1
2は、レジストローラ16によって感光ドラム1上に形成された可視像の先端と同期して、転写ローラ11と感光ドラム1の間に運ばれる。転写ローラ11には、約+1500Vの直流電圧が印加され、トナー像を記録材12に転写される。
【0017】
記録材12に転写されたトナー像は、記録材12とともに定着装置13に搬送され、熱と圧力を加えることにより定着され、記録画像となる。
【0018】
一方、転写ローラ11とのニップ部N3を通過した後、記録材12に転写されずに感光ドラム1上に残留した転写残トナーは、クリーニング装置2に移動する。
クリーニング装置2は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード3と、シール部材としてのシールシート4と、それらを支持するとともにそれらと感光ドラム1との間に廃トナー収容部5を形成する枠体と、で構成されている。クリーニング装置2の枠体は、感光ドラム1を回転可能に支持するとともに、帯電ローラ6を感光ドラム1に対して所定の当接状態を維持するように回転可能に支持している。まず、トナーは、感光ドラム1に軽接触するシール部材としてのシールシート4を通過した後、ポリウレタンゴムからなるクリーニング部材であるクリーニングブレード3により感光ドラム1上から取り除かれる。そして、取り除かれたトナーは廃トナー収容部5収容される。その後、感光ドラム1表面は次の画像形成に備えるため、再び帯電ローラ6により帯電が行われる。
【0019】
(クリーニング装置)
図3を用いて、本実施例のクリーニング装置2について説明する。
クリーニング装置2の枠体には、クリーニングブレード3が固定されている。クリーニングブレード3は、金属基材の支持体としての支持部材25と、熱硬化性樹脂からなる弾性体としてのクリーニング部26を備える。クリーニング部26は、先端稜線部を感光ドラム1に当接することで感光ドラム1上の残留トナー(残留現像剤)を除去する。
クリーニング部26は、その一端が、金属板金である板状の支持部材25に固定されており、自由端である他端が、感光ドラム1に当接可能な当接部をなし、感光ドラム1との当接領域であるクリーニングニップN1を形成する。
【0020】
支持部材25は、クリーニング装置2の枠体に固定されている。支持部材25は、一端がクリーニング装置2の枠体に固定され、自由端である他端にクリーニング部26が固定されている。支持部材25は、L字に折り曲げられた一方の板部がクリーニング装置2の枠体にビス等の締結具によって固定されており、他方の板部が一方の板部に対して略直交する方向に延びており、その先端にクリーニング部26が固定されている。支持部材25(他方の板部)とクリーニング部26は、支持部材25の固定端(一方の板部)から略同じ方向に一体的に延びている。その延びる方向は、感光ドラム1周面においてクリーニング部26の先端(他端)が当接する部分における、感光ドラム1の回転方向に対して対向する方向(逆方向)、すなわちカウンター方向となる。
【0021】
なお、各図におけるプロセスカートリッジ100の姿勢は、画像形成装置本体に装着された状態(使用時)での姿勢であり、本明細書においてプロセスカートリッジ100の各部材の位置関係や方向等について記載する場合はこの姿勢における位置関係や方向等を示している。すなわち、各図における紙面の上下方向が鉛直方向に対応し、紙面の左右方向が水平方向に対応する。なお、この配置構成の設定は、画像形成装置200が、通常の設置状態として、水平面に設置されることを前提とした設定である。
【0022】
クリーニング部26は、クリーニングブレード3の長手方向全幅において、先端稜線部を挟んで互いに隣接する、クリーニング部26の先端面であるカット面26aと、クリーニング部26の下面であるエア面26bと、が成す角が90°となる。カット面26aの厚みは、1.8mmである。
【0023】
クリーニング部26の侵入量δは、ブレード先端稜線部が変形せずに感光ドラム1へ侵入したときの仮想量である。また、クリーニング部26の設定角θは、エア面26bと感光ドラム1の交わる点での接線Xと、エア面26bのなす角度である。このようにクリーニング部26は、感光ドラム1に対して所定の侵入量δと、設定角θで当接するように設置される。これにより、所望の当接圧でクリーニング部26と感光ドラム1が当接した状態でクリーニングが行われる。本実施例では、ブレード侵入量δを0.7mm、ブレード設定角θを22°に設定している。
【0024】
クリーニング部26を感光ドラム1に当接させた状態では、クリーニング部26のエア面26bが感光ドラム1との摩擦力によって引っ張られ、先端が捲れたカールダウン部が形成される。そして、クリーニング部26において感光ドラム1と接触している先端のカールダウン部に荷重が集中することによってトナーの侵入を阻止している。
【0025】
(シールシート)
次に、本実施例の特徴であるシールシート4について説明する。
【0026】
シールシート4は、一端がクリーニング装置2の枠体に固定され、自由端である他端が感光ドラム1の周面に接触するように設けられている。シールシート4の一端から他端に向かう延び方向は、感光ドラム1周面においてシールシート4の先端(他端)側が当接する部分における、感光ドラム1の回転方向と略同じ方向、すなわち順方向となる。シールシート4は、トナーが、感光ドラム1周面との当接部N2よりも感光ドラム1の回転方向上流側から当接部N2よりも下流側へ移動することを許容しつつ、下流側から当接部N2よりも上流側へ移動することを規制するように、感光ドラム1に当接する。
【0027】
本実施例のシールシート4の材料には、(i)トナーよりも仕事関数が大きいもの、若しくは、(ii)トナーの仕事関数との差が小さいシート状部材を用いている。
【0028】
より詳細には、(i)シールシート4の材料の仕事関数の値が、トナーの仕事関数の値に対して、トナーの正規の帯電極性とは同極性側に大きいこと、である。また、(ii)シールシート4の材料の仕事関数の値が、トナーの仕事関数の値に対して、トナーの正規の帯電極性と逆極性側に差がある場合であっても、その差の絶対値の大きさが所定の範囲に収まっていること、である。すなわち、シールシート4との摺擦によってトナーの帯電状態が増強されることがないような仕事関数を有する材料で、シールシート4を構成することが本実施例の特徴である。
【0029】
具体的には、(i)トナーとの仕事関数差が大きいものとして、PETシート(東レ(株)製:ルミラー(登録商標))の表面に、PTFEテープ(3M(株)製:PTFEテープ 品番5490)を接着したシートを用いた。また、PTFEテープが接着された表面が感光ドラム1に接触させるようにした。
また、(ii)トナーとの仕事関数差が小さいものとして、PETシート(東レ(株)製:ルミラー(登録商標))を用いた。
【0030】
また、シールシート4の仕事関数(Φ)は、光電子分光装置(理研計器(株)製AC-2)を使用して測定を行った。本実施例においては、前記装置において、重水素ランプを使用し、照射光量とエネルギー走査範囲を適宜設定して測定を行った。そして、当該装置に組み込まれた仕事関数解析ソフトを使用して演算処理して、仕事関数を算出した。
その結果、PTFEテープの仕事関数は、5.75eVで、PETシートの仕事関数は、5.42eVであった。
【0031】
また、シールシート4は感光ドラム1に対して、廃トナー収容部5に溜まったトナーが、感光ドラム1とシールシート4との当接部N2から漏れ出ないようにしている。加えて、感光ドラム1とシールシート4との当接圧は、感光ドラム1の表層を傷つけず、且つ、感光ドラム1上のトナーが感光ドラム1の移動によって、感光ドラム1とシールシート4との当接部N2を通過できるような値に設定されている。
【0032】
(トナー)
次に本実施例で使用したトナーについて説明する。
本発明のトナーは、トナー粒子表面に有機ケイ素重合体を含む凸部を有する。該凸部は、トナー母粒子表面に面接触している。面接触することにより、該凸部の移動・脱離・埋没に対する抑制効果が顕著に期待できる。面接触の程度を表すために、トナーのSTEMによる断面観察を行った。
図4~
図7にトナー粒子の該凸部の模式図を示す。
図4に示す30がSTEM像であり、トナー粒子の断面構成の約1/4程度が分かる像であり、Tpはトナー母粒子、Tpsはトナー母粒子表面、eが凸部である。すなわち、トナー粒子の断面中心を原点とする座標系の4つの象限のうちの1つにおける断面構成を示す像であり、残り3つの象限は対称的に同様の構成を有していると推定する。
トナーの断面画像を観察し、トナー母粒子表面の周に沿った線を描く。その周に沿った線を基準に水平画像へ変換を行う。該水平画像において、該凸部と該トナー母粒子とが連続した界面を形成している部分における該周に沿った線の長さを凸幅wとする。また、該凸幅wの法線方向において該凸部の最大長を凸径dとし、該凸径dを形成する線分における該凸部の頂点から該周に沿った線までの長さを凸高さhとする。
【0033】
後述する本実施例の製造方法によって製造されるトナーにおいて形成される凸部の構成としては、
図5に示す凸部eが大半を占め、この凸部eが、後述する平面部epと曲面部ecを有する凸部eである。
図5及び
図7においては凸径dと凸高さhは同じであり、
図6において凸径dは凸高さhより大きくなる。
また、
図7は、中空粒子を潰す・割るなどして得られた、半球粒子の中心部が凹んだ、ボウル形状の粒子に類する粒子の固着状態を模式的に表したものである。
図7において、凸幅wはトナー母粒子表面と接している有機ケイ素化合物の長さの合計とする。すなわち、
図7における凸幅wはW1とW2の合計となる。
上記条件に基づき、有機ケイ素化合物の凸部において、該凸幅wに対する該凸径dの比d/wが、0.33以上0.80以下の凸形状であれば、凸部が移動・脱離・埋没しにくいことを見出した。すなわち、該凸高さhが40nm以上300nm以下である凸部において、該比d/wが0.33以上0.80以下の凸部の個数割合P(d/w)が70個数%以上であれば、長寿命化に耐えうる優れた転写性を発現することを見出した。
【0034】
40nm以上の凸部によって、トナー母粒子表面との転写部材との間にスペーサー効果が生じることで、転写性が良化しているものと考えられる。一方、300nm以下の凸部によって、耐久評価を通じて、移動・脱離・埋没への抑制効果が著しく発現していると考えられる。
40nm以上300nm以下の凸部の割合として、個数割合P(d/w)が70個数%以上であれば、耐久を通じて転写性を維持しつつ、さらに高い部材汚染抑制効果が発現することが判った。P(d/w)は、75個数%以上であることが好ましく、80個数%以上であることがより好ましい。一方、上限は特に制限されないが、好ましくは99個数%以下であり、より好ましくは98個数%以下である。
【0035】
また、走査透過型電子顕微鏡STEMによるトナーの断面観察において、上記水平画像の幅(トナー母粒子表面の周に沿った線の長さ)を周囲長Lとし、上記水平画像に存在する有機ケイ素重合体の凸部のうち、凸高さhが40nm以上300nm以下となる凸部の
該凸幅wの合計をΣwとしたとき、Σw/Lが0.30以上0.90以下であることが好ましい。
Σw/Lが0.30以上であれば転写性と部材汚染の抑制効果がより良好になり、Σw/Lが0.90以下であると転写性がより優れる。Σw/Lは、0.45以上0.80以下であればより好ましい。
【0036】
さらに、トナーの有機ケイ素重合体の固着率が80質量%以上であることが好ましい。固着率が80質量%以上であれば、転写性及び部材汚染の抑制効果が耐久使用を通じてより持続させやすい。該固着率は、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。一方、上限は特に制限されないが、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下である。該固着率を制御する方法の一例として、有機ケイ素化合物を添加し重合する際の、有機ケイ素重合体の添加速度、反応温度、反応時間、反応時のpH及びpH調整のタイミングなどが挙げられる。
【0037】
また、転写性をより良好にする観点から、該凸高さhが40nm以上300nm以下である凸部において、該凸高さhの累積分布をとり、該凸高さhの小さい方から積算して80個数%にあたる該凸高さをh80としたとき、該h80は65nm以上であることが好ましい。より好ましくは75nm以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは120nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。
【0038】
走査型電子顕微鏡SEMよるトナーの観察において、有機ケイ素重合体の凸部の最大径を凸径Rとしたときに、該凸径Rの個数平均径が20nm以上80nm以下であることが好ましい。より好ましくは、35nm以上60nm以下である。上記範囲であると、部材汚染が発生しにくくなる。
【0039】
トナーは、下記式(1)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を含む。
【化3】
【0040】
(式中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
式(1)の構造を有する有機ケイ素重合体において、Si原子の4個の原子価のうち1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の-SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO2)と類似の性質を有することが考えられる。
【0041】
式(1)で表される部分構造において、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。
炭素数が1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく例示できる。さらに好ましくは、Rはメチル基である。
有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
【0042】
【0043】
(式(Z)中、R1は、炭素数1以上6以下の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表し、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
R1は炭素数1以上3以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0044】
R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合させて架橋構造を形成する。
加水分解性が室温で穏やかであり、トナー母粒子の表面への析出性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。
また、R2、R3及びR4の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR1を除く一分子中に3つの反応基(R2、R3及びR4)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
【0045】
上記式(Z)で表される化合物としては以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシランのような三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
【0046】
また、本発明の効果を損なわない程度に、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、以下を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。一分子中に
4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)。例えば以下のようなものが挙げられる。
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン。
【0047】
さらに、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0048】
上記特定の凸形状をトナー粒子表面に形成する好ましい手法として、水系媒体にトナー母粒子を分散しトナー母粒子分散液を得たところへ、有機ケイ素化合物を添加し凸形状を形成させトナー粒子分散液を得る方法が挙げられる。
【0049】
トナー母粒子分散液は固形分濃度を25質量%以上50質量%以下に調整することが好ましい。そして、トナー母粒子分散液の温度は35℃以上に調整しておくことが好ましい。また、該トナー母粒子分散液のpHは有機ケイ素化合物の縮合が進みにくいpHに調整することが好ましい。有機ケイ素重合体の縮合が進みにくいpHは物質によって異なるため、最も反応が進みにくいpHを中心として、±0.5以内が好ましい。
【0050】
一方、有機ケイ素化合物は加水分解処理を行ったものを用いることが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物の前処理として別容器で加水分解しておく。加水分解の仕込み濃度は有機ケイ素化合物の量を100質量部とした場合、イオン交換水やRO水などイオン分を除去した水40質量部以上500質量部以下が好ましく、100質量部以上400質量部以下がより好ましい。加水分解の条件としては、好ましくはpHが2~7、温度が15~80℃、時間が30~600分である。
得られた加水分解液とトナー母粒子分散液とを混合して、縮合に適したpH(好ましくは6~12、又は1~3、より好ましくは8~12)に調整する。加水分解液の量はトナー母粒子100質量部に対して有機ケイ素化合物5.0質量部以上30.0質量部以下に調整することで、凸形状を形成しやすくする。凸形状の形成と縮合の温度と時間は、35℃~99℃で、60分~72時間保持して行うことが好ましい。
【0051】
また、トナー粒子の表面の凸形状を制御するにあたって、pHを2段階に分けて調整することが好ましい。pHを調整する前の保持時間及び、二段階目にpH調整する前の保持時間を適宜調整し有機ケイ素化合物を縮合することで、トナー粒子表面における凸形状を制御できる。例えばpH4.0~6.0で0.5時間~1.5時間保持した後に、pH8.0~11.0で3.0時間~5.0時間保持することが好ましい。また、有機化合物の縮合温度を35℃~80℃の範囲で調整することによっても凸形状が制御できる。
例えば、凸幅wは、有機ケイ素化合物の添加量、反応温度及び一段階目の反応pHや反応時間などにより制御できる。例えば、一段回目の反応時間が長くなると凸幅が大きくなる傾向がある。
また、凸径d及び凸高さhは、有機ケイ素重合体の添加量、反応温度及び二段階目のpHなどにより制御できる。例えば、二段階目の反応pHが高いと凸径d及び凸高さhが大きくなる傾向がある。
【0052】
以下、トナーの具体的な製造方法について説明するが、これらに限定されるわけではない。
トナー母粒子を水系媒体中で製造し、トナー母粒子表面に有機ケイ素重合体を含む凸部を形成することが好ましい。
トナー母粒子の製造方法として、懸濁重合法・溶解懸濁法・乳化凝集法が好ましく、中でも懸濁重合法がより好ましい。懸濁重合法では有機ケイ素重合体がトナー母粒子の表面に均一に析出し易く、有機ケイ素重合体の接着性に優れ、環境安定性、帯電量反転成分抑制効果、及びそれらの耐久持続性が良好になる。以下、懸濁重合法についてさらに説明する。
【0053】
懸濁重合法は、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて着色剤などの添加剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、該重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体を重合することにより、トナー母粒子を得る方法である。
重合性単量体組成物には、必要に応じて離型剤、その他の樹脂を添加してもよい。また、重合工程終了後は、公知の方法で、生成した粒子を洗浄、濾過により回収することができる。なお、上記重合工程の後半に昇温してもよい。さらに未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、重合工程後半又は重合工程終了後に一部分散媒体を反応系から留去することも可能である。
このようにして得られたトナー母粒子を用い、上記方法により有機ケイ素重合体の凸部を形成させることが好ましい。
【0054】
トナーには離型剤を用いてもよい。離型剤としては、以下のものが挙げられる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその酸アミド、エステル、又はケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ-ン樹脂。
なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。離型剤は単独で用いてもよいし複数を混合し使用してもよい。
離型剤の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100質量部に対して2.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0055】
その他の樹脂として、例えば、以下の樹脂を用いることができる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合し用いてもよい。
【0056】
重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。
スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチル、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
これらのビニル重合体の中でも、スチレン、スチレン誘導体、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体が好ましい。
【0057】
また、重合性単量体の重合に際して、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’-アゾビス-(2,4-ジバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのような過酸化物系重合開始剤。
これらの重合開始剤は、重合性単量体100質量部に対して0.5質量部~30.0質量部の添加が好ましく、単独で用いても複数を併用してもよい。
【0058】
また、トナー母粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対し0.001質量部~15.000質量部である。
【0059】
一方、トナー母粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。例えば、以下のものが挙げられる。
ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコ
ールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
多官能の架橋性単量体としては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。
好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部~15.000質量部である。
【0060】
上記懸濁重合の際に用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の分散安定剤として以下のものを使用することができる。
リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
【0061】
トナーには着色剤を用いてもよく、特に限定されず公知のものを使用することができる。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成しうる重合性単量体100質量部に対して3.0質量部~15.0質量部であることが好ましい。
【0062】
トナー製造時に荷電制御剤を用いることができ、公知のものが使用できる。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部~10.00質量部であることが好ましい。
【0063】
トナー粒子はそのままトナーとして用いてもよいし、必要に応じて、トナー粒子に各種有機又は無機微粉体を外添してもよい。該有機又は無機微粉体は、トナー粒子に添加した時の耐久性から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
有機又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
【0064】
トナーの流動性の改良及びトナーの帯電均一化のために有機又は無機微粉体の表面処理を行ってもよい。有機又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で用いてもよいし複数を併用してもよい。
【0065】
以下、本発明に関係する各種測定方法を述べる。
<走査透過型電子顕微鏡(STEM)におけるトナーの断面の観察方法>
走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察されるトナーの断面は以下のようにして作製する。
以下、トナーの断面の作製手順を説明する。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。
次に、PTFE製のチューブ(Φ1.5mm×Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上に前記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。
次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることができる。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得する。また、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、画像を取得する。画像倍率は100,000倍にて行い、
図4のようにトナー1粒子中の断面の周のうち4分の1から2分の1程度収まるように画像取得を行う。得られた画像について、画像処理ソフト(イメージJ(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能))を用いて画像解析を行い、有機ケイ素重合体を含む凸部を計測する。画像解析はSTEM画像30枚について行う。
まず、ライン描画ツール(StraghtタブのSegmented lineを選択)にてトナー母粒子の周に沿った線を描く。有機ケイ素重合体の凸部がトナー母粒子に埋没しているような部分は、その埋没はないものとして滑らかに線をつなぐ。
その線を基準に水平画像へ変換(EditタブのSelection選択し、propertiesにてline widthを500pixelに変更後、EditタブのSelectionを選択しStraghtener行う)を行う。該水平画像について、有機ケイ素重合体を含む凸部一箇所ずつ、前述した方法により凸幅w、凸径d及び凸高さhを計測する。STEM画像30枚測定した結果から、P(d/w)を算出する。また、凸高さhの累積分布をとり、h80を算出する。
また、画像解析に用いた水平画像に存在する凸高さhが40nm以上300nm以下となる凸部の凸幅wの合計値をΣwとし、画像解析に用いた水平画像の幅を周囲長Lとする。当該水平画像の幅が、STEM画像中のトナー母粒子表面の長さに相当する。一枚の画像からΣw/Lを算出し、STEM画像30枚の相加平均値を採用する。
詳細な凸部の計測に関しては、前述の説明や
図5~7のとおりである。
計測はImage Jにて、画像上のスケールをStraightタブのStraig
ht Lineで重ね、AnalyzeタブのSet Scaleにて、画像上のスケールの長さを設定したのち行う。凸幅wまたは凸高さhに相当する線分をStraightタブのStraight Lineで描き、AnalyzeタブのMeasureにて計ができる。
【0066】
<走査型電子顕微鏡(SEM)における凸部の平均粒径の算出方法>
SEM観察の方法は、以下の通り。日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影される画像を用いて行う。S-4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペースト(TED PELLA,Inc、 Product No. 16053, PELCO Colloidal Graphite,Isopropanol base)を薄く塗り、その上にトナーを吹き付ける。さらにエアブローして、余分な該微粒子を試料台から除去した後、15mAで15秒間白金蒸着する。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを30mmに調節する。
(2)S-4800観察条件設定
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[2.0kV]、エミッション電流を[10μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[下(L)]を選択し、反射電子像を観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[8.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
【0067】
(3)焦点調整
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。観察粒子の最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。
次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。
得られたSEM画像から、トナー粒子表面に存在する、20nm以上の該凸部500箇所の個数平均径(D1)の計算を画像処理ソフト(イメージJ)により行った。測定方法は以下の通りである。
・有機ケイ素重合体の凸部の個数平均径の測定
粒子解析により、画像中の凸部とトナー母粒子を二値化により、色分けする。次に、計測コマンドの中から、選択された形状の最大長さを選択し、凸部1箇所の凸径R(最大径)を計測する。この操作を複数行い、500箇所の相加平均値を求めることで、凸径Rの個数平均径を算出する。
【0068】
<有機ケイ素重合体の固着率の測定方法>
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50ml)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを含む水溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥する。乾燥品をスパチュラで解砕し、蛍光X線でケイ素の量を測定する。水洗後のトナーと初期のトナーの測定対象の元素量比から固着率(%)を計算する。
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中に水洗後のトナーと初期のトナーを約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
トナー中の定量方法としては、例えばケイ素量はトナー粒子100質量部に対して、例えば、シリカ(SiO2)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用
いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を2.0質量部、5.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO2添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナーを、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体の含有量を求める。上記方法により算出した初期のトナーの元素量に対して、水洗後のトナーの元素量の比率を求め固着率(%)とする。
【0069】
[トナーTの製造例]
以下に、トナーTの製造例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの製造例に制限されるものではない。製造例中の各材料の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0070】
[トナーTの製造例]
(水系媒体1の調製工程)
撹拌機、温度計、還留管を具備した反応容器中にイオン交換水650.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、15000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 :6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン:20.0部
・n-ブチルアクリレート:20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン):0.3部
・飽和ポリエステル樹脂:5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃):7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を15000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合・蒸留工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を
行った。
その後、反応容器の還留管を冷却管に付け替え、スラリーを100℃まで加熱することで、蒸留を6時間行い未反応の重合性単量体を留去し、トナー母粒子分散液を得た。
【0071】
(有機ケイ素化合物の重合)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
得られたトナー母粒子分散液の温度を55℃に冷却したのち、有機ケイ素化合物の加水分解液を25.0部添加して有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま15分保持した後に、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを5.5に調整した。55℃で撹拌を継続したまま、60分間保持したのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpHを9.5に調整し、更に240分保持してトナー粒子分散液を得た。
【0072】
(洗浄、乾燥工程)
重合工程終了後、トナー粒子分散液を冷却し、トナー粒子分散液に塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキを40℃の恒温槽にて72時間かけて乾燥・分級を行い、トナー粒子Tを得た。
【0073】
以上のようにして作成したトナーTを本実施例の現像装置7に入れると、トナーTはマイナス(負極性)に帯電した。
【0074】
(トナーの仕事関数)
また、トナーの仕事関数(Φ)は、シールシート4に用いた材料と同様に、光電子分光装置(理研計器(株)製AC-2)を使用して測定を行った。
その結果、トナーの仕事関数は、5.53eVであった。
【0075】
(トナーパージシーケンス)
本実施例においては、クリーニングブレード3に潤滑性を付与するためにトナーをクリーニングブレード3に定期的に供給している。
そのために、画像形成装置200には、トナーを現像装置7からクリーニング装置2に供給するためのトナーパージシーケンスが、所定の印字枚数毎に実行するように設定されている。
【0076】
本実施例のトナーパージシーケンスでは、印字枚数が100枚毎に非画像形成時を設けて、画像形成を中断させて、その時にトナーパージシーケンスを動作させるようにした。そして、トナーパージシーケンス1回毎に、感光ドラム1の回転方向(
図1等の矢印A方向)に15mmの幅を有する横帯パターンを描画して、トナーを感光ドラム1上に現像させる。そして、転写ローラ11に-200Vの転写バイアスを印加して、転写ローラ11にトナーが転移しないようにして、トナーをクリーニング装置2に供給した。
これによって、定期的にトナーがクリーニング装置2に供給される。
【0077】
(駆動トルク)
次に、本実施例における感光ドラム1の駆動トルクの測定について説明する。
本測定では、クリーニング装置2の枠体に、感光ドラム1とクリーニングブレード3と
シールシート4を装着した状態にて、感光ドラム1の駆動トルクを測定するためのトルク測定器が接続された回転治具に接続した。その際、トナーパージシーケンスによるクリーニング装置2へのトナー供給を想定して、シールシート4の上流側に予め感光ドラム1の回転方向に15mm、軸方向全域の横帯ベタ画像が形成されている感光ドラム1を用いた。
その結果、回転開始5秒後の感光ドラム1の駆動トルクは、シールシート4表面にPTFEテープを貼り付けたクリーニング装置2では、1.74kgf・cmであった。
また、別の材料である、PETシートをシールシート4として用いたときの、クリーニング装置2での駆動トルクは、1.78kgf・cmであった。
【0078】
(低トルクの作用説明)
次に、本実施例におけるクリーニング装置2では、表面に凸部を有するトナーの凸部を効果的にクリーニングニップN1に供給することによって駆動トルクの低減を実現している。そのメカニズムについて、
図8を用いて詳しく説明する。
【0079】
図8(a)は、一次転写されずに感光ドラム1に残留したトナー(残留トナー)Tをクリーニング部26で清掃した際のクリーニングニップN1近傍の状態の模式図を示している。
トナー(現像剤)Tは、トナー母粒子Tpと、該トナー母粒子Tpの表面に形成される複数の凸部eと、からなる。
記録材12に転写されずに感光ドラム1に残留したトナー(残留トナー)Tは、シールシート4と感光ドラム1との当接部N2を通過し、クリーニング部26に到達する。クリーニング部26に到達したトナーTは、クリーニング部26と摺擦し、トナーT表面に形成されている凸部eの少なくとも一部がトナー母粒子Tpからクリーニング部26に移行する。一部の移行した凸部eが、クリーニング部26で移行した他の凸部eに押されることにより、クリーニングニップN1に移動し、凸部eの平面部epがクリーニング部26側に付着する。クリーニングニップN1内に突入出来なかった凸部eは、クリーニングニップN1の入り口付近に堆積し、凸部eの堆積層23を形成する。
【0080】
堆積層23が形成された後は、
図8(b)のように、転写されずに感光ドラム1に残留したトナー(残留トナー)Tは、堆積層23に突き当たる。その後、後方(感光ドラム1の移動方向上流)より連続的に押し寄せるトナーTの循環によって、矢印B1方向に押し上げられる。押し上げられたトナーTは重力によって、矢印B2方向に移動する。これによって、領域27において、トナーTには、矢印B1から矢印B2への循環が発生する。このとき、トナーTはカット面26aやトナーT同士と摺擦し、トナーT表面に形成されている凸部eが他のトナーTの表面や堆積層23に移行する。
【0081】
ところで、トナーTはクリーニングニップN1に到達する前に、トナーTはシールシート4と摺擦する。その際、本実施例では、シールシート4として、(i)仕事関数がトナーTよりも大きい材料であるPTFEや、(ii)トナーTと仕事関数がほぼ同等の材料であるPETを用いている。
【0082】
(i)シールシート4にPTFEを用いる場合には、トナーTとPTFEが摺擦したときにトナーTがポジ(正極性)に帯電するような材料を用いている。そのため、トナーTは、感光ドラム1とシールシート4との当接部N2を通過する際にシールシート4と摺擦し、その電荷がプラス側に変化する。トナーTは、感光ドラム1とシールシート4との当接部N2を通過する前にはマイナスに帯電しているので、シールシート4との摺擦によってその電荷がプラス側に変化することで、帯電量が減少する。そのため、トナーTの静電的付着力は弱まり、トナーTの流動性が良化する。
【0083】
(ii)シールシート4にPETを用いた場合には、トナーTとシールシート4が摺擦しても、トナーTの電荷の変化は少ないため、トナーTの流動性の変化も少ない。
そして、このトナーTが領域27に到達すると、トナーTの流動性が悪化していないため、トナーTが動きやすく、トナーTがカット面26aやトナーT同士と摺擦する機会が多くなり、凸部eがトナーT表面から他のトナーTやクリーニング部26や堆積層23に移行する量が多くなる。そのために、多くの移行した凸部eをクリーニングニップN1に供給することが可能になる。
【0084】
図8のように、本実施例で用いたトナーTでは、他のトナーTやクリーニング部26や堆積層23に移行した凸部eが平面部epと曲面部ecを有しており、移行した凸部eのうち、クリーニングニップN1内に進入したものは、凸部eの平面部epがクリーニング部26側に付着する。それによって、凸部eの曲面部ecが、感光ドラム1と当接するために、クリーニングブレード3と感光ドラム1との接触面積が小さくなる。そのために、クリーニングブレード3と感光ドラム1表面が滑りやすくなり、感光ドラム1の駆動トルクを低くすることができる。
本実施形態で使用したトナーTは、画像形成(潜像の現像)に用いられる現像剤としての機能に加えて、感光ドラム1とクリーニングブレード3との当接領域に潤滑性を与える「複合粒子(介在粒子)」としての機能も併せ持つものとなっている。すなわち、トナーTは、感光ドラム1とクリーニングブレード3との当接領域に対して、感光ドラム1の回転方向における上流側に隣接する隣接領域としての領域27に複合粒子(介在粒子)として存在する。そして、感光ドラム1の回転により、トナーTの母粒子から当接領域へ移動した「凸部e」の上述した潤滑機能により、感光ドラム1の駆動トルクの低減を図ることができる。
なお、本実施形態と異なり、画像形成用(潜像現像用)の現像剤としてのトナーと、潤滑用の複合粒子としてのトナーとを、それぞれ別々に用意する、すなわち、それぞれの機能に特化した専用の粒子(トナー)を種類を異にして用意するように構成してもよい。潤滑用の複合粒子は、現像用のトナーと同様、母粒子および母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する潤滑剤とすることができる。
また、複合粒子としてのトナーの装置への供給方法としては、特に限定されるものではない。例えば、
廃トナー収容部5に複合粒子を予め収容しておく方法でもよい。すなわち、装置製造時において現像用トナーとは別の場所に複合粒子を収容しておき、装置の駆動によって所望の潤滑性を付与すべき箇所へ供給されるように構成してもよい。
【0085】
(比較例1)
比較例1として、トナーTよりも仕事関数が小さい、すなわち、トナーTと摺擦したときにネガ(負極性)に帯電するものをシールシート4に用いた。具体的には、PETシート(東レ(株)製:ルミラー(登録商標))の表面に、ナイロンテープ(3M(株)製:品番2756)を接着したシートを用いた。また、ナイロンテープが接着された表面が感光ドラム1に接触させるようにした。
また、シールシート4の仕事関数(Φ)は、実施例1と同様に光電子分光装置(理研計器(株)製AC-2)を使用して測定を行った。その結果、ナイロンテープの仕事関数は、5.20eVであった。
また、感光ドラム1の駆動トルクも実施例1と同様の方法で測定した。その結果、シールシート4表面にナイロンテープを貼り付けたクリーニング装置2での駆動トルクは、2.13kgf・cmであった。
【0086】
このように、シールシート4の材料としてトナーTをマイナスに帯電させるような材料、つまり、トナーTの仕事関数よりも小さい仕事関数を有する材料を用いた場合、トナーTの電荷は以下のように変化する。すなわち、トナーTは、感光ドラム1とシールシート4との当接部N2を通過すると、シールシート4との摺擦によって、その電荷がマイナス
側に変化する。トナーTは、感光ドラム1とシールシート4との当接部N2を通過する前にはマイナスに帯電しているので、シールシート4との摺擦によってその電荷が更にマイナス側に変化することで、帯電量が増加する。そのため、トナーTの静電的付着力はさらに強まり、トナーTの流動性が悪化してしまう。そして、トナーTがマイナス電荷を多く持っているために、領域27に到達しても、トナーT同士が凝集してしまい、領域27付近のトナーTの動きが鈍くなり、トナーTがカット面26aやトナーT同士との摺擦機会が減少する。そのため、凸部eがトナー母粒子TpからトナーTやクリーニング部26や堆積層などに移行しづらく、クリーニングニップN1へ供給される移行した凸部eの量が少なくなってしまう。そのため、クリーニング部26側に付着する移行した凸部eの量が少なくなり、クリーニングブレード3と感光ドラム1表面が滑りにくくなる。その結果、感光ドラム1の駆動トルクが高くなってしまう。
【0087】
(比較例2)
別の比較例としての比較例2では、トナーは、表面に凸部eを有していないトナーを用い、シールシート4は、実施例1、実施例2、比較例1と同様の材料を用いて、感光ドラム1の駆動トルクを測定した。
【0088】
シールシート4に用いた材料は、一つは、PETシート(東レ(株)製:ルミラー(登録商標))の表面に、PTFEテープ(3M(株)製:PTFEテープ 品番5490)を接着したシートである。また、もう一つは、PETシート(東レ(株)製:ルミラー(登録商標))で、更に、もう一つは、PETシート(東レ(株)製:ルミラー(登録商標))の表面に、ナイロンテープ(3M(株)製:品番2756)を接着したシートである。
【0089】
これらの材料にて、同様に感光ドラム1の駆動トルクを測定したところ、PTFEテープでは2.94kgf・cm、PETシートでは3.09kgf・cm、ナイロンテープでは3.04kgf・cmであった。
【0090】
このように、表面に凸部eを有していないトナーが堆積層23に到達し、トナー母粒子Tpから脱離した外添剤がクリーニングニップN1内に進入したとしても、外添剤に平面部を有していないために、クリーニング部26にほとんど付着しない。そして、外添剤は感光ドラム1の移動によってクリーニング部26から出て行ってしまう。そのため、クリーニングブレード3と感光ドラム1表面が滑りにくくなり、感光ドラム1の駆動トルクが高くなってしまう。
【0091】
以上のように、トナーの正規の帯電極性がマイナス(負極性)で、表面に凸部eを有するトナーTを用いた画像形成装置において、シールシート4に用いる材料の仕事関数が(i)トナーTの仕事関数よりも大きい、若しくは、(ii)トナーTの仕事関数との差が小さい。
これにより、感光ドラム1とシールシート4との当接部N2を通過する際に、トナーTとシールシート4が摺擦しても、トナーTは除電されるか、若しくは、電荷が維持されるため、トナーTに、更にマイナス電荷を付与されることはほとんどない。そのため、トナーTの静電的付着力が強くなることは無く、トナーTの流動性が悪化することはない。そして、このトナーTが領域27に到達すると、トナーTの流動性が維持されているため、トナーTがカット面26aやトナーT同士と摺擦する機会が多くなり、トナーT表面からトナーTやクリーニング部26や堆積層などに移行する凸部eの量が多くなる。そのために、多くの移行凸部をクリーニングニップN1に供給することが可能になる。
【0092】
本実施例で用いたトナーTでは、トナーTやクリーニング部26や堆積層などに移行した凸部eが平面部epと曲面部ecを有しており、移行した凸部eのうち、クリーニング
ニップN1内に進入したものは、凸部eの平面部epがクリーニング部26側に付着する。それによって、凸部eの曲面部ecが、感光ドラム1と当接するために、クリーニングブレード3と感光ドラム1との接触面積が小さくなる。そのために、クリーニングブレード3と感光ドラム1表面が滑りやすくなり、感光ドラム1の駆動トルクを低くすることができる。
【0093】
また、本実施例では、(ii)トナーTとシールシート4の仕事関数差が少ない例として、PETシートを用いた例を示したが、これに限られるものではない。例えば、トナーとシールシート4に用いられる材料の仕事関数差が0.15eV以内であれば、摺擦によって付与される電荷の量は少なく、トナーの流動性も維持されると考えられる。
【0094】
また、本実施例では、トナーの正規の帯電極性がマイナス(負極性)のトナーに関して説明したが、この限りではなく、トナーの正規の帯電極性がプラス(正極性)のトナーに関しては、トナーの仕事関数の値に対して、シールシート4の仕事関数の値を小さくする。これによって、シールシート4とトナーが摺擦したときに、プラスに帯電したトナーにマイナスの電荷が付与され、トナーの帯電量が減少する。そして、トナーの静電的付着力は弱まり、トナーの流動性が良化することで、トナー表面の凸部eをトナーやクリーニング部26や堆積層などに移行しやすくさせる。それによって、トナーの凸部eをクリーニングニップN1に供給することができ、凸部eの平面部epをクリーニング部26側に付着させる。それにより、クリーニングブレード3と感光ドラム1との接触面積を小さくすることができるので、感光ドラム1の駆動トルクが低減される。
【0095】
また、本実施例では、プロセスカートリッジが画像形成装置200の装置本体に対して着脱可能に設けられた構成を例示して説明したが、本発明が適用可能な装置構成はこれに限られるものではない。
例えば、画像形成装置本体からクリーニング装置が着脱可能に設けられていない装置構成に対しても、本発明は適用可能である。
また、本実施例では、プロセスカートリッジとして、帯電ローラ6、現像装置7、クリーニング装置2を備えたものを例示して説明したが、少なくともクリーニング装置を備えるプロセスカートリッジに対して、本発明は適用可能である。
【0096】
<実施例2>
図9は、本発明の実施例2に係るプロセスカートリッジ100の模式説明図である。本発明の実施例2は、シールシート4に用いられるシートとして、SUS(ステンレス鋼)シートが用いられ、SUSシートには、電圧印加手段としての高圧電源装置40からバイアスが印加される構成となっている。印加されるバイアスは、プラスの電圧(トナー4の帯電極性とは逆極性の電圧)、若しくは、電圧が0Vのバイアス、すなわち、トナー4の帯電量を増加させないバイアス(トナー4の帯電極性と同極性側に大きさを有しないバイアス)が印加される。
なお、実施例2の構成のうち実施例1と同じ構成に関しては、同一符号を付し、説明を省略する。また、実施例1の説明は援用される。
本実施例の画像形成装置200も実施例1と同様の構成であるが、クリーニング装置2に設けられたシールシート4に用いられるシートの材料は、SUSシートである。さらに、SUSシートには、画像形成装置200内(装置本体)に設けられた高圧電源装置40からバイアスが印加されるようになっている。
なお、シールシート4に用いられるシートの材料は、SUSに限定されるものではなく、他の導電性を有する材料を用いてもよい。
【0097】
(シールシート、高圧バイアス)
次に本実施例の特徴であるシールシート4と、シールシート4に高圧電源装置40から
印加される高圧バイアスについて説明する。
本実施例のシールシート4の材質には、SUSシート(SUS304 厚み40μm)を用いた。
また、高圧バイアスとして、高圧電源装置40から、+400V、及び、0Vの直流バイアス(直流電圧)をシールシート4に印加した。
このように、シールシート4の材料を金属製とし、シールシート4にバイアスを印加することによって、トナーTの除電を行い、トナーTの静電的付着力の上昇を抑えることができる。
【0098】
(駆動トルク)
次に、本実施例における感光ドラム1の駆動トルクの測定について説明する。
高圧電源装置40から、+400Vと0Vの直流バイアスをシールシート4に印加した状態で、実施例1と同様の条件にて、感光ドラム1の駆動トルクを測定した。
その結果、感光ドラム1の駆動トルクは、+400Vのバイアスを印加したときには、1.96kgf・cmであり、0Vのバイアスを印加したときには、1.89kgf・cmであった。
【0099】
(低トルクの作用説明)
次に、本実施例における駆動トルクのメカニズムについて説明する。
【0100】
実施例1と同様に、記録材12に転写されずに感光ドラム1に残留したトナー(残留トナー)Tは、クリーニング部26に到達する。クリーニング部26に到達したトナーTは、クリーニング部26と摺擦し、トナーT表面に形成されている凸部eの少なくとも一部がトナー母粒子Tpからクリーニング部26に移行する。そして、移行した凸部eの平面部epがクリーニング部26側に付着したり、クリーニングニップN1の入り口付近に堆積し、移行した凸部eの堆積層23を形成する。
堆積層23が形成された後は、一次転写されずに感光ドラム1に残留したトナー(残留トナー)Tは、凸部eによる堆積層23に突き当たり、領域27において、矢印B1から矢印B2への循環が発生する。このとき、トナーTはカット面26aやトナーT同士と摺擦し、トナー表面に形成されている凸部eが他のトナーTの表面や堆積層23に移行する。
【0101】
ところで、トナーTは,クリーニングニップN1に到達する前に、シールシート4と摺擦する。その際、本実施例では,シールシート4に+400V、若しくは、0Vの直流バイアスが印加されている。
【0102】
すなわち、シールシート4に+400Vの直流バイアスが印加される場合、感光ドラム1とシールシート4間に電界が形成される。そして、トナーTとシールシート4が摺擦すると、シールシート4は導体であるので、トナーTのマイナス電荷はプラス側であるシールシート4側に移動する。それに対して、感光ドラム1表面は絶縁体なので、感光ドラム1からはトナーTへの電荷の移動はほとんど起こらない。その結果、トナーTは除電される。
【0103】
また、シールシート4に0Vの直流バイアスが印加される場合、感光ドラム1とシールシート4間に電界は形成されない。しかしながら、トナーTとシールシート4が摺擦すると、シールシート4が導体なので、トナーTが予め持っていたマイナス電荷がシールシート4に移動する。それに対して、感光ドラム1表面は絶縁体なので、感光ドラム1からはトナーTへの電荷の移動はほとんど起こらない。その結果、トナーTは除電される。
【0104】
結局、トナーTが予め持っていたマイナス電荷はシールシート4側に移動して、トナー
は除電され、トナーTの帯電量は減少する。そのため、トナーTの静電的付着力は弱まり、トナーTの流動性が良化する。
【0105】
そして、このトナーTが領域27に到達すると、トナーTの流動性が良いために、トナーTが動きやすく、トナーTがカット面26aやトナーT同士と摺擦する機会が多くなり、凸部eがトナー表面から他のトナーTの表面や堆積層23に移行する量が多くなる。そのために、多くの移行した凸部eをクリーニングニップN1に供給することが可能になる。本実施例で用いたトナーTでは、移行した凸部eが平面部epと曲面部ecを有しており、移行した凸部eのうち、クリーニングニップN1内に進入したものは、凸部eの平面部epがクリーニング部26側に付着する。それによって、凸部eの曲面部ecが、感光ドラム1と当接するために、クリーニングブレード3と感光ドラム1との接触面積が小さくなる。そのために、クリーニングブレード3と感光ドラム1表面が滑りやすくなり、感光ドラム1の駆動トルクを低くすることができる。
【0106】
(比較例)
比較例として、高圧電源装置40から、-400Vの直流バイアスをシールシート4に印加した状態で、実施例1と同様の条件にて、感光ドラム1の駆動トルクを測定した。
その結果、感光ドラム1の駆動トルクは、2.39kgf・cmとなり、実施例2のように、シールシート4に+400Vや0Vの直流バイアスを印加する場合よりも駆動トルクの値が大きくなった。
【0107】
これは、シールシート4に-400Vの直流バイアスが印加される場合、感光ドラム1とシールシート4間に電界が形成される。そして、トナーTとシールシート4が摺擦すると、シールシート4は導体であり、電位的にトナーTの方がシールシート4に比べてプラス側になるので、シールシート4からトナーTにマイナス電荷が移動する。それに対して、感光ドラム1表面は絶縁体なので、感光ドラム1からはトナーTへの電荷の移動はほとんど起こらない。その結果、トナーTのマイナス電荷がさらに増加する。そのため、トナーの静電的付着力は強まり、トナーTの流動性が悪化する。
【0108】
そして、トナーTがマイナス電荷を多く持っているため、トナーTが領域27に到達したときに、トナーT同士が凝集してしまい、領域27付近のトナーTの動きが鈍くなり、トナーTがカット面26aやトナーT同士と摺擦する機会が減少する。そのため、トナーTから凸部eが移行しにくい状況になり、堆積層23に堆積する移行した凸部eの量が少なくなってしまう。それによって、クリーニングニップN1へ供給される凸部eの量が少なくなり、クリーニング部26側に付着する凸部eの量が少なくなる。そのため、クリーニングブレード3と感光ドラム1表面が滑りにくくなり、感光ドラム1の駆動トルクが高くなってしまう。
【0109】
以上のように、表面に凸部eを有するトナーTを用いた画像形成装置において、シールシート4に用いられるシートとして、SUSシートが用いられ、SUSシートには、高圧電源装置40からプラスの電圧、若しくは、電圧がゼロのバイアスが印加される。これにより、感光ドラム1とシールシート4との当接部N2を通過する際に、トナーTとシールシート4が摺擦しても、トナーTは除電される。そのため、トナーTの静電的付着力が弱くなり、トナーTの流動性が向上する。そして、このトナーTが領域27に到達すると、トナーTの流動性が向上しているので、トナーTがカット面26aやトナーT同士と摺擦する機会が多くなり、トナー表面から他のトナーTの表面や堆積層23に移行する凸部eの量が多くなる。そのために、多くの移行した凸部eをクリーニングニップN1に供給することが可能になる。本実施例で用いたトナーTでは、移行した凸部eが平面部epと曲面部ecを有しており、移行した凸部eのうち、クリーニングニップN1内に進入したものは、凸部eの平面部epがクリーニング部26側に付着する。それによって、凸部eの
曲面部ecが、感光ドラム1と当接するために、クリーニングブレード3と感光ドラム1との接触面積が小さくなる。そのために、クリーニングブレード3と感光ドラム1表面が滑りやすくなり、感光ドラム1の駆動トルクを低くすることができる。
【0110】
また、本実施例では高圧電源装置40に接続してシールシート4に0Vのバイアスを印加したが、この限りではなく、画像形成装置200本体のグランド(GND)に接続されていても良い。
【0111】
また、本実施例では、プロセスカートリッジが画像形成装置200の装置本体に対して着脱可能に設けられた構成を例示して説明したが、本発明が適用可能な装置構成はこれに限られるものではない。
例えば、画像形成装置本体からクリーニング装置が着脱可能に設けられていない装置構成に対しても、本発明は適用可能である。
また、本実施例では、プロセスカートリッジとして、帯電ローラ6、現像装置7、クリーニング装置2を備えたものを例示して説明したが、少なくともクリーニング装置を備えるプロセスカートリッジに対して、本発明は適用可能である。
【0112】
<実施例3>
本発明の実施例3について説明する。本実施例のプロセスカートリッジ100及び画像形成装置200は、基本的に、
図1に示す実施例1の画像形成装置200と同様の構成とされるので、同一機能、構成を有する要素には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0113】
図8で説明した、領域27に滞留したトナーTの一部は感光ドラム1の駆動に伴い廃トナー収容部5に収容されてしまう。そのため、低印字率の画像を連続でプリントしたり、現像ローラ8と感光ドラム1が離間した状態で感光ドラム1を駆動すると、領域27に新たなトナーTが供給されない。その結果、領域27のトナー量が減少し駆動トルクの上昇を生じてしまう。
【0114】
そこで、本実施例では、領域27に滞留したトナーTの減少を抑制することができるようにカット面26aを配置したことを特徴としている。
具体的には、
図11に示すように、カット面26aを、水平、若しくはプラスの仰角(感光ドラム1表面から離れるほど水平線Hからの高さが増す角度)に、好ましくは、カット面26aと水平線Hとのなす角βをトナーTの安息角以上に設定している。
【0115】
さらに、本実施例では、現像ローラ8を感光ドラム1から離間させる当接離間機構を設けて、接触現像のかぶりを防止するために、非画像形成期間中の感光ドラム1の回転時に感光ドラム1から現像装置(現像ローラ8)を離間させる構成となっている。
【0116】
図10に、現像ローラ8の接触状態切り換え手段(当接離間機構)の一例を示す。本実施例に係る画像形成装置では、接触状態切り換え手段における作用部材としてのカム部材18が、現像装置7の枠体21の一部に当接するように、装置本体に配置されている。このカム部材18が回転することにより、現像装置7が不図示の支持軸を中心として装置本体に対して揺動自在に構成されており、この現像装置7の揺動によって、感光ドラム1と現像ローラ8の当接及び離間動作(当接状態と離間状態)が制御される。
図6は、カム部材18を回転することで現像ローラ8の感光ドラム1に対する接触、離間を切り換える様子を示した模式的断面図であり、(a)が接触状態(当接状態)、(b)が離間状態をそれぞれ示している。
【0117】
図10(b)に示したように、現像ローラ8と感光ドラム1が離間した状態で、感光ドラム1の駆動を行なうとクリーニング装置2の駆動トルク(モータ50の感光ドラム1を
回転駆動させるための駆動トルク)が上昇するが、以下でそのメカニズムを説明する。
【0118】
(非画像形成時におけるトルク上昇のメカニズム)
実施例1で説明したように、領域27に堆積したトナーTが循環し、トナーTがクリーニング部26や他のトナーTと摺擦することで、凸部eがトナーTからクリーニングニップN1に移行し、付着することでトルクの低減を行なっている。しかしながら、現像ローラ8が離間した状態で、感光ドラム1の駆動を行なうと、領域27のトナー層に新たな残留トナーTが供給されない。新たな残留トナーTが供給されない状況で感光ドラム1の駆動を行なうと、感光ドラム1の駆動に伴うクリーニング部26の振動により、カット面26a上に堆積した領域27のトナーTが廃トナー収容部5に落下する。その結果、カット面26a上に堆積し領域27のトナー量が減少する。領域27のトナー量が減少すると堆積層23に存在する凸部eの量が少なくなり、クリーニングニップN1に付着している凸部eの量が減少するため駆動トルクが上昇する。
【0119】
本出願の発明者は、駆動トルクの上昇がカット面26aの角度に大きく影響し、カット面26aの角度を水平面よりもプラスの仰角にすることで、クリーニング部26の振動による領域27の堆積トナー量の減少を低減することができることを見出した。以下、実験結果を詳述する。
【0120】
(駆動トルクの検討結果)
本実施例においては、カット面26aの配置に着目し、カット面の水平面に対する角度を変更し、現像ローラ8が離間した状態でのクリーニング装置2の駆動トルクを評価した。駆動トルクの測定方法は、実施例1と同様の方法で、回転開始5秒後と90秒後の駆動トルクの測定を行った。
【0121】
図11は、本実施例のクリーニング装置2における感光ドラム1とクリーニング部26との当接部周辺を拡大した模式的断面図を示している。
図12に示したように、カット面26aと水平線Hとのなす角βを変更したときの駆動トルクを測定した。
角度βがプラスの仰角(0度以上)の駆動トルクは、実施例1と同じ当接条件である、侵入量δ=0.7mm、ブレード設定角θ=22°に固定してトルク測定を行った。
【0122】
【0123】
表1から、角度βが正の値であると90秒後のトルクの上昇が抑制できる傾向があることがわかる。カット面26aがプラスの仰角(感光ドラム1表面から離れるほど水平線Hからの高さが増す角度)である場合、感光ドラム1の駆動に伴うクリーニング部26の振動によって領域27のトナーが廃トナー収容部5へ落下することが低減されるためであると思われる。
また、角度βがトナーの安息角である50度以上の場合、回転直後のトルクが低減する傾向がある。
【0124】
図12(a)は、角度βが0度、
図12(b)は、角度βが50度の場合のクリーニン
グニップN1近傍の状態の模式図を示している。
なお、クリーニングブレード3が感光ドラム1に対して所定のブレード設定角θに従って配置されるため、
図12(a)と
図12(b)とにおいて、感光ドラム1に対するクリーニング部26の当接位置が異なっている。
【0125】
図12(b)に示すように、カット面26aを安息角よりも大きくすることで、カット面26a近傍のトナーTが重力によってクリーニングニップN1方向に移動が促進される。これにより、領域27のトナー層においてトナーTが循環することで堆積層23に移行する凸部eの量が多くなる。
【0126】
ここで、トナーの安息角について説明する。トナーの安息角とは、トナーを平面上に落下させたときに、平面上にできるトナーの山の稜線の傾斜角をいう。本実施例では、パウダテスタPT-S(ホソカワミクロン社製)を使用し、安息角を測定した。目開き250μmのメッシュ上にトナー150gを乗せ、振動を加えることで漏斗を介して、直径8cmの円形テーブルの上にトナーを堆積させる。このとき、テーブルの端部からトナーがあふれる程度に堆積させる。このときのテーブル上に堆積したトナーの稜線と円形テーブル面との間に形成された角度を測定することで安息角とする。
【0127】
本実施例では、現像ローラ8を感光ドラム1から離間させる接離機構を設けた構成を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、現像ローラ8が感光ドラム1と常時当接している構成に対しても本発明は適用可能である。
【0128】
なお、上記各実施例は、それぞれの構成を可能な限り互いに組み合わせて構成することができる。
【0129】
<第2の実施形態>
本実施形態では、新品の感光ドラムが駆動してから、現像装置から現像剤が感光ドラム周面に現像され、クリーニングブレードの当接部に現像剤(トナー)が搬送されるまでの間に、当接部におけるトルクの低減を実現する為の構成について説明する。
【0130】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置及びプロセスカートリッジは、実施例1に記載の(画像形成装置)と同じ構成である為、本実施形態では説明を割愛する。
【0131】
(クリーニング装置)
本実施形態のクリーニング装置は、実施例1に記載の(クリーニング装置)と同じ構成である為、本実施形態では説明を割愛する。
【0132】
(現像剤)
本実施形態の「複合粒子(介在粒子)」を構成する現像剤としてのトナーは、実施例1に記載の(トナー)と同じ構成である為、本実施形態では説明を割愛する。
【0133】
本実施形態では、新品の感光ドラムとクリーニングブレードの当接部における駆動トルクを軽減するために、潤滑剤として機能する後述のトナー(複合粒子)を用いている。潤滑剤としてのトナーは、現像剤としても使用可能の為、「現像剤」と「潤滑剤」を同一の粒子(複合粒子)とすることができる。勿論、本発明は、本実施形態に限るものではなく、例えば、「現像剤」と「潤滑剤」を同一としなくてもよい。
つまり、画像形成(潜像の現像)に用いる(現像剤としての)トナーに、潤滑剤として機能する粒子(複合粒子)を、別途、含有(混合)させて予め現像容器内に収容させる構成としてもよい。
このように、カートリッジの各摺動部に所定の潤滑性能を与える潤滑剤(複合粒子)として、現像に用いるトナー(現像剤)を利用しても良いし、潤滑を主目的とした専用の粒子を用意するようにしてもよい。
【0134】
なお、専用の粒子(複合粒子)を用いる場合には、本実施形態のトナー(現像剤)から由来する潤滑機能を有する「凸部e」の形態と同様に、母粒子および母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する潤滑剤(複合粒子)であればよい。
この場合、潤滑を主目的とした複合粒子(潤滑剤)は、母粒子表面の有機ケイ素重合体が母粒子から、クリーニングニップN1に移行(供給)される構成であれば、本実施形態のような現像剤からなる複合粒子と同等な効果を得ることができる。
【0135】
(トナーTの製造例)
本実施形態のトナーTの製造例は実施例1に記載の(トナーTの製造例)と同じ構成である為、本実施形態では説明を割愛する。
【0136】
(潤滑剤の配置方法)
本発明の特徴である潤滑剤の配置方法について
図13を用いて説明する。本実施形態は
図13(a)の潤滑剤配置方法である。しかし、
図13(b)及び(c)の潤滑剤配置方法も可能である為、補足説明をする。
なお、本実施形態では、トナーTを潤滑剤として配置するが、上述したように、トナーTとは異なる複合粒子を潤滑剤として配置してもよい。
【0137】
まずは本実施形態で行っている
図13(a)の潤滑剤配置方法について説明する。潤滑剤はプロセスカートリッジ製造時に感光ドラム1の表面に配置され、潤滑剤配置域28を形成する。この潤滑剤配置域28をクリーニングブレード3のカット面26aとシールシート4の間に配置する構成である。すなわち、潤滑剤としてのトナーTが予め感光ドラム1の周面上の潤滑剤配置域28に塗布された構成となっている。もしくは、潤滑剤配置域28をクリーニング装置の枠体の内部空間に収容されるように構成してもよい。そして、装置が初めて駆動されるときに、潤滑剤配置域28に塗布された潤滑剤としてのトナーTが、感光ドラム1の回転により感光ドラム1とクリーニングブレード3との当接領域(その手前の隣接領域27)まで搬送され、凸部eが当接領域に移動して上述した潤滑作用をもたらす。
【0138】
潤滑剤配置域28がクリーニングブレード3からシールシート4の間に配置されることで、廃トナー収容部5の内部に潤滑剤配置域28が収まる為、潤滑剤飛散による潤滑剤配置域28以外の感光ドラム1表面及び帯電ローラ6の汚染を抑制することが出来る。また、クリーニングブレード3のカット面26aから潤滑剤配置域28の距離が短い為、感光ドラム1の駆動直後に潤滑剤がクリーニングブレード3のカット面26aに配置されることで駆動トルクが低下し、クリーニングブレード3への物理ダメージを低減することが可能である。
【0139】
次に潤滑剤配置例として
図13(b)も可能である為、補足説明する。
図13(a)と同様に感光ドラム1の表面に配置された潤滑剤は潤滑剤配置域29を形成し、シールシート4に対して感光ドラム1の回転方向A上流側に潤滑剤配置域29が配置される。その為、
図13(b)では潤滑剤配置量を
図13(a)の場合よりも増量することが可能となる。その結果、クリーニングブレード3のカット面26aに搬送する潤滑剤量が増え、より安定した潤滑効果が得られる。潤滑剤配置域29の位置は感光ドラム1の回転方向Aに対してシールシート4よりも上流であり、帯電ローラ6当接までの間に配置する事が、帯電ローラ汚染の観点から好ましい。
【0140】
併せて、潤滑剤配置例として可能な
図13(c)についても説明する。
図13(a)と同様に感光ドラム1の表面に配置された潤滑剤は潤滑剤配置域30を形成し、クリーニングブレード3のカット面26aに対して感光ドラム1の回転方向A上流側に潤滑剤配置域30が配置される。その為、
図13(a)と同様に感光ドラム1の駆動直後にクリーニングブレード3のカット面26aに潤滑剤を配置可能であり、また
図13(b)と同様に潤滑剤塗布量の増量が可能となることで安定した潤滑効果を得ることが可能となる。
図13(c)の場合も
図13(b)と同様に帯電部材汚染の観点から、潤滑剤配置域30の位置は感光ドラム1の回転方向Aに対してシールシート4よりも上流であり、帯電ローラ6当接までの間に配置することが好ましい。
【0141】
(潤滑剤)
本実施形態では、潤滑剤としてトナーを使用している。以下に潤滑剤としてのトナーについて詳細に説明する。
【0142】
使用した潤滑剤は本実施形態の(トナー)で説明したトナー粒子表面に有機ケイ素重合体を含む凸部を有するトナーを使用した。潤滑剤としてのトナーの詳細な条件について、複数の実施形態のトナーと、比較例としての複数のトナーを製造し、低トルク化の検討を実施した。表2に各種製造条件を示す。
【0143】
[潤滑剤1の製造例]
(水系媒体1の調製工程)
撹拌機、温度計、還留管を具備した反応容器中にイオン交換水650.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
【0144】
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、15000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0145】
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 :6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン:20.0部
・n-ブチルアクリレート:20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン):0.3部
・飽和ポリエステル樹脂:5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃):7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0146】
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を15000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパー
オキシピバレート10.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて15000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0147】
(重合・蒸留工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。
【0148】
その後、反応容器の還留管を冷却管に付け替え、スラリーを100℃まで加熱することで、蒸留を6時間行い未反応の重合性単量体を留去し、着色剤粒子分散液を得た。
【0149】
(有機ケイ素化合物の重合)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
【0150】
得られた着色剤粒子分散液の温度を55℃に冷却したのち、有機ケイ素化合物の加水分解液を25.0部添加して有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま15分保持した後に、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを5.5に調整した。55℃で撹拌を継続したまま、60分間保持したのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてpHを9.5に調整し、更に240分保持してトナー粒子分散液を得た。
【0151】
(洗浄、乾燥工程)
重合工程終了後、トナー粒子分散液を冷却し、トナー粒子分散液に塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離してトナーケーキを得た。
【0152】
得られたトナーケーキを40℃の恒温槽にて72時間かけて乾燥・分級を行いトナー粒子1を得た。表2にトナー粒子1の製造の条件を示す。
【0153】
[トナー粒子2乃至トナー粒子12の製造方法]
表2に示す条件に変更した以外は、トナー粒子1と同様にしてトナー粒子2乃至トナー粒子12を得た。トナー粒子2乃至トナー粒子12の製造条件を表2に示す。
【0154】
[比較用トナー粒子1の製造方法]
有機ケイ素化合物の重合に関して、下記に示すように変更した以外はトナー粒子1と同様にして、比較用トナー粒子1を得た。比較用トナー粒子1の製造条件を表2に示す。
【0155】
(有機ケイ素化合物の重合)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを4.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を40℃にした。その後、有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
【0156】
得られた着色剤粒子分散液の温度を70℃に冷却したのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液で、pHを9.5に調整した。70℃で撹拌を継続したまま、コロイダルシリカ
(スノーテックスST-ZL:固形分40%)5.0質量部と有機ケイ素化合物の加水分解液を12.5部添加して有機ケイ素化合物の重合を開始した。そのまま300分保持しトナー粒子分散液を得た。
【0157】
[比較用トナー粒子2の製造方法]
有機ケイ素化合物の重合に関して、下記に示すように変更した以外はトナー粒子1と同様にして、比較用トナー粒子2を得た。比較用トナー粒子2の製造条件を表2に示す。
【0158】
(有機ケイ素化合物の重合)
ポリビニルアルコール1.0質量部をエタノール/水=1:1(質量比)の混合溶液20質量部に溶解した混合溶媒中に、着色剤粒子分散液に分散させて、次いで、ケイ素化合物として3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン20質量部を溶解させ、更に5時間の攪拌を行なって、トナー粒子内に3-(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシランを膨潤させて内在させた。
【0159】
次いで、温度を70℃にしたのち、3.0%炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを9.5に調整した。10時間室温にて攪拌することによって、トナー粒子表面でゾルゲル反応を進行させて、比較用トナー粒子2を得た。
【0160】
[比較用トナー粒子3の製造方法]
トナー粒子1の製造例で有機ケイ素化合物の重合を行わないことで、比較用トナー粒子3を得た。比較用トナー粒子3の製造条件を表2に示す。
【0161】
【0162】
(駆動トルクの測定)
次に、本実施形態における感光ドラム1の駆動トルクの測定について説明する。
【0163】
本測定では、クリーニング装置2の枠体に、感光ドラム1、感光体ドラムと従動回転す
るように固定された帯電ローラ、クリーニングブレード3、及びシールシート4を装着した状態でトルク測定を行った。その上で、感光ドラム1の駆動トルクを測定するためのトルク測定器が接続された回転治具に接続し、トルク測定を行った。本実施形態はカートリッジ使用初期での駆動トルクを想定している為、現像装置7は感光ドラム1と離間状態とし、現像装置7からの影響を受けないようにした。
【0164】
駆動トルク測定は潤滑剤の潤滑効果維持の程度を確認する為、駆動開始直後及び駆動開始60秒後で実施した。得られた駆動トルク値は下記の評価基準様に照らし合わせて判定ランクを設定した。本実施形態での潤滑効果有無の判定は駆動開始60秒後の駆動トルクが判定ランク△以上を良好と判断した。表3に各種検討トナーのトルク測定結果を示す。
【0165】
(評価基準)
○:駆動トルクが1.8kgf・cm以下
△:駆動トルクが1.8kgf・cmより上2.0kgf・cm以下
×:駆動トルクが2.0kgf・cmより上
【0166】
表3の結果において、Σw/Lが小さいトナーは駆動開始60秒後トルクが低い傾向がみられる。これは潤滑剤表面の凸部eが駆動開始から時間経過に伴い、カット面26aや潤滑剤同士での摺擦による凸部eの剥れが促進されている為であると考えられる。
【0167】
また、P(D/w)が小さいトナーにおいても駆動開始60秒後トルクが低い傾向が見られる。これは潤滑剤表面の凸部eの高さhが低い為、クリーニングブレード3と感光ドラム1との接触面積が小さくならず、駆動トルクが大きくなったと考えられる。
【0168】
(初期低トルクの作用説明)
次に、本実施形態におけるクリーニング装置2では、潤滑剤(表面に凸部を有するトナー)の凸部をクリーニングニップN1に供給することによって初期駆動トルクの低減を実現している。そのメカニズムについて、
図8を用いて詳しく説明する。
【0169】
図8(a)は、感光ドラム上に配置された潤滑剤をクリーニング部26で回収した時のクリーニングニップN1近傍の状態を模式図に表したものである。潤滑剤は前述の様にトナー母粒子Tpと、該トナー母粒子Tpの表面に形成される複数の凸部eと、からなる。前述の潤滑剤塗布方法によって潤滑剤はクリーニング部26に到達する。クリーニング部26に到達した潤滑剤は、「隣接領域」において、感光ドラム1の駆動によりクリーニング部26と感光ドラム1が相対移動し、クリーニング部26と感光ドラム1の間で潤滑剤の「対流」が発生する。この結果、潤滑剤同士、または、潤滑剤とその他の部材との間で繰り返し摺擦が発生し、潤滑剤の表面が「せん断応力」を受けることとなる。これにより、潤滑剤表面に形成されている凸部eの少なくとも一部がトナー母粒子Tpからクリーニング部26に移行する。一部の移行した凸部eが、クリーニング部26で移行した他の凸部eに押されることにより、クリーニングニップN1に移動し、凸部eの平面部epがクリーニング部26側に付着する。クリーニングニップN1内に突入出来なかった凸部eは、クリーニングニップN1の入り口付近に堆積し、凸部eの堆積層23を形成する。
【0170】
堆積層23が形成された後、感光ドラム1が矢印A方向に回転することで、クリーニング部26のカット面26aと感光ドラム1で形成された領域に溜まった潤滑剤に矢印B1方向に押し上げる力が働き、押し上げられた潤滑剤は重力によって、矢印B2方向に移動する。これによって、領域27において、潤滑剤には、矢印B1から矢印B2への循環が発生する。このとき、潤滑剤はカット面26aや潤滑剤同士で摺擦し、潤滑剤表面に形成されている凸部eが剥れ、堆積層23及びクリーニング部26のカット面26aに移行する。
【0171】
図8のように、本実施形態で用いた潤滑剤では、他の潤滑剤やクリーニング部26や堆積層23に移行した凸部eが平面部epと曲面部ecを有しており、移行した凸部eのうち、クリーニングニップN1内に進入したものは、凸部eの平面部epがクリーニング部26側に付着する。それによって、凸部eの曲面部ecが、感光ドラム1と当接するために、クリーニングブレード3と感光ドラム1との接触面積が小さくなる。そのために、クリーニングブレード3と感光ドラム1表面が滑りやすくなり、感光ドラム1の駆動トルクを低くすることができる。
【0172】
表3の実施形態4から実施形態15の条件の潤滑剤であれば、トナー母粒子Tpの表面に形成された凸部eがクリーニング部26のカット面26aに搬送され、その結果感光ドラム周面1に現像装置7から現像剤が現像されるまでの間も感光ドラム1の駆動において低トルク効果を発現させることが可能である。
【0173】
本実施形態において、潤滑剤は実施形態4~実施形態15に記載のトナーを利用しているが、実施形態4~実施形態15に記載のトナーは、現像剤としてのトナーTに対して粘弾性が同等かそれ以上、すなわち同等以上のトナーを使用している。潤滑剤としてのトナーは、本実施形態において感光体ドラム上に配置されているが、例えばプロセスカートリッジの輸送時に感光体ドラムが僅かに回転した等の際にクリーニング部材との当接ニップに移行する事が考えられる。その為、現像剤としてのトナーに比べて潤滑剤としてのトナーは、摺擦や押し圧を受ける事が想定される為、比較的変形・固着に不利な環境に晒される事がある為、現像剤としてのトナーTに対して粘弾性が同等かそれ以上のトナーを使用している。
【0174】
また、本実施形態では潤滑剤としてYeトナーを用いているが、これは現像剤としてのトナーへの影響を考え、混色しても影響の小さいYeを使用している。
【0175】
【0176】
<第3の実施形態>
本実施形態は潤滑剤配置方法を特徴とする為、潤滑剤供給方法についてのみ説明する。の画像形成装置をはじめとするその他の記載については第2の実施形態と同様である為、説明を割愛する。
【0177】
(潤滑剤の配置方法)
本実施形態では実施形態2と異なる潤滑剤配置方法について
図14を用いて説明する。本実施形態の特徴は潤滑剤31を廃トナー収容
部5に予め収容しておくことである。
潤滑剤31は、トナーTと同様、母粒子および母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子である。装置が駆動されると、感光ドラム1の回転により、感光ドラム1とクリーニングブレード3との当接領域に対して、感光ドラム1の回転方向における上流側に隣接する隣接領域27に搬送供給される。そして、母粒子表面から上記当接領域へ移動した凸部のトナーTにおける凸部eと同様の潤滑機能により、感光ドラム1の駆動トルクの低減を図ることができる。
図14(a)は、
図14(b)に記載の廃トナー収容
部5を上下反転させた状態である。
図14(a)の廃トナー収容
部5内に点線で描かれた様に潤滑剤31を廃トナー収容
部5内に収容する。そして、感光ドラム1が組み付けられた後に廃トナー収容
部5の姿勢を変える事で、シールシート4とクリーニングブレード3の間にある感光ドラム1表面に潤滑剤31が供給される。その結果、第2の実施形態の(潤滑剤の配置方法)で説明したのと同様のトルク低減効果が得られる。
【0178】
<第4の実施形態>
本実施形態も潤滑剤配置方法を特徴とする為、潤滑剤供給方法についてのみ説明する。の画像形成装置をはじめとするその他の記載については第2の実施形態と同様である為、説明を割愛する。
【0179】
(潤滑剤の配置方法)
本実施形態では実施形態2と異なる潤滑剤配置方法について
図15を用いて説明する。本実施形態の特徴は、潤滑剤32を現像ローラ8表面に予め配置(塗布)しておくことである。
潤滑剤32は、トナーTと同様、母粒子および母粒子表面の有機ケイ素重合体を含有する第1粒子を有する複合粒子である。装置が駆動されると、現像ローラ8と感光ドラム1の回転により、感光ドラム1とクリーニングブレード3との当接領域に対して、感光ドラム1の回転方向における上流側に隣接する隣接領域27に搬送供給され。そして、母粒子表面から上記当接領域へ移動した凸部のトナーTにおける凸部eと同様の潤滑機能により、感光ドラム1の駆動トルクの低減を図ることができる。
なお、潤滑剤32として、トナーTを用いてもよい。
図15は、現像ローラ8の表面に潤滑剤32を配置した状態である。感光ドラム1と現像ローラ8が当接した状態且つ現像ローラ8が回転した状態の際、感光ドラム1が現像ローラ8に対して正極となるような電圧を印加することで、潤滑剤32は感光ドラム1表面に現像される。
その結果、潤滑剤の配置は実施形態2の
図13(c)の状態と同様になり、トルク低減効果を得ることが可能となる。
感光ドラム1に現像ローラ8表面に配置された潤滑剤32を供給するには感光ドラム1と現像ローラ8が当接する必要があるが、常時当接であっても現像する間のみ当接のどちらでも可能である。また、現像ローラ8の回転方向は感光ドラム1の回転方向に対して順回転方向でも逆回転方向のどちらでも可能である。
【符号の説明】
【0180】
1…感光ドラム、2…クリーニング装置、3…クリーニングブレード、4…シールシート、5…廃トナー収容部、7…現像装置、18…カム部材、23…堆積層、25…支持部材、26…クリーニング部材、26a…カット面、26b…エア面、27…領域、100…プロセスカートリッジ、200…画像形成装置