(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】インプリント方法、インプリント装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240213BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020007017
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩司
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-061029(JP,A)
【文献】特開2011-253839(JP,A)
【文献】特開2012-084732(JP,A)
【文献】特開2013-138175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、硬化後の前記インプリント材と前記型とを分離する離型工程とを含むインプリント処理を行うインプリント方法であって、
前記基板の第1ショット領域および第2ショット領域を含む複数のショット領域それぞれの位置座標を特定する情報を含むグローバルアライメント情報を取得する取得工程と、
前記取得されたグローバルアライメント情報に基づいて、前記第2ショット領域を、計測部によって計測が行われる計測位置に移動させ、前記計測部により前記第2ショット領域と前記型との相対位置ずれを計測するプリアライメント計測工程と、
前記グローバルアライメント情報と前記計測された相対位置ずれとに基づいて前記第1ショット領域を前記インプリント処理が行われるインプリント位置に移動させた後、前記接触工程を開始する制御工程と、
を有
し、
前記グローバルアライメント情報は、オフアクシス計測部を用いて前記複数のショット領域のうちのサンプルショット領域の位置を計測するグローバルアライメント計測により取得された情報であり、
前記プリアライメント計測工程は、前記グローバルアライメント計測において前記サンプルショット領域が前記オフアクシス計測部によって計測が行われる位置の近傍に位置しているショット領域を前記第2ショット領域として選択することを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
前記制御工程により開始された前記接触工程により前記第1ショット領域の上の前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記第1ショット領域と前記型との相対位置ずれを計測し、該相対位置ずれに基づいて前記第1ショット領域と前記型との位置合わせを行う位置合わせ工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記第2ショット領域は、
前記型のパターンの全部が転写されるフルフィールドを有するショット領域であって、前記基板の周縁部に位置する周辺ショット領域ではないショット領域であることを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記第1ショット領域は、
前記型のパターンの一部のみが転写されるパーシャルフィールドを有するショット領域であって、前記周辺ショット領域であることを特徴とする請求項3に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記第2ショット領域は、前記第1ショット領域に対して
ショット中心間の距離が最小であるショット領域であることを特徴とする請求項4に記載のインプリント方法。
【請求項6】
前記プリアライメント計測工程の後、前記第1ショット領域を前記インプリント材の供給位置に移動させ、該供給位置において前記第1ショット領域の上に前記インプリント材を供給する供給工程を更に有し、
前記制御工程は、前記グローバルアライメント情報と前記計測された相対位置ずれとに基づいて前記第1ショット領域を前記供給位置から前記インプリント処理が行われるインプリント位置に移動させた後、前記接触工程を開始する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項7】
前記供給工程は、前記接触工程の前に、2つ以上のショット領域に連続して前記インプリント材を供給することを特徴とする請求項6に記載のインプリント方法。
【請求項8】
前記供給工程は、前記接触工程の前に、1ショット領域おきに2つ以上のショット領域に連続して前記インプリント材を供給することを特徴とする請求項6に記載のインプリント方法。
【請求項9】
基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、硬化後の前記インプリント材と前記型とを分離する離型工程とを含むインプリント処理を行うインプリント方法であって、
前記
基板の第1ショット領域および第2ショット領域を含む複数のショット領域それぞれの位置座標を特定する情報を含むグローバルアライメント情報を取得するためにオフアクシス計測部を用いて前記複数のショット領域のうちのサンプルショット領域の位置を計測するグローバルアライメント計測工程
と、
前記取得されたグローバルアライメント情報に基づいて、前記第2ショット領域を、計測部によって計測が行われる計測位置に移動させ、前記計測部により前記第2ショット領域と前記型との相対位置ずれを計測するプリアライメント計測工程と、
前記グローバルアライメント情報と前記計測された相対位置ずれとに基づいて前記第1ショット領域を前記インプリント処理が行われるインプリント位置に移動させた後、前記接触工程を開始する制御工程と、
を有し、
前記プリアライメント計測工程は、前記グローバルアライメント計測工程において前記サンプルショット領域が前記オフアクシス計測部によって計測が行われる第1計測位置に位置しているときに前記計測部によって計測が行われる第2計測位置の近傍に位置しているショット領域を前記第2ショット領域として選択し、前記サンプルショット領域の前記オフアクシス計測部による計測の後、前記第2ショット領域として選択されたショット領域を前記第2計測位置に移動させ、前記計測部により前記第2ショット領域と前記型との相対位置ずれを計測する
ことを特徴とする
インプリント方法。
【請求項10】
基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、硬化後の前記インプリント材と前記型とを分離する離型工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記基板を保持して移動する基板ステージと、
前記基板ステージによって保持された前記基板のショット領域と前記型との相対位置ずれを計測する計測部と、
前記インプリント処理の実施を制御する制御部と、
を有し、前記制御部は、
前記基板の第1ショット領域および第2ショット領域を含む複数のショット領域それぞれの位置座標を特定する情報を含むグローバルアライメント情報を取得し、
前記取得されたグローバルアライメント情報に基づいて、前記第2ショット領域を、前記計測部によって計測が行われる計測位置に移動させ、前記計測部を用いて前記第2ショット領域と前記型との相対位置ずれを計測
するプリアライメント計測を行い、
前記グローバルアライメント情報と前記計測された相対位置ずれとに基づいて、前記第1ショット領域が前記インプリント処理が行われるインプリント位置に位置するよう前記基板ステージを制御した後、前記接触工程を開始する
ように構成され、
前記グローバルアライメント情報は、オフアクシス計測部を用いて前記複数のショット領域のうちのサンプルショット領域の位置を計測するグローバルアライメント計測により取得された情報であり、
前記プリアライメント計測では、前記グローバルアライメント計測において前記サンプルショット領域が前記オフアクシス計測部によって計測が行われる位置の近傍に位置しているショット領域を前記第2ショット領域として選択する
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインプリント方法によって基板の上にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
を含み、前記処理された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント方法、インプリント装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記憶媒体や半導体デバイスの量産向けリソグラフィー技術の一つとして、インプリント装置が実用化されつつある。インプリント装置は、微細な回路パターンが形成された型(モールド)とシリコンウエハやガラスプレート等の基板上のインプリント材とを接触させて基板上にパターンを形成する。
【0003】
例えば、半導体デバイスの回路パターンの形成においては、既に基板上に形成されている回路パターンとこれから形成しようとする回路パターンとの重ね合わせ精度が非常に重要となりうる。インプリント装置における位置合わせ方法には、グローバルアライメントとダイバイダイアライメントが採用されうる。グローバルアライメントは、基板上の複数のサンプルショット領域のマークの計測結果に基づいて全ショット領域の位置を推定する方法である。ダイバイダイアライメントは、ショット領域ごとに基板側マークと型側マークとを光学的に検出して基板と型との位置ずれを補正する方法である。
【0004】
特許文献1には、グローバルアライメントの後、かつダイバイダイアライメントの前に、粗アライメント(プリアライメント)を行いうることが記載されている。特許文献2には、プリアライメントとして、ウエハ上に塗布された樹脂と型とが非接触の状態で型のマークとウエハ上のマークを検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-076626号公報
【文献】特開2012-084732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリアライメントは、インプリントする最初のショット領域で、あるいは、インプリントする都度、ショット領域上のインプリント材と型とを接触させる前に行われる。プリアライメントを行うことにより、ショット領域上のインプリント材と型とを接触させたときの初期相対位置ずれを小さくすることができる。
【0007】
しかし、インプリント対象のショット領域が基板の外周に位置する周辺ショット領域である場合には、マークの配置に制約がある、あるいは、前工程のプロセスによりマークが正常に形成されていない等の要因により、重ね合わせ精度が低下しうる。
【0008】
重ね合わせ精度の向上は、高精度な多層の回路パターンの形成を実現するための、インプリント技術における重要な要請である。本発明は、例えば、重ね合わせ精度の点で有利なインプリント方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、基板の上に供給されたインプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、硬化後の前記インプリント材と前記型とを分離する離型工程とを含むインプリント処理を行うインプリント方法であって、前記基板の第1ショット領域および第2ショット領域を含む複数のショット領域それぞれの位置座標を特定する情報を含むグローバルアライメント情報を取得する取得工程と、前記取得されたグローバルアライメント情報に基づいて、前記第2ショット領域を、計測部によって計測が行われる計測位置に移動させ、前記計測部により前記第2ショット領域と前記型との相対位置ずれを計測するプリアライメント計測工程と、前記グローバルアライメント情報と前記計測された相対位置ずれとに基づいて前記第1ショット領域を前記インプリント処理が行われるインプリント位置に移動させた後、前記接触工程を開始する制御工程と、を有し、前記グローバルアライメント情報は、オフアクシス計測部を用いて前記複数のショット領域のうちのサンプルショット領域の位置を計測するグローバルアライメント計測により取得された情報であり、前記プリアライメント計測工程は、前記グローバルアライメント計測において前記サンプルショット領域が前記オフアクシス計測部によって計測が行われる位置の近傍に位置しているショット領域を前記第2ショット領域として選択することを特徴とするインプリント方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、重ね合わせ精度の点で有利なインプリント方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】基板の複数のショット領域のインプリント順序を例示する図。
【
図5】周辺ショット領域と完全ショット領域の分類の一例を示す図。
【
図6】周辺ショット領域と完全ショット領域のマーク配置の例を示す図。
【
図9】従来のMFDによるインプリント処理を説明する図。
【
図10】MFDによるインプリント処理を説明する図。
【
図11】グローバルアライメント中のプリアライメントショットの計測を説明する図。
【
図12】実施形態における物品製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、実施形態におけるインプリント装置100の概略図である。本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、パターンが形成される対象物である基板Wは、その表面が水平面(XY平面)と平行になるように基板ステージ104の上に置かれる。よって以下では、基板Wの表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向といい、X軸周りの回転方向、Y軸周りの回転方向、Z軸周りの回転方向をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向という。
【0014】
まず、実施形態に係るインプリント装置の概要について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
【0015】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、インプリント材供給装置により、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0016】
図1において、インプリント装置100は、硬化部102と、型保持部103と、基板ステージ104と、供給部105と、制御部107と、TTM計測部122と、オフアクシス計測部131とを備える。
【0017】
硬化部102は、基板上のインプリント材と型108とが接触した状態でインプリント材を硬化させるために光109(紫外線)を射出する。硬化部102は、不図示の光源、光源から照射された光109をインプリントに適切な光に調整するための光学素子とを含みうる。射出された光109は型108を透過して基板上のインプリント材に照射される。なお、本実施形態では光硬化法を採用するために硬化部102は光109を射出する構成であるが、例えば熱硬化法を採用する場合には、硬化部102は、熱硬化性組成物からなるインプリント材を硬化させるための熱源部を備えることになる。
【0018】
型108は、基板111と対向する第1面に3次元状に形成されたパターン部8aを有する。パターン部8aには、例えば、回路パターンなどの基板に転写されるべき凹凸パターンが形成されている。型108は、石英など光109を透過させることが可能な材料で構成される。型108は、第1面とは反対側に、型108のZ方向の変形を容易にするためのキャビティ(凹部)8bを有する形状としてもよい。キャビティ8bは、例えば、Z方向からみて円形の平面形状を有し、厚み(深さ)は、型108の大きさや材質により適宜設定される。また、型保持部103内の開口領域117に、この開口領域117の一部とキャビティ8bとで囲まれる空間112を閉空間とする光透過部材113を設置し、不図示の圧力調整装置により空間112内の圧力を制御する構成もあり得る。例えば、型108と基板111上のインプリント材114とを接触させる際、圧力調整装置により空間12内の圧力をその外部よりも高く設定することにより、パターン部8aを基板111に向かって凸形に撓ませる。これによりパターン部8aの中心部からインプリント材114との接触が始まる。その後、空間12内の圧力を徐々に弱めていくことにより、パターン部8aの中心部から周辺部へと接触が進行していく。これにより、パターン部8aとインプリント材114との間に気体が閉じ込められることが防止され、パターン部8aの凹凸部にインプリント材114を隅々まで充填させることができる。
【0019】
インプリントヘッドとも呼ばれる型保持部103は、真空吸着力や静電力により型108を引き付けて保持する型チャック115と、型チャック115を保持し、型チャック115(すなわち、型108)を移動させる型駆動部116とを有する。型チャック115および型駆動部116は、硬化部102の光源から照射された光109が基板111に向けて照射されるように、中央部に開口領域117を有する。
【0020】
型保持部103はまた、型108の側面の複数箇所に外力を与えることにより型108(パターン部8a)の形状を補正する形状補正部118を有する。形状補正部118により、基板111上に既に形成されているパターンの形状に応じて型108の形状を変形させることができる。
【0021】
型駆動部116は、型108と基板111上のインプリント材114との接触および引き離し(離型)を選択的に行うように型108をZ方向に移動させる。型駆動部116に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータまたはエアシリンダがある。また、型108の高精度な位置決めに対応するために、型駆動部116は、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系を含んでいてもよい。さらに、型駆動部116は、Z方向だけでなくX方向やY方向、あるいはθZ方向の位置調整機能や、型108の傾きを補正するチルト機能等を有していてもよい。なお、インプリント装置100における接触および離型動作は、上述のように型108をZ軸方向に移動させることで実現してもよいが、基板ステージ104をZ軸方向に移動させることで実現してもよく、または、その双方を相対的に移動させてもよい。
【0022】
基板ステージ104は、基板111を保持して移動する。基板ステージ104は、基板111を吸着力により保持する基板チャック119(基板保持部)と、基板チャック119を保持し、XY平面内で移動可能とするステージ駆動部120とを有する。基板チャック119は、基板111の裏面を複数の領域で吸着保持する、不図示の複数の吸着部を備えうる。これらの吸着部は、それぞれ上記とは別の圧力調整装置に接続されている。各圧力調整装置は基板111と吸着部との間の圧力を調整して吸着力を発生させ、これにより基板111がチャック面上に保持される。このとき、各吸着部にてそれぞれ独立して圧力値(吸着力)が変更可能である。なお、吸着部の分割数(設置数)は、特に限定するものではなく、任意の数でよい。また、基板ステージ104は、その表面上に型108をアライメントする際に利用する基準マーク121を有する。ステージ駆動部120は、アクチュエータとして、例えばリニアモータを採用し得る。ステージ駆動部120も、X方向およびY方向のそれぞれに対して、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系を含んでいてもよい。さらに、ステージ駆動部120は、Z方向の位置調整のための駆動系や、基板111のθ方向の位置調整機能、または基板111の傾きを補正するチルト機能などを有していてもよい。基板ステージ104を駆動することによって、型108に対する基板111のアライメントを行うことができる。
【0023】
供給部105は、基板111上にインプリント材を供給(配置)する。供給部105は、インプリント材を吐出する吐出ノズルを有する。吐出ノズルから吐出されるインプリント材の量は、基板111上に形成されるインプリント材114の所望の厚さや、形成されるパターンの密度などにより適宜決定される。
【0024】
TTM計測部122は、例えば開口領域117内に設置され、基板111上に形成されたアライメントマークと、型108に形成されたアライメントマークとのX方向およびY方向の位置ずれを計測するための、光学系および撮像系を含むスコープを有する。なお、「TTM」は、"Through The Mold"の略であり、型を介して型側のマークと基板側のマークとを観察することが意図されている。
【0025】
一方、オフアクシス計測部131は、基板111に形成されたアライメントマークを、型108を介さずに検出するための、光学系および撮像系を含むスコープを有する。TTM計測部122とオフアクシス計測部131とを用いることで、型108と基板111の相対的な位置合わせを行うことができる。
【0026】
また、インプリント装置100は、基板ステージ104を載置するベース定盤124と、型保持部103を固定するブリッジ定盤125と、ベース定盤124から延設され、ブリッジ定盤125を支持するための支柱126とを備える。さらに、インプリント装置100は、型108を装置外部から型保持部103へ搬送する不図示の型搬送機構と、基板111を装置外部から基板ステージ104へ搬送する不図示の基板搬送機構とを備える。
【0027】
制御部107は、インプリント装置100の各構成要素の動作および調整などを制御し得る。制御部107は、例えばプロセッサ(CPU)およびメモリを含むコンピュータとして構成され、インプリント装置100の各構成要素に回線を介して接続され、プログラムに従って各構成要素の制御を実行し得る。なお、制御部107は、インプリント装置100の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成されてもよいし、インプリント装置100の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成されてもよい。
【0028】
[インプリント処理の概要]
図2および
図3を参照して、基板上のインプリント材114と型108とを接触させて基板上にパターンを形成するインプリント処理(インプリント方法)について説明する。S300で、制御部107は、型搬送機構を制御して、当該ロットで指定された型108を、型ストッカーから型保持部103まで搬送し、型チャック115に固定する。S302で、制御部107は、基板搬送機構を制御して、処理対象の基板111を基板キャリアから基板ステージ104まで搬送し、基板チャック119に固定する。
【0029】
次に、制御部107は、型108と基板111内の各ショットとの相対位置を計測するために、事前アライメント計測を行う。
S304で、制御部107は、TTM計測部122により型108上の型側マーク63を観察し位置を計測する。続いて、制御部107は、TTM計測部122により基板ステージ104上の不図示のマークを観察し、TTM計測部122に対する基板ステージ104の位置を計測する。
【0030】
S306では、グローバルアライメント計測が行われる。グローバルアライメント計測において、制御部107は、基板111がオフアクシス計測部131の下に位置するように基板ステージ104を駆動する。その後、制御部107は、オフアクシス計測部131を用いて、基板ステージ104基準で基板111内の複数のサンプルショット領域におけるマークの位置ずれを計測する。ここでいう位置ずれとは、ショット配列の設計データに基づき各サンプルショット領域のマークがオフアクシス計測部131の計測位置に位置するように基板ステージ104を駆動した際に検出される、計測位置に対するマークの位置ずれをいう。その後、制御部107は、得られた各サンプルショット領域の位置ずれに基づいて、異常値処理、関数フィッティング等の統計処理を行う。この統計処理によって、基板111上のすべてのショット領域の位置座標を特定し複数のショット領域間の位置関係の情報を含んだグローバルアライメント情報が取得される。
【0031】
制御部107は、まだインプリントされていないショット領域を指定する。基板内のインプリントされる領域(被処理領域)のことを「ショット領域(または単にショット)」と呼ぶ。インプリントする順序は、例えば
図4に示すように、基板111に対して、連続したショット領域であるShot1、2、3、4、…、6、7、8、…、14、…の順でありうる。インプリント順序はこの順序に限られるものではなく、千鳥順、ランダム等の順序を設定可能であるが、
図4のような隣り合うショット領域を順次にインプリントするインプリント順序は、スループットの点で有利な典型例である。ショットレイアウトおよびインプリント順序は、制御部107が有するメモリ等に予めレシピとして保存されている。
【0032】
より高精度に基板と型との位置合わせを行うために、S308で、プリアライメント計測が実施される。プリアライメント計測は次のように行われる。制御部107は、S306で取得されたグローバルアライメント情報に基づいて、最初にインプリントするショット領域が型108のパターン部8aの下の、インプリント位置に相当する計測位置に位置するように基板ステージ104を制御する。その後、制御部107は、
図3(a)に示すように、TTM計測部122を用いて基板側マーク62と型側マーク63とを同時に観察し、その相対位置ずれを計測する。
【0033】
S310で、制御部107は、対象ショット領域(これからインプリント処理を行うショット領域)が供給部105の下の供給位置に位置するよう基板ステージ104を制御し、供給部105により、対象ショット領域にインプリント材114が供給される。
【0034】
S312は、接触工程である。この接触工程では、まず、制御部107は、対象ショット領域を型保持部103の下(インプリント位置)に位置するように基板ステージ104を制御する。このとき制御部107は、S306で取得されたグローバルアライメント情報とS308のプリアライメント計測によって得られた相対位置ずれに基づいて基板ステージ104を駆動する。その後、制御部107は、型保持部103を制御して型108をZ方向に駆動させることにより、対象ショット領域上のインプリント材114と型108のパターン部8aとを接触させる。気泡ができるのを防止するために、接触時に空間12内の圧力が調整されうることは上記したとおりである。この接触により、
図3(b)に示すように、インプリント材114は、パターン部8aに形成された凹凸パターンに沿って流動し、基板111とパターン部8aとの間に充填されていく。
【0035】
S314で、制御部107は、TTM計測部122を用いて基板側マーク62と型側マーク63との相対位置ずれを計測し、相対位置ずれ量が所定のトレランス内に入るように基板ステージ104および形状補正部118を制御する。こうして型108のパターン部8aと対象ショット領域との位置合わせが行われる。この位置合わせは、ショット領域ごとに行われる位置合わせであり、ダイバイダイアライメントと呼ばれるものである。
【0036】
S316で、型108とインプリント材114とが接触している状態で、制御部107は硬化部102に光109を照射させインプリント材を硬化させる(硬化工程)。インプリント材114が硬化した後、S318で、制御部107は、
図3(c)に示すように、型保持部103を制御して、硬化後のインプリント材114と型108とを分離する(離型工程)。
【0037】
S320で、制御部107は、次に処理すべきショット領域があるかを判定する。次に処理すべきショット領域がある場合、処理はS310に戻り、次のショット領域のインプリント処理が行われる。次のショット領域のインプリント処理において、S312での接触工程のために、当該ショット領域がインプリント材の供給位置から型保持部103の下に移動される。このときも、S306で取得されたグローバルアライメント情報とS308のプリアライメント計測によって得られた相対位置ずれに基づいて基板ステージ104が駆動される。S320で次に処理すべきショット領域がないと判定された場合、処理はS322に進む。こうして、当該ロットで指定されたショット領域すべてに対してインプリント処理が行われ、基板111の全面にパターンが形成される。
【0038】
S322で、制御部107は、基板搬送機構を制御して、基板チャック119上に載置されているインプリント処理済みの基板111を回収する。S324で、制御部107は、次に処理すべき基板があるかどうかを判定する。次に処理すべき基板がある場合、処理はS302に戻り、次の基板についてインプリント処理が行われる。次に処理すべき基板がない場合、処理はS326に移行する。S326で、制御部107は、型搬送機構を制御して、型チャック115に保持されている型108を回収する。
【0039】
[プリアライメント計測の改良]
S314で実施されるダイバイダイアライメントにより、対象ショット領域と型108のパターン部8aとの位置合わせが行われる。ダイバイダイアライメント中は基板111上のインプリント材114と型108とが接触しているため、位置合わせできる量が限られるとともに、位置合わせに時間がかかる。そのため、ダイバイダイアライメント中の基板111と型108の位置合わせの量を小さくする必要がある。基板111上のインプリント材114と型108とを接触させる前に行われるS308のプリアライメント計測は、ダイバイダイアライメント中の基板111と型108の位置合わせの量を左右する。以下では、改良されたプリアライメント計測について説明する。
【0040】
上記したように、
図4の例によれば、基板111に対して、連続したShot1、2、3、4、…、6、7、8、…、14、…の順にインプリントが行われる。ところで、これらのショット領域には、基板111の周縁部に位置する「周辺ショット領域」も含まれる。周辺ショット領域は、パーシャルフィールド(PF)ともよばれる。周辺ショット領域以外のショット領域は、完全ショット領域あるいはフルフィールド(FF)とよばれる。基板111の有効面積(パターンが転写される領域の面積)を最大化する等の目的で、周辺ショット領域にもインプリント処理が行われうる。
【0041】
図5は、周辺ショット領域(PF)と完全ショット領域(FF)の分類の一例を示す図である。「周辺ショット領域」は、典型的には、型108と基板111上のインプリント材とを接触させたときに型108のパターン部8aの一部が基板111の周縁部(外周)からはみ出し、パターン部8aの一部のみが転写される「欠けショット領域」を含む。「欠け」がなくても、隅部が基板の周縁部に触れているだけのショット領域や、基板の周縁部に近い位置のショット領域も、周辺ショット領域に分類されてもよい。例えば、基板外周から所定距離(例えば3mm)の領域は前工程のプロセスの影響を受けやすいため、インプリントの対象外であるインバリッドエリアとされうる。このようなインバリッドエリアに一部がかかっているショット領域も、周辺ショット領域に分類されてもよい。
【0042】
図6に示すように、PFは、FFよりも面積が小さくなることから、FFに比べてマークの配置の自由度が制約される。例えば、FFではマーク(AM131,AM132,AM133,AM134)を四隅に配置できるのに対し、PFでは高々3つのマーク(AM011,AM012,AM013)を狭い間隔でしか配置できない。このため、PFでは、各マークを統計処理して並進成分などを算出する際の平均化効果が小さくなるため精度が低下しうる。PFでは、マークの配置(マーク間の距離)について制約があるためマーク/スコープ間のスパンも短くなる。これにより、回転成分などの補正誤差も大きくなりうる。加えて、PFでは、前工程のプロセスによりマークが正常に形成されていない可能性がFFより高い。例えばマークAM013は基板外周のインバリッドエリア近傍に位置している。このような位置のマークは正常に形成されない場合がある。正常に形成されていないマークを用いてプリアライメント計測をしてしまうと、位置合わせ精度が低下し、ダイバイダイアライメント中の位置合わせ量が大きくなってしまう。
【0043】
本実施形態では、S308のプリアライメント計測を実施するショット領域を、対象ショット領域ではなく、対象ショット領域から幾何学的に最近傍のFFにする。
図4の例において、インプリントが最初に行われるShot1(第1ショット領域)は、PFである。本実施形態によれば、Shot1が対象ショット領域である場合、S308のプリアライメント計測を実施するショット領域として、Shot1ではなくShot1から幾何学的に最近傍のFFであるShot13(第2ショット領域)が選択される。幾何学的に最近傍のショット領域とは、例えば、ショット中心間の距離が最小であるショット領域をいう。なお、第1ショット領域と第2ショット領域との関係は、必ずしもPFとFFの関係に限定されるものではなく、プリアライメント計測の精度や生産性の観点から十分効果を得られる関係であればよい。
【0044】
図7は、本実施形態に従うインプリント処理のフローチャートである。このフローチャートは
図2のフローチャートと概ね同様であるが、プリアライメント計測としてS308の代わりにS308’が実行される。S308’では、対象ショット領域とは異なるショット領域でプリアライメント計測が行われる。例えば、上記のように、Shot1が対象ショット領域である場合、Shot1ではなくShot1から幾何学的に最近傍のFFであるShot13でプリアライメント計測が行われる。具体的には、制御部107は、S306で取得されたグローバルアライメント情報に基づいて、Shot13が型108のパターン部8aの下の、インプリント位置に相当する計測位置に位置するように基板ステージ104を制御する。その後、制御部107は、TTM計測部122を用いて基板側マーク62と型側マーク63とを同時に観察し、その相対位置ずれを計測する。
【0045】
その後、S310で、制御部107は、対象ショット領域であるShot1が供給部105の下の供給位置に位置するよう基板ステージ104を制御し、供給部105により、Shot1にインプリント材114が供給される。S312で、制御部107は、Shot1が型保持部103の下(インプリント位置)に位置するように基板ステージ104を制御する。このとき制御部107は、S306で取得されたグローバルアライメント情報とS308’のプリアライメント計測(すなわち、Shot13でのプリアライメント計測)によって得られた結果に基づいて基板ステージ104を駆動する。
【0046】
その後、制御部107は、型保持部103を制御して型108をZ方向に駆動させることにより、対象ショット領域であるShot1上のインプリント材114と型108のパターン部8aとを接触させる。また、Shot2以降のインプリント処理においても、S306で取得されたグローバルアライメント情報とS308’でのShot13に対するプリアライメント計測によって得られた結果に基づいて基板ステージ104が駆動される。
【0047】
上記の例では、Shot13のプリアライメント計測結果に基づいて基板ステージを次のショット位置まで駆動することを説明したが、これに限定されない。例えば、プリアライメント計測結果だけではなく、ダイバイダイアライメント中のTTM計測部122の計測値に基づいて基板ステージの目標位置を補正してもよい。具体的には、ダイバイダイアライメント開始時の位置ずれ計測値を補正量として基板ステージ104を駆動させる。また、複数のショット領域をインプリントした後に、ダイバイダイアライメント開始時の位置ずれ計測値を統計処理し、その結果をもとに基板ステージ位置に補正をかけてもよい。これにより、更にダイバイダイアライメント中の位置合わせ量を小さくすることができる。
【0048】
このように本実施形態によれば、対象ショット領域がPFのようなマークの配置や形成精度に制約がある場合、プリアライメント計測は、対象ショット領域の近傍のFF(例えばShot13)で実施される。このため、TTM計測部122によって計測する基板側マーク62の配置の制約や、前工程のプロセスにより基板側マーク62が正常に形成されていなかったりする問題の影響を受けにくい。この結果、ダイバイダイアライメントでの基板111と型108との位置合わせの量を小さくできる。
【0049】
なお、本実施形態では、プリアライメント計測を最初の対象ショット領域であるShot1のみで実施する場合を説明した。しかし、プリアライメント計測は、ショット領域毎に実施されてもよいし、ショット領域の列や行が変更されたとき等、2ショット領域以上、全ショット領域未満の所定のショット領域間隔で実施されてもよい。ショット領域毎にプリアライメント計測を実施する場合には、対象ショット領域にインプリント材を供給する前にプリアライメント計測を実施し、インプリント材を供給した後、プリアライメント計測結果に基づいて基板ステージを駆動させる。このとき、対象ショット領域がPFである場合、当該対象ショット領域から幾何学的に最近傍の未インプリントのショット領域(FF)がプリアライメント計測のためのショット領域として選択される。2ショット領域以上、全ショット領域未満のショット領域間隔でプリアライメント計測が実施される場合も同様である。
【0050】
また、インプリント材の吐出方法がインクジェット方式ではなく、インプリント材が配置済みの基板に、上記のようなインプリント処理が実施されてもよい。その場合、
図7のS310のインプリント材供給工程はなくなり、S308’のプリアライメント計測後、S312が直ちに実施される。
【0051】
(変形例)
図8は、
図7の変形例に係るフローチャートである。
図8では、S306のグローバルアライメント完了後、S307で、制御部107は、対象ショット領域がPFであるか否かを、例えばメモリにレシピとして記憶されているショットレイアウトを参照して判定する。あるいは、レシピは、各ショット領域について予めFFであるかPFであるかの情報を有していてもよい。対象ショット領域がPFである場合は、
図7と同様のS308’に移行し、対象ショット領域とは異なる近傍のFFでプリアライメント計測を行う。一方、対象ショット領域がPFではなくFFである場合は、わざわざ他のショット領域の情報を使う必要はないので、
図2と同様のS308に移行し、対象ショット領域自身でプリアライメント計測を行う。
【0052】
以上のように本実施形態によれば、ダイバイダイアライメント中の位置合わせ量を小さくすることが可能となり、インプリント処理を繰り返し行っても生産性を低下させることなく重ね合わせ精度を良好に維持しながらパターンを形成することができる。
【0053】
<第2実施形態>
第1実施形態では、インプリント処理をSFD(Single Field Dispense)として説明したが、本実施形態では、MFD(Multi Field Dispense)でインプリント処理を行う。SFDでは、第1実施形態に記載のように、1ショット領域ごとに、インプリント材供給、接触、硬化、離型のシーケンスが行われる。これに対しMFDでは、2つ以上のショット領域に対して連続してインプリント材供給を行い、その後、インプリント材が供給されたショット領域ごとに、接触、硬化、離型のシーケンスが行われる。MFDは、1ショット領域ごとにインプリント材供給動作をするSFDと比べて基板ステージの駆動量が少ないため、生産性を向上させることができる。
図9に、MFDを行う場合のインプリント処理の一例を示す。MFDでは、2つ以上のショット領域に対して連続してインプリント材供給が行われ、その後、各ショット領域に接触および硬化が行われる。そのため、硬化のための露光光が隣接ショット領域に配置済みのインプリント材に影響を与えることがある。このような影響を緩和するため、
図9の例では1ショット領域飛ばしで接触、硬化、離型が実施される。
【0054】
まず、従来のMFDによるインプリント処理について説明する。従来のインプリント処理では、プリアライメント計測は、当該ショット領域行における最初の対象ショット領域であるShot1(第1プリアライメントショット)で実施される。Shot1に関して、TTM計測部122によって基板側マーク62と型側マーク63とを同時に観察し、位置ずれを計測する。計測後、基板ステージ104は供給部105の下へ移動する。その後、制御部107は、基板ステージ104と供給部105を制御して、基板111上の、1ショット領域飛ばしに存在するShot1、Shot2、Shot3に連続してインプリント材114を供給する。次に、基板ステージ104の駆動により、インプリント材114が供給されたShot1が型保持部103の下の所定位置(インプリント位置)に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot1でのプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。型保持部103は、型108をZ方向に駆動することにより、Shot1上のインプリント材114に型108のパターン部8aを接触させ、ダイバイダイアライメントが実施される。その後、インプリント材114の硬化および離型が行われ、Shot1のインプリント処理が終了する。
【0055】
続いて、基板ステージ104の駆動によりShot2が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot1でのプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。その後、ダイバイダイアライメント、硬化、離型が実施され、Shot2のインプリント処理が終了する。Shot3のインプリント処理も同様に実施される。
【0056】
その後、Shot1とShot2の間にあるShot4(第2プリアライメントショット)で再度プリアライメント計測を実施する。Shot4に関して、TTM計測部122によって基板側マーク62と型側マーク63とを同時に観察し、位置ずれを計測する。計測後、基板ステージ104は供給部105の下へ移動する。その後、制御部107は、基板ステージ104と供給部105を制御して、基板111上の、1ショット領域飛ばしに存在するShot4、Shot5、Shot6に連続してインプリント材114を供給する。次に、基板ステージ104の駆動により、インプリント材114が供給されたShot4が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot4でのプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。型保持部103は、型108をZ方向に駆動することにより、Shot4上のインプリント材114に型108のパターン部8aを接触させ、ダイバイダイアライメントが実施される。その後、インプリント材114の硬化および離型が行われ、Shot4のインプリント処理が終了する。
【0057】
続いて、基板ステージ104の駆動によりShot5が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot4でのプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。その後、ダイバイダイアライメント、硬化、離型が実施され、Shot5のインプリント処理が終了する。同様に、Shot6のインプリント処理も実施される。
【0058】
以降、ショット領域が改行される都度、第1プリアライメントショットおよび第2プリアライメントショットでプリアライメントが実施される。このような従来例によれば、プリアライメントがPFにおいて行われるため、プリアライメントの精度が低下している可能性がある。
【0059】
次に、
図10を参照して、本実施形態におけるMFDによるインプリント処理を説明する。本実施形態のインプリント処理では、第1プリアライメントがShot2で実施される。Shot2に関して、TTM計測部122によって基板側マーク62と型側マーク63とを同時に観察し、位置ずれを計測する。計測後、基板ステージ104は供給部105の下へ移動する。その後、制御部107は、基板ステージ104と供給部105を制御して、基板111上の、1ショット領域飛ばしに存在するShot1、Shot2、Shot3に連続してインプリント材114を供給する。次に、基板ステージ104の駆動により、インプリント材114が供給されたShot1が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot2でのプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。型保持部103は、型108をZ方向に駆動することにより、Shot1上のインプリント材114に型108のパターン部8aを接触させ、ダイバイダイアライメントが実施される。その後、インプリント材114の硬化および離型が行われ、Shot1のインプリント処理が終了する。
【0060】
続いて、基板ステージ104の駆動によりShot2が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot2でのプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。その後、ダイバイダイアライメント、硬化、離型が実施され、Shot2のインプリント処理が終了する。Shot3のインプリント処理も同様に実施される。
【0061】
その後、Shot5を第2プリアライメントショットとして再度プリアライメント計測を実施する。Shot5に関して、TTM計測部122によって基板側マーク62と型側マーク63とを同時に観察し、位置ずれを計測する。計測後、基板ステージ104は供給部105の下へ移動する。その後、制御部107は、基板ステージ104と供給部105を制御して、基板111上の、1ショット領域飛ばしに存在するShot4、Shot5、Shot6に連続してインプリント材114を供給する。次に、基板ステージ104の駆動により、インプリント材114が供給されたShot4が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot5でのプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。型保持部103は、型108をZ方向に駆動することにより、Shot4上のインプリント材114に型108のパターン部8aを接触させ、ダイバイダイアライメントが実施される。その後、インプリント材114の硬化および離型が行われ、Shot4のインプリント処理が終了する。
【0062】
続いて、基板ステージ104の駆動によりShot5が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot5のプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。その後、ダイバイダイアライメント、硬化、離型が実施され、Shot5のインプリント処理が終了する。Shot6のインプリント処理も同様に実施される。
【0063】
続いて、ショット領域を改行し、Shot11を第1プリアライメントショットとしてプリアライメント計測を実施する。Shot11に関して位置ずれが計測された後、基板ステージ104は供給部105の下へ移動する。その後、制御部107は、基板ステージ104と供給部105を制御して、基板111上の、1ショット領域飛ばしに存在するShot7、Shot8、Shot9、Shot10に連続してインプリント材114を供給する。次に、基板ステージ104の駆動により、インプリント材114が供給されたShot7が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot11のプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。型保持部103は、型108をZ方向に駆動することにより、Shot7上のインプリント材114に型108のパターン部8aを接触させ、ダイバイダイアライメントが実施される。その後、インプリント材114の硬化および離型が行われ、Shot7のインプリント処理が終了する。
【0064】
続いて、基板ステージ104の駆動によりShot8が型保持部103の下のインプリント位置に配置される。このときの基板ステージ104は、グローバルアライメント情報とShot11でのプリアライメント計測の結果に基づいて駆動される。その後、ダイバイダイアライメント、硬化、離型が実施され、Shot8のインプリント処理が終了する。Shot9、Shot10のインプリント処理も同様に実施される。
【0065】
続いて、Shot11を第2プリアライメントショットとして再度プリアライメント計測を実施する。以下同様に、Shot11、Shot12、Shot13、Shot14のインプリント処理が実施される。以降、ショット領域を改行するごとに、第1プリアライメントショットおよび第2プリアライメントショットとして選択してプリアライメント計測が実施される。
【0066】
なお、第1実施形態における
図5の例ではShot74およびShot77はPFとして定義されているが、PFであっても面積が大きく、プリアライメント計測の要求精度を確保できる場合もある。その場合、例えば
図10に示すように、Shot74を第1プリアライメントショット、Shot77を第2プリアライメントショットとして使用することができる。Shot73からShot78を含む行をインプリントする際、インプリント処理が未実施のFFは存在しない(Shot74およびShot77はPFとして定義されているため)。しかし、Shot74やShot77のように、Shot73やShot76より面積が大きいショット領域を使用することで、プリアライメント計測の精度を高めることができる。
【0067】
また、本実施形態では、例えば、Shot2でプリアライメント計測を実施し、Shot1、Shot2、Shot3の順番でインプリントが行われると説明したが、これに限定されない。例えば、Shot2でプリアライメント計測を実施後、Shot2、Shot1、Shot3の順番でインプリントを実施してもよい。
【0068】
<第3実施形態>
第3実施形態では、プリアライメントショットの選択方法を説明する。第1実施形態で説明したように、インプリント装置では、オフアクシス計測部131とTTM計測部122とを用いて、装置座標を基準として基板111と型108との位置を個別に計測する。TTM計測部122は、型側マーク63を観察することによって、TTM計測部122の位置基準で型108の位置を計測する。一方、基板111を保持した基板ステージ104は、オフアクシス計測部131の下に移動し、オフアクシス計測部131を用いて基板111上のすべてのショット領域の位置座標を推定するためのグローバルアライメント計測が実施される。グローバルアライメント計測において、オフアクシス計測部131により、基板111上の複数のサンプルショット領域のマークを計測することにより、基板ステージ104基準で基板111内の各サンプルショット領域の位置が計測される。グローバルアライメント計測の後、指定したショット領域に対して、上述したプリアライメント計測が実施する。
【0069】
図11に本実施形態の一例を示す。グローバルアライメント計測において、制御部107は、サンプルショット領域であるShot1’からShot6’のそれぞれを、順次にオフアクシス計測部131の計測位置(第1計測位置)に送り込むよう基板ステージ104を駆動する。その後、オフアクシス計測部131を用いて、各サンプルショット領域のマークが計測される。このとき、オフアクシス計測部131でShot6’を計測しているときには、TTM計測部122によって計測が行われる計測位置(第2計測位置)の近傍にはShot6”が位置している。そこで制御部107は、このShot6”をプリアライメントショットとして選択する。Shot6’がオフアクシス計測部131によって計測された後、制御部107は、プリアライメントショットとして選択されたShot6”をTTM計測部122によって計測が行われる計測位置に移動させる。その後、TTM計測部122によりShot6”をプリアライメントショットとして計測する。これにより、基板ステージの駆動距離を短くできるため、生産性を向上させることができる。
【0070】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。
【0071】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0072】
次に、物品製造方法について説明する。
図12の工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0073】
図12の工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図12の工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0074】
図12の工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0075】
図12の工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図12の工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0076】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0077】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0078】
100:インプリント装置、103:型保持部、104:基板ステージ、105:供給部、107:制御部、122:TTM計測部、131:オフアクシス計測部