IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヤマウラの特許一覧

<>
  • 特許-除塵機制御システム 図1
  • 特許-除塵機制御システム 図2
  • 特許-除塵機制御システム 図3
  • 特許-除塵機制御システム 図4
  • 特許-除塵機制御システム 図5
  • 特許-除塵機制御システム 図6
  • 特許-除塵機制御システム 図7
  • 特許-除塵機制御システム 図8
  • 特許-除塵機制御システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】除塵機制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
E02B5/08 101Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020016122
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021123890
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000138325
【氏名又は名称】株式会社ヤマウラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山浦 康民
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 禎信
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-127013(JP,A)
【文献】特開2007-186958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路内に臨んだスクリーンによって、捕捉される塵芥を除去する除塵機の運転時期を制御する除塵機制御システムであって、
少なくとも2つの異なる位置の水位を検出する水位検出部と、
過去のデータに基づいて、前記除塵機の運転間隔に水路環境を関連付けて記憶する記憶部と、
前記水位検出部の検出結果に基づいて、及び/又は前記記憶部を参照して、前記除塵機を制御するための制御信号を生成する制御部と、
を備え、
前記水位検出部は、
前記スクリーンよりも上流側の水位を検出する上流水位検出部と、
前記スクリーンよりも下流側の水位を検出する下流水位検出部と、
を有し、
前記制御部は、
前記上流水位検出部で検出された水位から前記下流水位検出部で検出された水位を減算した水位差が、判定値以上の場合には、次回の前記除塵機の運転時期を早め、及び/又は、次回の前記除塵機の運転時間を延長し、前記水位差が、判定値未満の場合には、次回の前記除塵機の運転時期を遅らせ、及び/又は、次回の前記除塵機の運転時間を短縮し、
前記記憶部を参照して、前記塵芥が多い季節には、前記除塵機の運転時期を早め、前記塵芥が少ない季節には、前記除塵機の運転時期を遅らせ、
前記除塵機の運転間隔が、リミット範囲を超えた場合には、前記リミット範囲内になるように前記除塵機の運転間隔を制御すること
を特徴とする除塵機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路内の塵芥を除去する除塵機の運転を制御する除塵機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水路内の落ち葉などを捕捉する除塵機の上流側と下流側の水位をそれぞれ検出し、その水位差によって、除塵機の運転及び停止を制御する除塵設備が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-098531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された除塵設備は、水位差が生じた後に除塵機を運転させるため、スクリーンに大量の塵芥が捕捉されている場合には、除塵機が持つ処理能力を越えてしまい、故障するおそれがある。
また、水路内の落ち葉などは、季節によって多い時期や少ない時期が大きく異なる。さらに、台風などが多い時期にも水路に浮遊する塵芥が急激に増加することがあるため、一年を通して常時同じ除塵機の運転では、効率の良い運転を行うことができない。
そのため、除塵機は、上下流水位の水位差を常時検出し、この検出結果と過去のデータに応じて、その都度運転させる必要がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、上下流水位の水位差を検出し、この検出結果と過去のデータに応じて、除塵機を運転させる除塵機制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、水路内に臨んだスクリーンによって、捕捉される塵芥を除去する除塵機の運転時期を制御する除塵機制御システムであって、少なくとも2つの異なる位置の水位を検出する水位検出部と、過去のデータに基づいて、前記除塵機の運転間隔に水路環境を関連付けて記憶する記憶部と、前記水位検出部の検出結果に基づいて、及び/又は前記記憶部を参照して、前記除塵機を制御するための制御信号を生成する制御部と、を備え、前記水位検出部は、前記スクリーンよりも上流側の水位を検出する上流水位検出部と、前記スクリーンよりも下流側の水位を検出する下流水位検出部と、を有し、前記制御部は、前記上流水位検出部で検出された水位から前記下流水位検出部で検出された水位を減算した水位差が、判定値以上の場合には、次回の前記除塵機の運転時期を早め、及び/又は、次回の前記除塵機の運転時間を延長し、前記水位差が、判定値未満の場合には、次回の前記除塵機の運転時期を遅らせ、及び/又は、次回の前記除塵機の運転時間を短縮し、前記記憶部を参照して、前記塵芥が多い季節には、前記除塵機の運転時期を早め、前記塵芥が少ない季節には、前記除塵機の運転時期を遅らせ、前記除塵機の運転間隔が、リミット範囲を超えた場合には、前記リミット範囲内になるように前記除塵機の運転間隔を制御する構成してある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上下流水位の水位差を常時検出し、この検出結果と過去のデータに応じて、除塵機を運転させる除塵機制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】除塵機制御システムを適用した除塵設備を示す概略図である。
図2】除塵機制御システムの構成を示すブロック図である。
図3】BRAIN機能定数を示す図である。
図4】BRAIN機能の実行処理を示すフローチャートである。
図5】水位差を検出したときの除塵機の運転間隔を示すタイミングチャートである。
図6】季節ごとの除塵機の運転間隔を示すタイミングチャートである。
図7】水位差を検出したときの除塵機の運転間隔の変形例を示すタイミングチャートである。
図8】(a)はメイン画面の一例、(b)はメニュー画面の一例をそれぞれ示す図である。
図9】(a)は定数変更画面の一例、(b)は異常履歴画面の一例をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における除塵機制御システム10を適用した除塵設備を示す概略図である。
除塵機制御システム10は、農業用水路などの除塵設備に設置されるものであり、スクリーン5にせき止められて付着した水路内の塵芥100を、除去するスクリーン式の除塵機1に用いた場合を一例として説明する。スクリーン5に付着した塵芥100は、モータ(不図示)などのアクチュエータで駆動される一対のスプロケット8に掛けられているチェーン7が矢印方向に回転駆動することで、レーキ6が塵芥100を掻き揚げ、水上に引き上げるため、コンベア(不図示)などを介して排出される。
【0010】
水路内に臨んだスクリーン5は、網目(メッシュ)状のもので構成されているため、スクリーン5の隙間から水のみを通過させる。したがって、図1に示すように、スクリーン5よりも下流側の水位は、スクリーン5に塵芥100が付着すると、一般的にスクリーン5より上流側の水位よりも低くなり、水位差が発生する。
除塵機制御システム10は、この上下流水位の水位差を常時検出し、この検出結果と過去のデータに応じて、その都度運転させることができる。
以下、除塵機制御システム10を構成する除塵機制御ユニット11と、水位センサ111について説明する。
【0011】
除塵機制御ユニット11は、例えば、PLC(Programmble Logic Controller)などの制御装置などによって構成されており、水路の水位を検出する水位センサ111から送信されるアナログ値である検出信号に基づいて、除塵機1を制御するための制御信号(無電圧a接点出力)を生成する。そして、その制御信号を除塵機制御盤2に送信することで、除塵機1の運転を制御している。
したがって、除塵機制御システム10は、除塵機制御盤2の全体を更新する必要が無く、既存の除塵機制御盤2に除塵機1の運転を制御する制御信号を送信するだけであるため、除塵機制御盤2の大規模な改造などが不要である。
また、水路に浮遊する塵芥100の量に応じて、除塵機1を運転することができるため、塵芥100が少ない季節には除塵機1の消費電力量を抑制でき、設備運営のコストを抑えることができる。
なお、除塵機制御ユニット11が有する構成を、既存の除塵機制御盤2に組み込んで、一体構成としても良い。
【0012】
図2は、除塵機制御システム10の構成を示すブロック図である。
除塵機制御システム10は、記憶部110と、水位検出部111と、信号処理部112と、制御部113と、表示部114を備えている。
【0013】
[記憶部]
記憶部110は、例えば、ROM、RAMなどが含まれており、プログラム、入出力の信号や定数、演算状態、制御の途中経過など様々な状態を記憶する。したがって、記憶部110には、水位センサ111が検出した上下流の水位レベル、各種機能の判定条件、過去に発生又は復帰した異常水位履歴なども記憶される。そして、制御部113が記憶部110に記憶されたプログラムを実行処理することにより、除塵機1の運転を制御することができる。
【0014】
[水位検出部]
水位センサ111(水位検出部)は、図1に示すように、スクリーン5より上流側の水位を検出する上流側水位センサ111a(上流水位検出部)と、スクリーン5より下流側の水位を検出する下流側水位センサ111b(下流水位検出部)を少なくとも有する。水位センサ111は、水位レベルを電流に変換して出力する水位センサ111が好ましく、本実施形態では、周囲の影響を受けにくく、メンテナンスが比較的容易なガイドパルス方式の水位センサ111を用いている。
ガイドパルス方式の水位センサ111は、水位センサ本体1111からプローブ1110上に高周波のパルス信号を送信して、液面で反射するパルス信号を水位センサ本体1111が受信し、パルス信号の送信から受信までの時間から距離(レベル)を測定する。
検出距離Lは、プローブ1110が液面に接触している状態で、受信までの時間をT、光速をCとすると、L=1/2×T×Cの計算式で求めることができる。
なお、水位センサ111は、ガイドパルス方式以外にも、フロート方式、電極方式、超音波方式、静電容量方式などでも良い。
【0015】
[信号処理部]
上流側水位センサ111a及び下流側水位センサ111bは、水位を検出すると、検出した水位に応じて、4~20mAの電流範囲の検出信号を除塵機制御ユニット11に向けて送信する。信号処理部112は、この検出信号をデジタル信号にA/D変換し、変換されたデジタル信号に対して、予め定数として定義されている値にスケール変換(スケール下限値:0.00m、スケール上限値:2.00m)を行うことで、上流水位及び下流水位それぞれの水位レベルとしている。
【0016】
[制御部]
このような構成からなる除塵機制御システム10は、制御部113が以下のように除塵機1の運転を制御する。
【0017】
ここで、除塵機制御システム10が、備える主な機能について説明する。
まず、水位監視機能について説明する。
制御部113は、以下の(a)発生条件及び(b)復帰条件により、水位を監視する。
(a)発生条件
検出信号の電流レベル<3.68mA又は検出信号の電流レベル≧20.32mAの状態が所定時間(以下、信号異常判定時間(秒)という)以上連続して、検出したこと。
(b)復帰条件
発生条件でなくなったこと。
【0018】
このように制御部113は、水位センサ111から取得した検出信号の電流レベルを、予め設定された断線判定値と比較することで、検出信号が異常か否かを判定する。
制御部113は、例えば、3.68mA未満又は20.32mA以上の検出信号の電流レベルを、信号異常判定時間(例えば、60秒)以上連続して、検出した場合には、異常と判定する。そして、制御部113は、上流水位又は下流水位のいずれかの検出信号を異常と判定した場合には、後述する水位差判定を行わず、表示部114の装置異常領域22を点灯させ、ユーザーに知らせる(図8(a)参照)。
すなわち、除塵機制御システム10は、水位センサ111から検出する検出信号の異常(断線検知)を監視する水位監視機能を有している。
なお、信号異常判定時間(秒)は、表示部114の定数変更画面にて適宜変更することができる(図9(a)参照)。
【0019】
次に、水位差判定機能について説明する。
制御部113は、以下の(a)発生条件及び(b)復帰条件により、水位差を判定する。
(a)発生条件
(上流水位レベル-下流水位レベル)≧水位差判定値の状態が所定時間(以下、水位差判定確認時間(秒)という)以上連続して、検出したこと。
(b)復帰条件
発生条件でなくなったこと。
【0020】
このように制御部113は、上述した水位監視機能により正常と判定された検出信号を用いて、上流水位レベルから下流水位レベルを減算した水位差を、予め設定された水位差判定値と比較することで、水位差が発生したか否かを判定する。
制御部113は、例えば、上流側の上流水位レベルを1.30m、下流側の上流水位を1.05m、水位差判定値を0.20mとした場合、水位差は、0.25mとなり、水位差判定値以上となるため、水位差判定確認時間(例えば、60秒)以上連続して、検出した場合には、水位差が発生したと判定する。そして、制御部113は、水位差が発生したと判定した場合には、表示部114の水位差領域20を点灯させ、ユーザーに知らせる(図8(a)参照)。
すなわち、除塵機制御システム10は、上下流水位の水位差を判定する水位差判定機能を有している。
なお、水位差判定値及び水位差判定確認時間(秒)は、表示部114の定数変更画面にて適宜変更することができる(図9(a)参照)。
【0021】
次に、水位差異常判定機能について説明する。
制御部113は、以下の(a)発生条件及び(b)復帰条件により、水位差に異常を判定する。
(a)発生条件
(上流水位レベル-下流水位レベル)≧水位差異常判定値の状態が所定時間(以下、水位差異常判定確認時間(秒)という)以上連続して、検出したこと。
(b)復帰条件
発生条件でなくなったこと。
【0022】
このように制御部113は、上流側水位センサ111a及び下流側水位センサ111bから取得した水位監視機能により正常と判定された検出信号を用いて、上流水位レベルから下流水位レベルを減算した水位差を、予め設定された水位差異常判定値と比較することで、水位差に異常が発生したか否かを判定する。
制御部113は、例えば、上流側の上流水位レベルを1.50m、下流側の上流水位を1.00m、水位差異常判定値を0.40mとした場合、水位差は、0.50mとなり、水位差異常判定値以上となるため、水位差異常判定確認時間(例えば、60秒)以上連続して、検出した場合には、水位差に異常が発生したと判定する。そして、制御部113は、水位差に異常が発生したと判定した場合には、表示部114の水位差異常領域21を点灯させ、ユーザーに知らせる(図8(a)参照)。
すなわち、除塵機制御システム10は、上下流水位の水位差の異常を判定する水位差判定機能を有している。
なお、水位差異常判定値及び水位差異常判定確認時間(秒)は、表示部114の定数変更画面にて適宜変更することができる(図9(a)参照)。
【0023】
次に、装置異常判定機能について説明する。
制御部113は、以下の発生要因(a)~(d)のとき、除塵機制御システム10の異常(装置異常)と判定する。
(a)上流水位 信号異常(断線検知)
(b)下流水位 信号異常(断線検知)
(c)PLC異常
(d)電源断
【0024】
制御部113は、上述した水位監視機能において、水位センサ111から検出した検出信号を異常(断線検知)と判定した場合には、装置異常と判定する。
また、制御部113は、PLCが故障したために、プログラム運転が停止(PLC異常)した場合、又は経年劣化などが原因により、除塵機制御ユニット11のバックアップ電池の残量が低下(電源断)した場合にも、装置異常と判定する。そして、制御部113は、装置異常と判定した場合には、表示部114の装置異常領域22を点灯させ、ユーザーに知らせる(図8(a)参照)。
すなわち、除塵機制御システム10は、装置の異常を判定する装置異常判定機能を有している。
【0025】
さらに、以上のような機能に加えて、除塵機制御システム10は、除塵機1の運転を効率的に制御するために、BRAIN(ブレイン)機能を有している。
【0026】
続いて、BARIN機能について説明する。
BRAIN機能は、上下流水位の水位差に基づいて、次回の除塵機1の運転時間を自動的に算出し、水位差が発生しなかった場合には、次回の除塵機1の運転時期を遅らせて、除塵機1の運転を極力控える。
一方、水位差が発生した場合は、水位差の発生を抑えるために、次回の除塵機1の運転時期を早めて、除塵機1に運転指令を行う。
BRAIN機能は、除塵機制御ユニット11が備える表示部114において、ユーザーにより実行指示を受け付けることで、BRAIN機能が実行処理される(図8(b)参照)。
【0027】
図3は、BRAIN機能で用いる定数を示す図である。
BRAIN機能で用いる定数は、図3に示すように季節1と季節2の2つの季節で区分されており、2つの季節ごとに定数を設定することができる。これは、季節によって水路に流れ出る落ち葉などの塵芥の量が異なるため、水路環境を考慮したものである。そのため、BRAIN機能を実行すれば、水路環境(季節)に応じて、除塵機1の運転を適正に制御することができる。
【0028】
以下、各定数について説明する。
切替日は、季節1又は季節2の切替日を示しており、日ごとに設定することができる。
運転間隔短縮係数a(季節1はa1、季節2はa2)は、塵芥100が多い場合には、塵芥100がスクリーン5に付着して、上下流水位の水位差が発生することになるが、その水位差が発生する前に除塵機1を運転させるため、次回の除塵機1の運転時期を早めるための係数であり、百分率(%)で設定することができる。
運転間隔延長係数b(季節1はb1、季節2はb2)は、塵芥100が少ない場合には、除塵機1の消費電力を抑え、効率的に運転させるため、次回の除塵機1の運転時期を遅らせるための係数であり、百分率(%)で設定することができる。
最小運転間隔(リミット値)は、運転間隔短縮係数aを用いることが多くなった場合、除塵機1の運転間隔は、短くなっていくため、短くなり過ぎないように、分単位で設定できる運転間隔のリミット値である。
最大運転間隔(リミット値)は、運転間隔延長計数bを用いることが多くなった場合、除塵機1の運転間隔は、長くなっていくため、長くなり過ぎないように、分単位で設定できる運転間隔のリミット値である。
このように、BRAIN機能では、過去のデータに基づいて、除塵機1の運転間隔に水路環境(季節)を関連付けて定数を決定している。
【0029】
続いて、このような定数を用いて行われるBRAIN機能の実行処理について、図4に示すフローチャート及び図5図7に示すタイミングチャートを用いて説明する。
なお、図5図7に示すタイミングチャートは、除塵機1の運転指令を行う際の予定運転時刻及び水位差との関係を示したものである。
予定運転時刻は、除塵機1を運転する予定時刻を示している。
水位差は、水位差監視機能により判定される水位差の発生を示している。
除塵機運転指令は、除塵機制御ユニット11から除塵機1に向けて送信される、除塵機1を運転させるための制御信号を示している。
また、図5(a)、(b)及び図7(a)、(b)に示すタイミングチャートは、ともに塵芥の少ない季節1(例えば、1月~6月)とする。
また、図6(a)、(b)に示すタイミングチャートは、ともに水位差を検出しなかった場合(判定値未満)とする。
また、S140、S150、S200及びS210で示すt1は、BRAIN機能の開始時では、最大延長間隔のことを示し、BRAIN機能の開始時以外では、前回の運転間隔のことを示している。
【0030】
図4に示すように、まず、制御部113は、上流側水位センサ111aを用いて、スクリーン5より上流の水位レベルと、下流側水位センサ111bを用いて、スクリーン5より下流の水位レベルをそれぞれ取得する(S100、S110)。
そして、制御部113は、上流の水位レベルから下流の水位レベルを減算した水位差が判定値以上であるか否かを判定する(S120)。
制御部113は、水位差が判定値以上であると判定すると、S130に処理を進め、現在の日付が塵芥の少ない季節1(例えば、1月1日~6月30日)であるか否かを判定する(S120:Yes、S130)。
一方、制御部113は、水位差が判定値未満であると判定すると、S190に処理を進め、現在の日付が塵芥の少ない季節1であるか否かを判定する(S120:No、S190)
次に、制御部113は、現在の日付が塵芥の少ない季節1であると判定すると、前回の運転間隔(又は最大延長間隔)t1に塵芥の少ない季節1の運転間隔短縮係数a1を乗算し、次回の運転間隔t2を決定する(S130:Yes、S140)。
【0031】
すなわち、図5(a)のタイミングチャートに示すように、制御部113は、水位差を検出した場合には、前回の運転間隔(又は最大延長間隔)t1よりも、次回の除塵機1の運転時期を早めるように制御する。
また、図6(a)のタイミングチャートに示すように、制御部113は、塵芥の少ない季節1の場合には、塵芥の多い季節2よりも、除塵機1の運転時期を遅らせるように制御する。
【0032】
一方、制御部113は、現在の日付が塵芥の少ない季節1でないと判定すると、前回の運転間隔(又は最大延長間隔)t1に塵芥の多い季節2の運転間隔短縮係数a2を乗算し、次回の運転間隔t2を決定する(S130:No、S150)。
次に、制御部113は、算出された次回の運転間隔t2が、最小運転間隔(リミット値)以下であるか否かを判定する(S160)。
制御部113は、次回の運転間隔t2が最小運転間隔(リミット値)以下であると判定すると、S170に処理を進め、次回の運転間隔t2を最小運転間隔(リミット値)に変更して、処理を終了する(S160:Yes、S170)。
一方、制御部113は、次回の運転間隔t2が最小運転間隔(リミット値)よりも長いと判定すると、S180に処理を進め、次回の運転間隔t2を維持して、処理を終了する(S160:No、S180)。
【0033】
また、制御部113は、S190の処理において、現在の日付が塵芥の少ない季節1であると判定すると、前回の運転間隔(又は最大延長間隔)t1に塵芥の少ない季節1の運転間隔延長係数b1乗算し、次回の運転間隔t2を決定する(S190:Yes、S200)。
一方、制御部113は、現在の日付が塵芥の少ない季節1でないと判定すると、前回の運転間隔(又は最大延長間隔)t1に塵芥の多い季節2の運転間隔延長係数b2を乗算し、次回の運転間隔t2を決定する(S190:No、S210)。
【0034】
すなわち、図5(b)のタイミングチャートに示すように、制御部113は、水位差を検出しなかった場合には、前回の運転間隔(又は最大延長間隔)t1よりも、次回の除塵機1の運転時期を遅らせるように制御する。
また、図6(b)のタイミングチャートに示すように、制御部113は、塵芥の多い季節2の場合には、塵芥の少ない季節1よりも、除塵機1の運転時期を早めるように制御する。
【0035】
次に、制御部113は、算出された次回の運転間隔t2が、最大運転間隔(リミット値)以上であるか否かを判定する(S220)。
制御部113は、次回の運転間隔t2が最大運転間隔(リミット値)以上であると判定すると、S230に処理を進め、次回の運転間隔t2を最大運転間隔(リミット値)に変更して、処理を終了する(S220:Yes、S230)。
一方、制御部113は、次回の運転間隔t2が最大運転間隔(リミット値)よりも短いと判定すると、S240に処理を進め、次回の運転間隔t2を維持して、処理を終了する(S220:No、S240)。
【0036】
[変形例]
なお、図7(a)のタイミングチャートに示すように、制御部113は、水位差を検出した場合には、次回の除塵機1の運転時期を早めるとともに、除塵機の運転時間を延長するように制御することもできる。
一方、図7(b)のタイミングチャートに示すように、制御部113は、水位差を検出しなかった場合には、次回の除塵機1の運転時期を遅らせるとともに、除塵機1の運転時間を短縮するように制御することもできる。
また、制御部113は、水位差の検出結果に基づいて、次回の除塵機1の運転時期は、変更せずに、除塵機1の運転時間だけを延長したり又は短縮したり制御することもできる。
【0037】
[表示部]
次に、除塵機制御ユニット11が備える表示部114について説明する。
図8及び図9は、表示部114を示しており、図8(a)はメイン画面の一例、図8(b)はメニュー画面の一例、図9(a)は定数変更画面の一例、図9(b)は異常履歴画面の一例をそれぞれ示す図である。そして、これらの表示部114に表示される画面は、いずれも表示機能と入力機能を備えたタッチパネルにて表示される。
【0038】
まず、図8(a)に示すメイン画面について説明する。
メイン画面には、点灯又は消灯する水位差領域20、水位差異常領域21及び装置異常領域22と、上流水位レベル及び下流水位レベルの現在データ23及びその水位差24と、現在設定されている水位差判定値25及び水位差異常判定値26と、BRAIN機能27の設定状態及びメニューボタン28がそれぞれ設けられている。メイン画面は、例えば、除塵機制御ユニット11の電源投入直後に表示される。そして、ユーザーは、これらの表示内容に応じて、除塵機1の現在の運転状況を一目で確認することができる。
【0039】
水位差領域20は、「(上流水位-下流水位)≧水位差判定値」の状態が所定時間(以下、判定確認時間(秒)という)以上連続して継続した場合には、点灯表示される。また、水位差領域20が点灯中のときには、異常詳細画面(不図示)において、水位差レベルが確認できる。
水位差異常領域21は、「(上流水位-下流水位)≧水位差異常判定値」の状態が判定確認時間(秒)以上連続して継続した場合には、点灯表示される。また、水位差異常領域21が点灯中のときには、異常詳細画面(不図示)において、水位差異常レベルが確認できる。
装置異常領域22は、上述した信号異常(断線検知)、PLC異常、電源断などの場合には、点灯表示される。また、装置異常領域22が点灯中のときには、異常詳細画面(不図示)において、異常の内容が確認できる。
上流水位及び下流水位の現在データ23は、上流側水位センサ111a及び下流側水位センサ111bから取得した検出信号をデジタル数値に変換した現在値が表示される。但し、検出信号が異常(断線検知)と判定された場合は、「*.**」mと表示される。この場合、水位差検出及び水位差異常検出の判定は、行われない。
水位差24は、(上流水位-下流水位)の値がデジタル数値にて表示される。但し、水流水位≧下流水位の場合のみ表示され、上流水位未<下流水位の場合は、「*.**」mと表示される。この場合、水位差検出及び水位差異常検出の判定は、行われない。
水位差判定値25は、水位差が発生したと判定する判定値である。この判定値は、定数変更画面にて、設定変更することができる。
水位差異常判定値26は、水位差に異常が発生したと判定する異常判定値である。この異常判定値においても、水位差判定値25と同様に、定数変更画面にて、設定変更することができる。
BRAIN機能27は、BRAIN機能の有効又は無効が表示される。
メニューボタン28は、タッチ操作することで、図8(b)に示すメニュー画面に切り換えることができる。
【0040】
次に、図8(b)に示すメニュー画面について説明する。
メニュー画面には、メイン画面ボタン30、異常詳細画面ボタン31(不図示)、設定変更画面ボタン32、異常履歴画面ボタン33が設けられており、それぞれのボタンをタッチ操作することで任意の画面に切り替えることができる。
また、メニュー画面には、BRAIN機能ダイヤル34が設けられており、BRAIN機能ダイヤル34を、「ON」の方向へタッチ操作すると、上述したBRAIN機能を有効にすることができ、「OFF」の方向へタッチ操作すると、BRAIN機能を無効にすることができる。したがって、BRAIN機能を「ON」にすると、図8(a)で示すメイン画面のようにBRAIN機能27が有効と表示され、BRAIN機能を「OFF」にすると、BRAIN機能27が無効と表示される。
【0041】
次に、図9(a)に示す定数変更画面について説明する。
図9(a)に示すように、定数変更画面には、水位差判定値、水位差判定確認時間、水位差異常判定値、水位差判定確認時間などの定数の設定値情報40が表示される。そして、設定変更ボタン41のタッチ操作により、表示されるテンキー画面(不図示)にて、これらの定数を任意の値に設定することができ、その後、変更された設定後の定数を用いて、制御部113は、上述した各種機能の判定を行うことになる。
このように、除塵機制御システム10は、手動で定数を変更することができる構成になっている。そのため、除塵機制御システム10を適用する水路環境などに応じて、定数を容易に設定することができる。
なお、変更することができる定数は、上述したもの以外にも種々あり、図9(a)に例示したものは、その中の一部の定数を示すものである。
【0042】
次に、図9(b)に示す異常履歴画面について説明する。
異常履歴画面には、記憶部110が記憶する過去に発生又は復帰した異常履歴情報50が表示される。異常履歴情報50には、例えば、異常が発生又は復帰した日付、時刻、警報/操作内容などが表示される。また、異常履歴情報50で確認できる件数は、「(1ページあたり10行)×(10ページ)=100件」で、異常履歴の新しい日付から順に表示される。したがって、古い日付の異常履歴を確認したいときは、戻るボタン51のタッチ操作により確認することができ、それ以降は、古い日付の異常履歴から順に削除されていく。
したがって、異常履歴画面を確認することによって、最新100件の過去データを確認することができ、上述した水位差判定値、水位差判定確認時間、水位差異常判定値、水位差異常判定確認時間などの定数を決定する際の判断材料とすることができる。
【0043】
以上、本発明の除塵機制御システム10の好ましい実施形態について説明したが、本発明における除塵機制御システム10は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能である。
例えば、上述した実施形態では、季節1と季節2の2つの季節に分けた場合を一例として説明したが、これに限られず、季節を3つ以上に分けても良く、水路環境などに応じて適宜変更することができる。
また、水位検出部111として、スクリーン5より上流側の上流側水位センサ111aとスクリーン5より下流側の下流側水位センサ111bの2つの水位センサ111を用いた例について説明したが、精度が必要な場合には、さらに、水位センサ111の数を増やすなど、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 除塵機
5 スクリーン
10 除塵機制御システム
11 除塵機制御ユニット
111 水位センサ(水位検出部)
111a 上流側水位センサ(上流水位検出部)
111b 下流側水位センサ(下流水位検出部)
100 塵芥
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9