(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240213BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 384
(21)【出願番号】P 2020017483
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019061879
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】陣駒 勇佑
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015874(JP,A)
【文献】特開2015-118195(JP,A)
【文献】特開平11-109783(JP,A)
【文献】特開2018-004945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材にトナー画像を形成する画像形成部と、
ヒータと、前記ヒータによって加熱される第1の回転体と、前記第1の回転体と共に定着ニップ部を形成する第2の回転体と、を有し、前記定着ニップ部で記録材を挟持搬送しながら加熱する加熱処理を実行することによって記録材に形成されたトナー画像を記録材に定着する定着部と、
を有し、前記画像形成部が記録材の第1の面にトナー画像を形成した後、記録材の前記第1の面が前記第1の回転体に接触する状態での前記加熱処理を複数回実行するモード、を設定可能である画像形成装置において、
前記モードを設定すると、二回目の前記加熱処理の時の前記定着部の目標温度が、一回目の前記加熱処理の直前に記録材の前記第1の面に形成するトナー画像の画像情報に応じて設定され
、
前記モードを設定し、記録材の前記第1の面に形成する画像に写真画像と文字画像が含まれる時、
前記写真画像の領域を加熱する前記定着部の部分は、二回目の前記加熱処理の時の前記目標温度が一回目よりも高くなるように設定され、
前記文字画像の領域を加熱する前記定着部の部分は、二回目の前記加熱処理の時の前記目標温度が一回目よりも低くなるように設定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録材の前記第1の面に形成する画像に閾値濃度より低濃度の画像が存在すると判断した場合、一回目の加熱処理及び二回目の加熱処理の時の前記目標温度を低濃度画像が存在しないと判断した場合に比べて低く設定することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記録材の前記第1の面に形成する画像に閾値濃度より低濃度の画像が存在すると判断した場合の前記加熱処理の回数を、低濃度画像が存在しないと判断した場合に比べて多く設定することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置は、前記第1の回転体と接触する記録材の面を反転させるための両面搬送路を有し、同一の記録材が前記両面搬送路を二回通過するように搬送制御することで前記二回目の加熱処理の時に記録材の前記第1の面が前記第1の回転体と接触するようにすることを特徴とする請求項1~
3何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の回転体は筒状のフィルムであることを特徴とする請求項1~
4何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ヒータは前記フィルムの内面に接触していることを特徴とする請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着ニップ部は、前記フィルムを介して前記ヒータと前記第2の回転体によって形成されていることを特徴とする請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ヒータは、独立制御可能な複数の発熱ブロックを有し、前記複数の発熱ブロックは前記ヒータの長手方向に並んでいることを特徴とする請求項1~
7何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真記録方式の、複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真記録方式の画像形成装置は、記録材に形成されたトナー画像を記録材に定着する定着部を搭載している。
【0003】
ところで、一般に、写真画像は光沢度が高いほうが見栄えが良く好まれる。そこで、トナー画像が形成された一枚の記録材を、定着部で複数回加熱及び加圧することによってトナー画像の光沢度を上げる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナー画像の光沢度は、定着部で加熱及び加圧処理する回数を多くすることである程度まで高くできるが、処理回数が増えるとプリント完了までに要する時間が長くなってしまう。
【0006】
本発明は、定着部による光沢度向上のための処理回数を増やさなくてもトナー画像の光沢度を高くできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための本発明は、記録材にトナー画像を形成する画像形成部と、ヒータと、前記ヒータによって加熱される第1の回転体と、前記第1の回転体と共に定着ニップ部を形成する第2の回転体と、を有し、前記定着ニップ部で記録材を挟持搬送しながら加熱する加熱処理を実行することによって記録材に形成されたトナー画像を記録材に定着する定着部と、を有し、前記画像形成部が記録材の第1の面にトナー画像を形成した後、記録材の前記第1の面が前記第1の回転体に接触する状態での前記加熱処理を複数回実行するモード、を設定可能である画像形成装置において、前記モードを設定すると、二回目の前記加熱処理の時の前記定着部の目標温度が、一回目の前記加熱処理の直前に記録材の前記第1の面に形成するトナー画像の画像情報に応じて設定され、前記モードを設定し、記録材の前記第1の面に形成する画像に写真画像と文字画像が含まれる時、前記写真画像の領域を加熱する前記定着部の部分は、二回目の前記加熱処理の時の前記目標温度が一回目よりも高くなるように設定され、前記文字画像の領域を加熱する前記定着部の部分は、二回目の前記加熱処理の時の前記目標温度が一回目よりも低くなるように設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定着部による光沢度向上のための処理回数を増やさなくてもトナー画像の光沢度を高くできる画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】実施例1の高光沢モードの目標温度の推移を示した図
【
図8】実施例3が想定している画像と目標温度の分布の関係を示した図
【
図10】実施例5が想定している画像と目標温度の分布の関係を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
図1は電子写真記録技術を用いて画像を形成する画像形成装置100の断面図である。画像形成装置100は、中間転写ベルト13の回転方向に沿って、第1ステーションSY、第2ステーションSM、第3ステーションSC、第4ステーションSKを有している。第1ステーションSYはイエローのトナー画像を、第2ステーションSMはマゼンタのトナー画像を、第3ステーションSCはシアンのトナー画像を、第4ステーションSKはブラックトナー画像を形成する。各ステーションには感光ドラム1y~1k、帯電ローラ2y~2k、現像ローラ7y~7k、一次転写ローラ4y~4kが設けられている。更に、クリーナ6y~6k、廃トナー容器3y~3kが設けられている。20は画像情報に応じて感光ドラム1y~1kを走査するレーザスキャナである。12y~12kはレーザスキャナ20から出射するレーザ光を示している。これらの部材を用いた電子写真記録技術によるトナー画像の形成方法は周知なので詳細な説明は割愛する。4つのステーションSY~SKによって中間転写ベルト13上にはトナー画像が重畳される。
【0011】
一方、カセット10にセットされた記録材Sは、給紙ローラ16、搬送ローラ17により、中間転写ベルト13と二次転写ローラ25との当接部である二次転写ニップ部TN2に搬送される。中間転写ベルト13上に形成されたトナー画像は、二次転写ニップ部TN2で記録材Sに転写される。以上の工程を司る各部材が、記録材にトナー画像を形成する画像形成部IFSを構成している。
【0012】
トナー画像が形成された記録材Sは、定着部200へ搬送される。定着部200は、定着ニップ部Nで記録材Sを挟持搬送しながら加熱する加熱処理を実行することによって記録材Sに形成されたトナー画像を記録材Sに定着する。
【0013】
片面プリントの場合、定着部200で定着処理され定着部200を通過した記録材Sは、排紙ローラ21によってトレイ26へ排出される。
【0014】
両面プリントの場合、第1の面のトナー画像が定着部200で定着処理された後、記録材Sは、排紙ローラ21でトレイ26へ排出する方向に搬送される。記録材Sの後端が定着部200を抜けた後、排紙ローラ21の回転方向が反対方向に切り替わる。そして、逆回転している排紙ローラ21によって記録材Sは両面搬送ローラ18まで搬送され、そこから両面搬送ローラ19を経由して再び搬送ローラ17まで搬送される。その後、記録材Sの第2の面に画像形成部IFSでトナー画像が形成され、第2の面のトナー画像が定着部200で定着処理された後、記録材Sはトレイ26へ排出される。
【0015】
(定着部200の構成)
図2は、定着部200の断面図である。定着部200は、第1の回転体としての定着フィルム202、定着フィルム202の内面に接触する熱源としてのヒータ300を有する。更に、定着フィルム202を介してヒータ300と共に定着ニップ部Nを形成する第2の回転体としての加圧ローラ208を有する。201はヒータ300を保持する樹脂製のホルダであり、定着フィルム202の回転を案内する役目も有する。204はホルダ201を補強するための金属製(本例では鉄)のステーである。
【0016】
定着フィルム202は、ポリイミド等の耐熱樹脂又はステンレス等の金属を基層とした筒状のフィルムである。定着フィルム202の表面には表層としてフッ素樹脂層が設けられている。基層と表層の間にシリコーンゴム等の弾性層を設けていてもよい。
【0017】
加圧ローラ208は、鉄やアルミニウム等の材質の芯金209の周りにシリコーンゴム等の弾性層210を設けたローラである。
【0018】
ヒータ300は、セラミック基板上に発熱抵抗体を印刷したものである。なお、セラミックの代わりに、アルミニウム等の金属製の基板の表面に絶縁層を設け、この絶縁層の上に発熱抵抗体を設けたヒータでも良い。ヒータ300の定着フィルム202と接触する面とは反対側の面には電極E(E1~E7、E8-1、E8-2)が設けられている。給電用の電気接点C(C1~C7、C8-1、C8-2)及び電極Eを介して発熱抵抗体へ電力が供給されている。
【0019】
ステー204と加圧ローラ208の間には、不図示のバネの力で圧力が掛っており、この圧力により、定着フィルム202を介してヒータ300と加圧ローラ208によって定着ニップ部Nが形成されている。また、ヒータ300の異常発熱により作動してヒータ300に供給する電力を遮断するサーモスイッチや温度ヒューズ等の安全素子212が、ヒータ300に対してヒータ保持部材201を介して配置されている。
【0020】
加圧ローラ208は、モータ(不図示)から動力を受けて矢印R1方向に回転する。加圧ローラ208が回転することによって、定着フィルム202が矢印R2方向に従動回転する。定着ニップ部Nで記録材Sを挟持搬送しながら加熱する加熱処理を実行することによって記録材Sに形成されたトナー画像が記録材Sに定着される。
【0021】
(ヒータ300の構成)
図3を用いて、本実施例に係るヒータ300の構成を説明する。ヒータ300は、ヒータ300の長手方向に並ぶ複数の発熱ブロックHB1~HB7を有し、各発熱ブロックが独立制御可能になっている。
図3(A)はヒータ300の断面図、
図3(B)はヒータ300の各層の平面図、
図3(C)はヒータ300への電気接点Cの接続構成を説明する図である。
【0022】
図3(B)には、本実施例の画像形成装置100における記録材Sの搬送基準位置Xを示してある。本実施例における搬送基準は中央基準となっており、記録材Sはその搬送方向に直交する方向における中心が搬送基準位置Xを沿うように搬送される。また、
図3(A)は、搬送基準位置Xにおけるヒータ300の断面図となっている。
【0023】
ヒータ300は、セラミック製の基板305と、基板305上に設けられた裏面層1と、裏面層1を覆う裏面層2と、基板305上の裏面層1とは反対側の面に設けられた摺動面層1と、摺動面層1を覆う摺動面層2と、を有する。
【0024】
裏面層1は、ヒータ300の長手方向に沿って設けられている導電体301(301a、301b)を有する。導電体301は、導電体301aと301bに分離されており、導電体301bは、導電体301aに対して記録材Sの搬送方向の下流側に配置されている。
【0025】
また、裏面層1は、導電体301a、301bに平行に設けられた導電体303(303-1~303-7)を有する。導電体303は、導電体301aと導電体301bの間にヒータ300の長手方向に沿って設けられている。
【0026】
さらに、裏面層1は、発熱体302a(302a-1~302a-7)と発熱体302b(302b-1~302b-7)を有する。発熱体302aは、導電体301aと導電体303の間に設けられており、導電体301aと導電体303を介して電力を供給することにより発熱する。発熱体302bは、導電体301bと導電体303の間に設けられており、導電体301bと導電体303を介して電力を供給することにより発熱する。
【0027】
導電体301と導電体303と発熱体302aと発熱体302bとから構成される発熱部位は、ヒータ300の長手方向に対し7つの発熱ブロック(HB1~HB7)に分割されている。すなわち、発熱体302aは、ヒータ300の長手方向に対し、発熱体302a-1~302a-7の7つの領域に分割されている。また、発熱体302bは、ヒータ300の長手方向に対し、発熱体302b-1~302b-7の7つの領域に分割されている。さらに、導電体303は、発熱体302a、302bの分割位置に合わせて、導電体303-1~303-7の7つの領域に分割されている。
【0028】
本実施例の画像形成装置100は、A4サイズの記録材Sに画像形成できる装置であり、使用可能な定型の最大サイズはレターサイズである。ヒータ300の発熱範囲は、発熱ブロックHB1の図中左端から発熱ブロックHB7の図中右端までの範囲であり、その全長は220mmである。また、各発熱ブロックの長手方向長さは、すべて同じ約31mmとしているが、長さを異ならせても構わない。
【0029】
また、裏面層1は、電極E(E1~E7、E8-1、E8-2)を有する。電極E1~E7は、それぞれ導電体303-1~303-7の領域内に設けられており、導電体303-1~303-7を介して発熱ブロックHB1~HB7それぞれに電力供給するための電極である。電極E8-1、E8-2は、ヒータ300の長手方向の端部に導電体301に接続するよう設けられており、導電体301を介して発熱ブロックHB1~HB7に電力供給するための電極である。本実施例ではヒータ300の長手方向の両端に電極E8-1、E8-2を設けているが、例えば、電極E8-1のみをヒータ300の長手方向の片側に設ける構成でも構わない。また、導電体301a、301bに対し共通の電極で電力供給を行っているが、導電体301aと導電体301bそれぞれに個別の電極を設け、それぞれ電力供給を行っても構わない。
【0030】
裏面層2は、絶縁性を有する表面保護層307より構成されており、導電体301、導電体303、発熱体302a、302bを覆っている。本実施例の表面保護層307の材質はガラスである。また、表面保護層307は、電極Eの箇所を除いて形成されており、電極Eに対して、ヒータの裏面層2側から電気接点Cを接続可能な構成となっている。
【0031】
基板305上の裏面層1とは反対側の面に設けられた摺動面層1は、各発熱ブロックHB1~HB7の温度を検知するためのサーミスタTH(TH1-1~TH1-4、およびTH2-5~TH2-7)を有している。サーミスタTHは、PTC特性、若しくはNTC特性を有した材料から成り、その抵抗値を検出することにより、発熱ブロックの温度を検知できる。
【0032】
また、摺動面層1は、サーミスタTHと電気的に繋がっている、導電体ET(ET1-1~ET1-4、およびET2-5~ET2-7)と導電体EG(EG1、EG2)とを有している。導電体ET1-1~ET1-4は、それぞれサーミスタTH1-1~TH1-4に接続されている。導電体ET2-5~ET2-7は、それぞれサーミスタTH2-5~TH2-7に接続されている。導電体EG1は、4つのサーミスタTH1-1~TH1-4に接続され、共通の導電経路を形成している。導電体EG2は、3つのサーミスタTH2-5~TH2-7に接続され、共通の導電経路を形成している。導電体ETおよび導電体EGは、それぞれヒータ300の長手に沿って長手端部まで形成され、ヒータ長手端部において不図示の電気接点を介して制御回路400と接続されている。
【0033】
摺動面層2は、摺動性と絶縁性を有する表面保護層308より構成されており、サーミスタTH、導電体ET、導電体EGを覆うとともに、定着フィルム202内面との摺動性を確保している。本実施例の表面保護層308の材質はガラスである。また、表面保護層308は、導電体ETおよび導電体EGに対して電気接点を設けるために、ヒータ300の長手両端部を除いて形成されている。
【0034】
次に、電力供給用の電気接点Cの、各電極Eへの接続方法を説明する。
図3(C)は、各電極Eへ電気接点Cを接続した様子をヒータ保持部材201側から見た平面図である。ヒータ保持部材201には、電極E(E1~E7、E8-1、E8-2)に対応する位置に貫通穴が設けられている。各貫通穴を介して、電気接点C(C1~C7、C8-1、C8-2)が、電極E(E1~E7、E8-1、E8-2)に対して、バネによる付勢や溶接などの手法によって接続されている。電気接点Cは、ステー204とヒータ保持部材201の間に設けられた不図示の導電材料を介して、後述するヒータ300の制御回路400と接続されている。
【0035】
(ヒータ制御回路の構成)
図4はヒータ300を制御する制御回路400の図である。401は画像形成装置100に接続される商用の交流電源である。ヒータ300への電力制御は、トライアック411~トライアック417の通電/遮断により行われる。トライアック411~417は、それぞれ、CPU420からのFUSER1~FUSER7信号に従って動作する。トライアック411~417の駆動回路は省略して示してある。
【0036】
制御回路400は7つの発熱ブロックHB1~HB7夫々に繋がっている7つのトライアック411~417を有している。従って、7つの発熱ブロックHB1~HB7は互いに独立制御可能な構成となっている。
【0037】
ゼロクロス検知部421は交流電源401のゼロクロスを検知する回路であり、CPU420にZEROX信号を出力している。ZEROX信号は、FUSER1~FUSER7信号等の基準となる信号である。
【0038】
次に、ヒータ300の温度検知方法について説明する。ヒータ300の温度検知は、サーミスタTH(TH1-1~TH1-4、TH2-5~TH2-7)によって行われる。サ-ミスタTH1-1~TH1-4と抵抗451~454との分圧がTh1-1~Th1-4信号としてCPU420で検知されている。CPU420でTh1-1~Th1-4信号を温度に変換している。同様に、サ-ミスタTH2-5~TH2-7と抵抗465~467との分圧が、Th2-5~Th2-7信号としてCPU420で検知されており、CPU420でTh2-5~Th2-7信号を温度に変換している。
【0039】
CPU420は、サーミスタの検知温度に基づき、例えばPI制御(比例積分制御)により、ヒータ300へ供給するべき電力を算出している。さらに、算出した電力に応じたタイミングでトライアック411~417を制御している。
【0040】
リレー430及びリレー440は、故障などの要因でヒータ300が過昇温した場合のヒータ300への電力供給を遮断する手段として用いられる。RLON信号がHigh状態になると、トランジスタ433がON状態になり、電源電圧Vccからリレー430の2次側コイルに通電され、リレー430の1次側接点はON状態になる。RLON信号がLow状態になると、トランジスタ433がOFF状態になり、電源電圧Vccからリレー430の2次側コイルに流れる電流は遮断され、リレー430の1次側接点はOFF状態になる。同様に、RLON信号がHigh状態になると、トランジスタ443がON状態になり、電源電圧Vccからリレー440の2次側コイルに通電され、リレー440の1次側接点はON状態になる。RLON信号がLow状態になると、トランジスタ443がOFF状態になり、電源電圧Vccからリレー440の2次側コイルに流れる電流は遮断され、リレー440の1次側接点はOFF状態になる。なお、抵抗434、抵抗444は電流制限抵抗である。
【0041】
次に、リレー430及びリレー440を用いた安全回路の動作について説明する。サーミスタTH1-1~TH1-4による検知温度の何れか1つが、それぞれ設定された所定値を超えた場合、比較部431はラッチ部432を動作させる。そして、ラッチ部432はRLOFF1信号をLow状態でラッチする。RLOFF1信号がLow状態になると、CPU420がRLON信号をHigh状態にしても、トランジスタ433がOFF状態で保たれるため、リレー430はOFF状態(安全な状態)を保つことができる。尚、ラッチ部432は、非ラッチ状態において、RLOFF1信号を、リレー430がオープンとなる出力にしている。リレー440の動作もリレー430と同じなので説明は割愛する。
【0042】
本実施例の画像形成装置100は、通常のプリントモード(片面プリントモード及び両面プリントモード)以外に、画像の光沢度を向上させる光沢モードを設定可能である。更に、画像形成部IFSが記録材Sの第1の面にトナー画像を形成した後、記録材Sの第1の面が定着フィルム202に接触する状態での加熱処理を複数回実行する高光沢モードを設定可能である。
【0043】
(片面プリントモード/両面プリントモード)
通常のプリントモード(片面プリントモード及び両面プリントモード)を実行する場合、記録材Sは300mm/sの速度で搬送される。なお、片面プリントモード、両面プリントモード、後述する光沢モード及び高光沢モード全て、レターサイズの記録材Sにトナー画像を形成するケースで説明する。本例の定着部200は、記録材Sのサイズに応じて発熱分布を切り替えるものである。レターサイズの記録材Sを加熱処理する場合、7つの発熱ブロックHB1~HB7全てが定着に適した目標温度となるように発熱が制御される。
【0044】
片面プリントモードを選択すると、定着部200の目標温度(本実施例では記録材Sが通過する領域に対応する発熱ブロックの目標温度に相当)は210℃に設定される。
【0045】
両面プリントモードを選択すると、記録材Sの一面目(第1の面)を加熱処理する時の定着部200の目標温度は210℃に設定され、記録材Sの二面目(第2の面)を加熱処理する時の定着部200の目標温度は200℃に設定される。二面目のトナー画像を定着する時には、一面目の加熱処理によって記録材Sの温度が上がっている。そのため、一面目よりも目標温度を下げても二面目のトナー画像の定着性を確保できる。
【0046】
(光沢モード)
光沢モードは、記録材Sを低速で搬送しながらトナー画像を十分に加熱し(加熱量を増やし)、トナー画像の光沢度を高めるためのモードである。光沢モードを実行する場合、記録材Sの搬送速度は100mm/sに設定される。片面プリントの光沢モードを選択すると、定着部200の目標温度は190℃に設定される。両面プリントの光沢モードを選択すると、記録材の一面目を加熱処理する時の目標温度は190℃に設定され、二面目を加熱処理する時の目標温度は180℃に設定される。光沢モードを選択した時の定着部200の目標温度は、トナーのホットオフセットが発生しない範囲の温度で、できるだけ高い光沢度が得られる温度が設定されている。
【0047】
(高光沢モード)
画像形成装置100には、光沢モードよりも更に高い光沢度を得るための高光沢モードの設定がある。高光沢モードを実行する場合、記録材Sの搬送速度は100mm/sに設定される。高光沢モードは、画像形成部IFSが画像情報に応じて記録材Sの第1の面にトナー画像を形成した後、記録材Sの第1の面が定着フィルム202に接触する状態での加熱処理を複数回実行するモードである。
【0048】
片面プリントの高光沢モードが選択されると、始めに通常の片面プリント時と同様に記録材Sの第1の面に未定着トナー画像が転写され、定着部200によって定着処理(加熱処理)が行われる。その後、通常の両面プリント時と同様に、排紙ローラ21で反転搬送され、両面搬送ローラ18が配置された両面搬送路を経由して、再度、二次転写部へ搬送される。そして、記録材Sの第2の面に対して画像形成は行われず、記録材Sはそのまま定着部200へ搬送される。通常の両面プリント時であればそのまま排紙ローラ21によって記録材Sは排紙されるが、高光沢モード時は記録材Sを挟持している状態で再度排紙ローラ21が逆回転し、記録材Sは両面搬送ローラ18へ搬送される。そして再び二次転写部を経由して定着部200で加熱され、排紙ローラ21によって機外へ排紙される。つまり、片面プリントの高光沢モードが選択されると、記録材Sが定着部200を3回通過することになる。このうち、記録材Sの第1の面が定着フィルム202に接触する状態での加熱処理が2回実行される。
【0049】
このように画像形成装置100は、同一の記録材Sが両面搬送路を二回通過するように搬送制御することで、二回目の加熱処理の時に記録材Sの第1の面が定着フィルム202と接触するようにする。
【0050】
定着部200を通過する回数が増えると、トナー画像に熱と圧力を多く与えることができ、トナー画像表面の平滑度が上がることで光沢度が高くなる。特に、トナー画像を形成した記録材Sの面が定着フィルム202と接する向きになっている状態で、記録材Sが定着部200を通過する回数が多いほど、光沢度が向上しやすい。
【0051】
なお、両面プリントの高光沢モードを選択した場合、記録材Sが定着部200を通過する回数を3回ではなく4回以上に増やすことが望ましい。
【0052】
(実施例1の特徴と効果)
図5に片面プリントの高光沢モードを選択した時の定着部200の目標温度(≒ヒータ300の目標温度)の推移と、定着フィルム202と接触する記録材Sの面と、の関係を示す。なお、
図5中、TIは記録材Sに形成されたトナー画像を示している。また、一回目の加熱処理を実行する前のトナー画像TIは未定着であり、二回目の加熱処理を実行する前のトナー画像TIは定着済である。
【0053】
図5に示すように、片面プリントの高光沢モードを選択すると、二回目の加熱処理の時の定着部200の目標温度を、一回目の加熱処理の時よりも高い値に設定する。二回目の加熱処理の時の加熱量が一回目よりも多くなるように目標温度を設定すればより好ましい。
【0054】
表1は一回目と二回目の加熱処理時の目標温度、光沢度、ホットオフセットの発生有無をそれぞれ示している。使用した記録材Sは「HP Premium Presentation Paper 120g,Glossy」であり、記録材の搬送速度は100mm/sである。また、光沢度はPG-1(日本電色工業製)を用いて入射角度75°における光沢度を測定しており、記録材S上のトナー量が0.80mg/cm2である箇所を測定した値である。
【0055】
比較例1は一回目と二回目の加熱処理時の目標温度を変えず190℃とした場合である。このケースでは、二回目終了後の光沢度は60であった。一方、実施例1では二回目の加熱処理時の目標温度を210℃に上げることで、二回目終了後の光沢度が80に上がっている。なお、一回目の加熱処理と二回目の加熱処理の間の二面目加熱期間(記録材Sの第2の面が定着フィルム202に接する向きで加熱される時)の定着部200の目標温度は、比較例1、実施例1、後述する比較例2、いずれも180℃とした。
【0056】
比較例2では一回目の加熱処理の時点から目標温度を210℃としているため、一回目に定着を終了後の光沢度は実施例1よりも高くなっている。しかしながら、未定着トナー画像に対する過剰な熱供給を行っているためホットオフセットが発生してしまう。
【0057】
二回目の加熱処理は、一回目の加熱処理(未定着トナー画像を定着させる定着処理)によるトナー粒子同士及びトナーと記録材Sとの結着力が増大している状況での加熱である。そのため、未定着トナー画像を加熱する一回目の加熱処理と比較して、ホットオフセットは発生しにくい。従って、二回目の加熱処理時に目標温度を上げても、ホットオフセットの発生を抑えつつ高い光沢度を得ることができる。比較例2における二回目の加熱処理時もホットオフセットは発生しづらくなっている。しかしながら、一回目の加熱処理(定着処理)によって既にホットオフセットが発生しており、記録材S上にはオフセット画像が存在するため、ホットオフセットの発生ありと判定している。
【0058】
高光沢モードではなく、通常の光沢モード時の結果も表1に示した。片面プリントの光沢モードにおける光沢度は45であった。
【0059】
【0060】
なお、本実施例では、一回目の加熱処理と二回目の加熱処理の間の二面目加熱期間(記録材Sの第2の面が定着フィルム202に接する向きで加熱される時)の定着部200の目標温度を、一回目の加熱処理時より低い温度(180℃)に設定した。しかしながら、この期間の目標温度も一回目の加熱処理時より高い温度に設定してもよい。
【0061】
(実施例2)
次に、実施例2の画像形成装置について説明する。実施例1と同一、またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。本実施例の画像形成装置100は、高光沢モードを設定すると、二回目の加熱処理の時の定着部の目標温度が、一回目の加熱処理の直前に記録材Sの第1の面に形成するトナー画像の画像情報に応じて設定されるものである。
【0062】
実施例2の画像形成装置100では、ホストコンピュータ等の外部装置から送られる画像データに応じて、各発熱ブロックHB1~HB7への電力供給を制御する。具体的には記録材S上のトナー画像が形成されていない領域の目標温度(加熱量)を、トナー画像が形成されている領域の目標温度(加熱量)よりも低くし、省電力化を図っている。
【0063】
図6は加熱領域A
1~A
7と画像の位置関係を表している。加熱領域A
1~A
7は、発熱ブロックHB1~HB7が各々加熱する領域である。加熱領域A
1~A
7の全長は220mmであり、加熱領域A
1~A
7の各々は、220mmを均等に7分割した幅を有する。
図6に示す記録材Sはレターサイズなので、その大きさは、幅216mm(ヒータ長手方向)×長さ279mm(搬送方向)である。トナー画像の大きさは150mm×200mmである。
【0064】
図7は、本実施例の高光沢モード時における加熱処理一回目と二回目の目標温度の分布と、記録材S上の画像位置と、の関係を示している。なお、本実施例においても、加熱処理とは、実施例1と同じく、記録材Sの第1の面が定着フィルム202に接する向きで定着部200を通過する期間のことである。
【0065】
加熱処理一回目は、一回目の加熱処理の直前に記録材Sの一面目に形成するトナー画像の画像情報を用いて、発熱分布を設定している。具体的には、画像が無い加熱領域A1及びA7の目標温度(≒発熱ブロックHB1及びHB7の目標温度)を、画像が存在する加熱領域A2~A6の目標温度(発熱ブロックHB2~HB6の目標温度)よりも低くしている。一回目の加熱処理時は、加熱領域A2~A6は190℃とし、加熱領域A1とA7は150℃とした。
【0066】
記録材Sの一面目に対して二回目の加熱処理を実行する直前であって、記録材Sの一面目が中間転写ベルト13と対向する向きで記録材Sが二次転写ニップ部TN2を通過する時、記録材Sの一面目にトナー画像は形成されない。つまり、このタイミングにおける外部装置から送られる画像情報は「全域画像無し」に相当する情報である。従って、単純に加熱処理を実行する直前の記録材Sの一面目に対する画像情報を用いて加熱処理を行う構成である場合、二回目の加熱処理の時、全ての加熱領域A1~A7の目標温度が低い温度(例えば150℃)に設定される。
【0067】
これに対して本実施例では、二回目の加熱処理の時の目標温度が、一回目の加熱処理の直前に記録材Sの一面目に形成するトナー画像の画像情報に応じて設定される。これにより、一回目の加熱処理時と同様に、二回目の加熱処理時、トナー画像が存在する加熱領域A2~A6の目標温度が加熱領域A1とA7の目標温度より高くなる。
【0068】
以上のように、本実施例は、二回目の加熱処理の時の目標温度が、一回目の加熱処理の直前に記録材Sの第1の面に形成するトナー画像の画像情報に応じて設定されるものである。更に、画像が存在する領域においては、実施例1と同様、二回目の加熱処理時の目標温度を一回目よりも高い温度(210℃)に設定している。これにより、ホットオフセットの発生を抑制しつつ高い光沢度の画像を得ることができる。
【0069】
本実施例は、実施例1と比べると、画像のない領域は加熱領域の温度を上げなくてよいため、省エネ性に優れるという点でより好ましい。なお、本実施例では画像の存在しない非画像領域である加熱領域A1とA7の目標温度を、一回目の加熱処理時と二回目の加熱処理時で同じ温度(150℃)に設定したが、異なっていても良い。例えば、画像の存在する領域と非画像領域の温度差が大きくなりすぎると定着フィルム202の破損につながる可能性もあるため、二回目の加熱処理時の非画像部の温度を一回目の加熱処理時の非画像部の温度より高くしても良い。また、本実施例は、ヒータ長手方向において、画像の存在する領域と非画像領域を区別して目標温度の分布を変更したが、搬送方向において、画像の存在する領域と非画像領域を区別して目標温度を変更してもよい。このように、本実施例の画像形成装置は、高光沢モードを設定すると、少なくとも第1の面のトナー画像がある領域は、二回目の加熱処理の時の目標温度を一回目の加熱処理時よりも高く設定する。
【0070】
なお、本実施例においても、実施例1と同様、一回目の加熱処理と二回目の加熱処理の間の二面目加熱期間の目標温度を、全ての加熱領域A1~A7において、一回目の加熱処理時の画像がある領域の目標温度190℃より低い180℃に設定した。しかしながら、二面目加熱期間の目標温度を190℃より高い温度に設定してもよい。また、二面目加熱期間の各加熱領域A1~A7の目標温度を変えても構わない。例えば、一面目の一回目の加熱処理時と同様に、加熱領域A1とA7の二面目加熱期間の目標温度を150℃に設定し、加熱領域A2~A6の二面目加熱期間の目標温度を180℃に設定しても良い。
【0071】
(実施例3)
次に、実施例3の画像形成装置について説明する。実施例1又は実施例2と同一、またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0072】
実施例3は、記録材の第1の面に形成する画像に写真画像と文字画像が含まれるケースを想定した高光沢モードに関するものである。写真画像の領域を加熱する定着部200の部分は、二回目の加熱処理の時の目標温度が一回目よりも高くなるように設定される。一方、文字画像の領域を加熱する定着部200の部分は、二回目の加熱処理の時の目標温度が一回目よりも低くなるように設定される。
【0073】
図8は、本実施例の一回目の加熱処理時と二回目の加熱処理時の目標温度の分布と、記録材S上の画像の位置と、の関係を示している。一般的に、写真画像は高い光沢度が望まれるが、文字画像は低光沢の方が読みやすいため光沢度を上げ過ぎないようにするのが好ましい。
【0074】
図8において、写真画像(60mm×80mm)は加熱領域A
2、A
3の範囲内に存在する。文字画像(85mm×180mm)は加熱領域A
4~A
7の範囲内に存在する。表2に示すように、実施例3では、加熱領域A
2、A
3の一回目の加熱処理時の目標温度を190℃、二回目の加熱処理時の目標温度を210℃に設定している。二回目の目標温度は一回目より高く設定してある。その結果、二回目の加熱処理終了後の光沢度は80となった。一方、加熱領域A
4~A
7では光沢を上げる必要がなく、文字画像が定着する温度に設定すればよい。そのため、加熱領域A
2、A
3より低い170℃を一回目の目標温度として設定した。また、一回目の定着時に既に文字画像は記録材S上に定着されているため、二回目の定着時は更に温度を下げても構わない。そのため、二回目の加熱処理時の目標温度は150℃に設定した。その結果、二回目の加熱処理終了後の文字画像部の光沢度は40となり、写真画像部より低い値に抑えられている。
【0075】
比較例3では、写真画像部と文字画像部の目標温度を同一にし、一回目の目標温度は190℃、二回目の目標温度は210℃とした。その結果、文字画像部も写真画像部と同等の光沢度80という高い値となった。
【0076】
【0077】
(実施例4)
次に、実施例4の画像形成装置について説明する。実施例1~実施例3と同一またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0078】
実施例4では、高光沢モードにおける二回目の定着部200の目標温度を、一回目の加熱処理の前に記録材Sに形成するトナー画像の画像情報を用いて決定する点は実施例2や実施例3と同じである。
【0079】
実施例4は、記録材の第1の面に形成する画像にホットオフセットが発生しやすい画像が存在するかどうかを画像情報から判断できる場合を想定した高光沢モードに関するものである。ホットオフセットが発生しやすい画像とは、トナー同士の結着力が働き難い、低濃度のハーフトーン画像などである。本実施例の画像形成装置100における記録材S上の各色の画像濃度は、トナーが記録材S上に載っていない場合を0%とし、記録材S上のトナー量が0.40mg/cm2の場合の濃度を100%としている。
【0080】
本実施例では、低濃度の画像が存在すると判断した場合、加熱処理一回目及び二回目の目標温度を低濃度画像が存在しないと判断した場合に比べて低く設定する。且つ、低濃度の画像が存在すると判断した場合の加熱処理の回数を低濃度画像が存在しないと判断した場合に比べて多く設定する。
【0081】
画像形成装置100には予め閾値濃度を設定してあり、本実施例では40%を閾値濃度とした。閾値濃度はその濃度以下ではホットオフセットが発生しやすくなる濃度であり、使用するトナーや定着条件によって変わるため、この値に限定される値ではない。
【0082】
図9のように、画像濃度が30%である画像と100%であるトナー画像が形成された記録材Sを高光沢モードで処理する場合を考える。なお、濃度30%の画像と濃度100%の画像は、いずれも、70mm(ヒータ長手方向)×200mm(搬送方向)の大きさを有する。
【0083】
表3に実施例4、比較例4及び5の加熱処理時の設定及びオフセット状態の結果を示す。光沢度の測定は、濃度が100%となる画像部で行い、ホットオフセットが発生するか否かの評価は、濃度が30%の画像部で行った。
【0084】
比較例4では、加熱処理一回目の目標温度を190℃に設定したため、濃度30%の画像部分が定着フィルム202にホットオフセットした。また、比較例5では加熱処理一回目の目標温度を180℃と低くすることで加熱処理一回目の時のホットオフセット発生を抑制しているが、加熱処理二回目で目標温度210℃へ上げたため、ホットオフセットが発生した。
【0085】
これに対して本実施例は、一面目の画像情報に基づいて閾値濃度未満の低濃度画像が存在すると判断したので、加熱処理一回目の目標温度を180℃、加熱処理二回目の目標温度を190℃に設定することでホットオフセットの発生を抑制した。但し、二度の加熱処理を行っても光沢度が十分に上がっておらず、高光沢モードとしての効果が不十分である。そこで、再度定着部200へ記録材Sを搬送し(一面目が定着フィルムと対向する向きで)、加熱処理回数を増やすことで、高い光沢度の画像を得ている。三回目の加熱処理時の目標温度は二回目と同じ190℃とした。
【0086】
三回目に定着部200を通過後でも光沢度が不十分な場合は、さらに定着部200通過回数を増やしても良い。また、表3では画像濃度100%部分の光沢度を測定した結果を記したが、画像濃度30%のハーフトーン部でも同様に光沢度向上の効果を得られることができる。
【0087】
尚、本実施例の場合、一面目の画像に閾値濃度未満の低濃度画像が存在しないと判断した場合、比較例4と同じ温度設定および加熱処理回数を設定する。
【0088】
【0089】
(実施例5)
次に、実施例5の画像形成装置について説明する。実施例1~実施例4と同一またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0090】
実施例5は、記録材Sの第1の面に2回未定着トナー像を二次転写するケースを想定した、高光沢モードに関するものである。
【0091】
片面プリントの高光沢モードが選択されると、初めに通常の片面プリント時と同様に記録材Sの第1の面に未定着トナー画像が転写され、定着部200によって加熱処理が行われる。その後、通常の両面プリント時と同様に、排紙ローラ21で反転搬送され、両面搬送ローラ18が配置された両面搬送路を経由して、再度、二次転写部へ搬送される。そして、記録材Sの第2の面に対して画像形成は行われず、記録材Sはそのまま定着部200へ搬送される。高光沢モード時は記録材Sを挟持している状態で再度排紙ローラ21が逆回転し、記録材Sは両面搬送ローラ18へ搬送される。以上の工程は実施例1~4と同様である。
【0092】
実施例5では再び二次転写部へ記録材Sが搬送されたとき、記録材Sの第1の面に未定着トナー画像が転写される。つまり、1度加熱処理されたトナー像または記録材S上に、未定着トナー像が転写される。その後、定着部200で加熱され、排紙ローラ21によって機外へ排紙される。
【0093】
本実施例のように二次転写を1回目と2回目に分けることで、記録材S上において、高光沢部と低光沢部を選択的に得ることができる。
【0094】
図10は、本実施例の一回目の加熱処理時と二回目の加熱処理時の目標温度の分布と、一回目の二次転写画像(一回目画像部)と二回目の二次転写画像(二回目画像部)の位置と、の関係を示している。
【0095】
図10において一回目画像部(30mm×80mm)は加熱領域A
4の範囲内に存在する。二回目画像部(60mm×80mm)は加熱領域A
2、A
3およびA
5、A
6の範囲内に存在する。表4に示すように、実施例5では加熱領域A
4の一回目の加熱処理時の目標温度を190℃、二回目の加熱処理時の目標温度を210℃に設定している。二回目の目標温度は一回目より高く設定してある。その結果、二回目の加熱処理終了後の光沢度は80となった。一方、加熱領域A
2~A
3、A
5~A
6では1回目の加熱処理時には画像が存在しないため、目標温度を150℃に設定し、二回目の加熱処理時には画像が存在するため、190℃に設定した。その結果、二回目の加熱処理終了後の光沢度は45となり、一回目画像部と二回目画像部の光沢度の差は35となった。
【0096】
比較例6は一回目と二回目の加熱処理時の目標温度を変えず190℃とした場合である。二回目の加熱処理終了後の光沢度は、一回目画像部では60、二回目画像部では45となり、光沢度の差は15となった。
【0097】
以上のように、記録材Sの第1の面に2回画像を形成する場合には、一回目に記録材Sへ二次転写される画像情報と、二回目に記録材Sへ二次転写される画像情報の二つを用いて、二回目の加熱処理時の目標温度を設定する。その結果、実施例5では比較例6と比べて、一回目画像部と二回目画像部の光沢度の差が顕著に得られた。
【0098】
図10においては一回目画像部と二回目画像部が重なっていないが、一回目画像部上に二回目の画像を形成してもよい。その場合でも二回目に画像を形成した部分は、一回目のみ画像を形成した部分よりも低光沢となるので、一回目のみ画像を形成した部分のみ目標温度を高く設定することで、顕著な光沢差が得られる。
【0099】
【0100】
上述した本実施例1~5の定着部200は、独立制御可能な複数の発熱ブロックHB1~HB7を有するヒータを搭載している。しかしながら、上述した実施例のような高光沢モードは、ヒータ長手方向で複数の発熱ブロックに分割されていないヒータを搭載する画像形成装置にも適用可能である。