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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】光学機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240213BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240213BHJP
   G02B 7/10 20210101ALI20240213BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/08 Z
G02B7/10 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020017996
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021124606
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】上村 耕平
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-031710(JP,U)
【文献】特開2004-295005(JP,A)
【文献】特開平10-333010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
G02B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点距離が可変である光学機器であって、
光軸に沿ってレンズを移動させるカム環と、
前記カム環に設けられたキー部材と、
前記カム環の外周に配置された固定筒と、
前記固定筒の外周に保持され前記キー部材に嵌合される操作環と、
前記固定筒の外周に保持される外装環と、を有し、
前記操作環には、第1端部および第2端部が設けられ、
前記外装環には、内周側に突起部が設けられ、
前記第1端部と前記突起部の第1面とが当接し、前記第2端部と前記突起部の第2面とが当接して、前記焦点距離の可変領域を規制し、
前記第1面および前記第2面は、前記固定筒の外周に設けられた溝部の第1壁面および第2壁面とそれぞれ嵌合することにより、前記外装環と前記固定筒とが位置規制されることで、前記操作環の位置規制を行うことを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記固定筒と前記外装環は、前記突起部の光軸側かつ結像面側でビス締結されて互いに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記突起部は、前記外装環と一体的に形成された樹脂部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記突起部は、リブ形状部であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項5】
前記第1端部と前記第2端部は、前記操作環のマウント側に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項6】
前記第1端部はワイド撮影状態での位置規制を行い、前記第2端部は、テレ撮影状態での位置規制を行うことで、前記焦点距離の前記可変領域を規制することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離を変更可能な光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、ビデオカメラ、または交換レンズ等の光学機器は、撮影画角に応じて焦点距離を変更可能に構成されていることが多い。特許文献1には、ストッパーを設けてズーム領域を制限する交換レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-305606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された交換レンズは、ストッパーを設けているため、コストが高くなる。また、ストッパーの位置ズレにより光学性能に影響を及ぼす。
【0005】
そこで本発明は、低コストで、光学性能に影響を及ぼすことなくズーム領域を規制することが可能な光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学機器は、焦点距離が可変である光学機器であって、光軸に沿ってレンズを移動させるカム環と、前記カム環に設けられたキー部材と、前記カム環の外周に配置された固定筒と、前記固定筒の外周に保持され前記キー部材に嵌合される操作環と、前記固定筒の外周に保持される外装環とを有し、前記操作環には、第1端部および第2端部が設けられ、前記外装環には、内周側に突起部が設けられ、前記第1端部と前記突起部の第1面とが当接し、前記第2端部と前記突起部の第2面とが当接して、前記焦点距離の可変領域を規制し、前記第1面および前記第2面は、前記固定筒の外周に設けられた溝部の第1壁面および第2壁面とそれぞれ嵌合することにより、前記外装環と前記固定筒とが位置規制されることで、前記操作環の位置規制を行う
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで、光学性能に影響を及ぼすことなくズーム領域を規制することが可能な光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態におけるカメラシステムの外観斜視図である。
図2】本実施形態におけるカメラシステムのブロック図である。
図3】本実施形態におけるカメラシステム(繰り込み状態)の断面図である。
図4】本実施形態におけるカメラシステム(繰り出し状態)の断面図である。
図5】本実施形態における交換レンズの斜視図である。
図6】本実施形態における操作環および外装環の斜視図である。
図7】本実施形態における交換レンズの断面図である。
図8】本実施形態におけるワイド撮影状態での交換レンズの突起部を含む断面図である。
図9】本実施形態におけるテレ撮影状態での交換レンズの突起部を含む断面図である。
図10】本実施形態における交換レンズの固定部を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。なお本実施形態では、光学機器として交換レンズについて説明するが、これに限定されるものではなく、レンズ一体型カメラなどの他の光学機器にも適用可能である。
【0011】
まず、図1を参照して、本実施形態における交換レンズ(光学機器)の構成について説明する。図1は、カメラシステム(撮像システム)100の外観図である。カメラシステム100は、カメラ本体(撮像装置本体)1と、カメラ本体1に着脱可能に装着される交換レンズ(光学機器)101とを備えて構成される。図1(a)はカメラシステム100の正面側から見た斜視図、図1(b)はカメラシステム100の背面側から見た斜視図をそれぞれ示す。
【0012】
図1(a)に示されるように、交換レンズ101が収容する撮像光学系の光軸が延びる光軸方向をX軸方向とし、X軸に直交する方向をZ軸方向(水平方向)およびY軸方向(垂直方向)とする。以下、Z軸方向とY軸方向をまとめてZ/Y軸方向とも記す。また、Z軸回りの回転方向をピッチ(Pitch)方向とし、Y軸回りの回転方向をヨー(Yaw)方向とする。ピッチ方向とヨー方向(以下、まとめてピッチ/ヨー方向とも記す)は、互いに直交するZ軸とY軸である2軸回りでの回転方向である。
【0013】
カメラ本体1のうち前方(被写体側)から見て左側(後方から見て右側)の部分には、ユーザがカメラ本体1を手で把持するためのグリップ部2が設けられている。また、カメラ本体1の上面部には、電源操作部3が配置されている。カメラ本体1が電源オフ状態にあるときにユーザが電源操作部3をオン操作すると、カメラ本体1が電源オン状態となり撮像が可能となる。また、カメラ本体1が電源オン状態にあるときにユーザが電源操作部3をオフ操作すると、カメラ本体1が電源オフ状態になる。
【0014】
カメラ本体1の上面部には、モードダイアル4、レリーズボタン5、およびアクセサリシュー6が設けられている。モードダイアル4をユーザが回転操作することで、撮像モードを切り替えることができる。撮像モードには、シャッタ速度や絞り値等の撮像条件をユーザが任意に設定可能なマニュアル静止画撮像モード、自動で適正な露光量が得られるオート静止画撮像モードおよび動画の撮像を行うための動画撮像モード等が含まれる。また、レリーズボタン5をユーザが半押し操作することで、オートフォーカスや自動露出制御等の撮像準備動作を指示することができ、全押し操作することで撮像を指示することができる。アクセサリシュー6には、不図示の外部フラッシュや外部ファインダ(EVF)等のアクセサリが脱着可能に装着される。また、カメラ本体1内には、交換レンズ101内の撮像光学系により形成される被写体像を光電変換(撮像)する撮像素子16(図2参照)が設けられている。
【0015】
交換レンズ101は、レンズマウント102を介して、カメラ本体1に設けられたカメラマウント7に機械的および電気的に接続される。前述したように、交換レンズ101内には、被写体からの光を結像させて被写体像を形成する撮像光学系が収容されている。交換レンズ101の外周には、ユーザの操作により光軸回りに回転可能なズーム操作環(操作環)103が設けられている。ズーム操作環103の外周部には、ユーザが操作する際、手が滑ることがないようにローレット形状が設けられている。ズーム操作環103がユーザによって回転操作されると、撮像光学系を構成するズーム群がズーム操作環103の角度に対応した所定の光学位置へ移動する。このような構成により、ユーザは、所望の画角での撮影が可能となる。
【0016】
図1(b)に示されるように、カメラ本体1の背面には、背面操作部8および表示部9が設けられている。背面操作部8は、様々な機能が割り当てられた複数のボタンやダイアルを含む。カメラ本体1の電源がオン状態であり、静止画または動画撮像モードが設定されているとき、表示部9には、撮像素子により撮像されている被写体像のスルー画像が表示される。また表示部9には、シャッタ速度や絞り値等の撮像条件を示す撮像パラメータが表示され、ユーザはその表示を見ながら背面操作部8を操作することによって、撮像パラメータの設定値を変更することが可能である。背面操作部8は、記録された撮像画像の再生を指示するための再生ボタンを含み、再生ボタンをユーザが操作することで、撮像画像が表示部9に再生表示される。
【0017】
次に、図2を参照して、カメラシステム100の電気的および光学的な構成について説明する。図2は、カメラシステム100のブロック図である。カメラ本体1は、カメラ本体1および交換レンズ101に電力を供給する電源部10、前述した電源操作部3、モードダイアル4、レリーズボタン5、背面操作部8、および、表示部9のタッチパネル機能を含む操作部11を有する。カメラ本体1および交換レンズ101の全体のシステムとしての制御は、カメラ本体1に設けられたカメラ制御部12と交換レンズ101に設けられたレンズ制御部104とが互いに連係することによって行われる。カメラ制御部12は、記憶部13に格納されているコンピュータプログラムを読み出して実行する。その際、カメラ制御部12は、レンズマウント102に設けられた電気接点105の通信端子を介して、レンズ制御部104と各種制御信号やデータ等の通信を行う。電気接点105は、前述した電源部10からの電力を交換レンズ101に供給する電源端子を含む。
【0018】
交換レンズ101が有する撮像光学系は、ズーム操作環103と連結し、光軸OAに沿った方向(光軸方向)に移動して画角を変更するズーム群200、および、像振れを低減する防振素子としてのシフトレンズを含むレンズ防振群301を有する。レンズ防振群301は、シフトレンズを光軸OAに対して直交するZ/Y軸方向に移動(シフト)させて像振れを低減する防振動作を行う。また撮像光学系は、光量調節動作を行う絞り群401、および、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズを含むフォーカス群501を有する。また交換レンズ101は、レンズ防振群301を駆動してシフトレンズをシフトさせる防振駆動部302、絞り群401を駆動する絞り駆動部402、および、フォーカス群501を駆動してフォーカスレンズを移動させるフォーカス駆動部502を有する。
【0019】
カメラ本体1は、シャッタユニット14、シャッタ駆動部15、撮像素子16、画像処理部17、および、前述したカメラ制御部12を有する。シャッタユニット14は、交換レンズ101内の撮像光学系で集光され、撮像素子16で露光される光の量を制御する。撮像素子16は、CMOSセンサやCCDセンサであり、撮像光学系により形成された被写体像を光電変換して撮像信号を出力する。画像処理部17は、撮像信号に対して各種画像処理を行った後、画像信号を生成する。表示部9は、画像処理部17から出力された画像信号(スルー画像)を表示し、前述したように撮像パラメータを表示し、および、記憶部13や不図示の記録媒体に記録された撮像画像を再生表示する。
【0020】
カメラ制御部12は、操作部11から受けた絞り値やシャッタ速度の設定値に応じて、絞り駆動部402およびシャッタ駆動部15を介して、絞り群401およびシャッタユニット14の駆動を制御する。またカメラ制御部12は、操作部11(レリーズボタン5)における撮像準備操作(半押し操作)に応じて、フォーカス群501の駆動を制御する。例えば、オートフォーカスの動作が指示された場合、焦点検出部18は、画像処理部17で生成された画像信号に基づいて、撮像素子16で結像される被写体像の焦点状態を判定し、焦点信号を生成してカメラ制御部12に送信する。それと同時に、フォーカス駆動部502は、フォーカス群501の現在位置を検出し、レンズ制御部104を介してその信号をカメラ制御部12に送信する。カメラ制御部12は、被写体像の焦点状態とフォーカス群501の現在位置とを比較し、そのずれ量からフォーカス駆動量を算出してレンズ制御部104に送信する。そしてレンズ制御部104は、フォーカス駆動部502を介してフォーカス群501を目標位置まで駆動制御し、被写体像の焦点ずれを補正する。
【0021】
自動露出制御の動作が指示された場合、カメラ制御部12は、画像処理部17で生成された輝度信号を受信して測光演算を行う。またカメラ制御部12は、この測光演算結果に基づいて、操作部11(レリーズボタン5)における撮像指示操作(全押し操作)に応じて、絞り群401の駆動を制御する。それと共に、カメラ制御部12は、シャッタ駆動部15を介してシャッタユニット14の駆動を制御し、撮像素子16による露光処理を行う。
【0022】
カメラ本体1は、ユーザによる手振れ等の像振れを検出可能な振れ検出手段として、ピッチ振れ検出部19およびヨー振れ検出部20を有する。ピッチ振れ検出部19およびヨー振れ検出部20はそれぞれ、角速度センサ(振動ジャイロ)や角加速度センサを用いて、ピッチ方向(Z軸回りの回転方向)およびヨー方向(Y軸回りの回転方向)の像振れを検出して振れ信号を出力する。カメラ制御部12は、ピッチ振れ検出部19からの振れ信号を用いてレンズ防振群301(シフトレンズ)のY軸方向でのシフト位置を算出する。同様に、カメラ制御部12は、ヨー振れ検出部20からの振れ信号を用いてレンズ防振群301のZ軸方向でのシフト位置を算出する。そしてカメラ制御部12は、算出したピッチ/ヨー方向のシフト位置に応じて、レンズ防振群301を目標位置まで駆動制御し、露光中やスルー画像表示中の像振れを低減する防振動作を行う。
【0023】
交換レンズ101は、撮像光学系の画角を変更するためのズーム操作環103、および、ズーム操作環103の角度を検出するズーム検出部106を有する。ズーム検出部106は、ユーザが操作するズーム操作環103の角度を絶対値として検出し、例えば抵抗式のリニアポテンショメータを用いて構成されている。ズーム検出部106により検出された画角の情報は、レンズ制御部104に送信され、前述したカメラ制御部12による各種の制御に反映される。また、各種の情報の一部は、撮像画像とともに記憶部13や記録媒体に記録される。
【0024】
次に、図3および図4を参照して、カメラシステム100の構成部品の位置関係について説明する。図3および図4は、光軸OAを含むXY平面上におけるカメラシステム100の断面図であり、ズームの繰り込み状態および繰り出し状態をそれぞれ示す。ここで示される中心線は、撮像光学系によって決定される光軸OAと略一致するため、以下では光軸と同義とする。
【0025】
本実施形態は、撮像光学系の一例として4群ズーム構成を採用している。画角に応じた所定の光学位置へと移動した各ズーム群は、被写体からの光を撮像素子16の撮像面上に結像させる。このとき、レンズ防振群301、絞り群401、および、フォーカス群501は、第3ズーム群として機能する。また撮像光学系は、第1ズーム群201、第2ズーム群202、および、第4ズーム群204を備える。なお本実施形態は、レンズ群の構成を限定するものではなく、例えばレンズ防振群301やフォーカス群501は、第2ズーム群として機能するものであってもよい。また、一部のレンズ群が移動可能ではなく、固定されていてもよい。
【0026】
直進案内筒107は、固定筒109を介してレンズマウント102に固定される固定部品である。直進案内筒107の外周面には、等分位置に不図示のカム溝が配置されている。一方、カム筒(カム環)108の内周面には、不図示のカムフォロワが設けられている。またカム筒108は、外周面に設けられたキー部材111を介してズーム操作環103と連結されている。ズーム操作環103が回転操作されると、カム筒108は、カム溝とカムフォロワとの嵌合によって、光軸OAを中心として回転しながら光軸OAに沿って移動する。
【0027】
直進案内筒107には、第2から第4ズーム群の回転方向への移動を規制して光軸方向への直進を案内する不図示の直進案内溝が形成されており、外周被写体側には第1ズーム群の回転方向への移動を規制して光軸方向への直進を案内する直進キーが形成されている。カム筒108には、各ズーム群に対応して、回転方向にそれぞれ異なる角度の軌跡を持つカム溝が形成されている。一方、第1から第4のズーム群には、それぞれ不図示のカムフォロアが設けられている。第1ズーム群の不図示のカムフォロアは、カム環108の外周側に設けられたカム溝108aに係合し、第2から第4ズーム群の不図示のカムフォロワはカム環の内周側に設けられたカム溝108bに係合している。ユーザがズーム操作環103を回転操作すると、カム筒108が回転し、カムフォロアは直進案内溝、直進キーとカム溝との係合により、それぞれのズーム群を同時に光軸方向へ進退させる。
【0028】
次に、図5乃至図9を参照して、交換レンズ101の要部について説明する。図5は、交換レンズ101から外装環110を取り除いた状態をマウント側から見た斜視図、および、領域Aの拡大図である。図6(a)はズーム操作環103の斜視図、図6(b)は外装環110の斜視図である。図7は、交換レンズ101を光軸OAと直交する面でキー部材111を切断した断面図である。図8は、ワイド撮影状態の交換レンズ101を光軸OAと直交する面で突起部110を切断した断面図である。図9は、テレ撮影状態の交換レンズ101を光軸OAと直交する面で突起部110を切断した断面図である。
【0029】
ズーム操作環103のマウント側には、ワイド撮影状態での位置規制部である第1ストッパー部(第1端部)103aとテレ撮影状態での位置規制部である第2ストッパー部(第2端部)103bとが一体的に形成されている。ズーム操作環103のマウント側で固定筒109の外周側には外装環110が設けられており、固定筒109にビス止めで固定されている。外装環110の内周側には突起部(リブ形状部)110cが一体的に形成されている。突起部110cは、一方の面である第1面(第1規制面)110a、および、他方の面である第2面(第2規制面)110bを有する。第1面110aおよび第2面110bは、固定筒109の外周に設けられた溝部109cに設けられた第1壁面109aおよび第2壁面109bと嵌合することにより、外装環110と固定筒109とが位置規制されている。ワイド撮影状態では第1ストッパー部103aと第1面110aとが、テレ撮影状態では第2ストッパー部103bと第2規制面110bとがそれぞれ当接することにより、位置規制が行われる。
【0030】
このように本実施形態において、第1ストッパー部103aと突起部110cの第1面110aとが当接し、第2ストッパー部103bと突起部110cの第2面110bとが当接して、焦点距離の可変領域を規制する。このとき、第1ストッパー部103aはワイド撮影状態での位置規制を行い、第2ストッパー部103bはテレ撮影状態での位置規制を行うことで、焦点距離の可変領域を規制する。
【0031】
ズーム操作環103は、固定筒109の外周に回転可能に嵌合している。ズーム位置規制は、固定筒109の位置規制部である溝部109cにより位置規制された外装環110の突起部110cによって行われる。本来、固定筒109にズーム操作環103の位置規制部を設けることが望ましい。しかし、ズーム操作環103の固定筒109への組み込みを撮影領域外から行う必要があるため難しく、ズーム操作環103を固定筒109へ組み込んだ後に別途専用部品を用いていた。または、専用部品を用いない方法として、図7の状態からキー部材111を固定筒109に当接させることにより行う方法があるが、キー部材111を視点にしてカム環108が変形し、光学性能が劣化する。一方、本実施形態の構成によれば、ズーム操作環103を固定筒109で位置規制を行う場合と大差なく専用部品を用いることなく位置規制することができる。このため、WIDE(ワイド/広角)やTELE(テレ/望遠)での位置ズレによる光学性能の劣化を低コストで抑制することができる。
【0032】
図8に示されるように、外装環110の突起部110cは、中心部が中空となった状態で一体的に形成されている。突起部110cは、外装環110が樹脂成型されて外観面へのヒケを抑えるために設けられている。このように突起部110cは、外装環110と一体的に形成された樹脂部材である。
【0033】
図10は、交換レンズ101の固定部109dを光軸OAと平行な面で切断した断面図である。外装環110は、固定筒109にマウント側で複数の箇所でビス締結されている。そのうちの1カ所は、突起部110cから光軸方向にマウント側の位置である固定部109dと外装環110のフランジ部110dとでビス締結されている。すなわち固定筒109と外装環110は、突起部110cの光軸側かつ結像面側でビス締結されて互いに固定されている。これにより、ズーム操作環103を回転時にWIDE端(広角端)、TELE端(望遠端)で衝撃を受けても突起部110cとビス締結部とが近いため突起部110cの変形を抑えることができ、撮影位置のズレによる光学性能の劣化を抑制することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態の光学機器(交換レンズ101)は、焦点距離が可変である光学機器である。光学機器は、光軸OAに沿ってレンズを移動させるカム環(カム筒108)と、カム環に設けられたキー部材111と、カム環の外周に配置された固定筒109と、固定筒109の外周に保持されキー部材111に嵌合される操作環(ズーム操作環103)とを有する。また光学機器は、固定筒109の外周に保持される外装環110を有する。操作環には、第1端部(第1ストッパー部103a)および第2端部(第2ストッパー部103b)が設けられ、外装環には、内周側に突起部110cが設けられている。また、第1端部と突起部の第1面110aとが当接し、第2端部と突起部の第2面110bとが当接して、焦点距離の可変領域を規制する。
【0035】
本実施形態によれば、低コストで、光学性能に影響を及ぼすことなくズーム領域を規制することが可能な光学機器を提供することができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
101 交換レンズ(光学機器)
103 ズーム操作環(操作環)
103a 第1ストッパー部(第1端部)
103b 第2ストッパー部(第2端部)
108 カム筒(カム環)
109 固定筒
110 外装環
110a 第1面
110b 第2面
110c 突起部
111 キー部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10