(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240213BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020019125
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正敬
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-056589(JP,A)
【文献】特開2019-075551(JP,A)
【文献】特開2019-080047(JP,A)
【文献】特開2019-201146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記型と前記基板とを相対的に移動させて前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる移動部と、
前記型と前記基板上のインプリント材とが接触している状態において、前記型のパターン領域における周辺領域と前記基板との間にあるインプリント材の重合度が、前記基板上にインプリント材を供給したときの初期状態における重合度よりも高く、且つ、当該インプリント材を硬化させたときの最終状態における重合度より低い範囲に収まるように、前記周辺領域に光を照射する照射部と、
前記基板上のショット領域ごとに、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる接触工程を制御するための第1パラメータの値に基づいて、前記照射部による前記光の照射を制御するための第2パラメータの値を制御する制御部と、
を有
し、
前記第1パラメータは、前記型と前記基板との相対的な傾き、前記接触工程において前記型及び前記基板上のインプリント材に加わる力、及び、前記接触工程において前記パターン領域を変形させる際に前記型に加える圧力のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記第2パラメータは、前記照射部による前記光の照射を開始するタイミング、前記照射部から前記周辺領域に照射する前記光の強度、及び、前記照射部から前記周辺領域に前記光を照射している期間のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記第1パラメータは
、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させている期
間を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記周辺領域は、複数の領域に区切られ、
前記制御部は、前記複数の領域のそれぞれについて、前記第2パラメータの値を制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1パラメータの値に基づいて、前記接触工程が終了したときに前記パターン領域の外側にはみだすインプリント材の量がゼロとなるように、前記第2パラメータの値を決定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1パラメータの値ごとに、前記第1パラメータの値と、前記接触工程が終了したときに前記パターン領域の外側にはみだすインプリント材の量がゼロとなる前記第2パラメータの値との関係を示す複数のテーブルから、前記基板上の各ショット領域に対して設定された前記第1パラメータの値に対応する1つのテーブルを選択することで、前記基板上のショット領域ごとに、前記第2パラメータの値を決定する
ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記型と前記基板とを相対的に移動させて前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる移動部と、
前記型と前記基板上のインプリント材とが接触している状態において、前記型のパターン領域における周辺領域と前記基板との間にあるインプリント材の重合度が、前記基板上にインプリント材を供給したときの初期状態における重合度よりも高く、且つ、当該インプリント材を硬化させたときの最終状態における重合度より低い範囲に収まるように、前記周辺領域に光を照射する照射部と、
前記基板上のショット領域ごとに、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる接触工程を制御するための第1パラメータの値に基づいて、前記照射部による前記光の照射を制御するための第2パラメータの値を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記第1パラメータの値ごとに、前記第1パラメータの値と、前記接触工程が終了したときに前記パターン領域の外側にはみだすインプリント材の量がゼロとなる前記第2パラメータの値との関係を示す複数のテーブルから、前記基板上の各ショット領域に対して設定された前記第1パラメータの値に対応する1つのテーブルを選択することで、前記基板上のショット領域ごとに、前記第2パラメータの値を決定し、
前記複数のテーブルから、前記基板上の各ショット領域に対して設定された前記第1パラメータの値が調整されるたびに、調整された前記第1パラメータの値に対応する1つのテーブルを選択することで、前記第2パラメータの値を決定する
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項8】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント方法であって、
前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる第1工程と、
前記型と前記基板上のインプリント材とが接触している状態において、前記型のパターン領域における周辺領域と前記基板との間にあるインプリント材の重合度が、前記基板上にインプリント材を供給したときの初期状態における重合度よりも高く、且つ、当該インプリント材を硬化させたときの最終状態における重合度より低い範囲に収まるように、前記周辺領域に光を照射する第2工程と、
前記基板上のショット領域ごとに、前記第1工程を制御するための第1パラメータの値に基づいて、前記第2工程で用いられる前記光の照射を制御するための第2パラメータの値を制御する第3工程と、
を有
し、
前記第1パラメータは、前記型と前記基板との相対的な傾き、前記第1工程において前記型及び前記基板上のインプリント材に加わる力、及び、前記第1工程において前記パターン領域を変形させる際に前記型に加える圧力のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするインプリント方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置は、基板上に供給(配置)されたインプリント材に型を接触させた状態でインプリント材を硬化させることによって、基板上にインプリント材の硬化物からなるパターンを形成する。インプリント装置では、基板上のショット領域に供給されたインプリント材に型を接触させる際に、型とインプリント材とに力(押印力)を加える。これにより、基板上のインプリント材が広がるように移動し、ショット領域の外側や基板のエッジの外側(即ち、型のパターン領域の外側)にインプリント材がはみだしてしまうことがある(以下、「浸み出し」と称する)。
【0003】
そこで、浸み出しを防止するための技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、基板上のエッジを含むショット領域(エッジショット領域)に供給されたインプリント材と型とを接触させる際に、パターンを形成する領域の境界近傍に紫外光を照射する、所謂、枠露光に関する技術が開示されている。このような枠露光によって、基板のエッジに向かって広がるインプリント材を硬化させることで、インプリント材の浸み出しを防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インプリント装置では、基板上のショット領域に応じて、型と基板上のインプリント材とを接触させる接触工程を制御するためのパラメータ(例えば、型と基板との相対的な傾きや押印力など)の値が異なる。このため、型と基板上のインプリント材とを接触させた際にインプリント材が広がる様子も基板上のショット領域に応じて異なることになる。従って、インプリント材の浸み出しを防止するためには、枠露光を制御するためのパラメータの値をショット領域ごとに制御(調整)する必要があるが、特許文献1には、このような対策が開示されていない。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、型のパターン領域からインプリント材がはみだすことを低減するのに有利なインプリント装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、前記型と前記基板とを相対的に移動させて前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる移動部と、前記型と前記基板上のインプリント材とが接触している状態において、前記型のパターン領域における周辺領域と前記基板との間にあるインプリント材の重合度が、前記基板上にインプリント材を供給したときの初期状態における重合度よりも高く、且つ、当該インプリント材を硬化させたときの最終状態における重合度より低い範囲に収まるように、前記周辺領域に光を照射する照射部と、前記基板上のショット領域ごとに、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる接触工程を制御するための第1パラメータの値に基づいて、前記照射部による前記光の照射を制御するための第2パラメータの値を制御する制御部と、を有し、前記第1パラメータは、前記型と前記基板との相対的な傾き、前記接触工程において前記型及び前記基板上のインプリント材に加わる力、及び、前記接触工程において前記パターン領域を変形させる際に前記型に加える圧力のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、型のパターン領域からインプリント材がはみだすことを低減するのに有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図2】インプリント装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】インプリント材の浸み出しを説明するための図である。
【
図4】型のパターン領域における周辺領域に光を照射する工程を説明するための図である。
【
図5】接触工程におけるインプリント材の広がりを説明するための図である。
【
図7】接触工程におけるインプリント材の広がりを説明するための図である。
【
図8】照射領域の各領域に対する光の照射を説明するための図である。
【
図9】接触工程におけるインプリント材の広がりを説明するための図である。
【
図10】照射領域の各領域に対する光の照射を説明するための図である。
【
図11】インプリント材の浸み出しを抑制する調整及び位置合わせ精度の調整に関する一般的な処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置1の構成を示す概略図である。インプリント装置1は、物品としての半導体素子、液晶表示素子、磁気記憶媒体などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に採用される。インプリント装置1は、基板にパターンを形成する、具体的には、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するリソグラフィ装置である。インプリント装置1は、基板上に供給された未硬化のインプリント材と型とを接触させ(基板上のインプリント材に型を接触させて押印し)、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。型は、モールド、テンプレート、原版とも称される。
【0013】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料(硬化性組成物)が使用される。硬化用のエネルギーとしては、電磁波や熱などが用いられる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、具体的には、赤外線、可視光線、紫外線などを含む。
【0014】
硬化性組成物は、光の照射、或いは、加熱により硬化する組成物である。光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0015】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0016】
基板には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。具体的には、基板は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。
【0017】
インプリント装置1は、型8を保持して移動する型保持部3(インプリントヘッド)と、基板10を保持して移動する基板保持部4(ステージ)と、基板上にインプリント材を供給する供給部5(ディスペンサ)とを有する。また、インプリント装置1は、インプリント材を硬化させる光9を照射する第1照射部2と、光35を照射して型8と基板上のインプリント材との接触状態を撮像する撮像部6と、インプリント装置1の全体を制御する制御部7とを有する。更に、インプリント装置1は、型8や基板10に形成されたマーク(アライメントマーク)を検出する検出部12と、第2照射部60とを有する。
【0018】
インプリント装置1は、インプリント材として、光9、例えば、紫外線を照射することで硬化する紫外線硬化型のインプリント材を用いる(即ち、インプリント材の硬化法として光硬化法を採用する)。但し、インプリント材の硬化法は、光硬化法に限定されるものではなく、熱を利用してインプリント材を硬化させる熱硬化法を採用してもよい。熱硬化法を採用する場合、インプリント装置1は、第1照射部2の代わりに、インプリント材を硬化させる熱を加える加熱部を有する。
【0019】
本明細書及び添付図面では、基板10の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とし、X軸回りの回転、Y軸回りの回転及びZ軸回りの回転のそれぞれを、θX、θY及びθZとする。
【0020】
基板保持部4は、基板10を保持する基板チャック16と、XYZ座標系における少なくともX軸方向及びY軸方向の2軸に関して基板10(を保持する基板チャック16)を移動させる基板移動部17とを含む。基板移動部17は、例えば、アクチュエータを含む。また、基板保持部4の位置は、基板保持部4に設けられたミラー18と干渉計19とを用いて求められる。但し、ミラー18及び干渉計19の代わりに、エンコーダを用いて基板保持部4の位置を求めてもよい。
【0021】
型保持部3は、型8を保持する型チャック11と、XYZ座標系における少なくともZ方向(上下方向)の1軸に関して型8(を保持する型チャック11)を移動させる型移動部38とを含む。型移動部38は、例えば、アクチュエータを含む。型チャック11が型移動部38によって下方(-Z方向)に移動することによって、型8のパターン領域8aと基板上のインプリント材14とを接触させる。型8(パターン領域8a)と基板上のインプリント材14とが接触すると、制御部7の制御下において、型8及び基板上のインプリント材14に加わる力(押印力)が一定となるように制御される。基板上のインプリント材14を硬化させた後、型チャック11が型移動部38によって上方(+Z方向)に移動することによって、型8のパターン領域8aが基板上の硬化したインプリント材14から引き離される(離型する)。
【0022】
本実施形態では、型移動部38が型8と基板10とを相対的に移動させて型8と基板上のインプリント材14とを接触させる移動部として機能しているが、これに限定されるものではない。例えば、基板チャック16を基板移動部17によって上方(-Z方向)に移動させることによって、型8のパターン領域8aと基板上のインプリント材14とを接触させてもよい。また、型チャック11を型移動部38によって下方に移動させ、且つ、基板チャック16を基板移動部17によって上方に移動させることによって、型8のパターン領域8aと基板上のインプリント材14とを接触させてもよい。このように、基板移動部17及び型移動部38の少なくとも一方を、型8と基板10とを相対的に移動させて型8と基板上のインプリント材14とを接触させる移動部として機能させてもよい。
【0023】
型8を保持する型保持部3は、型8の傾きを調整する姿勢調整部を含み、同様に、基板10を保持する基板保持部4は、基板10の傾きを調整する姿勢調整部を含む。これらの姿勢調整部を用いて型8と基板10との相対的な傾きを補正することで、型8と基板10とを平行にすることができる。型8と基板10との相対的な傾きは、型保持部3及び基板保持部4の一方で補正してもよいし、型保持部3及び基板保持部4の両方で補正してもよい。
【0024】
型保持部3には、仕切り板41及び型8によって規定される(区切られる)空間13を形成するための凹部が設けられている。空間13の圧力を調整することで、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる際や基板上の硬化したインプリント材14から型8を引き離す際に、型8(のパターン領域8a)を変形させることができる。例えば、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる際には、空間13の圧力を高くすることで、基板10に対して型8を凸形状に変形させた状態で、型8のパターン領域8aと基板上のインプリント材14とを接触させることができる。
【0025】
検出部12は、型8に形成されたマークと、基板10に形成されたマークとを検出する。検出部12の検出結果から型8と基板10との相対的な位置(位置ずれ)を求め、型8及び基板10の少なくとも一方を移動させることで型8と基板10とを位置合わせ(アライメント)することができる。
【0026】
制御部7は、CPUやメモリなどを含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従って、インプリント装置1の各部を統括的に制御してインプリント装置1を動作させる。制御部7は、基板上の各ショット領域にパターンを形成するインプリント処理及びそれに関連する処理を制御する。制御部7は、装置内に設けてもよいし、装置外に設けてもよい。
【0027】
<第1実施形態>
図2を参照して、インプリント装置1の動作、即ち、基板上のインプリント材14を型8で成形して各ショット領域にパターンを形成するインプリント処理を説明する。
【0028】
S101では、インプリント装置1に基板10を搬入する。具体的には、基板搬送機構(不図示)を介して、インプリント装置1に基板10を搬入して、かかる基板10を基板保持部4の基板チャック16で保持する。
【0029】
S102では、基板上にインプリント材14を供給する。具体的には、インプリント材14のパターンを形成する基板上のショット領域(対象ショット領域)に対して、供給部5からインプリント材14を供給する。
【0030】
S103では、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる(接触工程)。具体的には、型8と基板10とを相対的に近づけることで、基板上に供給されたインプリント材14と型8のパターン領域8aとを接触させる。
【0031】
接触工程では、
図3(a)に示すように、基板上のインプリント材14と型8との濡れ性が良好であると、ショット領域の外側や基板10のエッジの外側、即ち、型8のパターン領域8aの外側にインプリント材14がはみだしてしまうことがある(浸み出し)。型8のパターン領域8aの外側にはみだしたインプリント材14は、例えば、パターン領域8aの側面8bに付着する。型8のパターン領域8aの側面8bにインプリント材14が付着した状態でインプリント材14を硬化させると、インプリント材14から型8を引き離した際に、
図3(b)に示すように、突起部15を有するインプリント材14のパターンが形成される。このような場合、基板上に形成されるインプリント材14のパターンの膜厚が不均一となるため、後工程のエッチング処理などに影響を与える可能性がある。また、型8のパターン領域8aの側面8bに付着したインプリント材14の一部がインプリント処理中に基板上に落下して異物となる可能性もある。基板上に異物が存在していると、かかる異物に型8が接触し、型8のパターン領域8aに形成されているパターンが破損してパターン形成の不良を引き起こす原因となる。なお、
図3(b)では、型8のパターン領域8aに対応する微細な凹凸パターンの図示は省略している。
【0032】
本実施形態では、型8のパターン領域8aの側面8bにインプリント材14が付着することを低減し、パターン形成の不良や型8の破損を防止(低減)することで、高い歩留まりを実現する。具体的には、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる接触工程(S103)と並行して、S104において、枠露光を行う。具体的には、第2照射部60から、型8のパターン領域8aにおける周辺領域(パターン領域8aのエッジ(外周部)を含む領域)に光50を照射する。枠露光では、型8のパターン領域8aにおける周辺領域と基板10との間にあるインプリント材14が硬化せず、且つ、インプリント材14の重合度(粘度)が増加するように、光50を照射する。換言すれば、インプリント材14の重合度が、基板上にインプリント材14を供給したときの初期状態における重合度よりも高く、且つ、インプリント材14を硬化させたときの最終状態における重合度より低い範囲に収まるように、光50を照射する。これにより、基板上のショット領域のエッジに向かうインプリント材14の広がりが抑制され、インプリント材14の浸み出しを防止(低減)することができる。本実施形態では、型8のパターン領域8aの一部が基板上のインプリント材14と接触し、接触工程(S103)が終了する前に、第2照射部60から型8のパターン領域8aにおける周辺領域に光50を照射する(枠露光を行う)。一方、型8のパターン領域8aの中心領域(基板10に転写すべきパターンが形成されている領域)には、光50を照射しない。従って、型8のパターン領域8aの中心領域にあるインプリント材14に関しては、重合度が変化(増加)せずに、型8のパターン領域8aに形成されているパターン(凹部)に対する充填性が維持される。
【0033】
S105では、型8と基板10との位置合わせを行う。型8と基板10との位置合わせは、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる接触工程(S103)が終了して、型8のパターン領域8aのパターンにインプリント材14が十分に充填された後に行う。例えば、型8に形成されたマークと基板10に形成されたマークとを検出部12で検出し、その検出結果に基づいて、型8と基板10との位置合わせを行う。
【0034】
上述したように、型8のパターン領域8aにおける周辺領域にあるインプリント材14は、重合度は変化(増加)しているが、硬化していない。従来技術のように、型8のパターン領域8aの側面8bにインプリント材14が付着することを防止するために、型8のパターン領域8aの側面8bの近傍(周辺領域)にあるインプリント材14を硬化させてしまうと、型8と基板10との位置合わせが困難となる。また、型8のパターン領域8aの側面8bに近い部分にも微細構造(パターン)が配置されている場合には、インプリント材14が微細構造に充填される前に硬化することになるため、未充填欠陥を増加させる原因となる。型8と基板10との位置合わせ精度(重ね合わせ精度)の低下、及び、未充填欠陥の増加は、歩留まりの低下につながる。
【0035】
S106では、型8と基板10との位置ずれが許容範囲に収まっているかどうかを判定する。型8と基板10との位置ずれが許容範囲に収まっていない場合には、S105に移行して、型8と基板10との位置合わせを継続する。但し、型8と基板10との位置合わせを継続しても、型8と基板10との位置ずれが許容範囲に収まらない場合には、強制的に次の工程に移行するようにしてもよい。一方、型8と基板10との位置ずれが許容範囲に収まっている場合には、S107に移行する。
【0036】
S107では、型8と基板上のインプリント材14とを接触させた状態で(型8を介して)、第1照射部2から光9を照射してインプリント材14を硬化させる(硬化工程)。
【0037】
S108では、基板上の硬化したインプリント材14から型8を引き離す(離型工程)。具体的には、型8と基板10とを相対的に遠ざけることで、基板上の硬化したインプリント材14から型8を引き離す。
【0038】
S109では、基板上の指定したショット領域(例えば、基板上の全てのショット領域)に対してインプリント処理が完了しているかどうかを判定する。基板上の指定したショット領域に対してインプリント処理が完了していない場合には、S102に移行して、基板上の次のショット領域に対するインプリント処理を継続する。従って、基板上の指定したショット領域に対するインプリント処理が完了するまで各工程が繰り返される。一方、基板上の指定したショット領域に対してインプリント処理が完了している場合には、S110に移行する。
【0039】
S110では、インプリント装置1から基板10を搬出する。具体的には、基板搬送機構(不図示)を介して、基板保持部4の基板チャック16で保持されている基板10をインプリント装置1の外に搬出する。
【0040】
本実施形態では、枠露光に関して、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる接触工程を制御するための接触パラメータの値に基づいて、第2照射部60による光50の照射を制御するための照射パラメータの値を制御する。ここで、接触パラメータ(第1パラメータ)は、型8と基板10との相対的な傾き、型8及びインプリント材14に加わる力(押印力)、空間13に加える圧力、及び、型8とインプリント材14とを接触させている期間のうちの少なくとも1つを含む。また、照射パラメータ(第2パラメータ)は、第2照射部60による光50の照射を開始するタイミング、第2照射部60から照射する光50の強度、及び、第2照射部60から光50を照射している期間のうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
以下では、接触パラメータや照射パラメータを具体化しながら、第2照射部60から、型8のパターン領域8aにおける周辺領域に光50を照射する工程(S104)について詳細に説明する。
図4(a)は、光50が照射される照射領域52と、型8のパターン領域8aの側面8b(エッジ)との関係を示す側面図である。
図4(a)に示すように、第2照射部60は、型8のパターン領域8aのエッジである側面8bを含む周辺領域(照射領域52)に光50を照射する。光50は、インプリント材14が重合反応する光であればよく、紫外線に限定されない。光50を照射することでインプリント材14が硬化してしまうと、型8と基板10との位置合わせ(S105)を行うことができない。従って、型8のパターン領域8aの側面8bの近傍にあるインプリント材14を硬化させずに、且つ、インプリント材14の重合度を増加させる程度の光50を照射する。第2照射部60から照射する光50の波長などは、インプリント材14の性質などを考慮して、適宜決定される。
【0042】
図4(b)は、
図4(a)は、光50が照射される照射領域52と、型8のパターン領域8aの側面8bとの関係を示す平面図である。
図4(b)に示すように、照射領域52は、型8のパターン領域8aの側面8bを含む周辺領域に対応する領域である。
図4(b)に示すような照射領域52を設定することで、接触工程におけるインプリント材14の浸み出しを防止することができる。
【0043】
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)を参照して、接触工程におけるインプリント材14の広がり(状態)について説明する。
図5(a)に示すように、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる前では、基板上のインプリント材14は、複数の液滴として存在している。
図5(a)に示す状態から型8と基板上のインプリント材14(液滴)とを接触させると、インプリント材14は、
図5(b)に示すように、型8のパターン領域8aの外側(エッジ)に向かって広がり始める。インプリント材14の広がりが進むと、
図5(c)に示すように、光50が照射される照射領域52に到達したインプリント材14の界面(気液界面)14bでは、光50によって重合反応が開始され、インプリント材14の界面14bの重合度が増加する。インプリント材14の界面14bの重合度を増加させることで、インプリント材14を硬化させるまで、型8のパターン領域8aの外側に向かって広がるインプリント材14の界面14bがパターン領域8aの側面8bに到達しないように、その移動速度を制御する。これにより、型8のパターン領域8aの側面8bにインプリント材14が付着することを防止することができる。インプリント材14の重合度を変化(増加)させるのに必要となる照射パラメータ、例えば、光50の強度や光50の照射を開始するタイミング(照射開始タイミング)は、インプリント材14の種類などによっても異なる。従って、光50の強度や照射開始タイミングは、実験やシミュレーションなどで別途探索する必要がある。
【0044】
図6は、型8のパターン領域8aの側面8bを含む周辺領域に光50を照射する第2照射部60の構成の一例を示す図である。第2照射部60は、光源51と、光変調素子53と、光学素子54a及び54bとを含む。光源51は、インプリント材14が重合反応する波長の光50を射出する。光源51には、インプリント材14を予め定められた粘度に重合反応させるために必要な出力が得られる光源が選定される。光源51は、例えば、ランプ、レーザダイオード、LEDなどから構成される。
【0045】
光源51からの光は、光学素子54aを介して、光変調素子(空間光変調素子)53に導かれる。光変調素子53は、本実施形態では、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)で構成されている。但し、光変調素子53は、DMDに限定されるものではなく、LCDデバイスやLCOSデバイスなどのその他の素子で構成されていてもよい。光源51と基板10との間に光変調素子53を配置することで、照射領域52を任意の位置に制御(設定)したり、光50の強度を任意の強度に制御したりすることができる。光変調素子53によって照射領域52や光強度が制御された光50は、光学素子54bを介して、型8のパターン領域8aにおける周辺領域に照射(投影)される倍率が調整される。
【0046】
接触工程(S103)において、型8と基板上のインプリント材14とを接触させると、インプリント材14の界面14bは、
図7に示すように、円状、或いは、円に類似した形状で型8のパターン領域8aの外側に向かって広がる。換言すれば、型8とインプリント材14との接触領域は、型8のパターン領域8aの中心付近から広がるように変化する。型8のパターン領域8aは、一般的には、矩形であるため、照射領域52も型8のパターン領域8aのエッジに沿った矩形の領域となる。従って、インプリント材14の界面14bが照射領域52(型8のパターン領域8aのエッジ)に到達するタイミングは、照射領域52の各位置で異なる。
【0047】
インプリント材14の界面14bが照射領域52に到達するタイミングに対して、第2照射部60から照射領域52に光50を照射するタイミングが早いと、型8のパターン領域8aの側面8bに近い領域に未充填欠陥が生じる可能性がある。一方、インプリント材14の界面14bが照射領域52に到達するタイミングに対して、第2照射部60から照射領域52に光50を照射するタイミングが遅いと、インプリント材14が型8のパターン領域8aからはみ出して側面8bに付着する可能性がある。従って、インプリント材14の浸み出しを防止するためには、第2照射部60から照射領域52に光50を照射するタイミングを適切に制御しなければならない。
【0048】
そこで、本実施形態では、
図8(a)に示すように、照射領域52(型8のパターン領域8aにおける周辺領域)を複数の領域52a乃至52xに区切る(分割する)。そして、複数の領域52a乃至52xのそれぞれに対して、照射パラメータとして、第2照射部60から光50の照射を開始するタイミング、即ち、照射開始タイミング及び第2照射部60から照射する光50の強度の少なくとも一方を制御する。照射開始タイミングや光50の強度は、制御部7の制御下において、光変調素子53を用いて制御することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、
図8(a)に示すように、照射領域52を、縦方向(Y方向)に8個の領域、横方向(X方向)に6個の領域に区切ることで、合計で24個の領域52a乃至52xに区切っているが、これに限定されるものではない。また、24個の領域52a乃至52xのそれぞれは、正方形状を有しているが、これに限定されるものではなく、例えば、長方形状や三角形状を有していてもよい。照射領域52を区切る領域の数や照射領域52を区切る領域の形状は、任意に設定することが可能である。
【0050】
図8(b)は、照射領域52の各領域52a乃至52xに対する照射開始タイミングを示す図である。ここでは、
図7に示したように、基板上のインプリント材14の界面14bが型8のパターン領域8aの中心付近から外側に向かって広がる場合を想定している。但し、
図8(b)では、説明を簡略にするために、照射領域52(複数の領域52a乃至52x)のうち、型8のパターン領域8aの左側に位置する領域52a乃至52hに限定して、照射開始タイミングを示している。
図8(b)において、横軸は時間を示し、縦軸は強度を示している。
【0051】
接触工程を開始すると、インプリント材14の界面14bが広がり、照射領域52に対して、時刻T1で領域52d及び52e、時刻T2で領域52c及び52f、時刻T3で領域52b及び52g、時刻T4で領域52a及び52hに到達する。従って、
図8(b)に示すように、インプリント材14の界面14bが早く到達する領域ほど、具体的には、領域52d及び52e、領域52c及び52f、領域52b及び52g、領域52a及び52hの順で光50の照射を開始する。
【0052】
照射領域52の各領域に対して、照射パラメータ、即ち、照射開始タイミング、光50の強度、及び、光50を照射している期間(照射時間)は、任意に設定することができる。
図8(b)では、照射領域52の各領域に対する照射時間はΔTで一定とし、照射領域52の各領域に照射する光50の強度は同じとしている。
【0053】
接触工程では、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる際に、型8と基板10との位置合わせ精度を向上させるために、型8と基板10との平行度を意図的にずらし、型8と基板10とを相対的に傾ける場合がある。この場合、型8と基板10との平行度をずらすことで、型8に加わる力(圧力)の分布が変化し、型8が変形する。
【0054】
図9は、型8を傾けて基板上のインプリント材14に接触させた際のインプリント材14の広がりを説明するための図である。型8を傾けた状態で基板上のインプリント材14に接触させると、
図9に示すように、円状に外側に広がるインプリント材14の界面14bの中心が型8のパターン領域8aの中心に対してずれて発生する。
図9に示す状態から接触工程が更に進むと、インプリント材14の界面14bの左側の一部が型8のパターン領域8aの左側のエッジに到達する。その際、型8のパターン領域8aの左側のエッジと対称となる右側のエッジには、インプリント材14の界面14bは到達していない。従って、インプリント材14の浸み出しを防止するためには、型8と基板10との相対的な傾きに応じて、第2照射部60から照射領域52の各領域に光50を照射するタイミングを適切に制御しなければならない。
【0055】
そこで、本実施形態では、照射領域52の複数の領域52a乃至52xのそれぞれに対して、型8と基板10との相対的な傾きに応じて、第2照射部60から光50を照射するタイミングを変更する。具体的には、照射領域52の各領域52a乃至52xにおいて、インプリント材14の浸み出しが生じないように、各領域52a乃至52xに対する照射開始タイミングを変更する。
【0056】
例えば、型8と基板10との相対的な傾きと、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる照射開始タイミングとの関係を示すテーブルを事前に求めておく。そして、かかるテーブルから、照射領域52の各領域に対する照射開始タイミングを決定する。
【0057】
また、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量は、インプリント材14の界面14bが照射領域52の各領域に到達するタイミングに依存する。従って、型8と基板10との相対的な傾きと、インプリント材14の界面14bが照射領域52の各領域に到達するタイミングとの関係を事前に求めておき、かかる関係から、照射領域52の各領域に対する照射開始タイミングを決定してもよい。
【0058】
図8(c)は、照射領域52の各領域52a乃至52xに対する照射開始タイミングを示す図である。ここでは、
図9に示したように、型8を傾けて基板上のインプリント材14に接触させる場合を想定している。但し、
図8(c)では、説明を簡略にするために、照射領域52(複数の領域52a乃至52x)のうち、型8のパターン領域8aの左右に位置する一部の領域52d、52e、52l及び52mに限定して、照射開始タイミングを示している。
図8(c)において、横軸は時間を示し、縦軸は強度を示している。
【0059】
図8(c)に示すように、接触工程を開始した後、インプリント材14の界面14bが早く到達する領域ほど、第2照射部60から光50の照射を開始するタイミングを早くする。具体的には、接触工程を開始すると、
図8(c)に示すように、型8のパターン領域8aの中心から左にずれた位置から広がったインプリント材14の界面14bは、時刻T5で領域52d及び52eに到達する。従って、時刻T5において、照射領域52の領域52d及び52eに対して光50の照射を開始する。次いで、インプリント材14の界面14bは、時刻T6で領域52l及び52mに到達する。従って、時刻T6において、照射領域52の領域52l及び52mに対して光50の照射を開始する。
【0060】
第2照射部60から光50の照射を開始するタイミングの代わりに、第2照射部60から照射領域52(の各領域)に照射する光50の量(露光量)を制御(変更)してもよい。露光量は、光50の強度と照射時間(照射領域52に光50を照射している期間)との積で表され、インプリント材14の重合度は、露光量に応じて変化する。
【0061】
図8(d)は、
図9に示したように、型8を傾けて基板上のインプリント材14に接触させる場合において、露光量を制御する際の、照射領域52の領域52d、52e、52l及び52mに対する照射開始タイミングを示す図である。
図8(d)において、横軸は時間を示し、縦軸は強度を示している。
図8(d)では、照射領域52の領域52d、52e、52l及び52mに対する照射時間はΔTで一定とし、照射領域52の各領域に照射する光50の強度を変更している。具体的には、最初にインプリント材14の界面14bが到達する照射領域52の領域52d及び52eに対しては、第2照射部60から照射する光50の強度を強くする。次にインプリント材14の界面14bが到達する照射領域52の領域52l及び52mに対しては、第2照射部60から照射する光50の強度を弱くする。なお、ここでは、照射領域52に光50を照射する照射時間を一定とし、光50の強度を変更する場合について説明したが、光50の強度を一定とし、照射領域52に光50を照射する照射時間を変更してもよい。また、照射領域52に光50を照射する照射時間及び光50の強度の両方を変更してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、基板上の1つのショット領域に対するインプリント処理について説明したが、実際には、基板上の複数のショット領域に対してインプリント処理が行われる。この際、型8と基板10との位置合わせ精度を向上させるために、型8と基板10との平行度を意図的にずらすと、基本的には、ショット領域ごとに、型8と基板10との平行度(型8と基板10との相対的な傾き)が異なることになる。このような場合には、ショット領域ごとに、照射開始タイミングを決定すればよい。例えば、型8と基板10との相対的な傾きごとに、かかる傾きと、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる照射開始タイミングとの関係を示す複数のテーブルを事前に求めておく。そして、複数のテーブルから、照射領域52の各領域にインプリント材14の界面14bが到達するタイミングにおける型8と基板10との相対的な傾きに対応する1つのテーブルを選択する。これにより、ショット領域ごとに、照射領域52の各領域に対する照射開始タイミングを決定することができる。また、型8と基板10との相対的な傾きごとに、かかる傾きと、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる露光量との関係を示す複数のテーブルを事前に求めておいてもよい。そして、複数のテーブルから、照射領域52の各領域にインプリント材14の界面14bが到達するタイミングにおける型8と基板10との相対的な傾きに対応する1つのテーブルを選択する。これにより、ショット領域ごとに、照射領域52の各領域に対する露光量、即ち、光50の強度や照射時間を決定することができる。
【0063】
このように、本実施形態では、接触工程を制御するための押印パラメータの値に基づいて、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8aの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなるように、光50の照射を制御する照射パラメータの値を決定する。また、基板上の各ショット領域に対して、接触パラメータの値が変更(調整)されるたびに、調整された接触パラメータに対応する1つのテーブルを選択することで、接触パラメータの値を決定する。従って、本実施形態は、型8のパターン領域8aからインプリント材14がはみだすことを低減するのに有利なインプリント装置を提供することができる。
【0064】
<第2実施形態>
本実施形態では、基板上のインプリント材14に型8を接触させる際に型8及びインプリント材14に加える力(押印力)に応じて、第2照射部60による光50の照射を制御するための照射パラメータを制御(変更)する場合について説明する。接触工程では、型8と基板10との位置合わせ精度を向上させるために、押印力を変更する場合がある。この場合、型8に加わる力(圧力)の分布が変化し、型8が変形する。
【0065】
押印力を変更すると、型8のパターン領域8aからはみだすインプリント材14の量がパターン領域8aの全周において変化する。例えば、押印力を大きくすると、インプリント材14は、型8のパターン領域8aからより多くはみだすようになる。また、押印力を小さくすると、型8のパターン領域aからはみだすインプリント材14の量は少なくなるが、未充填欠陥が発生する可能性がある。
【0066】
従って、接触パラメータとしての押印力を変更する場合においても、第1実施形態と同様に、照射開始タイミングを制御することが有効である。照射開始タイミング、即ち、インプリント材14の重合度を増加させるタイミングを変更することで、インプリント材14(の界面14b)が型8のパターン領域8aのエッジに到達するタイミングを制御することができる。S107においてインプリント材14を硬化させるタイミングで、インプリント材14が型8のパターン領域8aからはみださないように、照射開始タイミングを制御する。これにより、インプリント材14が型8のパターン領域8aからはみだしたり、未充填欠陥が発生したりすることを抑制することができる。
【0067】
また、照射開始タイミングを変更してインプリント材14の重合度を制御することで、インプリント材14が型8のパターン領域8aのエッジに到達するタイミングを制御することも可能である。
図10は、
図8(b)に示す照射開始タイミングに対して、押印力を大きくした場合の照射領域52の領域52a乃至52hに対する照射開始タイミングを示す図である。
図10において、横軸は時間を示し、縦軸は強度を示している。押印力を大きくすると、照射領域52に対して、時刻T0で領域52d及び52e、時刻T1で領域52c及び52f、時刻T2で領域52b及び52g、時刻T3で領域52a及び52hに到達する。従って、
図10に示すように、インプリント材14の界面14bが早く到達する領域ほど、具体的には、領域52d及び52e、領域52c及び52f、領域52b及び52g、領域52a及び52hの順で光50の照射を開始する。このように、照射領域52の各領域52a乃至52hに対する照射開始タイミングを、
図8(b)に示す照射開始タイミングよりも早くする。これにより、インプリント材14が型8のパターン領域8aからはみだしたり、未充填欠陥が発生したりすることを抑制することができる。
【0068】
基板上の複数のショット領域に対してインプリント処理を行う場合、型8と基板10との位置合わせ精度を向上させるために、押印力を変更すると、基本的には、ショット領域ごとに、押印力が異なることになる。このような場合には、ショット領域ごとに、照射開始タイミングを決定すればよい。例えば、押印力ごとに、かかる押印力と、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる照射開始タイミングとの関係を示す複数のテーブルを事前に求めておく。そして、複数のテーブルから、照射領域52の各領域にインプリント材14の界面14bが到達するタイミングにおける押印力に対応する1つのテーブルを選択する。これにより、ショット領域ごとに、照射領域52の各領域に対する照射開始タイミングを決定することができる。また、押印力ごとに、かかる押印力と、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる露光量との関係を示す複数のテーブルを事前に求めておいてもよい。そして、複数のテーブルから、照射領域52の各領域にインプリント材14の界面14bが到達するタイミングにおける押印力に対応する1つのテーブルを選択する。これにより、ショット領域ごとに、照射領域52の各領域に対する露光量、即ち、光50の強度や照射時間を決定することができる。
【0069】
このように、本実施形態によれば、型8のパターン領域8aからインプリント材14がはみだすことを低減するのに有利なインプリント装置を提供することができる。
【0070】
<第3実施形態>
本実施形態では、基板上のインプリント材14に型8を接触させる際にパターン領域8aを変形させる際に型8(空間13)に加える圧力に応じて、第2照射部60による光50の照射を制御するための照射パラメータを制御(変更)する場合について説明する。接触工程では、型8と基板10との位置合わせ精度を向上させるために、空間13に加える圧力を変更する場合がある。
【0071】
空間13に加える圧力を高くすることで、基板10に対して型8を凸形状に変形させた状態でインプリント材14に接触させることができる。この場合、型8のパターン領域8aのエッジの圧力は、型8のパターン領域8aの中心付近の圧力と比べて、相対的に弱くなる。従って、型8のパターン領域aからはみだすインプリント材14の量は、空間13に加える圧力を変更する前と比べて少なくなる。
【0072】
また、空間13に加える圧力を弱くすることで、基板10に対して型8を凹形状に変形させた状態でインプリント材14に接触させることができる。この場合、型8のパターン領域8aのエッジ、特に、四隅の圧力は、型8のパターン領域8aの中心付近の圧力と比べて、相対的に強くなる。従って、型8のパターン領域aからはみだすインプリント材14の量は、空間13に加える圧力を変更する前と比べて多くなる。
【0073】
基板上の複数のショット領域に対してインプリント処理を行う場合、型8と基板10との位置合わせ精度を向上させるために、空間13に加える圧力を変更すると、基本的には、ショット領域ごとに、空間13に加える圧力が異なることになる。このような場合には、ショット領域ごとに、照射開始タイミングを決定すればよい。例えば、空間13に加える圧力ごとに、かかる圧力と、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる照射開始タイミングとの関係を示す複数のテーブルを事前に求めておく。そして、複数のテーブルから、照射領域52の各領域にインプリント材14の界面14bが到達するタイミングにおける空間13に加える圧力に対応する1つのテーブルを選択する。これにより、ショット領域ごとに、照射領域52の各領域に対する照射開始タイミングを決定することができる。また、空間13に加える圧力ごとに、かかる圧力と、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる露光量との関係を示す複数のテーブルを事前に求めておいてもよい。そして、複数のテーブルから、照射領域52の各領域にインプリント材14の界面14bが到達するタイミングにおける空間13に加える圧力に対応する1つのテーブルを選択する。これにより、ショット領域ごとに、照射領域52の各領域に対する露光量、即ち、光50の強度や照射時間を決定することができる。
【0074】
このように、本実施形態によれば、型8のパターン領域8aからインプリント材14がはみだすことを低減するのに有利なインプリント装置を提供することができる。
【0075】
なお、上述した実施形態において、接触工程(S103)から硬化工程(S107)までの時間は、任意に設定することができる。基板上に供給されたインプリント材14は、接触工程から硬化工程までの間に気化するため、接触工程から硬化工程までの時間に応じて、型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量も変化する。このような場合には、接触工程から硬化工程までの時間ごとに、かかる時間と、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる照射開始タイミングとの関係を示す複数のテーブルを事前に求めておく。そして、複数のテーブルから、ショット領域ごとに、接触工程から硬化工程までの時間に対応する1つのテーブルを選択する。これにより、ショット領域ごとに、照射領域52の各領域に対する照射開始タイミングを決定することができる。また、接触工程から硬化工程までの時間ごとに、かかる時間と、接触工程が終了したときに型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の量がゼロとなる露光量との関係を示す複数のテーブルを事前に求めておいてもよい。そして、複数のテーブルから、ショット領域ごとに、接触工程から硬化工程までの時間に対応する1つのテーブルを選択する。これにより、ショット領域ごとに、照射領域52の各領域に対する露光量、即ち、光50の強度や照射時間を決定することができる。
【0076】
ここで、比較例として、
図11を参照して、インプリント材14の浸み出しを抑制する調整及び位置合わせ精度の調整に関する一般的な処理(従来技術)について説明する。
【0077】
S201では、デバイスに応じて、接触パラメータ及び照明パラメータの初期条件を設定する。
【0078】
S202では、S201で設定した初期条件に基づいて、
図2に示したようなインプリント処理を行う。
【0079】
S203では、型8のパターン領域8bの外側にはみだしたインプリント材14、即ち、インプリント材14の浸み出しを観察する。インプリント材14の浸み出しは、顕微鏡などの観察用の測定器を用いて観察する。
【0080】
S204では、S203における観察結果に基づいて、インプリント材14の浸み出しが発生しているかどうかを判定する。インプリント材14の浸み出しが発生している場合には、インプリント材14の浸み出しが観察されたショット領域の番号及び位置情報を記録して、S205に移行する。一方、インプリント材14の浸み出しが発生していない場合には、S206に移行する。
【0081】
S205では、インプリント材14の浸み出しが観察されたショット領域の番号及び位置情報に基づいて、第2照射部60による光50の照射を制御するための照射パラメータを調整(変更)する。照射パラメータの調整は、インプリント材14の浸み出しが観察された全てのショット領域に対して行う。また、照射パラメータの調整は、インプリント材14の浸み出しが発生しなくなるまで繰り返す。
【0082】
S206では、型8と基板10との位置合わせ精度を計測する。位置合わせ精度は、重ね合わせ検査装置などの測定器を用いて計測する。
【0083】
S207では、S206で計測された位置合わせ精度が基準を満たしているかどうかを判定する。位置合わせ精度が基準を満たしている場合には、処理を終了する。一方、位置合わせ精度が基準を満たしていない場合には、S208に移行する。
【0084】
S208では、型8と基板上のインプリント材14とを接触させる接触工程を制御するための接触パラメータを調整(変更)する。例えば、接触パラメータとして、型8と基板10との相対的な傾き、接触工程において型8及びインプリント材14に加える力、接触工程において型8のパターン領域8aを変形させる際に型8(空間13)に加える圧力を調整する。型8と基板10との位置合わせ精度を向上させるために、接触パラメータを調整した場合には、型8のパターン領域8bの外側にはみだすインプリント材14の状態が変化するため、再度、インプリント材14の浸み出しを観察する必要がある。従って、接触パラメータを調整した場合には、インプリント材14の浸み出しを観察するために、S202に移行する。
【0085】
このように、インプリント材14の浸み出しを抑制する調整及び位置合わせ精度の調整に関する一般的な処理では、位置合わせ精度を調整するたびに、インプリント材14の浸み出しを抑制する調整が必要となり、多大な時間及び労力を要する。
【0086】
一方、上述した実施形態では、インプリント材14の浸み出しを抑制するための、押印パラメータと照射パラメータとの関係を予めテーブル化している。そして、インプリント処理を行う際の押印パラメータに応じて、テーブルから照射パラメータを設定することで、インプリント材14の浸み出しを抑制する。これにより、位置合わせ精度を調整するたびに必要となっていたインプリント材14の浸み出しを抑制する調整が不要となり、照射パラメータを容易に設定することができる。
【0087】
<第4実施形態>
インプリント装置1を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは、各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMなどの揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAなどの半導体素子などが挙げられる。型としては、インプリント用のモールドなどが挙げられる。
【0088】
硬化物のパターンは、上述の物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入などが行われた後、レジストマスクは除去される。
【0089】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。
図12(a)に示すように、絶縁体などの被加工材が表面に形成されたシリコンウエハなどの基板を用意し、続いて、インクジェット法などにより、被加工材の表面にインプリント材を付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材が基板上に付与された様子を示している。
【0090】
図12(b)に示すように、インプリント用の型を、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材に向け、対向させる。
図12(c)に示すように、インプリント材が付与された基板と型とを接触させ、圧力を加える。インプリント材は、型と被加工材との隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型を介して照射すると、インプリント材は硬化する。
【0091】
図12(d)に示すように、インプリント材を硬化させた後、型と基板を引き離すと、基板上にインプリント材の硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材に型の凹凸のパターンが転写されたことになる。
【0092】
図12(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材の表面のうち、硬化物がない、或いは、薄く残存した部分が除去され、溝となる。
図12(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材の表面に溝が形成された物品を得ることができる。ここでは、硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子などに含まれる層間絶縁用の膜、即ち、物品の構成部材として利用してもよい。
【0093】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0094】
1:インプリント装置 7:制御部 8:型 10:基板 17:基板移動部 38:型移動部 60:第2照射部