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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】クリーニング装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 5/00 20060101AFI20240213BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240213BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240213BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240213BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B08B5/00 A
H01L21/30 502D
B41J2/165 201
B05C5/00 101
B05C11/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020023662
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021126626
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】森田 有貴
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-174845(JP,A)
【文献】特開2000-190514(JP,A)
【文献】特開2001-030514(JP,A)
【文献】特開2014-168896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/00
H01L 21/027
B41J 2/165
B05C 5/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口面に形成された液体を吐出するための複数の吐出口を有する吐出部をクリーニングするクリーニング装置であって、
前記吐出口面に対して相対的に平行移動しながら前記吐出口面に向けて気体を噴射する噴射口と、
前記平行移動の方向に関して前記噴射口と対向する位置に設けられ、前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第1吸引口と、
前記複数の吐出口の下方に設けられ、前記吐出口面に対応する大きさの受け皿状に形成されている、前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第2吸引口と、
前記吐出口面と前記噴射口と前記第1吸引口と前記第2吸引口とによって囲まれる空間を挟むよう配置される2枚の隔壁と、
を有し、
前記第1吸引口と前記第2吸引口と前記2枚の隔壁とによって囲まれる空間が前記吐出口面の下に配置され、前記空間が前記第2吸引口を通して負圧にされる
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記隔壁における前記吐出部と対向する位置に形成された、前記隔壁と前記吐出部との間の隙間を狭くするための突出部を更に有することを特徴とする請求項に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記吐出部における前記隔壁と対向する位置に形成された、前記吐出部と前記隔壁との間の隙間を狭くするための突出部を更に有することを特徴とする請求項またはに記載のクリーニング装置。
【請求項4】
吐出口面に形成された液体を吐出するための複数の吐出口を有する吐出部をクリーニングするクリーニング装置であって、
前記吐出口面に対して相対的に平行移動しながら前記吐出口面に向けて気体を噴射する噴射口と、
前記平行移動の方向に関して前記噴射口と対向する位置に設けられ、前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第1吸引口と、
前記複数の吐出口の下方に設けられ、前記吐出口面に対応する大きさの受け皿状に形成されている、前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第2吸引口と、
前記吐出口面と前記噴射口と前記第1吸引口と前記第2吸引口とによって囲まれる空間を挟むよう配置される2枚の隔壁と、
を有し、
前記隔壁における、前記吐出口面の付近の高さ位置に形成された、前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第3吸引口を更に有することを特徴とすクリーニング装置。
【請求項5】
前記第1吸引口および前記第2吸引口は、共通の気体吸引部に連通していることを特徴とする請求項1または2に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記第1吸引口、前記第2吸引口、および前記第3吸引口は、共通の気体吸引部に連通していることを特徴とする請求項に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
吐出口面に形成された液体を吐出するための複数の吐出口を有する吐出部をクリーニングするクリーニング装置であって、
前記吐出口面に対して相対的に平行移動しながら前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第1吸引口と、
前記複数の吐出口の下方に設けられ、前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第2吸引口と、
前記吐出口面と前記第1吸引口と前記第2吸引口とによって囲まれる空間を挟むよう配置される2枚の隔壁と、
有し、
前記第2吸引口は、前記平行移動の方向に関して前記第1吸引口と対向する位置に設けられ、前記第1吸引口を形成するノズル部の高さに対応する高さを有する側壁を有し、
前記第1吸引口と前記第2吸引口と前記側壁と前記2枚の隔壁とによって囲まれる空間が前記吐出口面の下に配置され、前記空間が前記第2吸引口を通して負圧にされる
ことを特徴とするクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの製造プロセスにおいて、露光装置に代わるリソグラフィ装置として、インプリント技術を用いたインプリント装置が実用化されている。インプリント装置は、液体のインプリント材を吐出する液体吐出装置(ディスペンサ)を有し、吐出口からインプリント材が基板の上に吐出される。
【0003】
液体吐出装置においては、複数のノズルが設けられたヘッドから液体(液滴)を吐出するインクジェット方式が広く使用されている。ノズルから液滴を吐出させる技術として、液体吐出パタ-ンに対応させた駆動パルスをヘッドのノズル内に配置された圧電素子に供給、変形させることで液体を吐出させる技術が知られている。形成するパタ-ンに応じた多数の液滴が複数のノズルから基板に吐出されることにより基板上に所望のドットパタ-ンが形成される。
【0004】
上記した液体吐出装置には、一般に、高品位で高解像度のドットパタ-ンを高速で形成することが求められるが、上記のインクジェットヘッドを使用することによりこれらの要求を満足させることができる。また、インクジェットヘッドは、ドットパタ-ン形成時に基板と非接触であるので、基板を汚損させることがなく、安定したインプリントを行うことができるという利点も有している。
【0005】
ところで、上記したインクジェット方式の液体吐出装置では、ドットパタ-ン形成中や待機中に、吐出口の近傍への異物や液滴が付着すること、あるいは吐出液中に気泡が混入することにより、吐出不良や品位の低下が発生しうる。液体吐出装置の吐出特性を維持するためには、ノズルが形成されたノズル面に付着した付着物(液体または残留物などの異物)を除去する必要がある。さらに、付着物の除去は発塵の抑制や化学汚染の防止の観点から非接触で行われることが望まれる。例えば、特許文献1には、ノズル面に付着した付着物を空気吹出ノズルを用いて吹き飛ばし、空気吸引ノズルにより回収する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-174845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、空気を吹き付けて付着物を除去するクリーニング方法では、付着物を含んだ空気が所定の回収口に回収される前に拡散して周囲を汚染しやすい。特許文献1に開示された構成においては、付着物を含んだ空気の拡散を抑制するために空気吹き出し量を調整すると、液体の種類や付着物の量によっては付着物を移動させるために必要な空気吹き出し量を確保できず付着物がノズル面に残ったままとなりうる。このようにクリーニング性能の向上が望まれている。
【0008】
本発明は、クリーニング性能の向上に有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの側面によれば、吐出口面に形成された液体を吐出するための複数の吐出口を有する吐出部をクリーニングするクリーニング装置であって、前記吐出口面に対して相対的に平行移動しながら前記吐出口面に向けて気体を噴射する噴射口と、前記平行移動の方向に関して前記噴射口と対向する位置に設けられ、前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第1吸引口と、前記複数の吐出口の下方に設けられ、前記吐出口面に対応する大きさの受け皿状に形成されている、前記吐出口面を離れた液体を空気と共に吸引する第2吸引口と、前記吐出口面と前記噴射口と前記第1吸引口と前記第2吸引口とによって囲まれる空間を挟むよう配置される2枚の隔壁と、を有し、前記第1吸引口と前記第2吸引口と前記2枚の隔壁とによって囲まれる空間が前記吐出口面の下に配置され、前記空間が前記第2吸引口を通して負圧にされるクリーニング装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリーニング性能の向上に有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インプリントシステムの概略図。
図2】クリーニング装置およびディスペンサの構成を示す図。
図3】集液部の構成を示す図。
図4】集液部の構成を示す図。
図5】集液部の構成を示す図。
図6】クリーニング装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に係るインプリントシステムの概略図である。本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、基板Wはその表面が水平面(XY平面)と平行になるように基板ステージ101の上に置かれる。よって以下では、基板Wの表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向という。
【0014】
インプリントシステムは、インプリント装置IMPと、インプリント装置IMPで使用される供給部Dの洗浄を行うクリーニング装置CLと、これらを統括的に制御する制御部CNTとを含む。
【0015】
まず、インプリント装置IMPの概要について説明する。インプリント装置IMPは、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
【0016】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、インプリント材供給装置により、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0017】
本実施形態において、インプリント装置IMPは、インプリント材の硬化法として、紫外線の照射によってインプリント材を硬化させる光硬化法を採用するものとする。したがって、本実施形態では、インプリント材として、紫外線が照射されることで硬化する紫外線硬化性のインプリント材が使用される。ただしこれに限定されるものではなく、例えば熱硬化性のインプリント材を用い、熱の印加によってインプリント材を硬化させる熱硬化法を採用することもできる。
【0018】
インプリント装置IMPは、基板Wを保持する基板保持部101と、基板保持部101を支持して移動させる基板ステージ102を備える。また、インプリント装置IMPは、パターンPが形成された型Mを保持する型保持部103と、型保持部103を支持して移動させる型駆動部104を備える。また、インプリント装置IMPは、基板W上にインプリント材Rを供給するディスペンサD(供給部)を備える。型駆動部104およびディスペンサDは、X方向に延びるフレームFによって支持されている。
【0019】
制御部CNTは、例えばCPU121およびメモリ122(記憶部)を含むコンピュータ装置によって構成されうる。CPU121は、メモリ122に記憶されている制御プロラムを実行することによって、インプリント動作を制御することができる。制御部CNTは、例えば、あらかじめメモリ122に記憶されているインプリント材の供給パターンのデータに従って供給部Dを制御する。制御部CNTは、供給パターンに記述された基板W上の位置にインプリント材Rが供給されるように、基板ステージ102およびディスペンサDを制御する。具体的には、制御部CNTは、基板ステージ102を例えばX方向に移動させながら、供給パターンに従い、ディスペンサDに設けられた複数のノズルNからインプリント材Rを吐出する。ここで、ディスペンサDの各ノズルからのインプリント材の供給量の単位は「滴」であり、1滴のインプリント材の量はおおよそ数ピコリットルである。
【0020】
制御部CNTは、型駆動部104および基板ステージ102の少なくともいずれかを制御して型Mと基板W上のインプリント材とを接触させる。これにより、インプリント材Rが型MのパターンP内に充填される。
【0021】
型保持部103の中心のパターンP面と反対側の面にはパターンPの領域よりも大きな凹み部が形成されており、型Mと不図示のシールガラスによって密閉されている。この密閉空間(キャビティ部)に不図示の圧力制御部が接続されており、キャビティ部の圧力が制御されうる。型Mと基板W上のインプリント材とを接触させる際に、キャビティ部の圧力を上げて型Mを凸形状に変形させることによって、基板Wと型Mとの間に気泡が挟まれることを抑制する。基板Wと型Mが接触したらキャビティ部の圧力を戻し、基板Wと型Mが完全に接触するようにする。
【0022】
インプリント装置IMPはさらに、型駆動部104に固定されたアライメントスコープ105(撮像部)を備える。アライメントスコープ105は、基板W上のショット領域に形成されている基板側マーク106と、型MのパターンPに形成されている型側マーク107とを検出する。制御部CNTは、アライメントスコープ105によって検出された基板側マーク106と型側マーク107の検出結果から型Mと基板Wとの相対的な位置ずれを求める。制御部CNTは、求められた相対的な位置ずれの結果に基づいて、基板ステージ102および型駆動部104の少なくともいずれかを駆動させ、型Mと基板Wとの相対的な位置ずれを補正する。相対的な位置ずれはシフト成分に限らず、倍率や回転成分の誤差も含まれうる。基板W上に形成されているショット領域に合わせて型MのパターンP(パターン領域)の形状を補正することができる。基板側マーク106と型側マーク107の検出方法としては、2つのマークの相対的な位置を反映したモアレ信号などの干渉信号を用いることができる。また、それぞれのマークの像を検出して2つのマークの相対位置を求めてもよい。
【0023】
光源108は紫外線を放射する。検出光源109は検出光を放射する。ミラー110は例えばダイクロイックミラーであり、光源108からの紫外線を反射し、検出光源109からの検出光を透過する特性を持っている。制御部CNTは、型Mと基板W上のインプリント材とを接触させた状態で光源108からの紫外線を一定時間、インプリント材Rに照射させ、インプリント材Rを硬化させる。その後、制御部CNTは、型駆動部104および基板ステージ102の少なくともいずれかを制御して、硬化したインプリント材から型Mを引き離す。これにより、基板W上にインプリント材のパターンが形成される。
【0024】
検出光源109からの検出光は、ミラー110や型駆動部104、型保持部103を透過し、基板W上のショット領域を照明する。ショット領域を照明した光は、基板Wの表面および型Mのパターン面で反射し、基板Wからの反射光と型Mからの反射光とを検出光として検出部111で検出される。検出部111で検出された検出光は、制御部CNTに接続された不図示の表示部に表示されうる。これにより、オペレータはインプリント処理の様子を観察することができる。
【0025】
インプリントシステムは、インプリント装置IMPにおける通常の使用位置とクリーニング装置CLにおけるメンテナンス位置との間でディスペンサDを移動するための移動機構130を備えている。移動機構130は例えばX方向に延びるフレームFに沿って設けられる。一連のインプリントシーケンスに基づいて、ディスペンサDは例えばインクジェット技術によりインプリント材Rを吐出することを繰り返す。長期間の吐出を繰り返すうちに、ノズルN先端部の吐出口はインプリント材の固着等によって吐出性能が変化しうる。そのため、ディスペンサDから吐出されるインプリント材の吐出状態が定期的に確認される。例えば、メンテナンス用途の基板上にインプリント材Rを吐出し、そのインプリント材Rに光源108からの紫外線を照射してインプリント材Rを硬化させ、硬化したインプリント材Rを検出部111で観察する。これにより、吐出されたインプリント材の配置位置ずれ等の性能の変化を確認している。
【0026】
このような性能確認によって、ディスペンサDのうちの特定のノズルNからインプリント材が吐出されない状態や、吐出されたインプリント材の配置位置がずれる等の異常が認められる場合がある。このような場合、ディスペンサDはクリーニング装置CL内のメンテナンス位置に搬送されて回復動作(クリーニング)に供される。
【0027】
次に、図2を参照して、クリーニング装置CLおよびクリーニング装置CLに搬入されたディスペンサDの構成について説明する。ディスペンサDは、ヘッドユニット8と、ヘッドユニット8に搭載された、インプリント材(以下「液体」という。)を吐出する吐出部としてのインクジェットヘッド2とを有する。インクジェットヘッド2とヘッドユニット8とは、不図示の接続部により電気的に接続されている。また、ヘッドユニット8が制御部CNTによって制御されるために、ヘッドユニット8と制御部CNTとは電気的に接続されている。
【0028】
ヘッドユニット8に搭載されたインクジェットヘッド2の下面は吐出口面4を構成する。吐出口面4には、液体を吐出するための複数の吐出口3が形成されている。図2において、複数の吐出口3はX方向に沿って配置されているが、X方向に並んだ複数の吐出口がY方向に複数列配置されてもよい。複数の吐出口3のそれぞれは、ノズルNの下端部として形成される(図3(b)参照)。複数のノズルNのそれぞれの上端は液室5に連通し、液室5は、ヘッドユニット8内の供給流路7を介して供給液室6に連通している。
【0029】
供給液室6は、圧力制御機構を有しており、複数のノズルNそれぞれの内部の圧力を制御することで、複数のノズルNそれぞれの内部のメニスカスを維持することができる。また、供給液室6の圧力制御機構により、複数のノズルNそれぞれの内部の液体を加圧することが可能である。吐出口3あるいはノズルN内に泡が残留して不良吐出が生じた場合には、吐出口3から液体を加圧排出することで、液体とともに泡を排除することが可能である。吐出口3あるいはノズルN内に異物が存在して吐出不良が発生した場合にも、同様に、吐出口3から液体を加圧排出することで、液体とともに異物を排除することができる。図2は、吐出口3から液体を加圧排出した状態を示しており、加圧排出後、液体が吐出口面4に残留している。
【0030】
制御部CNTから吐出信号がインクジェットヘッド2に伝達されることで、複数のノズルNそれぞれの内部の液体が吐出口3から液滴として吐出される。
【0031】
なお、本実施形態では、上記のとおり、液体はインプリント材であるが、クリーニング装置CLが適用されるシステムに応じて、液体はさまざまな材料でありうる。例えば、液体は、配線パターン用の導電性材料を含む液体、産業用および画像記録用の紫外線(UV)硬化性液体、画像記録用の溶剤と色剤とからなる液体(インク)などでありうる。
【0032】
ベースプレート12には、吐出口面4に付着した液体9を除去するための集液部13が搭載されている。集液部13は、噴射口14、気体流路15、気体噴射部16、第1吸引口17、第2吸引口18、吸引流路19a、吸引流路19b、気体吸引部20、隔壁21、を有する。また、集液部13は、噴射口14と第2吸引口18をX方向に移動させるための駆動部22を有する。駆動部22は、エアシリンダ、ボールねじ、リニアモータ等によって構成されうる。ただし、第2吸引口18は駆動部22によって移動されず固定であってもよい。
【0033】
図3は、第1実施形態における集液部13の構成を示す図であり、図3(a)はY方向からみた断面図、図3(b)は図3(a)のA-A線に沿うX方向からみた断面図である。
【0034】
噴射口14は、気体流路15を介して気体噴射部16に連通している。気体噴射部16は空気を取り込み、陽圧を発生させて、噴射口14から吐出口面4に向かって空気を噴射する。なお、噴射口14から吐出口面4に向かって吹き出す角度は、例えば吐出口面4に対して15度以上45度以下である。また、噴射口14は、駆動部22によって、吐出口面4から離間した状態で吐出口面4に対して相対的に平行移動する。図3においては平行移動の方向はX方向である。第1吸引口17は、X方向に関して噴射口14と対向する位置に設けられている。これにより、吐出口面4に付着した液体9を第1吸引口17に向かって集液することができる。なお、噴射口14から吹き出される空気が吐出口面4に達するまでの距離は、例えば、噴射口14から吹き出される空気が減速しないポテンシャルコア領域内に制御される。
【0035】
第1吸引口17は、吸引流路19aを介して気体吸引部20に連通している。また、第1吸引口17は、噴射口14の移動方向と対向する側で吸引口面4の端部付近に設けられている。なお、吐出口面4から第1吸引口17までの距離は1mm以下、例えば、0.2mm以上0.5mm以下に配置される。気体吸引部20で負圧を発生させると、吐出口面4を離れた液体は第1吸引口17から空気と共に吸引されうる。したがって、気体吸引部20で負圧を発生させることで、第1吸引口17付近に集液された液体9を第1吸引口17から回収することができる。
【0036】
第2吸引口18は、吐出口面4と対向する位置(複数の吐出口の下方)に設けられている。本実施形態においては、第2吸引口18は、噴射口14と同様に吐出口面4から離間した状態で駆動部22によって第1吸引口17に向かって移動する構成としたが、第1吸引口17側に設けて固定としてもよい。気体吸引部20で負圧を発生させると、吐出口面4を離れた液体は第2吸引口18から空気と共に吸引されうる。第2吸引口18は、図示の如く、吐出口面4に対応する大きさの受け皿状に形成されることにより、複数の吐出口3から液体が加圧排出された場合に吐出口面4から垂れた液体を第2吸引口18で受けることができる。第2吸引口18は、吸引流路19bを介して気体吸引部20に連通している。そのため、気体吸引部20で負圧を発生させて、第2吸引口18内の液体を気体吸引部20に回収することが可能である。このように、第1吸引口17および第2吸引口18は共通の気体吸引部20に連通している。なお、吸引流路19aと吸引流路19bは、図示のようにそれぞれ気体吸引部20の別々のポートに接続されてもよいし、途中で合流して気体吸引部20の1つのポートに接続されてもよい。
【0037】
複数の吐出口3から液体が加圧排出された後、集液部13は、噴射口14を駆動部22により駆動させながら吐出口面4に付着した液体9を第1吸引口17に向かって移動させ、第1吸引口17で液体を回収することにより、吐出口面4のクリーニングを行う。このとき、第2吸引口18を吐出口面4の直下に配置して気体吸引部20でも負圧を発生させておくことにより、噴射口14と第1吸引口17と第2吸引口18とに囲まれた吐出口面4の下の空間を周囲に対して相対的に負圧にすることできる。これにより、噴射口14から噴射された空気が吐出口面4に付着した液体9を含んで拡散しても第2吸引口18に回収されるため、周囲の汚染を防止することができる。
【0038】
図3(a)に示されるように、Y方向からみた側面視で(X方向に沿って)、吐出口面4と噴射口14と第1吸引口17と第2吸引口18とを覆う大きさを有する隔壁21が設けられる。図3(b)に示されるように、吐出口面4と噴射口14と第1吸引口17と第2吸引口18とによって囲まれる空間を挟むように2枚の隔壁21が配置される。吐出口面4と噴射口14と第1吸引口17と第2吸引口18とによって囲まれる吐出口面4下の空間は、2枚の隔壁21によっても囲まれるため、より効果的にその周囲に対して相対的に負圧にすることができ周囲の汚染を防止することができる。
【0039】
また、インクジェットヘッド2は、吐出口3の乾燥や異物固着による詰まりや吐出性能劣化などの不良吐出を防止するために、制御部CNTの制御により一定時間間隔で仮吐出を行いうる。この仮吐出の期間中も、噴射口14と第1吸引口17と第2吸引口18と隔壁21とによって囲まれた空間を吐出口面4下に配置しておくとよい。これにより、第2吸引口18を用いて空間の負圧形成を行うことで、仮吐出された液体を回収できるとともに、仮吐出の際に発生する液体の霧散が周囲空間を汚染することを防止できる。
【0040】
<第2実施形態>
第2実施形態におけるクリーニング装置について説明する。第2実施形態のクリーニング装置は、第1実施形態のクリーニング装置CLと比較して、集液部13に設けた隔壁21の構成が異なる。
【0041】
図4は、第2実施形態における集液部31の構成を示す図であり、図4(a)はY方向からみた断面図、図4(b)は図4(a)のA-A線に沿うX方向からみた断面図である。隔壁21以外の構成は、第1実施形態に係る図3と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0042】
吐出口面4への液体9の付着量や、吐出口面4と液体9との親液性の高さによっては、噴射口14から噴射される空気の量を大きくする必要がある。この場合、噴射される空気によって、空間の空気流れが乱されやすくなり、第2吸引口18を用いて周囲空間に対して相対的に負圧にした空間においても、局所的に負圧が弱まる可能性がある。特に、隔壁21とインクジェットヘッド2との間の隙間で負圧の弱まりが生じやすく、ここから液体9を含んだ空気が周囲に拡散する可能性がある。そこで、本実施形態における隔壁21は、インクジェットヘッド2に向かって突出する突出部21aを有する。突出部21aは、隔壁21の成形によって設けられたものでもよいし、隔壁21に対して接着された部材であってもよい。突出部21aによって、隔壁21とインクジェットヘッド2との間の隙間を狭くすることができ、当該隙間を通って周囲空間に拡散しようとする空気の流れを抑制する効果を高めることができる。
【0043】
変形例として、インクジェットヘッド2の側面が、隔壁21に向かって突出する突出部を有する構成であってもよい。あるいは、隔壁21とインクジェットヘッド2の両方に突出部を設けてもよい。更には、隔壁21側の突出部とインクジェットヘッド2側の突出部をZ方向に互い違いに設けてラビリンス構造とすることで、隙間を通る空気流を妨げる更に効果を高めることができる。
【0044】
<第3実施形態>
第3実施形態におけるクリーニング装置について説明する。第3実施形態のクリーニング装置は、第1実施形態のクリーニング装置CLと比較して、集液部13に設けた隔壁21の構成が異なる。
【0045】
図5は、第3実施形態における集液部31の構成を示す図であり、図5(a)はY方向からみた断面図、図5(b)は図4(a)のA-A線に沿うX方向からみた断面図である。隔壁21以外の構成は、第1実施形態に係る図3と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0046】
図5(b)に示されるように、本実施形態の隔壁21は、吐出口面4付近の高さ位置に形成され、吐出口面4を離れた液体を空気と共に吸引する第3吸引口43を有する。第3吸引口43は、吸引流路19bを介して気体吸引部20に連通している。ここでは、第3吸引口43は吸引流路19bと連通する構成であるが、吸引流路19bとは別の吸引流路によって気体吸引部20に連通する構成としてもよい。
【0047】
複数の吐出口3から液体が加圧排出された後、吐出口面4のクリーニングを行う場合に、集液部13は、気体吸引部20で発生された負圧により、液体9を含んで拡散する空気を回収する。これにより、噴射口14から噴射された空気が吐出口面4に付着した液体9を含んで拡散しても第3吸引口43によっても回収されるため、周囲の汚染を防止することができる。また、仮吐出の際に発生する液体の霧散が周囲空間を汚染することも防止できる。
【0048】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態におけるクリーニング装置CLの構成を示す図である。第1実施形態のクリーニング装置CL(図2)と比較して、集液部13の構成が異なる。集液部13以外の他の構成は第1実施形態と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0049】
集液部13は、第1吸引口52、第2吸引口53、吸引流路54、気体吸引部55、隔壁21、を有する。また、集液部13は、第1吸引口52および第2吸引口53をX方向に移動させるための駆動部56を有する。駆動部56は、エアシリンダ、ボールねじ、リニアモータ等によって構成されうる。ただし、第2吸引口53は駆動部56によって移動されず固定であってもよい。本実施形態における集液部13は、第1実施形態で示されたような気体噴射部15や噴射口14を備えていない。吸引のみによって液体9を回収する。
【0050】
第1吸引口52は、吸引流路54を介して気体吸引部55に連通している。集液部13は第1吸引口52を吐出口面4から離間した状態で、吐出口面4に沿ってインクジェットヘッド2の端部から反対側の端部まで駆動部56により移動することが可能である。このとき、第1吸引口52は、駆動部56によって、吐出口面4から離間した状態で吐出口面4に対して相対的に平行移動する。図6においては平行移動の方向はX方向である。なお、吐出口面4と第1吸引口52との間の距離は1mm以下、好ましくは0.2mm以上0.5mm以下にすることが好ましい。気体吸引部55は負圧を発生させて、吐出口面4に付着した液体9を第1吸引口52を介して吸引しながら移動させる。
【0051】
第2吸引口53は、複数の吐出口3(吐出口面4)の下方に設けられ、吐出口面4を離れた液体を空気と共に吸引する吸引部であり、第1吸引口52と共通の気体吸引部55に連通している。第2吸引口53は、図示の如く、吐出口面4に対応する大きさの受け皿状に形成されることにより、複数の吐出口3から液体が加圧排出された場合に吐出口面4から垂れた液体を第2吸引口18で受けることができる。
【0052】
このように形成された第2吸引口53は、X方向に関して第1吸引口52と対向する側には、第1吸引口52を形成するノズル部に対応する高さ(ノズル部と同程度の高さ)を有する側壁53aが設けられる。ただし、側壁53aは移動しても吐出口面4とは非接触となる高さに配置される。吐出面4と側壁53aとの間の間隔は、1mm以下であることが好ましい。これにより、第1実施形態と同様に、吐出口面4の下の空間を周囲空間から隔離することができる。
【0053】
第4実施形態のクリーニング装置CLは、吐出口面4と液体9との撥液性が高い場合に採用されうる。吐出口面4と液体9との撥液性が高い場合、吐出口面4と液体9に噴射気体を当てると液体が飛散しやすくなるためである。この場合においても、インクジェットヘッド2が一定時間間隔で仮吐出を行う場合に、第1吸引口52と第2吸引口53の側壁53aと隔壁21とに囲まれた空間を吐出口面4の下に配置して負圧される。これにより、仮吐出の際に発生する液体の霧散が周囲空間を汚染することを防止できる。
【0054】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0055】
CL:クリーニング装置、2:インクジェットヘッド、3:吐出口、4:吐出口面、8:ヘッドユニット、9:液体、13:集液部、14:噴射口、16:気体噴射部、17:第1吸引口、18:第2吸引口、20:気体吸引部、21:隔壁、22:駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6