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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】含フッ素芳香族化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 23/36 20060101AFI20240213BHJP
   C07C 17/275 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 31/38 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 29/32 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20240213BHJP
   C07D 213/26 20060101ALI20240213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
C07C23/36 CSP
C07C17/275
C07C31/38
C07C29/32
C07C43/225 C
C07C41/30
C07D213/26
C07B61/00 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020024020
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021075513
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2019028738
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019205703
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 友宏
(72)【発明者】
【氏名】福元 博基
(72)【発明者】
【氏名】久保田 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 彰悟
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
(72)【発明者】
【氏名】石川 真一
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021885(WO,A1)
【文献】Cao, Hai-Ping; Xiao, Ji-Chang; Chen, Qing-Yun,Fluoroalkylation of aromatics: An intramolecular radical cyclization of 4-chloro-1,1,2,2,3,3,4,4-octafluorobutylbenzenes,Journal of Fluorine Chemistry,2006年,Vol.127, No.8,pp.1079-1086,DOI:10.1016/j.jfluchem.2006.05.013
【文献】Kaplan, Peter T.; Xu, Long; Chen, Bo; McGarry, Katherine R.; Yu, Siqi; Wang, Huan; Vicic, David A.,Mild, Safe, and Versatile Reagents for (CF2)n Transfer and the Construction of Fluoroalkyl-Containing Rings,Organometallics,2013年,Vo.32, No.24,pp.7552-7558,DOI:10.1021/om401016k
【文献】Shozda, Raymond J.; Putnam, Robert E.,Diels-Alder reactions of 3,3,4,4-tetrafluorocyclobutene. Syntheses of some fluorinated benzocyclobutenes,Journal of Organic Chemistry,1962年,Vol.27,pp.1557-61
【文献】Tanaka, Ken; Sawada, Yayoi; Aida, Yusuke; Thammathevo, Maliny; Tanaka, Rie; Sagae, Hiromi; Otake, Yousuke,Rhodium-catalyzed convenient synthesis of functionalized tetrahydronaphthalenes,Tetrahedron,2010年,Vol.66, N.8,pp.1563-1569,DOI:10.1016/j.tet.2009.12.042
【文献】Tao, Ran; Umeyama, Tomokazu; Kurotobi, Kei; Imahori, Hiroshi,Effects of Alkyl Chain Length and Substituent Pattern of Fullerene Bis-Adducts on Film Structures and Photovoltaic Properties of Bulk Heterojunction Solar Cells,ACS Applied Materials & Interfaces,2014年,Vol.6, No.19,pp.17313-17322,DOI: 10.1021/am5058794
【文献】Doherty, Simon; Knight, Julian G.; Smyth, Catherine H.; Harrington, Ross W.; Clegg, William,Rhodium-Catalyzed Double [2 + 2 + 2] Cycloaddition of 1,4-Bis(diphenylphosphinoyl)buta-1,3-diyne with Tethered Diynes: A Modular, Highly Versatile Single-Pot Synthesis of NU-BIPHEP Biaryl Diphosphines,Organic Letters,2007年,Vol.9, No.23,pp.4925-4928,DOI:10.1021/ol702390p
【文献】Windler, G. Kenneth; Zhang, Mao-Xi; Zitterbart, Robert; Pagoria, PhilipF.;Vollhardt, K. Peter C.,En Route to Dinitroacetylene: Nitro(trimethylsilyl)acetylene and Nitroacetylene Harnessed by Dicobalt Hexacarbonyl,Chemistry - A European Journal,2012年,Vol.18, No.21,DOI: 10.1002/chem.201200473
【文献】Srinivasan, Ramji; Farona, Michael F.,Synthesis of benzocyclobutenes from reactions of α,ω-diynes catalyzed by niobium(V) and tantalum(V) halides,Journal of Molecular Catalysis,1989年,Vol.53, No.2,pp.203-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される含フッ素芳香族化合物。
【化1】
(式(1)中、
及びRはそれぞれ独立して、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシイソブチル基、2-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、2-n-プロポキシフェニル基、2-イソ-プロポキシフェニル基、2-n-ブトキシフェニル基、2-sec-ブトキシフェニル基、2-イソ-ブトキシフェニル基、2-tert-ブトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、3-n-プロポキシフェニル基、3-イソ-プロポキシフェニル基、3-n-ブトキシフェニル基、3-sec-ブトキシフェニル基、3-イソ-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-n-プロポキシフェニル基、4-イソ-プロポキシフェニル基、4-n-ブトキシフェニル基、4-sec-ブトキシフェニル基、4-イソ-ブトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基であり、
nは2から6の整数である)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される含フッ素芳香族化合物。
【化2】
(式(2)中、o、p及びqはそれぞれ独立して2から6の整数である)
【請求項3】
下記一般式(3)で示される含フッ素ビスアルキン化合物と、下記一般式(4)で示されるアルキン化合物を、触媒の存在下で反応させ、下記一般式(1)で示される含フッ素芳香族化合物を得る、請求項1に記載の含フッ素芳香族化合物の製造方法。
【化3】
(式(3)中、nは2から6の整数である)
【化4】
(式(4)中、R及びR は請求項1における式(1)中のR 及びR と同じである)
【化1】
(式(1)中、R及びR は請求項1における式(1)中のR 及びR と同じであり、nは2から6の整数である)
【請求項4】
下記一般式(3)で示される含フッ素ビスアルキン化合物を、触媒の存在下で反応させ、下記一般式(2)で示される含フッ素芳香族化合物を得る、請求項2に記載の含フッ素芳香族化合物の製造方法。
【化3】
(式(3)中、nは2から6の整数である)
【化2】
(式(2)中、o、p及びqはそれぞれ独立して2から6の整数である)
【請求項5】
前記触媒が、コバルト触媒またはロジウム触媒である、請求項3又は請求項4に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素芳香族化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、炭素-フッ素結合の性質に基づく特徴的な性質を有しており、例えば耐熱性、耐薬品性、撥水撥油性、低誘電率、低屈折率等の優れた機能を示す。
【0003】
中でも、芳香族化合物にフッ素を含む置換基が導入された含フッ素芳香族化合物は、フッ素を含まない化合物と比較して高い撥水撥油性を与えるため、撥水撥油剤等として用いることができる(例えば、特許文献1)。また、含フッ素芳香族化合物は、高い化学的安定性を有することに加えて、電気陰性度の高いフッ素原子の効果により芳香環の電子状態が大きく変化するため、有機EL、有機半導体、有機薄膜太陽電池等の電子材料として利用できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特に、パーフルオロアルキル基が縮環した含フッ素芳香族化合物は、上記の特性を有することに加えて、有機溶媒への溶解性が比較的高いことが知られており、機能性材料のビルディングブロックとして有用である。
【0005】
パーフルオロアルキル基が縮環した含フッ素芳香族化合物の製造方法として、非特許文献1には、テトラフルオロコバルト(III)酸カリウムを用いたテトラリンのフッ素化により、パーフルオロアルキル基が縮環した含フッ素芳香族化合物を得る方法が開示されている。しかし、本方法では高温の厳しい反応条件を必要とする上、芳香環に種々の置換基を導入することはできなかった。
【0006】
非特許文献2には、1-クロロ-4-ヨードオクタフルオロブタンと芳香族化合物を反応させた後、分子内環化によりパーフルオロアルキル基が縮環した含フッ素芳香族化合物を得る方法が開示されている。しかし、1-クロロ-4-ヨードオクタフルオロブタンの製造には取り扱いが困難なハロゲン間化合物を必要とする上、還元条件下で反応する置換基の導入が困難であるという問題があった。
【0007】
非特許文献3には、ジヨード化された芳香族化合物と1,4-ジハロオクタフルオロブタンを亜鉛試薬の存在下で反応させることにより、含フッ素芳香族化合物を得る方法が開示されている。しかし、置換基の導入に制約があり、高価なジヨード化された芳香族化合物を原料として用いなければならないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-255659号
【文献】国際公開第2011/022678号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Journal of Fluorine Chemistry,1990年,第47巻,35頁-44頁。
【文献】Journal of Fluorine Chemistry,2006年,第127巻,1079頁-1086頁。
【文献】Journal of Fluorine Chemistry,2014年,第168巻,158頁-162頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の背景技術に鑑み、種々の置換基を導入した新たな含フッ素芳香族化合物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、含フッ素ビスアルキン化合物と、種々のアルキン化合物を触媒の存在下で反応させることにより、含フッ素芳香族化合物を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される含フッ素芳香族化合物に係るものである。
【0013】
【化1】
【0014】
(式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基であり、nは2から6の整数であることが好ましく、さらにnが3から5の整数であることが好ましく、特にnが4であることが好ましい。)
【0015】
また本発明は、下記一般式(2)で示される含フッ素芳香族化合物に係る。
【化2】
【0016】
(式(2)中、o、p及びqはそれぞれ独立して2から6の整数であることが好ましく、さらに3から5の整数であることが好ましく、特に4であることが好ましい。)
【0017】
さらに本発明は、下記一般式(3)で示される含フッ素ビスアルキン化合物と、下記一般式(4)で示されるアルキン化合物を、触媒の存在下で反応させ、上記一般式(1)で示される含フッ素芳香族化合物を得る、含フッ素芳香族化合物の製造方法を提供するものである。
【0018】
【化3】
【0019】
(式(3)中、nは2から6の整数であることが好ましく、さらにnが3から5の整数であることが好ましく、特にnが4であることが好ましい。)
【0020】
【化4】
【0021】
(式(4)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基である)
【0022】
さらに本発明は、上記一般式(3)で示される含フッ素ビスアルキン化合物と上記一般式(4)で示されるアルキン化合物とを、反応試薬及び/又は助触媒を加えた上で、触媒の存在下で反応させ、一般式(1)で示される含フッ素芳香族化合物を得る、含フッ素芳香族化合物の製造方法を提供するものである。
【0023】
さらに本発明は、下記一般式(3)で示される含フッ素ビスアルキン化合物を、触媒の存在下で反応させ、上記一般式(2)で示される含フッ素芳香族化合物を得る、含フッ素芳香族化合物の製造方法を提供するものである。
【0024】
【化3】
【0025】
(式(3)中、nは2から6の整数であることが好ましく、さらにnが3から5の整数であることが好ましく、特にnが4であることが好ましい。)
【0026】
さらに本発明は、上記一般式(3)で示される含フッ素ビスアルキン化合物を、反応試薬及び/又は助触媒を加えた上で、触媒の存在下で反応させ、一般式(2)で示される含フッ素芳香族化合物で示される含フッ素芳香族化合物を得る、含フッ素芳香族化合物の製造方法を提供するものである。
【0027】
また本発明は、前記触媒がコバルト触媒またはロジウム触媒である、含フッ素芳香族化合物の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、種々の置換基を導入した新たな含フッ素芳香族化合物を得ることが可能となって、新たな含フッ素化合物群を提供でき、産業上有用である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明の一般式(1)又は一般式(2)で示される含フッ素芳香族化合物は、一般式(3)で示される含フッ素ビスアルキン化合物と、一般式(4)で示されるアルキン化合物を触媒の存在下で反応させることにより得られる。
【0031】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応に用いられるアルキン化合物の量は、反応に具する含フッ素ビスアルキン化合物に対して、好ましくは1当量~5当量、さらに好ましくは2当量~3当量である。
【0032】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応試薬として亜鉛を必要に応じて用いることができる。
【0033】
ここで反応試薬として用いられる亜鉛としては、入手可能なものであれば特に制限なく用いることができるが、例えば外観性状として灰色粉末、純度も80重量%以上、さらには90重量%以上のものが好ましく用いられる。また粒径、粒径分布ついても特に制限なく用いることができる。
【0034】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応に用いられる亜鉛の量は、反応に具する含フッ素ビスアルキン化合物に対して、好ましくは1当量~4当量、さらに好ましくは1当量~2当量である。
【0035】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、助触媒として塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等を必要に応じて用いることができる。
【0036】
ここで助触媒としては上記に挙げた化合物が入手可能であれば特に制限なく用いることができるが、例えばヨウ化亜鉛であれば、外観性状として白色~黄褐色、結晶性粉末~粉末及び小塊などが挙げられ、純度も90重量%以上、さらには95重量%以上のものが好ましく用いられる。また粒径、粒径分布ついても特に制限なく用いることができる。
【0037】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応に用いられる助触媒の量は、反応に具する含フッ素ビスアルキン化合物に対して、好ましくは0.1モル%~30モル%、さらに好ましくは5モル%~20モル%である。
【0038】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応に適用可能な触媒としては、具体的には例えば、塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、ジコバルトオクタカルボニル、テトラコバルトドデカカルボニル、ヘキサコバルトヘキサデカカルボニル、(1,1’-ビナフチル)コバルトジクロリド等のコバルト触媒、ロジウムアセテート、トリストリフェニルホスフィンロジウムクロリド、(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)クロリド(ダイマー)、ノルボルナジエンロジウム(I)クロリド (ダイマー)等のロジウム触媒が挙げられる。
【0039】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応に用いられる触媒の量は、反応に具する含フッ素ビスアルキン化合物に対して、好ましくは0.1モル%~30モル%、さらに好ましくは5モル%~20モル%である。
【0040】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応に適用可能な溶剤としては、含フッ素芳香族化合物の製造に係る反応に不活性なものであれば特に限定はされないが、具体的には例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類等が挙げられ、反応に具する含フッ素ビスアルキン化合物に対して、好ましくは2重量倍量~500重量倍量、さらに好ましくは5重量倍量~50重量倍量使用する。
【0041】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応温度は室温~180℃の範囲で、好ましくは60℃~100℃の範囲である。
【0042】
本発明による含フッ素芳香族化合物の製造において、反応時間は1時間~96時間の範囲で、好ましくは8時間~80時間の範囲である。
【0043】
反応終了後の後処理としては、公知の方法で実施可能で、例えば、水洗、有機溶媒による抽出、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮することにより粗製物を得、さらに必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製しても良い。
【0044】
本発明の一般式(1)及び一般式(4)のR及びRにおける置換されていてもよいアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。これらアルキル基の一つ以上の水素原子は、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、かかる置換基で置換されたアルキル基としては、具体的には例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシイソブチル基、クロロメチル基、1-クロロエチル基、2-クロロエチル基、2-クロロイソブチル基、ブロモメチル基、1-ブロモエチル基、2-ブロモエチル基、2-ブロモイソブチル基、ヨードメチル基、1-ヨードエチル基、2-ヨードエチル基、2-ヨードイソブチル基、アミノメチル基、1-アミノエチル基、2-アミノエチル基、2-アミノイソブチル基、シアノメチル基、1-シアノエチル基、2-シアノエチル基、2-シアノイソブチル基、ニトロメチル基、1-ニトロエチル基、2-ニトロエチル基、2-ニトロイソブチル基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、p-メチルベンジル基、m-メチルベンジル基、o-メチルベンジル基、p-クロロベンジル基、m-クロロベンジル基、o-クロロベンジル基、p-ブロモベンジル基、m-ブロモベンジル基、o-ブロモベンジル基、p-ヨードベンジル基、m-ヨードベンジル基、o-ヨードベンジル基、p-ヒドロキシベンジル基、m-ヒドロキシベンジル基、o-ヒドロキシベンジル基、p-アミノベンジル基、m-アミノベンジル基、o-アミノベンジル基、p-ニトロベンジル基、m-ニトロベンジル基、o-ニトロベンジル基、p-シアノベンジル基、m-シアノベンジル基、o-シアノベンジル基等が挙げられる。
【0045】
本発明の一般式(1)及び一般式(4)のR及びRにおける置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基としては、具体的には例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、2-エチルフェニル基、2-n-プロピルフェニル基、2-イソ-プロピルフェニル基、2-n-ブチルフェニル基、2-sec-ブチルフェニル基、2-イソ-ブチルフェニル基、2-tert-ブチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、2-n-プロポキシフェニル基、2-イソ-プロポキシフェニル基、2-n-ブトキシフェニル基、2-sec-ブトキシフェニル基、2-イソ-ブトキシフェニル基、2-tert-ブトキシフェニル基、2-フルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-ヨードフェニル基、2-ニトロフェニル基、2-アミノフェニル基、3-メチルフェニル基、3-エチルフェニル基、3-n-プロピルフェニル基、3-イソ-プロピルフェニル基、3-n-ブチルフェニル基、3-sec-ブチルフェニル基、3-イソ-ブチルフェニル基、3-tert-ブチルフェニル基、3-メトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、3-n-プロポキシフェニル基、3-イソ-プロポキシフェニル基、3-n-ブトキシフェニル基、3-sec-ブトキシフェニル基、3-イソ-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基、3-フルオロフェニル基、3-クロロフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ニトロフェニル基、3-アミノフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-n-プロピルフェニル基、4-イソ-プロピルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-sec-ブチルフェニル基、4-イソ-ブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-n-プロポキシフェニル基、4-イソ-プロポキシフェニル基、4-n-ブトキシフェニル基、4-sec-ブトキシフェニル基、4-イソ-ブトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-クロロフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アミノフェニル基、2-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、6-エチル-2-ナフチル基、6-n-プロピル-2-ナフチル基、6-イソ-プロピル-2-ナフチル基、6-n-ブチル2-ナフチル基、6-sec-ブチル2-ナフチル基、6-イソ-ブチル-2-ナフチル基、6-tert-ブチル-2-ナフチル基、6-メトキシ-2-ナフチル基、6-エトキシ-2-ナフチル基、6-n-プロポキシ-2-ナフチル基、6-イソ-プロポキシ2-ナフチル基、6-n-ブトキシ-2-ナフチル基、6-sec-ブトキシ-2-ナフチル基、6-イソ-ブトキシ-2-ナフチル基、6-tert-ブトキシ-2-ナフチル基、6-フルオロ-2-ナフチル基、6-クロロ-2-ナフチル基、6-ブロモ-2-ナフチル基、6-ヨード-2-ナフチル基、6-ニトロ-2-ナフチル基、6-アミノ-2-ナフチル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基等が挙げられる。
【実施例
【0046】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0047】
化合物の分離精製には、島津製作所製Prominence HPLCと日本分析工業製JAIGEL 1H+2H GPCカラムを用いた。結果の解析に当たっては、H NMR、19F NMR及び13C NMRはブルカー・バイオスピン株式会社製AVANCE-III NMR分光計、IRは島津製作所製IRAffinityフーリエ変換型赤外分光光度計を使用した。
【0048】
参考例1 3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-1,7-オクタジイン(iii)の合成
【0049】
参考例1-1)
化合物(i)の合成
【0050】
【化5】
【0051】
3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-1,7-オクタジエン(a)のジクロロメタン(100mL)溶液に対し、触媒量の鉄粉(70.0mg,1.25mmol)、臭素(12.0mL,232mmol)を加え、25℃で48時間撹拌した。反応混合物に亜硫酸ナトリウム水溶液を加え過剰の臭素を分解した後、水槽をジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-1,2,7,8ーテトラブロモーオクタン(化合物(i))を白色固体として54.2g(94.4mmol)得た(収率86%)。
【0052】
生成物の分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=4.50(m,2H),4.03(dd,J=12.0,3.3Hz,2H),3.61(dd,J=12.0,3.3,2H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-108.83--110.12(m,4F),-112.25--113.50(m,2F),-117.34--120.12(m,2F)
【0053】
参考例1-2)
化合物(ii)の合成
【0054】
【化6】
【0055】
化合物(i)(54.2g,94.4mmol)のテトラヒドロフラン(150mL)溶液に対し、水酸化ナトリウム水溶液(15.0M,80.0mL,1.20mol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-2,7ージブロモー1,7-オクタジエン(化合物(ii))を38.9g(94.4mmol)得た(収率100%)。
【0056】
生成物の分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=6.49(s,2H),6.21(s,2H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-108.47(s,4F),-119.97(s,4F)
【0057】
参考例1-3)
化合物(iii)の合成
【0058】
【化7】
【0059】
アルゴン雰囲気化、カリウムtert-ブトキシド(2.20g,19.6mmol)の脱水テトラヒドロフラン(60mL)溶液を-78℃に冷却した。そこへ、化合物(2)(1.00g,2.43mmol)の脱水テトラヒドロフラン(15mL)溶液をゆっくりと滴下し、-78℃で2時間撹拌した。塩酸(1M,40mL)を加えて反応を停止した後、水槽をジエチルエーテルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別した後、溶媒を常圧蒸留で留去し、残渣を蒸留(2mmHg,25℃)することで、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-1,7-オクタジイン(化合物(iii))を0.59g(2.43mmol)得た(収率100%)。
【0060】
生成物の分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=3.05(t,J=5.5,2H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-99.53--99.42(m,4F),-122.03--121.94(m,4F)
IR(neat):3308cm-1(C-H),2133cm-1(C≡C)
【0061】
実施例1
化合物(iv)の合成
【0062】
【化8】
【0063】
オス口シュレンクフラスコ(100mL)に撹拌子、亜鉛(0.070g,0.50mmol,100mol%)、ヨウ化亜鉛(0.032g,0.050mmol,10mol%)、塩化コバルト(0.013g,0.10mmol,20mol%)を入れ、減圧乾燥した後、窒素ガス雰囲気とし、アセトニトリル(超脱水、3mL)、エチニルベンゼン(a)(0.15g,1.5mmol,3当量)、化合物(iii)(0.13g,0.50mmol)を加えた。80℃で72時間撹拌した後、定性ろ紙およびメンブレンフィルターろ過によって、金属塩を除去した。濾液をロータリーエバポレーターによって濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=8:2)によって精製した。さらに目的物を含むフラクションをHPLCによって精製することで、目的の1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-6-フェニルテトラリン(化合物(iv))を得た(0.12g,0.32mmol,収率63%)。
【0064】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=8.04(s,1H),7.99(d, J=8.40,1H),7.93(d,J=8.40,1H),7.62-7.64(m, 2H),7.47-7.54(m,3H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.56(s,2F),-102.91(s,2F),-134.22(s,4F)
【0065】
実施例2
化合物(v)の合成
【0066】
【化9】
【0067】
実施例1のエチニルベンゼンに替えて、p-ブロモエチニルベンゼン(a)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、目的物の6-(4-ブロモフェニル)-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロテトラリン(化合物(v))を収率37%で得た。
【0068】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=8.04(s,1H),7.99(d,J=9.00,1H),7.93(d,J=8.90,1H),7.61-7.67(m,2H),7.47-7.54(m,2H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.61(d,J=42.54,2F),-102.91--102.93(m,2F),-134.23(s,4F)
【0069】
実施例3
化合物(vi)の合成
【0070】
【化10】
【0071】
実施例1のエチニルベンゼンに替えて、p-エチニルアニソール(a)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、目的物の6-(4-メトキシフェニル)-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロテトラリン(化合物(vi))を収率18%で得た。
【0072】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.99(s,1H),7.95(d,J=8.42,1H),7.89(d,J=8.42,1H),7.57-7.59(m,2H),7.02-7.04(m, 2H),3.88(s,3H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.45(s,2F),-102.91--102.98(s,2F),-134.23(s,4F)
【0073】
実施例4
化合物(vii)の合成
【0074】
【化11】
【0075】
実施例1のエチニルベンゼンに替えて、2-エチニルピリジン(a)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、目的物の1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-6-(2-ピリジル)テトラリン(化合物(vii))を収率37%で得た。
【0076】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=8.77(d,J=4.72,1H),8.52(s,1H),8.43(d,J=8.42,1H),7.97(d,J=8.33,1H),7.82-7.88(m,2H),7.35-7.38(m,1H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.87(d,J=44.11,4F),-134.23(s,4F)
【0077】
実施例5
化合物(viii)の合成
【0078】
【化12】
【0079】
実施例1のエチニルベンゼンに替えて、4-フェニル-1-ブチン(a)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、目的物の1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-6-(2-フェニルエチル)テトラリン(化合物(viii))を収率63%で得た。
【0080】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.75(d,J=8.23,1H),7.60(s,1H),7.54(d,J=8.35,1H),7.32-7.20(m, 3H),7.13-7.15(m,2H),3.05-3.09(m,2H),2.94-2.98(m,2H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.90(s,4F),-134.23--134.29(m,4F)
【0081】
実施例6
化合物(ix)の合成
【0082】
【化13】
【0083】
実施例1のエチニルベンゼンに替えて、3-ブチン-1-オール(a)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、目的物の1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-6-(2-ヒドロキシエチル)テトラリン(化合物(ix))を収率25%で得た。
【0084】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=7.81(d,J=8.1Hz,1H),7.74(s,1H),7.68(d,J=8.2Hz,1H),7.67-7.61 (m,2H), 3.96(t,J=6.3Hz,2H),3.01(t,J=6.3Hz,2H), 1.56(s, 1H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.5(s,2F),-102.8(s,2F),-134.29(s,4F)
実施例7
化合物(x)の合成
【0085】
【化15】
【0086】
塩化コバルト(0.0078g,0.060mmol)、亜鉛粉末(0.13g,2.0mmol)、ヨウ化亜鉛(0.064g,0.2mmol)のアセトニトリル溶液(7mL)に対し化合物(iii)(0.50g,2.0mmol)を加え、80℃で72時間撹拌した。反応混合物の不溶物を濾別し、ロータリーエバポレーターで濃縮したあと、ヘキサンを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行う事によって、1,4-ビス(5,6,7,8-テトラフルオロテトラヒドロ-2-ナフチル)パーフルオロブタン(化合物(x))を0.38g得た(0.50mmol,収率75%)。
【0087】
生成物のNMR測定の結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,ppm)δ=8.10(s,2H),8.04(d, J=3.46 Hz,4H)
19F-NMR(376MHz,CDCl,ppm)δ=-102.97(s,4F),-103.51(s,4F),-111.40(s,4F),-120.63(s,4F),-134.29(s,8F)
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明により、種々の置換基を導入した新たな含フッ素芳香族化合物を得ることが可能となった。このような含フッ素芳香族化合物は、機能性材料のビルディングブロックとして利用できる。