(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/06 20060101AFI20240213BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240213BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20240213BHJP
G03G 21/18 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G03G15/06 101
G03G15/00 303
G03G15/08 235
G03G21/18 114
G03G21/18 178
(21)【出願番号】P 2020025905
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】奥川 弘和
(72)【発明者】
【氏名】福島 直樹
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197837(JP,A)
【文献】特開2007-065401(JP,A)
【文献】特開2010-054744(JP,A)
【文献】特開2011-013247(JP,A)
【文献】特開2010-152190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/06
G03G 15/00
G03G 15/08
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面を露光する露光部と、
前記像担持体に対して非接触状態で対向するように設けられ、現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する印加部と、
前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流値を検出する検出部と、
前記像担持体と前記現像剤担持体が回転され、前記現像剤担持体に前記現像バイアスが印加された状態で、前記検出部により検出された電流値から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する制御部と、
前記像担持体の前記露光部に露光された領域の表面電位と前記現像剤担持体の直流電圧の差の絶対値であるVcontもしくは前記像担持体の前記露光部に露光されない領域の表面電位と前記現像剤担持体の直流電圧の差の絶対値であるVbackの変更に応じた、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧の情報を有する第1のテーブルと、を備え、
前記制御部は、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を、前記検出部により検出された前記電流値に応じた下げ幅の交流電圧に設定
し、前記電流値に応じて前記交流電圧を設定した後、前記Vcontもしくは前記Vbackが変更された場合に、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を、前記Vcontもしくは前記Vbackの変更に応じた値に設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流を整流した電流値を出力し、
前記制御部は、前記交流電圧の周期時間において前記検出部から出力された電流値を平均化した値を出力することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記現像剤担持体又は前記像担持体が少なくとも1回転する時間において前記検出部により検出される電流値の最大値を用いて前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記電流値と、前記像担持体の前記露光部に露光された領域の表面電位と前記現像剤担持体の直流電圧の差の絶対値であるVcontを用いて、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検出部により検出された前記電流値の大きさから前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する情報を有する第
2のテーブルを備え、
前記制御部は、前記第
2のテーブルを参照して、前記検出部により検出された前記電流値の大きさから前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
少なくとも前記像担持体と前記現像剤担持体を有し、前記画像形成装置に対して着脱可能なプロセスカートリッジを備え、
前記プロセスカートリッジが前記第1のテーブルを有することを特徴とする請求項
1乃至5
のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
少なくとも前記像担持体と前記現像剤担持体を有し、前記画像形成装置に対して着脱可能なプロセスカートリッジを備え、
前記プロセスカートリッジが前記第2のテーブルを有することを特徴とする請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記電流値が閾値以上である場合に、前記電流値に応じた下げ幅を決定し、前記現像剤担持体に印加する交流電圧を、前記下げ幅の分、前記電流値を検出する検出時に前記現像剤担持体に印加された交流電圧より小さい値に設定し、前記検出部により検出された前記電流値が閾値未満である場合に、前記現像剤担持体に印加する交流電圧の設定を変更しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記検出部により検出された前記電流値から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を設定する設定式を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記電流値が閾値以上である場合に、前記設定式に基づいて、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧の下げ幅を設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
回転可能な像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記像担持体に対して非接触状態で対向するように設けられ、現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する印加部と、
前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流値を検出する検出部と、
前記現像剤担持体と前記像担持体が回転され、前記現像剤担持体に前記現像バイアスが印加された状態で、
前記像担持体が少なくとも1回転する間における前記検出部により検出された電流値の
変化量から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記検出部により検出された前記電流値の変化量が閾値以上である場合に、前記電流値の変化量に応じた下げ幅を決定し、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を、
前記下げ幅の分、前記電流値を検出する検出時に前記現像剤担持体に印加された交流電圧より小さい値に設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は
、前記検出部により検出された前記電流値の
変化量が閾値未満である場合に、前記現像剤担持体に印加する交流電圧の設定を変更しないことを特徴とする請求項1
0に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記検出部は、前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流を整流した電流値を出力し、
前記制御部は、前記交流電圧の周期時間において前記検出部から出力された電流値
を平均化し平均化された前記電流値における前記電流値の変化量を出力することを特徴とする請求項1
0又は1
1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
帯電された像担持体に露光する露光部を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記電流
値と、前記像担持体の前記露光部に露光された領域の表面電位と前記現像剤担持体の直流電圧の差の絶対値であるVcontを用いて、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御することを特徴とする請求項1
0乃至1
2のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記検出部により検出された前記電流値の大きさから前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する情報を有する第1のテーブルを備え、
前記制御部は、前記第1のテーブルを参照して、前記検出部により検出された前記電流
値から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御することを特徴とする請求項1
0乃至1
3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
帯電された像担持体に露光する露光部と、
前記像担持体の前記露光部に露光された領域の表面電位と前記現像剤担持体の直流電圧の差の絶対値であるVcontもしくは前記像担持体の前記露光部に露光されない領域の表面電位と前記現像剤担持体の直流電圧の差の絶対値であるVbackの変更に応じた、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧の情報を有する第2のテーブルと、
を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された電流値の最大値と最小値の差に応じて前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を設定した後、前記Vcontもしくは前記Vbackが変更された場合に、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を、前記Vcontもしくは前記Vbackの変更に応じた値に設定することを特徴とする請求項1
0乃至1
4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
少なくとも前記像担持体と前記現像剤担持体を有し、前記画像形成装置に対して着脱可能なプロセスカートリッジを備え、
前記プロセスカートリッジが前記第1のテーブルを有することを特徴とする請求項1
4に記載の画像形成装置。
【請求項17】
少なくとも前記像担持体と前記現像剤担持体を有し、前記画像形成装置に対して着脱可能なプロセスカートリッジを備え、
前記プロセスカートリッジが前記第2のテーブルを有することを特徴とする請求項1
5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式(電子写真プロセス)を用いたプリンタ等の画像形成装置では、像担持体に形成された静電潜像を現像するために、様々な現像装置が使用されている。その一例として、像担持体とこれに対向する現像剤担持体とが所定の間隙(ギャップ)を設けて配置されている非接触現像方式が知られている。
【0003】
非接触現像方式では、現像剤担持体に直流電圧と交流電圧が重畳された現像バイアスが印加されることで、帯電したトナーが現像剤担持体から像担持体へと飛翔し、像担持体に形成された静電潜像へトナー像が現像される。像担持体に現像されたトナー像は、用紙などの記録媒体に転写、定着される。
【0004】
ところで、非接触現像方式では、像担持体および現像剤担持体に駆動がかかることで、像担持体と現像剤担持体との間に設けられている前記ギャップが変動する場合がある。前記ギャップの変動により像担持体と現像剤担持体の間の電界強度が変動することで、形成された画像に濃度ムラが発生する等の問題があった。
【0005】
この問題に対して、現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク値)を大きくすることで、トナーが現像剤担持体から像担持体へと十分飛翔し、濃度ムラの発生を抑制することが可能である。しかし、前記現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧を大きくすると、像担持体の表面電位との電位差が大きくなる。そのため、現像剤担持体と像担持体との間に放電が生じ、放電によって放電電流が流れる電流リーク(以下、リークと称する)が発生し、形成される画像にノイズが発生するという問題があった。
【0006】
前記リークが発生する交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク値)は、前記ギャップや気圧などで変化するため、個々の画像形成装置や使用環境の変化によって変化する。
【0007】
そのため、特許文献1においては、像担持体と現像剤担持体との間に印加される現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク値)を、リークが発生しない値から徐々に増加させている。そして、像担持体と現像剤担持体との間に流れる電流値に基づいてインピーダンスを測定し、インピーダンスの測定値と前記電流値からリークの発生を検知している。さらに特許文献2においては、像担持体と現像剤担持体との間でリークが発生した際に、リークが発生してから終了するまでのリーク発生時間に比例して現像バイアスを下げることで、現像バイアスの調整を短時間で行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-78015号公報
【文献】特許第5453338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では像担持体と現像剤担持体との間のリークの発生を検知するために、インピーダンスを事前に測定する必要があり、リークが発生しない現像バイアスに設定するために要する時間が長くなるという問題があった。
【0010】
また、特許文献2では像担持体と現像剤担持体との間に印加される現像バイアスが大きい場合にリークが終了せず、リーク発生時間の測定時間が長くなってしまい、その結果、現像バイアスの調整時間が長くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、現像剤担持体に印加する現像バイアスの設定に要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、回転可能な像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電部材と、前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面を露光する露光部と、前記像担持体に対して非接触状態で対向するように設けられ、現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体と、前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアスを印加する印加部と、前記像担持体と前記現像剤担持体との間に流れる電流値を検出する検出部と、前記像担持体と前記現像剤担持体が回転され、前記現像剤担持体に前記現像バイアスが印加された状態で、前記検出部により検出された電流値から前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を制御する制御部と、前記像担持体の前記露光部に露光された領域の表面電位と前記現像剤担持体の直流電圧の差の絶対値であるVcontもしくは前記像担持体の前記露光部に露光されない領域の表面電位と前記現像剤担持体の直流電圧の差の絶対値であるVbackの変更に応じた、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧の情報を有する第1のテーブルと、を備え、前記制御部は、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を、前記検出部により検出された前記電流値に応じた下げ幅の交流電圧に設定し、前記電流値に応じて前記交流電圧を設定した後、前記Vcontもしくは前記Vbackが変更された場合に、前記現像剤担持体に印加する前記交流電圧を、前記Vcontもしくは前記Vbackの変更に応じた値に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現像剤担持体に印加する現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】現像バイアス印加と放電検出に関する構成を示す説明図
【
図3】現像バイアスの交流電圧を変化させたときの電流値の波形図
【
図4】Vcontが同じ場合のVppと最大電流値の関係図
【
図5】Vcontが異なる場合のVppと最大電流値の関係図
【
図6】リーク発生時間を示す時間経過と最大電流値の関係図
【
図7】実施例1における放電検出制御を示すフローチャート
【
図8】実施例2における現像バイアス印加と放電検出に関する構成を示す説明図
【
図9】実施例2における放電検出制御を示すフローチャート
【
図10】実施例3における放電検出制御を示すフローチャート
【
図11】実施例3におけるVppの下げ幅の情報を有する制御テーブルを示す表図
【
図12】実施例4におけるVppの下げ幅の情報を有する制御テーブルを示す表図
【
図13】実施例5における交流電圧と電流値の変化量の関係図
【
図14】(a)比較例における放電発生検出時の交流電圧設定のタイミングチャート、(b)実施例における放電発生検出時の交流電圧設定のタイミングチャート
【
図15】実施例5における放電検出制御を示すフローチャート
【
図16】(a)実施例5におけるVppとVcontの関係図、(b)実施例5におけるVppとVbackの関係図
【
図17】実施例6におけるVppの情報を有する設定テーブルを示す表図
【
図18】実施例6における設定テーブルを用いた場合と用いなかった場合のVppとVcontの関係図
【
図19】実施例6における放電発生制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0016】
〔実施例1〕
図1を参照して、画像形成装置の全体構成を画像形成動作とともに説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置の概略構成を示す模式断面図である。
【0017】
<画像形成装置の説明>
画像形成装置は、電子写真方式を用いたレーザプリンタであり、装置本体Mに対してプロセスカートリッジ20が着脱可能に構成されている。ここで、画像形成装置の装置本体Mとは、画像形成装置においてプロセスカートリッジ20を除いた構成部品を示すものである。また、本発明が適用可能な画像形成装置はここに示すものに限られない。例えば、複数のプロセスカートリッジ20を備え、中間転写ベルト(中間転写体)を用いて複数像のトナー像を記録媒体に転写してカラー画像を形成するカラーレーザプリンタにも本発明は適用可能である。
【0018】
像担持体(被帯電体)としての感光ドラム1は、導電性ドラムの外周面にOPC(有機光半導体)感光層を形成したものであり、装置本体の不図示の駆動機構から駆動伝達され、所定のプロセススピードをもって
図1の矢印r1方向に回転駆動される。
【0019】
帯電部材としての帯電ローラ4は、所定のタイミングで帯電バイアスが印加され、感光ドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。露光部としてのレーザビームスキャナ6は、帯電された感光ドラム1に対して画像情報に応じたレーザ光を走査露光(照射)することで、感光ドラム1の表面に静電潜像を形成する。
【0020】
現像部としての現像装置は、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像に対して現像剤としてのトナーにより現像を行う。現像装置は、現像ローラ7、現像ブレード8、現像容器9によって構成されている。現像ローラ7は、感光ドラム1に対向して配設され、感光ドラム1にトナーを供給するための現像剤担持体である。現像ブレード8は、現像ローラ7に担持されたトナーの層厚を規制し、トナーに電荷を付与するための規制部材である。現像容器9は、感光ドラム1に供給するトナーを収容するための現像剤収容部である。
【0021】
現像ローラ7は、装置本体の不図示の駆動機構から駆動伝達され、
図1の矢印r2方向に回転駆動される。現像ローラ7の表面には、現像ブレード8によって電荷が付与されたトナー層(磁性穂)が形成される。そして、現像ローラ7は交流電圧と直流電圧を重畳させた現像バイアスが印加されることで、現像バイアスの電界により現像ローラ7に担持されたトナーが感光ドラム1へ飛翔し、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像がトナー像として現像される。
【0022】
一方、記録媒体10は不図示の給送ローラなどによって給送され、感光ドラム1と転写ローラ11とのニップ部にて、感光ドラム1の表面に現像されたトナー像(現像剤像)が転写される。トナー像が転写された記録媒体10は、感光ドラム1の表面から分離されて定着装置12に送られ、加熱・加圧されて、転写されたトナー像が記録媒体10に定着される。
【0023】
記録媒体10に転写されず感光ドラム1の表面に残ったトナーは、感光ドラム1に当接して感光ドラム1をクリーニングするクリーニング部としてのクリーニングブレード2により除去され、クリーニング容器5に収容される。その後、感光ドラム1の表面は再び帯電ローラ4により帯電され、上述の工程を繰り返し、一連の画像形成のサイクルが行われる。
【0024】
本実施例では、感光ドラム1、帯電ローラ4、クリーニングブレード2、クリーニング容器5、及び現像ローラ7、現像ブレード8、現像容器9が、プロセスカートリッジ20として一体化されている。そしてプロセスカートリッジ20は、画像形成装置の装置本体Mに対して着脱可能となっている。
【0025】
本実施例は、寿命の短いプロセスカートリッジであり、感光ドラム1の膜厚変化、光量感度の変化、トナーの劣化が小さい。そのため、交流電圧と直流電圧を重畳させた現像バイアスは、リークの発生以外においては変更する必要がない。
【0026】
<感光ドラムと現像ローラ間の放電検出構成の説明>
次に
図2を用いて、現像ローラ7への現像バイアスの印加、及び感光ドラム1と現像ローラ7間の放電検出に関する構成を説明する。
図2は、現像バイアス印加と放電検出に関する構成を示す説明図である。
【0027】
図2に示すように、現像ローラ7は、画像形成時にトナーを担持するスリーブ7aを有し、スリーブ7aの長手方向の両端には円形のキャップ7bが嵌入されている。現像ローラ7は、ローラ軸7cを中心に回転駆動される。ここでは、感光ドラム1の外径は30mm、現像ローラ7の外径は感光ドラム1の外径より小さい15mmとし、感光ドラム1と現像ローラ7は共に300mm/sの周速で回転駆動される。
【0028】
また、現像ローラ7は、感光ドラム1との間に所定のギャップ(SDギャップ)を設けた非接触状態で対向するように設けられている。本実施例では、キャップ7bはスリーブ7aより外径が大きく、キャップ7bの外周面が感光ドラム1の表面に当接する構成となっている。これにより、現像ローラ7と感光ドラム1との間に所定のギャップが設けられ、現像ローラ7と感光ドラム1とが非接触状態で対向する。ここでは、所定のギャップとして、200μmのSDギャップが設けられている。
【0029】
なお、現像ローラ7と感光ドラム1との間に所定のギャップを設ける構成はこれに限定されるものではない。例えば、現像ローラ7と感光ドラム1を回転可能に支持する枠体によって現像ローラ7と感光ドラム1との間に所定のギャップを設けた構成としてもよい。
【0030】
また、現像ローラ7のローラ軸7cには、感光ドラム1へのトナーの供給のため、直流電圧印加部30と交流電圧印加部31が接続されている。直流電圧印加部30と交流電圧印加部31は、現像ローラ7に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加するための印加部である。
【0031】
直流電圧印加部30は、現像ローラ7に印加する直流成分を発生させる回路であり、その出力は交流電圧印加部31に入力される。そして、直流電圧印加部30は、出力制御部32を有している。出力制御部32は、直流電圧印加部30が出力するバイアスの値を制御部としてのCPU40の指示に応じて制御する。
【0032】
また、交流電圧印加部31は、直流電圧印加部30の出力する直流電圧を平均値(面積中心値)とする交流電圧を出力する回路である。交流電圧印加部31は、例えば、周波数f=2.5kHz、Duty50%の矩形波状(パルス状)の交流電圧を出力する。そして、交流電圧印加部31は、Vpp制御部33を有している。Vpp制御部33は、交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク値)であるVppを制御部としてのCPU40の指示に応じて制御する。
【0033】
検出部35は、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値を検出する検出部である。検出部35は、整流部34と、検出回路36と、アンプ37とで構成される。整流部34は、直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアスを印加した時に現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流を整流する。検出回路36は、整流された電流を電圧に変換する。アンプ37は、変換された電圧信号を増幅し、放電検出信号としてCPU40に出力する。A/D変換器38は、アンプ37からの放電検出信号をA/D変換する。CPU40は、A/D変換器38によりA/D変換されたアンプ37の出力から、現像ローラ7と感光ドラム1との間に発生した電流の大きさを認識し、交流電圧の周期時間Tで平均化した電流値を出力する。ここでは、CPU40は、交流電圧の10周期の時間Tである4msで平均化した電流値(平均値)を出力(算出)する。後述するが、CPU40は、検出部35により検出された電流値から現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を制御する制御部である。
【0034】
<リーク電流の検出の説明>
図3を用いて、検出部35によるリーク電流の検出(放電検出)について説明する。
図3は現像バイアスの交流電圧Vppを変化させたときの電流値の波形図である。
【0035】
図3は現像バイアスにおける交流電圧のピーク間電圧であるVppを変化させたときの現像ローラ7と感光ドラム1間に流れる電流値をプロットしており、横軸は時間、縦軸は整流後の電流値となっている。測定条件としては、不図示の駆動機構により、感光ドラム1と現像ローラ7を駆動させる。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加して感光ドラム1の表面電位を-500Vにし、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する。次に、レーザビームスキャナ6によって感光ドラム1を露光することで感光ドラム1の表面電位を-100Vになるように制御する。このとき、感光ドラム1の表面において、レーザビームスキャナ6によって露光された領域(以下、露光領域という)の表面電位は-100Vになる。一方で、レーザビームスキャナ6によって露光されない領域(以下、非露光領域という)の表面電位は-500Vのままである。以下、感光ドラム1の非露光領域の表面電位と現像ローラ7の直流電圧の差の絶対値をVback、感光ドラム1の露光領域の表面電位と現像ローラ7の直流電圧の差の絶対値をVcontと呼ぶ。
【0036】
そして、交流電圧印加部31によって現像ローラ7に交流電圧のピーク間電圧Vppを印加する。このとき、交流電圧のピーク間電圧Vppを1600Vから所定の時間間隔(ここでは1s)で200Vずつ段階的に増加させ、各交流電圧Vppにおける時間と電流値の出力値の関係をプロットする。交流電圧Vppが1.8kVと2.0kVではリーク電流は未発生であったが、交流電圧Vppが2.2kVではリーク電流が発生している。リーク電流の未発生時と比較し、リーク電流が発生している領域が現像ローラ7の回転周期で変動する。これは、リーク電流が発生している領域が現像ローラ7の回転周期で変動していることによるものである。現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離(SDギャップ)は、現像ローラ7や感光ドラム1、キャップ7bの形状のムラによって変動する。
【0037】
現像ローラ7が回転すると、現像ローラ7や感光ドラム1の回転周期で、現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離が変動する。パッシェンの法則により、本実施例の現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離である200μmのギャップ領域では、現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離が近づくと放電開始電圧が低くなることが分かっている。現像ローラ7と感光ドラム1との間の距離(SDギャップ)は、現像ローラ7の軸方向において均一ではないため、リーク電流は現像ローラ7と感光ドラム1との間の軸方向におけるギャップ領域のうち、一部の距離が近い領域で発生する。現像ローラ7の軸方向においてSDギャップが変化すると、リーク電流が発生する領域も変化するため、電流値は前記リーク電流が発生する領域の変化に応じた変動をする。よって、リーク電流が発生している交流電圧のピーク間電圧Vpp=2.2kVの状況では、感光ドラム1や現像ローラ7の回転周期で電流値が変動する。電流値の変動は感光ドラム1の回転周期より小さい現像ローラ7の回転周期(ここでは157ms)で変動する。そのため、CPU40は、交流電圧の周期時間(1周期以上の時間)Tで平均化した電流値を出力することで、突発的なノイズとリークによる電流変化の区別をすることができる。尚、本実施例では交流電圧の周期時間Tとして10周期の時間である4msで平均化した電流値を出力しているが、ノイズ除去の観点から平均化する時間を数十msまで増やしても良い。
【0038】
本実施例では、リークを検出した際に、リークによる電流値の最大値を用いて、現像バイアスの下げ幅を決定する。ここでリークによる電流値の最大値は、感光ドラム1が1回転するまでの時間314ms(時間T2)における電流値の出力値の最大値である。この測定時間は、現像ローラ7が1回転するまでの時間157ms(時間T1)に対して感光ドラム1が1回転するまでの時間314ms(時間T2)の方が長いため、314msの時間で行っている。以下、感光ドラム1が1回転するまでの時間における電流値の最大値を最大電流値、最大電流値であってリークが発生している際の電流値を最大リーク電流値とする。
【0039】
次に
図4を用いて、最大リーク電流値による現像電界最適化(Vppの下げ幅最適化)について説明する。
図4はVcontが同じ場合の現像バイアスの交流電圧Vppと現像ローラ7と感光ドラム1間に流れる最大電流値の関係図である。
図4に示すように、複数の気圧、SDギャップを変化させ、リーク電流値の最大値と交流電圧Vppの関係を検討したところ、最大リーク電流値はリーク発生開始(放電開始)Vppからほぼ線形に増加していくことがわかった。
【0040】
図4は、Vcontが同じ場合において、気圧およびSDギャップを変化させた際の2水準について、現像バイアスの交流電圧Vppを変化させたときの現像ローラ7と感光ドラム1間に流れる最大電流値をプロットしている。実線は気圧61kP、SDギャップ150μmであり、点線は気圧91kP、SDギャップ100μmであり、2水準ともVcont=200Vのデータとなっている。
図4を見るとわかるように、Vcont=200Vと放電開始電圧が同じであれば、気圧とSDギャップによらず電流値の傾きが同じであることがわかる。加えて、放電開始前の最大電流値の値もほとんど変わらない。これはプロセスカートリッジ20のインピーダンスが、SDギャップの変化によるインピーダンスの変化に対して十分に大きいことから生じる現象である。本実施例ではキャップ7bの部品のバラつきおよび耐久による摩耗によって最大100μmの変化がある。本実施例において最大のSDギャップ変化である100μmのインピーダンスの変化は、プロセスカートリッジ20のインピーダンスに対して5%以下であった。インピーダンスの変化分とインピーダンスの比率は、まず、プロセスカートリッジ20がない状態で最大電流値を測定する。そして、続いてSDギャップ200μmとSDギャップ100μmのプロセスカートリッジ20の最大電流値をリークしないVcontとVppを用いて測定し、それぞれの電流値の差分を用いて計算した。
【0041】
図5は気圧およびVcontを変化させた際に放電開始電圧が同じであった3水準について、現像バイアスの交流電圧Vppを変化させたときの現像ローラ7と感光ドラム1間に流れる最大電流値をプロットしている。横軸は交流電圧Vpp、縦軸は最大電流値である。
【0042】
実線は気圧が61kp、Vcont=50Vであり、点線は気圧が73kp、Vcont=100Vであり、棒点線は気圧が83kp、Vcont=200Vであり、3水準ともSDギャップ100μmのデータとなっている。
図5を見るとわかるようにリーク電流値の傾きは、放電開始電圧(リーク開始電圧)が同じ際にはVcontの値で異なる。
【0043】
以上の特性は、現像ローラ7と感光ドラム1間のリークを火花放電(タウンゼント放電)と見ることで説明できる。リーク電流値は、火花放電における電子なだれの発生量となる。電子なだれは火花放電のα作用とγ作用によって引き起こされているため、電子なだれ発生量は火花放電のα作用とγ作用によって決まる。火花放電のα作用は交流電圧と直流電圧を重畳させた現像バイアスの電界によっておおよそ決まる。火花放電のγ作用は、γ作用を引き起こす2次電子を発生させる電極材質にも影響を受ける。前述した検討の範囲においては、現像ローラ7と感光ドラム1の材質の変化もないため、γ作用を引き起こす2次電子の発生量は変わらない。そして、VppとVcontによって、交流電圧と直流電圧を重畳させた現像バイアスの電界が決まる。現像バイアスの電界が同じであれば、火花放電のα作用が等しくなるため、電子なだれの発生量も等しくなる。
【0044】
つまり、火花放電が発生する条件下では、Vppと最大リーク電流値の傾きは、現像ローラ7と感光ドラム1間の電界変化そのものと、現像ローラ7と感光ドラム1の材質によって決まる。本実施例では、どちらも変化することがないため、最大リーク電流値の傾きは一定であり、最大リーク電流値によって必要なVppの下げ幅が決まる。
【0045】
以上のことから、最大リーク電流値とVcontによって、リークの発生しない適切なVppを設定するための適切なVppの下げ幅にすることができる。リーク電流値によって下げるべき適切なVppは設計者が装置設計時に実験等を行って決定する。
【0046】
その際、濃度ムラの発生を抑制するためにリークが発生しない範囲で高いVppを設定したい。しかし、プロセスカートリッジ20のインピーダンスのばらつきや高圧回路の抵抗値のばらつき等が存在するため、リークが発生する電圧Vppもプロセスカートリッジ20や画像形成装置本体Mの個体ばらつきの範囲で増減する。そのため、設計の際にはバラつきの要因として大きいプロセスカートリッジ20のインピーダンスと高圧回路の抵抗値の二つに対して、リークが発生しやすい最悪条件を考慮した上で、Vppの下げ幅を決定した。この個体ばらつきを考慮した上でのリークが発生しないVppの設定値を補正上限値、その際のVpp下げ幅を補正上限Vpp下げ幅とする。補正上限値は他のばらつきの大きい要因があればそれも含めて決定してもよいし、部品公差等の計算によって決定してもよいし、係数をかけることで決定してもよい。なお、ここで、リークが発生しないVppの設定値である補正上限値とは、検出部35により検出された電流値が後述する閾値を含まない閾値未満の上限値である。
【0047】
もちろん、交流電圧と直流電圧を重畳させた現像バイアスの電界を下げればよいため、Vppではなく、Vcont,Duty,周波数を変化させてもよい。
【0048】
次に
図6(a)及び
図6(b)を用いて、リーク発生時における時間と電流値の関係について説明する。例としてここでは、製品の使用開始時に感光ドラム1と現像ローラ7との間にリークが発生しているのか検知する場合を挙げる。リークの発生要因として、製品の使用環境における気圧があるため、高地の使用によってリークが発生する場合が多い。そのため、製品の使用開始時にリーク検知を必要とする。
【0049】
図6(a)及び
図6(b)はリーク発生時における時間と電流値の関係を表す図である。
図6(a)では感光ドラム1の回転周期内の一部でリークが発生している電流値を実線で示している。
図6(b)では感光ドラム1の回転周期にかかわらず常にリークが発生している電流値を実線で示している。両図ともリークが発生していない電流値を点線で示している。
【0050】
比較例1として特許文献2で説明した構成を用いる。この比較例1では、
図6(a)の感光ドラムの回転周期内の一部でリークが発生している場合、図中の両矢印の範囲がリーク発生時間となる。リークの発生を検知する際に、リーク発生時間の計測を行うが、検知開始タイミングによっては検知終了が感光ドラムの1回転分必要になる可能性もある。特に比較例1の場合、リークが発生してから終了するまでのリーク発生時間を測定し、この測定したリーク発生時間に比例して現像バイアスを下げるため、リークが飽和的に発生している場合、リーク発生時間の測定が終わらない可能性もある。例えば、
図6(b)は感光ドラム1の回転周期にかかわらず常にリークが発生しているため、リーク発生時間の計測が終わらない。ある程度以上の時間で打ち切ったとしても、マージンを大きく取ったVppの下げ幅を設定するしかない。したがって、比較例1においてはリーク検知に感光ドラム1が1回転する時間を取る場合が存在することに加え、検知が終わらない、もしくは、広いマージンの持ったVppの下げ幅を設定する必要がある。
【0051】
一方、本実施例では、
図6(a)に示す感光ドラムの回転周期内の一部でリークが発生している場合と
図6(b)に示す感光ドラムの回転周期にかかわらず常にリークが発生している場合の両者において、リーク電流値でVppの下げ幅を決定することができる。そのため、感光ドラムが1回転する時間で適切なVppの下げ幅を決定できる。
【0052】
<放電発生検出動作のフローチャート>
次に
図7を用いて、実施例1に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れについて説明する。
【0053】
図7は、実施例1に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。以下に説明する放電発生検出動作は、制御部であるCPU40(
図2参照)により実行する。放電発生検出動作では、CPU40は、検出された電流値の最大電流値が閾値以上である際に、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)の設定を最大電流値の関数であるVpp下げ幅設定式に基づいて決定する。なお、この放電発生検出動作は、気圧もしくは温湿度などの画像形成装置の設置環境が変化した時に実行する。あるいは、現像ローラ7又は感光ドラム1の駆動時間(例えばSDギャップが変化する可能性のある現像装置の通紙履歴や現像装置の交換のタイミング)に合わせて実行する。また、放電発生検出動作の実施タイミングは、前述の例に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0054】
まず、画像形成装置の電源がONされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU40の指示で、不図示の駆動機構により、感光ドラム1、現像ローラ7等の各回転体の回転が開始される(ステップS11)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加し、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する(ステップS12)。ステップS12から感光ドラム1が1回転する時間(T2)が経過することで(ステップS13)、感光ドラム1の表面が全周にわたって設定した表面電位(-500V)になる。次に、現像ローラ7に画像形成時の設定の交流電圧Vppを印加し、画像形成時のレーザ光量でレーザビームスキャナ6を発光し、感光ドラム1を露光する(ステップS14)。なお、本例では、Vcontが一定(Vcont=200V)の場合を例示して説明する。次に、
図3を用いて説明したように、前記設定した交流電圧Vppを現像ローラ7に印加した際に、現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流値を測定する(ステップS15)。このとき、現像ローラ7にVppを印加してから感光ドラム1が1回転する時間T2の期間、現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流値を測定し、その最大値を最大電流値とする。
【0055】
そして、制御部であるCPU40は、最大電流値が閾値以上である際に、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)の設定を最大電流値の関数であるVpp下げ幅設定式に基づいて決定する(ステップS16)。具体的には、Vcontが一定(Vcont=200V)の場合において、測定した電流値の最大電流値が2.1μA以上であった場合、リークが発生していると判断する。CPU40は本実施例における以下のVpp下げ幅設定式(式1)を用いて決定する。
【0056】
(下げ幅 V)=245×(最大電流値μA)-485 ……(式1)
【0057】
Vpp下げ幅設定式は、本実施例の構成において、SDギャップと気圧を変化させながら、Vppを1000Vから2500Vまで100V毎に変化させた際の最大電流値から実験的に求めた。もちろん、最大電流値に応じたVppの下げ幅が求められる方法であればこの方法に限らない。測定した電流値の最大電流値が2.4μAであった場合、Vpp下げ幅設定式から下げ幅を103Vに決定する。そして、画像形成中の現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅のVppに決定する(ステップS17)。
【0058】
そして、現像バイアスと帯電バイアスをOFFし、その後、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動を停止させ(ステップS18)、放電発生検出動作を終了する(エンド)。
【0059】
以上から、本実施例によれば、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の最大電流値に応じたVppの下げ幅を下げ幅設定式を用いて決定する。これにより、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、前記最大電流値に応じた、適切な下げ幅のVppに設定することができる。またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0060】
なお、本実施例に記載されているSDギャップ、帯電バイアス、現像バイアス、電流値の閾値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0061】
また本実施例では、交流電圧の10周期の時間において検出部35から出力された電流値を平均化した平均値を算出する構成を例示したが、交流電圧の周期時間Tはこれに限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0062】
また本実施例では、感光ドラム1が1回転する時間の期間において測定した電流値の最大電流値に基づいてVppを決定する構成を例示したが、このVppを決定する期間はこれに限定されるものではない。感光ドラム1が複数回転する時間であってもよいし、現像ローラ7が回転する時間であってもよい。また、感光ドラム1又は現像ローラ7が1回転し終わる前に測定した電流値から下げ幅を決定するようにしてもよい。しかし、感光ドラム1と現像ローラ7との間の距離(SDギャップ)は現像ローラ7と感光ドラム1の回転周期で変動するため、現像ローラ7又は感光ドラム1のうち1回転する時間が長い方を回転させる方が好ましい。また、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定に要する時間を短縮する目的から、現像ローラ7又は感光ドラム1を回転させる時間は短い方が好ましい。
【0063】
また本実施例では、感光ドラム1が1回転する時間の期間において測定した電流値の最大電流値に基づいてVppの下げ幅を決定する構成を例示したが、これに限定されるものではない。感光ドラム1が1回転する時間の期間において測定した電流値を平均化した平均値を出力し、その出力値(電流値)に応じてVppの下げ幅を決定する構成としてもよい。このように構成しても、現像バイアス(Vpp)を、感光ドラム1と現像ローラ7との間を流れる電流値に応じた下げ幅のVppに設定することができ、またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0064】
また本実施例では、感光ドラム1が1回転する時間の期間において測定した電流値の最大電流値に基づいてVppの下げ幅を決定する構成を例示したが、これに限定されるものではない。電流値を最大電流値に限らず、感光ドラム1が1回転する時間の期間において測定した電流値に応じてVppの下げ幅を決定する構成であればよい。すなわち、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、測定した電流値に応じた下げ幅の現像バイアス(交流電圧Vpp)に設定すればよい。例えば、最大電流値よりも小さい任意の閾値を設定し、その閾値を上回る任意の値や、閾値に応じてVppの下げ幅を決定してもよい。任意の値の具体例としては、閾値と最大電流値の間の値や、最大電流値よりも少し小さい値を採用してもよい。最大電流値以外の上記場合には、前述した下げ幅設定式(式1)とは異なる関係式を作成し、適宜適応させればよい。
【0065】
また本実施例では、
図2に示す検出部35が整流部34を有する構成であり、現像ローラ7に流れる電流を整流しているが、この構成に限定されるものではなく、例えば検出部35が整流部34を持たない構成であってもよい。この場合、放電発生検出動作は、以下のように行ってもよい。
【0066】
例えば、検出部35は、現像ローラ7に印加する交流電圧の正側において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる第1の電流値、又は現像ローラ7に印加する交流電圧の負側において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる第2の電流値を検出する。そして、制御部であるCPU40は、現像ローラ7又は感光ドラム1が少なくとも1回転する時間において検出部35により検出された第1の電流値又は第2の電流値の最大値に応じた現像バイアス(Vpp)の下げ幅を決定する。CPU40は、検出した電流値が閾値以上である場合、下げ幅設定式を用いて前記電流値(最大電流値)に応じた下げ幅を決定し、現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅のVppに設定する。
【0067】
あるいは、制御部であるCPU40は、交流電圧の周期時間において検出部35により検出された前記第1の電流値を平均化した第1の平均値又は前記第2の電流値を平均化した第2の平均値を算出する。そして、CPU40は、前記算出した第1の平均値又は第2の平均値の最大値が閾値以上である場合、下げ幅設定式を用いる。下げ幅設定式により現像ローラ7又は感光ドラム1が少なくとも1回転する時間において前記算出した第1の平均値又は第2の平均値の最大値に応じた現像バイアス(Vpp)の下げ幅を決定する。そして、CPU40は、現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅のVppに設定する。
【0068】
このように構成しても、現像バイアス(Vpp)を、感光ドラム1と現像ローラ7との間を流れる電流値に応じた下げ幅のVppに設定することができる。またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0069】
本実施例においては、画像形成中のVppを制御したが、画像形成中のVppに限らず、Vppを印加するいかなるタイミングのVppでもよい。画像形成中のVppに限らず、いかなるタイミングでも、その時点のVppを現像ローラ7に印加して、感光ドラム1と現像ローラ7の間に流れる電流値が閾値以上である場合に、その電流値に応じたVppの下げ幅を下げ幅設定式を用いて決定する。そして、現像バイアスを下げ幅分だけ下げた値に決定することができる。この場合も、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0070】
また、本実施例では、
図7において、Vpp印加(
図7のステップS14)から感光ドラム1が1回転した後、電流値が閾値以上である場合に、下げ幅設定式を用いて前記電流値に応じたVppの下げ幅を決定(ステップS15~S16)する構成とした。しかし、これに限定されるものではない。例えば、感光ドラム1が1回転するのを待つことなく、検出した電流値が閾値以上である場合に、下げ幅設定式を用いて前記電流値に応じたVppの下げ幅を決定するようにしてもよい。このようにすることで、リークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間をさらに短縮することができる。
【0071】
また、本実施例では、Vcontが一定(Vcont=200V)の場合を例示して説明するが、これに限定されるものではなく、Vbackが一定(Vback=300V)の場合であっても、本発明は有効である。
【0072】
この場合(Vback=300Vの場合)、制御部であるCPU40は、最大電流値が閾値以上である際に、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)の設定を最大電流値の関数であるVpp下げ幅設定式に基づいて決定する(ステップS16)。具体的には、Vbackが一定(Vback=300V)の場合において、測定した電流値の最大電流値が2.1μA以上であった場合、リークが発生していると判断する。CPU40は本実施例におけるVpp下げ幅設定式 (下げ幅V)=142×(最大電流値μA)-320 を用いて現像バイアスVppの下げ幅を決定する。Vbackが一定の場合のVpp下げ幅設定式は、前述したVcontが一定の場合のVpp下げ幅設定式と同様に、SDギャップと気圧を変化させながら、Vppを1000Vから2500Vまで100V毎に変化させた際の最大電流値から実験的に求めた。測定した電流値の最大電流値が2.4μAであった場合、Vpp下げ幅設定式から下げ幅を21Vに決定する。
【0073】
このように、Vbackが一定の場合であっても、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の最大電流値に応じたVppの下げ幅を下げ幅設定式を用いて決定する。これにより、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、前記最大電流値に応じた、適切な下げ幅のVppに設定することができる。またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0074】
〔実施例2〕
図8及び
図9を用いて、実施例2に係る画像形成装置について説明する。なお、前述した実施例ではVpp下げ幅設定式を用いて現像バイアスVppの下げ幅を決定したが、本実施例では制御テーブルを用いて現像バイアスVppの下げ幅を決定する。そして、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)を、検出した電流値に応じた下げ幅のVppに設定する。
【0075】
本実施例では、
図8に示すように、CPU40が、第1のテーブルである制御テーブル41を参照して、検出された電流値の最大電流値から、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)の設定を決定する。第1のテーブルである制御テーブル41は、検出部35により検出された電流値から現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を制御する情報を有している。本実施例の制御テーブル41は、電流値に応じて、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを、前記電流値を検出する検出時に現像ローラ7に印加された交流電圧より小さい値にする下げ幅の設定値を有している。したがって、検出された電流値の最大電流値に応じて制御テーブル41からVppの下げ幅を決定し、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を前記電流値の検出時より小さく設定する場合に、前記下げ幅分だけ下げたVppに設定する。
【0076】
それ以外については前述した実施例1と同様である。そのため、本例では、上述した実施例1と同様な構成に関しては同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0077】
<放電発生検出動作のフローチャート>
次に
図9を用いて、実施例2に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れについて説明する。
【0078】
図9は、実施例1に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。以下に説明する放電発生検出動作は、制御部であるCPU40(
図8参照)により実行する。放電発生検出動作では、CPU40は、制御テーブル41を参照して、検出された電流値の最大電流値から、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)の設定を決定する。本実施例の制御テーブル41は、電流値に応じたVppの下げ幅の設定値を有している。したがって、CPU40は、検出された電流値の最大電流値に応じて制御テーブル41からVppの下げ幅を決定し、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、前記下げ幅分だけ下げたVppに設定する。なお、この放電発生検出動作は、気圧もしくは温湿度などの画像形成装置の設置環境が変化した時に実行する。あるいは、現像ローラ7又は感光ドラム1の駆動時間(例えばSDギャップが変化する可能性のある現像装置の通紙履歴や現像装置の交換のタイミング)に合わせて実行する。また、放電発生検出動作の実施タイミングは、前述の例に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0079】
まず、画像形成装置の電源がONされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU40の指示で、不図示の駆動機構により、感光ドラム1、現像ローラ7等の各回転体の回転が開始される(ステップS21)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加し、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する(ステップS22)。ステップS22から感光ドラム1が1回転する時間(T2)が経過することで(ステップS23)、感光ドラム1の表面が全周にわたって設定した表面電位(-500V)になる。次に、現像ローラ7に画像形成時の設定の交流電圧Vppを印加し、画像形成時のレーザ光量でレーザビームスキャナ6を発光し、感光ドラム1を露光する(ステップS24)。なお、本例では、Vcontが一定(Vcont=200V)の場合を例示して説明する。次に、
図3を用いて説明したように、前記設定した交流電圧Vppを現像ローラ7に印加した際に、現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流値を測定する(ステップS25)。このとき、現像ローラにVppを印加してから感光ドラム1が1回転する時間T2の期間、現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流値を測定し、その最大値を最大電流値とする。
【0080】
そして、制御部であるCPU40は、制御テーブル41から、前記測定した電流値の最大電流値に応じたVppの下げ幅を決定する(ステップS26)。具体的には、Vcontが一定(Vcont=200V)の場合において、測定した電流値の最大電流値が2.4μAであった場合、リークが発生している。そのため、CPU40は制御テーブル41(
図11参照)から、Vppの下げ幅を前記最大電流値である2.4μAに応じた100Vに決定する。なお、Vcontが一定(Vcont=200V)の場合において、測定した電流値の最大電流値が2.0μAであった場合、リークが発生していない。そのため、CPU40は制御テーブル41から、Vppの下げ幅を前記最大電流値である2.0μAに応じた0Vに決定する。そして、画像形成中の現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅のVppに決定する(ステップS27)。
【0081】
そして、現像バイアスと帯電バイアスをOFFし、その後、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動を停止させ(ステップS28)、放電発生検出動作を終了する(エンド)。
【0082】
以上から、本実施例によれば、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の最大電流値に応じたVppの下げ幅を制御テーブル41(
図12参照)から決定する。これにより、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、前記最大電流値に応じた、適切な下げ幅のVppに設定することができる。またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0083】
また、画像形成装置に対して複数の種類の違うプロセスカートリッジが装着可能なケースがある。そのような場合に、プロセスカートリッジによってVcontが異なっている場合がある。Vcontが異なっていると最大電流値による適切なVppの下げ幅は異なってくる。そのような場合には、それぞれのプロセスカートリッジのメモリタグに下げ幅の情報を有する制御テーブルを持たせることで、種類の違うプロセスカートリッジに対応することができる。もちろん、種類の違うプロセスカートリッジの判別が可能であって、複数の制御テーブルを画像形成装置が持っていてもよい。
【0084】
なお、本実施例に記載されているSDギャップ、帯電バイアス、現像バイアス、電流値の閾値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0085】
また本実施例では、交流電圧の10周期の時間において検出部35から出力された電流値を平均化した平均値を算出する構成を例示したが、交流電圧の周期時間Tはこれに限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0086】
また本実施例では、感光ドラム1が1回転する時間の期間において測定した電流値の最大電流値に基づいてVppを決定する構成を例示したが、このVppを決定する期間はこれに限定されるものではない。感光ドラム1が複数回転する時間であってもよいし、現像ローラ7が回転する時間であってもよい。また、感光ドラム1又は現像ローラ7が1回転し終わる前に測定した電流値から下げ幅を決定するようにしてもよい。しかし、感光ドラム1と現像ローラ7との間の距離(SDギャップ)は現像ローラ7と感光ドラム1の回転周期で変動するため、現像ローラ7又は感光ドラム1のうち1回転する時間が長い方を回転させる方が好ましい。また、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定に要する時間を短縮する目的から、現像ローラ7又は感光ドラム1を回転させる時間は短い方が好ましい。
【0087】
また本実施例では、感光ドラム1が1回転する時間の期間において測定した電流値の最大電流値に基づいてVppの下げ幅を決定する構成を例示したが、これに限定されるものではない。感光ドラム1が1回転する時間の期間において測定した電流値を平均化した平均値を出力し、その出力値(電流値)に応じてVppの下げ幅を決定する構成としてもよい。このように構成しても、現像バイアス(Vpp)を、感光ドラム1と現像ローラ7との間を流れる電流値に応じた下げ幅のVppに設定することができ、またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0088】
また本実施例では、
図2に示す検出部35が整流部34を有する構成であり、現像ローラ7に流れる電流を整流しているが、この構成に限定されるものではなく、例えば検出部35が整流部34を持たない構成であってもよい。この場合、放電発生検出動作は、以下のように行ってもよい。
【0089】
例えば、検出部35は、現像ローラ7に印加する交流電圧の正側において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる第1の電流値、又は現像ローラ7に印加する交流電圧の負側において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる第2の電流値を検出する。そして、制御部であるCPU40は、現像ローラ7又は感光ドラム1が少なくとも1回転する時間において検出部35により検出された第1の電流値の最大値又は第2の電流値の最大値に応じて現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)の下げ幅を決定する。CPU40は、制御テーブル41から電流値(最大電流値)に応じた下げ幅を決定し、現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅のVppに設定する。
【0090】
あるいは、制御部であるCPU40は、交流電圧の周期時間において検出部35により検出された前記第1の電流値を平均化した第1の平均値又は前記第2の電流値を平均化した第2の平均値を算出する。そして、CPU40は、制御テーブル41から、現像ローラ7又は感光ドラム1が少なくとも1回転する時間において前記算出した第1の平均値の最大値、又は第2の平均値の最大値に応じて現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)の下げ幅を決定する。そして、CPU40は、現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅のVppに設定する。
【0091】
このように構成しても、現像バイアス(Vpp)を、感光ドラム1と現像ローラ7との間を流れる電流値に応じた下げ幅のVppに設定することができる。またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0092】
本実施例においては、画像形成中のVppを制御したが、画像形成中のVppに限らず、Vppを印加するいかなるタイミングのVppでもよい。画像形成中のVppに限らず、いかなるタイミングでも、その時点のVppを現像ローラ7に印加して、感光ドラム1と現像ローラ7の間に流れる電流値に応じたVppの下げ幅を制御テーブルから決定する。そして、現像バイアスを下げ幅分だけ下げた値に決定することができる。この場合も、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0093】
また、本実施例では、
図9において、Vpp印加(
図7のステップS24)から感光ドラム1が1回転した後に、前記最大電流値に応じたVppの下げ幅を制御テーブル41から決定(ステップS25~S26)する構成とした。しかし、これに限定されるものではない。例えば、感光ドラム1が1回転するのを待つことなく、検出した電流値に応じたVppの下げ幅を制御テーブル41から決定するようにしてもよい。このようにすることで、リークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間をさらに短縮することができる。
【0094】
また本実施例では、測定した電流値に応じた下げ幅に設定し、制御テーブル41から前記電流値に応じた下げ幅の現像バイアス(Vpp)に設定する構成を例示したが、これに限定されるものではない。測定した電流値を閾値と比較して、下げ幅を設定するか否かを決定し、下げ幅を設定する場合には制御テーブル41から前記電流値に応じた下げ幅の現像バイアス(Vpp)に設定する構成としてもよい。具体的には、CPU40は、前記電流値が閾値以上である場合に、前記電流値に応じた下げ幅を決定し、現像ローラ7に印加する交流電圧を、前記下げ幅の分、前記電流値を検出する検出時に現像ローラ7に印加された交流電圧より小さい値に設定する。また、CPU40は、前記電流値が閾値未満である場合に、現像ローラ7に印加する交流電圧の設定を変更しない。このように構成しても、現像バイアス(Vpp)を、感光ドラム1と現像ローラ7との間を流れる電流値に応じた下げ幅のVppに設定することができる。またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0095】
〔実施例3〕
図10を用いて、実施例3に係る画像形成装置について説明する。なお、前述した実施例では感光ドラム1の露光領域と現像ローラ7の間に流れる電流値を検出したが、本実施例では感光ドラム1の非露光領域と現像ローラ7との間に流れる電流値を検出する。そして、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)を、検出した電流値に応じた下げ幅のVppに設定する。それ以外については前述した実施例1と同様である。従って、本例では、上述した実施例1と同様な構成に関しては同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0096】
<放電発生検出動作のフローチャート>
次に
図10を用いて、実施例3に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れについて説明する。
【0097】
図10は、実施例3に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。以下に説明する放電発生検出動作では、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)を、感光ドラム1の非露光領域と現像ローラ7との間に流れる電流値に応じた下げ幅のVppに設定する。この放電発生検出動作は、制御部であるCPU40(
図2参照)により実行する。なお、この放電発生検出動作は、気圧もしくは温湿度などの画像形成装置の設置環境が変化した時に実行する。あるいは、現像ローラ7又は感光ドラム1の駆動時間(例えばSDギャップが変化する可能性のある現像装置の通紙履歴や現像装置の交換のタイミング)に合わせて実行する。また、放電発生検出動作の実施タイミングは、前述の例に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0098】
まず、画像形成装置の電源がONされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU40の指示で、不図示の駆動機構により、感光ドラム1、現像ローラ7等の各回転体の回転が開始される(ステップS31)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加し、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する(ステップS32)。ステップS32から感光ドラム1が1回転する時間(T2)が経過することで(ステップS33)、感光ドラム1の表面が全周にわたって設定した表面電位(-600V)になる。なお、本例では、Vbackが一定(Vback=300V)の場合を例示して説明する。次に、現像ローラ7に画像形成時の設定の交流電圧Vppを印加する(ステップS34)。次に、
図3を用いて説明したように、前記設定した交流電圧Vppを現像ローラ7に印加した際に、現像ローラ7と感光ドラム1の非露光領域との間に流れる電流値を測定する(ステップS35)。このとき、現像ローラにVppを印加してから感光ドラム1が1回転する時間T2の期間、現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流値を測定し、その最大値を最大電流値と
する。
【0099】
そして、制御部であるCPU40は、制御テーブル41(
図8、
図11参照)から、前記測定した電流値の最大電流値に応じたVppの下げ幅を決定する(ステップS36)。
図11は実施例3におけるVppの下げ幅の情報を有する制御テーブルを示す表図である。例えば、Vbackが一定(Vback=300V)の場合において、測定した電流値の最大電流値が2.4μAであった場合、リークが発生している。そのため、CPU40は制御テーブル41から、Vppの下げ幅を前記最大電流値である2.4μAに応じた20Vに決定する。なお、Vbackが一定(Vback=300V)の場合において、測定した電流値の最大電流値が2.0μAであった場合、リークが発生していない。そのため、CPU40は制御テーブル41から、Vppの下げ幅を前記最大電流値である2.0μAに応じた0Vに決定する。そして、画像形成中の現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅のVppに決定する(ステップS37)。
【0100】
そして、現像バイアスと帯電バイアスをOFFし、その後、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動を停止させ(ステップS38)、放電発生検出動作を終了する(エンド)。
【0101】
以上から、本実施例によれば、感光ドラム1の非露光領域と現像ローラ7との間に流れる電流値の最大電流値に応じたVppの下げ幅を制御テーブル41(
図8、
図11参照)か決定する。これにより、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、前記最大電流値に応じた、適切な下げ幅のVppに設定することができる。またリークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0102】
もちろん、感光ドラム1の露光領域と非露光領域のどちらでリークするか決定できない場合等は、感光ドラム1の露光領域と非露光領域の両方の場合においてリーク電流値を測定し、Vppの下げ幅の大きい方を採用すればよい。
【0103】
なお、本実施例に記載されているSDギャップ、帯電バイアス、現像バイアス、電流値の閾値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0104】
〔実施例4〕
実施例4に係る画像形成装置について説明する。なお、本例では、実施例1に対してプロセスカートリッジ20の寿命の中でVcontが変化する場合を例示している。すなわち、実施例4では、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、最大電流値およびVcontに応じた、適切な下げ幅のVppに設定する。それ以外については実施例1とほぼ同様である。従って、本例では、上述した実施例1と同様な構成に関しては同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0105】
実施例4においては、プロセスカートリッジ20の寿命を通じてレーザビームスキャナ6のレーザ光量を調整することで、印刷濃度を均一に保つ制御を行っている。印刷濃度が変化する要因としては、感光ドラム1の膜厚変化や感度変化、トナーの帯電性の変化等がある。当然のことながらレーザビームスキャナ6のレーザ光量や感光ドラム1の膜厚変化や感度変化によってVcontが変化する。
【0106】
実施例1で説明したように、最大電流値は、交流電圧と直流電圧を重畳させた現像バイアスの電界および感光ドラム1と現像ローラ7の材質によって変化する。そのため、リーク検出された際に、VcontとVppと最大電流値から、現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)の最適な下げ幅を判断し、制御する必要がある。
【0107】
本実施例においては、リークが発生しないかぎり、Vppはプロセスカートリッジ20の寿命を通じて一定である。そのため、CPU40は、Vcontと最大電流値の2変数から、
図12に示す制御テーブル41を用いて、最適なVppの下げ幅を決定する。
図12は実施例4におけるVppの下げ幅の情報を有する制御テーブルを示す表図である。例えば、Vcontが200Vであって、測定した電流値の最大電流値が2.4μAであった場合、リークが発生している。そのため、CPU40は制御テーブル41から、Vppの下げ幅を前記Vcont及び前記最大電流値に応じた100Vに決定する。あるいは、Vcontが100Vであって、測定した電流値の最大電流値が2.8μAであった場合、リークが発生している。そのため、CPU40は制御テーブル41から、Vppの下げ幅を前記Vcont及び前記最大電流値に応じた100Vに決定する。なお、
図12に示す制御テーブル41には図示していないが、Vcontが100V未満であって、測定した電流値の最大電流値が2.4μA未満であった場合、リークが発生していない。そのため、CPU40は制御テーブル41から、Vppの下げ幅を前記Vcont及び前記最大電流値に応じた0Vに決定する。Vcontは、感光ドラム1の膜厚予測値とレーザビームスキャナ6のレーザ発光量によって決定している。もちろん、Vcontを感光ドラム1の表面電位を計る測定器によって測定した値から決定してもよいし、本実施例と別の方法によってVcontを予測してもよいし、Vcontと関係のあるパラメータを使って代替してもよい。Vcontの予測や代替に使えるパラメータとしては、感光ドラム1の表面電位、現像バイアス、帯電バイアス、ドラム膜厚、レーザ発光量、印刷枚数、前露光量等である。Vcontとリーク電流値によって下げるべき適切なVppの下げ幅は、設計者が装置設計時に実験等を行って決定する。またVppの下げ幅の情報を有する制御テーブルではなく、あらかじめ作成したVcontと最大電流値の関係式を用いてVppの下げ幅を算出するようにしてもよい。
【0108】
本実施例によれば、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値(最大電流値)とVcontを用いて、Vppの下げ幅を決定する。これにより、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、最大電流値およびVcontに応じた、適切な下げ幅のVppに設定することができる。また現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)の設定に要する時間を短縮することができる。
【0109】
なお、本実施例では、実施例1に対してVcontが変化する場合を例示した。すなわち、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、最大電流値およびVcontに応じた、適切な下げ幅のVppに設定する構成を例示した。しかし、これに限定されるものではなく、実施例1に対してVbackが変化する場合であってもよい。この場合、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、最大電流値およびVbackに応じた、適切な下げ幅のVppに設定する。このように構成しても、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)の設定に要する時間を短縮することができる。
【0110】
〔実施例5〕
実施例5に係る画像形成装置について説明する。本実施例は、感光ドラム1と現像ローラ7間の電流値の出力値の最大値と最小値の差である電流値の変化量を用いて閾値との比較(リークの判断)を行う。そして、電流値の変化量が閾値以上である場合、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、電流の変化量に応じた、適切な下げ幅のVppに設定する。それ以外については実施例1とほぼ同様である。従って、本例では、上述した実施例1と同様な構成に関しては同符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0111】
<リーク電流の検出の説明>
図3及び
図13(b)を用いて、検出部35によるリーク電流の検出(放電検出)について説明する。なお、
図3を用いた説明は、実施例1において説明したので、ここでは省略する。
図13(b)は実施例4における交流電圧と電流値の変化量(交流電圧の最大値と最小値の差)の関係図である。
【0112】
本実施例では現像ローラ7が1回転するまでの時間157ms(時間T1)に対して感光ドラム1が1回転するまでの時間314ms(時間T2)の方が長い。そのため、制御部であるCPU40は、1回転する時間が長い方である感光ドラム1が1回転する時間T2における電流値の出力値(平均値)の最大値と最小値の差である電流値の変化量を用いて所定値である閾値との比較を行う。
【0113】
図13(b)は交流電圧のピーク間電圧Vppを変化させたときの前記電流値の出力値の最大値と最小値の差分である電流値の変化量をプロットしている。
図13(b)の横軸は現像ローラ7に印加する交流電圧のピーク間電圧Vpp、縦軸は感光ドラム1が1回転する時間における電流値(出力値)の最大値と最小値の差分である電流値の変化量を示している。測定条件としては、不図示の駆動機構により、感光ドラム1と現像ローラ7を駆動させる。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加して感光ドラム1の表面電位を-500Vにし、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する。次に、交流電圧印加部31によって現像ローラ7に交流電圧のピーク間電圧Vppを印加する。このとき、交流電圧のピーク間電圧Vppを0Vから所定の時間間隔(ここでは1s)で200Vずつ段階的に増加させ、各Vppにおける電流値の最大値と最小値をそれぞれプロットする。この各Vppにおける電流値の最大値と最小値の差が電流値の変化量である。現像バイアスにおけるVppを段階的に増加させると、リーク未発生時の電流値の変化量に対して、リーク発生タイミングで電流値の変化量が急激に増加する。すなわち、電流値の変化量が所定の値である閾値未満ではリークは発生しないが、閾値以上であるとリークが発生することがわかる。
【0114】
以上のことから、制御部であるCPU40は、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる前記電流値の変化量から、所定の交流電圧Vppにおけるリーク発生の有無を検知することができる。
【0115】
次に
図13(a)及び
図13(b)を参照して、比較例2と本実施例の交流電圧のピーク間電圧と電流値の変化量の関係を説明する。
図13(a)は比較例2における交流電圧のピーク間電圧と電流値の変化量の関係を示す図である。
図13(b)は実施例における交流電圧のピーク間電圧と電流値の変化量の関係を示す図である。
【0116】
比較例2の構成は、感光ドラム1と現像ローラ7との間の電流値の絶対値を、交流電圧の周期時間Tの期間積算した値が出力値となっている。横軸は交流電圧のピーク間電圧、縦軸は前記出力値である。測定条件としては、不図示の駆動機構により、感光ドラム1と現像ローラ7を駆動させる。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加して感光ドラム1の表面電位を-500Vにし、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する。次に、交流電圧印加部31によって現像ローラ7に交流電圧のピーク間電圧Vppを印加する。このとき、Vppを0Vから徐々に増加させ、Vppと電流値の出力値の関係をプロットする。
図13(a)では、放電開始電圧Vpp未満の電圧であっても、電流値である出力値が電圧Vppに比例して増加しているのがわかる。
【0117】
放電開始電圧未満の電圧Vppにおける出力値の傾きは、感光ドラム1と現像ローラ7間のインピーダンスによって決まるため、SDギャップなどによって変化する。そのため、キャップ7bの部品のバラつきや耐久による摩耗で出力値がばらつく。よって、使用状況でキャップ7bの摩耗や部品のバラつきなどによるSDギャップの変動に対して、リーク発生の電流値を正確に算出することができない。実施例1においては、SDギャップの最大ばらつきは100μmであり、5%の電流値差に収まっているが、さらにSDギャップのばらつきが大きい場合や、プロセスカートリッジ20のインピーダンスが小さい場合が考えられる。そのような場合、リークの発生の有無を正確に判断するためには、リークが発生しない電圧Vppを用いて感光ドラム1と現像ローラ7間のインピーダンスを求める必要がある。リーク検出にはリークが発生しない電圧Vppでインピーダンス測定をする必要があるため、リーク発生を検知するのに時間がかかる。
【0118】
一方、本実施例の構成では、感光ドラム1が1回転する時間T2における電流値の出力値(平均値)の最大値と最小値の差である電流値の変化量を用いてリーク発生の有無の判断を行う。
図13(b)に示すように、放電開始電圧Vpp未満の電圧では、電流値の変化量がほぼ変化していないことがわかる。そして、電圧Vppが放電開始電圧Vpp以上であると、電流値の変化量は急激に増加していくのがわかる。すなわち、電流値の変化量が所定の値である閾値未満(放電開始電圧Vpp未満)ではリークは発生しないが、閾値以上であるとリークが発生することがわかる。よって、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の変化量から現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)を決定することで、SDギャップの変動などによる電流値のバラつきを取り除くことができる。そのため、本実施例では、感光ドラム1と現像ローラ7間のインピーダンス測定をすることなく、任意の印加電圧において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の変化量から現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)を決定することができる。よって、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧)の設定に要する時間を短縮することができる。
【0119】
さらに前記電流値の変化量が前記閾値以上である場合(リーク発生を検知した場合)には、電流値の出力値の最大値と最小値の差である電流値の変化量を用いてVppの最適な下げ幅を決定することができる。これは電流値が最大値であろうと最小値であろうと、火花放電が発生する条件下では、Vppと最大リーク電流値の傾きは、現像ローラ7と感光ドラム1間の電界変化そのものと、現像ローラ7と感光ドラム1の材質によって決まるからである。本実施例では、実施例1に対して、SDギャップ変化によるインピーダンスの変化分も相殺できる分、より最適なVpp下げ幅を設定することができる。
【0120】
<放電発生検出動作の交流電圧の設定>
次に
図14に基づき、実施例4に係る画像形成装置の放電発生検出動作時の各印加電圧のタイミングについて比較例と比較して説明する。
図14(a)は比較例2における放電発生検出時の交流電圧Vppの設定とリーク電流に対するタイミングチャートであり、
図14(b)は実施例における放電発生検出時の交流電圧Vppの設定とリーク電流に対するタイミングチャートである。
【0121】
図14(a)が比較例2の構成であり、
図14(b)が実施例4の構成である。
図14(a)に示す比較例2の構成では、
図14(b)に示す実施例4の構成に対して、まず感光ドラム1と現像ローラ7間のインピーダンスを測定する測定時間が必要となる。感光ドラム1と現像ローラ7の間のインピーダンスは、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動によるSDギャップの変動によって変化する。そのため、感光ドラム1が1回転するまでの時間T2の期間、感光ドラム1と現像ローラ7間に流れる電流を測定し、SDギャップが最も狭いタイミングで最大値となる電流値を用いて、インピーダンスを求める。その後の動作としては本実施例と同様のタイミングであるため、
図14(b)で説明する。
図14(b)の放電発生検出動作時の電圧Vppは、画像形成時の電圧Vppを基に決められている。画像形成時の電圧Vppは、初期設定として1.8kVに設定している。電圧Vppが1.8kVを超えると記録媒体10の白地部にトナーが現像されてしまう、いわゆる地かぶりが悪化するため、電圧Vppの上限は1.8kVに設定している。
【0122】
放電発生検出時の電圧Vppとしては、通紙中の温湿度の変化やSDギャップの変動で、放電開始電圧が変化することを考慮し、初期の放電発生検出動作時の電圧Vppは1.8kVに、オフセット値200Vを足した2.0kVとしている。すなわち、閾値との比較を行う際に現像ローラ7に印加する交流電圧Vppは、画像形成中に現像ローラ7に印加する交流電圧(ここでは1.8kV)より高い交流電圧(ここでは2.0kV)である。CPU40は、初期の放電発生検出時の電圧Vppを2.0kVとした場合の、電流値の出力値(平均値)から感光ドラム1と現像ローラ7間の電流値の変化量が閾値未満であると判断した場合、画像形成中の電圧Vppは変更しない。一方、CPU40は、感光ドラム1と現像ローラ7間の電流値の変化量が閾値以上であると判断した場合には、電流値の変化量から最適な電圧Vppの下げ幅を決定できる。
【0123】
電流値の検出時の初期条件の電圧Vppで電流値の変化量が閾値未満であると判断された場合も閾値以上であると判断された場合も、双方でリーク発生の有無の判断が終了するため、最短の1条件で電圧Vppの設定が終了する。一方、電圧Vppを徐々に上げる従来の構成は、確実にリークが発生しない電圧Vppから徐々に電圧Vppを増加させる。そのため、確実に電流値の変化量が閾値未満となる電圧Vppと画像形成で使用したい電圧Vppの少なくとも2条件以上の電圧Vppで閾値との比較を行う必要がある。以上のことから、本実施例のように、電流値の変化量からリーク発生時のVppの下げ幅を決定する構成を採用することで、リークの発生しない現像バイアス(電流値の変化量が閾値未満となる現像バイアス)の設定に要する時間を短縮することができる。
【0124】
<放電発生検出動作のフローチャート>
次に
図15を用いて、実施例4に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れについて説明する。
【0125】
図15は、実施例4に係る画像形成装置の放電発生検出動作の制御の流れの一例を示すフローチャートである。以下に説明する放電発生検出動作では、制御部であるCPU40(
図2参照)により実行する。放電発生検出動作では、CPU40は、制御テーブル41を参照して、電流値の変化量から、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)の設定を決定する。本実施例の制御テーブル41は、電流値の変化量に応じたVppの下げ幅の設定値を有している。したがって、CPU40は、電流値の変化量に応じて制御テーブル41からVppの下げ幅を決定し、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、前記下げ幅分だけ下げたVppに設定する。なお、この放電発生検出動作は、気圧もしくは温湿度などの画像形成装置の設置環境が変化した時に実行する。あるいは、現像ローラ7又は感光ドラム1の駆動時間(例えばSDギャップが変化する可能性のある現像装置の通紙履歴や現像装置の交換のタイミング)に合わせて実行する。また、放電発生検出動作の実施タイミングは、前述の例に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0126】
まず、画像形成装置の電源がONされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU40の指示で、不図示の駆動機構により、感光ドラム1、現像ローラ7等の各回転体の駆動が開始される(ステップS41)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加し、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する(ステップS42)。ステップS42から感光ドラム1が1回転する時間(T2)が経過することで(ステップS43)、感光ドラム1の表面が全周にわたって設定した表面電位(-500V)になる。次に、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを設定する。通紙中の温湿度の変化やSDギャップの変動を考慮し、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを画像形成時の設定よりオフセット値分だけ高い交流電圧Vppに設定する(ステップS44)。ここでは、現像ローラ7に印加する交流電圧を、画像形成時の交流電圧より200V高い交流電圧Vppに設定する。次に、
図13(b)を用いて説明したように、前記設定した交流電圧Vppを現像ローラ7に印加した際に、現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流値の変化量が所定値である閾値以上であるかどうかを判断する(ステップS45)。本実施例では閾値を1μAとしている。ここで、電流値の変化量は、感光ドラム1が1回転する時間T2において検出部35により検出された電流値の出力値(平均値)の最大値と最小値の差である。
【0127】
そしてステップS45で前記電流値の変化量が前記閾値以上である場合、感光ドラム1と現像ローラ7との間にリークが発生している。そのため、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を前記電流値の検出時より小さく設定する必要がある。そこで、制御部であるCPU40は、制御テーブル41から、前記電流値の変化量に応じたVppの下げ幅を決定する(ステップS46)。そして、画像形成中の現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅分だけ下げた値に決定する(ステップS48)。
【0128】
一方、ステップS45で前記電流値の変化量が前記閾値未満である場合、Vppを印加してから感光ドラム1が1回転する時間T2の期間、ステップS45を繰り返す(ステップS47)。前記期間において電流値の変化量が閾値未満である場合、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を前記電流値の検出時より小さく設定する必要がない。そのため、制御部であるCPU40は、前記Vppの下げ幅を設定しない。すなわち、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を変更せず、前記電流値の検出時の現像バイアスを画像形成中の現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)として決定する(ステップS48)。
【0129】
そして、現像バイアスと帯電バイアスをOFFし、その後、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動を停止させ(ステップS49)、放電発生検出動作を終了する(エンド)。
【0130】
以上から、本実施例によれば、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の最大値と最小値の差である電流値の変化量に応じたVppの下げ幅を制御テーブル41(
図8参照)から決定する。これにより、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、電流値の変化量に応じた、適切な下げ幅のVppに設定することができる。またリークの発生しない現像バイアス(電流値の変化量が閾値未満となる現像バイアス)の設定に要する時間を短縮することができる。
【0131】
なお、本実施例に記載されているSDギャップ、帯電バイアス、現像バイアス、電流値の閾値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0132】
また本実施例では、感光ドラム1が1回転する時間の期間において、電流値の変化量を用いた閾値との比較を行う構成を例示したが、閾値との比較を行う期間はこれに限定されるものではない。感光ドラム1が複数回転する時間であってもよいし、現像ローラ7が回転する時間であってもよい。また、感光ドラム1又は現像ローラ7が1回転し終わる前に閾値との比較を終えるようにしてもよい。しかし、感光ドラム1と現像ローラ7との間の距離(SDギャップ)は現像ローラ7と感光ドラム1の回転周期で変動するため、現像ローラ7又は感光ドラム1のうち1回転する時間が長い方を回転させる方が好ましい。また、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定に要する時間を短縮する目的から、現像ローラ7又は感光ドラム1を回転させる時間は短い方が好ましい。
【0133】
また本実施例では、
図2に示す検出部35が整流部34を有する構成であり、現像ローラ7に流れる電流を整流しているが、この構成に限定されるものではなく、例えば検出部35が整流部34を持たない構成であってもよい。この場合、放電発生検出動作は、以下のように行ってもよい。
【0134】
例えば、検出部35は、現像ローラ7に印加する交流電圧の正側において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる第1の電流値、又は現像ローラ7に印加する交流電圧の負側において感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる第2の電流値を検出する。そして、CPU40は、現像ローラ7又は感光ドラム1が少なくとも1回転する時間において検出部35により検出された前記第1の電流値の最大値と最小値の差又は前記第2の電流値の最大値と最小値の差に応じて現像バイアス(Vpp)の設定を決定する。CPU40は、最大値と最小値の差である前記第1の電流値の変化量又は前記第2の電流値の変化量が閾値以上である場合、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定を電流値の検出時より下げる。このとき、CPU40は、制御テーブル41から前記第1の電流値の変化量又は前記第2の電流値の変化量に応じた下げ幅を決定し、現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅分だけ下げた値に決定する。また、CPU40は、前記第1の電流値の変化量又は前記第2の電流値の変化量が閾値未満である場合、前記下げ幅を設定せず、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定を変更しない。
【0135】
あるいは、制御部であるCPU40は、交流電圧の周期時間において検出部35により検出された前記第1の電流値を平均化した第1の平均値又は前記第2の電流値を平均化した第2の平均値を算出する。そして、CPU40は、現像ローラ7又は感光ドラム1が少なくとも1回転する時間において前記算出した第1の平均値の最大値と最小値の差、又は第2の平均値の最大値と最小値の差に応じて現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)の設定を決定する。CPU40は、最大値と最小値の差である前記第1の平均値の変化量又は前記第2の平均値の変化量が閾値以上である場合、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定を電流値の検出時より下げる。このとき、CPU40は、制御テーブル41から前記第1の平均値の変化量又は前記第2の平均値の変化量に応じた下げ幅を決定し、現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅分だけ下げた値に決定する。また、CPU40は、前記第1の平均値の変化量又は前記第2の平均値の変化量が閾値未満である場合、前記下げ幅を設定せず、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定を変更しない。
【0136】
このように構成しても、現像バイアス(Vpp)を、感光ドラム1と現像ローラ7との間を流れる電流値の変化量に応じた下げ幅のVppに設定することができる。また、リークの発生しない現像バイアス(電流値が閾値未満となる現像バイアス)の設定に要する時間を短縮することができる。
【0137】
本実施例においては、画像形成中のVppを測定したが、画像形成中のVppに限らず、Vppを印加するいかなるタイミングのVppでもよい。本実施例では、リーク検知時に、画像形成時の設定より高いVppを現像ローラ7に印加して(
図15のステップS44)、感光ドラムと現像ローラの間に流れる電流値の変化量を閾値と比較(
図15のステップS45)したが、これに限定されるものではない。例えば、現像ローラに印加するVppを高くすることなく、その時点で設定されているVppを現像ローラに印加して、感光ドラムと現像ローラの間に流れる電流値を閾値と比較してもよい。このようにすることで、画像形成中のVppに限らず、いかなるタイミングでも、その時点のVppを現像ローラに印加して、感光ドラムと現像ローラの間に流れる電流値の変化量を閾値と比較することができる。この場合、現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定に要する時間をさらに短縮することができる。
【0138】
また、本実施例では、
図15において、電流値の変化量が閾値以上であるならリークが発生したと判断(ステップS45)したが、これに限定されるものではない。例えば、Vpp印加(
図15のステップS44)から感光ドラム1が1回転した(
図15のステップS47)後に、電流値の変化量が閾値以上であるか判断(
図15のステップS45)してもよい。このようにすることで、前述した実施例よりも現像ローラ7に印加する現像バイアスの設定に要する時間はかかるものの、従来より前述の時間を短縮することができる。また、突発的なノイズによる電流変化と、感光ドラムと現像ローラとの間のギャップの変化に起因するリークによる電流変化の区別をすることができ、より精度の高い検知を行うことができる。
【0139】
〔実施例6〕
実施例6に係る画像形成装置について説明する。本実施例は、実施例5に対してリークの検知を行った後、Vcont、Vbackが変更された際に、現像バイアス(Vpp)を感光ドラム1と現像ローラ7間の電流値に応じた最適な値にする点で異なっている。それ以外については実施例1とほぼ同様である。従って、本例では、上述した実施例5と同様な構成に関しては同符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0140】
実施例5にて説明したように、電流値の変化量が閾値以上であるか否かを判断して現像バイアス(Vpp)を設定する。しかし、前記現像バイアスの設定後に、VcontやVbackを変更する動作(たとえば文字の濃度を変える等)が行われた場合、リークの発生や画像が悪化する可能性がある。そのため、変更が行われたVcontやVbackに応じて最適な現像バイアス(Vpp)に変更する必要がある。この時、変更した現像バイアス(Vpp)が
図4に示す放電開始Vppより高い場合、リークの発生や地かぶりが悪化し、低い場合には現像性が悪化する。そこで、本実施例では、前記現像バイアスの設定後に、VcontやVbackを変更する動作(たとえば文字の濃度を変える等)が行われた場合に、VcontやVbackに応じて最適な現像バイアス(Vpp)に変更する。以下、説明する。
【0141】
<VcontとVbackにおけるリーク限界のVpp>
VcontとVbackにおけるリーク限界のVppを
図16を用いて説明する。
図16(a)はVcontを変化させたときのリーク限界のVppをプロットしており、横軸にVcont、縦軸にリーク限界のVppを示す。
図16(b)はVbackを変化させたときのリーク限界のVppをプロットしており、横軸にVback、縦軸にリーク限界のVppを示す。
【0142】
測定条件としては、不図示の駆動機構により、感光ドラム1と現像ローラ7を駆動させる。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加して感光ドラム1の表面電位を-500Vにし、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する。次に、交流電圧印加部31によって現像ローラ7に交流電圧のピーク間電圧Vppを印加する。このとき交流電圧のピーク間電圧Vppを1000Vから所定の時間間隔(ここでは1s)で10Vずつ段階的に増加させ、リーク限界のVppを測定した。この測定はVcontとVbackの片方ずつ100V毎に変化させて、リーク限界のVppの関係をプロットした。その時のリーク限界の検出方法は実施例5で説明したため、ここでは省略する。
【0143】
それぞれ、Vcont、Vbackが増えるに従いリーク限界のVppが減少しており、それぞれのグラフは異なるものになっている。異なる理由として現像ローラ7と感光ドラム1で起こる火花放電の方向がVcontとVbackで逆の方向で起こっており、それぞれ現像ローラ7と感光ドラム1の部材の影響を受けるためである。
【0144】
<Vpp設定テーブル>
リーク限界のVppは、VcontとVbackが変化すると変わっていく。そのため、VcontとVbackが変化した際に、VcontとVbackとリーク限界のVppから最適なVppを判断し、設定する必要がある。
【0145】
本実施例では、CPU40が、第2のテーブルである
図17に示すVpp設定テーブルを用いて、VcontとVbackの2変数から最適なVpp設定値を設定している。
図17は本実施例におけるVpp設定テーブルを示す表図である。第2のテーブルであるVpp設定テーブルは、
図17に示すように、VcontもしくはVbackの変更に応じた、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppの情報を有している。例えば、
図17示すVpp設定テーブルによれば、Vcontが400Vに変更され、Vbackが200Vに変更された場合、CPU40はVpp設定テーブルから、前記交流電圧Vppを前記Vcont及び前記Vbackに応じた1810Vに決定する。あるいは、Vcontが400Vに変更され、Vbackが変更されなかった場合、CPU40はVpp設定テーブルから、前記交流電圧Vppを前記Vcont及び前記Vbackに応じた2030Vに決定する。なお、Vcont及びVbackが変更されなかった場合、CPU40はVpp設定テーブルから、前記交流電圧Vppを前記Vcont及び前記Vbackに応じた2140Vに決定する。
図17に示すVpp設定テーブルを用いてVppを変更した場合と、前記設定テーブルを用いずにVppを変更しない場合を
図18に示す。
図18のグラフはVbackを一定の条件(ここでは100V)に固定しVcontの条件を変化させた時のグラフである。実線はリーク限界、点線は実施例5、二重線は本実施例を示す。
【0146】
Vcontが400Vの時、点線で示す実施例5の場合は実線で示すリーク限界を超えてリークが発生しているのに対し、二重線で示す本実施例の場合は実線で示すリーク限界以下となり、リークが発生していなかった。
【0147】
このようにVpp設定テーブルを使用することにより、電流値の変化量と閾値との比較から現像バイアスを設定した後に、VcontやVbackが変更されたとしても最適な現像バイアス(Vpp)に設定することが可能となる。
【0148】
このVppの設定テーブルの情報は、プロセスカートリッジ20のメモリタグ、もしくは画像形成装置の装置本体Mが持っていてもよい。
【0149】
<放電発生検出動作のフローチャート>
次に
図19に基づき、実施例6に係る画像形成装置の放電発生検出動作とVcont、Vbackが変更された時のVppの制御の流れについて説明する。
【0150】
図19は、実施例6に係る画像形成装置の放電発生検出動作とVcont、Vbackが変更された時のVppの制御の流れの一例を示すフローチャートである。以下に説明する放電発生検出動作は、制御部であるCPU40(
図2参照)により実行する。本実施例に係る放電発生検出動作では、電流値の変化量から現像バイアスが設定された後に、Vcont、Vbackが変更された時のVppの制御の流れが、前述した実施例と異なる。なお、この放電発生検出動作は、気圧もしくは温湿度などの画像形成装置の設置環境が変化した時に実行する。あるいは、現像ローラ7又は感光ドラム1の駆動時間(例えばSDギャップが変化する可能性のある現像装置の通紙履歴や現像装置の交換のタイミング)に合わせて実行する。また、放電発生検出動作の実施タイミングは、前述の例に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0151】
まず、画像形成装置の電源がONされ、放電発生検出動作が開始されると(スタート)、CPU40の指示で、不図示の駆動機構により、感光ドラム1、現像ローラ7等の各回転体の回転が開始される(ステップS51)。この各回転体の駆動は、放電発生検出動作が終了するまで継続する。次に、帯電ローラ4に帯電バイアスを印加し、直流電圧印加部30によって現像ローラ7に直流電圧-300Vを印加する(ステップS52)。ステップS52から感光ドラム1が1回転する時間(T2)が経過することで(ステップS53)、感光ドラム1の表面が全周にわたって設定した表面電位(-500V)になる。次に、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを設定する。通紙中の温湿度の変化やSDギャップの変動を考慮し、現像ローラ7に印加する交流電圧Vppを画像形成時の設定よりオフセット値分だけ高い交流電圧Vppに設定する(ステップS54)。ここでは、現像ローラ7に印加する交流電圧を、画像形成時の交流電圧より200V高い交流電圧Vppに設定する。次に、
図13(b)を用いて説明したように、前記設定した交流電圧Vppを現像ローラ7に印加した際に、現像ローラ7と感光ドラム1との間に流れる電流値の変化量が所定値である閾値以上であるかどうかを判断する(ステップS55)。本実施例では閾値を1μAとしている。ここで、電流値の変化量は、感光ドラム1が1回転する時間T2において検出部35により検出された電流値の出力値(平均値)の最大値と最小値の差である。
【0152】
そしてステップS55で前記電流値の変化量が前記閾値以上である場合、感光ドラム1と現像ローラ7との間にリークが発生している。そのため、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を前記電流値の検出時より小さく設定する必要がある。そこで、制御部であるCPU40は、制御テーブル41から、前記電流値の変化量に応じたVppの下げ幅を決定する(ステップS56)。そして、画像形成中の現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)を前記下げ幅分だけ下げた値に決定する(ステップS58)。
【0153】
一方、ステップS55で前記電流値の変化量が前記閾値未満である場合、Vppを印加してから感光ドラム1が1回転する時間T2の期間、ステップS55を繰り返す(ステップS57)。前記期間において電流値の変化量が閾値未満である場合、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を前記電流値の検出時より小さく設定する必要がない。そのため、制御部であるCPU40は、前記Vppの下げ幅を設定しない。すなわち、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を変更せず、前記電流値の検出時の現像バイアスを画像形成中の現像ローラ7に印加する現像バイアス(Vpp)として決定する(ステップS58)。
【0154】
そして、現像バイアスと帯電バイアスをOFFし、その後、感光ドラム1と現像ローラ7の駆動を停止させる(ステップS59)。その後、CPU40は、Vcont、Vbackが変更されたか否かを確認する(ステップS60)。これは、ステップS58にて現像バイアス(交流電圧Vpp)が決定された後に、ユーザによる文字の濃度変更などが行われた場合に、Vcont、Vbackが変化するためである。そのため、CPU40は、ステップS60にてVcont、Vbackが変更されたか否かを確認する。
【0155】
ステップS60にてVcont、Vbackが変更された場合、
図17に示すVpp設定テーブルを用いて、VcontとVbackの2変数から、最適な現像バイアス(Vpp)を決定する(ステップS61)。ステップS60にてVcont、Vbackが変更されなかった場合、現像バイアスを変更する必要がないため、ステップS58にて決定された現像バイアス(Vpp)が維持され、変更はない。このようにして画像形成中の現像バイアスが設定された後、放電発生検出動作を終了する(エンド)。
【0156】
以上から、本実施例によれば、前述した実施例と同様に、感光ドラム1と現像ローラ7との間に流れる電流値の最大値と最小値の差である電流値の変化量に応じたVppの下げ幅を制御テーブル41(
図8、
図17参照)から決定する。これにより、現像ローラ7に印加する現像バイアス(交流電圧Vpp)を、電流値の変化量に応じた、適切な下げ幅のVppに設定することができる。また、リークの発生しない現像バイアス(電流値の変化量が閾値未満となる現像バイアス)の設定に要する時間を短縮することができる。さらに前記電流値の変化量に応じた現像バイアスの設定後に、Vcont、Vbackが変更された場合、設定テーブルを用いてVcont、Vbackの変更に応じた現像バイアスに設定する。これにより、前記電流値の変化量に応じた現像バイアスの設定後に、Vcont、Vbackが変更された場合であっても、再度リーク検知動作を行うことなく、Vcont、Vbackの変更に応じた現像バイアスに設定することができる。そして、リークの発生しない現像バイアスの設定に要する時間を短縮することができる。
【0157】
なお、本実施例に記載されているSDギャップ、帯電バイアス、現像バイアス、電流値の閾値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、Vpp設定テーブルは、現像ローラ7と感光ドラム1の部材によって変更してもよい。また、予め作成したVpp設定テーブルではなく、VcontとVpp、VbackとVppの関係式を用いて現像バイアス(Vpp)を決定するようにしてもよい。
【0158】
〔他の実施例〕
前述した実施例では、露光部としてレーザビームスキャナを使用したが、これに限定されるものではなく、例えばLEDアレイ等を使用しても良い。
【0159】
また前述した実施例では、画像形成装置の装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジ20として、感光ドラム1と、該感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電部,現像部,クリーニング部を一体に有するプロセスカートリッジ20を例示した。しかし、プロセスカートリッジ20は、これに限定されるものではない。感光ドラム1の他に、帯電部材、現像部、クリーニング部のうち、いずれか1つを一体に有するプロセスカートリッジであっても良い。
【0160】
更に前述した実施例では、感光ドラム1を含むプロセスカートリッジ20が画像形成装置の装置本体に対して着脱可能な構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば感光ドラム1とこれに作用する各プロセス手段がそれぞれ組み込まれた画像形成装置、或いは感光ドラム1とこれに作用するプロセス手段がそれぞれ着脱可能な画像形成装置としても良い。
【0161】
また前述した実施例では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であってもよい。あるいは、記録媒体担持体を使用し、該記録媒体担持体に担持された記録媒体に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であってもよい。あるいは、中間転写体を使用し、該中間転写体に各色のトナー像を順次重ねて転写し、該中間転写体に担持されたトナー像を記録媒体に一括して転写する画像形成装置であってもよい。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0162】
M …画像形成装置本体
1 …感光ドラム(像担持体)
2 …クリーニングブレード
4 …帯電ローラ(帯電部材)
6 …レーザビームスキャナ
7 …現像ローラ(現像剤担持体)
7a …スリーブ
7b …キャップ
7b …ローラ軸
8 …現像ブレード
9 …現像容器
10 …記録媒体
20 …プロセスカートリッジ
30 …直流電圧印加部
31 …交流電圧印加部
32 …出力制御部
33 …Vpp制御部
34 …整流部
35 …検出部
36 …検出回路
37 …アンプ
38 …A/D変換器
40 …CPU(制御部)
41 …制御テーブル