(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理装置の作動方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240213BHJP
【FI】
A61B6/00 333
(21)【出願番号】P 2020026470
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佃 明
(72)【発明者】
【氏名】野田 剛司
(72)【発明者】
【氏名】岩下 貴司
(72)【発明者】
【氏名】徳本 昌義
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042161(JP,A)
【文献】特開2008-142178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像を処理する画像処理装置であって、
対象物を含む被写体の複数の放射線画像であって、異なる放射線エネルギーに対応する複数の放射線画像を用いて、物質にかかわる平面分布を表す分離画像を生成する生成手段と、
前記分離画像を周波数分解して得た帯域制限画像であって、前記対象物の大きさに関する周波数帯域に対応する帯域制限画像を用いて、前記対象物に関する対象物画像を取得する取得手段と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記複数の放射線画像を用いて物質分離を行うことにより複数の分離画像を生成し、
前記複数の分離画像のうち、前記対象物を含む1つの分離画像を周波数分解して前記帯域制限画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記複数の放射線画像を用いて物質識別を行うことにより、前記分離画像として実効原子番号画像または面密度画像を生成し、
前記実効原子番号画像または前記面密度画像を周波数分解することにより前記帯域制限画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、ラプラシアンピラミッド、フーリエ変換、微分のいずれかを用いて前記分離画像を周波数分解する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記分離画像を周波数分解して得た複数の帯域制限画像であって、複数の周波数帯域に対応する複数の帯域制限画像のうちの少なくとも1つに基づいて前記対象物画像を取得する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記取得手段は、前記複数の帯域制限画像と前記対象物の大きさに関する情報とに基づいて前記対象物画像を取得する、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記対象物の大きさに関する情報に基づいて設定される前記対象物の画像上での大きさに対応した周波数と前記複数の帯域制限画像とに基づいて、前記複数の帯域制限画像のうちの1つを前記対象物画像として選択する、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記取得手段は、前記放射線画像の撮影条件に基づいて前記複数の帯域制限画像のうちの1つを前記対象物画像として選択する、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記取得手段は、前記分離画像を周波数分解して得た複数の帯域制限画像を前記放射線画像の撮影条件に応じて重みづけして合成することにより、又は、異なる対象物に対応する複数の組の重みづけ係数を用いることにより、それぞれが前記異なる対象物に対応する複数の対象物画像を取得する、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記生成手段は、抽出対象となる対象物の種類の数に応じた数の帯域制限画像を生成し、
前記帯域制限画像の数を切り替える切り替え手段をさらに備える、請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記対象物は、ガイドワイヤー、ステント、コイル、造影剤、石灰で形成された構造物のいずれかである、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記生成手段は、前記対象物を含まない状態の前記被写体を、前記異なるエネルギーの放射線により撮影して得た2つ以上の放射線画像を用いて、マスク画像としての分離画像を生成し、
前記分離画像から前記マスク画像を減算する減算手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記減算手段による減算後の分離画像を周波数分解して帯域制限画像を生成する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記生成手段は、前記対象物を含まない状態の前記被写体を、前記異なるエネルギーの放射線により撮影して得た2つ以上の放射線画像を用いて、マスク画像としての分離画像を生成し、
前記マスク画像を周波数分解して得たマスクの帯域制限画像を前記帯域制限画像から減算する減算手段をさらに備える、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記取得手段は、前記帯域制限画像に基づいて得られる前記対象物画像から、さらに補助情報を用いて前記対象物を抽出する、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記補助情報は、実効原子番号画像の画素値である、請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
放射線画像を処理する画像処理
装置の作動方法であって、
前記画像処理装置が、対象物を含む被写体の複数の放射線画像であって、異なる放射線エネルギーに対応する複数の放射線画像を用いて、物質にかかわる平面分布を表す分離画像を生成する生成工程と、
前記画像処理装置が、前記分離画像を周波数分解して得た帯域制限画像であって、前記対象物の大きさに関する周波数帯域に対応する帯域制限画像を用いて、前記対象物に関する対象物画像を取得する取得工程と、を含む画像処理
装置の作動方法。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1乃至15のいずれか1項に記載された画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理装置の作動方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線撮像装置の技術分野の一つとして、放射線のエネルギー情報を利用した画像化技術であるスペクトラル・イメージング技術が広く研究あるいは実用化されている。スペクトラル・イメージングでは、複数エネルギーの画像から複数の物質の厚さ分布を求めたり、あるいは面密度分布と実効原子番号分布をもとめたりすることができる。こうした厚さ分布、面密度分布、実効原子番号分布は、物質にかかわる平面分布の一例である。このような平面分布は、物質透過後の放射線が厚さなどの指数関数として減衰すると仮定して、透過X線の画素値から逆算することで求めることができる。
【0003】
スペクトラル・イメージングにおいては、しばしば異なる2つのエネルギーで撮影した画像を用いて2つの物質にかかわる平面分布、たとえば骨の厚さ分布と軟部組織の厚さ分布を求める。ところで人体に骨と軟部組織以外の物質が含まれる場合、たとえば骨と軟部組織のほか、さらに造影剤が画像中に存在する場合、造影剤の画像はほかの物質の画像(たとえば骨画像)に含まれるためうまく分離することができない。骨と造影剤を分離する一つの方法として、造影剤の含まれていない状態と含まれた状態のそれぞれについて、高エネルギーと低エネルギーを用いた2回の放射線撮影を行い、骨画像から造影剤を抽出する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-221580号公報
【文献】特表2018-511443号公報(実施形態で参照される)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1の技術を用いた場合は、マスク画像を生成するために造影剤画像を抽出する際には造影剤の含まれていない状態での撮影が必要となるため、撮影回数が増加するという課題が存在する。
【0006】
本発明は、スペクトラル・イメージングなどにより得られる分離画像から、マスク画像を用いずに物質を分離することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による画像処理装置は以下の構成を備える。すなわち、
放射線画像を処理する画像処理装置であって、
対象物を含む被写体の複数の放射線画像であって、異なる放射線エネルギーに対応する複数の放射線画像を用いて、物質にかかわる平面分布を表す分離画像を生成する生成手段と、
前記分離画像を周波数分解して得た帯域制限画像であって、前記対象物の大きさに関する周波数帯域に対応する帯域制限画像を用いて、前記対象物に関する対象物画像を取得する取得手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スペクトラル・イメージングなどにより得られる分離画像から、マスク画像を用いずに物質を分離することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態によるX線撮影装置の構成例を示す図。
【
図2】第1実施形態による撮影処理を示すフローチャート。
【
図3A】第1実施形態による3物質分離の処理の一例を示す図。
【
図3B】第1実施形態による3物質分離の処理の一例を示す図。
【
図4】対象物の周波数を特定する方法の一例を説明する図。
【
図6】第2実施形態による、帯域制限画像の合成方法の一例を示す図。
【
図8A】第3実施形態による4物質分離の処理の一例を示す図。
【
図8B】第3実施形態による4物質分離の処理の一例を示す図。
【
図9】第4実施形態による撮影処理を示すフローチャート。
【
図10】第4実施形態による4物質分離の処理の一例を示す図。
【
図11】第4実施形態による4物質分離の処理の他の例を示す図。
【
図12】第5実施形態による、補助情報を用いた分離精度の向上を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
なお、以下では、放射線としてX線を用いた例を説明するが、本発明における放射線は、X線に限られるものではない。放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども、含まれるものとする。
【0012】
<第1実施形態>
図1に、第1実施形態に係る放射線撮影装置の一例としてのX線撮影装置の構成を示す。
図1において、X線管球101から照射されたX線は、被写体102を透過し、フラットパネルディテクタ(以下、FPD103)に入射する。X線管球101は、低エネルギーのX線を除去するためのX線フィルタを設けることがある。FPD103は、X線を可視光に変換する蛍光体と、可視光を電荷、電圧に変換する撮像素子(素子は複数個あり、1つの素子と1つの画素が対応する)と、変換された電圧をさらにデジタル値の画像へ変換する画像形成部を備える。FPD103は、さらに、画像形成部から得られた画像にオフセット補正、ゲイン補正、欠陥補正などを行う画像補正部を備える。なお、FPD103は蛍光体によりX線を可視光に変換する構成としたがこれに限られるものではない。例えば、テルル化カドミウム(CdTe)や非晶質セレン(a-Se)を用いた、X線を直接電圧に変換する方式のFPDが用いられてもよい。また、入射するX線の光子をひとつずつカウントするフォトンカウンティング型検出器を用いたFPDが用いられてもよい。
【0013】
照射されるX線の条件は、操作盤104からの操作者の入力により決定される。操作盤104は、条件指定部105、撮影部位指定部106、条件表示部107、C-arm制御部108、架台制御部109を有する。条件指定部105において、操作者は管電圧、管電流、照射時間を指定可能である。また、操作盤104は画質調整を行うための調整装置(ダイヤルなど)を保持しており、操作者はダイヤルを操作することで医師などの画像確認者が最も好適であると判断する画質を設定することができる。撮影部位指定部106では、撮影部位とX線の条件が予め関連付けられていて、操作者は、撮影部位を指定すると、それに対応したX線の条件を呼び出すことができるようになっている。
【0014】
条件指定部105、撮影部位指定部106において指定された撮影条件は、条件表示部107により表示され、これにより、操作者は設定内容を確認することができる。また、操作者は、C-arm制御部108、架台制御部109を用いて、C-armや架台を上下左右に動かしたり、あるいは回転させたりすることができる。照射指示部110はフットペダルであり、操作者はペダルを踏むことで、X線を照射する指示をコンピュータ111に送ることができる。
【0015】
FPD103から出力された画像は、コンピュータ111へ転送される。画像処理装置としてのコンピュータ111は、画像取得部112、対象物情報保存部113、撮影条件保存部114、平面分布取得部115、周波数分解部116の各機能を実現する。また、コンピュータ111には、表示装置123、入力装置124が接続されている。なおFPD103に搭載されている前述の画像補正部がコンピュータ111に設けられてもよい。また、操作盤104からの入力の代わりに、コンピュータ111に予めX線の条件を保存するようにしてもよい。
【0016】
画像取得部112は、FPD103で生成された画像を、コンピュータ111に取り込む。対象物情報保存部113は、被写体のなかに存在し、画像として撮影される物体、例えば骨、ステントなどのデバイスなどの大きさ(空間周波数)に関する情報(被写体情報)を取得、保存する。対象物情報保存部113に保存される内容については後述する。撮影条件保存部114は、X線管球101、FPD103、操作盤104、入力装置124、C-アーム119、架台120、造影剤注入装置121から情報(これらを撮影条件とする)を取得し、保存する。
【0017】
撮影条件保存部114が取得する撮影条件としては、たとえば、管球情報、FPDに関する情報、撮影部位情報、被写体情報、造影剤情報、C-アーム情報、架台情報があげられる。管球情報は、例えば、管電圧、管電流、照射時間、焦点の大きさ、X線フィルタの有無を示す。FPDに関する情報は、例えばX線の蓄積時間を示す。撮影部位情報は、たとえば胸部、頭部などの撮影部位を示す。被写体情報は、例えば、入力装置124で入力された患者の識別番号、氏名、性別、年齢、身長、体重などを示す。造影剤情報は、例えば、造影剤の種類、濃度などを示す。C-アーム情報は、例えば、C-アーム119の材質、位置、角度などを示す。架台情報は、例えば、架台120の位置などを示す。
【0018】
平面分布取得部115は、FPD103から取得された画像と事前情報(例えば、撮影時のX線のエネルギースペクトル)から物質にかかわる平面分布を計算する。平面分布取得部115は、例えばエネルギーサブトラクションにより、そのような平面分布を表す分離画像を取得する。平面分布取得部115にて計算される物質にかかわる平面分布のひとつの例として、物質ごとの厚さの空間分布があげられる。被写体の存在しないときの画像をI0、被写体の存在するときの画像をIとすると、I/I0は下記の式1にて表現できる。
【0019】
【0020】
ただしEはエネルギー、N(E)はX線スペクトル、μ1(E)は物質1の線減弱係数、μ2(E)は物質2の線減弱係数、d1は物質1の厚さ、d2は物質2の厚さである。このうち未知の変数はd1とd2である。異なる2エネルギーのX線にて撮影し、式1に代入することで、2本の独立した式を生成可能となるから、その独立した2本の式を解くことで厚さd1とd2の値を求めることができる。物質1、物質2の例としては、例えば骨と軟部組織があげられる。物質ごとの厚さの空間分布を求める処理を物質分離と呼ぶ。
【0021】
物質にかかわる平面分布のもうひとつの例は、実効原子番号と面密度の空間分布である。実効原子番号と面密度の空間分布は下記のように表現できる。
【0022】
【0023】
ただしEはエネルギー、N(E)はX線スペクトル、μ(Zeff,E)は実効原子番号ZeffとエネルギーEにおける質量減弱係数、Deffは実効面密度である。式2における未知の変数は実効原子番号Zeffと実効面密度Deffである。よって物質ごとの厚さの空間分布を求める場合と同様に、異なる2エネルギーのX線にて撮影し、式2に代入することで、2本の独立した式が生成可能となる。その後独立した2本の式を解くことで実効原子番号Zeffと実効面密度Deffの値を求めることができる。実効原子番号と実効面密度を求める処理を物質識別と呼ぶ。
【0024】
周波数分解部116は、平面分布取得部115で求めた物質にかかわる平面分布を周波数分解することにより複数の周波数成分に分割された画像を生成する。こうして生成されたそれぞれの周波数の画像を、以下、帯域制限画像と呼ぶ。周波数分解部116に関して詳細は後述する。出力画像生成部117は、周波数分解部116の周波数分解により生成された帯域制限画像に基づいて、被写体102に存在する所定の対象物が抽出された対象物画像を取得する。
【0025】
以上の画像取得部112、対象物情報保存部113、撮影条件保存部114、平面分布取得部115、周波数分解部116、出力画像生成部117の各機能は、ソフトウェアとして実装され、コンピュータ111の1つまたは複数のプロセッサーにより実現され得る。なお、コンピュータ111は中央演算処理装置、DRAMなどの主記憶装置、ハードディスクなどの二次記憶装置、高速計算のためのグラフィック・プロセッシング・ユニット、LAN(Local Area Network)アダプタなどの一般的なハードウェアにより構成が可能である。なお、上述の各機能の一部あるいはすべてがハードウェアにより実現されてよいし、ハードウェアとソフトウェアの協働により実現されてもよい。
【0026】
入力装置124は、たとえばコンピュータのキーボードなどである。操作者は、入力装置124を使用し、撮影部位情報や被写体情報を入力することが可能である。撮影部位情報や被写体情報は、入力装置124による入力の他に、たとえばコンピュータ111に実装されるLANアダプタを通じて、LANに接続された外部装置から入力されてもよい。撮影部位情報や被写体情報は、対象物情報保存部113が取得し、保存する。
【0027】
表示装置123は、出力される画像を表示するために用いられる。カラー・ディスプレイが用いられた場合、物質にかかわる平面分布、周波数分解後の帯域制限画像に基づいて生成される対象物の画像(以下、対象物画像)を、色を用いて表現することが可能になり、診断能の向上が期待される。ここで、対象物とは、例えば、ガイドワイヤーやステント、造影剤の導入された微細な血管、血管に付着した石灰などの小さな構造物であるまた、操作盤104の機能の一部を入力装置124、表示装置123が備えるようにしてもよい。たとえば条件指定部105あるいは撮影部位指定部106を通じて行われる条件入力が入力装置124によって行われてもよいし、入力された管電圧などの撮影条件の表示が、条件表示部107の代わりに表示装置123で行われてもよい。
【0028】
また、X線撮影装置は、造影剤注入装置121を備えてもよい。造影剤注入装置121とX線撮影装置は互いに接続されることで、両者を連動させた撮影を行うことが可能となる。X線管球101、FPD103、操作盤104、照射指示部110、コンピュータ111は同期装置122に接続される。同期装置122は、FPD103の状態と、照射指示部110の押下状態と、コンピュータ111の処理状態からX線曝射可否を決定する。
【0029】
図2は、本実施形態によるX線撮影処理を表すフローチャートである。まず、同期装置122および撮影条件保存部114は、操作者による撮影条件(X線の照射条件など)の入力を受け付ける(ステップS201)。撮影条件は、たとえば条件指定部105あるいは撮影部位指定部106を介して行われる。撮影条件保存部114は、受け付けた撮影条件をメモリに保存する。撮影条件保存部114が保存する撮影条件は、
図1に関して上述したとおりである。
【0030】
次に、同期装置122は、操作者によるX線照射の指示を照射指示部110から受け付けると(ステップS202)、曝射の可否を判断する(ステップS203)。同期装置122は、例えば、X線管球101、FPD103、操作盤104、照射指示部110、コンピュータ111、造影剤注入装置121の状態などから曝射の可否を判断する。曝射不可と判断された場合(ステップS203でNO)、同期装置122は表示装置123に警告を表示する(ステップS204)。なお、同期装置122が曝射不可の判断結果をコンピュータ111に通知し、コンピュータ111が表示装置123に警告を表示するようにしてもよい。
【0031】
一方、同期装置122により曝射可と判断された場合(ステップS203でYES)、同期装置122は、X線管球101とFPD103に、X線照射指示の信号を送る。これにより、X線管球101によるX線の照射とFPD103によるX線撮影が開始し、画像取得部112は、放射線画像としてX線画像を取得する(ステップS205)。ここで、画像取得部112は、被写体を異なるエネルギーの放射線(X線)により撮影した2つ以上の放射線画像(X線画像)を取得する。本実施形態では、第一の管電圧でのX線照射により取得されたX線画像(高管電圧画像)と、第一の管電圧よりも低い管電圧でのX線照射により取得されたX線画像(低管電圧画像)が取得される(ステップS205)。必要な撮影枚数が取得されたら、X線撮影を終了する(ステップS206)。
【0032】
続いて、平面分布取得部115は、対象物を含む被写体を異なるエネルギーの放射線により撮影した2つ以上のX線画像から、物質分離または物質識別により、物質にかかわる平面分布を表す分離画像を生成する。本実施形態では、平面分布取得部115は、高管電圧画像と低管電圧画像から、物質にかかわる平面分布を表す分離画像を算出、生成する(ステップS207)。次に、周波数分解部116は、ステップS207にて算出された物質にかかわる平面分布(分離画像)を周波数分解する(ステップS208)。例えば、平面分布取得部115は、物質にかかわる平面分布として、骨画像と軟部組織画像の2つの分離画像を得る。骨画像には、骨と対象物(造影された血管など)が含まれる。周波数分解部116は、骨画像を周波数分解することにより、対象物の画像(対象物が強調された帯域制限画像)と骨の画像(骨が強調された帯域制限画像)に分離する。
【0033】
次に、出力画像生成部117は、周波数分解部116が分離した帯域制限画像から対象物の写っている画像(対象物画像)を抽出あるいは合成する(ステップS209)。本実施形態では抽出の例を説明する(合成の例については第2実施形態以降で後述される)。そして、出力画像生成部117は、抽出あるいは合成された対象物画像に対して強調処理を行う(ステップS210)。強調処理の例としては、例えば、対象物をカラー表示するための処理、コントラストを強調する処理などがあげられる。
【0034】
図3A,3Bは、
図2のステップS207からステップS209に示した処理についてより詳細に説明するための図である。
図3A,3Bでは、画像に対象物としてのガイドワイヤー(ステント、コイル等でもよい)、骨、軟部組織の3種類の物質が含まれていると仮定している。IVR(Interventional Radiology)の手技では、これら3物質が含まれる場合が多い。第1実施形態では、これら3物質を分離した画像を提供する構成について説明する。なお、これら3物質に造影剤が加わって4物質が含まれる場合もある。4物質を分離した画像を提供する構成については、第3実施形態、第4実施形態により後述する。
【0035】
図3Aでは物質分離と周波数分解により3物質分離を行うプロセスを説明している。まず、平面分布取得部115が物質分離により分離画像を生成する(ステップS207)。例えば、平面分布取得部115は高管電圧画像301と低管電圧画像302から、骨画像としての軟部組織除去画像303と軟部組織画像304の2つの分離画像を生成する。上述した式1において、物質1の線減弱係数μ
1(E)として骨の線減弱係数を、物質2の線減弱係数μ
2(E)として軟部組織の線減弱係数を設定することにより、物質1の画像として軟部組織除去画像303が、物質2の画像として軟部組織画像304が得られる。軟部組織除去画像303には骨とワイヤーが含まれ、軟部組織画像には軟部組織が含まれる。
【0036】
次に、周波数分解部116は軟部組織除去画像303を周波数分解し、複数の周波数成分に分割し、複数の帯域制限画像を生成する(ステップS208)。一例によれば、このとき、最も高周波の帯域制限画像はノイズ成分を主とした画像(ノイズ画像305)となり、次に高周波の帯域制限画像はガイドワイヤーの成分を最も強く含む画像(ワイヤー画像306)となる。また、低周波成分の帯域制限画像は骨を強く含む画像(骨画像307)となる。出力画像生成部117は、ガイドワイヤーを最も強く含む帯域制限画像(ワイヤー画像306)を抽出(選択)し、これに基づいて対象物画像308を生成する(ステップS209)。帯域制限画像の抽出は、対象物情報保存部113や、撮影条件保存部114に保存されている情報をもとに行われる。
【0037】
以上のように、物質分離と周波数分解により3物質の分離を行う場合、入力画像は高管電圧画像と低管電圧画像の2種類であるにもかかわらず3物質の分離が可能になる。すなわち、分離画像に周波数分解を用いることで、入力したX線画像の数より多い種類の物質を分別することができる。なお分離した3物質の画像をすべて使うとは限らない。3物質の画像の使用例としては、抽出した画像のうちワイヤー画像のみを使ってワイヤーの強調表示を行う、軟部組織とワイヤー画像を用いて骨のみ除去された画像を表示するなどの方法があげられる。
【0038】
図3Bでは物質識別と周波数分解によりワイヤーを抽出するプロセスを説明している。
図3BのステップS207では、平面分布取得部115が、物質識別により分離画像を生成する。例えば、平面分布取得部115は、高管電圧画像301と低管電圧画像302から、実効原子番号画像309と、面密度画像310の2つの分離画像を生成する。実効原子番号画像309には骨、ワイヤー、軟部組織の実効原子番号が現れ、面密度画像310にはそれぞれの物質の実効面密度が現れる。
【0039】
周波数分解部116は、実効原子番号画像309を周波数分解し、それぞれの周波数成分を持つ複数の帯域制限画像を生成する(ステップS208)。
図3Aにより上述した物質分離の場合と同様に、最も高周波の画像にはノイズの成分が強く含まれ(ノイズ画像311)、次の周波数の画像にはガイドワイヤーの成分が強く含まれる(ワイヤー画像312)。また、低周波画像にはガイドワイヤー以外の成分が強く含まれる(その他の画像313)。出力画像生成部117は、対象物情報保存部113および撮影条件保存部114に保存されている情報をもとに対象物(ガイドワイヤー)の現れるワイヤー画像312を抽出(選択)し、これに基づいて対象物画像314を生成する(ステップS209)。
【0040】
以上のように、物質識別と周波数分解により対象物の抽出を行う場合、入力画像は高管電圧画像と低管電圧画像の2種類であるにもかかわらず、実効原子番号画像、面密度画像、抽出された対象物画像の3種類の画像が生成される。すなわち、分離画像に周波数分解を適用することで、入力されたX線画像の数よりも多い種類の画像が生成される。物質識別と周波数分解を用いた場合、実効原子番号画像と、面密度画像と、1枚以上の対象物画像が生成される。なお分離した画像がすべて使われるとは限らないのは物質分離の場合と同様である。
【0041】
軟部組織除去画像あるいは実効原子番号画像を周波数分解して対象物画像を生成した場合、ワイヤー等の対象物は、対象物の周りよりも画素値が高くなって現れる(ワイヤーは正の厚さ/高い実効原子番号を持つ)。よって、例えば強調処理(ステップS210)において、対象物画像308、314においてある閾値以上の画素を抽出することによりワイヤーに対応した画素を抽出し、この抽出結果を用いてワイヤーを強調することができる。
【0042】
また、ステップS209において、出力画像生成部117は、対象物情報保存部113、撮影条件保存部114に保存されている情報をもとに帯域制限画像の抽出(選択)を行う。例えば、ガイドワイヤーの強調が必要な状況であると仮定する。なお、そのような状況の判定は、撮影部位指定部106などから入力された、撮影条件保存部114に保存されている情報をもとに行われ得る。この場合、強調すべき周波数は、たとえば以下のように決められる。
【0043】
図4に示されるように、管球-架台位置をa[mm]、架台-被写体位置をb[mm]、管球-FPD位置をc[mm]、対象物(ガイドワイヤー)の大きさをd[mm]とする。また、FPD103上でのガイドワイヤーの大きさをe[mm]、FPD103の検出器のピクセルピッチをp[mm]とする。なお、ピクセルピッチpは、ビニング等の撮影モードにより変化し得る。この場合、画像上に現れるガイドワイヤーの画素換算の太さ(x[画素])は、以下の式3で表される。
【0044】
【0045】
よって強調する周波数は、1/x[1/画素]付近とすればよく、この周波数帯に近い画像が選択される。より簡易的には、撮影モードごとにあらかじめ強調すべき周波数を決めておき、撮影開始に伴って撮影モードに対応する周波数をロードすればよい。強調すべき周波数があらかじめ計算される場合、その情報は対象物情報保存部113に保存される。
【0046】
なお、管球-架台位置は、撮影条件保存部114に保存されている、C-アーム119や架台120の位置情報から計算される。また、架台-被写体位置は、架台120の位置情報と被写体102の体形の情報から推測され得る。被写体102の体形の情報は、対象物情報保存部113に保存されている。あるいは、架台-被写体位置としてデフォルトの値(撮影条件保存部114に保存される)が用いられてもよい。管球-FPD位置は、撮影条件保存部114に保存されているC-アーム119の位置情報から計算される。対象物(ガイドワイヤー)の大きさは対象物情報保存部113に保存されており、典型値は0.8[mm]程度である。ピクセルピッチは、FPD103の仕様とビニング等の撮影モードにより決まる。FPD103の仕様と撮影モードは、撮影条件保存部114に保存されている。ピクセルピッチは例えば0.2mmである。
【0047】
ここで、軟部組織除去画像や、実効原子番号画像を周波数分解することで、ガイドワイヤー等の対象物を抽出できる理由について述べる。ガイドワイヤーやステント等のように人体に導入される物体である対象物は、その物理的な大きさが、例えば胸骨などより著しく小さい場合がほとんどである。またこうした対象物の多くは、ステンレス(鉄)などの金属でできている。そのため、対象物は、軟部組織除去画像では、骨画像と比較して非常に細かく、かつ強いコントラストで発生する。実効原子番号画像においても、ガイドワイヤーやステントのような対象物は、原子番号が大きいことから、骨や軟部組織と比べて非常に細かく、かつ強いコントラストを伴って現れる。構造が細かく、強いコントラストを持つ画像は高周波成分に強く表れるため、高周波成分を抽出することで複数の物質が入り混じった画像からガイドワイヤーやステント等の対象粒を抽出することが可能になる。
【0048】
一方あらかじめ物質分離や物質識別を行わず蓄積画像を周波数分解した場合は、高周波成分に軟部組織の肺血管等が現れるため、カテーテルやステントなど対象物のみの抽出を行うことが困難になる。したがって、カテーテルやステントなどの対象物を抽出するためには、平面分布取得部115と周波数分解部116の両方を用いることが重要である。
【0049】
実効原子番号が大きく微細な物体であれば、平面分布取得部115により取得された平面分布に対して周波数分解部116が周波数分解を行うことによりその物質を分離することができる。抽出される物体の例としては、たとえば穿刺針、ガイドワイヤー、ステント、ステントグラフト、カテーテル、脳に留置するコイル、電子デバイス(医療用、非医療用)、義肢あるいは義歯、銃弾など、人体の外から中に入る人工のデバイスがあげられる。また、これらのデバイスに存在するマーカーなども分離することが可能である。また造影剤(造影剤の入った血管)、血管内に付着する石灰なども同様に分離ができる。石灰は、実効原子番号が骨と同程度であるが、骨よりも微細な構造を持つため、本手法により抽出が可能である。
【0050】
なお、特許文献2には、二つのエネルギーを用いる血管造影装置においてアンシャープマスクを用いた例が記載されている。しかしながら、アンシャープマスクを用いて微細構造を強調すると、見たい画像(例えば石灰)の辺縁を強調するとともに、骨の辺縁も強調してしまう。そのため対象物のみを抽出することは困難となる。対して、本実施形態では、対象物の持つ空間周波数、つまり対象物の大きさをもとに画像の特定の空間周波数帯域を抽出することで、対象物の画像を抽出することができる。言い換えれば、本実施形態では、あらかじめある程度予測できる物体の太さや大きさの情報(周波数情報)をもとに、対象物が現れていると推測される画像を抽出する(ステップS209)。これにより、ステント、ガイドワイヤー、石灰などの対象物を効果的に抽出することができる。
【0051】
また先に説明したガイドワイヤー、骨、軟部組織の3物質を含む画像において、ガイドワイヤーは軟部組織画像に負の厚さをもって現れる場合がある。ガイドワイヤーのある部分は、軟部組織の厚さが薄くなるためである。その場合、軟部組織画像304を周波数分解(ステップS208)することでガイドワイヤーを抽出することができる。例えば肺血管は正の厚さとして現れるが、ガイドワイヤーは負の厚さとして現れるため、微細構造である肺血管とガイドワイヤーを分けることができる。さらに、軟部組織がある一定以下の厚さになった場合はガイドワイヤーと判定する閾値処理を加えることで、ガイドワイヤーをより明瞭に抽出することができる。面密度画像についても、ワイヤーの存在する部分は特徴的なピークを示すため、閾値を設けてワイヤーを抽出することが可能である。
【0052】
また
図3A,
図3Bにおいては、3つの帯域制限画像から対象物の現れる画像を選択したが、一般化して言うと、2つ以上の任意の数の帯域制限画像から、一つ以上の画像を選択することになる。なお、4物質へ分離により2つの対象物画像を得る例は第3実施形態で述べる)。
【0053】
図5は、周波数分解部116による周波数分解処理の例を示した図である。
図5では、いわゆるラプラシアンピラミッドと呼ばれる方法で周波数分解が行われる例が示されている。画像501は、平面分布取得部115から得られる、物質にかかわる平面分布を表す分離画像である。分離画像の例としては、物質分離後の骨画像、あるいは物質識別後の実効原子番号画像があげられる。画像501は、ガウシアンフィルタ502を適用された後、縮小処理503において縮小され、画像504が得られる。画像504は、拡大処理505にて拡大され、元の画像501と拡大処理後の画像504の差分が減算処理506にて計算され、帯域制限画像である画像507が得られる。同様に、画像504にガウシアンフィルタと縮小処理が適用されて画像508が取得され、拡大処理後の画像508と画像504の差分が減算処理により計算されることで帯域制限画像である画像509が得られる。このように縮小、拡大、減算のプロセスを繰りかえすことで、様々な周波数帯の帯域制限画像を得ることができる。得られたそれら複数の帯域制限画像の中から、対象物に対応した特定の周波数帯の帯域制限画像が取得されることになる。画像509,508は縮小されているので、これらが選択された場合、画像は元の大きさになるまで拡大される。
【0054】
以上のように、第1実施形態によれば、分離画像に対して周波数分解を行うことにより、その分離画像をさらに複数の対象物の画像へ分離することができる。すなわち、入力される放射線画像の数よりも多い数の物質に対応した画像を得ることができ、撮影回数を増加させずに多くの種類の物質を抽出できる。
【0055】
なお、周波数分解の方法は上記の例に限られるものではない。例えば、フーリエ変換を用いたり、画像の微分(隣接画素との差分)を求めたりすることで行うことができる。また、上記では、複数の周波数に対応した複数の帯域制限画像を生成し、対象物に対応した周波数の帯域制限画像を選択したが、これに限られるものではない。周波数分解部116が任意の周波数に対応した帯域制限画像を生成できるのであれば、対象物に対応した帯域制限画像のみを周波数分解部116に生成させ、これを出力画像として用いるようにしてもよい。
【0056】
また、手技の間では、操作者が見る対象物が変化することがある。例えば、造影剤により血管を確認視した後、ステント留置が開始すると、操作者が視認する対象物は、造影剤からステントに変化する。よって、出力画像生成部117が抽出する帯域制限画像も、手技の途中で変化し得る。そのような変化のタイミングを知らせるトリガーとしては、例えば入力装置124を通じて操作者が入力する信号を用いることができる。例えば、視認対象の対象物の変化に応じて、帯域制限画像を選択するための周波数が変更される。
【0057】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、生成した複数の周波数帯の帯域制限画像から1枚の画像を対象物画像として抽出した。第2実施形態では、複数の帯域制限画像を重みづけして合成することにより対象物画像を生成する。この方法では、複数の周波数帯の画像が使われることから、確認したい対象物の大きさが変化する場合においても、安定的に対象物を抽出することができる。
【0058】
装置の構成や処理のフローは
図2のステップS209を除き、第1実施形態と同様である。第2実施形態では、ステップS209において複数の帯域制限画像の1つを抽出する代わりに、複数の帯域制限画像の合成を行う。
図6は、ステップS209における合成処理を説明するフロー図である。画像507、508、509は、
図5で説明した周波数分解によって得られた帯域制限画像である。
【0059】
出力画像生成部117は、重みづけ処理603により画像508に重みづけの係数g3を乗算し、得られた重みづけ画像を拡大処理601により拡大して拡大画像を得る。また、出力画像生成部117は、重みづけ処理により画像509に重みづけの係数g2を乗算して重みづけ画像を得る。出力画像生成部117は、重みづけされた画像509に、拡大処理601により拡大された画像を加算する加算処理602を行い、合成画像604を得る。これにより、合成画像604の合成において画像509と画像508の混合割合を変更することができ、特定の周波数帯を強調することができるようになる。同様に、出力画像生成部117は、重みづけ処理により画像508に重みづけの係数g1を乗算して得られた重みづけ画像と、合成画像604を拡大処理して得られた拡大画像を加算する加算処理を行い、合成画像605を得る。合成画像605の合成においても、画像509と合成画像604の混合割合を変更することができ、特定の周波数帯を強調することができる。
【0060】
例えば
図6の状況でステントを特に強調したい場合、重みづけの係数g
1、g
2、g
3の中ではステントがもっとも明瞭に現れている画像507にかかる係数g
1を大きくすることになる。なお、観察対象の対象物に応じた重みづけ係数は、対象物情報保存部113に保存される。
【0061】
また、第2実施形態では、撮影条件に応じて重みづけの係数g
i(i:整数)の割合を変化させるようにしてもよい。
図7に重みづけ係数の一例を示す。ここでは通常撮影(2X2ビニング)と拡大撮影(1X1ビニング)の例を示す。1X1ビニングの場合、ピクセルピッチが小さくなるため、画像に現れるガイドワイヤーの画素換算の太さ[画素]は大きくなる(式3を参照)。そのためワイヤーの現れ始める周波数帯[1/画素]は、通常の2X2ビニングの場合とは異なる。そのため、重みづけ係数g
i(i:整数)も、ビニングの状態によって変更しなければならない。ほかに拡大率(管球、架台、被写体、検出器の位置等で決まる)などに応じても重みづけ係数g
iを変化させる必要がある。こうした重みづけ係数は、対象物情報保存部113や、撮影条件保存部114に保存される情報(第1実施形態に例示されている)をもとに計算されてもよいし、予めテーブルとして保持されてもよい。
【0062】
第1実施形態で説明したように、撮影条件は撮影部位情報(撮影する部位の選択)を含む。このような撮影部位情報に基づいて重みづけの係数giが設定されてもよい。たとえば脳血管の撮影時は、ほかの部位の撮影と比較してより解像度の高い画像が要求される傾向にある。よって、周波数分解したときに、高周波数側の帯域制限画像の重みをより大きくする。また、管球情報などに基づいて得られる線量が、重みづけの係数giを設定するためのパラメタとして用いられてもよい。例えば、線量が大きいほど微細構造が視認しやすくなるため、より高周波の画像に重みを置くように係数giが設定され得る。
【0063】
なお、第2実施形態においても、操作者が視認する対象物が変化しうるため、合成される画像も変化させることが起こりえる。そのため手技の間に重みづけ係数は変化させることがある。変化のタイミングを知らせるトリガーとしては、例えば入力装置124を通じて操作者によって入力される信号があげられる。
【0064】
<第3実施形態>
第1実施形態、第2実施形態では、3物質(例えば、軟部組織、骨、ステント)へ分離する構成を示したい。第3実施形態では、4物質(例えば、軟部組織、骨、ステント、造影剤)へ分離する構成の一例について説明する。第3実施形態は、第2実施形態(複数の帯域制限画像の合成)の変形である。
【0065】
一般に、ステントは金属の細線で構成され、血管の中に配置される。一方、造影剤は、人体に注入された後は血管全体に広がり、造影血管として現れる。ステントの金属の太さと造影血管の太さを比較すると、ステントの金属は造影血管よりも著しく細く、より高周波の画像に現れることになる。よって周波数分解して求めた帯域制限画像について、高周波の画像に高い重みづけをすればステントを抽出することができ、ステントの周波数より小さい周波数の画像に高い重みづけをすれば造影血管(造影剤)を抽出できることになる。以降、第3実施形態では、ステント、造影剤、骨、軟部組織の4つの物質が含まれた被写体102を撮影するものとする。
【0066】
図8Aは、第3実施形態による、ステントと造影血管を抽出するプロセスを説明する図である。まず、高管電圧画像801と低管電圧画像802が撮影される。第1実施形態で述べた高管電圧画像301と低管電圧画像302との相違点は、弁別の必要な物質がひとつ増えて計4つとなっている点である。平面分布取得部115は、高管電圧画像801と低管電圧画像802を用いて物質分離を行い(ステップS207)、軟部組織除去画像803と軟部組織画像804を生成する。ここでは物質分離を用いた例を説明するが、これに限られるものではない。例えば、
図3Bに示すような物質識別を用いて、実効原子番号と面密度画像を生成する構成であってもよい。
【0067】
周波数分解部116は、軟部組織除去画像803に対して周波数分解を行い、帯域制限画像を生成する(ステップS208)。第3実施形態では、4つの帯域制限画像に分解される例を示している。具体的には、周波数が高い順から、ステントが現れる画像805、ステントと造影剤(造影血管)がともに現れる画像806、造影剤が現れる画像807、そして骨画像808の4つの帯域制限画像に分解される。出力画像生成部117は、選択処理あるいは合成処理(ステップS209)により、ステント画像809と造影剤画像810の2つの対象物画像を得る。
【0068】
図8Bは、出力画像生成部117による合成処理を説明する図である。軟部組織除去画像803において、811は造影剤が導入された血管、812は血管に留置されたステントである。
図8Aで説明したように、軟部組織除去画像803は、平面分布取得部115により生成される。上述したように、軟部組織除去画像803の代わりに、例えば実効原子番号画像が用いられてもよい。
【0069】
図8Aにて説明したように、周波数分解部116は、軟部組織除去画像803を周波数分解する(ステップS208)。その結果、ステントが現れる画像805、ステントと造影剤(造影血管)がともに現れる画像806、造影剤が現れる画像807、骨画像808の4つの帯域制限画像が生成される(骨画像808は図示していない)。画像805、806、807からステントと造影血管を抽出するために、対象物情報保存部113は、異なる対象物(例えば、ステントと造影血管)に対応する複数の組の重みづけ係数を保持する。具体的には、ステントを抽出するための重み係数(ステント係数)の組g
siと、造影血管を抽出するための重み係数(血管係数)の組g
vi(iは整数)を保持する。ステントは高い周波数の画像に現れ、造影血管はそれよりも低い周波数の画像に現れるので、ステント係数は高周波の重みを大きくし、血管係数はステント係数より低周波の重みを大きくする。それぞれの係数の組を用いて
図6で説明したような合成処理を行うことで、ステント画像809、造影剤画像810が生成される。
【0070】
一般的に、造影剤は手技の途中で体内に導入されるから、第3実施形態に記載されている4物質の分離が手技の途中から用いられるようにしてもよい。つまり手技の一連の流れにおいては、初期の過程では第1実施形態あるいは第2実施形態に記載した3物質の分離を行い、造影剤が導入された時点で、第3実施形態で述べた4物質の分離に切り替えるようにしてもよい。すなわち、分離する物質の数を手技の間で切り替えられるようにしてもよい。例えば、周波数分解部116は、抽出対象となる対象物の種類の数に応じた数の帯域制限画像を生成し、生成される帯域制限画像の数を所定のトリガーに応じて切り替える。この切り替えのトリガーの一例としては、入力装置124を通じて操作者によって入力される信号があげられる。別の例としては、造影剤注入装置121から通知される信号があげられる。さらに別の例としては、コンピュータ111に追加で備えられる造影剤検出部(画像における造影剤の有無を検出する)が発する信号があげられる。この場合、造影剤検出部は、例えば前のフレームとのコントラストの著しい差異を検出することで造影剤の有無を検出することができる。
【0071】
また、第3実施形態では、ステントと造影剤の分離について述べたが、ほかの対象物の組み合わせ、例えば造影剤とカテーテルの組み合わせ、ステントとガイドワイヤーの組み合わせ、ガイドワイヤーと石灰の組み合わせにも適用し得る。また、分離のための重みづけ係数の組を3組以上もち、3つ以上の合成のプロセスを行うことで、5つ以上の対象物を分離することができる。
【0072】
<第4実施形態>
第3実施形態においては、周波数分解によって、軟部組織と、ステントと、造影剤、骨の分離を行う構成を説明した。しかし造影血管が太くなると、造影血管の現れる周波数帯と骨の現れる周波数帯とが近くなる場合がある。そのような場合、周波数分解のみによる物質分離では、骨、造影剤を十分に分離できなくなる可能性がある。第4実施形態では、マスク処理を導入して骨を除去することで、4物質の分離精度を向上させる構成を説明する。
【0073】
図9は、第4実施形態による撮影処理を説明するフローチャートである。なお、
図9に示される処理(ステップS901~S906)は、
図2のステップS205~S208の処理に置き換わる処理である。第4実施形態では、ステントと、造影剤と、骨と、軟部組織の分離を行う。ステップS901~S902では、対象物を含まない状態の被写体102を異なるエネルギーの放射線により撮影した2つ以上の放射線画像からマスク画像としての分離画像を生成する。具体的には、まず、画像取得部112は、ステントや造影剤が導入される前に撮影された高管電圧画像と低管電圧画像(マスク元画像と呼ぶ)を取得する(ステップS901)。続いて、平面分布取得部115は、物質にかかわる平面分布を導出し、軟部組織画像と軟部組織除去画像の2つの分離画像を生成する(ステップS902)。ステントおよび造影剤が導入される前の撮影画像が用いられているため、ここで得られる軟部組織除去画像は、対象物が存在しない骨の画像となる。こうして得られた軟部組織除去画像はマスク画像として用いられる。
【0074】
続いて、画像取得部112は、ステントの留置、造影剤の導入を行うタイミングにおいて撮影された高管電圧画像と低管電圧画像を取得する(ステップS903)。このステップにおいて取得される画像には、軟部組織、骨、造影剤、ステントの4つが含まれる。続いて、平面分布取得部115は、物質にかかわる平面分布の導出を行い、軟部組織画像と軟部組織除去画像の2つの画像を生成する(ステップS904)。ここで得られる軟部組織除去画像には、骨のほかに、造影剤とステントが現れる。
【0075】
以上までで、骨のマスク画像としての軟部組織除去画像と(ステップS901、S902)、骨と対象物(造影剤、ステント)を含む軟部組織除去画像とが得られる(ステップS903、S904)。ここで骨、造影剤、ステントの3物質の動きに注目すると、造影剤とステントは、例えば心臓の拍動に合わせて激しく動くが、骨に関してはほとんど動きが見られない。そこで、ステップS904において得られた、骨、造影剤、ステントの3物質を含む軟部組織除去画像から、ステップ902で得られた骨のみを含む軟部組織除去画像(マスク画像)を減算することで、造影剤とステントのみを含む画像が抽出され得る。周波数分解部116は、この減算を行うことにより、ステップS904で得られた軟部組織除去画像から骨の成分を除去し、造影剤とステントのみが残る減算画像を得る(ステップS905)。
【0076】
さらに、第3実施形態で述べたように、ステントを構成する細線と、造影剤の流れる血管は大きさが著しく異なる。よって第3実施形態で説明した周波数分解を適用することで、ステントと造影剤を分離することができる。周波数分解部116は、そのような周波数分解を行い、ステント画像と造影剤画像に対応する帯域制限画像を含む複数の帯域制限画像を生成する(ステップS906)。その後、出力画像生成部117は、複数の帯域制限画像から、ステント画像と造影剤画像を抽出する。
【0077】
図10は、
図9で述べたステップS902~S906の処理をより詳細に説明するための図である。画像取得部112は、骨と軟部組織のみ含む(ステント/造影剤は含まない)高管電圧画像1001と低管電圧画像1002を取得する(ステップS901)。平面分布取得部115は、高管電圧画像1001と低管電圧画像1002に対して物質にかかわる平面分布の導出(本例では物質分離)を行う(ステップS902)。これにより、軟部組織に対応した軟部組織画像1003と、骨に対応した軟部組織除去画像1004が生成される。
【0078】
次に、画像取得部112は、骨、軟部組織、ステント、造影剤を含む高管電圧画像1005と低管電圧画像1006を取得する(ステップS903)。平面分布取得部115は、高管電圧画像1005と低管電圧画像1006に対して、物質にかかわる平面分布の導出(本例では物質分離)を行う(ステップS904)。こうして、軟部組織に対応した軟部組織画像1008と、骨と対象物(造影剤、ステント)に対応した軟部組織除去画像1007が生成される。
【0079】
骨、造影剤、ステントのうち、骨は動きが小さいことから、軟部組織除去画像1004と軟部組織除去画像1007において、骨は同じ位置に現れる。そこで、平面分布取得部115は、軟部組織除去画像1007から軟部組織除去画像1004を減算することで、骨の除去された減算画像1009を得る(ステップS905)。さらに、周波数分解部116は、ステントと造影剤の空間周波数特性の違いを利用して周波数分解を行うことで、ステントと造影剤を分割する(ステップS906)。これにより、ステント画像1010と造影剤画像1011が得られる。
【0080】
なお、上記では、周波数分解部116は、先に減算(ステップS905)を行い、その後に周波数分解を行うが、先に周波数分解を行い、その後に減算するようにしてもよい。その場合、周波数分解部116は、まず、軟部組織除去画像1007を周波数分解して、ステント画像と、骨・造影剤画像とを生成する。そして、周波数分解部116は、骨のマスク画像としての軟部組織除去画像1004を骨・造影剤画像から減算することにより、造影剤画像1011を生成する。
【0081】
第4実施形態で今まで述べてきた方法は、ステントのない状態の撮影画像をマスク画像として用いることで、ステントと、造影剤と、骨と、軟部組織の分離を行う。ところが、造影剤による血管描画は、ステントの留置後に行われることが多い。その際に、ステントのある画像をマスク画像として用いると、ステントが動くため、減算後の画像にマスク画像のステントが反転した逆像となって現れる。以降、そのような逆像の発生を抑える方法について、
図11を参照して説明する。
【0082】
図11において、高管電圧画像1101と低管電圧画像1102は、骨、軟部組織、ステントを含む。平面分布取得部115は、高管電圧画像1101と低管電圧画像1102を物質分離し(ステップS902)、軟部組織画像1003と軟部組織除去画像1104を生成する。マスク画像として用いられる軟部組織除去画像1104には、動きの激しいステントが存在する。そこで、周波数分解部116は、周波数分解処理により軟部組織除去画像1104からステントの無い骨画像1105を抽出し(ステップS906a)、これをマスク画像として用いる。
図11の処理によれば、骨と軟部組織の二つからなるマスク画像(ステントと造影剤を含まないマスク画像)を取得しておく必要がなくなる。
【0083】
物質分離により得られた対象物画像は、
図10と同様に、軟部組織画像1008と軟部組織除去画像1007を含む。周波数分解部116は、軟部組織除去画像1007を周波数分解することにより、骨・造影剤画像1106とステント画像1107を生成する(ステップS906b)。出力画像生成部117は、生成された骨・造影剤画像1106と骨画像1105について減算(ステップS905a)を行うことで、造影剤画像1109を生成する。以上のように、周波数分解を適用することによりマスク画像からステントを除去することができる。したがって、
図11の処理方法を用いることで、マスク画像にステントが存在する場合においても反転した像(逆像)を発生させることなくすべての物質を精度よく分離することができる。
【0084】
なお、第4実施形態においては、ステントと、造影剤と、骨と、軟部組織の分離を行ったが、分離対象はこれに限られるものではない。軟部組織除去画像に現れ動きのない第1の物体、軟部組織除去画像に現れ動きが大きい第2の物体、軟部組織除去画像に現れ動きが大きく第1の物体よりも小さい第3の物体を分離対象とすることができる。上記例では、第1の物体が骨に対応し、第2の物体が造影剤(造影血管)に対応し、第3の物体がステントに対応する。例えば、第3の物体として、ステントの代わりにカテーテルのマーカーを適用し、4物質の分離を行うことがあげられる。カテーテルのマーカーも、ステントと同様に、金属で作られているため軟部組織除去画像の側に現れ、心臓の動きに合わせて激しく上下し、造影血管よりも細い。そのため、第4実施形態で説明した処理により分離が可能である。また軟部組織に細かいもの、例えば有機物でできたチューブなどが見える場合は、軟部組織画像を周波数分解するようにしてもよい。
【0085】
<第5実施形態>
第1実施形態から第4実施形態においては、空間周波数特性(すなわち大きさ)により、細かい構造のもの(例えばガイドワイヤーやカテーテル)と大きな構造のもの(例えば骨)を分離したが、骨を撮影した画像においても細かい構造が現れる場合がある。例えば骨の外側と内側でカルシウムの密度が異なるため、骨の厚さ画像(軟部組織除去画像における骨の画像)は、骨の辺縁が周囲に比べて画素の値(つまり骨の厚み)が高くなる傾向になる。それゆえ骨を周波数分解すると、骨の辺縁が高周波画像に強く表れることがある。第5実施形態では、周波数分解する際に補助的な情報を用いることで、画像が骨の辺縁であるか、あるいはガイドワイヤーであるかを判断でき、分離精度を向上させることができる。
【0086】
図12は、第5実施形態による処理を説明するための図である。第5実施形態では、実効原子番号画像を補助的な情報として用いることで、ステントやガイドワイヤーと骨の辺縁を区別する。
図12(a)は、平面分布取得部115により得られた分離画像を周波数分解部116が周波数分解することにより得られた対象物画像1200(帯域制限画像あるいは複数の帯域制限画像の合成画像)である。図示のように、ガイドワイヤー1201が抽出されているが、骨部の辺縁1202も抽出されている。対象物画像1200の位置Aから位置Bの断面(プロファイル)を計算したものが
図12(b)である。横軸が対象物画像1200における位置を表している。横軸でAと書かれているところが対象物画像1200における位置A、Bと書かれているところが対象物画像1200における位置Bである。また横軸の数字1~4は
図12(a)の数字1~4と対応し、数字1はガイドワイヤー、数字2は骨の辺縁、数字3はガイドワイヤーと骨の重なり、数字4は骨の辺縁の位置を表す。縦軸が対象物画像1200の画素値である。図示のケースでは、対象物画像について、位置1(ガイドワイヤー)の画素の値と、位置2、3(骨の辺縁)の画素の値がほぼ等しい。従って、骨の辺縁とガイドワイヤーの区別をつけることが困難である。
【0087】
そこで、出力画像生成部117は、補助情報を用いて骨の辺縁とガイドワイヤーを区別する。本実施形態では、実効原子番号を参照することでこれらを区別する。
図12(c)は、物質識別により取得された実効原子番号画像1210であり、
図12(d)は位置AからBまでのプロファイルである。
図12(c),(d)における位置A、Bと数字1、2、3、4は、
図12(a)、(b)と同じ位置に配置されている。実効原子番号画像は、一般に被写体の材質の実効原子番号が高ければ高いほど大きくなる。ゆえに物質の素材に関する情報を含んでいることになる。そこで、補助情報として実効原子番号画像を参照することで、1から4のそれぞれの位置における対象物画像の物質が、ステンレス等でできた金属のガイドワイヤーであるか、カルシウムからなる骨であるかを弁別することができる。
【0088】
より具体的には、まず、出力画像生成部117は、対象物画像1200について、その画素の値がある閾値pTT以上となる位置をガイドワイヤーの候補と仮定する(
図12(b))。次に、出力画像生成部117は、実効原子番号画像1210を参照し、ガイドワイヤー候補と同位置の画素値(実効原子番号)が閾値pzt以上ならガイドワイヤーと判断し、pztより小さいならば骨の辺縁であると判断する。これにより、対象物画像に現れる物体が骨の辺縁であるか、ガイドワイヤーであるかをより精度よく判別することができる。このような判別を、対象物画像の全体について行うことで、ガイドワイヤー1201を高精度抽出することができる。
【0089】
以上のように、上記第1~第5実施形態によれば、2次元のX線画像のスペクトラル・イメージングなどにおいて、人体に骨、軟部組織のほか、造影剤やステント、ガイドワイヤーなどの3種類以上の物質が存在する場合に、より少ない撮影回数でこれら3種類以上の物質の分離を行うことができる。また、第4実施形態では、マスク画像を撮影するために撮影回数が増える場合があるが、より高精度に分離された画像を提供することができる。
【0090】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0091】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。