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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】水平ブレース接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240213BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240213BHJP
   E04B 1/38 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
E04B1/58 G
E04B1/24 F
E04B1/38 400B
E04B1/58 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020028342
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131003
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】田垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 武文
(72)【発明者】
【氏名】三枝 大介
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀人
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-095402(JP,U)
【文献】実開昭50-114122(JP,U)
【文献】登録実用新案第3024468(JP,U)
【文献】実開昭59-117702(JP,U)
【文献】特開平01-154971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/24
E04B 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱と、当該鉄骨柱から第1方向に延びる第1鉄骨梁と、前記鉄骨柱から前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2鉄骨梁とが接合される仕口部に、水平ブレースの端部を接合する水平ブレース接合構造であって、
前記仕口部には、当該仕口部の柱芯から前記第1方向に外れた前記第1鉄骨梁側の位置に溶接された第1ガセットプレートと、前記柱芯から前記第2方向に外れた前記第2鉄骨梁側の位置に溶接された第2ガセットプレートとが備えられ、
前記第1鉄骨梁と、当該第1鉄骨梁に対して所定間隔を置いて平行に隣接する第1鉄骨梁とにわたって掛け渡される小梁には、前記水平ブレースの中間部が接合される第3ガセットプレートが備えられ、
前記水平ブレースにおける前記端部と前記中間部とにわたる前記仕口部との接合端側が、前記第1ガセットプレートと前記第3ガセットプレートとにわたる形鋼材と、前記第2ガセットプレートと前記第3ガセットプレートとにわたる形鋼材との、2本の個別の形鋼材にて二股状に構成されている水平ブレース接合構造。
【請求項2】
前記鉄骨柱には、前記第1鉄骨梁と前記第2鉄骨梁とのいずれか一方から分割されて溶接された梁端部が備えられている請求項1に記載の水平ブレース接合構造。
【請求項3】
前記第1鉄骨梁及び前記第2鉄骨梁はH形鋼からなり、
前記第1ガセットプレート及び前記第2ガセットプレートは、前記第1鉄骨梁又は前記第2鉄骨梁に、それらの上下のフランジにわたる縦向き姿勢で、前記第1鉄骨梁又は前記第2鉄骨梁から前記第3ガセットプレートに向けて延出する状態で溶接されている請求項1又は2に記載の水平ブレース接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱と、当該鉄骨柱から第1方向に延びる第1鉄骨梁と、前記鉄骨柱から前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2鉄骨梁とが接合される仕口部に、水平ブレースの端部を接合する水平ブレース接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
水平ブレースの端部が接合される仕口部においては、例えば、H形鋼や角形鋼管などによって形成された鉄骨柱に、断面H字形状に形成された鉄骨梁の梁端部を現場溶接などによって接合する、いわゆるノンブラケット形式を採用することがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-155078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仕口部において上記のようなノンブラケット形式を採用すると、例えば、仕口部として、鉄骨柱に鉄骨梁から分割した梁端部をブラケットとして工場にて溶接しておく、いわゆるブラケット形式を採用した場合に生じる、現場への輸送時に仕口部が嵩張ることによる輸送効率の低下を回避することができる。
【0005】
しかしながら、仕口部にノンブラケット形式を採用すると、水平ブレースによる水平力の鉄骨柱などへの伝達を良好にするために、ブレース軸心の延長線が仕口部の柱芯を通るように水平ブレースを仕口部に取り付けるには、現場において、例えば、鉄骨柱に、鉄骨柱からX方向(第1方向)に延びる鉄骨梁と、鉄骨柱からY方向(第2方向)に延びる鉄骨梁とを溶接などで接合した後に、それらの各鉄骨梁の梁端部にわたる水平ブレース接合用のガセットプレートを各鉄骨梁に溶接する手間を要することになる。その結果、現場での溶接作業が増えることによる作業効率の低下を招くことになる。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、少なくとも鉄骨柱と第1方向の鉄骨梁との接続、又は、鉄骨柱と第2方向の鉄骨梁との接続に、輸送効率の向上を図れるノンブラケット形式を採用しながら、水平ブレースによる水平力の伝達を低下させることなく、現場での作業効率の向上を図れるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、鉄骨柱と、当該鉄骨柱から第1方向に延びる第1鉄骨梁と、前記鉄骨柱から前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2鉄骨梁とが接合される仕口部に、水平ブレースの端部を接合する水平ブレース接合構造であって、
前記仕口部には、当該仕口部の柱芯から前記第1方向に外れた前記第1鉄骨梁側の位置に溶接された第1ガセットプレートと、前記柱芯から前記第2方向に外れた前記第2鉄骨梁側の位置に溶接された第2ガセットプレートとが備えられ、
前記第1鉄骨梁と、当該第1鉄骨梁に対して所定間隔を置いて平行に隣接する第1鉄骨梁とにわたって掛け渡される小梁には、前記水平ブレースの中間部が接合される第3ガセットプレートが備えられ、
前記水平ブレースにおける前記端部と前記中間部とにわたる前記仕口部との接合端側が、前記第1ガセットプレートと前記第3ガセットプレートとにわたる形鋼材と、前記第2ガセットプレートと前記第3ガセットプレートとにわたる形鋼材との、2本の個別の形鋼材にて二股状に構成されている点にある。
【0008】
本発明によると、輸送効率の向上を図るために、鉄骨柱に各鉄骨梁の梁端部を現場溶接などで接合するノンブラケット形式を採用して、輸送段階での仕口部の嵩張りを抑制するようにしても、現場にて鉄骨柱と各鉄骨梁とを接合すれば、それらの接合部である仕口部を、水平ブレース接合用の各ガセットプレートが、仕口部における第1鉄骨梁側の位置と第2鉄骨梁側の位置とに既設された状態にすることができる。これにより、現場での作業においては、鉄骨柱と各鉄骨梁とを接合した後に、水平ブレース接合用の各ガセットプレートを溶接する必要がなくなり、現場での作業時間を短縮することができる。
そして、水平ブレースにおける仕口部との接合端側が二股状に構成されていることから、仕口部に対する水平ブレースの配置を、ブレース軸心の延長線が仕口部の柱芯を通るように設定した状態で、水平ブレースにおける仕口部側の端部を仕口部の各ガセットプレートに容易に接合することができる。これにより、地震や台風などによって水平力が発生した場合には、その水平力を水平ブレースから鉄骨柱などに良好に伝達することができる。
その結果、輸送効率の向上を図れるノンブラケット形式を採用しながら、水平ブレースによる水平力の伝達を低下させることなく、現場での作業効率の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、
前記鉄骨柱には、前記第1鉄骨梁と前記第2鉄骨梁とのいずれか一方から分割されて溶接された梁端部が備えられている点にある。
【0010】
本発明によると、例えば、工場での製作段階において、第1鉄骨梁から分割した梁端部と第2鉄骨梁から分割した梁端部との双方をブラケットとして鉄骨柱に溶接して接合しておく場合に比較して、輸送時における仕口部の嵩張りを抑制することができる。これに加えて、第1鉄骨梁と第2鉄骨梁との双方を現場溶接などで鉄骨柱に接合する場合に比較して、現場での作業時間を短縮することができる。
その結果、輸送時における仕口部の嵩張りを抑制することによる輸送効率の向上を図りながら、現場での作業効率の向上を更に図ることができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記第1鉄骨梁及び前記第2鉄骨梁はH形鋼からなり、
前記第1ガセットプレート及び前記第2ガセットプレートは、前記第1鉄骨梁又は前記第2鉄骨梁に、それらの上下のフランジにわたる縦向き姿勢で、前記第1鉄骨梁又は前記第2鉄骨梁から前記第3ガセットプレートに向けて延出する状態で溶接されている点にある。
【0012】
本構成によると、各ガセットプレートを各鉄骨梁に強固に接合することができる。
その結果、各ガセットプレートを介した水平ブレースから鉄骨柱などへの水平力の伝達を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】鉄骨造建物の屋根面における各梁やブレースの配置を示す梁伏図
図2】水平ブレースの接合構造を示す拡大伏図
図3】水平ブレースの接合構造を示す斜視図
図4図2のA-A断面図
図5図2のB-B断面図
図6図2のC-C断面図
図7図2のD-D断面図
図8図2のE-E断面図
図9図2のF-F断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る水平ブレース接合構造を鉄骨造建物の屋根組(柱梁架構の水平構面の一例)に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本発明に係る水平ブレース接合構造は、鉄骨造建物の屋根組に限らず、鉄骨造建物の床組などにも適用することができる。
【0015】
図1~2に示すように、本実施形態で例示する鉄骨造建物の屋根組1には、平面視で直交するX方向(第1方向の一例)とY方向(第2方向の一例)とに所定間隔を置いて建て込まれた複数の鉄骨柱2と、鉄骨柱2からX方向に延びる第1大梁(第1鉄骨梁の一例)3と、鉄骨柱2からY方向に延びる第2大梁(第2鉄骨梁の一例)4と、隣接する第1大梁3間に掛け渡される複数の小梁5と、隣接する第2大梁4と小梁5又は小梁5間に掛け渡される複数の横補剛材6と、鉄骨柱2と各大梁3,4との接合部である仕口部7に端部が接合される複数の水平ブレース8とが備えられている。
【0016】
本実施形態においては、各鉄骨柱2として、図2~5に示すように、左右のフランジ2a,2bとそれらにわたるウェブ2cとを有するH形鋼を例示している。各第1大梁3として、図2~6に示すように、複数の鋼板を溶接して、上下のフランジ3a,3bとそれらにわたるウェブ3cとを有するH形で、かつ、下向きに拡幅された鉛直ハンチを有する形状に形成されたビルドHハンチ梁を例示している。各第2大梁4及び小梁5として、図2~9に示すように、上下のフランジ4a,4b,5a,5bとそれらにわたるウェブ4c,5cとを有するH形鋼を例示している。各横補剛材6として、図2図7~8に示すように、上下のフランジ6a,6bとそれらにわたるウェブ6cとを有する溝形鋼を例示している。各水平ブレース8として、図2~5、図8~9に示すように、山形鋼からなる第1鋼材81と第2鋼材82とが水平に背合わせで配置された、いわゆる2丁使いの山形鋼ブレースを例示している。
【0017】
本実施形態においては、図3~5に示すように、鉄骨柱2と第1大梁3との接合には、鉄骨柱2の上端部に第1大梁3の梁端部3Aを現場溶接などによって接合するノンブラケット方式が採用されている。又、鉄骨柱2と第2大梁4との接合には、各第2大梁4を梁端部4Aと梁中間部4Bとに三分割して、各鉄骨柱2の上端部に第2大梁4の梁端部4Aをブラケットとして工場溶接し、各第2大梁4の梁端部4Aと梁中間部4Bとを現場においてスプライスプレート9,10などを使用して接合するブラケット方式が採用されている。
【0018】
図3~5に示すように、各鉄骨柱2の上部には、第1ダイアフラム21と第2ダイアフラム22と第3ダイアフラム23とガセットプレート24とが工場溶接によって備えられている。各第1ダイアフラム21には、各大梁3,4における上フランジ3a,4aの梁端部が突き合わせ溶接されている。各第2ダイアフラム22には、第1大梁3における下フランジ3bの梁端部が突き合わせ溶接されている。各第3ダイアフラム23には、第2大梁4における下フランジ4bの梁端部が突き合わせ溶接されている。各ガセットプレート24には、第1大梁3におけるウェブ3cの梁端部が複数のボルトによって接合されている。
【0019】
図2図6に示すように、各第1大梁3の梁中間部3Bには、第1大梁3の長手方向に所定間隔を置いて配置される複数のガセットプレート31が工場溶接によって備えられている。各ガセットプレート31には、各小梁5におけるウェブ5cの梁端部が複数のボルトによって接合されている。各ガセットプレート31は、第1大梁3の上下のフランジ3a,3bにわたる縦向き姿勢で、第1大梁3の各フランジ3a,3bとウェブ3cとに溶接されている。
【0020】
図2図7に示すように、各第2大梁4の梁中間部4Bには、第2大梁4の長手方向に所定間隔を置いて配置される複数のガセットプレート41が工場溶接によって備えられている。各ガセットプレート41には、各横補剛材6におけるウェブ6cの梁端部が複数のボルトによって接合されている。各ガセットプレート41は、第2大梁4の上下のフランジ4a,4bにわたる縦向き姿勢で、第2大梁4の各フランジ4a,4bとウェブ4cとに溶接されている。
【0021】
図2図8~9に示すように、各小梁5の梁中間部には、小梁5の長手方向に所定間隔を置いて配置される複数の第1ガセットプレート51が工場溶接によって備えられている。各第1ガセットプレート51には、各横補剛材6におけるウェブ6cの梁端部が複数のボルトによって接合されている。各小梁5のうち、第2大梁4と隣接しない小梁5の所定位置には、第2ガセットプレート52が工場溶接によって備えられている。各小梁5のうち、第2大梁4と隣接する小梁5の所定位置には、第3ガセットプレート53が工場溶接によって備えられている。第2ガセットプレート52及び第3ガセットプレート53には、水平ブレース8の中間部が複数のボルトによって接合されている。
【0022】
図8~9に示すように、第1ガセットプレート51及び第2ガセットプレート52は、小梁5の上下のフランジ5a,5bにわたる縦向き姿勢で、小梁5の各フランジ5a,5bとウェブ5cとに溶接されている。
【0023】
第3ガセットプレート53は、第1ガセットプレート51が入り込む凹部(図示せず)を有して、第1ガセットプレート51と直交する横向き姿勢で、小梁5のウェブ5cと第1ガセットプレート51とに溶接されている。
【0024】
図2~5に示すように、各仕口部7には、仕口部7の柱芯7aからX方向に外れた第1大梁3側の位置に溶接された第1ガセットプレート71と、仕口部7の柱芯7aからY方向に外れた第2大梁4側の位置に溶接された第2ガセットプレート72とが備えられている。第1ガセットプレート71は、各第1大梁3の梁端部3Aに工場溶接によって備えられている。第2ガセットプレート72は、各第2大梁4の梁端部4Aに工場溶接によって備えられている。
【0025】
各第1ガセットプレート71は、第1大梁3における梁端部3Aの上下のフランジ3a,3bにわたる縦向き姿勢で、第1大梁3の各フランジ3a,3bとウェブ3cとに溶接されている。
【0026】
各第2ガセットプレート72は、第2大梁4における梁端部4Aの上下のフランジ4a,4bにわたる縦向き姿勢で、第2大梁4の各フランジ4a,4bとウェブ4cとに溶接されている。
【0027】
図1~2に示すように、各水平ブレース8は、それらのブレース軸心8aが、X方向に延びる第1大梁3とY方向に延びる第2大梁4とで区画された屋根面部分の対角線上に位置するように、一対の仕口部7に掛け渡されている。各水平ブレース8は、隣接する小梁5と小梁5又は横補剛材6とに掛け渡される複数の中間ブレース部8Aと、隣接する小梁5又は横補剛材6と仕口部7とに掛け渡される一対の仕口側ブレース部8Bとを有している。
【0028】
図2に示すように、各中間ブレース部8Aにおいては、第1鋼材81と第2鋼材82とが背合わせで平行に配置されている。図2図8~9に示すように、各中間ブレース部8Aの第1鋼材81及び第2鋼材82は、それらの両端部(水平ブレース8の中間部)が小梁5の第2ガセットプレート52又は第3ガセットプレート53に複数のボルトによって接合されている。図示は省略するが、各中間ブレース部8Aの第1鋼材81と第2鋼材82は、それらの長手方向の複数個所がスペーサを挟んだ状態でボルトによって接合されている。
【0029】
図1~2に示すように、各仕口側ブレース部8Bにおいては、第1鋼材81と第2鋼材82とが、それらの離隔距離が仕口部7側ほど大きくなる二股状に配置されている。図2図8に示すように、各仕口側ブレース部8Bの第1鋼材81及び第2鋼材82は、それらの小梁5側の端部が小梁5の第3ガセットプレート53に複数のボルトによって接合されている。図2~4に示すように、各仕口側ブレース部8Bの第1鋼材81は、その仕口部7側の端部が仕口部7の第1ガセットプレート71に複数のボルトによって接合されている。図2~3、図5に示すように、各仕口側ブレース部8Bの第2鋼材82は、その仕口部7側の端部が仕口部7の第2ガセットプレート72に複数のボルトによって接合されている。
【0030】
以上の構成により、本実施形態にて例示した水平ブレース接合構造においては、鉄骨柱2と各大梁3,4とが接合される仕口部7に、当該仕口部7の柱芯7aからX方向に外れた第1大梁3側の位置に工場溶接された第1ガセットプレート71と、仕口部7の柱芯7aからY方向に外れた第2大梁4側の位置に工場溶接された第2ガセットプレート72とが備えられている。
これにより、輸送効率の向上を図るために、鉄骨柱2に第1大梁3の梁端部3Aを現場溶接などで接合するノンブラケット形式を採用して、輸送段階での仕口部7の嵩張りを抑制するようにしても、現場にて鉄骨柱2と各大梁3,4とを接合すれば、それらの接合部である仕口部7を、水平ブレース接合用の各ガセットプレート71,72が、仕口部7における第1大梁3側の位置と第2大梁4側の位置とに既設された状態にすることができる。よって、現場での作業においては、鉄骨柱2と各大梁3,4とを接合した後の仕口部7に、水平ブレース接合用の各ガセットプレート71,72を溶接する必要がなくなり、現場での作業時間を短縮することができる。
これに加えて、各水平ブレース8の仕口側ブレース部8Bが、仕口部7の第1ガセットプレート71に一端部が接合される第1鋼材81と、仕口部7の第2ガセットプレート72に一端部が接合される第2鋼材82とから二股状に構成されている。
これにより、仕口部7に対する水平ブレース8の配置を、ブレース軸心8aの延長線8bが仕口部7の柱芯7aを通るように設定した状態で、水平ブレース8の仕口側ブレース部8Bを仕口部7の各ガセットプレート71,72に容易に接合することができる。よって、地震や台風などによって水平力が発生した場合には、その水平力を水平ブレース8から鉄骨柱2などに良好に伝達することができる。
その結果、輸送効率の向上を図れるノンブラケット形式を採用しながら、水平ブレース8による水平力の伝達を低下させることなく、現場での作業効率の向上を図ることができる。
【0031】
又、本実施形態にて例示した水平ブレース接合構造においては、鉄骨柱2と第1大梁3との接合にノンブラケット形式が採用され、かつ、鉄骨柱2と第2大梁4との接合にブラケット形式が採用されていることから、現場に輸送された鉄骨柱2には、工場での製作段階において第2大梁4から分割されて溶接された第2大梁4の梁端部4Aがブラケットとして備えられている。
これにより、例えば、鉄骨柱2と第1大梁3との接合、及び、鉄骨柱2と第2大梁4との接合にそれぞれブラケット形式を採用して、工場での製作段階において、第1大梁3から分割した梁端部3Aと第2大梁4から分割した梁端部4Aとの双方をブラケットとして鉄骨柱2に溶接して接合しておく場合に比較して、輸送時における仕口部7の嵩張りを抑制することができる。
又、鉄骨柱2と第1大梁3との接合、及び、鉄骨柱2と第2大梁4との接合にそれぞれノンブラケット形式を採用して、第1大梁3と第2大梁4との双方を鉄骨柱2に現場溶接などで接合する場合に比較して、現場での溶接作業を少なくすることができ、現場での作業時間を短縮することができる。
その結果、輸送時における仕口部7の嵩張りを抑制することによる輸送効率の向上を図りながら、現場での作業効率の向上を図ることができる。
【0032】
しかも、本実施形態にて例示した水平ブレース接合構造においては、水平ブレース接合用の各ガセットプレート71,72が、第1大梁3における梁端部3Aの上下のフランジ3a,3b又は第2大梁4における梁端部4Aの上下のフランジ4a,4bにわたって縦向きに溶接されることから、各ガセットプレート71,72を各大梁3,4に強固に接合することができる。
その結果、各ガセットプレート71,72を介した水平ブレース8から鉄骨柱2などへの水平力の伝達を良好にすることができる。
【0033】
なお、各鉄骨柱2は、H形鋼に限らず、角形鋼管や丸形鋼管又はコンクリート充填鋼管(CFT)などであってもよい。各第1大梁3は、ビルドHハンチ梁に限らず、鉛直ハンチを有していないビルドH鋼やH形鋼などであってもよい。各第2大梁4は、H形鋼に限らず、ビルドH鋼やビルドHハンチ梁などであってもよい。各小梁5は、H形鋼に限らず、溝形鋼や山形鋼などであってもよい。各横補剛材6は、溝形鋼に限らず、山形鋼などであってもよい。各水平ブレース8は、2丁使いの山形鋼ブレースに限らず、2丁使いの山形鋼の一方を上下反転させたZ形使いの山形鋼ブレース、4丁使いの山形鋼ブレース、又は、2丁使いの溝形鋼ブレースなどであってもよい。
【0034】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、上記の実施形態や他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0035】
(1)本発明に係る水平ブレース接合構造は、上記の実施形態で例示した鉄骨柱2と第1鉄骨梁(第1大梁)3との接合にノンブラケット形式を採用し、鉄骨柱2と第2鉄骨梁(第2大梁)4との接合にブラケット形式を採用する構成に限らず、鉄骨柱2と第1鉄骨梁3との接合にブラケット形式を採用し、鉄骨柱2と第2鉄骨梁4との接合にノンブラケット形式を採用する構成に適用してもよく、又、鉄骨柱2と第1鉄骨梁3との接合、及び、鉄骨柱2と第2鉄骨梁4との接合にそれぞれノンブラケット形式を採用する構成に適用してもよい。
なお、鉄骨柱2と第1鉄骨梁(第1大梁)3との接合、及び、鉄骨柱2と第2鉄骨梁(第2大梁)3との接合のいずれか一方にノンブラケット形式を採用し、他方にブラケット形式を採用する構成に適用すれば、双方にノンブラケット形式を採用する構成に比較して、現場での溶接作業を少なくすることができる。
【0036】
(2)水平ブレース8は、単一の鋼材からなる中間ブレース部8Aと、第1鋼材81と第2鋼材82とから二股状に構成された仕口側ブレース部8Bとを有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
2 鉄骨柱
3 第1鉄骨梁(第1大梁)
3a フランジ(第1鉄骨梁)
3b フランジ(第1鉄骨梁)
4 第2鉄骨梁(第2大梁)
4A 梁端部(第2鉄骨梁)
4a フランジ(第2鉄骨梁)
4b フランジ(第2鉄骨梁)
7 仕口部
7a 柱芯
8 水平ブレース
71 第1ガセットプレート
72 第2ガセットプレート
81 第1鋼材
82 第2鋼材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9